特許第5848227号(P5848227)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5848227
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月27日
(54)【発明の名称】食肉加工品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 13/00 20160101AFI20160107BHJP
   A23B 4/00 20060101ALI20160107BHJP
   A23B 4/044 20060101ALI20160107BHJP
【FI】
   A23L1/31 A
   A23B4/00 H
   A23B4/04 503Z
【請求項の数】4
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2012-240491(P2012-240491)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-87320(P2014-87320A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年3月11日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 1. 発行日 平成24年7月4日 2. 刊行物 岐阜新聞 平成24年7月4日付朝刊 3. 公開者 岐阜新聞社(岐阜県岐阜市今小町10) 4. 公開された発明の内容「新製法は、『飛騨旨豚(うまぶた)』を燻煙(くんえん)した後、沸騰した緑茶に漬けて洗浄する『緑茶浸漬製法』。通常は2週間が限界の賞味期限を最大の3週間以上にのばすことができる。」との記事が公開され、同時に展示販売が開始された。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501392822
【氏名又は名称】有限会社新世紀工房
(74)【代理人】
【識別番号】110000615
【氏名又は名称】特許業務法人 Vesta国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆治
【審査官】 伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−065092(JP,A)
【文献】 特開2004−065091(JP,A)
【文献】 特開2012−080789(JP,A)
【文献】 特開平09−098740(JP,A)
【文献】 特開昭60−232075(JP,A)
【文献】 特開平02−092258(JP,A)
【文献】 特開平09−275886(JP,A)
【文献】 特開2000−245336(JP,A)
【文献】 特開2002−112750(JP,A)
【文献】 特開2003−334035(JP,A)
【文献】 特開2011−120542(JP,A)
【文献】 ぎふチャン、パーソナリティ竹村嘉美,7月12日(木)、19日(木),URL,http://www.zf-web.com/personality/yoshimi_takemura/takemura_120712-19.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 1/00−1/48
A23B 4/00−4/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯100重量部に対して茶葉1重量部以上、10重量部以下の割合の範囲内で茶葉から抽出した茶成分含有液を1℃〜5℃の範囲内の温度とし、そこに塩漬けし、脱塩した食肉を浸漬する茶成分浸透工程と、
前記茶成分含有液の前記茶成分が浸透及び付着した前記食肉を包装してなる包装工程と、
前記包装工程で包装した前記食肉の中心部の温度を63℃で30分以上維持または75℃を1分間以上維持する加熱またはこれと同等以上の効力を有する加熱により微生物の増殖を抑制すると共に食肉の弾力性を向上させる加熱工程と
を具備することを特徴とする食肉加工品の製造方法。
【請求項2】
塩漬けし、脱塩した食肉を燻煙する燻煙工程と、
湯100重量部に対して茶葉1重量部以上、10重量部以下の割合の範囲内で茶葉から抽出した茶成分含有液を1℃〜5℃の範囲内の温度とし、そこに前記燻煙した前記食肉を浸漬する茶成分浸透工程と、
前記茶成分含有液の前記茶成分が浸透及び付着した前記食肉を包装してなる包装工程と、
前記包装工程で包装した前記食肉の中心部の温度を63℃で30分以上維持または75℃を1分間以上維持する加熱またはこれと同等以上の効力を有する加熱により微生物の増殖を抑制すると共に食肉の弾力性を向上させる加熱工程と
を具備することを特徴とする食肉加工品の製造方法。
【請求項3】
湯100重量部に対して茶葉1重量部以上、10重量部以下の割合の範囲内で茶葉から抽出した茶成分含有液を1℃〜5℃の範囲内の温度とし、そこに塩漬けし、脱塩した食肉を浸漬させる第1の茶成分浸透工程と、
前記茶成分含有液に浸漬させた前記食肉を脱水、乾燥させた後、前記食肉の中心部の温度を63℃で30分以上維持または75℃を1分間以上維持する加熱またはこれと同等以上の効力を有する加熱により微生物の増殖を抑制すると共に食肉の弾力性を向上させる第1の加熱工程と、
前記加熱した前記食肉を前記茶成分含有液に浸漬させる第2の茶成分浸透工程と、
前記茶成分含有液の前記茶成分が浸透及び付着した前記食肉を包装してなる包装工程と、
前記包装工程で包装した前記食肉を加熱する第2の加熱工程と
を具備することを特徴とする食肉加工品の製造方法。
【請求項4】
湯100重量部に対して茶葉1重量部以上、10重量部以下の割合の範囲内で茶葉から抽出した茶成分含有液を1℃〜5℃の範囲内の温度とし、そこに塩漬けし、脱塩した食肉を浸漬させる第1の茶成分浸透工程と、
前記茶成分含有液に浸漬させた前記食肉を脱水、乾燥させた後、燻煙する燻煙工程と、
前記燻煙工程で燻煙した前記食肉を中心部の温度を63℃で30分以上維持または75℃を1分間以上維持する加熱またはこれと同等以上の効力を有する加熱により微生物の増殖を抑制すると共に食肉の弾力性を向上させる第1の加熱工程と、
前記第1の加熱工程で加熱した前記食肉を前記茶成分含有液に浸漬させる第2の茶成分浸透工程と、
前記茶成分含有液の前記茶成分が浸透及び付着した前記食肉を包装してなる包装工程と、
前記包装工程で包装した前記食肉を加熱する第2の加熱工程と
を具備することを特徴とする食肉加工品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、市場に流通させるハム、ソーセージ、ベーコン等の食肉加工品に関するもので、特に、微生物の増殖が抑制され保存性が高い食肉加工品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本人の食生活の洋風化の進展とも相俟って、今や、ハム、ベーコン、ソーセージ等の食肉を素材として製造された食肉加工品は、一般家庭での食事に欠かすことのできない食品となっている。従来の食肉加工品の一般的な製造技術によれば、保存性、結着性、硬さや弾力性等の食感、発色性等を向上させるために、硝酸塩や亜硝酸塩等の発色剤や、重合リン酸塩等の結着剤や、ソルビン酸等の防腐剤が使用されていることが多く、消費者の健康への影響が懸念されている。
【0003】
特に、食肉の発色を促し、かつ、ボツリヌス菌等の微生物の増殖を効果的に抑制する亜硝酸ナトリウム等の亜硝酸塩や硝酸塩は必須的に含まれており、中でも亜硝酸ナトリウムは、肉のタンパク質と反応して非常に毒性の高い発癌性物質のニトロソアミンを作りだしたり、モトヘモグロビン血症を起こすと言われており、更には、変異原性が強い防腐剤のソルビン酸と反応して発癌性物質のニチルニトロル酸を生成したりするとされている。また、結着剤であるリン酸塩は、保水性及び結着性を高めることができるものの、カルシウムと結合して骨の形成を妨げるとされている。
【0004】
一方、これら添加物を削減する場合には、とりわけ食品の保存性に大きな影響を与える微生物群の増殖の抑制が問題となる。
そこで、本発明者らは、お菓子等の食品の酸化防止に使用されているカテキン等を有し、近年その様々な機能性が見出されている茶葉に注目した。
この茶葉から抽出されたカテキンをソーセージに利用したものとして、特許文献1にカテキンをソーセージ原料に混合させてなるレバーソーセージの技術が記載されている。また、特許文献2には、茶抽出物を利用して味付けしたハム・ソーセージの技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−32955号公報
【特許文献2】特開平10−108655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1では、不快なレバー臭を解消するものとしてカテキンが使用されており、特許文献2では、核酸旨味成分を分解する5’ヌクレオチダーゼに対する強い阻害性がある茶抽出物を核酸旨味成分の保持として利用しており、何れの文献もそれ以外の作用については記載がないし、示唆さえもされていない。
【0007】
そこで、本発明はかかる不具合を解決すべくなされたものであって、微生物の増殖が抑制され保存性が高い食肉加工品の製造方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の食肉加工品の製造方法における食肉加工品は、塩漬けした食肉を脱塩し、茶葉から抽出した茶成分含有液に前記脱塩した前記食肉を浸漬することにより、前記茶成分によって前記食肉から脱水し、前記茶成分に浸漬した前記食肉を加熱し、前記食肉に前記茶成分を浸透及び付着させたまま前記食肉を包装してなるものである。即ち、食肉に茶葉から抽出した茶成分含有液に含まれる茶成分が浸透、付着されてなるものである。
ここで、「食肉」とは、通常、食用に供することができる肉類であればよく、例えば、豚肉、牛肉、馬肉、羊肉、山羊肉、家きん肉、家兎肉及びこれらの混合肉が利用でき、使用される肉の部位も、バラ肉、ロース肉、肩肉、もも肉及びこれらの混合肉等、特に限定されるものではない。
【0009】
「茶葉」としては、煎茶、茎茶、芽茶、玄米茶、ほうじ茶、粉茶、抹茶、紅茶、番茶、緑茶、玉露、中国茶(烏龍茶、プーアル茶等)等が使用されるが、特に、カテキン等のタンニン類を含有する茶葉であればこれらに限らず、その品種も特に問われるものではなく、1種に限らず、2種以上が併用されていてもよい。
また、「茶成分」とは、茶葉や茶茎に含まれる特定の成分を示すものではなく、茶葉や茶茎に含まれる成分、例えば、主に、カテキン(タンニン)、ビタミンC、テアニン、カフェインを総称して示すものであり、特定の成分を特定するものではない。
【0010】
ここで、「食肉に茶成分」が「浸透、付着」とは、食肉においては、通常、その表面に細菌・カビ等の微生物が多く付着していることから、主に、茶葉の成分が食肉の表面に付着した後、食肉に茶成分が付着した状態よりも更に進んで、その表層に浸透している状態であれば、茶成分の抗菌・殺菌作用によって食肉に付着する微生物の増殖を効果的に抑制することができる。即ち、「食肉に茶成分」が「浸透、付着」とは、食肉の少なくとも表層に茶成分が浸透している状態であればよく、必ずしも食肉全体に茶成分が浸透している必要はなく、その浸透度合いが問われるものではない。
【0011】
なお、例えば、塩漬けし、脱塩した食肉等の特定処理された食肉を90℃以上の湯に茶葉を浸漬して得た茶成分含有液やその濃縮液等に浸漬させたり、塩漬けし脱塩した食肉や燻煙した食肉等の特定処理された食肉に対して茶葉や濃縮液を乾燥させた乾燥濃縮粉等を直接付着させたり、塩漬けし、脱塩した食肉等の特定処理された食肉に対して90℃以上の湯に茶葉を浸漬して得た茶成分含有液やその濃縮液等を注入したり吹き付けたり、特定処理された食肉に対して茶成分含有液やその濃縮液を凍結して氷にしたものを漬けたりすることによって食肉に茶成分が「浸透、付着」してなるものとすることができる。
【0012】
また、「食肉加工品」とは、畜肉を原料肉として調製したハム、ソーセージ、ベーコン等で、例えば、ロースハム、ボンレスハム、ショルダーハム、骨付ハム等のハムや、ボロニアソーセージ、フランクフルトソーセージ、ウインナーソーセージ等のソーセージや、ロースベーコン、ショルダーベーコン、ミドルベーコン、サイドベーコン等のベーコン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
ここでいう「加熱」は、殺菌のために、また、肉のタンパク質を変性凝固させて弾力性を向上させるために行うものであり、通常、中心部の温度を 63℃で30分以上維持または75℃を1分間以上維持する加熱方法、またはこれと同等以上の効力を有する方法で加熱され、例えば、温乾燥による加熱、蒸沸・煮沸による加熱等が挙げられる。
【0014】
「茶成分含有液」とは、90℃〜100℃近くの温度に沸騰させた熱水等の湯に茶葉や茶茎を所定時間浸漬することによってカテキン等の茶成分が抽出されて茶成分を含有する溶液またはその濃縮液である。好ましくは、短時間で茶成分が抽出される沸騰した湯で茶葉を煮出したものである。
また、「食肉を茶成分含有液に浸漬」とは、茶茶成分含有液に対して食肉を浸し茶成分と食肉を接触させることを意味する。
【0015】
そして、「脱水」、「乾燥」は、燻煙の煙が食肉に均等に付着するように、または微生物の増殖を抑制するために燻煙の前に食肉の主に表層の水分を除去することであり、脱水シート等による脱水のみでもよいし、加熱、風乾等による乾燥のみでもよいし、脱水及び乾燥の両方を行ってもよい。
更に、前記食肉を茶成分含有液に浸漬した直後に、当該茶成分含有液が付着したままの食肉を包装してなるものであり、食肉に付着した茶成分含有液が洗い流されたり除去されたりすることなく、食肉に茶成分含有液が付着されたままの状態で包装されたものである。なお、より好ましくは、前記燻煙した食肉を茶成分含有液に浸漬して、当該食肉に茶成分含有液が付着されたまま真空包装されてなるものである。
【0016】
ここで、「燻煙」とは、サクラ、ブナ、クルミ、カシ、シラカバ、ナラ、ヒッコリー等の堅木のチップや大鋸屑等の燻煙材を燻らせ、発生する揮発性成分を製品に付着させることであり、ハム、ソーセージ、ベーコン等の食肉加工品の場合、30℃〜80℃の煙で燻す温燻法が一般的である。
【0017】
この食肉加工品の製造方法の前記食肉を浸漬する茶成分含有液は、1℃〜5℃の範囲内としたものである。また、前記茶成分含有液は、前記湯100重量部に対して茶葉1重量部以上、10重量部以下の割合の範囲内で得たものである。
【0018】
請求項1の発明の食肉加工品の製造方法は、茶葉から抽出した茶成分含有液に食肉を浸漬する茶成分浸透工程と、当該茶成分含有液の前記茶成分が浸透及び付着した前記食肉を包装してなる包装工程と、前記包装工程で包装した前記食肉を加熱する加熱工程とを具備するものである。
【0019】
また、「茶成分浸透工程」における「茶成分含有液」とは、90℃〜100℃に沸騰させた熱水等の湯に茶葉を所定時間浸漬することによってカテキン等の茶成分が抽出されて茶成分を含有する溶液またはその濃縮液である。
そして、「食肉を茶成分含有液に浸漬」とは、茶成分含有液に対して食肉を浸し茶成分と食肉を接触させることを意味する。
【0020】
茶成分浸透工程において「食肉に茶成分を浸透させる」その方法としては、例えば、食肉を湯に茶葉を浸漬して得た茶成分含有液やその濃縮液等に浸漬させたり、食肉に直接茶葉や濃縮液を乾燥させた乾燥濃縮粉末等を付着させたり、食肉に対して湯に茶葉を浸漬して得た茶成分含有液やその濃縮液等を注入したり吹き付けたり、食肉に対して茶成分含有液やその濃縮液を凍結して氷にしたものを漬けたりする等が挙げられる。中でも、湯に茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に食肉を浸漬させることによって、短時間、かつ、簡単な作業で食肉に茶成分を容易に浸透させることができることから、食肉に茶成分を浸透させるには、茶成分含有液に食肉を浸漬させるのが好ましい。
【0021】
加えて、「食肉に茶成分を浸透させる」とは、食肉においては、通常、その表面に細菌・カビ等の微生物が多く付着していることから、主に、茶葉の成分が食肉の表面に付着した後、食肉に茶成分が付着した状態よりも更に進んで、その表層に浸透した状態であれば、茶成分の抗菌・殺菌作用によって食肉に付着する微生物の増殖を効果的に抑制することができる。即ち、「食肉に茶成分を浸透させる」とは、食肉の少なくとも表層に茶成分を浸透させればよく、必ずしも食肉全体に茶成分を浸透させる必要はなく、その浸透度合いが問わるものではない。
【0022】
ここでいう加熱工程における「加熱」は、殺菌のために、また、肉のタンパク質を変性凝固させて弾力性を向上させるために行うものであり、通常、中心部の温度を 63℃で30分以上または75℃を1分間以上維持する加熱方法、またはこれと同等以上の効力を有する方法で加熱され、例えば、温乾燥による加熱、蒸沸・煮沸による加熱等を行うことができる。
【0023】
茶成分含有液が付着されたままの食肉を包装する包装工程とは、食肉に付着した茶成分含有液が洗い流されたり除去されたりすることなく、包装工程において食肉に茶成分含有液が付着されたままの状態で包装されるものである。なお、より好ましくは、包装工程において、茶成分含有液が付着されたままの食肉を真空包装するものである。
【0024】
請求項2の発明の食肉加工品の製造方法は、食肉を燻煙する燻煙工程と、茶葉から抽出した茶成分含有液に前記燻煙した前記食肉を浸漬する茶成分浸透工程と、当該茶成分含有液の前記茶成分が浸透及び付着した前記食肉を包装してなる包装工程と、前記包装工程で包装した前記食肉を加熱する加熱工程とを具備するものである。
【0025】
また、燻煙工程における「燻煙」とは、サクラ、ブナ、クルミ、カシ、シラカバ、ナラ、ヒッコリー等の堅木のチップや大鋸屑等の燻煙材を燻らせ、発生する揮発性成分を製品に付着させることであり、ハム、ソーセージ、ベーコン等の食肉加工品の場合、30℃〜80℃の煙で燻す温燻法が一般的である。
【0026】
請求項3の発明の食肉加工品の製造方法は、食肉を茶葉から抽出した茶成分含有液に浸漬させる第1の茶成分浸透工程と、前記茶成分含有液に浸漬させた前記食肉を脱水、乾燥させた後、加熱する第1の加熱工程と、前記加熱した前記食肉を茶葉から抽出した茶成分含有液に浸漬させる第2の茶成分浸透工程と、当該茶成分含有液の前記茶成分が浸透及び付着した前記食肉を包装してなる包装工程と、前記包装工程で包装した前記食肉を加熱する第2の加熱工程を具備するものである。
ここで、第1の茶成分浸透工程と第2の茶成分浸透工程、第1の加熱工程と第2の加熱工程は、実質的に同じ工程を繰り返すものである。
【0027】
請求項4の発明の食肉加工品の製造方法は、食肉を茶葉から抽出した茶成分含有液に浸漬させる第1の茶成分浸透工程と、前記茶成分含有液に浸漬させた前記食肉を脱水、乾燥させた後、燻煙する燻煙工程と、前記燻煙工程で燻煙した前記食肉を加熱する第1の加熱工程と、前記加熱した前記食肉を茶葉から抽出した茶成分含有液に浸漬させる第2の茶成分浸透工程と、当該茶成分含有液の前記茶成分が浸透及び付着した前記食肉を包装してなる包装工程と、前記包装工程で包装した前記食肉を加熱する第2の加熱工程とを具備するものである。
ここで、第1の茶成分浸透工程と第2の茶成分浸透工程、第1の加熱工程と第2の加熱工程は、実質的に同じ工程を繰り返すものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明者らは、実験を積み重ねた結果、茶葉から抽出した茶成分含有液の茶成分が食肉に付着する微生物に対して抗菌・殺菌作用を呈することを見出し、茶葉を湯に浸漬して得た茶成分含有液に対して、塩漬けし脱塩した食肉や、燻煙した食肉を浸漬等させ、食肉に茶成分を浸透、付着させることによって、食肉に付着する微生物の増殖を抑制することができ、保存性の高い食肉加工品を得ることができた。
即ち、このように茶葉を湯に浸漬して得た茶成分含有液に対して、塩漬けし、脱塩した食肉を浸漬等させることによって、食肉に茶成分が浸透されてなる本発明の食肉加工品は、微生物の増殖が抑制され、保存性の高いものが得られる。
【0029】
また、このように茶葉を湯に浸漬して得た茶成分含有液に対して、塩漬けし、脱塩した食肉を浸漬等させることによって、食肉に茶成分が浸透されてなる本発明の食肉加工品は、肉質が引き締まっていて、弾力性が良く旨味成分も多く好適な食感・風味を有する。
このようにして、茶葉から抽出した茶成分含有液の茶成分によって、微生物の増殖が抑制されて保存性が高い食肉加工品となる。
そして、茶成分含有液が付着されたままの食肉を包装することから、包装後においても茶成分による微生物増殖の抑制効果をより持続させることができ、前記包装した食肉を加熱することから、加熱によって殺菌効果の向上を図ることができ、微生物の増殖をより抑制することができる。
【0030】
本発明に係る食肉加工品の製造方法の前記脱塩した食肉を浸漬する茶成分含有液は、1℃〜5℃の範囲内としたものであるから、風味の低下を防止できると共に、微生物の増殖を抑制することができる。特に、低温であることでより肉質が引き締まって脱水効果が高まるため、微生物の増殖抑制効果を高めることができる。
本発明に係る食肉加工品の製造方法の前記脱塩した食肉を浸漬する茶成分含有液は、前記湯100重量部に対して茶葉1重量部以上、10重量部以下の割合の範囲内としたものであるから、前記湯100重量部に対して茶葉1重量部以上、10重量部以下の割合の範囲内で得た前記茶成分含有液は、所定の加工した食肉を浸漬させることで、風味が損なわれることなく、十分な微生物抑制効果が発揮される。
【0031】
即ち、茶成分含有液において湯100重量部に対して茶葉が1重量部未満であると、茶成分の量が小さすぎて十分に微生物を抑制できない恐れがあり、一方、湯100重量部に対して茶葉が10重量部を超えると、茶成分の渋みが強く食肉の風味を損ねたり色調が黒くなって外観を損ねたりする可能性がある。
したがって、この発明の食肉加工品の製造方法によれば、茶葉から抽出した茶成分含有液の茶成分によって、風味が損なわれることなく、確実に微生物の増殖が抑制されて保存性が高い食肉加工品となる。
【0032】
請求項1の発明に係る食肉加工品の製造方法は、茶葉から抽出した茶成分含有液に食肉を浸漬し、前記茶成分含有液の前記茶成分が浸透及び付着した前記食肉を包装し、前記包装した前記食肉を加熱するものである。
【0033】
したがって、請求項1の食肉加工品の製造方法によれば、茶成分浸透工程において、湯に茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に対して塩漬けし、脱塩した食肉を浸漬させる等によって脱塩した食肉に茶成分を浸透させることで、カテキン等の茶成分自体が有する抗菌・殺菌作用によって、更には、茶成分により肉質が引き締まって脱水効果が高まることによって、微生物の増殖を抑制することができる。また、茶成分によって肉質が引き締まることで、弾力性が良く、更に食肉中の旨味成分の流出が防止され好適な食感・風味を付与できる。特に、塩漬け後のタイミングで茶成分を浸透させた場合には塩を十分に抜くことができず、また肉の脂分の結着性が悪く、得られる食肉加工品において塩味が強く弾力性も低下して風味・食感が損なわれるのに対し、脱塩後のタイミングで茶成分を浸透させることで、弾力性等の好適な食感及び良好な風味を形成できる。
【0034】
請求項2の発明に係る食肉加工品の製造方法は、食肉を塩漬けし、前記塩漬けした前記食肉の脱塩を行い、前記脱塩した前記食肉を脱水乾燥させた後、燻煙する。茶葉から抽出した茶成分含有液に前記燻煙した前記食肉を浸漬し、前記茶成分含有液の前記茶成分が浸透及び付着した前記食肉を包装し、前記包装した前記食肉を加熱するものである。
【0035】
したがって、請求項2の食肉加工品の製造方法によれば、茶成分浸透工程において、湯に茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に対して塩漬けし、脱塩した食肉を浸漬させる等によって脱塩した食肉に茶成分を浸透させることで、カテキン等の茶成分自体が有する抗菌・殺菌作用によって、更には、茶成分により肉質が引き締まって脱水効果が高まることによって、微生物の増殖を抑制することができる。また、茶成分によって肉質が引き締まることで、弾力性が良く、更に食肉中の旨味成分の流出が防止され好適な食感・風味を付与できる。特に、塩漬け後のタイミングで茶成分を浸透させた場合には塩を十分に抜くことができず、また肉の脂分の結着性が悪く、得られる食肉加工品において塩味が強く弾力性も低下して風味・食感が損なわれるのに対し、脱塩後のタイミングで茶成分を浸透させることで、弾力性等の好適な食感及び良好な風味を形成できる。
加えて、湯に茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に対して燻煙させた食肉を浸漬させる等によって燻煙した食肉に茶成分を浸透させることで、カテキン等の茶成分自体が有する抗菌・殺菌効果によって微生物の増殖がより抑制されると共に、茶成分によってより肉質が引き締まり、より弾力性が良く、更に食肉中の旨味成分の流出が防止され好適な食感・風味が付与される。更には、茶成分によって燻煙で食肉の表面に付着したスモークやタール等の人の健康に好ましくない燻煙成分が除去される。
【0036】
請求項3の発明に係る食肉加工品の製造方法は、食肉を茶葉から抽出した茶成分含有液に浸漬させ、前記茶成分含有液に浸漬させた前記食肉を脱水、乾燥させた後、加熱し、その加熱した前記食肉を茶葉から抽出した茶成分含有液に浸漬させ、前記茶成分含有液の前記茶成分が浸透及び付着した前記食肉を包装し、前記包装した前記食肉を加熱するものである。
【0037】
したがって、第1の茶成分浸透工程において、湯に茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に対して塩漬けし、脱塩した食肉を浸漬し、脱塩した食肉に茶成分を浸透させることで、カテキン等の茶成分自体が有する抗菌・殺菌作用によって、更には、茶成分により肉質が引き締まって脱水効果が高まることによって、微生物の増殖を抑制できる。また、茶成分によって肉質が引き締まることで、弾力性が良く、更に食肉中の旨味成分の流出が防止され好適な食感・風味を付与できる。特に、塩漬け後のタイミングで茶成分を浸透させた場合には塩を十分に抜くことができず、また肉の脂分の結着性が悪く、得られる食肉加工品において塩味が強く弾力性も低下して風味・食感が損なわれるのに対し、脱塩後のタイミングで茶成分を浸透させることで、弾力性等の好適な食感や良好な風味を形成できる。
【0038】
加えて、第2の茶成分浸透工程において、湯に茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に対して燻煙させた食肉を浸漬させる等によって燻煙した食肉に茶成分を再び浸透させることで、カテキン等の茶成分自体が有する抗菌・殺菌効果によって微生物の増殖をより抑制できると共に、茶成分によってより肉質が引き締まり、より弾力性が良く、更に食肉中の旨味成分の流出が防止され好適な食感・風味を付与できる。更には、茶成分によって燻煙で食肉の表面に付着したスモークやタール等の人の健康に好ましくない燻煙成分を除去できる。
このようにして、茶葉から抽出した茶成分含有液の茶成分によって、確実に微生物の増殖が抑制されて保存性が高い食肉加工品の製造方法となる。
【0039】
請求項4の発明に係る食肉加工品の製造方法は、食肉を塩漬けし、前記塩漬けした前記食肉の脱塩を行い、前記脱塩した前記食肉を茶葉から抽出した茶成分含有液に浸漬させ、前記茶成分含有液に浸漬させた前記食肉を脱水、乾燥させた後、燻煙する。前記燻煙した前記食肉を加熱し、前記加熱した前記食肉を茶葉から抽出した茶成分含有液に浸漬させ、前記茶成分含有液の前記茶成分が浸透及び付着した前記食肉を包装し、前記包装した前記食肉を加熱するものである。
【0040】
したがって、第1の茶成分浸透工程において、湯に茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に対して塩漬けし、脱塩した食肉を浸漬し、脱塩した食肉に茶成分を浸透させることで、カテキン等の茶成分自体が有する抗菌・殺菌作用によって、更には、茶成分により肉質が引き締まって脱水効果が高まることによって、微生物の増殖を抑制できる。また、茶成分によって肉質が引き締まることで、弾力性が良く、更に食肉中の旨味成分の流出が防止され好適な食感・風味を付与できる。特に、塩漬け後のタイミングで茶成分を浸透させた場合には塩を十分に抜くことができず、また、肉の脂分の結着性が悪く、得られる食肉加工品において塩味が強く弾力性も低下して風味・食感が損なわれるのに対し、脱塩後のタイミングで茶成分を浸透させることで、弾力性等の好適な食感や良好な風味を形成できる。
【0041】
加えて、第2の茶成分浸透工程において、湯に茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に対して燻煙させた食肉を浸漬させる等によって燻煙した食肉に茶成分を再び浸透させることで、カテキン等の茶成分自体が有する抗菌・殺菌効果によって微生物の増殖をより抑制できると共に、茶成分によってより肉質が引き締まり、より弾力性が良く、更に食肉中の旨味成分の流出が防止され好適な食感・風味を付与できる。更には、茶成分によって燻煙で食肉の表面に付着したスモークやタール等の人の健康に好ましくない燻煙成分を除去できる。
【0042】
このようにして、茶葉から抽出した茶成分含有液の茶成分によって、確実に微生物の増殖が抑制されて保存性が高い食肉加工品の製造方法となる。
加えて、湯に茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に対して燻煙させた食肉を浸漬させる等によって燻煙した食肉に茶成分を再び浸透させることで、カテキン等の茶成分自体が有する抗菌・殺菌効果によって微生物の増殖がより抑制されると共に、茶成分によってより肉質が引き締まり、より弾力性が良く、更に食肉中の旨味成分の流出が防止され好適な食感・風味が付与される。更には、茶成分によって燻煙で食肉の表面に付着したスモークやタール等の人の健康に好ましくない燻煙成分が除去される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は本発明の実施の形態1に係る食肉加工品としての燻製ハムの製造工程を示すフローチャートである。
図2図2は本発明の実施の形態2に係る食肉加工品としての汎用ハムの製造工程を示すフローチャートである。
図3図3は本発明の実施の形態3に係る食肉加工品としての燻製ソーセージの製造工程を示すフローチャートである。
図4図4は本発明の実施の形態4に係る食肉加工品としての汎用ソーセージの製造工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態において、図示の同一記号及び同一符号は、同一または相当する機能部分であるから、ここではその重複する説明を省略する。
[実施の形態1]
まず、本発明の実施の形態1に係る食肉加工品について、図1を参照して説明する。
本発明の実施の形態1は、本発明の食肉加工品を燻製ハムに適用した場合を示すものである。
【0045】
本実施の形態1に係る食肉加工品としての燻製ハムの製造においては、豚肉を原料肉とし、図1のフローチャートに示されるように、まず、切断工程にて、原料肉である豚肉の切断が行われる(ステップS1)。
この切断工程においては、原料肉の骨、皮、脂肪、筋等が切り落とされて適当に除去され、適度な大きさに切断され形が整えられる。因みに、凍結状態で流通される原料肉においては、通常は、この切断工程後に、空気解凍するか、或いは10℃未満の冷水(流水)を用いて解凍される。
【0046】
続いて、塩漬工程にて、切断した食肉の塩漬けが行われる(ステップS2)。
ここで「塩漬け」とは、肉を食塩に一定期間漬け込むことであり、塩漬けの方法としては、例えば、原料肉表面に直接塩を散布したり、混ぜ込んだり、すり込んだり乾塩漬法や、食塩水に肉を浸して漬け込んだり、食塩水を肉に注入したりする湿塩漬法等があるが、その態様は特に問われるものではない。
また、「脱塩」とは、肉の表層部分に付着している過剰な塩分を抜く塩抜きのことであり、通常、流水で行われるが、溜め水で行うことも可能である。
【0047】
ここで、塩漬工程における「塩漬け」は、肉を食塩に一定期間漬け込むことであり、塩漬けの方法としては、例えば、原料肉表面に直接塩を散布したり、混ぜ込んだり、すり込んだり乾塩漬法や、食塩水に肉を浸して漬け込んだり、食塩水を肉に注入したりする湿塩漬法等があるが、その態様は特に問われるものではない。
また、脱塩工程における「脱塩」とは、肉の表層部分に付着している過剰な塩分を抜く塩抜きのことであり、通常、流水で行われるが、溜め水で行うことも可能である。
【0048】
この塩漬工程においては、食塩をそのまま食肉に散布したり、擦り込んだりする方法、食塩水に原料肉を浸漬させる方法、食塩水を原料肉に注入する方法等によって、塩漬けが行われる。また、原料肉への塩漬けを均一に施すために、ロータリー式マッサージャー等の機器を用いて、真空下で機械的にマッサージ処理やタンブリングを併用したりすることも可能である。
【0049】
このときの食塩量は、微生物の増殖を抑制して保存性を高め、かつ、好適な風味を形成する観点から、食肉100重量部に対して、約1〜約5重量部が好ましく、より好ましくは、約2〜約4重量部である。
そして、通常、食肉への食塩の浸透・分散を促し、微生物繁殖を抑制するために冷蔵庫内にて塩漬け状態で数日間保管される。
この塩漬処理を施すことで、食肉の脱水作用を高め微生物の増殖を抑制すると共に、肉組織中の色素タンパク質に働きかけて発色を促進し、また、筋原繊維タンパク質を溶出させて加熱時に脂肪と水を抱え込むことで保水力と結着力を向上させて素材の保存性を高め、製品の弾力や風味等が向上される。また、一定期間の漬け込みにより、多くのたんぱく質が溶け出し、分解されたアミノ酸が生成されるために旨味成分や風味等が増す。
【0050】
次に、脱塩工程にて、塩漬けした食肉の脱塩が行われる(ステップS3)。この脱塩工程においては、例えば、流水や溜め水で塩抜きが行われる。
この脱塩処理を施すことで、肉に付着している過剰な塩分が除去され、適度な塩味及び塩分の均一化が調整され、また、腐敗しやすい可溶性物質が除去される。
なお、脱塩後の食肉に対して糸巻きを行うことも可能である。これにより、食肉の身割れや脂肪の分離を防止することができる。
【0051】
続いて、第1の茶成分浸透工程としての第1の茶成分浸透工程にて、脱塩した肉が茶成分含有液に所定時間浸漬される(ステップS4)。本実施の形態1において、この第1の茶成分浸透工程で脱塩した肉を浸漬させる茶成分含有液は、緑茶葉を沸騰したお湯に浸漬し、煮だして得たものである。
ここで、脱塩した肉が浸漬される茶成分含有液は、90℃以上の湯100重量部に対して茶葉を1重量部〜10重量部の範囲内で混合して得たものが好ましい。90℃以上の湯100重量部に対して茶葉が1重量部未満であると、茶成分の量が小さすぎて十分に微生物を抑制できない恐れがあり、一方、湯100重量部に対して茶葉が10重量部を超えると、茶成分の渋みが強くなり得られる食肉加工品の風味を損ね、また色調が黒っぽくなって外観を損ねる可能性があるからである。
なお、より好ましくは、茶成分含有液において湯100重量部に対して茶葉を3重量部〜5重量部の範囲内で混合して得たものである。
【0052】
このように、脱塩した食肉が茶成分含有液に浸漬されることによって、脱塩した食肉に茶成分が浸透し、カテキン等の茶成分自体が有する抗菌・殺菌作用に加え、水分を吸引し、肉質が引き締まって脱水効果が高まり微生物の増殖が抑制される。また、肉質が引き締まることで、弾力性が良く、更に、食肉中の旨味成分の流出が防止され好適な風味・食感が付与される。
【0053】
特に、本発明者らの実験によれば、塩漬工程後、先に、第1の茶成分浸透工程を行いその脱塩工程を実施した場合、即ち、塩漬けした食肉を茶成分含有液としての緑茶に浸漬させ、その後脱塩を実施した場合には、脱塩前に茶成分によって肉質が引き締まってしまうため、塩が食肉内に閉じ込められて脱塩工程にて塩を十分に抜くことができず、また、食肉の脂分の結着性が悪く、その結果、得られる食肉加工品において、塩味が強く、また弾力性も少なくて風味・食感が損なわれる可能性があった。この要因は、食肉を茶成分含有液としての緑茶に浸漬させると緑茶成分によって肉質を塩分諸共に引締められる結果と推定される。
これに対し、食肉の塩が十分に抜かれた脱塩後のタイミングで食肉を茶成分含有液としての緑茶に浸漬させることで、微生物の増殖を抑制でき、しかも、肉質が引締められ、得られる食肉加工品において適度な塩味で弾力性も良く好適な食感・風味を形成できる。
【0054】
なお、脱塩した肉を浸漬させる際、緑茶葉を沸騰した湯で煮だして得た茶成分含有液の温度は、1℃〜5℃の範囲内であることが好ましい。これによって、燻煙前の風味の低下を防止できると共に、微生物の増殖を抑制することができる。特に、低温であることでより肉質が引き締まって脱水効果が高まるため、微生物の増殖抑制効果を高めることができる。
【0055】
次いで、脱水・乾燥工程にて、茶成分含有液に浸漬した食肉の脱水及び/または乾燥が行われる(ステップS5)。この脱水・乾燥工程においては、後述の燻煙の煙が食肉に均等に付着するように、または微生物の増殖を抑制するために燻煙の前に食肉の主に表層の水分を除去できればよく、脱水処理のみでもよいし、乾燥処理のみでもよいし、脱水及び乾燥の両方の処理を行ってもよい。
脱水処理においては、例えば、脱水シート等の使用による脱水が施される。また、乾燥処理においては、例えば、乾燥器による温風乾燥や除湿乾燥によって、通常、約45〜約70℃で、約20〜約180分の乾燥が行われる。特に、乾燥処理においては、処理温度を段階的に高めることが好ましい。これによって、過乾燥による肉表面の硬化や身割れを防止でき均一に乾燥を行うことができる。
【0056】
続いて、燻煙工程にて、脱水及び/または乾燥した食肉の燻煙が行われる(ステップS6)。この燻煙処理においては、通常、公知の燻煙装置を用いてサクラ、ブナ、クルミ、カシ、シラカバ、ナラ、ヒッコリー等の堅木のチップや大鋸屑等の燻煙材による燻煙に供され、通常、30℃〜80℃の温度条件で燻煙に供される。なお、このとき処理温度を段階的に高めることでより風味を調整することができる。
【0057】
この燻煙処理を施すことで、燻煙に含まれる特有の香味成分や表面光沢(色艶)成分が食肉に付与されるのみならず、燻煙に含まれるフェノール物質等の燻煙成分が食肉に付着・浸透することで、食肉の脂質成分に対して抗酸化力が付与される。更に、燻煙成分であるフェノール物質が、アルデヒド類と反応して、殺菌・抗菌・防菌作用が付与されると共に、水分量の低下によって、微生物の増殖が抑制される。また、微生物や酸素の分解作用によりアミノ酸が増加し、熟成された旨味成分を引き出す。
なお、本発明者らの実験によれば、茶成分含有液に浸漬した後に燻煙に供された食肉は、茶成分含有液に浸漬しない場合と比較してその発煙量が抑制されることが確認された。
【0058】
更に、第1の加熱工程にて、燻煙した食肉の加熱がなされる(ステップS7)。この第1の加熱処理においては、加熱装置、例えば、加熱機能を備えた全自動式の燻煙装置等による温乾燥や、湯煮・蒸煮によって、食肉の中心温度が、63℃になってから30分以上または75℃を1分間以上維持し、またはこれと同等以上の効力を有するよう加熱される。
この第1の加熱処理を施すことで、燻煙のエグミが除去され、微生物等が殺菌される。また、肉のタンパク質が変性凝固されて弾力性が高まり食感・風味が向上する。
【0059】
次いで、第2の茶成分浸透工程としての第2の茶成分浸透工程にて、燻煙後加熱した肉が再び茶成分含有液に所定時間浸漬される(ステップS8)。本実施の形態1においては、この第2の茶成分浸透工程で燻煙後加熱した肉を浸漬させる茶成分含有液も、緑茶葉を沸騰したお湯に浸漬し煮だして得たものである。
【0060】
ここで、燻煙し加熱した肉が浸漬される茶成分含有液も、90℃以上の湯100重量部に対して茶葉を1重量部〜10重量部の範囲内で混合して得たものであることが好ましい。湯100重量部に対して茶葉が1重量部未満であると、茶成分の濃度が小さすぎて十分に微生物を抑制できない恐れがあり、一方、90℃以上の湯100重量部に対して茶葉が10重量部を超えると、茶成分の渋みが強くなり食肉の風味を損ね、色調が黒っぽくなり外観を損ねる可能性がある。そして、得られる食肉加工品の風味を損ねる可能性がある。なお、より好ましくは、茶成分含有液において90℃以上の湯100重量部に対して茶葉を3重量部〜5重量部の範囲内で混合して得たものである。
【0061】
このように、燻煙し、加熱した食肉が再び茶成分含有液に浸漬されることによって、カテキン等の茶成分自体が有する抗菌・殺菌効果によって微生物の増殖がより抑制されると共に、茶成分によってより肉質が引き締まり、より弾力性が良く、更に食肉中の旨味成分の流出が防止され好適な食感・風味が付与される。
更には、本発明者らの実験研究の結果、燻煙し加熱した食肉が再び茶成分含有液に浸漬されることによって、燻煙で食肉の表面に付着したスモークやタール等の人の健康に好ましくない燻煙成分が除去される(洗い流される)ことが判明した。
【0062】
なお、脱塩した肉を浸漬させる際、緑茶葉を沸騰したお湯で煮だしている状態、即ち、茶成分含有液の温度が、90℃〜100℃の範囲内であることが好ましい。これによって、高温による微生物の殺菌効果が得られる。
【0063】
続いて、包装工程にて、茶成分含有液に浸漬した食肉が包装される(ステップS9)。本実施の形態1においては、緑茶葉の茶成分含有液に浸漬し茶成分含有液が付着された食肉を洗い流すことなく、茶成分含有液が付着したままの食肉がそのまま真空包装機等を用いてプラスチック製バックやフィルム包材で密閉真空包装される。
これによって、包装後においても茶成分による微生物増殖の抑制効果をより持続させることができる。
【0064】
その後、第2の加熱工程にて、包装された食肉の加熱が行われる(ステップS10)。包装後の第2の加熱処理においては、通常、スチームコンベクションや高圧滅菌装置等を用いた湯煮・蒸煮によって、食肉の中心温度が、63℃以上になってから30分以上または75℃を1分間以上維持されるよう、またはこれと同等以上の効力を有するよう加熱される。
この第2の加熱処理を施すことで、再び微生物等が殺菌されて微生物の増殖抑制効果が高まり、また、肉のタンパク質の変性凝固によって更に弾力性が高まり食感・風味が向上する。
【0065】
最後は、冷却工程にて、加熱した肉が冷却される(ステップS11)。この冷却処理においては、氷水等を使用した水冷や冷却装置等を用いた空冷等によって人工的に速やかに冷却される。この冷却処理を施すことで、肉が引き締まり弾力性が向上すると共に、微生物の繁殖を抑制できる。
このようにして、茶成分が浸透してなる食肉加工品としての燻製ハムが製造される。この燻製ハムの類似品としてベーコン、中国ハム、鶏肉ハム、鳥ハム、魚肉ハム、大豆ハム等も同様である。
【0066】
上記実施の形態1においては、食肉加工品としての燻製ハムについて説明したが、ステップS6の燻製工程を省略すれば、実施の形態2の燻製しない汎用ハムとすることができる。即ち、各工程は、ステップS6の燻製工程を省略した工程となるだけであるから、重複説明を省略する。
また、発明者の実験によれば、脱塩した肉が茶成分含有液に所定時間浸漬されるステップS4の第1の茶成分浸透工程は省略し、ステップS8の第2の茶成分浸透工程に集約することもできる。勿論、商品の品質からすれば、第1の茶成分浸透工程及び第2の茶成分浸透工程を有するのが望ましい。
【0067】
以下、本実施の形態1に係る食肉加工品としての燻製ハム及びその製造方法、本実施の形態2に係る食肉加工品としての燻製しない汎用ハム及びその製造方法を、更に具体化した実施例について説明する。
【0068】
[実施例]
本実施の形態1に係る食肉加工品としての燻製ハム及びその製造方法のフローチャートとして図1で示したように、まず、原料肉である豚肉の骨と皮を除去し、余分な脂肪と筋を切り落として食肉を切断して切断工程を実施し(ステップS1)、次に、切断された食肉に対して食塩を擦り込んで冷蔵庫(4℃前後)で14日保管して塩漬けを行う塩漬工程を実施した(ステップS2)。このときの食塩量は、食肉100重量部に対し、3.5重量部の割合とした。
続いて、塩漬けした肉を常温(15℃前後)の水道水の流水にて6〜8時間塩抜きを行い、脱塩工程を実施した(ステップS3)後、脱塩した食肉に対し糸巻きを行った。
【0069】
その後、脱塩した肉を、緑茶葉を沸騰した湯で5分間煮出し、4℃に冷却した茶成分含有液に3時間浸漬させ、第1の茶成分浸透工程を実施した(ステップS4)。このときの茶成分含有液は、湯100重量部に対して緑茶葉を3重量部混合して得たものである。
続いて、緑茶葉の茶成分含有液に浸漬した食肉を市販の料理用脱水シートで包み込んで24時間冷蔵庫保管して脱水を行い、更に、乾燥機能付きの燻煙装置(機械名:大道産業製)内に置いて、50℃で2時間30分温乾燥を行い脱水・乾燥工程を実施した(ステップS5)。
【0070】
更に、脱水・乾燥した食肉を燻煙装置で2時間燻煙する燻煙工程を実施した(ステップS6)。続いて、燻煙した食肉を、乾燥機能付きの燻煙装置内でその中心温度を63℃で30分間または75℃を1分間以上維持する温乾燥で加熱を行う加熱工程を実施した(ステップS7)。
【0071】
次に、燻煙し加熱した肉を、緑茶を沸騰して煮出した状態の約100℃前後の茶成分含有液に30秒間浸漬させて第2の茶成分浸透工程を実施し(ステップS8)、その後すぐに茶葉含有液が付着したままで温度が高い食肉を真空包装機(シュットマン:(株)シーガル社製)を用いてPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムで80%真空包装し、包装工程を実施した(ステップS9)。なお、本実施の形態1の変形例で使用した真空包装機(シュットマン:(株)シーガル社製)は、温度が高いまま、固形物に限らず液状のものも含めて食肉中の空気を抜いて真空包装可能なものであり、これを使用することによって、温度が高い状態の食肉を冷却する工程を必要とすることなく、温度が高い状態のままで真空包装できることから、製造時間を短縮できると共に、冷却される過程における微生物の増殖を抑制することができる。
【0072】
その後、包装した食肉をスチームコンベクション(機械名:コメットカトウ製)を用いて蒸煮によって食肉の中心温度を68℃で30分間維持する加熱を行って加熱工程を実施し(ステップS10)、最後に、加熱した食肉を氷水にて冷却する冷却工程(ステップS11)を実施した。
このような一連の工程を経て、茶成分が浸透してなる食肉加工品としてのハムが製造された。
【0073】
ここで、このようにして得た食肉加工品に関する保存性の評価試験を行った。
即ち、本実施例1で製造した食肉加工品としてのハムを、製造直後(0日目)、10日間、20日間、30日間、10℃で冷蔵保存し、それぞれに含まれる一般生菌数、大腸菌群、大腸菌、食中毒の原因菌であるボツリヌス菌(ボツリヌス芽胞)を計測した。また、比較のために、第1の茶成分浸透工程及び第2の茶成分浸透工程を省きそれ以外は実施の形態1の変形例に記載の手順と同一の手順で比較例1に係るハムを製造し、同様に保存試験を実施した。表1にその結果を示す。なお、食肉を茶葉含有液に浸漬させていない比較例としては、スーパーマーケットで扱われている量産化されている市販品を対象とした場合には、一般生菌数、大腸菌群、大腸菌、ボツリヌス菌の発生はなかった。
【0074】
【表1】
【0075】
表1の比較のために作成した第1の茶成分浸透工程及び第2の茶成分浸透工程を省きそれ以外は実施の形態1の変形例に記載の手順と同一の手順で製造した比較例は、塩分の洗浄で菌の発生が生じたものであり、かつ、茶成分含有液に浸漬した効果が確認される。また、茶成分によって、肉質が引き締まり弾力性が良く、食肉中の旨味成分の流出が防止され好適な食感・風味が得られた。
しかし、比較例として製造直後(0日目)、10日間、20日間、30日間を10℃で冷蔵保存し、それぞれに含まれる一般生菌数、大腸菌群、大腸菌、食中毒の原因菌であるボツリヌス菌(ボツリヌス芽胞)を計測すると、最近の増加前に肉質の色が変化し、商品としての使用ができないことが判明した。環境条件によっては、製造後20日間以降の販売は注意を要することになる。
【0076】
保存期間中に微生物が増殖し、商品としての賞味期間が短いのに対し、食肉を茶葉含有液に浸漬させた実施例で製造した食肉加工品としての実施の形態1の燻製ハム、実施の形態2の汎用ハムは、製造して1ヶ月近く経過してもなお微生物の顕著な出現や高温耐性で偏性嫌気性菌のボツリヌス菌(ボツリヌス芽胞)の検出が認められず、その保存性が劇的に改善されていることが確認された。
また、実施例及び比較例で市販の食肉加工品としての実施の形態1の燻製ハム、実施の形態2の汎用ハムを実際に試食してみたところ、比較例に比べ実施例のハムにおいては、その肉質に締まりがあり、弾力性が良く好適な食感・風味が得られた。
殊に、実施の形態1で製造した食肉加工品としての燻製ハムにおいては、燻煙で食肉の表面に当然に付着するスモークやタール等の、人の健康に好ましくない燻煙成分が除去されていた。
【0077】
このように、本実施の形態1の実施例に係る食肉加工品としての燻製ハム及びその製造方法によれば、微生物、特には、ボツリヌス菌の増殖を効果的に抑制する亜硝酸塩や硝酸塩及びソルビン酸等の防腐剤を使用しなくても、茶成分によって、ボツリヌス菌を含む微生物の増殖が抑制されて保存性が高いものとなる。また、リン酸塩(Na、K)等の結着補強剤を使用しなくても、茶成分によって、肉質が引き締まり弾力性が良く、更には食肉中の旨味成分の流出が防止され好適な食感・風味が得られる。更に、燻煙し加熱した食肉を茶成分含有液に浸漬させることで、燻煙で食肉の表面に付着したスモークやタール等の人の健康に好ましくない燻煙成分が除去される。なお、肉質の引き締まりには、茶成分に含まれる、主に、エピガロカテキン、エピカテキン、エピガロカテキンガラート、エピカテキンガラート等のタンニン系物質が関与していると思われる。
【0078】
本実施の形態2の実施例に係る食肉加工品としての燻製しない汎用ハム及びその製造方法においても、微生物、特には、ボツリヌス菌の増殖を効果的に抑制する亜硝酸塩や硝酸塩及びソルビン酸等の防腐剤を使用しなくても、茶成分によって、ボツリヌス菌を含む微生物の増殖が抑制されて保存性が高いものとなる。また、リン酸塩(Na、K)等の結着補強剤を使用しなくても、茶成分によって、肉質が引き締まり弾力性が良く、更には食肉中の旨味成分の流出が防止され好適な食感・風味が得られることが確認された。
【0079】
以上のように、本発明の実施の形態1に係る食肉加工品としてのハムは、塩漬けし脱塩した食肉を湯に緑茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に浸漬して、脱塩した食肉に茶成分を浸透させた後、茶成分含有液に浸漬して茶成分が浸透した食肉を脱水及び乾燥し、燻煙してなるものである。
特に、本発明の実施の形態1に係る食肉加工品としての燻製ハム及びその製造方法は、燻煙した後加熱した食肉を湯に緑茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に浸漬して、燻煙した後加熱した食肉に茶成分を浸透させ、その直後に、茶葉含有液が付着したままの食肉を包装し、更に加熱してなるものである。
【0080】
即ち、本発明の実施の形態1に係る食肉加工品としての燻製ハムは、塩漬けし、脱塩した食肉を湯に緑茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に浸漬して、脱塩した食肉に茶成分を浸透させた後、茶成分含有液に浸漬して茶成分が浸透した食肉を脱水及び乾燥し、燻煙し、更に加熱した後、更に、燻煙し加熱した食肉を再び湯に緑茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に浸漬して、燻煙し加熱した食肉に茶成分を浸透させ、その直後に、茶葉含有液が付着したままの食肉を包装し、再び加熱してなるものである。
【0081】
また、本発明の実施の形態1に係る食肉加工品としての燻製ハムの製造方法は、食肉を塩漬けする塩漬工程と、塩漬けした食肉の脱塩を行う脱塩工程と、脱塩した食肉に茶成分を浸透させる第1の茶成分浸透工程として脱塩した食肉を湯に緑茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に浸漬させる第1の茶成分浸透工程と、茶成分含有液に浸漬させ茶成分を浸透させた食肉を脱水及び乾燥する脱水・乾燥工程と、茶成分含有液に浸漬させ茶成分を浸透させた後脱水及び乾燥した食肉を燻煙する燻煙工程と、燻煙した食肉を加熱する第1の加熱工程と、燻煙し加熱した食肉に茶成分を浸透させる第2の茶成分浸透工程として燻煙し加熱した食肉を湯に緑茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に浸漬させる第2の茶成分浸透工程と、茶葉含有液が付着されたままの食肉を包装する包装工程と、包装した食肉を加熱する第2の加熱工程とを具備するものである。
【0082】
したがって、本発明の実施の形態1に係る食肉加工品としての燻製ハムの製造方法によれば、茶葉含有液に対して塩漬けし脱塩した食肉を浸漬させて脱塩した食肉に茶成分を浸透させることで、カテキン等の茶成分自体が有する抗菌・殺菌作用によって、更には、茶成分により肉質が引き締まって脱水効果が高まることによって、微生物の増殖が抑制される。また、茶成分によって肉質が引き締まることで、弾力性が良く、更に食肉中の旨味成分の流出が防止され好適な食感・風味が付与される。特に、塩漬け後のタイミングで茶成分を浸透させた場合には塩を十分に抜くことができず、得られる食肉加工品において塩味が強く風味が損なわれるのに対し、脱塩後のタイミングで茶成分を浸透させることで、好適な塩味を形成できる。
【0083】
加えて、茶葉含有液に対して燻煙させた食肉を浸漬させて燻煙した食肉に茶成分を浸透させることで、カテキン等の茶成分自体が有する抗菌・殺菌効果によって微生物の増殖がより抑制されると共に、茶成分によってより肉質が引き締まり、より弾力性が良く、更に食肉中の旨味成分の流出が防止され好適な食感・風味が付与される。更には、茶成分によって燻煙で食肉の表面に付着したスモークやタール等の人の健康に好ましくない燻煙成分が除去される。
【0084】
特に、本発明の実施の形態1に係る食肉加工品としての燻製ハム及びその製造方法によれば、90℃以上の湯に茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に脱塩した食肉や燻煙した食肉を浸漬させていることから、短時間、かつ、簡単な作業で食肉に茶成分を容易に浸透させて茶成分を作用させることができる。
【0085】
なお、本発明を実施する場合には、塩漬けし脱塩した食肉や燻煙した食肉等の特定処理された食肉を湯に茶葉を浸漬して得た茶成分含有液やその濃縮液等に浸漬させたり、塩漬けし脱塩した食肉や燻煙した食肉等の特定処理された食肉に対して茶葉や濃縮液を乾燥させた乾燥濃縮粉等を直接付着させたり、塩漬けし脱塩した食肉や燻煙した食肉等の特定処理された食肉に対して湯に茶葉を浸漬して得た茶成分含有液やその濃縮液等を注入したり吹き付けたり、特定処理された食肉に対して茶成分含有液やその濃縮液を凍結して氷にしたものを漬けたりすることによって、食肉に茶成分を浸透させることが可能である。これによっても、微生物の増殖を抑制でき保存性が高く、また、肉質が引き締められ、弾力性が良く、更に食肉中の旨味成分の流出を防止でき、良好な食感・風味を有する食肉加工品が得られる。
【0086】
また、本発明の実施の形態1に係る食肉加工品としての燻製ハムの製造方法によれば、燻煙直前に食肉を脱水及び乾燥しており、脱水・乾燥によって燻煙の前に食肉の主に表層の余分な水分が除去されることから、燻煙の煙が食肉に均等に付着して十分な燻煙効果が得られ、また、水分量の低下によって微生物の増殖をより抑制できる。
更に、本発明の実施の形態1に係る食肉加工品としての燻製ハムの製造方法によれば、茶成分含有液が付着したままの食肉を包装していることから、包装後においても茶成分による微生物増殖の抑制効果をより持続させることができる。
【0087】
加えて、本発明の実施の形態1に係る食肉加工品としての燻製ハムの製造方法によれば、燻煙した後であって茶成分含有液に浸漬させる前において、更に、茶成分含有液に浸漬しし包装した後において食肉を加熱していることから、加熱によって殺菌効果の向上を図ることができ、微生物の増殖をより抑制することができる。
このようにして、茶成分によって、微生物の増殖が抑制されて保存性が高い食肉加工品及びその製造方法となる。
【0088】
なお、本発明を実施する場合には、脱水した食肉を茶葉含有液に浸漬する等して脱水した食肉に茶成分を浸透させる第1の茶成分浸透工程、または燻煙した食肉を茶葉含有液に浸漬する等して燻煙した食肉茶成分を浸透させる第2の茶成分浸透工程のどちらか一方のみを有するものであってもよいが、両方の工程を経ることによって、微生物の増殖を一段と抑制でき保存性がより高いものとなる。また、より肉質が引き締まり、弾力性が良く、更に食肉中の旨味成分の流出が防止され、良好な食感・風味が付与される。
【0089】
[実施の形態2]
上記実施の形態2に係る食肉加工品としての燻製しない汎用ハムは、塩漬けし、脱塩した食肉を湯に緑茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に浸漬して、脱塩した食肉に茶成分を浸透させた後、茶成分含有液に浸漬して茶成分が浸透した食肉を脱水及び乾燥した後加熱した食肉に茶成分を浸透させ、その直後に、茶葉含有液が付着したままの食肉を包装し、更に加熱してなるものである。
【0090】
即ち、本発明の実施の形態2に係る食肉加工品としての燻製しない汎用ハムは、塩漬けし、脱塩した食肉を湯に緑茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に浸漬して、脱塩した食肉に茶成分を浸透させた後、茶成分含有液に浸漬して茶成分が浸透した食肉を脱水及び乾燥し、更に加熱した後、更に、加熱した食肉を再び湯に緑茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に浸漬して、食肉に茶成分を浸透させ、その直後に、茶葉含有液が付着したままの食肉を包装し、再び加熱してなるものである。
【0091】
また、本実施の形態2に係る食肉加工品としての燻製しない汎用ハムの製造方法は、食肉を塩漬けする塩漬工程と、塩漬けした食肉の脱塩を行う脱塩工程と、脱塩した食肉に茶成分を浸透させる第1の茶成分浸透工程として脱塩した食肉を湯に緑茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に浸漬させる第1の茶成分浸透工程と、茶成分含有液に浸漬させ茶成分を浸透させた食肉を脱水及び乾燥する脱水・乾燥工程と、脱水・乾燥した食肉を加熱する第1の加熱工程と、加熱した食肉に茶成分を浸透させる第2の茶成分浸透工程として加熱した食肉を湯に緑茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に浸漬させる第2の茶成分浸透工程と、茶葉含有液が付着されたままの食肉を包装する包装工程と、包装した食肉を加熱する第2の加熱工程とを具備するものである。
【0092】
したがって、本発明の実施の形態2に係る食肉加工品としての燻製しない汎用ハムの製造方法によれば、茶葉含有液に対して塩漬けし脱塩した食肉を浸漬させて脱塩した食肉に茶成分を浸透させることで、カテキン等の茶成分自体が有する抗菌・殺菌作用によって、更には、茶成分により肉質が引き締まって脱水効果が高まることによって、微生物の増殖が抑制される。また、茶成分によって肉質が引き締まることで、弾力性が良く、更に食肉中の旨味成分の流出が防止され好適な食感・風味が付与される。特に、塩漬け後のタイミングで茶成分を浸透させた場合には塩を十分に抜くことができず、得られる食肉加工品において塩味が強く風味が損なわれるのに対し、脱塩後のタイミングで茶成分を浸透させることで、好適な塩味を形成できる。
加えて、食肉に茶成分を浸透させることで、カテキン等の茶成分自体が有する抗菌・殺菌効果によって微生物の増殖がより抑制されると共に、茶成分によってより肉質が引き締まり、より弾力性が良く、更に食肉中の旨味成分の流出が防止され好適な食感・風味が付与される。
【0093】
特に、本実施の形態2に係る食肉加工品としての燻製しない汎用ハム及びその製造方法によれば、湯に茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に脱塩した食肉を浸漬させていることから、短時間、かつ、簡単な作業で食肉に茶成分を容易に浸透させて茶成分を作用させることができる。
なお、本発明を実施する場合には、塩漬けし脱塩した食肉や燻煙した食肉等の特定処理された食肉を湯に茶葉を浸漬して得た茶成分含有液やその濃縮液等に浸漬させたり、塩漬けし脱塩した食肉の特定処理された食肉に対して茶葉や濃縮液を乾燥させた乾燥濃縮粉等を直接付着させたり、塩漬けし脱塩した食肉の特定処理された食肉に対して湯に茶葉を浸漬して得た茶成分含有液やその濃縮液等を注入したり吹き付けたり、特定処理された食肉に対して茶成分含有液やその濃縮液を凍結して氷にしたものを漬けたりすることによって、食肉に茶成分を浸透させることが可能である。これによっても、微生物の増殖を抑制でき保存性が高く、また、肉質が引き締められ、弾力性が良く、更に食肉中の旨味成分の流出を防止でき、良好な食感・風味を有する食肉加工品が得られる。
【0094】
また、本発明の実施の形態2に係る食肉加工品としての燻製していない汎用ハムの製造方法によれば、茶成分含有液が付着したままの食肉を包装していることから、包装後においても茶成分による微生物増殖の抑制効果をより持続させることができる。
加えて、本発明の実施の形態2に係る食肉加工品としての燻製していない汎用ハムの製造方法によれば、茶成分含有液に浸漬し、包装した後において食肉を加熱していることから、加熱によって殺菌効果の向上を図ることができ、微生物の増殖をより抑制することができる。
このようにして、茶成分によって、微生物の増殖が抑制されて保存性が高い食肉加工品及びその製造方法となる。
【0095】
なお、本発明を実施する場合には、脱水した食肉を茶葉含有液に浸漬する等して脱水した食肉に茶成分を浸透させる第1の茶成分浸透工程のみを有するものであり、微生物の増殖を一段と抑制でき保存性がより高いものとなる。また、より肉質が引き締まり、弾力性が良く、更に食肉中の旨味成分の流出が防止され、良好な食感・風味が付与される。
【0096】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3に係る食肉加工品について、図3を参照して説明する。本発明の実施の形態3は、本発明の食肉加工品を燻製ソーセージに適用した場合を示すものである。
なお、本発明の実施の形態3において、実施の形態1との相違点は、塩漬工程、脱塩工程、第1の茶成分浸透工程が省かれ、切断工程にて切断した食肉を充填工程にてケーシングに充填し、その後、脱水・乾燥工程へ供される点にある。その他の構成は、実施の形態1と同じであるから、その説明を省略する。
【0097】
即ち、図3のフローチャートに示されるように、まず、切断工程にて、原料肉である豚肉の切断が行われる(ステップS21)。ソーセージ製造におけるこの切断工程においては、原料肉の骨、皮、脂肪、筋等が切り落とされて除去された後、ミンチ状にされ、更に、カッターで細かく練りあげられる。
【0098】
続いて、充填工程にて、細かく切断した食肉の充填が行われる(ステップS22)。この充填工程においては、通常、充填機(スタッファー)を使用して天然ケーシング(羊、豚、牛の腸)や人工ケーシングに充填される。
【0099】
次いで、脱水・乾燥工程にて、ケーシングに充填された食肉の脱水及び/または乾燥が行われ(ステップS23)、更に、燻煙工程にて、脱水及び/または乾燥した食肉の燻煙が行われ(ステップS24)、その後、第1の加熱工程にて、燻煙した食肉の加熱がなされる(ステップS25)。
【0100】
そして、茶成分浸透工程にて、燻煙後加熱した肉が茶成分含有液に所定時間浸漬され(ステップS26)、その直後、茶成分含有液が付着したままの食肉が包装工程にて包装される(ステップS27)。次いで、第2の加熱工程にて、包装された食肉の加熱が行われ(ステップS28)、最後、冷却工程にて、加熱した食肉が冷却される(ステップS29)。
【0101】
このようにして、茶成分が浸透してなる本実施の形態3に係る食肉加工品としての燻製ソーセージが製造される。
即ち、本発明の実施の形態3に係る食肉加工品としての燻製ソーセージは、燻煙した後加熱した食肉を湯に緑茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に浸漬して、燻煙した後加熱した食肉に茶成分を浸透させ、その直後に、茶葉含有液が付着したままの食肉を包装し、更に加熱してなるものである。
【0102】
また、本発明の実施の形態3に係る食肉加工品としての燻製ソーセージの製造方法は、食肉を燻煙する燻煙工程と、燻煙した食肉を加熱する加熱工程と、燻煙し加熱した食肉に茶成分を浸透させる茶成分浸透工程として燻煙し加熱した食肉を湯に緑茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に浸漬させる茶成分浸透工程と、茶葉含有液が付着されたままの食肉を包装する包装工程と、包装した食肉を加熱する加熱工程とを具備するものである。
【0103】
このようして得られる本発明の実施の形態3に係る食肉加工品としての燻製ソーセージにおいても、茶葉含有液に対して燻煙させた食肉を浸漬させて燻煙した食肉に茶成分を浸透させることで、カテキン等の茶成分自体が有する抗菌・殺菌効果によって微生物の増殖がより抑制されると共に、茶成分によってより肉質が引き締まり、より弾力性が良く更に食肉中の旨味成分の流出が防止され好適な食感・風味が付与される。更には、茶成分によって燻煙で食肉の表面に付着したスモークやタール等の人の健康に好ましくない燻煙成分が除去される。
【0104】
[実施の形態4]
次に、本発明の実施の形態4に係る食肉加工品について、図4を参照して説明する。本発明の実施の形態4は、本発明の食肉加工品を燻製しない汎用ソーセージに適用した場合を示すものである。
なお、本発明の実施の形態4において、実施の形態3との相違点は、燻製工程が省かれた点にある。その他の構成は、実施の形態3と同じであるから、その説明を省略する。
【0105】
即ち、図4のフローチャートに示されるように、まず、切断工程にて、原料肉である豚肉の切断が行われる(ステップS21)。ソーセージ製造におけるこの切断工程においては、原料肉の骨、皮、脂肪、筋等が切り落とされて除去された後、ミンチ状にされ、更に、カッターで細かく練りあげられる。
続いて、充填工程にて、細かく切断した食肉の充填が行われる(ステップS22)。この充填工程においては、通常、充填機(スタッファー)を使用して天然ケーシング(羊、豚、牛の腸)や人工ケーシングに充填される。
【0106】
次いで、脱水・乾燥工程にて、ケーシングに充填された食肉の脱水及び/または乾燥が行われ(ステップS23)、その後、加熱工程にて食肉の加熱がなされる(ステップS25)。
そして、茶成分浸透工程としての茶成分浸透工程にて、茶成分含有液に所定時間浸漬され(ステップS26)、その直後、茶成分含有液が付着したままの食肉が包装工程にて包装される(ステップS27)。次いで、加熱工程にて、包装された食肉の加熱が行われ(ステップS28)、最後、冷却工程にて、加熱した食肉が冷却される(ステップS29)。
【0107】
このようにして、茶成分が浸透してなる本実施の形態4に係る食肉加工品としての燻製しない汎用ソーセージが製造される。
即ち、本発明の実施の形態4に係る食肉加工品としての燻製しない汎用ソーセージは、食肉を湯に緑茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に浸漬して、加熱した食肉に茶成分を浸透させ、その直後に、茶葉含有液が付着したままの食肉を包装し、更に加熱してなるものであり、温度は所定の加熱温度を維持している。
【0108】
また、本発明の実施の形態4に係る食肉加工品としての燻製しない汎用ソーセージの製造方法は、食肉に茶成分を浸透させる茶成分浸透工程として加熱した食肉を湯に緑茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に浸漬させる茶成分浸透工程と、茶葉含有液が付着されたままの食肉を包装する包装工程と、包装した食肉を加熱する加熱工程とを具備するものである。
【0109】
このようして得られる本発明の実施の形態4に係る食肉加工品としての燻製しない汎用ソーセージにおいても、食肉に茶成分を浸透させることで、カテキン等の茶成分自体が有する抗菌・殺菌効果によって微生物の増殖がより抑制されると共に、茶成分によってより肉質が引き締まり、より弾力性が良く更に食肉中の旨味成分の流出が防止され好適な食感・風味が付与される。更には、茶成分によって燻煙で食肉の表面に付着したスモークやタール等の人の健康に好ましくない燻煙成分が除去される。
【0110】
なお、上記実施の形態1乃至実施の形態4において、食肉加工品としてのハム、ソーセージを適用した場合を示したが、ベーコン等についても同様であり、また、原材料に豚肉を使用したが、本発明を実施する場合には、豚肉の他にも、通常、食用に供することができる肉類、例えば、牛肉、馬肉、羊肉、山羊肉、家きん肉、家兎肉およびこれらの混合肉を使用することもできる。
【0111】
また、上記各工程の温度や時間は原料肉の肉種、由来部位、大きさ、商品形態等を考慮して設定されるものであり、本発明の食肉加工品を製造する工程においても上記各実施の形態の工程以外のその他について特に限定されるものではなく、必要に応じて調味料を添加することも可能である。
更に、本発明の実施の形態で挙げている数値はその全てが臨界値を示すものではなく、ある実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を若干変更してもその実施を否定するものではない。
【0112】
上記実施の形態2の食肉加工品は、ステップS2およびステップS3で塩漬けした食肉を脱塩し、ステップS4で茶葉から抽出した茶成分含有液に前記脱塩した前記食肉を浸漬することにより、ステップS5で前記茶成分によって前記食肉から脱水し、ステップS7で前記茶成分に浸漬した前記食肉を加熱し、前記食肉に前記茶成分を浸透及び付着させたまま前記食肉をステップS9で包装してなるものである。
【0113】
本発明者らは、実験を積み重ねた結果、茶葉から抽出した茶成分含有液の茶成分が食肉に付着する微生物に対して抗菌・殺菌作用を呈することを見出し、茶葉を湯に浸漬して得た茶成分含有液に対して、塩漬けし脱塩した食肉や、燻煙した食肉を浸漬等させ、食肉に茶成分を浸透、付着させることによって、食肉に付着する微生物の増殖を抑制することができ、保存性の高い食肉加工品を得ることができた。
即ち、このように茶葉を湯に浸漬して得た茶成分含有液に対して、塩漬けし、脱塩した食肉を浸漬等させることによって、食肉に茶成分が浸透されてなる本発明の食肉加工品は、微生物の増殖が抑制され、保存性の高いものが得られる。
【0114】
また、このように茶葉を湯に浸漬して得た茶成分含有液に対して、塩漬けし、脱塩した食肉を浸漬等させることによって、食肉に茶成分が浸透されてなる本発明の食肉加工品は、肉質が引き締まっていて、弾力性が良く旨味成分も多く好適な食感・風味を有する。
このようにして、茶葉から抽出した茶成分含有液の茶成分によって、微生物の増殖が抑制されて保存性が高い食肉加工品となる。
【0115】
上記実施の形態1の食肉加工品は、ステップS2及びステップS3で塩漬けした食肉を脱塩し、ステップS4で茶葉から抽出した茶成分含有液に脱塩した食肉を浸漬し、ステップS5で前記茶成分によって食肉から脱水し、ステップS6で燻煙し、前記茶成分に浸漬した前記食肉をステップS7で加熱し、前記食肉にステップS8で前記茶成分を浸透及び付着させたままステップS9で食肉を包装してなるものである。
【0116】
湯に茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に対してステップS2で塩漬けし、ステップS3で脱塩した食肉を浸漬させる等によって脱塩した食肉にステップS4で茶成分を浸透、付着させることで、カテキン等の茶成分自体が有する抗菌・殺菌作用によって、更には、茶成分により肉質が引き締まって脱水効果が高まることによって、微生物の増殖が抑制される。また、茶成分によって肉質が引き締まることで、弾力性が良く、更に食肉中の旨味成分の流出が防止され好適な食感・風味が付与される。特に、塩漬け後のタイミングで茶成分を浸透させた場合には塩を十分に抜くことができず、また肉の脂分の結着性が悪く、得られる食肉加工品において塩味が強く弾力性も低下して風味・食感が損なわれるのに対し、脱塩後のタイミングで茶成分を浸透させることで、弾力性等の好適な食感及び良好な風味を形成できる。
【0117】
即ち、このように茶葉を湯に浸漬して得た茶成分含有液に対して、ステップS2で塩漬けし、ステップS3で脱塩し、ステップS4で燻煙した食肉を浸漬等させることによって、食肉に茶成分が浸透されてなる本発明の食肉加工品は、微生物の増殖が抑制され、保存性の高いものとなる。
このようにして、茶葉から抽出した茶成分含有液の茶成分によって、微生物の増殖が抑制されて保存性が高い食肉加工品となる。
【0118】
上記実施の形態1または実施の形態2の食肉加工品の前記脱塩した食肉を浸漬する茶成分含有液は、1℃〜5℃の範囲内としたものであるから、
燻煙前の風味の低下を防止できると共に、微生物の増殖を抑制することができる。特に、低温であることでより肉質が引き締まって脱水効果が高まるため、微生物の増殖抑制効果を高めることができる。
【0119】
上記実施の形態1または実施の形態2の食肉加工品の前記茶成分含有液は、90℃以上の湯100重量部に対して茶葉を1重量部〜10重量部の範囲内で混合することによって得た茶成分含有液に所定の加工した食肉を浸漬させることで、風味が損なわれることなく、十分な微生物抑制効果が発揮されることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。
【0120】
即ち、茶葉から抽出した茶成分含有液において湯100重量部に対して茶葉が1重量部未満であると、茶成分の量が小さすぎて十分に微生物を抑制できない恐れがあり、一方、湯100重量部に対して茶葉が10重量部を超えると、茶成分の渋みが強く食肉の風味を損ねたり色調が黒くなって外観を損ねたりする可能性がある。
したがって、この発明の食肉加工品によれば、茶葉から抽出した茶成分含有液の茶成分によって、風味が損なわれることなく、確実に微生物の増殖が抑制されて保存性が高い食肉加工品となる。
【0121】
上記実施の形態1または実施の形態2の食肉加工品は、更に、ステップS9で前記包装した前記食肉は、前記包装した状態においてステップS10で前記食肉を加熱してなるものである。
茶成分含有液が付着されたままの食肉を包装することから、包装後においても茶成分による微生物増殖の抑制効果をより持続させることができる。また、前記包装した食肉を加熱することから、加熱によって殺菌効果の向上を図ることができ、微生物の増殖をより抑制することができる。
なお、ステップS4とステップS8の茶葉から抽出した茶成分含有液に脱塩した食肉を浸漬する工程は、1回にすることもできる。しかし、食感からすれば、2回が良い。
【0122】
上記実施の形態4の食肉加工品の製造方法は、原料肉である豚肉の切断が行われるステップS21の切断工程と、細かく切断した食肉の充填が行われるステップS22の充填工程と、ケーシングに充填された食肉のステップS23の脱水及び/または乾燥が行われる脱水・乾燥工程と、ステップS25の第1の加熱工程と、前記食肉を浸漬するステップS26の茶成分浸透工程と、前記茶成分含有液の前記茶成分が浸透及び付着した前記食肉を包装してなるステップS27の包装工程と、ステップS27の前記包装工程で包装した前記食肉を加熱するステップS28の第2の加熱工程とを具備するものである。
【0123】
したがって、上記実施の形態の食肉加工品の製造方法によれば、ステップS26の茶成分浸透工程において、湯に茶葉を浸漬して得た茶成分含有液で食肉に茶成分を浸透させることで、カテキン等の茶成分自体が有する抗菌・殺菌作用によって、更には、茶成分により肉質が引き締まって脱水効果が高まることによって、微生物の増殖を抑制することができる。また、茶成分によって肉質が引き締まることで、弾力性が良く、更に食肉中の旨味成分の流出が防止され好適な食感・風味を付与できる。
【0124】
上記実施の形態3の食肉加工品の製造方法は、ステップS21の原料肉である豚肉の切断が行われる切断工程と、ステップS22の細かく切断した食肉の充填が行われる充填工程と、ステップS23のケーシングに充填された食肉の脱水及び/または乾燥が行われる脱水・乾燥工程と、ステップS26の前記食肉を浸漬する茶成分浸透工程と、前記食肉を脱水乾燥させた後、燻煙するステップS24の燻煙工程と、茶葉から抽出した茶成分含有液に前記燻煙した前記食肉を浸漬するステップS26の茶成分浸透工程と、前記茶成分含有液の前記茶成分が浸透及び付着した前記食肉を包装してなるステップS27の包装工程と、前記包装工程で包装した前記食肉を加熱するステップS28の加熱工程とを具備するものである。
【0125】
したがって、上記実施の形態3の食肉加工品の製造方法によれば、ステップS26の茶成分浸透工程において、湯に茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に対して塩漬けし、脱塩した食肉を浸漬させる等によって脱塩した食肉に茶成分を浸透させることで、カテキン等の茶成分自体が有する抗菌・殺菌作用によって、更には、茶成分により肉質が引き締まって脱水効果が高まることによって、微生物の増殖を抑制することができる。また、茶成分によって肉質が引き締まることで、弾力性が良く、更に食肉中の旨味成分の流出が防止され好適な食感・風味を付与できる。特に、塩漬け後のタイミングで茶成分を浸透させた場合には塩を十分に抜くことができず、また肉の脂分の結着性が悪く、得られる食肉加工品において塩味が強く弾力性も低下して風味・食感が損なわれるのに対し、脱塩後のタイミングで茶成分を浸透させることで、弾力性等の好適な食感及び良好な風味を形成できる。
加えて、湯に茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に対して燻煙させた食肉を浸漬させる等によって燻煙した食肉に茶成分を浸透させることで、カテキン等の茶成分自体が有する抗菌・殺菌効果によって微生物の増殖がより抑制されると共に、茶成分によってより肉質が引き締まり、より弾力性が良く、更に食肉中の旨味成分の流出が防止され好適な食感・風味が付与される。更には、茶成分によって燻煙で食肉の表面に付着したスモークやタール等の人の健康に好ましくない燻煙成分が除去される。
【0126】
上記実施の形態4の食肉加工品の製造方法は、原料肉である豚肉の切断が行われるステップS21の切断工程と、細かく切断した食肉の充填が行われるステップS22の充填工程と、ケーシングに充填された食肉の脱水及び/または乾燥が行われるステップS23の脱水・乾燥工程と、前記食肉を加熱するステップS25の第1の加熱工程と、前記食肉を茶葉から抽出した茶成分含有液に浸漬させるステップS26の茶成分浸透工程と、前記茶成分含有液に浸漬させた前記食肉を脱水、乾燥させた後、加熱するステップS27の第2の加熱工程と、前記茶成分含有液の前記茶成分が浸透及び付着した前記食肉を包装してなるステップS27の包装工程と、前記包装工程で包装した前記食肉を加熱するステップS28の第2の加熱工程とを具備するものである。
【0127】
したがって、ステップS26の茶成分浸透工程において、湯に茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に対して塩漬けし、脱塩した食肉を浸漬し、脱塩した食肉に茶成分を浸透させることで、カテキン等の茶成分自体が有する抗菌・殺菌作用によって、更には、茶成分により肉質が引き締まって脱水効果が高まることによって、微生物の増殖を抑制できる。また、茶成分によって肉質が引き締まることで、弾力性が良く、更に食肉中の旨味成分の流出が防止され好適な食感・風味を付与できる。特に、塩漬け後のタイミングで茶成分を浸透させた場合には塩を十分に抜くことができず、また肉の脂分の結着性が悪く、得られる食肉加工品において塩味が強く弾力性も低下して風味・食感が損なわれるのに対し、脱塩後のタイミングで茶成分を浸透させることで、弾力性等の好適な食感や良好な風味を形成できる。
【0128】
加えて、ステップS26の茶成分浸透工程において、湯に茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に対して燻煙させた食肉を浸漬させる等によって燻煙した食肉に茶成分を再び浸透させることで、カテキン等の茶成分自体が有する抗菌・殺菌効果によって微生物の増殖をより抑制できると共に、茶成分によってより肉質が引き締まり、より弾力性が良く、更に食肉中の旨味成分の流出が防止され好適な食感・風味を付与できる。このようにして、茶葉から抽出した茶成分含有液の茶成分によって、確実に微生物の増殖が抑制されて保存性が高い食肉加工品の製造方法となる。
【0129】
上記実施の形態3の食肉加工品の製造方法は、原料肉である豚肉の切断が行われるステップS21の切断工程と、細かく切断した食肉の充填が行われるステップS22の充填工程と、ケーシングに充填された食肉の脱水及び/または乾燥が行われるステップS23の脱水・乾燥工程と、前記茶成分含有液に浸漬させた前記食肉を脱水、乾燥させた後、燻煙するステップS24の燻煙工程と、前記燻煙工程で燻煙した前記食肉を加熱するステップS25の第1の加熱工程と、前記第1の加熱工程で加熱した前記食肉を茶葉から抽出した前記茶成分含有液に浸漬させるステップS26の茶成分浸透工程と、前記茶成分含有液の前記茶成分が浸透及び付着した前記食肉を包装してなるステップS27の包装工程と、前記包装工程で包装した前記食肉を加熱するステップS28の第2の加熱工程とを具備するものである。
【0130】
したがって、ステップS26の茶成分浸透工程において、湯に茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に対して塩漬けし、脱塩した食肉を浸漬し、脱塩した食肉に茶成分を浸透させることで、カテキン等の茶成分自体が有する抗菌・殺菌作用によって、更には、茶成分により肉質が引き締まって脱水効果が高まることによって、微生物の増殖を抑制できる。また、茶成分によって肉質が引き締まることで、弾力性が良く、更に食肉中の旨味成分の流出が防止され好適な食感・風味を付与できる。特に、塩漬け後のタイミングで茶成分を浸透させた場合には塩を十分に抜くことができず、また肉の脂分の結着性が悪く、得られる食肉加工品において塩味が強く弾力性も低下して風味・食感が損なわれるのに対し、脱塩後のタイミングで茶成分を浸透させることで、弾力性等の好適な食感や良好な風味を形成できる。
【0131】
加えて、ステップS26の茶成分浸透工程において、湯に茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に対して燻煙させた食肉を浸漬させる等によって燻煙した食肉に茶成分を再び浸透させることで、カテキン等の茶成分自体が有する抗菌・殺菌効果によって微生物の増殖をより抑制できると共に、茶成分によってより肉質が引き締まり、より弾力性が良く、更に食肉中の旨味成分の流出が防止され好適な食感・風味を付与できる。更には、茶成分によって燻煙で食肉の表面に付着したスモークやタール等の人の健康に好ましくない燻煙成分を除去できる。
【0132】
このようにして、茶葉から抽出した茶成分含有液の茶成分によって、確実に微生物の増殖が抑制されて保存性が高い食肉加工品の製造方法となる。
加えて、湯に茶葉を浸漬して得た茶成分含有液に対して燻煙させた食肉を浸漬させる等によって燻煙した食肉に茶成分を再び浸透させることで、カテキン等の茶成分自体が有する抗菌・殺菌効果によって微生物の増殖がより抑制されると共に、茶成分によってより肉質が引き締まり、より弾力性が良く、更に食肉中の旨味成分の流出が防止され好適な食感・風味が付与される。更には、茶成分によって燻煙で食肉の表面に付着したスモークやタール等の人の健康に好ましくない燻煙成分が除去される。
【0133】
上記実施の形態3または実施の形態4の食肉加工品の製造方法の前記脱塩した食肉を浸漬する茶成分含有液は、1℃〜5℃の範囲内としたものである。
1℃〜5℃の範囲内としたものであるから、風味の低下を防止できると共に、微生物の増殖を抑制することができる。特に、低温であることでより肉質が引き締まって脱水効果が高まるため、微生物の増殖抑制効果を高めることができる。
【0134】
上記実施の形態3または実施の形態4の食肉加工品の製造方法の前記茶成分含有液は、前記湯100重量部に対して茶葉1重量部以上、10重量部以下の割合の範囲内で得たものである。
1つに記載の効果に加えて、前記湯100重量部に対して茶葉1重量部以上、10重量部以下の割合の範囲内で得た前記茶成分含有液は、所定の加工した食肉を浸漬させることで、風味が損なわれることなく、十分な微生物抑制効果が発揮される。
【0135】
即ち、茶成分含有液において湯100重量部に対して茶葉が1重量部未満であると、茶成分の量が小さすぎて十分に微生物を抑制できない恐れがあり、一方、湯100重量部に対して茶葉が10重量部を超えると、茶成分の渋みが強く食肉の風味を損ねたり色調が黒くなって外観を損ねたりする可能性がある。
したがって、この発明の食肉加工品の製造方法によれば、茶葉から抽出した茶成分含有液の茶成分によって、風味が損なわれることなく、確実に微生物の増殖が抑制されて保存性が高い食肉加工品となる。
【0136】
上記実施の形態1から上記実施の形態4においては、例えば、実施の形態1及び実施の形態2においては、ステップS7乃至ステップS10の間は食肉の温度を下げることなく処理している。実施の形態3及び実施の形態4においても、ステップS25乃至ステップS28の間は食肉の温度を下げることなく処理している。したがって、食肉の芯の温度が低下しないから、食肉に茶成分を再び浸透させることで、茶成分自体が有する抗菌・殺菌効果によって微生物の増殖がより抑制されると共に、茶成分によってより肉質が引き締まり、より弾力性が良く、更に食肉中の旨味成分の流出が防止され好適な食感・風味が付与される。
図1
図2
図3
図4