特許第5848144号(P5848144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5848144固体酸化物形燃料電池及び固体酸化物形燃料電池の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5848144
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月27日
(54)【発明の名称】固体酸化物形燃料電池及び固体酸化物形燃料電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/02 20160101AFI20160107BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20160107BHJP
【FI】
   H01M8/02 R
   H01M8/12
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-22238(P2012-22238)
(22)【出願日】2012年2月3日
(65)【公開番号】特開2013-161637(P2013-161637A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2014年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】荒木 研太
【審査官】 小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−238760(JP,A)
【文献】 特開2007−227226(JP,A)
【文献】 特開2007−115621(JP,A)
【文献】 特開平11−162499(JP,A)
【文献】 特開2002−190306(JP,A)
【文献】 特開2003−123806(JP,A)
【文献】 特開2003−123827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に第1ガスが流通し、外面に第2ガスが供給されて、前記第1ガスと前記第2ガスとが熱交換する筒形状の基体管と、
前記基体管の外面に設けられ、前記第1ガスと前記第2ガスとが電気化学反応して発電する燃料電池セルと、
を備え、
前記基体管の一端から前記燃料電池セルが設けられるまでの所定長さの間の端部は、軸線を含む部分が中空であり、
前記端部における前記第1ガスの流通路の断面積は、前記端部以外の中間部分の流通路の断面積よりも小さく、前記端部における前記第1ガスの流通路の断面積は一定である固体酸化物形燃料電池。
【請求項2】
内部に第1ガスが流通し、外面に第2ガスが供給されて、前記第1ガスと前記第2ガスとが熱交換する筒形状の基体管と、
前記基体管の外面に設けられ、前記第1ガスと前記第2ガスとが電気化学反応して発電する燃料電池セルと、
を備え、
前記基体管の一端から前記燃料電池セルが設けられるまでの所定長さの間の端部のみが、複数の流通路の集合体であり、前記流通路それぞれの断面積は、一の前記基体管の断面積に比べ小さい固体酸化物形燃料電池。
【請求項3】
前記端部における前記第1ガスの流通路の断面積は、前記端部以外の中間部分の流通路の断面積よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項4】
前記基体管の一端から所定長さの間の前記端部における前記第1ガスの流通路の断面積は一定である請求項2又は3に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項5】
前記基体管の一端から中間部分に向けて、前記端部における前記第1ガスの流通路の断面積は次第に大きくなることを特徴とする請求項2又は3に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項6】
成形型を用いて、管状部材であって、一端から燃料電池セルが設けられるまでの所定長さの間の端部における流通路の断面積は、前記端部以外の中間部分よりも狭くなるように、セラミック材料を成形するステップと、
燃料電池セル材料を前記成形されたセラミック材料の前記中間部分の外周面に積層するステップと、
前記成形されたセラミック材料と前記燃料電池セル材料を焼成するステップと、
を備え
前記セラミック材料を成形するステップは、鋳込み成形による固体酸化物形燃料電池の製造方法。
【請求項7】
成形型を用いて、管状部材であって、一端から燃料電池セルが設けられるまでの所定長さの間の端部における流通路の断面積は、前記端部以外の中間部分よりも狭くなるように、セラミック材料を成形するステップと、
燃料電池セル材料を前記成形されたセラミック材料の前記中間部分の外周面に積層するステップと、
前記成形されたセラミック材料と前記燃料電池セル材料を焼成するステップと、
を備え
前記セラミック材料を成形するステップは、前記端部の外径が前記中間部分よりも細くなるような金型を用いた成形による固体酸化物形燃料電池の製造方法。
【請求項8】
前記セラミック材料を成形するステップは、
前記端部に該当する部位と前記中間部分に該当する部位とを別々に成形するステップと、
前記成形された端部に該当する部位と、前記成形された中間部分に該当する部位とを接合するステップと、
を有する請求項6又は7に記載の固体酸化物形燃料電池の製造方法。
【請求項9】
成形型を用いて、管状部材であって、一端から燃料電池セルが設けられるまでの所定長さの間の端部における流通路の断面積は、前記端部以外の中間部分よりも狭くなるように、セラミック材料を成形するステップと、
燃料電池セル材料を前記成形されたセラミック材料の前記中間部分の外周面に積層するステップと、
前記成形されたセラミック材料と前記燃料電池セル材料を焼成するステップと、
を備え
前記セラミック材料を成形するステップは、
前記端部に該当する部位と前記中間部分に該当する部位とを別々に成形するステップと、
前記成形された端部に該当する部位と、前記成形された中間部分に該当する部位とを接合するステップと、
を有する固体酸化物形燃料電池の製造方法。
【請求項10】
成形型を用いて、管状部材であって、一端から燃料電池セルが設けられるまでの所定長さの間の端部における流通路の断面積は、前記端部以外の中間部分よりも狭く、前記端部における前記流通路の断面積は一定であるように、セラミック材料を成形するステップと、
燃料電池セル材料を前記成形されたセラミック材料の前記中間部分の外周面に積層するステップと、
前記成形されたセラミック材料と前記燃料電池セル材料を焼成するステップと、
を備える固体酸化物形燃料電池の製造方法。
【請求項11】
成形型を用いて、管状部材であって、一端から燃料電池セルが設けられるまでの所定長さの間の端部のみが、複数の流通路の集合体であり、前記流通路それぞれの断面積は、一の前記管状部材の断面積に比べ狭くなるように、セラミック材料を成形するステップと、
燃料電池セル材料を前記成形されたセラミック材料の前記端部以外の中間部分の外周面に積層するステップと、
前記成形されたセラミック材料と前記燃料電池セル材料を焼成するステップと、
を備える固体酸化物形燃料電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池及び固体酸化物形燃料電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)は、燃料極に燃料ガスを、空気極に酸素を含む流体(空気)を供給することで発電がなされる電池である。SOFCの一態様として、円筒横縞型SOFCが挙げられる。円筒横縞型SOFCは、円筒状の複数のセルスタックが平行に並べられ、各セルスタックの両端部が金属部材で支持されたカートリッジ構造をとる。
【0003】
円筒横縞型SOFCのセルスタックは、多孔質の基体管を有し、該基体管の外周面上に、燃料極、固体電解質及び空気極が順に積層された発電セルを備える。発電セルは、基体管の長手方向の中間部分に、長手方向に沿って複数形成され、隣接する発電セル同士は、インターコネクタを介して電気的に接続されている。
【0004】
燃料ガスは、基体管の一端から基体管の内部に導入されて基体管の他端から外部へ排出される。一方、酸素を含む酸化剤ガス(例えば空気)は、燃料ガスの流れ方向に対して対向流となるように、基体管の外部にて基体管の他端から一端へ供給される。
【0005】
SOFCの支持体(基体管)として、支持体の酸化による破損を防止するための構造として、支持体の端部の内径を小さくして流速を早める構造(特許文献1)や反応面積を高める為、支持体に複数の流路を形成する構造が検討されている(特許文献2及び特許文献3)。
【0006】
SOFCは、約800℃から約1000℃といった高温状態で発電するため、燃料ガスや酸化剤ガスを供給する際に、ガスを予熱する必要がある。この予熱は、効率の面から基体管内部に設置した中子により、高温の排出ガスを利用することが検討されている(特許文献4)。例えば、高温の排出燃料ガスは、燃料電池セルに供給される酸化剤ガスと熱交換し、酸化剤ガスを加熱する。また、高温の排出酸化剤ガスは、燃料電池に供給される燃料ガスと熱交換し、燃料ガスを加熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−227226号公報
【特許文献2】特開2007−115621号公報
【特許文献3】特開2011−34945号公報
【特許文献4】特許第3886763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記熱交換の効率を促進するため、基体管端部の内部に、ガスの流通路を狭くするための構造物として中子が設けられる場合がある。中子は、例えば基体管の燃料ガス入口及び出口の少なくともいずれか一方であって、発電素子が形成されていないリード部分に設置される。
【0009】
しかし、中子を基体管内部に設置するため中子を固定する部材が必要であるから、燃料電池の部品点数が増加する。また、高温かつ還元雰囲気に晒されるため、中子には安定性の高い材料を選定する必要があり、高コスト化の要因となる。更に、基体管内部のガスの流れを均等にするために、中子を中心位置にずれることなく設置するためには、複雑な構造や中子を高精度で設置する作業が必要であり、製造上において手間が掛かる。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、部品点数を減らし、簡易な構成で効率良く熱交換することが可能な固体酸化物形燃料電池及び固体酸化物形燃料電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の固体酸化物形燃料電池及び固体酸化物形燃料電池の製造方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る固体酸化物形燃料電池は、内部に第1ガスが流通し、外面に第2ガスが供給されて、前記第1ガスと前記第2ガスとが熱交換する筒形状の基体管と、前記基体管の外面に設けられ、前記第1ガスと前記第2ガスとが電気化学反応して発電する燃料電池セルとを備え、前記基体管の端部は、軸線を含む部分が中空であり、前記端部における前記第1ガスの流通路の断面積は、前記端部以外の中間部分の流通路の断面積よりも小さい。
【0012】
この発明によれば、基体管を介して第1ガスと第2ガスが熱交換することから、燃料電池セルにおける温度を上昇させることができ、電気化学反応を促進できる。また、基体管の端部では、端部以外の中間部分よりも断面積が狭いことから、中間部分よりも流速が速くなり、基体管の端部における第1ガスと第2ガスとの間の熱交換効率を向上させることができる。また、基体管の端部は、軸線を含む部分が中空でありながら、第1ガスの流通路の断面積は、端部以外の中間部分よりも狭いことから、例えば基体管の内部の軸線を含む部分に中子を設ける場合に比べて、部品点数を少なくすることができ、かつ簡易な構成とすることができる。
【0013】
また、本発明に係る固体酸化物形燃料電池は、内部に第1ガスが流通し、外面に第2ガスが供給されて、前記第1ガスと前記第2ガスとが熱交換する筒形状の基体管と、前記基体管の外面に設けられ、前記第1ガスと前記第2ガスとが電気化学反応して発電する燃料電池セルとを備え、前記基体管の端部は、複数の流通路の集合体である。
【0014】
この発明によれば、基体管を介して第1ガスと第2ガスが熱交換することから、燃料電池セルにおける温度を上昇させることができ、電気化学反応を促進できる。また、基体管の端部では、端部以外の中間部分よりも断面積が狭いことから、中間部分よりも流速が速くなり、基体管の端部における第1ガスと第2ガスとの間の熱交換効率を向上させることができる。また、基体管の端部は、複数の流通路の集合体であることから、中間部分に比べて流通路の表面積が増加し、熱伝導性を向上させることができる。その結果、更に電気化学反応を促進できる。
【0015】
上記発明において、前記端部における前記第1ガスの流通路の断面積は、前記端部以外の中間部分の流通路の断面積よりも小さくてもよい。
【0016】
この発明によれば、基体管の端部では、端部以外の中間部分よりも断面積が狭いことから、中間部分よりも流速が速くなり、基体管の端部における第1ガスと第2ガスとの間の熱交換効率を向上させることができる。
【0017】
上記発明において、前記基体管の一端から所定長さの間の前記端部における前記第1ガスの流通路の断面積は一定でもよい。
【0018】
この発明によれば、基体管の端部と中間部分の境界において、第1ガスの流通路の断面積が急激に変化する形状になる。
【0019】
上記発明において、前記基体管の一端から前記中間部分に向けて、前記端部における前記第1ガスの流通路の断面積は次第に大きくなるようにしてもよい。
【0020】
この発明によれば、基体管の端部と中間部分の境界において、流通路断面積は緩やかに変化する。
【0021】
また、本発明に係る固体酸化物形燃料電池の製造方法は、成形型を用いて、管状部材であって、前記端部における流通路の断面積は、前記端部以外の中間部分よりも狭くなるように、セラミック材料を成形するステップと、燃料電池セル材料を前記成形されたセラミック材料の外周面に積層するステップと、前記成形されたセラミック材料と前記燃料電池セル材料を焼成するステップとを備える。
【0022】
この発明によれば、外周面に燃料電池が形成された管状の基体管が生成される。そして、この基体管の端部では、端部以外の中間部分よりも断面積が狭いことから、中間部分よりも流速が速くなり、基体管の端部における第1ガスと第2ガスとの間の熱交換効率を向上させることができる。また、基体管の端部における第1ガスの流通路の断面積は、端部以外の中間部分よりも狭いことから、例えば基体管の内部の軸線を含む部分に中子を設ける場合に比べて、部品点数を少なくすることができ、かつ簡易な構成とすることができる。
【0023】
上記発明において、前記セラミック材料を成形するステップは、鋳込み成形によって行ってもよい。
【0024】
この発明によれば、中間部分に比べて端部の断面積が狭い形状を有する基体管の成形体を容易に得ることができる。
【0025】
上記発明において、前記セラミック材料を成形するステップは、前記端部の外径が前記中間部分よりも細くなるような金型を用いた成形によって行ってもよい。
【0026】
この発明によれば、中間部分に比べて端部の外径が細い形状を有する基体管の成形体を容易に得ることができる。
【0027】
上記発明において、前記セラミック材料を成形するステップは、前記端部に該当する部位と前記中間部分に該当する部位とを別々に成形するステップと、前記成形された端部に該当する部位と、前記成形された中間部分に該当する部位とを接合するステップとを有してもよい。
【0028】
この発明によれば、断面積や外径が長さ方向にしない中間部分に該当する部位については、簡易に成形できる。また、端部に該当する部位についても、中間部分に比べて端部の断面積が狭い形状や、中間部分に比べて端部の外径が細い形状を容易に成形できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、基体管材料を用いて基体管の端部の流通路断面積を基体管の端部以外の中間部分よりも小さくすることで、基体管内外に流れる第1ガスと第2ガスの熱交換を可能とすると共に、基体管の端部を短くでき、部品点数を減らし、簡易な構成で効率良く熱交換する構造が実現できる。また、本発明によれば、基体管材料を用いて基体管のリード部分を複数の流通路の集合体とすることで、基体管内外に流れる第1ガスと第2ガスの熱交換を可能とすると共に、基体管の端部を短くでき、部品点数を減らし、簡易な構成で効率良く熱交換する構造が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態に係る燃料電池を示す概略構成図である。
図2】同実施形態に係る燃料電池の基体管と長さ方向の温度分布の関係を示す説明図である。
図3】同実施形態に係る基体管を示す部分縦断面図である。
図4】同実施形態に係る基体管を示す部分縦断面図である。
図5】同実施形態に係る基体管を示す部分縦断面図である。
図6】同実施形態に係る基体管を示す部分縦断面図である。
図7】同実施形態に係る基体管の端部を示す端面図である。
図8】同実施形態に係る基体管の端部を示す端面図である。
図9】同実施形態に係る燃料電池の基体管の第1の製造方法を示すフローチャートである。
図10】同製造方法における成形工程の基体管及び成形型を示す縦断面図である。
図11】同実施形態に係る燃料電池の基体管の第2の製造方法を示すフローチャートである。
図12】同製造方法における成形工程の基体管を示す縦断面図である。
図13】同製造方法における成形工程の基体管及び金型を示す縦断面図である。
図14】同製造方法における成形工程の基体管及び金型を示す縦断面図である。
図15】同実施形態に係る燃料電池の基体管の第3の製造方法を示すフローチャートである。
図16】同製造方法における接合工程前の基体管を示す縦断面図である。
図17】同製造方法における接合工程の基体管を示す縦断面図である。
図18】同製造方法における接合工程前の基体管を示す縦断面図である。
図19】同製造方法における接合工程の基体管を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
まず、本発明の一実施形態に係る円筒形燃料電池の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る基体管2を取り付けた燃料電池1の概略構成図である。なお、図1では、発電された電力の集電に関する構造は省略してある。
【0032】
燃料電池1は、例えば、固体酸化物形燃料電池(SOFC)であり、基体管2の内部に上部から供給される燃料ガス4と基体管2の外部に下部から供給される酸素とが燃料電池セル8において電気化学的反応をして発電する。燃料ガス4は、例えば天然ガスなどを水蒸気と反応させて改質して生成された水素やメタンなどである。酸素は、酸化剤ガス6(例えば空気)によって燃料電池1に供給される。
【0033】
燃料電池1は、図1に示すように、基体管2の外表面に複数の燃料電池セル8を設けて、隣り合う燃料電池セル8同士をインターコネクタ(図示せず。)によって電気的に直列に接続されている。基体管2の外表面は燃料電池セル8が形成されている部分と、燃料電池が形成されていないリード部13を有している。
【0034】
燃料電池1は、複数の円筒形状の基体管2(図1の例では3本)と、基体管2に燃料ガス4を供給する供給室3aと、排出燃料ガス5を外部へ排出する排出室3bと、酸化剤ガス6が供給される酸化剤供給室25などからなる。
【0035】
上部管板21及び下部管板22には、基体管2を通す穴が設けられ、この穴に基体管2を通すことにより、基体管2を気密に支持すると共に、供給室3a及び排出室3bと酸化剤供給室25とを隔離している。また、上部支持体23及び下部支持体24は、基体管2を補助的に支持する。
【0036】
なお、本発明は、複数の燃料電池セル8が基体管2の外表面に設けられた場合に限定されない。燃料電池1は、例えば、基体管2の外表面に、燃料電池セル8を1素子のみ設けた単素子タイプの燃料電池でもよい。
【0037】
基体管2は、例えばセラミックス製の多孔質材料であり、円筒形状を有する。燃料電池セル2は、空気極(図示せず。)と、電解質膜(図示せず。)と、燃料極(図示せず。)からなる。
【0038】
空気極には酸素が供給され、燃料極には燃料ガス4が供給される。空気極に供給された酸素は、イオン化されて電解質膜を透過し、燃料極に到達する。そして、燃料極に到達した酸素と燃料ガス4との電気化学的反応によって燃料極と空気極との間に生じる電位差が外部に取り出されることにより発電が行われる。
【0039】
図2に示すように、約400℃の燃料ガス4は、供給室3aから基体管2の一端を介して内部に導入されて、約600℃から約950℃まで昇温されて、基体管2の他端から排出室3bへ排出される。一方、酸素を含む酸化剤ガス6は、燃料ガス4の流れ方向に対して対向流となるように、基体管2の外部にて基体管2の他端から一端へ供給される。
【0040】
燃料電池1による発電は、高温の電気化学反応を利用するため、燃料電池1を約800℃から約1000℃といった高温に保持する必要がある。また、燃料電池1を高温に保持するため、燃料ガス4や酸化剤ガス6を供給する際に、それぞれのガスを予熱する必要がある。この予熱として、高温の排出ガスの熱を回収し、供給ガスを予熱することで、燃料電池1をヒーター等による熱源を使用しなくても燃料電池1を高温に保持することが可能であり、結果として、安定した発電状態を維持することできる。
【0041】
基体管2を通過した燃料ガス4(未反応の燃料ガス等)は、排出室3bから排出燃料ガス5として燃料電池1の外部に排出される。また、酸化剤供給室25を通過した酸化剤ガス6(未反応の酸化剤ガス等)は、排出酸化剤ガス7として燃料電池1の外部に排出される。なお、基体管2の内部に酸化剤ガスを供給し、基体管2の外周面に燃料ガスを供給してもよく、この場合には燃料電池セル8を構成する燃料極(図示せず。)及び空気極(図示せず。)の配置を逆にすればよい。
【0042】
本実施形態においては、基体管2の端部にリード部13を設けることによって、ガスの予熱を行っている。以下、リード部13におけるガスの予熱について詳細に説明する。
【0043】
リード部13は、基体管2の端面から所定長さの間に形成され、基体管2の中間部分14と同様に中空である。すなわち、リード部13は、基体管2の軸線を含む部分が中空であり、この中空部分がガスの流通路となる。基体管2におけるリード部13の流通路断面積をリード部13以外の中間部分14における流通路断面積よりも小さくすることで、リード部13の内部を流通するガスの流速を速めている。これにより、基体管2の内外を流れるガスの熱交換が促進される。また、リード部13の長さを短くすることができる。従来例と異なり、リード部13には、リード部13の内周面から離隔して設けられる円筒状の中子が設置されることはなく、リード部13の内周面と中子の外周面を流通路とする構成を有さない。
【0044】
リード部13の流通路の断面積は、基体管2の中間部分14よりも小さくしている。その結果、リード部13の流通路にガスが流れるとき、中間部分14に比べて流速が速くなり、リード部13、すなわち基体管2の端部における燃焼ガス4と酸化剤ガス6との間の熱交換効率が向上する。
【0045】
以下、図3から図6を参照して、リード部13の形状について説明する。
例えば、図3及び図4の例では、基体管2の端面から所定長さの間に形成されるリード部13において、流通路の断面積が一定である。リード部13の外径は、図3に示すように中間部分14と同一でもよいし、図4に示すように中間部分14よりも細くてもよい。これにより、基体管2のリード部13と中間部分14の境界において、流通路断面積が急激に変化する形状になる。
【0046】
また、図5及び図6の例では、基体管2の端面から所定長さの間に形成されるリード部13において、基体管2の一端から中間部分14に向けて、リード部13におけるガスの流通路の断面積は次第に大きくなる。そして、基体管2のリード部13と中間部分14の境界において、流通路断面積は緩やかに変化する。流通路の形状は、図5に示すように、テーパ形状でもよいし、図6に示すように曲面形状を有してもよい。
【0047】
次に、本実施形態に係る基体管2のリード部13の変形例について説明する。
上記実施形態では、リード部13の流通路の断面形状が中空である場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。リード部13は、例えば、断面積が基体管2の断面積に比べて小さい複数の流通路の集合体でもよい。
【0048】
複数の流通路の集合体は、図7に示すように例えばハニカム構造によって形成されてもよいし、図8に示すようにブロック状の部材に断面が円形の多数の開口を設けることによって形成されてもよい。
【0049】
リード部13の外径は、中間部分14と同一でもよいし、上述の図3から図6に示す例と同様に中間部分14に比べて細くてもよい。これにより、リード部13の流通路の総断面積は、中間部分14に比べて狭くなる。また、複数の流通路が集合した形状であるため、リード部13内面の表面積が増加することから、熱伝導性が向上する。
【0050】
本実施形態に係る熱交換構造は、上述のとおり、リード部13が基体管2の端部に設けられたものである。熱交換構造では、基体管2の内部を通過する燃料ガス4の熱を基体管2の外部を通過する酸化剤ガス6に基体管2を介して伝導することで熱交換を行う。すなわち、燃料ガス4は、供給室3aから基体管2を通過する間に燃料電池1内部の熱によって加熱され、基体管2の中間部分においては約600℃から約950℃のガスとなる。
【0051】
ここで、基体管2の上端部では、リード部13が設けられ、基体管2の中間部分14よりも燃料ガス4の流通路が狭くなっている。このため、酸化剤供給室25を通過して加熱された酸化剤ガス6の熱は、高い熱伝導率で基体管2を介して燃料ガス4に伝導する。これにより、酸化剤ガス6の熱を外部から基体管2に供給された直後の燃料ガス4に効率良く伝導することができる。
【0052】
また、基体管2の下端部では、リード部13が設けられ、基体管2の中間部分14よりも燃料ガス4の流通路が狭くなっている。このため、燃料ガス4の熱は、高い熱伝導率で基体管2を介して酸化剤ガス6に伝導する。これにより、燃料ガス4の残熱を効率良く酸化剤ガス6に伝導することができる。
【0053】
すなわち、予熱の不十分な酸化剤ガス6が供給されることによる発電効率の低下及び発電自体の不安定化を防止することができる。また、酸化剤ガス6の予熱の不足分を補うために、外部の熱交換設備またはヒーター等を大型化する必要がなくなる。
【0054】
一方、反応によって高温となった燃料ガス4や酸化剤ガス6が、リード部13における熱交換によって冷却されて外部へ排出される。その結果、下部管板22及び上部管板21が高温雰囲気に晒されることを抑制できる。
【0055】
基体管2を通過した燃料ガス4は、リード部13の一端(下端)を通過し、排出燃料ガス5として排気室3bに排気される。
【0056】
なお、燃料ガス4及び酸化剤ガス6の流動方向を逆とし、燃料ガス4を基体管2の下端部から供給し、酸化剤ガス6を上部支持体23側から下部支持体24側へ流動させるようにしてもよい。この場合、基体管2の上端部及び下端部に取り付けられたリード部13は、前述した熱交換とは逆の熱伝導に基づく熱交換を行う。
【0057】
次に、図9を参照して、本実施形態に係る基体管2の第1の製造方法について説明する。
まず、図10に示すように、セラミック材料を成形型32内部に充填する。基体管2の中空部分に該当する部分には可燃性の成形型31が設置される。そして、セラミック材料が充填された成形型31,32を加圧し成形する(ステップS1)。成形方法としては、例えば鋳込み成形を利用できる。これにより、中間部分14に比べて両端部の断面積が狭い形状を有する基体管2の成形体を得ることができる。
【0058】
そして、印刷等の方法によって、基体管2の成形体の外表面に燃料極材料、電解質材料、インターコネクタ材料を所定領域に積層する(ステップS2)。燃料極材料、電解質材料、インターコネクタ材料は、スラリーであり、例えば燃料極材料、電解質材料、インターコネクタ材料の順に重ねて印刷される。
【0059】
その後、燃料極材料、電解質材料、インターコネクタ材料が外表面に形成された基体管2の成形体を一体に焼成する(ステップS3)。次に、焼成された基体管2の外表面に空気極材料を所定領域に印刷し積層する(ステップS4)。そして、空気極が積層された基体管2の成形体を焼成する(ステップS5)。
【0060】
なお、空気極材料を燃料極材料、電解質材料、インターコネクタ材料の後に重ねて印刷し、燃料極材料、電解質材料、インターコネクタ材料、空気極材料が外表面に形成された基体管2の成形体を一体に焼成する場合もある。
【0061】
次に、図11を参照して、本実施形態に係る基体管2の第2の製造方法について説明する。
まず、押し出し成形方法によって、セラミック材料を、図12に示すように一端部から他端部にかけて外径及び内径が一定の円筒形状に成形する(ステップS11)。
【0062】
次に、図13及び図14に示すように、円筒形状に成形された成形体のうちリード部13に該当する端部のみを金型33を用いて加圧し成形する(ステップS12)。基体管2の中空部分に該当する部分には可燃性の成形型34が設置される。これにより、リード部13の外径が中間部分14よりも細い成形体を得ることができる。
【0063】
その後は、上述した第1の製造方法のステップS2からS5と同様の工程を経ることによって、燃料極、電解質、インターコネクタ、空気極が外表面に形成された基体管2を生成する。すなわち、印刷等の方法によって、基体管2の成形体の外表面に燃料極材料、電解質材料、インターコネクタ材料を所定領域に積層し(ステップS2)、一体焼成する(ステップS3)。そして、焼成された基体管2の外表面に空気極材料を所定領域に印刷し積層し(ステップS4)、焼成する(ステップS5)。
【0064】
次に、図15に示すように、本実施形態に係る基体管2の第3の製造方法について説明する。
上記第1及び第2の製造方法では、リード部13と中間部分14の両方を同時に成形する場合について説明した。第3の製造方法は、リード部13に該当する部分と中間部分14に該当する部分とを別々に成形し、その後両者を接合する。
【0065】
すなわち、まず、押し出し成形方法によって、セラミック材料を、図16の左側の部材に示すように一端部から他端部にかけて外径及び内径が一定の円筒形状に成形する(ステップS21)。
【0066】
一方で、図16の右側に示すように、リード部13に該当する部分について、セラミック材料を成形型35内部に充填する。そして、セラミック材料が充填された成形型35を加圧し成形する(ステップS22)。成形方法としては、例えば鋳込み成形を利用できる。これにより、中間部分14に比べて両端部の断面積が狭い形状を有する基体管2のリード部13の成形体を得ることができる。なお、リード部13の形状に応じて、押し出し成形によってリード部13の成形体を得てもよい。
【0067】
その後、図17に示すように円筒形状に成形された成形体と、リード部13に該当する部分の成形型35又はリード部13の成形体とを接合する(ステップS23)。例えば、円筒形状に成形された成形体の両端面にリード部13の成形体を突き合わせて接合する。または、上述の図3に示すような形状の場合、図18及び図19に示すように、円筒形状に成形された基体管2の成形体の両端部分の内部にリード部13の成形体を挿入して両者を接合してもよい。これにより、断面積や外径が長さ方向にしない中間部分14に該当する部位については、簡易に成形できる。また、端部に該当する部位についても、中間部分14に比べて端部の断面積が狭い形状や、中間部分14に比べて端部の外径が細い形状を容易に成形できる。
【0068】
その後は、上述した第1の製造方法のステップS2からS5と同様の工程を経ることによって、燃料極、電解質、インターコネクタ、空気極が外表面に形成された基体管2を生成する。すなわち、印刷等の方法によって、基体管2の成形体の外表面に燃料極材料、電解質材料、インターコネクタ材料を所定領域に積層し(ステップS2)、一体焼成する(ステップS3)。そして、焼成された基体管2の外表面に空気極材料を所定領域に印刷し積層し(ステップS4)、焼成する(ステップS5)。
【符号の説明】
【0069】
1 燃料電池
2 基体管
4 燃料ガス(第1ガス)
6 酸化剤ガス(第2ガス)
8 燃料電池セル
13 リード部(端部)
14 中間部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19