特許第5848312号(P5848312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5848312
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月27日
(54)【発明の名称】使い捨ておむつ
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/49 20060101AFI20160107BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20160107BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20160107BHJP
【FI】
   A41B13/02 B
   A41B13/02 E
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-241158(P2013-241158)
(22)【出願日】2013年11月21日
(65)【公開番号】特開2015-100412(P2015-100412A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2015年3月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
(74)【代理人】
【識別番号】100101292
【弁理士】
【氏名又は名称】松嶋 善之
(74)【代理人】
【識別番号】100112818
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 昭久
(72)【発明者】
【氏名】南崎 亜由香
【審査官】 一ノ瀬 薫
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第5300053(US,A)
【文献】 特開2008−284190(JP,A)
【文献】 特開2001−293034(JP,A)
【文献】 特開2012−40260(JP,A)
【文献】 特開2012−90818(JP,A)
【文献】 特開2012−10905(JP,A)
【文献】 特開2004−65929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/00
A61F 13/15 − 13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌対向面を形成する表面シート、非肌対向面を形成する外層シート及び両シート間に位置する吸収体を備えた縦長の使い捨ておむつであって、
前記吸収体は、前記使い捨ておむつの長手方向に長い形状の吸収性コアを有し、該吸収性コアは吸水性ポリマーを含んでおり、
前記吸収性コアは、平面視形状において括れた部分を有しており、
前記吸収性コアに、前記括れた部分の最小幅と同じ長さの吸収体股下領域を設定したとき、又は前記括れた部分における最も幅が狭い部位が、該吸収性コアの長手方向に連続して存在し、最も狭い幅が連続して存在する範囲の長さが、最も幅が狭い部位の幅より長い場合における、該吸収性コアの該範囲の全域を吸収体股下領域と設定したときに、長手方向における該吸収体股下領域の前後に、面積が相互に異なる大面積領域及び小面積領域を有しており、
前記吸収性コアに、長手方向に延びるスリットが、前記吸収体股下領域から前記大面積領域に亘って形成されており、
前記スリットは、前記使い捨ておむつの長手方向の全長を2等分する中央線と交差し、該スリットの全長の80%以上が該中央線より前記大面積領域側に位置し、且つ前記大面積領域における幅が前記股下領域における幅より広い、使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記表面シートは、前記長手方向に延びる畝部及び畝部間に位置する溝部を有する請求項1記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記吸収性コアと前記外層シートとの間に、前記長手方向に伸縮する伸縮性シートを有しており、該伸縮性シートは、少なくとも股下領域における前記スリットと重なる位置に配されている、請求項1又は2記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記吸収性コアと前記外層シートとの間に、前記長手方向に交差する方向に伸縮する伸縮性シートを有しており、該伸縮性シートは、少なくとも吸収体股下領域における前記スリットと重なる位置に配されている、請求項1〜3の何れか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記吸収体は、前記吸収性コアを包むコアラップシートを有し、該吸収性コアと、その非肌対向面側に位置するコアラップシートとの間に、液拡散性に優れたスリット下敷シートが、前記スリットと重ねた状態に配されている、請求項1〜4の何れか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項6】
前記吸収性コアは、吸水性ポリマーとパルプ繊維とを含み、該吸収性コアの総質量に対する該パルプ繊維の質量の割合が50%以上である、請求項1〜5の何れか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項7】
前記吸収体は、前記吸収性コアが、拡散性の高いコアラップシートによって被覆されている、請求項1〜6の何れか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項8】
前記吸収性コアは、その長手方向における前記スリットが形成されている範囲であるスリット領域の坪量が、前記小面積領域の坪量よりも高い、請求項1〜7の何れか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項9】
前記吸収性コアの前記表面シート側の面が、液透過性が低いコアラップシートによって被覆されている、請求項1〜8の何れか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項10】
前記吸収体股下領域及び前記大面積領域に、前記スリットとは別に長手方向に延びる第2のスリット及び該長手方向と交差する方向に延びる複数本の横スリットからなる補助スリットが形成されており、前記吸収性コアに、前記スリット及び前記補助スリットにより囲まれた複数の小吸収部が形成されている、請求項1〜9の何れか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項11】
前記吸収体股下領域におけるスリットは、吸収性コアの吸液膨潤後に消失する一方、前記大面積領域におけるスリットは、吸収性コアの吸液膨潤後に消失しない、請求項1〜10の何れか1項に記載の使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつに関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつの吸収体として、フィット性を向上させる観点から、着用者の股下部に配される部分を括れた形状としたものが知られている。しかし、吸収体を括れた形状とすることは、股下部に十分な吸収容量を確保することを難しくし、股下部からの液漏れや、吸収した液が着用者の肌に戻る、いわゆる液戻りが生じ易くなる。
吸収体を構成する吸収性コアにスリットを設ける技術として、特許文献1には、上側吸収層と下側吸収層とを有する吸収性構造体に関し、下側吸収層が前後方向に延びる開口を有し、上側吸収層が前記開口の後側端を覆っている吸収性構造体が記載されている。また、特許文献2には、吸収性コアに、非肌対向面側に開口部を有するスリットを、吸収性コアの長手方向に延びるように形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−040260号公報
【特許文献2】特開2012−143542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、下側吸収層の開口で尿等が前後方向に拡散し、開口の後吸収性構造体方側に拡散した尿等が、開口の後側端が上側吸収層で覆われて形成されるポケットに収容されることが記載されている。しかし、下側吸収層の開口は、吸収性物品の中央部付近のみに形成され、しかも前側に位置する部分の方が長いので、液が股下部付近に留まりやすい。また、開口の幅が一定であるため、開口を細幅とした場合には、吸液時に、その開口の全体が閉鎖して、前後方向への液の拡散機能が損なわれやすく、開口の幅を広くした場合には、股下部における吸収容量が低下し、却って漏れやすくなる恐れがある。
特許文献2におけるスリットは、吸収性コアの前後方向に長く延びているが、吸収性コアを、前後非対称として前と後とで吸収容量に差をつけることや、スリット幅を異ならせて、吸収容量の大きい領域に効果的に誘導することについて記載されていない。
【0005】
従って、本発明は、股下部のフィット性、漏れ防止性及び着用者の肌への液戻り防止性に優れた使い捨ておむつに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、肌対向面を形成する表面シート、非肌対向面を形成する外層シート及び両シート間に位置する吸収体を備えた縦長の使い捨ておむつであって、前記吸収体は、前記使い捨ておむつの長手方向に長い形状の吸収性コアを有し、該吸収性コアは吸水性ポリマーを含んでおり、前記吸収性コアは、平面視形状において括れた部分を有しており、前記吸収性コアに、前記括れた部分の最小幅と同じ長さの吸収体股下領域を設定したときに、長手方向における該吸収体股下領域の前後に、面積が相互に異なる大面積領域及び小面積領域を有しており、前記吸収性コアに、長手方向に延びるスリットが、前記吸収体股下領域から前記大面積領域に亘って形成されており、前記スリットは、前記使い捨ておむつの長手方向の全長を2等分する中央線と交差し、該スリットの全長の80%以上が該中央線より前記大面積領域側に位置し、且つ前記大面積領域における幅が前記股下領域における幅より広い、使い捨ておむつを提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の使い捨ておむつは、股下部のフィット性、漏れ防止性及び肌への液戻り防止性に優れている
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態である使い捨ておむつを示す一部切欠平面図である。
図2図2は、図1のII−II線断面図である。
図3図3は、吸収体股下領域、大面積領域、小面積領域及びスリット領域の説明図である。
図4図4は、図1の使い捨ておむつの大面積領域のスリット付近の断面(図1のIII−III線に沿う断面)を示す断面図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、それぞれ、本発明の使い捨ておむつに好ましく用いられる表面シートの例を示す斜視図である。
図6図6(a)は、本発明の他の実施形態である使い捨ておむつの肌対向面を構成するシート及び弾性部材を除外して示す模式平面図であり、図6(b)は、図6(a)に示す使い捨ておむつの図2相当図である。
図7図7は、本発明の更に他の実施形態である使い捨ておむつの図2相当図である。
図8図8は、本発明の更に他の実施形態である使い捨ておむつの吸収性コアを示す平面図である。
図9図9(a)は、実施例に用いた吸収体における吸収性コアを示す平面図であり、図9(b)は、その吸収性コアの吸液膨潤後の状態を示す平面図である。
図10図10(a)は、比較例に用いた吸収体における吸収性コアを示す平面図であり、図10(b)は、その吸収性コアの吸液膨潤後の状態を示す平面図である
図11図11は、液透過性試験に用いた器具を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
本発明の一実施形態としての使い捨ておむつ1(以下、単におむつ1ともいう)は、図1及び図2に示すように、肌対向面を形成する液透過性の表面シート2、非肌対向面を形成する外層シート3、及び両シート2,3間に位置する液保持性の吸収体4を備えている。肌対向面は、おむつの着用時に、着用者の肌側に向けられる面であり、非肌対向面は、おむつの着用時に、着用者の肌側とは反対側に向けられる面である。本発明では、おむつ長手方向を、装着者の腹側(前側)と背中側(後側)の方向、つまり前後方向とも言う。
【0010】
おむつ1は、着用者の前後方向に対応する方向、より詳しくは着用時に着用者の前後方向と一致する方向である長手方向Xと、おむつ1を、図1に示すように平面状に広げた状態において、前記長手方向Xと交差する幅方向Yとを有している。
おむつ1は、長手方向Xに、着用時に着用者の腹側に配される腹側部A、着用時に着用者の背側に配される背側部B、及び、着用時に着用者の股間に配される股下部Cとを有している。また、本実施形態のおむつ1は、図1に示すように、展開型の使い捨ておむつであり、背側部Bの両側縁部に、ファスニングテープ5,5が設けられ、腹側部Aの外表面にファスニングテープ5,5を止着するランディングゾーン51が設けられている。また、おむつ1は、股下部Cの両側縁が円弧状に形成されており、平面視において、長手方向Xの中央部が括れた形状を有している。
【0011】
外層シート3は、おむつ1の非肌対向面(外表面)を形成するシートであり、外層シート3を、おむつ1の非肌対向面側から視た平面視形状は、おむつ1の外形形状に一致する形状を有している。外層シート3としては、例えば、液難透過性の樹脂フィルムからなるものや、樹脂フィルムの非肌対向面側に不織布を積層接着したもの等が好ましく用いられる。外層シート3は、2枚又は3枚以上のシートを、おむつ1の長手方向に連結してなるものであっても良い。
表面シート2は、液透過性の各種公知のシートからなる。本実施形態における表面シート2は、図1及び図2に示すように、外層シート3より幅が狭く、外層シート3の幅方向中央部上に配されている。表面シート2と外層シート3との間には、おむつ1の長手方向Xに長い形状の吸収体4が介在している。
【0012】
吸収体4、パルプ繊維等の繊維材料からなる繊維集合体及びこれに保持させた吸水性ポリマーの粒子からなる吸収性コア40と、該吸収性コア40を被覆するコアラップシート41,42とからなる。コアラップシート41,42としては、各種公知のものを用いることができ、例えばティッシュペーパのような透水性の薄紙や透水性の不織布等が好ましく用いられる。吸収性コア40は、吸収体4と略同じ平面視形状をしている。コアラップシート41,42は、吸収性コア40の長手方向の両端40a,40bと同位置、又は該両端40a,40bから長手方向Yに若干延出した位置に長手方向Yの両端を有している。
【0013】
図1及び図2に示すように、おむつ1の股下部Cの両側部には、レッグ部弾性部材9が伸長状態で配されている。レッグ部弾性部材9は、おむつ1の長手方向両側にそれぞれ1本又は複数本配されている。レッグ部弾性部材9は、外層シート3と立体ギャザー6,6形成用のシート材62との間に接着剤を介して固定されている。レッグ部弾性部材9は、収縮して、着用者の脚廻りに配されるレッグ部にレッグギャザーを形成する。また、おむつ1における長手方向の両側には、弾性部材61を有する立体ギャザー形成用のシート材62が配されており、おむつの着用時には、弾性部材61の収縮により、着用者の肌に向かって起立する立体ギャザー6が形成される。
【0014】
本実施形態のおむつ1においては、吸収性コア40が、図1に示すように、平面視形状において括れた部分Pを有している。
括れた部分Pは、おむつ1の長手方向Xに沿う吸収性コア40の長手方向において、前と後を、当該部位より幅が広い部位に挟まれた部位である。
【0015】
本発明における「吸収体股下領域」は、そのような吸収性コアの括れた部分に、括れた部分の最小幅と同じ長さの領域として設定する。
本発明における「吸収体股下領域」についてさらに具体的に説明する。なお、吸収性コア40の長手方向は、おむつ1の長手方向Xと同方向であるため、吸収性コア40の長手方向も長手方向Xと表現する。
図3(a)に示すように、吸収性コア40の括れた部分Pにおける最も幅が狭い部位を中心とし、長手方向Xの長さbが、前記最も幅が狭い部位の幅a(最小幅)と同一の長さを有する領域を吸収体股下領域40cとする。
また、図3(b)に示すように、最も幅が狭い部位が、吸収性コア40の長手方向Xに直線状に連続して存在する場合には、以下のように吸収体股下領域40cを設定する。
最も狭い幅がX方向に直線状に連続して存在する範囲の長さcが、最も幅が狭い部位の幅a(最小幅)以下である場合(c≦a)には、該長さcを2等分する位置を中心とし、長手方向Xの長さbが、前記最も幅が狭い部位の幅a(最小幅)と同一の領域を吸収体股下領域40cとする。他方、図3(b)に示すように、最も狭い幅が連続して存在する範囲の長さcが、最も幅が狭い部位の幅a(最小幅)より長い場合(c>a)には、例外的に、吸収性コア40の該範囲(最も狭い幅が連続して存在する範囲の全域を吸収体股下領域40cとする。
【0016】
本実施形態のおむつ1においては、吸収性コア40の括れた部分Pは、おむつ1における、両側縁が凹状をなす股下部C内に形成されている。また、おむつ1の股下部Cにおける最小幅部(幅が最小の部位)を中心として、おむつ1の長手方向に、吸収性コアの括れた部分Pの最小幅aと同じ長さの範囲(おむつの範囲)を設定したときに、該範囲内に、吸収性コア40の括れた部分Pにおける幅が最小の部位が存在する。また、おむつ1の長手方向の全長Lを2等分する中央線CLを中心として、おむつ1の長手方向に、吸収性コアの括れた部分Pの最小幅aと同じ長さの範囲(おむつの範囲)を設定したときにも、該範囲内に、吸収性コア40の括れた部分Pにおける幅が最小の部位が存在する。
【0017】
本実施形態における吸収性コア40は、その長手方向Xにおける、前述のように定義された吸収体股下領域40cの前と後に、面積が相互に異なる大面積領域40a及び小面積領域40bを有している。図3に示すように、大面積領域40a及び小面積領域40bの面積は、それぞれ、吸収性コアを平面状に広げた状態における平面積であり、それぞれの面積にはスリット7部分の面積も含める。
図1及び図3(b)に示す吸収性コア40は、吸収体股下領域40cに対して、腹側部A側に大面積領域40aを有し、背側部B側に小面積領域40bを有している。そのため、排尿量が比較的増加した月例以後の高月齢用の幼児用に適している。他方、本発明の使い捨ておむつにおける吸収性コア40は、吸収体股下領域40cに対して、背側部B側に大面積領域40a、腹側部A側に小面積領域40bを有するものであっても良い。その場合、液体状の大便の排泄量が多い低月齢の乳幼児用に適したものとなる。
【0018】
本実施形態における吸収性コア40について更に説明すると、吸収性コア40には、図1に示すように、長手方向Xに延びるスリット7が、吸収体股下領域40cから大面積領域40aに亘って形成されている。また、スリット7は、おむつの長手方向の全長Lを2等分する中央線CLと交差し、該スリット7の全長L1の80%以上が該中央線CLより大面積領域40a側に位置している。
本発明において、スリットとは、吸収性コアの一部に形成した、吸収性コアの形成材料が存在しない部分であり、一方向に長い形状を有している。スリットは、吸収性コアの形成材料である吸収コア形成材料が低坪量に存在しても構わない。ただし、スリットは、吸収性コアを貫通していることが好ましい。また、スリット部分に吸収コア形成材料が低坪量に存在する場合、その坪量は、吸収性コアの他の部分(例えば、スリットに隣接する部分)の坪量の15%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
スリット7及び後述する第2のスリット7Aは、おむつ1の長手方向と同方向である吸収性コアの長手方向に長い形状を有しており、後述する横スリット7Bは、吸収性コアの長手方向と交差する方向Yに長い形状を有している。
【0019】
吸収体股下領域40cに中央線CLと交差するスリット7を有し、該スリット7が、大面積領域40aまで延在して、その全長L1の80%以上が中央線CLより大面積領域40a側に位置することで、幅が狭く吸収容量が小さい吸収体股下領域40c上に排泄された尿や液状の便(以下、尿等という)を、効率良く大面積領域40aの広い範囲に拡散させて吸収させることができる。特に、スリット7は、大面積領域40aにおける幅W2が、吸収体股下領域40cにおける幅W1より広くなっているため、大面積領域40aが吸液して吸水性ポリマーが膨潤しても、少なくとも、大面積領域40aにおけるスリット7の開口状態が維持され〔図9参照〕、上述したスリット7による液の拡散機能が良好に維持される。
本実施形態の使い捨ておむつ1によれば、吸収性コア40における大面積領域40aの高い吸収容量を有効活用することができ、股下部における良好なフィット性を維持しつつ、股下部からの液漏れや、吸収した液が着用者の肌に触れる状態に戻る液戻りも効果的に抑制することができる。
【0020】
このような効果が一層確実に奏されるようにする観点から、吸収性コア40は以下の一又は二以上の条件を満たすことが好ましい。
スリット7は、前記中央線CLより大面積領域40a側に位置する部分の長さL2(図1参照)が、スリットの全長L1(図1参照)の、好ましくは80〜95%、更に好ましくは85〜95%である。
また、スリット7の全長L1は、前記外層シート3の全長Lの、好ましくは40〜70%、更に好ましくは50〜60%である。
【0021】
本実施形態における吸収性コア40のスリット7は、図1に示すように、相対的に幅が狭い細幅部分71と相対的に幅が広い広幅部分72を有しており、細幅部分71は、主として吸収体股下領域40cに存在し、広幅部分72は、主として大面積領域40aに存在する。
本実施形態におけるスリット7は、細幅部分71と広幅部分72の境界が、吸収体股下領域40cと大面積領域40aの境界よりも大面積領域40a側に位置しているが、細幅部分71と広幅部分72の境界は、吸収体股下領域40cと大面積領域40aの境界と同じ位置にあっても良い。
【0022】
また、スリット7は、広幅部分72の幅W2が細幅部分71の幅W1の、好ましくは1.5〜4.0倍、更に好ましくは2.0〜3.0倍である。
また、スリット7の細幅部分71の幅W1は、好ましくは20mm以下、更に好ましくは15mm以下であり、また、好ましくは3mm以上、更に好ましくは5mm以上である。また、スリット7の広幅部分72の幅W2は、好ましくは4.5mm以上、更に好ましくは7.5mm以上であり、また、好ましくは30mm以下、更に好ましくは20mm以下である。また、広幅部分72の幅W2と細幅部分71の幅W1との差(W2−W1)は、好ましくは2mm以上、更に好ましくは5mm以上であり、また、好ましくは30mm以下、更に好ましくは20mm以下である。
【0023】
大面積領域40aの面積は、小面積領域40bの面積の、好ましくは150%以上であり、更に好ましくは200%以上であり、また好ましくは500%以下、更に好ましくは400%以下であり、また、好ましくは150〜500%であり、更に好ましく200〜400%である。
大面積領域40aの面積は、吸収体股下領域40cの面積の、好ましくは300%以上であり、更に好ましくは400%以上であり、また好ましくは600%以下、更に好ましくは500%以下である。小面積領域40bの面積は、吸収体股下領域40cの面積の、好ましくは110%以上であり、更に好ましくは120%以上であり、また好ましくは300%以下、更に好ましくは200%以下である。
【0024】
また、本実施形態におけるスリット7は、図2及び図4に示すように、吸収体股下領域40c及び大面積領域40aの何れにおいても吸収性コア40を厚み方向に貫通している。また、細幅部分71と広幅部分72は、それぞれ、長手方向Xに亘って幅が均一である。また、スリット7は、本実施形態におけるように、小面積領域40bには延在していないことが好ましい。
吸収性コア40に形成するスリット7においては、図2に示すように、スリット7と重なる部分において、吸収性コア40の肌対向面側に位置する上側コアラップシート41と、非肌対向面側に位置する下側コアラップシート42との間が、非接合又は離間状態となっていても良いし、図3に示すように、スリット7と重なる部分において、吸収性コア40の肌対向面側に位置する上側コアラップシート41と、非肌対向面側に位置する下側コアラップシート42との間が接合されていても良いが、吸収体股下領域40cにおける細幅部分71においては、スリット7を介して上下のシート41,42間が接合されていることが、排泄物の拡散性の点から好ましく、大面積領域40aにおける広幅部分72においても、スリット7を介して上下のシート41,42間が接合されていることが、排泄物の拡散性の点から好ましい。図4に示す例においては、スリット7内に、上側のコアラップシート41及び表面シート2が陥入して、それらが下側のコアラップシート42及び外層シート3と一体化されている。
【0025】
表面シート2としては、使い捨ておむつの表面シートとして従来用いられている各種のシート等を特に制限なく用いることができ、例えば、開孔フィルムや単層又は多層構造の各種製法による不織布を用いることができるが、表面シート2としては、図5(a)及び図5(b)に示す表面シート2A,2Bのように、おむつの長手方向Xに延びる畝部21及び畝部21,21間に位置する溝部22を有するものを用いることが、吸収体股下領域40c上に排泄された尿等の、大面積領域40aへの拡散が一層促進されるので好ましい。
【0026】
図5(a)に示す表面シート2Aは、単層又は多層構造の不織布に立体的な形状を付与したものであり、おむつの長手方向Xと交差する幅方向Yの断面形状が、上下面とも連続波状をなし、畝部21の内に空洞を生じるものである。表面シート2Aは、溝部22の下面が、その下に配されるシート、例えばコアラップシート41や、表面シート2とコアラップシートとの間に配されるセカンドシートに接合されることが好ましい。このような表面シート2Aとしては、例えば、特開1996−302555号公報、特開1996−246321号公報、及び特開2004−275296号公報に記載のもの等を用いることができる。
図5(b)に示す表面シート2Bは、おむつの長手方向Xと交差する幅方向Yの断面形状が、上面は連続波状をなす一方、下面は、略平坦であり、畝部21の内部は中実である。このような表面シート2Bとしては、例えば、特開2009−299227号公報、特開2001−095845号公報、及び特開2008−025079号公報に記載のもの等を用いることができる。
【0027】
本発明の使い捨ておむつは、図6に示す使い捨ておむつ1Aのように、吸収性コア40と外層シート3との間に、おむつの長手方向X又は該長手方向に交差する方向Yに伸縮する伸縮性シート8を有し、該伸縮性シート8が、少なくとも吸収体股下領域40cにおけるスリット7と重なる位置に配されていることも好ましい。使い捨ておむつ1Aにおいては、伸縮性シート8が、吸収性コア40の非肌対向面側を被覆する下側のコアラップシート42と外層シート3との間に配されている。使い捨ておむつ1Aについて、特に説明しない点は、上述したおむつ1と同様である。
【0028】
伸縮性シート8として、おむつの長手方向Xに伸縮するものを配して、吸収体4やその吸収性コア40を、おむつの長手方向に収縮させることにより、吸収体4や吸収性コア40の単位面積当たりの吸収容量を増加させることができる。それにより、股下部C等からの液漏れを一層確実に防止することができる。斯かる効果が一層確実に奏されるようにする観点から、伸縮性シート8は、それを挟む上下の部材の少なくとも一方に長手方向Xに伸長させた状態で接合されていることが好ましい。また、同様の観点から、伸縮性シート8は、図6(a)に示すように、吸収体股下領域40cから大面積領域40aに亘って、スリット7と重なるように配されていることが好ましい。接合手段としては、接着剤等の各種公知の方法を採用でき、また、接合は全面的に接合されていても良いし、特定のパターンで部分的に接合されていても良い。
【0029】
他方、伸縮性シート8として、おむつの長手方向Xと交差する方向Y、好ましくは長手方向Xと直交する方向Yに伸縮するものを配した場合には、吸収体4やその吸収性コア40を、おむつの幅方向に収縮させることにより、股下部C等における着用者の肌へのフィット性を向上させることができる。また表面シート2にも、長手方向Xに延びるシワが生じて、液の長手方向Xへの拡散性が向上するため、吸収体股下領域40cが存在する股下部Cに、尿等が滞留することを一層確実に防止することができる。
斯かる効果が奏されるようにする観点から、伸縮性シート8は、それを挟む上下の部材の少なくとも一方に幅方向Yに伸長させた状態で接合されていることが好ましい。また、同様の観点から、伸縮性シート8は、図6(a)に示すように、吸収体股下領域40cから大面積領域40aに亘って、スリット7と重なるように配されていることが好ましい。接合手段としては、接着剤等の各種公知の方法を採用でき、また、接合は全面的に接合されていても良いし、特定のパターンで部分的に接合されていても良い。
【0030】
伸縮性シート8としては、ポリウレタンやエラストマーからなる弾性シートを用いることもできるが、例えば、特開2013−189745号公報、特開2013−81715号公報等に記載の伸縮性シートのように、伸縮時の厚みが薄く、着用者の体に密着するものを用いることが股下部からの液モレを抑制する点から好ましい。また、伸縮性シート8としては、おむつの長手方向X及びその交差方向の両方向に伸縮性を有するものを用いることも好ましい。
【0031】
本発明の使い捨ておむつは、図7に示す使い捨ておむつ1Bのように、吸収体4が、吸収性コア40を包むコアラップシート41,42を有し、該吸収性コア40と、その非肌対向面側に位置するコアラップシート42との間に、液拡散性に優れたスリット下敷シート43が、スリット7と重ねた状態に配されていることも好ましい。使い捨ておむつ1Bにおける液高拡散性のシート43は、吸収性コア40の平面視における配置範囲が、使い捨ておむつ1Aにおける伸縮性シート8と同様であり、吸収体股下領域40cのみならず、吸収体股下領域40cから大面積領域40aに亘るスリット7と重なるように配されている。
【0032】
スリット下敷シート43に関し、「液拡散性に優れた」とは、JIS P 8141に規定される「紙及び板紙のクレム法による吸水度試験方法」によって得られるクレム吸水度が10分で100mm以上、特に150mm以上の範囲にあることを意味する。
【0033】
使い捨ておむつ1Bのように、吸収性コア40の非肌対向面側にスリット7部分を覆うようにスリット下敷シート43を配することで、スリット7を介した液の長手方向Xへの拡散性が一層向上し、液漏れや、液戻りを一層確実に抑制することができる。
スリット下敷シート43としては、例えば、特開2004−298384に記載の合成繊維および合成繊維とセルロース系繊維の両繊維からなる不織布、または特開2013−150799に記載の叩解パルプと再生セルロースより成る不織布等を用いることができる。
【0034】
上述したおむつ1,1A,1Bにおける吸収性コア40は、前述したように、パルプ繊維等の繊維材料からなる繊維集合体及びこれに保持させた吸水性ポリマーの粒子からなる。繊維集合体を構成する繊維材料としては、パルプ繊維、レーヨン繊維、コットン繊維、酢酸セルロース等の親水性繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリエステル、ポリアミド等の縮合系繊維等を用いることできる。吸水性ポリマーの粒子としては、例えば、使い捨ておむつに従来用いられている各種の吸水性ポリマーを特に制限なく用いることができ、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体、(でんぷん−アクリル酸)グラフト共重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物、ポリアスパラギン酸等からなる粒子等が挙げられる。
吸収性コア40は、空気流に載せて供給した繊維材料を、所定形状の積繊用凹部内に吸引して堆積させる積繊工程を経て得られるものが好ましく、繊維材料とともに吸水性ポリマーを空気流に乗せて供給し、混合状態等の所定の堆積状態に堆積させて製造したものがより好ましい。前述したスリット7は、積繊ドラムの積繊用凹部内に、スリット7に対応する形状の非通気性の凸部等を設けることにより容易に形成することができる。
【0035】
本発明における吸収性コアは、吸水性ポリマーとパルプ繊維とを含み、該吸収性コアの総質量に対する該パルプ繊維の質量の割合が50%以上であることが、吸液により膨潤した吸水性ポリマーがゲル状となって、それ以後の吸液を阻害するゲルブロッキングと呼ばれる現象を起こり難くする観点から好ましい。吸収性コアの総質量に対するパルプ繊維の質量の割合は、より好ましくは30%以上であり、また好ましくは70%以下、更に好ましくは60%以下であり、より具体的には、好ましくは40〜70%、更に好ましくは50〜60%である。吸収性コアの総質量に対する、パルプ繊維及び吸水性ポリマーの合計質量の割合は、好ましくは90〜100%であり、更に好ましくは95〜100%である。
【0036】
また、吸収体4は、吸収性コア40が、拡散性の高いコアラップシート41,42によって被覆されていることが、スリット7を介した液の拡散性を一層向上させ得るので好ましい。ここで、コアラップシートに関し、拡散性の高いとは、下記方法により測定したクレム吸水量が好ましくは0.2g/30sec・15mm以上、更に好ましくは0.2〜0.4g/30sec・15mmの範囲であることを意味する。
【0037】
〔クレム吸水量の測定方法〕
測定対象シート(薄葉紙)を室温23℃±2℃、相対湿度50%RH±2%の環境下で12時間放置して一定状態になるよう調湿する。調湿後のシートから、MDに150mm、CDに15mmの寸法の長方形形状を切り出し、この切り出された長方形形状をサンプルとする。サンプルの一方の短辺から長手方向内方に5mm離間した位置に、該短辺と平行な直線(標線)を鉛筆で引く。そして、サンプルの長辺が垂直になるように該サンプルを電子天秤の下部に吊り下げ、この吊り下げ状態を保持したままで該サンプルを前記標線まで素早く測定液(生理食塩水)中に入れる。尚、サンプルは、前記標線(鉛筆で引いた直線)が前記測定液に近くなるように吊り下げる。そして、サンプルを測定液中に入れてから30秒後の該サンプルの重量増加分を電子天秤で測定し、その測定値をクレム吸水量(g/30sec.15mm)とする。クレム吸水量が多いほど高評価となる。尚、電子天秤には、市販の電子天秤データ取り込みソフト(商品名 RsCom Ver2.40:(株)エー・アンド・デイ社製)がインストールされたパーソナルコンピュータが電気的に接続されており、これによりサンプルの重量変化を記録することができる。
【0038】
上述したおむつ1,1A,1Bにおいては、吸収性コア40の肌対向面側を被覆する上側のコアラップシート41と、吸収性コア40の非肌対向面側を被覆する下側のコアラップシート42とが別体のシートであるが、少なくとも、非肌対向面側を被覆するコアラップシート42が、ここでいう「拡散性の高い」シートであることが好ましい。
【0039】
また、本発明における吸収性コア40は、吸収体股下領域40cと大面積領域40aとを合わせた領域の内の、スリット7が形成されている範囲であるスリット領域40s(図3参照)の坪量が、小面積領域40bの坪量よりも高いことが、スリットが形成されて液の拡散性が高まっている領域の吸収容量を高めることで、モレ防止及び液戻り抑制になるので好ましい。ここで、スリット領域40s及び小面積領域40bの坪量は、それぞれの領域ごとに、質量を面積で除して算出する。質量は、吸収性コアを構成する全成分の合計質量とする。スリット領域40sの面積には、スリット7部分の面積も含める。
【0040】
本発明における吸収性コアは、表面シート側の面が、液透過性が低いコアラップシートによって被覆されていること好ましい。スリットと重なる部位に供給された尿等が、スリットの内壁面から吸収性コアに吸収されるまでの時間を長くすることで、尿等が、長手方向Xに拡散し易くなり吸収体の吸収容量を有効活用できる。ここで、コアラップシートに関し、液透過性が低いとは、下記方法により測定した液透過時間が10秒以上、好ましくは15秒以上であることを意味する。
【0041】
〔液透過時間の測定方法〕
図11に示すように、上下端が開口している内径35mmの2本の円筒91,92を、両円筒91,92の軸を一致させて上下に配し、直径55mmの金属製メッシュ網、40mm四方のカットサンプル片、およびその上側にアドバンテック社製101直径55mmのろ紙1枚をセットし、上下の円筒91,92間に挟み込む。このとき、上側の円筒91の下端及び下側の円筒92の上端に設けられた環状のフランジ部にクリップ93を嵌合させ、上下の円筒91,92を連結させることが好ましい。符号94は、円筒91,92の内径と同径同形状の貫通孔を有するゴム製等のパッキンである。このように、上下の円筒91,92でカットサンプル片を挟持固定した状態で、上側の円筒91内に、図11中符合Wで示す人工尿を40g供給する。供給された人工尿は、カットサンプル片を透過し、下側の円筒92内を通って該円筒92の下端から流れ落ちる。この下側の円筒92から流れ落ちる人工尿の重量の経時変化を、電子天秤等の重量測定手段を用いて観察し、人工尿の供給開始時から該質量が20gになるまでの時間を測定し、その時間を液透過時間とする。複数回の測定においては、カットサンプル片はその都度新しいものを用意する。測定は3回行い、平均値を測定値とする。
液透過時間の測定で使用する人工尿の組成は次の通りである。
尿素1.94質量%、塩化ナトリウム0.7954質量%、硫酸マグネシウム(七水和物)0.11058質量%、塩化カルシウム(二水和物)0.06208質量%、硫酸カリウム0.19788質量%、ポリオキシエチレンラウリルエーテル0.0035質量%及びイオン交換水(残量)。
【0042】
上述したおむつ1,1A,1Bにおいては、吸収性コア40の肌対向面側を被覆する上側のコアラップシート41と、吸収性コア40の非肌対向面側を被覆する下側のコアラップシート42とが別体のシートであるが、少なくとも、肌対向面側を被覆するコアラップシート41が、ここでいう「液透過性が低い」シートであることが好ましい。
液透過性が低いコアラップシートは、液透過時間が、好ましくは10秒以上、更に好ましくは15秒以上であり、また、好ましくは60秒以下、更に好ましくは50秒以下である。
【0043】
図8は、本発明で採用し得る吸収性コアの他の例を示す吸収性コアの平面図である。図8に示す吸収性コア40’は、例えば、上述したおむつ1,1A,1Bにおける吸収性コア40に代えて用いることができる。
吸収性コア40’においては、上述したおむつ1における吸収性コア40と同様に、吸収性コア40の幅方向Yの中央部に、長手方向Xに延びる縦長のスリット7が、吸収体股下領域40cから大面積領域40aに亘って形成されており、そのスリット7は、吸収体股下領域40cに細幅部分71を有し、大面積領域40aに広幅部分72を有している。
吸収性コア40’は、上記のスリット7に加えて、更に補助スリットとして第2のスリット7A及び横スリット7Bをスリット7とは別に有している。これらのスリット及び補助スリットは、いずれも吸収性コア40’を厚み方向に貫通している。
また、吸収性コア40’においては、吸収体股下領域40c及び大面積領域40aに、長手方向Xに延びる第2のスリット7A,7A及び該長手方向Xと交差する方向Yに延びる複数本の横スリット7Bが形成されており、該吸収性コア40’に、スリットと補助スリットにより囲まれた複数の小吸収部75,76が形成されている。より具体的には、第2のスリット7Aは、幅方向Yの中央に配されたスリット7の両側それぞれに1本づつ形成されている。横スリット7Bは、吸収体股下領域40cに1本又は複数本、大面積領域40aに複数本形成されており、それらの横スリット7Bは、それぞれ、中央のスリット7と十字状に交差するとともに、中央のスリット7を挟んでその両側に位置する第2のスリット7A,7Aのそれぞれにも連結されている。大面積領域40aに形成された横スリット7Bは、第2のスリット7Aとも十字状に交差するものを含んでいる。
【0044】
第2のスリット7A、横スリット7Bからなる補助スリットを有し、スリット及び補助スリットにより囲まれた複数の小吸収部75,76を有する吸収性コアを用いると、吸収体股下領域40c及び大面積領域40aを合わせたスリット及び補助スリット領域における液の拡散性が一層向上する。
【0045】
上述したおむつ1,1A,1B等における構成部材のうち、特に説明しないものについては、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。
【0046】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されず、適宜変更可能である。
また、本発明の吸収性物品は、幼児用や成人用の展開式(テープ止め式)の使い捨ておむつの他、幼児用や成人用のパンツ型の使い捨ておむつであってもよい。
また、上述した一の実施形態における説明省略部分及び一の実施形態のみが有する要件は、それぞれ他の実施形態に適宜適用することができ、また、各実施形態における要件は、適宜、実施形態間で相互に置換可能である。
【0047】
前述した本発明の実施形態(態様)に関し、更に以下の付記(使い捨ておむつ)を開示する。
<1>
肌対向面を形成する表面シート、非肌対向面を形成する外層シート及び両シート間に位置する吸収体を備えた縦長の使い捨ておむつであって、
前記吸収体は、前記使い捨ておむつの長手方向に長い形状の吸収性コアを有し、該吸収性コアは吸水性ポリマーを含んでおり、
前記吸収性コアは、平面視形状において括れた部分を有しており、
前記吸収性コアに、前記括れた部分の最小幅と同じ長さの吸収体股下領域を設定したときに、長手方向における該吸収体股下領域の前後に、面積が相互に異なる大面積領域及び小面積領域を有しており、
前記吸収性コアに、長手方向に延びるスリットが、前記吸収体股下領域から前記大面積領域に亘って形成されており、
前記スリットは、前記使い捨ておむつの長手方向の全長を2等分する中央線と交差し、該スリットの全長の80%以上が該中央線より前記大面積領域側に位置し、且つ前記大面積領域における幅が前記股下領域における幅より広い、使い捨ておむつ。
<2>
前記表面シートは、前記長手方向に延びる畝部及び畝部間に位置する溝部を有する<1>記載の使い捨ておむつ。
<3>
前記吸収性コアと前記外層シートとの間に、前記長手方向に伸縮する伸縮性シートを有しており、該伸縮性シートは、少なくとも股下領域における前記スリットと重なる位置に配されている、<1>又は<2>記載の使い捨ておむつ。
<4>
前記吸収性コアと前記外層シートとの間に、前記長手方向に交差する方向に伸縮する伸縮性シートを有しており、該伸縮性シートは、少なくとも吸収体股下領域における前記スリットと重なる位置に配されている、<1>〜<3>の何れか1に記載の使い捨ておむつ。
<5>
前記吸収体は、前記吸収性コアを包むコアラップシートを有し、該吸収性コアと、その非肌対向面側に位置するコアラップシートとの間に、液拡散性に優れたスリット下敷シートが、前記スリットと重ねた状態に配されている、<1>〜<4>の何れか1に記載の使い捨ておむつ。
【0048】
<6>
前記吸収性コアは、吸水性ポリマーとパルプ繊維とを含み、該吸収性コアの総質量に対する該パルプ繊維の質量の割合が50%以上である、<1>〜<5>の何れか1に記載の使い捨ておむつ。
<7>
前記吸収体は、前記吸収性コアが、拡散性の高いコアラップシートによって被覆されている、請求項1〜6の何れか1項に記載の使い捨ておむつ。
<8>
前記吸収性コアは、前記吸収体股下領域と前記大面積領域とを合わせた領域の内の、前記スリットが形成されている範囲内に位置するスリット領域の坪量が、前記小面積領域の坪量よりも高い、<1>〜<7>の何れか1に記載の使い捨ておむつ。
<9>
前記吸収性コアの前記表面シート側の面が、液透過性の低いコアラップシートによって被覆されている、<1>〜<8>の何れか1に記載の使い捨ておむつ。
<10>
前記吸収体股下領域及び前記大面積領域に、前記スリットとは別に長手方向に延びる第2のスリット及び該長手方向と交差する方向に延びる複数本の横スリットからなる補助スリットが形成されており、前記吸収性コアに、前記スリット及び前記補助スリットにより囲まれた複数の小吸収部が形成されている、<1>〜<9>の何れか1に記載の使い捨ておむつ。
【0049】
<11>
前記吸収体股下領域におけるスリットは、吸収性コアの吸液膨潤後に消失する一方、前記大面積領域におけるスリットは、吸収性コアの吸液膨潤後に消失しない、<1>〜<10>の何れか1に記載の使い捨ておむつ。
<12>
前記外層シートは、おむつの非肌対向面側から視た平面視形状は、おむつの外形形状に一致する形状を有し、外層シートとしては、液難透過性の樹脂フィルムからなるか、樹脂フィルムの非肌対向面側に不織布を積層接着したもの何れかである<1>〜<11>の何れか1に記載の使い捨ておむつ。
<13>
前記コアラップシートは透水性の薄紙又は透水性の不織布の何れかである<1>〜<13>の何れか1に記載の使い捨ておむつ。
<14>
前記吸収性コアの括れた部分における最も幅が狭い部位が、吸収性コアの長手方向に直線状に連続して存在する<1>〜<13>の何れか1に記載の使い捨ておむつ。
<15>
前記スリットは、前記中央線CLより大面積領域側に位置する部分の長さL2が、スリットの全長L180〜95%、更に好ましくは85〜95%であり、スリットの全長L1は、前記外層シートの全長Lの、40〜70%、好ましくは50〜60%である<1>〜<13>の何れか1に記載の使い捨ておむつ。
【0050】
<16>
前記スリットは、広幅部分の幅W2が細幅部分の幅W1の1.5〜4.0倍、好ましくは2.0〜3.0倍であり、スリットの細幅部分の幅W1が、20mm以下、好ましくは15mm以下であり、3mm以上、好ましくは5mm以上であり、また、スリットの広幅部分の幅W2は、4.5mm以上、好ましくは7.5mm以上であり、30mm以下、好ましくは20mm以下であり、また、広幅部分の幅W2と細幅部分の幅W1との差(W2−W1)は、2mm以上、好ましくは5mm以上であり、30mm以下、好ましくは20mm以下である<1>〜<15>何れか1に記載の使い捨ておむつ。
<17>
前記大面積領域の面積は、小面積領域の面積の、150%以上であり、好ましくは200%以上であり、また500%以下、好ましくは400%以下であり、また、好ましくは150〜500%であり、更に好ましく200〜400%であり、大面積領域の面積は、吸収体股下領域の面積の、300%以上であり、好ましくは400%以上であり、また600%以下、好ましくは500%以下であり、小面積領域の面積は、吸収体股下領域の面積の、110%以上であり、好ましくは120%以上であり、また300%以下、好ましくは200%以下である<1>〜<15>の何れか1に記載の使い捨ておむつ。
<18>
前記スリットは、吸収体股下領域及び大面積領域の何れにおいても吸収性コアを厚み方向に貫通しており、細幅部分と広幅部分は、それぞれ、長手方向Xに亘って幅が均一であり、前記スリットは、本実施形態におけるように、小面積領域には延在していない<1>〜<17>の何れか1に記載の使い捨ておむつ。
<19>
前記スリットにおいては、スリットと重なる部分において、吸収性コアの肌対向面側に位置する上側コアラップシートと、非肌対向面側に位置する下側コアラップシートとの間が、非接合又は離間状態となっており、スリットと重なる部分において、吸収性コアの肌対向面側に位置する上側コアラップシートと、非肌対向面側に位置する下側コアラップシートとの間が接合されて、吸収体股下領域における細幅部分においては、スリットを介して上下のシート間が接合されている<1>〜<18>の何れか1に記載の使い捨ておむつ。
<20>
前記スリット内に、上側のコアラップシート及び表面シートが陥入して、それらが下側のコアラップシート及び外層シートと一体化されている<1>〜<19>の何れか1に記載の使い捨ておむつ。
【0051】
<21>
前記吸収性コアは、パルプ繊維等の繊維材料からなる繊維集合体及びこれに保持させた吸水性ポリマーの粒子からなり、繊維集合体を構成する繊維材料としては、パルプ繊維、レーヨン繊維、コットン繊維、酢酸セルロース何れかの親水性繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン何れかのポリオレフィン系繊維、ポリエステル、ポリアミド何れかの縮合系繊維を用い、吸水性ポリマーの粒子は、ポリアクリル酸ナトリウム、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体、(でんぷん−アクリル酸)グラフト共重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物、ポリアスパラギン酸何れからなる粒子である<1>〜<20>何れか記載の使い捨ておむつ。
<22>
前記吸収性コアの総質量に対するパルプ繊維の質量の割合は、30%以上であり、70%以下、好ましくは60%以下であり、好ましくは40〜70%、更に好ましくは50〜60%であり、吸収性コアの総質量に対する、パルプ繊維及び吸水性ポリマーの合計質量の割合は、90〜100%であり、好ましくは95〜100%である<1>〜<21>の何れか1に記載の使い捨ておむつ。
<23>
立体ギャザー及びレッグギャザーが配された<1>〜<22>の何れか1に記載の使い捨ておむつ。
<24>
展開型の使い捨ておむつであり、背側部の両側縁部に、ファスニングテープが設けられ、腹側部の外表面にファスニングテープを止着するランディングゾーンが設けられている<1>〜<23>の何れか1に記載の使い捨ておむつ。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例を用いて更に説明するが、本発明は、斯かる実施例によって何ら制限されるものではない。
【0053】
〔実施例〕
図9(a)に示す形状の吸収性コア40を備えた吸収体を製造した。吸収性コア40は、パルプ繊維と吸水性ポリマーの混合積繊体として形成し、パルプ繊維の割合は50質量%とした。パルプ繊維としては、通常のフラッフパルプを用いた。吸収性コア40の肌対向面側を被覆するコアラップシートとしては下記のものを用いた。
コアラップシート:坪量13.5g/mの薄葉紙
実施例で用いた吸収性コア40の各部の寸法を表1に示した。
【0054】
【表1】
【0055】
上記の吸収体を、表面シートと外層シートとの間に挟み、両シート間を吸収体の周囲において接合して評価用のおむつを得た。
表面シート:坪量36g/mのエアスルー不織布
〔比較例〕
スリットを図10(a)に示すように幅が均一なものに代えた以外は、実施例と同様にして評価用のおむつを製造した。
【0056】
〔評価〕
以下の方法により液戻り量及び液拡散面積を測定し、その結果を表1に示した。
〔液戻り量〕
実施例及び比較例の各評価用のおむつを、5°の傾斜をつけた平板上に、大面積領域側を傾斜下端側にして固定した。赤く着色した人工尿120gを3回に分けて10分おきに40gずつ注入した。3回目の注入終了後、10分放置した後、コラーゲンフィルム(Naturin社、商品名COFFIJ)を70mm角にカットしたものを4枚重ねたものを載せた。更にその上に圧力が7kPaになるように重りを載せて30秒間加圧した。加圧後、コラーゲンフィルムを取り出し、加圧前後のコラーゲンフィルムの重さを測定して、コラーゲンフィルムに吸収された液の重量を測定して液戻り量とした。
【0057】
〔液拡散面積〕
液戻り量の測定が終了した直後に、OHP用フィルムを表面シートの上に置き、表面シートが赤く拡がった部分の輪郭を書き込んだ。その輪郭の内側の面積を測定できる専用ソフト(Image−ProPlus:(株)日本ローパー社製)を用い、OHPフィルムに書き込まれた画像をスキャナーでパソコンに取り込んで液拡散面積を求めた。
【0058】
表1に示す結果から、大面積領域40aにスリットの幅を広げた広幅部分72を設けた実施例のおむつは、全長に亘って幅が均一なスリットを設けた比較例のおむつに比べて、液拡散面積が大きく、実施例のおむつの方が、吸収性コアの吸収容量をより有効に活用したことが判る。また、実施例のおむつは、比較例に比べて液戻り量も少なく、実施例のおむつが、肌への液戻り防止性にも優れていることが判る。また、実施例のおむつは、吸収容量をより有効に利用できることから、比較例のおむつに比べて漏れ防止性にも優れることが判る。なお、実施例のおむつ及び比較例のおむつは、いずれも、吸収性コアが括れた部分を有するため、股下部のフィット性に優れている。
【0059】
また、液拡散面積で、表面シートが赤く拡がった部分の輪郭をOHP用フィルムに写しとった後に、表面シートを剥がし、吸収性コアのスリットの状態を観察したところ、実施例の吸収性コアは、図9(b)に示すように、吸収体股下領域においてはスリット7が消失する一方、大面積領域においては、スリット7の広幅部分72が消失していなかった。これに対して、比較例の吸収性コアは、図10(b)に示すように、スリット7が、吸収体股下領域及び大面積領域の何れにおいても消失していた。
大面積領域に形成する広幅部分の幅を、吸収性コアが吸液して膨潤した後にも、スリットが残るような幅とすることにより、繰り返し液を吸収する際に液拡散性を維持することができる。
【0060】
本発明の使い捨ておむつは、このように、吸収体股下領域におけるスリットは、吸収性コアの吸液膨潤後に消失する一方、大面積領域におけるスリットは、吸収性コアの吸液膨潤後に消失しないことが好ましい。
なお、吸収体股下領域及び大面積領域におけるスリットが、吸収性コアの吸液膨潤後に消失するか否かは、吸収性コアを下記の方法で吸液膨潤させて観察する。また、スリットが消失するとは、スリットの幅が0mmになることを意味する。
【0061】
<吸収性コアの吸液膨潤条件>
実施例及び比較例の各評価用のおむつを、平坦な平板上に、赤く着色した人工尿120gを3回に分けて10分おきに40g注入し、注入終了5分後に、スリットが肌当接面側から平面視して、目視にてスリットが消失する有無を観察する。
【符号の説明】
【0062】
1 使い捨ておむつ
2,2A,2B 表面シート
21 畝部
22 溝部
3 外層シート
4 吸収体
40 吸収性コア
40a,40b 両端
40c 吸収体股下領域
40a 大面積領域
40b 小面積領域
40s スリット領域
41,42 コアラップシート
P 括れた部分
5 ファスニングテープ
6 立体ギャザー
7 スリット
71 細幅部分
72 広幅部分
75,76 小吸収部
7A 第2のスリット(補助スリット)
7B 横スリット(補助スリット)
8 伸縮性シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11