特許第5848145号(P5848145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5848145ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5848145
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月27日
(54)【発明の名称】ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 7/00 20060101AFI20160107BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20160107BHJP
   C08K 5/353 20060101ALI20160107BHJP
   C08K 5/47 20060101ALI20160107BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20160107BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20160107BHJP
【FI】
   C08L7/00
   C08L9/00
   C08K5/353
   C08K5/47
   C08K3/00
   B60C1/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-23442(P2012-23442)
(22)【出願日】2012年2月6日
(65)【公開番号】特開2013-159717(P2013-159717A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2015年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(73)【特許権者】
【識別番号】000206901
【氏名又は名称】大塚化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】幸村 憲明
(72)【発明者】
【氏名】椎名 紀彰
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 崇
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−143944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 7/00
B60C 1/00
C08K 3/00
C08K 5/353
C08K 5/47
C08L 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム及び/又は合成ジエン系ゴムからなるゴム成分(A)100質量部に対して、ダイポーラー窒素を含む部分、及び酸素又は硫黄を含む4〜6員環の窒素含有複素環部分を有し、且つ、前記ダイポーラー窒素を含む部分が共役構造を含む化合物(B)0.1〜30質量部を配合してなり、
前記化合物(B)が、下記一般式(4)で表わされるエテニルニトロン化合物である、ゴム組成物。
【化1】
[式中、R8、R9、R10及びR11は、各々水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基(但し、芳香族環にはハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、炭素数1〜4のアシル基、カルボニルアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基、及び炭素数1〜4のアルコキシル基を有してよい)、炭素数2〜20の複素環基又は下記式(6)で表わされる置換基を示す。但し、R8、R9、R10及びR11のいずれか1つが式(6)で表わされる置換基である。
【化2】
(式中、X1は酸素原子又は硫黄原子を示す。R16、R17、R18及びR19は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜20のアルキル基を示す。)]
【請求項2】
前記化合物(B)が、1−(4−(2−オキサゾリル)−フェニル)−エテニル−N−メチル−ニトロン、1−(4−(2−チアゾリル)−フェニル)−エテニル−N−メチル−ニトロン、2−(4−(2−オキサゾリル)−フェニル)−エテニル−N−メチル−ニトロン、2−(4−(2−チアゾリル)−フェニル)−エテニル−N−メチル−ニトロン、
1−(4−(2−オキサゾリル)−フェニル)−エテニル−N−フェニル−ニトロン、1−(4−(2−チアゾリル)−フェニル)−エテニル−N−フェニル−ニトロン、2−(4−(2−オキサゾリル)−フェニル)−エテニル−N−フェニル−ニトロン、2−(4−(2−チアゾリル)−フェニル)−エテニル−N−フェニル−ニトロン、
1−(フェニル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、1−(フェニル)−エテニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、2−(フェニル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、2−(フェニル)−エテニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、
1−(2−フリル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、1−(2−フリル)−エテニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、2−(2−フリル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、2−(2−フリル)−エテニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、
1−(3−フリル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、1−(3−フリル)−エテニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、2−(3−フリル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、2−(3−フリル)−エテニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、
1−(2−チエニル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、1−(2−チエニル)−エテニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、2−(2−チエニル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、2−(2−チエニル)−エテニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、
1−(3−チエニル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、1−(3−チエニル)−エテニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、2−(3−チエニル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、2−(3−チエニル)−エテニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、
1−(2−ピロリル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、1−(2−ピロリル)−エテニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、2−(2−ピロリル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、2−(2−ピロリル)−エテニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、
1−(3−ピロリル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、1−(3−ピロリル)−エテニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、2−(3−ピロリル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、2−(3−ピロリル)−エテニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロンからなる群から選択される、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
更に、充填剤(C)を前記ゴム成分(A)100質量部に対して、10〜100質量部含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のゴム組成物を使用した空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記空気入りタイヤが重荷重用空気入りタイヤである、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記空気入りタイヤがオフロードタイヤである、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
下記一般式(4)で表わされるエテニルニトロン化合物。
【化3】
[式中、R8、R9、R10及びR11は、各々水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基(但し、芳香族環にはハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、炭素数1〜4のアシル基、カルボニルアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基、及び炭素数1〜4のアルコキシル基を有してよい)、炭素数2〜20の複素環基又は下記式(6)で表わされる置換基を示す。但し、R8、R9、R10及びR11のいずれか1つが式(6)で表わされる置換基である。
【化4】
(式中、X1は酸素原子又は硫黄原子を示す。R16、R17、R18及びR19は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜20のアルキル基を示す。)]
【請求項8】
前記エテニルニトロン化合物が、一般式(4)においてR8が式(6)で表わされる置換基を示す化合物である請求項7に記載のエテニルニトロン化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤに関し、特には、未加硫粘度が低く、低発熱性に優れたゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラック・バス用タイヤや、オフロードタイヤに対して、トレッドゴムのヒステリシスロスを低減して、低発熱性を向上させること、更には、耐摩耗性を向上させることが求められている。ここで、一般に、トレッドゴムの低発熱性を向上させるためには、トレッドゴムの変形を抑え、高温域でのtanδを低下させることが好ましい。
【0003】
これに対し、特開平9−316132号公報においては、ゴム組成物中に、変性SBR等の変性共役ジエン系重合体を一定量以上配合することによって、ゴム組成物の耐摩耗性及び低発熱性を向上させている。
【0004】
また、特開2008−163232号公報においては、ゴム成分等の二重結合部位に反応性を示すようなダイポーラー窒素を含む部分Q、及びカーボンブラック、ホワイトカーボン(又はシリカフィラー)等の充填物と反応性を示すような酸素又は硫黄を含む窒素含有複素環を含む部分Bを有してなる化合物をゴム組成物に配合することで、ゴム成分中でカーボンブラック等の分散性が向上し、ゴム組成物の低発熱性が更に向上することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−316132号公報
【特許文献2】特開2008−163232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の従来の手法を採用した場合、ゴム組成物の未加硫粘度が上昇してしまい、作業性の悪化が問題となる。また、従来の他の技術でも、未加硫粘度を上昇させることなく、ゴム組成物のヒステリシスロスを低減して、低発熱性を向上させることができなかった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、未加硫粘度が低く、低発熱性に優れたゴム組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかるゴム組成物を用いた低発熱性に優れた空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ダイポーラー窒素を含む部分と、酸素又は硫黄を含む4〜6員環の窒素含有複素環部分を有し、ダイポーラー窒素を含む部分が共役構造を含む化合物をゴム組成物に配合することで、ゴム組成物の未加硫粘度を上昇させることなく、低発熱性が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明のゴム組成物は、天然ゴム及び/又は合成ジエン系ゴムからなるゴム成分(A)100質量部に対して、ダイポーラー窒素を含む部分、及び酸素又は硫黄を含む4〜6員環の窒素含有複素環部分を有し、且つ、前記ダイポーラー窒素を含む部分が共役構造を含む化合物(B)0.1〜30質量部を配合してなり、前記化合物(B)が、下記一般式(4)で表わされるエテニルニトロン化合物であることを特徴とする。
【化1】
[式中、R8、R9、R10及びR11は、各々水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基(但し、芳香族環にはハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、炭素数1〜4のアシル基、カルボニルアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基、及び炭素数1〜4のアルコキシル基を有してよい)、炭素数2〜20の複素環基又は下記式(6)で表わされる置換基を示す。但し、R8、R9、R10及びR11のいずれか1つが式(6)で表わされる置換基である。
【化2】
(式中、X1は酸素原子又は硫黄原子を示す。R16、R17、R18及びR19は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜20のアルキル基を示す。)]
【0011】
本発明のゴム組成物は、更に、充填剤(C)を前記ゴム成分(A)100質量部に対して、10〜100質量部含むことが好ましい。
【0012】
また、本発明の空気入りタイヤは、上記のゴム組成物を使用したことを特徴とする。ここで、本発明の空気入りタイヤは、好ましくは重荷重用空気入りタイヤであり、また、オフロードタイヤとしても好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ダイポーラー窒素を含む部分と、酸素又は硫黄を含む4〜6員環の窒素含有複素環部分を有し、ダイポーラー窒素を含む部分が共役構造を含む化合物をゴム組成物に配合することで、未加硫粘度が低く、低発熱性に優れたゴム組成物を提供することができる。また、かかるゴム組成物を用いた、生産性及び低発熱性に優れた空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<ゴム組成物>
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明のゴム組成物は、天然ゴム及び/又は合成ジエン系ゴムからなるゴム成分(A)100質量部に対して、ダイポーラー窒素を含む部分、及び酸素又は硫黄を含む4〜6員環の窒素含有複素環部分を有し、且つ、前記ダイポーラー窒素を含む部分が共役構造を含む化合物(B)0.1〜30質量部を配合してなり、前記化合物(B)が、上記一般式(4)で表わされるエテニルニトロン化合物であることを特徴とし、目的に応じて、更に他の配合剤を含有することができる。
【0015】
本発明のゴム組成物においては、化合物(B)中のダイポーラー窒素を含む部分がゴム成分(A)と反応することができる一方、化合物(B)中の酸素又は硫黄を含む4〜6員環の窒素含有複素環部分がカーボンブラックやシリカ等の充填剤と反応することができるため、ゴム成分中での充填剤の分散性が向上して、ゴム組成物の低発熱性を向上させることができる。また、化合物(B)中に導入した共役構造が、ダイポーラー窒素を含む部分の反応性を制御し、ゴム組成物の未加硫粘度の上昇を引き起こす副反応を抑制することができる。そのため、本発明のゴム組成物は、未加硫粘度が低い上、低発熱性に優れるという格別の効果を奏する。
【0016】
本発明のゴム組成物のゴム成分(A)は、天然ゴム(NR)及び/又は合成ジエン系ゴムからなる。該ゴム成分(A)としては、未変性のゴム及び変性ゴムのいずれを用いてもよい。また、合成ジエン系ゴムとしては、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニリトル−ブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。なお、本発明のゴム組成物のゴム成分(A)としては、天然ゴム(NR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)が特に好ましい。また、これらゴムは、一種単独で用いてもよいし、二種以上をブレンドして用いてもよい。
【0017】
本発明のゴム組成物は、ダイポーラー窒素を含む部分、及び酸素又は硫黄を含む4〜6員環の窒素含有複素環部分を有し、且つ、前記ダイポーラー窒素を含む部分が共役構造を含む化合物(B)を含む。ここで、共役とは、分子内に存在する二つ以上の多重結合が互いにただ一つの単結合をはさんで連なり、相互作用しあう状態をいい、本発明のゴム組成物に用いる化合物(B)は、かかる共役構造を含む。なお、本発明において、共役とは、ダイポーラー窒素を含む部分中の窒素を構成元素の一つとする多重結合部分が一つの単結合を介して他の多重結合(二重結合、三重結合)と連なっていることをいう。従って、例えば、窒素を構成元素の一つとする多重結合部分がニトロン基であり、該ニトロン基に芳香環(フェニル基、フリル基等)が直接つながっている化合物は、ニトロン基と芳香環との間に多重結合(二重結合、三重結合)が存在しないため、本発明で規定する化合物(B)には含まれない。
【0018】
上記化合物(B)の配合量は、前記ゴム成分(A)100質量部に対して0.1〜30質量部の範囲であり、0.1〜10質量部の範囲が好ましい。化合物(B)の配合量がゴム成分(A)100質量部に対して0.1質量部未満では、ゴム組成物の低発熱性を向上させる効果が小さく、一方、30質量部を超えると、未反応の化合物(C)がゴム組成物内に多量に残留して、ゴム組成物に悪影響を与える。
【0022】
上記化合物(B)、次の一般式(4)で表わされるエテニルニトロン化合物である
【0023】
【化3】
[式中、R、R、R10及びR11は、各々水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基(但し、芳香族環にはハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、炭素数1〜4のアシル基、カルボニルアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基、及び炭素数1〜4のアルコキシル基を有してよい)、炭素数2〜20の複素環基又は下記式(6)で表わされる置換基を示す。但し、R、R、R10及びR11のいずれか1つが式(6)で表わされる置換基である。
【化4】
(式中、Xは酸素原子又は硫黄原子を示す。R16、R17、R18及びR19は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜20のアルキル基を示す。)]
【0025】
上記一般式(4)で表される化合物において示される各基は、次の通りである。
炭素数1〜4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が挙げられる。
炭素数1〜20のアルキル基としては、前記炭素数1〜4のアルキル基で例示した基に加えて、例えばn−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基等の炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が挙げられる。
炭素数6〜20のアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
炭素数1〜4のアシル基としては、例えばアセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基等の炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状アルキルカルボニル基が挙げられる。
炭素数1〜4のアルコキシル基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基が挙げられる。
カルボニルアルキル基としては、炭素数1〜21のカルボニルアルキル基が挙げられ、例えば、カルボニルメチル、カルボニルエチル、カルボニルプロピル、カルボニルブチル、カルボニルペンチル、カルボニルヘキシル、カルボニルヘプチル、カルボニルオクチル、カルボニルノニル、カルボニルデシル、カルボニルウンデシル、カルボニルドデシル、カルボニルトリデシル、カルボニルテトラデシル、カルボニルペンタデシル、カルボニルヘキサデシル、カルボニルヘプタデシル、カルボニルオクタデシル、カルボニルノナデシル、カルボニルイコシル、カルボニルヘニコシル等が挙げられる。
炭素数2〜20の複素環基としては、例えばフリル基、チエニル基、ピロリル基、テトラヒドロフリル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基、ピロリニル基、ピロリジニル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、オキサゾリニル基、オキサゾリジニル基、イソキサゾリニル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、チアゾリニル基、チアゾリジニル基、イソチアゾリニル基、ピラゾリル基、ピラゾリジニル基、イミダゾリル基、イミダゾリニル基、イミダゾリジニル基、オキサジアゾリル基、オキサジアゾリニル基、チアジアゾリニル基、トリアゾリル基、トリアゾリニル基、トリアゾリジニル基、テトラゾリル基、テトラゾリニル基、ピリジル基、ジヒドロピリジル基、テトラヒドロピリジル基、ピペリジル基、オキサジニル基、ジヒドロオキサジニル基、モルホリノ基、チアジニル基、ジヒドロチアジニル基、チアモルホリノ基、ピリダジニル基、ジヒドロピリダジニル基、テトラヒドロピリダジニル基、ヘキサヒドロピリダジニル基、オキサジアジニル基、ジヒドロオキサジアジニル基、テトラヒドロオキサジアジニル基、チアジアゾリル基、チアジアジニル基、ジヒドロチアジアジニル基、テトラヒドロチアジアジニル基、ピリミジニル基、ジヒドロピリミジニル基、テトラヒドロピリミジニル基、ヘキサヒドロピリミジニル基、ピラジニル基、ジヒドロピラジニル基、テトラヒドロピラジニル基、ピペラジニル基、トリアジニル基、ジヒドロトリアジニル基、テトラヒドロトリアジニル基、ヘキサヒドロトリアジニル基、テトラジニル基、ジヒドロテトラジニル基、インドリル基、インドリニル基、イソインドリル基、インダゾリル基、キナゾリニル基、ジヒドロキナゾリル基、テトラヒドロキナゾリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾオキサゾリニル基、ベンゾイソキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリニル基、ベンゾイミダゾリル基、インダゾリニル基、キノリニル基、ジヒドロキノリニル基、テトラヒドロキノリニル基、イソキノリニル基、ジヒドロイソキノリニル基、テトラヒドロイソキノリニル基、ピリドインドリル基、ジヒドロベンゾオキサジニル基、シンノリニル基、ジヒドロシンノリニル基、テトラヒドロシンノリル基、フタラジニル基、ジヒドロフタラジニル基、テトラヒドロフタラジニル基、キノキサリニル基、ジヒドロキノキサリニル基、テトラヒドロキノキサリニル基、プリニル基、ジヒドロベンゾトリアジニル基、ジヒドロベンゾテトラジニル基、フェノチアジニルフラニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基等が挙げられる。これら複素環基は置換可能な任意の位置にオキソ体又はチオケトン体となっているものも含むことができ、また、これら複素環基は置換可能な任意の位置に適当な置換基が置換されてもよい。
【0026】
本発明の一般式(4)で表わされるエテニルニトロン化合物、ニトロンエテニル基結合する構造上新規な化合物である。
【0027】
上記一般式(4)で表されるエテニルニトロン化合物の中でも、Rが式(6)で表わされる置換基である化合物が好ましい。
また、上記一般式(4)で表されるエテニルニトロン化合物の中でも、Rが水素原子である化合物が好ましい。
また、上記一般式(4)で表されるエテニルニトロン化合物の中でも、R10又はR11が炭素数6〜20のアリール基又は炭素数2〜20の複素環基である化合物が好ましく、フェニル基、フリル基、チエニル基又はピロリル基である化合物が特に好ましい。
【0028】
上記一般式(4)で表わされるエテニルニトロン化合物の具体例としては、
1−(4−(2−オキサゾリル)−フェニル)−エテニル−N−メチル−ニトロン、1−(4−(2−チアゾリル)−フェニル)−エテニル−N−メチル−ニトロン、2−(4−(2−オキサゾリル)−フェニル)−エテニル−N−メチル−ニトロン、2−(4−(2−チアゾリル)−フェニル)−エテニル−N−メチル−ニトロン、
1−(4−(2−オキサゾリル)−フェニル)−エテニル−N−フェニル−ニトロン、1−(4−(2−チアゾリル)−フェニル)−エテニル−N−フェニル−ニトロン、2−(4−(2−オキサゾリル)−フェニル)−エテニル−N−フェニル−ニトロン、2−(4−(2−チアゾリル)−フェニル)−エテニル−N−フェニル−ニトロン、
1−(フェニル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、1−(フェニル)−エテニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、2−(フェニル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、2−(フェニル)−エテニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、
1−(2−フリル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、1−(2−フリル)−エテニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、2−(2−フリル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、2−(2−フリル)−エテニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、
1−(3−フリル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、1−(3−フリル)−エテニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、2−(3−フリル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、2−(3−フリル)−エテニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、
1−(2−チエニル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、1−(2−チエニル)−エテニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、2−(2−チエニル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、2−(2−チエニル)−エテニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、
1−(3−チエニル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、1−(3−チエニル)−エテニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、2−(3−チエニル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、2−(3−チエニル)−エテニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、
1−(2−ピロリル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、1−(2−ピロリル)−エテニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、2−(2−ピロリル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、2−(2−ピロリル)−エテニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、
1−(3−ピロリル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、1−(3−ピロリル)−エテニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、2−(3−ピロリル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、2−(3−ピロリル)−エテニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロンが挙げられる。
【0030】
これらの中でも2−(2−フリル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、2−フェニル−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、2−(2−チエニル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロンが特に好ましい。なお、上記化合物(B)は、一種単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これら化合物(B)は、出発物質を適宜選択し、一般的な有機合成法に従って、合成できる。
【0031】
本発明のゴム組成物は、更に、充填剤(C)を含むことが好ましい。ここで、該充填剤(C)としては、カーボンブラック、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、クレー、炭酸カルシウム等が挙げられる。なお、これら充填剤(C)は、一種単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、該充填剤(C)の配合量は、上記ゴム成分(A)100質量部に対して、10〜100質量部の範囲が好ましく、20〜100質量部の範囲が更に好ましく、10質量部以上であれば、弾性率を十分に確保して、タイヤの操縦安定性を向上させることができ、また、100質量部以下であれば、未加硫粘度を十分低く抑えつつ、低発熱性を十分に向上させることができる。
【0032】
本発明のゴム組成物には、上記ゴム成分(A)、化合物(B)、充填剤(C)の他に、ゴム業界で通常使用される配合剤、例えば、軟化剤、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤等を目的に応じて適宜配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。本発明のゴム組成物は、ゴム成分(A)に、化合物(B)と、必要に応じて適宜選択した各種配合剤とを配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0033】
<空気入りタイヤ>
本発明の空気入りタイヤは、上述のように低発熱性に優れたゴム組成物を使用したことを特徴とするため、重荷重用空気入りタイヤとして好適である。また、該タイヤは、悪路走行用のオフロードタイヤとして特に好適である。ここで、上記ゴム組成物を適用するタイヤ部材としては、トレッドゴム、サイドゴム、カーカスやベルトのコーティングゴム等が挙げられ、これらの中でも、トレッドゴムが好ましい。なお、本発明の空気入りタイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0035】
<化合物(B−1)の合成>
2−(4−ニトロフェニル)−4,5−ジヒドロキシオキサゾール11.7g、塩化アンモニウム1.4g、メタノール60ml、水12mlの混合物を加温し、60℃とした。混合物に亜鉛末12.0gを少量ずつ加えた。亜鉛末を加え終わった後、60℃にて2時間反応を行った。得られた反応液を濾過器で固液分離した。得られた濾液に濃塩酸を加えpH4.0とし、2−(4−ヒドロキシルアミノフェニル)−4,5−ジヒドロキシオキサゾール塩酸塩を析出させた。脱液し、2−(4−ヒドロキシルアミノフェニル)−4,5−ジヒドロキシオキサゾール塩酸塩を得た。得られた2−(4−ヒドロキシルアミノフェニル)−4,5−ジヒドロキシオキサゾール塩酸塩にメタノール50ml、フリルアクロレイン6.3g、炭酸ナトリウム2.5gを加え、35℃にて14時間反応させた。5℃に冷却した後、反応液の脱液を行った。得られた固体を水60gで分散洗浄を行った。脱液し、水20g続いてメタノール10gでケーキ洗浄を行った。その後、減圧下、40℃で乾燥を行い、下記化学式:
【化5】
で表わされる目的化合物(B−1)[2−(2−フリル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン]11.2gを得た。
【0036】
性状:黄色固体
1H−NMR(300MHz,CDCl,δ ppm):4.1(t,2H),4.5(t,2H),6.5(m,1H),6.6(d,1H),7.2(d,1H ),7.5(m,2H),7.8(m,3H),8.0(d,2H)
【0037】
<化合物(B−2)の合成>
2−(4−ニトロフェニル)−4,5−ジヒドロキシオキサゾール11.7g、塩化アンモニウム1.4g、メタノール60ml、水12mlの混合物を加温し、60℃とした。混合物に亜鉛末12.0gを少量ずつ加えた。亜鉛末を加え終わった後、60℃にて2時間反応を行った。得られた反応液を濾過器で固液分離した。得られた濾液に濃塩酸を加えpH4.0とし、2−(4−ヒドロキシルアミノフェニル)−4,5−ジヒドロキシオキサゾール塩酸塩を析出させた。脱液し、2−(4−ヒドロキシルアミノフェニル)−4,5−ジヒドロキシオキサゾール塩酸塩を得た。得られた2−(4−ヒドロキシルアミノフェニル)−4,5−ジヒドロキシオキサゾール塩酸塩にメタノール50ml、trans−シンナムアルデヒド6.8g、炭酸ナトリウム2.5gを加え35℃にて14時間反応させた。5℃に冷却した後、反応液の脱液を行った。得られた固体を水60gで分散洗浄を行った。脱液し、水20g続いてメタノール10gでケーキ洗浄を行った。その後、減圧下、40℃で乾燥を行い、下記化学式:
【化6】
で表わされる目的化合物(B−2)[2−フェニル−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン]10.8gを得た。
【0038】
性状:黄色固体
1H−NMR(500MHz,CDCl,δppm):4.1(t,2H),4.5(t,2H),7.2(d,1H),7.4(m,3H),7.6(m,2H),7.7(m,1H),7.8(d,2H),7.9(d,1H),8.1(d,2H)
【0039】
<化合物(B−3)の合成>
2−(4−ニトロフェニル)−4,5−ジヒドロキシオキサゾール11.7g、塩化アンモニウム1.4g、メタノール60ml、水12mlの混合物を加温し、60℃とした。混合物に亜鉛末12.0gを少量ずつ加えた。亜鉛末を加え終わった後、60℃にて2時間反応を行った。得られた反応液を濾過器で固液分離した。得られた濾液に濃塩酸を加えpH4.0とし、2−(4−ヒドロキシルアミノフェニル)−4,5−ジヒドロキシオキサゾール塩酸塩を析出させた。脱液し、2−(4−ヒドロキシルアミノフェニル)−4,5−ジヒドロキシオキサゾール塩酸塩を得た。得られた2−(4−ヒドロキシルアミノフェニル)−4,5−ジヒドロキシオキサゾール塩酸塩にメタノール50ml、2−チオフェンアルデヒド7.9g、炭酸ナトリウム2.5gを加え35℃にて14時間反応させた。5℃に冷却した後、反応液の脱液を行った。得られた固体を水60gで分散洗浄を行った。脱液し、水20g続いてメタノール10gでケーキ洗浄を行った。その後、減圧下、40℃で乾燥を行い、下記化学式:
【化7】
で表わされる目的化合物(B−3)[2−(2−チエニル)−エテニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン]10.6gを得た。
【0040】
性状:黄色固体
1H−NMR(500MHz,CDCl,δppm):4.1(t,2H),4.5(t,2H),7.1(d,1H),7.4(d,1H),7.4(m,3H),7.8(m,3H),8.1(d,2H)
【0041】
<化合物(B'−4)の合成:比較化合物>
クロロホルム300mlに15.0gの4−(N−ヒドロキシルアミノ)−ベンゾイルクロライド(1当量)を攪拌混合した溶液に、クロロホルム200mlに10.9gの2−アミノエタノール(2当量)を加えた溶液を−10℃下で滴下して加えた。この溶液を25℃に2時間おいた後、白色沈殿物を濾過により除いた。濾液をロータリーエバポレータにより乾燥させ、4−(N−ヒドロキシルアミノ)−N’−(2−ヒドロキシエチル)−ベンズアミド(黄色液)17.4gを得た。
【0042】
次に、濃硫酸50mlに4−(N−ヒドロキシルアミノ)−N’−(2−ヒドロキシエチル)−ベンズアミド17.4gを攪拌しながら滴下し、混合物を100℃で1時間加熱した。この溶液に20%水酸化ナトリウム及びクロロホルムの各500mlを攪拌混合しながら滴下し、温度を15℃以下に維持した。生成層を分離して乾燥し、6.3gの4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−ヒドロキシルアミンを得た。
【0043】
次に、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−ヒドロキシルアミン(1当量、6.3g)とベンズアルデヒド(1当量、3.9g)との混合物を100mlのエタノール中で30分間還流して、50ml量に濃縮した。水50mlの同量を添加して、混合物を冷蔵庫に5℃にて一昼夜冷却した。その後、濾過分離及び乾燥により、下記化学式:
【化8】
で表わされるフェニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン[白色結晶、化合物(B'−4)]6.7gを得た。

【0044】
性状:橙色固体
1H−NMR(500MHz,CDCl,δppm):4.1(t,2H),4.5(t,2H),7.5(m,3H),7.9(d,2H),8.0(s,1H),8.1(d,2H),8.4(m,2H)
【0045】
<ゴム組成物の調製及び評価>
表1に示す配合内容のゴム組成物をバンバリーミキサーにて混練して得た。得られたゴム組成物に対して、下記の方法で、低発熱性及び未加硫粘度を評価した。結果を表1に示す。
【0046】
(1)低発熱性
上島製作所製スペクトロメーター(動的粘弾性測定試験機)を用い、周波数52Hz、初期歪10%、測定温度60℃、動歪1%で、加硫ゴムのtanδを測定し、比較例1のtanδの値を100として指数表示した。指数値が小さい程、tanδが低く、低発熱性に優れることを示す。
【0047】
(2)未加硫粘度
JIS K6300に準拠して、130℃にてムーニー粘度ML1+4(130℃)を測定し、比較例1の値を100として指数表示した。指数値が小さい程、ムーニー粘度、即ち、未加硫粘度が低く、作業性が良好であることを示す。
【0048】
【表1】
【0049】
*1 RSS−1
*2 旭カーボン製、#80
*3 大内新興化学工業製、ノクラック6C
*4 大内新興化学工業製、ノクラック224
*5 三新化学工業製、サンセラーNS
【0050】
表1の結果から、ダイポーラー窒素を含む部分が共役構造を含む化合物(B)を配合することで、ゴム組成物の未加硫粘度を低く抑えつつ、低発熱性を向上させられることが分かる。