(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1乃至第4アームが前記電線を挟持するべく弾性付勢されているとき、前記第1及び第2アームの先端部が前記第3及び第4アームの先端部と交差するように、前記第1乃至第4アームは形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の電線の挟持装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0012】
[実施形態]
図1〜
図7を参照して、本発明の実施形態における電線の挟持装置について説明する。
【0013】
===構成===
図1及び
図2は、本実施形態における電線の挟持装置を示す斜視図であって、
図1は、アームが弾性力によって閉じている状態(アームの先端同士が交差している状態)を、
図2は、アームが弾性力に抗して開いた状態を夫々表す。
図3は、アームが弾性力によって閉じている状態(アームの先端同士が交差している状態)を示す正面図及び左側面図、
図4は、アームが弾性力に抗して開いた状態を示す正面図である。
図1では、アーム23,24において他の部材に隠れて見えない部分と把持面54が破線で示され、
図3(a)及び
図4では、電線81,82が二点鎖線で示されている。
【0014】
なお、
図1〜
図4に示されるように軸部4の軸方向をx軸方向、鉛直方向をz軸方向、軸部4と直交する水平方向をy軸方向と定め、以下の説明で用いることとする。
【0015】
図1に示されるように、電線の挟持装置1は、4本のアーム21〜24と、軸部4と、操作片51,52と、弾性部材6とを備えている。
【0016】
[アーム]
アーム21〜24は、電線を挟持する部材であって、夫々軸部4から延在するとともに、アーム21,23,22,24の順に隣り合って配置されている。
【0017】
アーム21,22は、同様に湾曲した形状を呈するとともに、軸部4を中心として同一方向に一体的に回動する。また、アーム23,24は、x軸方向から見て軸部4の軸線を含みxz平面に平行な面に対してアーム21,22と対称になるように、同様に湾曲した形状を呈するとともに、アーム21,22との間に電線81,82が挟持されるように、軸部4を中心としてアーム21,22とは反対方向に一体的に回動する。なお、アーム21〜24は、弾性部材6によって、アーム21〜24の間に電線81,82を挟持する方向、つまり、アーム21,22はy軸の正方向、アーム23,24はy軸の負方向に弾性付勢されている。
【0018】
また、アーム21〜24は、電線81,82を挟持するべく弾性付勢されているとき、
図3(a)に示されるようにアーム21,22の先端部がアーム23,24の先端部と交差するように、形成されている。
【0019】
アーム21〜24において電線81,82に対向する面には、緩衝部材31〜34が夫々固定されている。緩衝部材31〜34は、電線81,82がアーム21〜24によって損傷しないように保護するとともに、電線81,82がアーム21〜24に沿って滑らないように保持する。緩衝部材31〜34は、例えばゴムや軟質の樹脂からなる部材であって、電線81,82に押し当てられると電線81,82の表面に沿って変形し、電線81,82から離れると元の形状に復元する。緩衝部材31〜34は、
図3(a)に示されるように、アーム21〜24の両端の近傍では比較的薄く、中央付近に向かうに連れて徐々に厚くなるように形成されている。
【0020】
なお、
図3(b)に示されるように、アーム21〜24のx軸方向の幅は同じであり、例えば夫々20mmである。
【0021】
緩衝部材31〜34のx軸方向の幅は、アーム21〜24のx軸方向の幅と同程度であり、例えば夫々20mmである。また、緩衝部材31〜34のx軸方向の幅が各20mmのとき、緩衝部材31〜34の電線81,82に対向する各面(ただし先端部を含まない)のz軸方向の長さは100mm、この各面の面積は約800mm
2である。この寸法のとき、緩衝部材31〜34が、断面積200mm
2の電線を挟持する際にその電線に接触する面積は480mm
2ほどである。
【0022】
また、アーム21〜24は、例えば硬質の樹脂からなる部材であって、弾性部材6の弾性力及び後述する縁線84の反発力の下で実質的に変形しない程度の強度を有する。
【0023】
[操作片]
操作片51,52は、アーム21,22とアーム23,24とが弾性部材6の弾性力に抗して回動するように、軸部4を介してアーム21〜24を操作するための部材である。操作片51は、後述する軸4A,4A’と一体化され、アーム21,22とは反対方向に延在し、また、操作片52は、後述する軸4B,4B’と一体化され、アーム21,22とは反対方向に延在する。操作片51と52とは、軸部4の軸線を含みxz平面に平行な平面に対して対称に配置されており、アーム21〜24が電線81,82を挟持するべく弾性付勢されている状態においては、
図3(a)に示されるように互いに離れた位置にある。
【0024】
操作片51,52は、端部に沿って形成された把持面53,54を各々有する。把持面53,54は、ヤットコなどの間接活線作業用の作業具で把持され、弾性部材6の弾性力に抗する方向に押圧される面である。把持面53,54が押圧されると、操作片51,52は互いに近づくように回動する。
【0025】
把持面53,54のx軸方向の両端には、環状部55,56が夫々設けられている。環状部55,56は、間接活線作業用の作業具でx軸方向から把持面53,54を把持するときに、作業具が挟持装置1から外れないように、作業具の先端部を掛止する部材である。
【0026】
なお、操作片51,52は、例えば硬質の樹脂からなる部材である。また、操作片51,52のx軸方向の幅は、例えば、アーム21〜24の幅が各20mmであるとき、夫々80mmほどである。
【0027】
[軸部]
軸部4は、アーム21〜24および操作片51,52が回動する際に中心となる部材であり、軸4A,4A’と4B,4B’を含む。軸4A,4A’,4B,4B’は同軸である。軸4A,4A’は、夫々アーム21,22と一体的に設けられるとともに、操作片51とも一体化されている。また、軸4B,4B’は、夫々アーム23,24と一体的に設けられるとともに、操作片52とも一体化されている。したがって、操作片51,52を弾性部材6の弾性力に抗して互いに近付けると、軸4A,4A’と4B,4B’は、夫々アーム21,22と23,24を開く方向に、同期して回動する。
【0028】
なお、軸部4は、例えば樹脂部材である。また、アーム21、22,軸4A,4A’及び操作片51、また、アーム23、24,軸4B,4B’及び操作片52は、夫々樹脂成型によって一体的に作製されてもよい。
【0029】
[弾性部材]
弾性部材6は、アーム21〜24の間に電線81,82を挟持する方向にアーム21〜24を弾性付勢する部材であり、操作片53,54が互いに遠ざかる方向に操作片53,54を弾性付勢する部材でもよい。弾性部材6は、
図3(a)及び
図4に示されるように軸部4に設けられ、例えばバネである。典型的な縁線の断面積は25mm
2、58mm
2及び200mm
2であるところ、このような縁線について、切断した縁線を曲げることによって縁線に生ずる反発力に抗して確実に他の電線に仮固定するためには、アームに10N程度の弾性力を付与するバネを用いることが好ましい。
【0030】
なお、挟持装置1全体のz軸方向の長さは、例えば、アーム21〜24のx軸方向の幅が各20mmであるとき、約230mmである。
【0031】
===使用方法===
図1,
図2,
図5〜
図7を参照して、本発明の実施形態における挟持装置の使用方法を説明する。
【0032】
[挟持装置の動作]
挟持装置1の動作を説明する。操作片51,52の把持面53,54を例えば間接活線作業用の作業具で押圧すると、操作片51と52とは、弾性部材6の弾性力に抗して互いに近づくように回動し、アーム21,22とアーム23,24とは互いに遠ざかるように回動する(
図2参照)。この状態で、電線81,82をアーム21,22とアーム23,24の間に挿入し、把持面53,54の押圧を弱めると、操作片51と52とは、弾性部材6の弾性力により互いに離れるように回動し、アーム21,22と23,24とは、電線81,82を挟持するように回動する(
図1参照)。
【0033】
電線が挟持装置1に挟持された状態において、電線81,82は、軟質の部材である緩衝部材31〜34に接触し、硬質の部材であるアーム21〜24には接触しない。したがって、電線81,82は挟持装置1によって損傷しない。また、緩衝部材31〜34は電線81,82の表面に沿って変形するため、電線81,82は、緩衝部材31〜34に食い込み、移動しないように挟持される。したがって、電線81,82が確実に挟持される。
【0034】
また、アーム21,22及び23,24の先端部は、電線81,82が挟持された状態において交差する。そのため、電線の反発力によってアーム21,22及び23,24同士が離れるような力が作用し、アーム21,22及び23,24の先端部同士が近付いて交差の程度が小さくなった場合でも、電線がアーム21,22及び23,24の先端部から外れない。したがって、電線を確実に挟持できる。
【0035】
[挟持装置の使用態様]
図5は、挟持装置が使用される典型的な状況を示す。挟持装置1は、
図5に示されるように、電線83、83同士を接続している縁線84を切断し、長い方の縁線84と繋がっている方の電線83に仮固定する場合に使用される。したがって、以下、このような状況の下で挟持装置1の使用する方法を説明する。なお、
図5に示された電線83,83は3相電線のうちの1相であり、他の2相の電線の図示は省略されている。
【0036】
図6は、挟持装置1を用いて、切断した縁線84を電線83に仮固定する3つの態様を示している。
図6(a)は、縁線84の先端近傍が電線83に沿った状態で仮固定された様子を示す。切断された縁線84は、先端部にキャップを被せるなどの保護処理を施され、電線83の方に曲げられる。そして、縁線84の先端部が電線83に沿うように配置された後、挟持装置1で挟持される。この場合、縁線84及び電線83は、挟持装置1のアーム21〜24の全体で挟持される。アーム21〜24は軸部4の軸方向に沿って並んでいるため、挟持される縁線84及び電線83と緩衝部材31〜34とが接触する箇所は、軸部4の軸方向に亘る。したがって、安定した挟持が実現される。
【0037】
また、
図6(b)は、縁線84の先端近傍が電線83にほぼ直交した状態で仮固定された様子を示す。先端部に保護処理を施されて電線83の方に曲げられた縁線84は、電線83とほぼ直交するように配置され、挟持装置1で挟持される。この場合、例えば、挟持装置1のアーム21〜24全部で電線83を挟持すると同時に、同じ向きのアーム(21と22,23と24)の間に縁線84を通すようにする。逆に、アーム21〜24全部で縁線84を挟持すると同時に、同じ向きのアーム(21と22,23と24)の間に電線83を通すようにしてもよい。この場合、縁線84の反発力を、アーム21〜24が回動する方向だけでなく、軸部4の軸方向に分散させることで、確実な挟持を図っている。
【0038】
図6(c)は、縁線84の先端近傍が電線83に交差した状態で仮固定された様子を示す。
図6(b)との違いは、縁線84と電線83とが直交ではない形で交差していることである。この場合、縁線84及び電線83が、挟持装置1のアーム21〜24の全体で挟持されることは、
図6(a)と同様である。したがって、挟持される縁線84及び電線83と緩衝部材31〜34とが接触する箇所は、やはり軸部4の軸方向に亘るため、安定した挟持が実現される。
【0039】
作業者は、上述した
図6(a)〜(c)の挟持の態様から、現場の状況に応じて、より確実な仮固定に適した態様を選択すればよい。このように複数の仮固定の仕方を提供することができることは、確実な仮固定に資する。
【0040】
上述した使用方法は、ヤットコなどの間接活線作業用の作業具を用いて行われてもよい。
図7は、このような作業具を用いる場合における操作片51,52の使用の態様を示す。
【0041】
挟持装置1をヤットコ91で支持しながら仮固定の作業を行う場合、作業者は、通常、仮固定を行う電線83の箇所の下方に位置取り、挟持装置1のアーム21〜24の先端部を電線83の方に向ける。そして、ヤットコ91の先端部を操作片51,52の端部に直交する方向から差し入れ、把持面53,54を押圧してアーム21〜24を開いて縁線84及び電線83を挟み込む。
【0042】
しかし、現場の状況によっては、作業者は上記のように位置取りすることが難しい場合がある。その場合、作業者は、例えば、ヤットコ91が電線83に平行になるように位置取りし、ヤットコ91の先端部を、軸部4の軸方向から環状部55,56を介して把持面53,54に通すことで、挟持装置1を脱落させることなく安定的に把持することができる。
【0043】
つまり、本実施形態における挟持装置では、2つの把持方法が利用可能であり、作業者は、現場の状況に応じて、挟持装置1をより安定的に把持できる手法を選ぶことができるから、確実な仮固定作業が期待される。
【0044】
前述したとおり、アーム21,22は、軸部4を中心に同一方向に回動する。アーム23,24は、アーム21,22の夫々に隣り合うように配置され、アーム21,22との間に電線81,82が挟持されるように、軸部4を中心にアーム21,22とは反対方向に回動する。弾性部材6は、アーム21〜24が電線81,82を挟持する方向に、アーム21〜24を弾性付勢する。したがって、電線81,82は、4本のアーム21〜24によって挟持されるため、電線81,82がアーム21〜24の先端部から外れにくい。また、アーム21〜24が電線81,82を挟持するために電線81,82に接触する箇所が、軸部4の軸方向に亘って広がるので、電線81,82の反発力が分散され、電線81,82の安定的な挟持が可能である。よって、切断された電線を他の同相の電線に確実に仮固定することができる。
【0045】
また、アーム21,22とアーム23,24とは、夫々一体的に回動する。したがって、アーム21,22の夫々と23,24の夫々とに同じだけ弾性力が与えられる。すなわち、弾性部材6の弾性力がアーム21〜24に均等に付与されることで、電線の安定的な挟持が可能となる。
【0046】
また、アーム21〜24は、アーム21,23,22,24の順に隣り合うように配置される。したがって、電線81,82は、アーム21,23,22,24の順に、つまり、電線81,82におけるy軸方向の両側から交互に挟まれることになり、電線81,82の反発力がアーム21〜24にほぼ均等に分散される。また、電線81,82の反発力の向きや大きさに応じた仮固定の方法を選択することができる。よって、アーム21〜24による電線81,82の挟持が安定し、電線の確実な仮固定に繋がる。
【0047】
また、操作片51,52は、アーム21,22とアーム23,24とが弾性部材6の弾性力に抗して回動するように、軸部4を介してアーム21〜24を操作する。したがって、アーム21〜24を開閉したりアーム21〜24の間に電線を挟み込んだりする際の操作性が向上し、引いては、電線の確実な仮固定に資する。
【0048】
また、アーム21,22とアーム23,24とは、アーム21〜24で電線81,82が挟持されるように湾曲又は屈曲した形状を呈している。したがって、アーム21〜24の間に電線81,82が挟持された状態において、電線81,82は、アーム21〜24の先端から外れることなくアーム21〜24の湾曲又は屈曲した箇所の近傍に掛止される。よって、電線の確実な仮固定が可能となる。
【0049】
また、アーム21,22とアーム23,24とは、軸部4の軸方向から見て対称となるように湾曲又は屈曲した形状を呈している。アーム21〜24が対称であることにより、作業者はアーム21〜24の向きを気にすることなく挟持装置1を電線81,82に装着することができるから、操作性が向上する。
【0050】
また、アーム21〜24が電線81,82を挟持するべく弾性付勢されているとき、アーム21,22の先端部がアーム23,24の先端部と交差するように、アーム21〜24は形成されている。したがって、アーム21〜24が電線81,82の反発力によって開く方向に回動した場合でも、直ちにアーム21〜24の先端部同士が離れて隙間ができることはない。よって、電線81,82はアーム21〜24の先端部から外れないため、電線81,82の確実な仮固定が可能となる。
【0051】
また、緩衝部材31〜34は、アーム21〜24の電線81,82と対向する面に対して固定されている。したがって、電線81,82は、アーム21〜24に挟持されたときに、緩衝部材31〜34に接触し、電線81,82の損傷防止に繋がる。また、緩衝部材31〜34が電線81,82の表面に沿って変形することで、緩衝部材31〜34と電線81,82とが接触する面積が増加するため、電線が確実に挟持される。
【0052】
また、操作片51,52は、間接活線作業用の作業具で把持され、弾性部材6の弾性力に抗する方向に押圧される把持面53,54を有する。したがって、挟持装置1を間接活線作業用の作業具で把持することが容易となり、挟持装置1の操作性が向上する。
【0053】
なお、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0054】
例えば、アーム21〜24が隣り合う順序は、アーム21,22,23,24でも、アーム21,23,24,22でもよい。この場合、アーム21と22,アーム23と24,アーム21,22と23,24は、夫々互いに入れ替えられてもよい。
【0055】
また、アーム21〜24は、屈曲した形状を呈していてもよい。
【0056】
また、アーム21と22とは、夫々独立して回動するように、軸4A,4A’を介して操作片51に連結されていてもよく、アーム23と24もまた、夫々独立して回動するように、軸4B,4B’を介して操作片52に連結されていてもよい。
【0057】
また、アーム21と22は夫々異なる形状を呈していてもよい。アーム23と24もまた夫々異なる形状を呈していてもよい。
【0058】
また、アーム21,22と23,24とは、軸部4の軸方向から見て対称になっていなくてもよい。
【0059】
また、アーム21〜24のx軸方向の幅は、z軸方向に亘って同一である必要はなく、アーム21〜24の先端部同士が交差する限り、例えば、アーム21〜24の両端部以外の部分のx軸方向の幅の方が大きくてもよい。