特許第5848170号(P5848170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5848170
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月27日
(54)【発明の名称】気相成長装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20160107BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20160107BHJP
【FI】
   H01L21/205
   C23C16/455
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-59078(P2012-59078)
(22)【出願日】2012年3月15日
(65)【公開番号】特開2013-197106(P2013-197106A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】特許業務法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂木 正彦
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 直史
【審査官】 正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−198939(JP,A)
【文献】 特開2007−324285(JP,A)
【文献】 特開2011−204945(JP,A)
【文献】 特開2009−218324(JP,A)
【文献】 特開2008−081829(JP,A)
【文献】 特開平6−232060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平に担持して前記基板を加熱及び回転するサセプタと、
前記サセプタの周囲に位置し、前記基板に水平に材料ガスを誘導するフロー補助板と、
不活性ガスまたは水素ガスを、前記基板の法線方向に対して傾けた方向から、前記基板の面積より広い面積で、前記基板に吹付ける押さえガス噴出器と、
前記フロー補助板上に沿って位置するノズル開口を有し且つ前記ノズル開口から前記基板の中心に向け前記基板上に沿って材料ガスの層流を水平に供給する材料ガスノズルと、を備え、
前記材料ガスノズルは前記フロー補助板に面した底板を有し、
前記底板は、前記フロー補助板に近い側に位置し且つ第1熱膨張率を有する第1金属板と、前記フロー補助板から遠い側に位置し且つ前記第1金属板に主面同士で接合され且つ前記第1熱膨張率より小なる第2熱膨張率を有する第2金属板と、からなるバイメタル板であることを特徴とする気相成長装置。
【請求項2】
前記バイメタル板は複数の分割バイメタル板からなり、前記分割バイメタル板は前記ノズル開口から前記管体の伸長方向へ順に並設されていることを特徴とする請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項3】
前記基板の周囲温度が上がるにつれて前記バイメタル板は湾曲して前記層流の前記基板内の中央部を厚くすることを特徴とする請求項1又は2に記載の気相成長装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体結晶のエピタキシャル成長を行う気相成長装置、特に2フローリアクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エピタキシャル成長を行う気相成長装置は、その反応容器内に導入された反応ガスである材料ガスが加熱された成長用の基板上で熱分解反応して、化合物やその固溶体結晶となり、その時、基板の結晶面方位を維持したまま同じ結晶面の単結晶層が該基板上に成長するようにした装置である。
【0003】
気相成長装置のうち、2フローリアクタ装置では、基板上の材料ガスの層流と押さえガス流の合成流が形成され、材料ガスは基板と平行に、且つ直上に流される(特許文献1、参照)。押さえガス流は材料ガス流に垂直又は垂直から40°程度まで傾けた角度で流される。その結果、材料ガスが基板に押し付けられるように流れる。この2つのガス流すなわち2フローの構成により、たとえば、GaN結晶成長において、材料ガスが基板上で高温1000℃程度になり約4.5倍の体積膨張が起こっても、基板上で安定的な材料ガス流が保たれる。
【0004】
たとえば、特許文献2に開示された2フローリアクタ装置は、反応容器内部に、図1に示すように、サセプタ14と、材料ガスノズル10aと、押さえガス噴出器12とを備え、さらに、第2のガス噴射管10bを備えている。材料ガスノズル10aは、回転するサセプタ14の上に搭載された基板15の上面に材料ガスを供給できるようにその先端が基板15の近傍まで延長している。材料ガスとしては、たとえば、水素(H2)、アンモニアガス(NH3)、トリメチルガリウム(TMGa)、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリメチルインジウム(TMIn)を適当な比率で混合した混合ガスが用いられる。また、押さえガス噴出器12は、基板15の上方に開口部がくるように設置されている。この押さえガス噴出器12は、材料ガスを含まない不活性なガスの単体ガスまたはそれらの混合ガスを基板15に対しで吹き付けている。第2のガス噴射管10bは、基板15の回転方向に対して逆方向に不活性ガスあるいは希釈された材料ガスを噴射できるように取り付けられ、その開口部は、基板15の中心点に対して材料ガスノズル10aの反対側にある。
【0005】
2フローリアクタ装置を用いた有機金属気相成長(MOCVD)法によれば、図2(a)に示すように、基板15上に沿って材料ガスを流した場合、ガスフローの速い流れの層と、この流れの層下の基板表面上に遅い流れの境界層(淀み層)が形成される。結晶成長において、材料ガス分子は速い流れの層から境界層へ供給され境界層の材料分解位置で原子が拡散して熱分解を伴って、基板上の結晶成長に至る。
【0006】
図2(b)に示すように、材料ガスはノズル近くの上流部の基板端で濃度は濃く、離れた下流部の基板中央では上流部で消費された分だけ濃度は薄くなる。よって、基板上のエピタキシャル層は、ノズル側前方の上流部の膜厚が厚く、ノズルから遠い後方の下流部の膜厚が薄くなる。
【0007】
図2(a)に示すように、加熱されているサセプタ14上では基板15の中央から全体が1000℃程度となり、サセプタ14の周縁に至るまでに200℃程度まで温度が下降する故に、基板形状に沿った円弧状の温度分布が基板15上に形成される。この円弧状の温度分布が膜厚分布の不均一の原因となる。
【0008】
ノズルから供給されたガスは、上流部より急速に加熱されて高温になる。そして、サセプタ温度と同等な温度になり飽和する。材料ガスは400℃〜450℃より急速に分解を開始する。かかる分解開始温度の分布線をガス材料分解熱等温度線と呼ぶことにする(なお、熱等温度線と省略する場合もある)。よって、材料ガス分解熱等温度線と基板の位置関係が膜厚分布を左右することになる。
【0009】
特許文献2の開示技術では、かかる膜厚分布の不均一の解決策として基板の半分よりも材料ノズルから遠い下流位置で第2のガス噴射管から第2のガスを噴射し材料ガスを希釈することで膜厚の均一分布を改善している。
【0010】
さらに、特許文献3では、かかる膜厚分布が不均一になる問題を改善するために、ガス導入口の吹出し幅を横幅方向の場所により変化させることにより、材料ガスの流れに対して垂直方向の膜厚分布を制御することを提案している。さらに、特許文献4では、チャンバの幅方向中央部側と基板周辺部側とでそれぞれ濃度を変化させた材料ガスを複数のインジェクタから吹き出させることを提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平04−284623
【特許文献2】特開2003−173981
【特許文献3】特開平05−198512
【特許文献4】特開平05−232060
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
一般に、窒化物発光半導体素子を形成するにあたり、最低限nGaN層、多重量子井戸(MQW)層、pGaN層の成膜が必要となる。各層はそれぞれ1000℃、700℃、900℃、異なる成長温度が必要となる。MQW層はInGaNを用いるため温度が高すぎるとInが取り込みにくくなるため低温となる。
【0013】
材料ガスは基板やセプタからの輻射熱に晒されるので、基板上に上昇気流が発生し成長温度が高いほど材料ガスの境界層が基板から離れてしまう。よって、効率よく材料ガスが基板に供給されない。そのため、成長温度が高い場合には押さえガス流量を多くし押さえの効果を強くし、成長温度が低い場合には押さえガス流量を前記よりも少なくするように、制御している。
【0014】
図3(a)は一般の2フローリアクタ装置における矩形開口の材料ガスノズル10aの正面図を示す。図3(b)は材料ガスノズル10aとサセプタ14と基板15との関係を示す概略上面図を示す。図3(c)は同場合の基板直径上の材料ガス流路における材料ガス濃度分布を説明するグラフを示す。たとえば2フローリアクタ装置において或る成長温度の場合、材料ガスノズル10aの長方形のノズル開口の縦幅Wzは幅方向で一定であり、押さえガスが強いため材料ガスは広く材料ガス流路の外周部へ大きく曲げられる故に、図3(c)に示すように材料ガスノズル10aによる層流では両側と中心部で平坦な材料ガス濃度分布となる。このような平坦な材料ガス濃度分布では膜厚分布は不均一となってしまう。
【0015】
しかし、窒化物発光半導体素子の成長のように各層毎に成長温度が異なる場合、押さえガス流量が成長温度により変わる故に、これにより生じる上昇気流も変化する。押さえガスもこの上昇気流に応じて変化させることになる。また、材料ガス濃度を層流中心で濃くし外周部を薄くしても、押さえガスによってある程度均一化されてまう。よって、成長温度の変化により押さえガスの作用は一定ではないため、材料ガス濃度分布は各層によって実質的に変化することになる。
【0016】
特許文献3に記載された技術思想を適用し、材料ガスノズルの中央幅を狭くし中心付近に材料ガスを多く流す構造を採用したことにより膜厚分布を向上させても、成長温度が変化した場合の上記材料ガスの濃度分布が一定とならない問題は解消されず、成膜温度に応じ材料ガスの境界層位置が変わるため均一な膜厚制御ができない。
【0017】
特許文献2に記載された技術でも第2のガス噴射口を含めガス供給設備を別に設けたり、特許文献4に記載された技術でも複数供給系統からのガス供給となり制御が複雑且つ多くのマスフローコントローラが必要となるため非常にコストがかかるという問題がある。
【0018】
そこで本発明は、簡単な構造で成長結晶層の膜厚均一性を向上させることができ、歩留まりが高い気相成長装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の気相成長装置は、基板を水平に担持して前記基板を加熱及び回転するサセプタと、前記サセプタの周囲に位置し、前記基板に水平に材料ガスを誘導するフロー補助板と、不活性ガスまたは水素ガスを、前記基板の法線方向に対して傾けた方向から、前記基板の面積より広い面積で、前記基板に吹付ける押さえガス噴出器と、前記フロー補助板上に沿って位置するノズル開口を有し且つ前記ノズル開口から前記基板の中心に向け前記基板上に沿って材料ガスの層流を水平に供給する材料ガスノズルと、を備え、前記材料ガスノズルは前記フロー補助板に面した底板を有し、前記底板は、前記フロー補助板に近い側に位置し且つ第1熱膨張率を有する第1金属板と、前記フロー補助板から遠い側に位置し且つ前記第1金属板に主面同士で接合され且つ前記第1熱膨張率より小なる第2熱膨張率を有する第2金属板と、からなるバイメタル板であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の構成によれば、輻射熱に応じバイメタル板の底板をフロー補助板へ接近せしめて材料ガスの境界層を基板付近に作り、さらに材料ガス層流の中間部を両端部分より厚くすると同時に押さえガスの押さえ効果によって、基板中央より周囲のガス濃度を低く維持したまま成長温度による材料ガス濃度分布の変化を制御できる。その結果、成長層の膜厚の均一性を向上させることができる。つまり本発明では、材料ガスノズル先端部にバイメタル板からなる底板を用い、温度の異なる各成長層に最適な材料ガス分布及び押さえガス流量を設定することにより、各層ごとに最適な膜厚分布を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】従来の2フローリアクタ装置の内部構造を示す概略断面図(図1(a))及び概略上面図(図1(b))である。
図2】従来の2フローリアクタ装置におけるサセプタ及び基板の概略断面図(図2(a))及び基板直径上の一方端から基板中央までの材料ガス濃度の変化を示すグラフ(図2(b))である。
図3】従来の2フローリアクタ装置の材料ガスノズルの正面図(図3(a))、同2フローリアクタ装置の材料ガスノズルとサセプタと基板との関係を示す概略上面図(図3(b))、同2フローリアクタ装置の成長工程場合の基板直径上の材料ガス流路における材料ガス濃度分布を説明するグラフ(図3(c))である。
図4】本発明の実施形態の2フローリアクタ装置の内部構造を示す材料ガスの層流に沿った概略断面図である。
図5】本発明の実施形態の2フローリアクタ装置の内部構造を示す材料ガスの層流に向かって眺めた概略断面図である。
図6】本発明の実施形態の2フローリアクタ装置のサセプタと材料ガスノズルの関係を示す概略上面図である。
図7】本発明の実施形態の2フローリアクタ装置のフロー補助板側から見た材料ガスノズルの概略斜視図である。
図8】本発明の実施形態の2フローリアクタ装置の材料ガスノズルの正面図(図8(a))、同2フローリアクタ装置の材料ガスノズルとサセプタと基板との関係を示す概略上面図(図8(b))、成長温度が高い場合の基板直径上の材料ガス流路における材料ガス濃度分布を説明するグラフ(図8(c))である。
図9】本発明の実施形態の2フローリアクタ装置の材料ガスノズルの正面図(図9(a))、同2フローリアクタ装置の材料ガスノズルとサセプタと基板との関係を示す概略上面図(図9(b))、成長温度が高い場合の基板直径上の材料ガス流路における材料ガス濃度分布を説明するグラフ(図9(c))である。
図10】本発明の実施形態の2フローリアクタ装置におけるサセプタ及び基板上の熱等温度線と膜厚分布を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明による一実施形態の装置について、図面を用いて説明する。
【0023】
図4は、横形の成長炉として構成された実施形態の2フローリアクタ装置の排気可能な反応容器の内部構造を示す材料ガスの層流に沿った概略断面図である。図5は同2フローリアクタ装置の材料ガスの層流に向かって眺めた概略断面図である。2フローリアクタ装置には、材料ガスの層流を水平に供給する材料ガスノズル11と、材料ガスの層流を押さえる押さえガスを供給する押さえガス噴出器12と、材料ガスを水平に誘導するフロー補助板13と、半導体の成長用の基板15が載置され回転するサセプタ14と、遮熱板16と、サセプタを輻射加熱する加熱器17と、水冷ジャケット20とが設けられている。
【0024】
図6は、2フローリアクタ装置の材料ガスノズル11とサセプタ14と基板15との関係を示す概略上面図である。サセプタ14は、円盤形状をしており中心に回転軸を持ち、10回/min〜30回/minで回転できる。サセプタ14はカーボン材料で作られ、加熱状態で反応炉内のガスを汚染せず、且つ雰囲気ガスにより反応しない材料、たとえば炭化珪素などでコーティングされている。また、フロー補助板13は、サセプタに取り付けられており一緒に、回転する。また、加熱器17は、サセプタ下面に取り付けられており、サセプタより若干大きくサセプタを均一な温度に1000℃以上に加熱できる。加熱器17の近傍には、熱電対が設置され、その値から温度制御してサセプタ14を設定温度に加熱する。
【0025】
遮熱板16は、加熱器17の外周に位置し、加熱器の輻射熱でノズル11が加熱されないように遮断する。なお、遮熱板16の外周に水冷ジャケット20が設けると更に断熱性は向上する。また、水冷ジャケット20の上端はフロー補助板13の直下まで延長されている。但し、フロー補助板13の回転を妨げないように僅かな隙間を設けてある。
【0026】
基板15はサセプタ14上に共に同一平面となるように水平に載置される。
【0027】
押さえガス噴出器12は基板中央部上面に設置され基板14に対し垂直又は数度で材料ガスの下流部方向に傾斜した状態すなわちやや斜めの角度θ(0°≦θ<40°)で流すように設置されている。押さえガス噴出器12からの押さえガス流(フロー)としては、基板15を覆う有効面積でH2又はN2(窒素)のガスを吹付ける。押さえガス流量は、1000℃で成長する場合の流量は10L/min〜40L/minを流す。800℃で成長する場合は5L/min〜30L/minを流す。押さえガスには材料ガスは含まれない。
【0028】
材料ガスノズル11はフロー補助板13に近い側に位置する水平な底板11Uと底板11Uの両端を固着するノズル本体11Tとからなる管体である。材料ガスノズル11は、サセプタ上基板に対し平行又は数度傾斜した状態で、基板15から先端開口11oが距離5mm〜15mm以内になるように設置され、基板上に材料ガスを層流として噴射する。ここで、材料ガスには、窒素(N2)、H2、NH3、n型ドーパントガス(モノシランガス(SiH4)、ジシランガス(Si26))、有機金属ガス(トリメチルガリウム(TMGa)、TEGa(トリエチルガリウム)、TMAl(トリメチルアルミニウム)、TMIn(トリメチルインジウム)、Cp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム))が挙げられる。実施形態においては、常温時の材料ガスノズル11の長方形の開口11oの水平方向の横幅Wy及び鉛直方向の縦幅Wzはそれぞれたとえば70mm及び3mmである。
【0029】
図7は、フロー補助板13側から見た材料ガスノズル11の概略斜視図である。
【0030】
実施形態の材料ガスノズル11では、その底板11Uをバイメタル板として、加熱器17からの幅射熱(成長温度)に応じてノズル先端形状を変化させてフロー補助板13に近づける。底板11Uは、フロー補助板13に近い側に位置する第1金属板BM1と第2金属板BM2と接合されてなるバイメタル板である。第2金属板BM2は第1金属板BM1の第1熱膨張率より小なる第2熱膨張率を有する。
【0031】
底板11Uのバイメタル板は熱膨張係数の大きい金属材料たとえばタングステン(熱膨張係数4.3×10-6)の第1金属板BM1と熱膨張係数の小さい金属材料たとえばインバー(熱膨張係数1.2×10-6)の第2金属板BM2を圧着接合して作製できる。ノズル本体11Tは第2金属板BM2の第2熱膨張率と第1金属板BM1の第1熱膨張率の間の熱膨張率を有するたとえば石英などから形成され得る。
【0032】
ガスノズル11は、ノズル外側に大きい熱膨張係数の第1金属板BM1が位置しノズル内側に小さい熱膨張係数の第2金属板BM2が位置するように、底板11Uをノズル本体11Tにビス止めや圧着溶接で固定して作製できる。ノズル本体11Tは底板11Uの両端を支持するとともに、ノズル本体11Tと底板11Uが流路と開口11oを画定する。よって底板11Uの両端間の中央部分が、輻射熱で膨張した場合、フロー補助板に近づくように湾曲するので、本例の場合はノズル開口11oの形状が中心縦幅で広く外周部両側で狭くすることができる。これにより、材料ガスノズル11は、層流中心部で材料ガス濃度を高く外周部に向かい低くなる層流を供給できる。
【0033】
材料ガスノズル11の先端が幅射熱を受けて変形するため、基板温度を1000℃で成長する場合、ノズル先端部が約150℃程度となるように、ノズル位置を調整することが望ましい。上記構造の場合1000℃で成長の場合、底板11Uの中心縦幅は常温に対し約lmmほど下に広がることになる。
【0034】
図7(a)に示すように、底板11Uがノズル本体11Tの下側の全てを覆うように一枚もののバイメタル板を用いてガスノズル11は構成できる。この場合ガスノズル11の後部の幅射熱は小さくなるため、底板11Uにかかる熱が小さくなる。この場合、第1金属板BM1には熱膨張係数の大きな材料を使用することが望ましい。
【0035】
図7(b)に示すように、ノズル底板11Uは先端部11Aと後端部11Bに分け敷き詰めて構成できる。これによれば、ノズル先端部と後方部では加熱器17からの輻射熱に違いがあり、先端部11Aが湾曲し易くなるので変形の時間応答性が向上する。
【0036】
図7(c)に示すように、ノズル底板11Uは複数、たとえば5枚の分割バイメタル板11A〜11Eに分け敷き詰めて構成できる。5枚の分割バイメタル板11A〜11Eはノズル開口11oから管体の伸長方向へ順に並設されている。これによれば、上記の変形の時間応答性の向上と、分割板それぞれの湾曲率が異なるので基板に近づくに従い湾曲がおおきくなるノズル底板の形状が得られる。さらに、ノズル先端部と後方部では加熱器からの輻射熱に違いがあり、これによる温度分布は連続的なものなので、材料ガスノズルの奥行きに沿って開口縦幅も連続的なものになる。
【0037】
次に材料ガスノズル11の動作について説明する。
【0038】
図8(a)は成長温度が低い場合の2フローリアクタ装置の材料ガスノズル11の正面図である。図8(b)は同場合の材料ガスノズル11とサセプタ14と基板15との関係を示す概略上面図である。図8(c)は同場合の基板直径上の材料ガス流路における材料ガス濃度分布を説明するグラフである。尚、ここでは押さえガスによる材料ガス濃度分布に対する影響はないものとして記載している。成長温度が低い場合、材料ガスノズル11のノズル開口の縦幅は、輻射熱に応じて中心縦幅が広くなり(Wz1)、外周部にいくにつれて狭くなる。よって、材料ガスノズル11からの層流では両側より中心部から少し多く材料ガス(太い矢印)が基板15上中央へ供給される。実際、押さえガスにより材料ガスは外周部すなわち両側へ曲げられるけれども、材料ガス流路の横断方向の材料ガス濃度分布は中心が高く外側にいくに従い薄くなる。
【0039】
図9(a)は成長温度が高い場合の2フローリアクタ装置の材料ガスノズル11の正面図である。図9(b)は同場合の材料ガスノズル11とサセプタ14と基板15との関係を示す概略上面図である。図9(c)は同場合の基板直径上の材料ガス流路における材料ガス濃度分布を説明するグラフである。尚、ここでは押さえガスによる材料ガス濃度分布に対する影響はないものとして記載している。成長温度が高い場合、材料ガスノズル11のノズル開口の縦幅は、高い成長温度の場合より輻射熱に応じて中心縦幅が更に広くなり(Wz2)、外周部にいくにつれて狭くなる。よって、材料ガスノズル11からの層流では両側より中心部から更に多く材料ガス(太い矢印)が基板15上中央へ供給される。実際、押さえガスが強いため材料ガスはより外周部(材料ガス流路の)へより曲げられるけれども、材料ガス流路の横断方向の材料ガス濃度分布は中心が高く外側にいくに従い薄くなる。ただし、成長温度が高い場合は成長温度が低い場合に比べ上昇気流を抑えるため、押えガス流量を多くしている。そのため材料ガスを外周部へ曲げる作用も大きくなる。つまり、成長温度が高い場合は成長温度が低い場合に比べ、材料ガスノズルから中心部により材料ガスが供給されるが、より強い押えガスの作用により外周部へ広げられる。結果、材料ガスノズルと押えガスの作用は打ち消しあい、成長温度による材料ガス濃度分布の変化は抑制されることになる。
【0040】
本例の構造を用いることにより、成長温度に応じて材料ガスノズルの中心縦幅から多く材料ガスが供給され、外周部に行くに従い極端に材料ガス濃度が薄くなる。押さえガスにより材料ガスは連続的に中心から外側に向かい濃度変化をもたらすと共に成長温度に応じて材料ガスを外側に曲げる作用も大きくしている。よって、本来GaN層は凹状の膜厚分布となるが上記材料ガスノズルの効果と重なって均一な膜厚分布を得ることが可能となる。また、本実施形態においては、押さえガスを利用し、材料ガスフローにおいて基板15中心から両側外周部にかけて濃度分布を持たせることで、材料ガスの適正な濃度分布と材料ガスの効率的使用を達成している。
【0041】
次に材料ガスノズル11の効果について説明する。
【0042】
一般にGaN系エピタキシャル結晶成長は、図2(a)に示すように、材料分解位置が基板に近いほうが良質な結晶が成長する。これは、AlGaInP、AlGaAsなどが800℃程度で成長するのに対してGaN系では1050℃と高温で成長する故に、従来のMOCVD装置と同様な熱設計では材料分解が基板遠方の上流で開始され、材料の枯渇による成膜エリアが減少する問題や、基板上への不活性結晶種が飛来し結晶性が低下する問題が発生することを防止するためである。
【0043】
GaN結晶の結合エネルギーは高く、結晶の融点は2500℃以上である。そのため、たとえばTMGaとNH3の材料ガスが分解生成したGaN結晶種が、基板表面で結晶成長面の安定サイトに移動し結合する時間を長くするために、結晶成長温度を約1050℃と高くする。また、同理由により基板成長面以外の低温部で生成した不活性結晶種は、ただちにエネルギーを失うため結晶成長に寄与できない。又は、多結晶の核などになり結晶成長を阻害する。一方、TMGaなどの有機金属化合物の分解温度は約400℃〜450℃と低い。そのため、材料ガス分解熱等温度線が基板より離れていると、成長速度が遅くなったり、基板全面に結晶成長できなったり、結晶性が低下する。以上より、GaN系の結晶成長においては、材料ガスの分解熱等温度線をできる限り基板上流端に近づける必要がある。
【0044】
しかしながら、上記の図2及び図3に示す構成の場合、材料ガスフローの上流側の「材料ガス分解熱等温度線」は円弧状になるので、膜厚分布が凹状になる。
【0045】
かかる膜厚分布が凹状になる現象を説明する。たとえば、材料ガス流路上のGaN系結晶膜厚について、図10(A)に示すように、ノズル11から基板15の中心を通る材料ガス流路F1と、基板15中心からの第1半径位置を通る材料ガス流路F2と、基板15中心からの第1より遠い第2半径位置を通る材料ガス流路F3を考察してみる。ここで、円弧状のガス材料分解熱等温度線と流路F1、F2、F3との交点cp1、cp2、cp3からガス材料分解が始まるとする。
【0046】
まず、従来のノズル開口の幅は一定であって、基板が回転しない場合の材料ガス流路F1、F2、F3上の膜厚分布を図10(a)(b)(c)のグラフに示す。図10(a)(b)(c)の縦軸は膜厚を、横軸は層流に沿った基板直径位置を示す。図10(a)(b)(c)の縦軸においてt(cp1)は熱等温度線の流路F1の交点cp1下の膜厚を、t(cp2)は熱等温度線の流路F2の交点cp2下の膜厚を、t(cp3)は熱等温度線の流路F3の交点cp3下の膜厚を、示す。図10(a)(b)(c)のそれぞれT1、T2、T3の膜厚分布は分解開始点である交点cp1、cp2、cp3から減少するように変化する。図10(A)に示す基板中心線CLを通り流路F1、F2、F3との交点CL1、CL2、CL3下の膜厚はそれぞれt(CL1)、t(CL2)、t(CL3)である。従って、基板が回転しない場合、材料ノズル11に近い側の流路の上流部の膜厚が厚く、下流部の膜厚が薄くなる。
【0047】
基板が回転する場合、上流側と下流側が回転毎に入替るので膜厚はフラットになると考えられるが、実際は、熱等温度線が円弧状になっているために、基板の中央よりも外周側のほうが膜厚は厚くなる。具体的に、図10(A)に示す基板中心線CLを通り流路F1、F2、F3との交点CL1、CL2、CL3下の膜厚は図10(d)の直交方向の膜厚分布のグラフに示すように、流路の基板両端側ほど厚くなる。図10(d)の縦軸は層流に直交する基板直径位置を、横軸は膜厚t(CL)を示す。かかるGaN層の凹状膜厚分布は中央部と周辺部で約10%程度の差異となる場合がある。この現象は、材料ガス流路F2、F3に示す材料ガス層流は基板直径の両端へ行くほど、基板エリアの中心線CL上では熱等温度線と近くなるため、材料ガスが使用されていない分、両端側が厚く堆積されるためである(t(CL1)<t(CL2)<t(CL3))。
【0048】
結果、熱等温度線が円弧状の場合、基板回転しても膜厚均一にならず凹状になる。さらに、材料ガスノズルから噴出されたガスは押さえガスにより基板外周への拡げられるため、一層、基板外周部での成長が促進され凹状の膜厚分布になる。
【0049】
上記の材料ガス分解熱等温度線より基板外周部に行くにつれ膜厚分布が厚くなるが、本実施形態によれば、材料ノズル間口の中心縦幅を広くし、外周にいくにつれて狭くすることにより、図10(e)に示すように、基板位置中心(CL1)から外周部(CL3)に行くにつれ材料ガス濃度が薄くすることを実現できる。これを利用して、膜厚分布と材料ガス濃度分布の関係が相殺され均一な面内膜厚分布が実現可能となる。このように、輻射熱に応じてノズル間口の中央の縦幅が外側の縦幅に対し20〜50%ほど広くなるように材料ガスノズルの設計を施すことにより、層流の最適な中心部のガス濃度が得られ、押さえガスにより連続的に中心から外周部へと濃度分布をもたらし均一な膜厚みを得ることが可能となる。
【0050】
従来構造では基板に対し材料ガスノズルの間口の縦及び横方向が一定の開口形状を用いる故に、基板周辺部でのガス濃度が高くなり、その結果、該周辺部の成長レートが上がり膜厚が厚くなる傾向があった。一方、本実施形態では図8及び図9に示すようにノズル開口の縦幅Wzは、輻射熱に応じて中心縦幅を広く外周部にいくにつれて狭くなる特性を有する。これにより、材料ガスノズルから供給されるガスは、従来に比べ材料ガスノズル中心部からより多くガスが供給され、基板外周部すなわち材料ガス流路の両側上はガス濃度が薄くなる。さらに押さえガスを用いることにより材料ガスを上下方向に流れるようにし、濃度分布は基板前方の上流から後方の下流側に行くに従って薄くなる現象に加え、基板中心から外周部すなわち材料ガス流路の両側に向かって連続的に濃度分布を持つようになる。また、押さえガスは成長温度が高い場合は低い場合に比べて流量を大きくしているので材料ガスが外側に曲げられる作用も大きくなり、ガスノズルの供給量変化と打ち消しあい成長温度による材料ガス濃度分布の変化は抑制される。よって従来では基板の材料ガス流路の両側の前方の上流部に高濃度のガスが供給されていたが、本実施形態を利用することにより、材料ガス流路の両側部のガス濃度が減り、基板前方の上流からから後方の下流側に向かいガス濃度が薄くなるような傾向となる。また材料ガス流路の両側では、ノズル間口厚は基板の外周部にいくに従い薄くなる形状を反映し、さらに押さえガスも加わりガス濃度も基板の中心から材料ガス流路の両側に向かって連続的に濃度分布を持つようになる。また、材料ガス濃度分布の温度による変化は抑制される。これらの結果から均一な膜厚の結晶成長が可能となる。
【0051】
本実施形態は、Si結晶などの他材料よりもGaN結晶の結合エネルギーはより高く、結晶の融点が高いため、上記の2フローリアクタ装置を用いた、TMGa、TEGa、TMAl、TMIn、Cp2MgとNH3、SiH4、Si26などを材料として成長する窒化物半導体の結晶成長に特に適している。
【0052】
また、本実施形態は、フロー断面の濃度分布を利用するので、フロー分割されガスの流れ方向が決まっているチャネル式ノズルよりも、ガスの流れを制限しないオープンフロー構造ノズルに対して有効の手段となる。
【0053】
さらに、実施形態において、材料ガス流量/材料ガスの流量比を変更することにより、異なる基板サイズにも対応が可能となる。押さえガス噴出器から放出される押さえガスは、噴出器の開口、スリットなど出口形状により流速は変化する。実際は、基板上の押さえガスが材料ガスを広げる形状に流速は関係するので、材料ガス流速を基準とした場合の押さえガス流量比Fhv(=押さえガス流速Y/材料ガス流速X)を規定する。材料ガス流速をX、基板上での押さえガス流速をYとすると、流量比はFhv=Y/Xで表される。流量比は材料ガス流速が速く押さえガスが材料ガスを横に曲げる効果に関係する。
【0054】
たとえば、下記の実施例1の場合では、材料ガス流速Xが約2.2m/secで、押さえガス流速Yが約0.086m/secであって、つまり、流量比Fhv=Y/X=0.04となる。流量比の範囲は、0.25≦Fhv≦15、好ましくは1≦Fhv≦8の範囲内で設定される。材料ガス流量/材料ガスの流量比を満たす条件に各流速を合わせることにより均一な膜の成長が可能となる。
【実施例1】
【0055】
上記実施形態の2フローリアクタ装置によりGaN結晶を成長させた。
(基板)
成長用の基板には、2インチφのc面サファイア単結晶基板、厚みt=0.43mm、面方位が<10−10>方向へ0.05°傾いた0.05°オフ基板、いわゆる(0001)0.05°off to<10−10>基板を用いた。
(成長)
基板熱処理工程として、材料ガスノズルからH2を10L/min流し、押さえガスとしてH2とN2とを1:1の混合比で30L/min流し、1000℃で10分熱処理した。
【0056】
緩衝層の形成工程として、材料ガスノズルからTMGaを20μmol/min、NH3を2L/min、そして総量が10L/minになるようにH2を加えて流した。押さえガスにはH2とN2とを1:1の混合比で30L/min流し、成長温度約550℃で10分成長し、低温GaN層を成長した。
【0057】
緩衝層の熱処理工程として、材料ガスノズルからH2を10L/min流し、押さえガスとしてH2とN2とを1:1の混合比で30L/min流し、1050℃で10分熱処理し低温GaN層を熱処理した。
【0058】
次に、高温GaN層の形成工程として、上記のバイメタル板の底板を有する材料ガスノズルよりTMGaを40μmol/minとNH3を4L/min、総量が10L/minになるようにH2を加えて流した。押さえガスにはH2とN2とを1:1の混合比で30L/min流した。成長温度約1050℃で1時間成長し、膜厚約3μmのGaNエピタキシャル結晶層を得た。n型GaN層にするには、SiH4又はSi26をSi不純物密度が5×1018(個/cm3)程度になるように添加することができる。
【実施例2】
【0059】
上記実施形態の2フローリアクタ装置により半導体層を成長させてMQW構造発光素子すなわち窒化物系半導体発光装置を作製した。
【0060】
緩衝層の熱処理まで、実施例1に同じ故に、説明を省略する。
【0061】
n型GaN層の形成工程として、n型GaN層の厚みを4.5μmとし、n型GaN層にするためにSiH4をSi不純物密度が6×1018(個/cm3)程度になるように添加した以外は、実施例1のGaN層の形成工程に同一プロセスであった。
【0062】
次に、発光層の形成工程を次のように行った。実施例1と同一の材料ガスノズルからNH3を4L/min、総量が10L/minになるようにN2を加えて流しながら成長温度約800℃まで降下させた。押さえガスにはN2を30L/min流した。温度に達したら、まず、GaNのバリア層を成長するために材料ガスノズルよりTEGaを5.5μmol/minとNH3を4L/min、総量が10L/minになるようにN2を加えて流した。そのときの押さえガスにはN2を30L/min流した。約3分間成長し18nmの結晶層を得た。
【0063】
次に、バリア層形成後、InGaN井戸層を成長するために材料ガスノズルよりTEGaを5.5μmol/min、TMInを6.5μmol/minとNH3を4L/min、総量が10L/minになるようにN2を加えて流した。そのときの押さえガスにはN2を30L/min流した。約25秒間成長し、3nmの結晶層を得た。
【0064】
これらバリア層及び井戸層の形成工程を6周期繰り返し成長し、発光層として、MQW構造を形成した。そして、キャップ層としてGaNバリア層を成長させた。
【0065】
次に、ブロック層の形成工程として、材料ガスノズルからNH3を4L/min、総量が10L/minになるようにH2を加えて流しながら成長温度約950℃まで昇温させた。温度安定後TMGaを3.5μmol/min、TMAlを0.4μmol/min、NH3を4L/min、総量が10L/minになるようにH2を加えて流した。そのときの押さえガスにはN2を30L/min流した。約5分間成長を行い、20nmの結晶層を得た。
【0066】
次に、p型GaN層の形成工程として、材料ガスノズルよりTMGaを12μmol/minとNH3を4L/min、総量が10L/minになるようにH2を加えて流した。押さえガスにはH2とN2とを1:1の混合比で30L/min流した。成長温度約950℃で15分間成長し、膜厚約0.15μmのGaNエピタキシャル結晶層を得た。p型GaN層にするにはCp2MgをMg不純物密度が5×1019(個/cm3)程度になるように添加すれば良い。
【0067】
(比較例1)
基板は実施例1と同じものを用い、バイメタル板含をまない同形状の材料ガスノズルを備えた従来の2フローリアクタ装置でGaN結晶を成長させた。
【0068】
(比較例2)
基板は実施例1と同じものを用い、バイメタル板含をまない同形状の材料ガスノズルを備えた従来の2フローリアクタ装置でGaN結晶を成長させた。
【0069】
(実施結果:膜厚分布比較)
比較例1と実施例1で得たGaN層の膜厚分布の比較を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
実施例1は、膜厚中心値3.51μmにおいて周囲値3.612μm、差異3.2%であり均一性は非常に高い。面積換算ならば更に分布は狭くなる。
【0072】
他方、比較例1では膜厚中心値3.18μmにおいて周囲値3.77μm、差異18.5%と周囲が厚くなっている。
【0073】
(実施結果:発光波長分布比較)
膜周囲部2mmを除き測定した比較例2と実施例2で得た発光素子の発光波長分布の比較を表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
実施例2の素子の発光波長バラツキは標準偏差1.933nmと非常に良好な値を示した。
【0076】
他方、比較例2では平均波長440nmに対して標準偏差6.8nmと大きなバラツキを示した。波長は基板中心部で短く、同心円状に周囲方向に長波長化した。
【符号の説明】
【0077】
11 材料ガスノズル
12 押さえガス噴出器
13 フロー補助板
14 サセプタ
15 基板
16 遮熱板
17 加熱器
20 水冷ジャケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10