特許第5848327号(P5848327)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5848327-粘着剤組成物及び光学部材用フィルム 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5848327
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月27日
(54)【発明の名称】粘着剤組成物及び光学部材用フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/06 20060101AFI20160107BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20160107BHJP
   C09J 11/02 20060101ALI20160107BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20160107BHJP
   C09J 133/08 20060101ALI20160107BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20160107BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20160107BHJP
【FI】
   C09J133/06
   C09J133/14
   C09J11/02
   C09J11/08
   C09J133/08
   C09J7/02 Z
   G02B5/30
【請求項の数】5
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-507570(P2013-507570)
(86)(22)【出願日】2012年3月26日
(86)【国際出願番号】JP2012057800
(87)【国際公開番号】WO2012133343
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2014年9月22日
(31)【優先権主張番号】特願2011-70407(P2011-70407)
(32)【優先日】2011年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】鴨井 彬
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 英樹
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−275128(JP,A)
【文献】 特表2008−503638(JP,A)
【文献】 特開2010−202692(JP,A)
【文献】 特開2009−292958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
G02B 5/00− 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数1〜5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を40質量%〜80質量%、炭素数6〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を10質量%〜59.9質量%、及び水酸基を有する単量体に由来する構成単位を0.1質量%〜10質量%含有するアクリル系共重合体(A)と、
アルキレンオキシド単位の平均付加モル数が20以上であるポリオキシアルキレン基含有単量体に由来する構成単位及び前記ポリオキシアルキレン基含有単量体以外の単量体に由来する構成単位を含み、前記ポリオキシアルキレン基含有単量体に由来する構成単位の含有率が10質量%以上60質量%以下であり、重量平均分子量が3,000〜100,000であるポリオキシアルキレン基含有共重合体(B)と、
アルカリ金属塩(C)と、
分子内にポリオキシアルキレン基を有し、HLB値が5以上9以下であるジメチルポリシロキサン化合物(D)と、
を含有し、
前記アクリル系共重合体(A)100質量部に対する前記ポリオキシアルキレン基含有共重合体(B)の含有量、及び前記アルカリ金属塩(C)の含有量が、それぞれ0.05質量部〜2.0質量部、及び0.01質量部〜0.6質量部であり、
前記アクリル系共重合体(A)100質量部に対する前記ジメチルポリシロキサン化合物(D)の含有量が0.01質量部〜1.0質量部である粘着剤組成物。
【請求項2】
前記ジメチルポリシロキサン化合物(D)のHLB値が、5以上8以下である請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記炭素数1〜5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルがn−ブチル(メタ)アクリレートである請求項1又は請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記炭素数6〜18のルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが2−エチルヘキシルアクリレートである請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
基材と、
前記基材上に設けられ、請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の粘着剤組成物の塗膜である粘着剤層と、
を備える光学部材用フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物及び光学部材用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示板は、薄型軽量であること、消費電力が少なくて済むことなどから、近年、各種の情報関連機器、例えばパーソナルコンピュータなどの画面表示装置として利用されている。このような液晶表示板には、本体である液晶を内包したガラスセル(液晶セル)と共に偏光板や位相差板などの光学部材が用いられている。
【0003】
これらの光学部材は、通常、打抜加工、検査、輸送、液晶表示板の組立などの各工程を経る間にその表面が汚染されたり損傷したりしないように、表面保護フィルムで粘着被覆されて長尺の光学部材積層体として形成される。そして、表面保護フィルムは表面保護が不要となった段階で光学部材から剥離除去される。
【0004】
光学部材用の表面保護フィルムには、光学部材の表面保護が必要とされる間、該部材の表面上でずれを生じたり表面から脱落したりすることがない程度にその表面に粘着する粘着力を有していることが必要とされ、光学部材積層体を切断する工程等において、めくれあがった表面保護フィルムの端部が自然にもとの状態に戻る性質(なじみ性)を有していることも必要とされる。
【0005】
また、表面保護フィルムは光学部材表面が汚染されたり損傷したりしないように、光学部材を保護するために貼りつけてあり、物品同士の衝突、すり合せ等、保護フィルム表面は外的応力を受けやすい環境にある。よって、このような外部応力を受けた際にも粘着剤層が光学部材に転着することなく剥離できる性質(耐糊転着性)を有していることも必要とされる。
【0006】
さらに、一般に光学部材や表面保護フィルムはプラスチックにより構成されているため、電気絶縁性が高く、摩擦や剥離の際に静電気が発生する。したがって、表面保護フィルムを光学部材から剥離する際に静電気が発生することは避けられないものである。表面保護フィルムを光学部材から剥離する際に静電気が発生すると、光学フィルム表面にごみやホコリが吸着され製品に不都合が生じる。また、保護フィルムを剥離する際に、大きな静電気が発生すると表示部材の回路が破壊されてしまうおそれもある。
【0007】
上記に関連して、特開2009−275128号公報には、アクリル系共重合体、金属塩、及びポリオキシアルキレン基を有するオルガノポリシロキサンを含む粘着剤が開示されている。しかしながら、特開2009−275128号公報に記載の粘着剤組成物では、剥離帯電による静電気の発生抑制と、粘着性と、耐糊転着性とをすべて満足することが難しいことがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、剥離帯電による静電気の発生が抑制され、粘着性、耐糊転着性に優れる粘着剤組成物、ならびにそれを用いてなる光学部材用フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の態様を包含する。
(1) 炭素数1〜5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を40質量%〜80質量%、炭素数6〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を10質量%〜59.9質量%、及び水酸基を有する単量体に由来する構成単位を0.1質量%〜10質量%含有するアクリル系共重合体(A)と、アルキレンオキシド単位の平均付加モル数が20以上であるポリオキシアルキレン基含有単量体に由来する構成単位及び前記ポリオキシアルキレン基含有単量体以外の単量体に由来する構成単位を含み、前記ポリオキシアルキレン基含有単量体に由来する構成単位の含有率が10質量%以上60質量%以下であり、重量平均分子量が3,000〜100,000であるポリオキシアルキレン基含有共重合体(B)と、アルカリ金属塩(C)と、分子内にポリオキシアルキレン基を有し、HLB値が5以上9以下であるジメチルポリシロキサン化合物(D)と、を含有し、前記アクリル系共重合体(A)100質量部に対する前記ポリオキシアルキレン基含有共重合体(B)の含有量、及び前記アルカリ金属塩(C)の含有量が、それぞれ0.05質量部〜2.0質量部、及び0.01質量部〜0.6質量部であり、前記アクリル系共重合体(A)100質量部に対する前記ジメチルポリシロキサン化合物(D)の含有量が0.01質量部〜1.0質量部である粘着剤組成物。
【0010】
(2) 前記ジメチルポリシロキサン化合物(D)のHLB値が、5以上8以下である上記(1)に記載の粘着剤組成物である。
【0013】
) 前記炭素数1〜5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルがn−ブチル(メタ)アクリレートである上記(1)又は2)に記載の粘着剤組成物である。
【0014】
) 前記炭素数6〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが2−エチルヘキシルアクリレートである上記(1)〜()のいずれか1つに記載の粘着剤組成物である。
【0015】
) 基材と、前記基材上に設けられ、上記(1)〜()のいずれか1つに記載の粘着剤組成物の塗膜である粘着剤層と、を備える光学部材用フィルムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、剥離帯電による静電気の発生が抑制され、粘着性、耐糊転着性に優れる粘着剤組成物、ならびにそれを用いてなる光学部材用フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施例にかかる剥離帯電圧の測定方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[粘着剤組成物]
本発明の粘着剤組成物は、炭素数1〜5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を40質量%〜80質量%、炭素数6〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を10質量%〜59.9質量%、及び水酸基を有する単量体に由来する構成単位を0.1質量%〜10質量%含有するアクリル系共重合体(A)と、アルキレンオキシド単位の平均付加モル数が20以上であるポリオキシアルキレン基含有単量体に由来する構成単位及び前記ポリオキシアルキレン基含有単量体以外の単量体に由来する構成単位を含み、前記ポリオキシアルキレン基含有単量体に由来する構成単位の含有率が60質量%以下であり、重量平均分子量が3,000〜100,000であるポリオキシアルキレン基含有共重合体(B)と、アルカリ金属塩(C)と、分子内にポリオキシアルキレン基を有し、HLB値が9以下であるジメチルポリシロキサン化合物(D)と、を含有する。前記粘着剤組成物は必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。
上記特定の構成を有する粘着剤組成物は、剥離帯電による静電気の発生が抑制され、粘着性、耐糊転着性に優れる。
【0019】
本明細書において「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の少なくとも一方を示す意味で用いる。また同様に「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の少なくとも一方を示す意味で用いる。また「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0020】
(A)アクリル系共重合体
上記粘着剤組成物は、含有率が40質量%〜80質量%である炭素数1〜5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位と、含有率が10質量%〜59.9質量%である炭素数6〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位と、含有率が0.1質量%〜10質量%である水酸基を有する単量体に由来する構成単位とを有するアクリル系共重合体の少なくとも1種を含む。ここで「(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位」とは(メタ)アクリル酸アルキルエステルが他の単量体と付加重合して形成される構成単位を意味し、「単量体に由来する構成単位」等についても同様である。
【0021】
上記アクリル系共重合体(A)は、炭素数1〜5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を40質量%〜80質量%の含有率で含む。これにより、光学部材の表面保護が必要とされる間、該部材の表面上でずれを生じたり表面から脱落したりすることがない程度にその表面に粘着する粘着力を有する。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は炭素数1〜5であるが、好ましくは炭素数1〜4でのアルキル基であり、特に好ましくは炭素数4のアルキル基である。
【0022】
上記炭素数1〜5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(エタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。なかでも、粘着性となじみ性とのバランスに優れることから、炭素数4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであるn−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレートが好適に挙げられ、特にn−ブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
上記アクリル系共重合体(A)は、炭素数1〜5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を1種単独でも、2種以上含んでいてもよい。
【0023】
上記アクリル系共重合体(A)における、炭素数1〜5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有率は40質量%〜80質量%であるが、40質量%〜70質量%であることが好ましく、40質量%〜60質量%であることがより好ましい。炭素数1〜5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有率が、アクリル系共重合体(A)の総質量中に40質量%未満であると、光学部材の表面保護が必要とされる間、該光学部材の表面上でずれを生じたり表面から脱落したりする場合がある。また炭素数1〜5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有率が、アクリル系共重合体(A)の総質量中に80質量%を超えると、なじみ性と耐糊転着性とが低下する傾向がある。
【0024】
上記アクリル系共重合体(A)は、炭素数6〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を10質量%〜59.9質量%の含有率で含む。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は炭素数6〜18であるが、基材密着性の観点から、好ましくは炭素数6〜10のアルキル基であり、特に好ましくは炭素数8のアルキル基である。
【0025】
上記炭素数6〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。なかでも炭素数8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであるn−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に2−エチルヘキシルアクリレートが好ましい。
上記アクリル系共重合体(A)は、炭素数6〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を1種単独でも、2種以上含んでいてもよい。
【0026】
上記アクリル系共重合体(A)における、炭素数6〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有率は10質量%〜59.9質量%であるが、30質量%〜58質量%であることが好ましく、40質量%〜58質量%であることがより好ましい。炭素数6〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有率が、アクリル系共重合体(A)の総質量中に10質量%未満であると、なじみ性が低下する傾向がある。また、炭素数6〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有率が、アクリル系共重合体(A)の総質量中に59.9質量%を超えると、基材密着性が低下する傾向がある。
【0027】
上記アクリル系共重合体(A)は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を0.1質量%〜10質量%の含有率で含む。これにより、被着体に対する適度な粘着力を有し、再剥離性にも優れる。水酸基を有する単量体としては、水酸基を有する(メタ)アクリル単量体及び水酸基を有するその他の単量体を挙げることができる。
【0028】
上記水酸基を有する(メタ)アクリル単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−3−ブチル(メタ)アクリレート、1,3−ジメチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチル−3−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−3−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、等を使用することができる。水酸基を有するその他の単量体としては、N−メチロールアクリルアミド、アリルアルコール、メタリルアルコール等を挙げることができる。
【0029】
これらの水酸基を有する単量体の中で、アクリル系共重合体(A)を合成する際の他の単量体との相溶性及び共重合性が良好である、並びに架橋剤との架橋反応が良好である観点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
上記アクリル系共重合体(A)は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を1種単独でも、2種以上含んでいてもよい。
【0030】
上記アクリル系共重合体(A)における、水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、アクリル系共重合体(A)の総質量中に0.1〜10質量%であるが、2質量%〜5質量%であることがより好ましい。水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が0.1質量%未満であると凝集力が不足し、被着体の汚染が発生する傾向がある。一方、10質量%を超えると、なじみ性が低下する傾向がある。
【0031】
上記アクリル系共重合体(A)は、炭素数1〜5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位、炭素数6〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位、及び水酸基を有する単量体に由来する構成単位に加えて、必要に応じてこれら以外のその他の単量体に由来する構成単位を更に含んでいてもよい。上記アクリル系共重合体(A)は、その他の単量体に由来する構成単位を1種単独でも、2種以上含んでいてもよい。
【0032】
その他の単量体としては、アクリル系単量体以外の単量体、水酸基以外の官能基を有する単量体等を挙げることができる。水酸基以外の官能基を有する単量体としては、例えば、カルボキシ基含有単量体、グリシジル基含有単量体、アミド基又はN−置換アミド基含有単量体、三級アミノ基含有単量体等を挙げることができる。
【0033】
アクリル系単量体以外の単量体としては、例えば、スチレン、αーメチルスチレン、tーブチルスチレン、pークロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族モノビニル単量体;例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル単量体;更にこれらの各種誘導体を挙げることができる。
【0034】
カルボキシ基含有単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フマル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,2−ジカルボキシシクロヘキサンモノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0035】
グリシジル基含有単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルビニルエーテル、グリシジル(メタ)アリルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アリルエーテル等を挙げることができる。
【0036】
アミド基又はN−置換アミド基含有単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等を挙げることができる。
【0037】
三級アミノ基含有単量体としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
【0038】
上記アクリル系共重合体(A)が、その他の単量体に由来する構成単位を更に含む場合、その含有率は、10質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0039】
上記アクリル系共重合体(A)における、炭素数1〜5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位に対する炭素数6〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有比率(炭素数6〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位/炭素数1〜5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位)は特に制限されない。例えば、剥離による静電気の発生抑制、粘着性、及び耐糊転着性の観点から、上記含有比率は0.35〜1.5であることが好ましく、0.7〜1.5であることより好ましい。
【0040】
また上記アクリル系共重合体(A)における、炭素数1〜5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位に対する水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有比率(水酸基を有する単量体に由来する構成単位/炭素数1〜5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位)は特に制限されない。例えば、剥離による静電気の発生抑制、粘着性、及び転着性の観点から、上記含有比率は0.04〜0.13であることが好ましい。
【0041】
さらに上記アクリル系共重合体(A)における、炭素数1〜5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位及び炭素数6〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位(以下、併せて「(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位」ともいう)の総含有量に対する水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有比率(水酸基を有する単量体に由来する構成単位/(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位)は特に制限されない。例えば、剥離による静電気の発生抑制、粘着性、及び耐糊転着性の観点から、上記含有比率は0.02〜0.05であることが好ましい。
【0042】
上記アクリル系共重合体(A)は、重量平均分子量(Mw)が20万〜100万のアクリル系共重合体(A)であることが好ましく、重量平均分子量(Mw)が30万〜70万であることがより好ましい。該重量平均分子量(Mw)が該下限値以上あれば、再剥離時の粘着力が大きくなりすぎることがなく、表面保護フィルムを容易に剥離することができるので好ましい。一方、該上限値以下であれば、得られる粘着剤組成物層の流動性が優れており、表面の微小の凹凸を有する偏光板等の被着体に用いたときにでも粘着剤組成物が偏光板等の被着体の表面を十分に濡らすことができ、なじみ性に優れるので好ましい。
【0043】
また上記アクリル系共重合体(A)の数平均分子量(Mn)は3万〜10万であることが好ましい。数平均分子量(Mn)が該下限値以上あれば、再剥離時の粘着力が大きくなりすぎることがなく、表面保護フィルムを容易に剥離することができるので好ましい。一方、該上限値以下であれば、得られる粘着剤組成物層の流動性が優れており、表面の微小の凹凸を有する偏光板等の光学部材に用いたときにでも粘着剤組成物が偏光板等の被着体の表面を十分に濡らすことができ、なじみ性に優れるので好ましい。
【0044】
さらに上記アクリル系共重合体(A)の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比である分散度(Mw/Mn)は特に制限されない。例えば、剥離による静電気の発生抑制、粘着性、耐糊転着性の観点から、3〜10であることが好ましい。
【0045】
なお、上記アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、下記の方法により測定された値である。
(重量平均分子量及び数平均分子量の測定方法)
アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、下記(1)〜(3)の手順に従って測定する。
(1)アクリル系共重合体溶液を剥離シートに塗布し、100℃で2分間乾燥し、フィルム状のアクリル系共重合体を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状のアクリル系共重合体をテトラヒドロフランにて固形分0.2質量%になるように溶解させる。
(3)下記条件にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定する。
【0046】
(条件)
GPC : HLC−8220 GPC〔東ソー(株)製〕
カラム : TSK−GEL GMHXL 4本使用
移動相溶媒 : テトラヒドロフラン
流速 : 0.6ml/min
カラム温度 : 40℃
【0047】
また上記アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、−45℃以下であることが好ましく、−80℃〜−45℃であることがより好ましく、−80℃〜−60℃であることが更に好ましい。Tgが−45℃以下であれば、十分ななじみ性を有しているので好ましい。
【0048】
なお、アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は下記式1の計算によって求められる絶対温度(K)をセルシウス温度(℃)に換算した値である。
式1 1/Tg=w/Tg+w/Tg+・・・・・・・・・+w(k−1)/Tg(k−1)+w/Tg
式1中、Tg、Tg、・・・・・・・、Tg(k−1)、Tgは、アクリル系共重合体を構成する各単量体成分の単独重合体のガラス転移温度(K)をそれぞれ示す。w、w、・・・・・・、w(k−1)、wは、アクリル系共重合体を構成する各単量体成分の質量分率をそれぞれ表わし、w+w+・・・・・+w(k−1)+w=1である。
【0049】
上記粘着剤組成物における上記アクリル系共重合体(A)の含有率は、例えば、剥離による静電気の発生抑制、粘着性、及び耐糊転着性の観点から、粘着剤組成物の総質量中に90〜98質量%であることが好ましい。
【0050】
(B)ポリオキシアルキレン基含有共重合体
上記粘着剤組成物は、アルキレンオキシド単位の平均付加モル数が20以上であるポリオキシアルキレン基含有単量体に由来する構成単位及び前記ポリオキシアルキレン基含有単量体以外の単量体に由来する構成単位を含み、前記ポリオキシアルキレン基含有単量体に由来する構成単位の含有率が、その含有率が60質量%以下であり、重量平均分子量3,000〜100,000であるポリオキシアルキレン基含有共重合体(B)の少なくとも1種を含有する。
【0051】
上記ポリオキシアルキレン基含有単量体としては例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基を有するポリオキシアルキレン基含有(メタ)アクリル系単量体等を挙げることができる。ポリオキシアルキレン基含有(メタ)アクリル系単量体として具体的には、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等を挙げることができる。中でもメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、及びメトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
【0052】
また前記ポリオキシアルキレン基含有単量体におけるアルキレンオキシド単位の平均付加モル数は20以上であれば特に制限されない。アルキレンオキシド単位の平均付加モル数が20未満では、後述するアルカリ金属塩との組み合わせによって充分な帯電防止効果を発揮することができない場合がある。上記アルキレンオキシド単位の平均付加モル数は20〜100であることが好ましく、20〜50であることがより好ましい。記アルキレンオキシド単位の平均付加モル数が上記範囲であると、より優れた帯電防止効果と粘着性を発揮することができる。
【0053】
上記ポリオキシアルキレン基含有共重合体(B)におけるポリオキシアルキレン基含有単量体に由来する構成単位の含有率は、上記ポリオキシアルキレン基含有共重合体(B)の総質量中に60質量%以下であるが、10質量%〜60質量%であることが好ましく、10質量%〜30質量%であることがより好ましい。ポリオキシアルキレン基含有単量体に由来する構成単位の含有率が60質量%を超えると粘着性が低下する傾向がある。
【0054】
上記ポリオキシアルキレン基含有共重合体(B)は、ポリオキシアルキレン基含有単量体に由来する構成単位以外のその他の構成単位の少なくとも1種を更に含む。その他の構成単位を形成しうる単量体としては例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボキシ基、水酸基等の官能基を有する単量体などを挙げることができる。
【0055】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては例えば、上記アクリル系共重合体(A)における炭素数1〜5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、炭素数6〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル等を挙げることができる。これらの中でも、基材密着性の観点から、炭素数1〜5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの少なくとも1種であることが好ましく、炭素数3〜5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの少なくとも1種であることがより好ましく、炭素数4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの少なくとも1種であることがさらに好ましい。上記炭素数1〜5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例は上記と同様である。
【0056】
またカルボキシ基、水酸基等の官能基を有する単量体の例としては、上記アクリル系共重合体(A)における水酸基を有する単量体、及びその他の単量体を挙げることができる。
【0057】
上記ポリオキシアルキレン基含有共重合体(B)は、ポリオキシアルキレン基含有単量体に由来する構成単位に加えて、その他の構成単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の少なくとも1種を含むことが好ましく、炭素数1〜5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の少なくとも1種を含むことがより好ましく、炭素数3〜5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の少なくとも1種を含むことがさらに好ましく、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、及びt−ブチル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位を含むことが特に好ましい。
【0058】
上記ポリオキシアルキレン基含有共重合体(B)におけるその他の構成単位の含有率はポリオキシアルキレン基含有共重合体(B)の総質量中に、40〜90質量%であることが好ましく、70〜90質量%であることがより好ましい。その他の構成単位の含有率が前記範囲であると、剥離帯電による静電気の発生抑制により優れ、より良好な粘着性を示す傾向がある。
【0059】
上記ポリオキシアルキレン基含有共重合体(B)は、ポリオキシアルキレン基含有単量体に由来する構成単位に加えて、その他の構成単位として(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を含む場合、ポリオキシアルキレン基含有共重合体(B)におけるポリオキシアルキレン基含有単量体に由来する構成単位に対する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有比率は、静電気の発生抑制と粘着性の観点から、0.1〜0.5であることが好ましい。
【0060】
上記ポリオキシアルキレン基含有共重合体(B)は、重量平均分子量(Mw)が3,000〜100,000であるが、好ましくは5,000〜60,000であり、より好ましくは5,000〜30,000である。重量平均分子量(Mw)が3,000未満であると充分な粘着力が得らない場合がある。また重量平均分子量(Mw)が100,000を超えると、粘着剤組成物における相溶性が低下する場合がある。
【0061】
なお、上記ポリオキシアルキレン基含有共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は、上記アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)の測定方法と同様の方法で測定できる。
【0062】
上記ポリオキシアルキレン基含有共重合体(B)の粘着剤組成物における含有量は、上記アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、0.05質量部〜2.0質量部であることが好ましく、0.1質量部〜1.5質量部であることがより好ましく、0.2質量部〜1.0質量部であることがさらに好ましい。ポリオキシアルキレン基含有共重合体(B)の含有量がアクリル系共重合体(A)100質量部に対して、0.05質量部以上であれば、より優れた帯電防止効果が得られる傾向がある。またポリオキシアルキレン基含有共重合体(B)の含有量がアクリル系共重合体(A)100質量部に対して、2.0質量部以下であれば、被着体の汚染をより効果的に抑制することができる傾向がある。
【0063】
上記アクリル系共重合体(A)及びポリオキシアルキレン基含有共重合体(B)(以下、これらを「共重合体」と総称することがある)は、これらの共重合体に含まれる構成単位を形成可能な単量体の混合物を重合することで製造することができる。上記共重合体の重合方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法などの公知の方法から適宜選択することができる。重合により得られた共重合体を用いて本発明の粘着剤組成物を製造するに当り、処理工程が比較的簡単で且つ短時間で行えることから溶液重合法により重合されることが好ましい。
【0064】
溶液重合法は、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、単量体、重合開始剤、及び必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中、有機溶媒の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させることにより行なうなどの公知の方法を使用することができる。
【0065】
なお、上記アクリル系共重合体(A)及びポリオキシアルキレン基含有共重合体(B)の重量平均分子量及び分散度は、反応温度、時間、溶剤量、触媒の種類や量により容易に調節することができる。
【0066】
前記アクリル系共重合体(A)及びポリオキシアルキレン基含有共重合体(B)の重合に用いられる重合用の有機溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、テトラリン、デカリン、芳香族ナフサなどの芳香族炭化水素類;例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、i−オクタン、n−デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、テレピン油などの脂肪系もしくは脂環族系炭化水素類;例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸2−ヒドロキシエチル、酢酸2−ブトキシエチル、酢酸3−メトキシブチル、安息香酸メチルなどのエステル類;例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンなどのケトン類;例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどのアルコール類;などを挙げることができる。これらの有機溶剤はそれぞれ単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
【0067】
前記の重合開始剤としては、通常の溶液重合法で使用できる有機過酸化物、アゾ化合物などを使用することが可能である。有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、カプロイルパーオキシド、ジ−i−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシビバレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−α−クミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルパーオキシシクロヘキシル)ブタンなどが挙げられる。アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス−i−ブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリルなどが挙げられる。
【0068】
また、上記アクリル系共重合体(A)及びポリオキシアルキレン基含有共重合体(B)の製造に際しては、連鎖移動剤は使用しないのが普通であるが、本発明の目的及び効果を損なわない範囲で、必要に応じて使用することは可能である。連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸;シアノ酢酸の炭素数1〜8のアルキルエステル類;ブロモ酢酸;ブロモ酢酸の炭素数1〜8のアルキルエステル類;アントラセン、フェナントレン、フルオレン、9−フェニルフルオレンなどの芳香族化合物類;p−ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p−ニトロ安息香酸、p−ニトロフェノール、p−ニトロトルエンなどの芳香族ニトロ化合物類;ベンゾキノン、2,3,5,6−テトラメチル−p−ベンゾキノンなどのベンゾキノン誘導体類;トリブチルボランなどのボラン誘導体;四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2−テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、3−クロロ−1−プロペンなどのハロゲン化炭化水素類;クロラール、フラルデヒドなどのアルデヒド類:炭素数1〜18のアルキルメルカプタン類;チオフェノール、トルエンメルカプタンなどの芳香族メルカプタン類;メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1〜10のアルキルエステル類;炭素数1〜12のヒドロキシアルキルメルカプタン類;ビネン、ターピノレンなどのテルペン類;などが挙げられる。
【0069】
重合温度としては、一般に約30〜180℃の範囲である。
【0070】
上記アクリル系共重合体(A)及びポリオキシアルキレン基含有共重合体(B)の製造に際しては、重合反応で得られた重合物を精製する精製工程を設けてもよい。これにより、溶液重合法などで得られた重合物中に未反応の単量体が含まれる場合は、該単量体を除くことができる。精製工程としては通常用いられる精製方法から適宜選択することができる。例えば、メタノールなどによる再沈澱法で精製することが可能である。
【0071】
(C)アルカリ金属塩
上記粘着剤組成物は、アルカリ金属塩(C)の少なくとも1種を含有する。アルカリ金属塩(C)は、リチウム、ナトリウム、カリウム等をカチオンとする金属塩である。具体的には、Li、Na、K等のカチオンと、Cl、Br、I、BF、PF、SCN、ClO、CFSO、(CFSO、(CSO、(CFSO等のアニオンから構成される金属塩が好適に用いられる。特に、LiBr、LiI、LiBF、LiPF、LiSCN、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CFSOCなどのリチウム塩が好ましく用いられる。中でもLiCFSO、及びLi(CFSONは、帯電防止効果、金属腐食性が良好であるため特に好ましい。これらのアルカリ金属塩は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0072】
上記粘着剤組成物のアルカリ金属塩の含有量は、上記アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部〜0.6質量部であることが好ましく、0.01質量部〜0.2質量部であることがより好ましい。アルカリ金属塩の含有量がアクリル系共重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることで、より優れた帯電特性が得られる傾向がある。また0.6質量部以下であれば被着体の汚染をより効果的に抑制することができる傾向がある。
【0073】
(D)ジメチルポリシロキサン化合物
上記粘着剤組成物は、分子内にポリオキシアルキレン基を有し、HLB値が9以下であるジメチルポリシロキサン化合物(D)の少なくとも1種を含有する。上記ジメチルポリシロキサン化合物(D)が、その分子内にポリオキシアルキレン基を有し、HLB値が特定の範囲であることで、優れた帯電防止性能を示し、さらに粘着剤組成物を構成する上記共重合体等の樹脂との相溶性に優れ、また適度な粘着性を示すことができる。
【0074】
上記ポリオキシアルキレン基としては例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基及びこれらのブロック共重合体に由来する基が挙げられる。
【0075】
上記ポリオキシアルキレン基は、ジメチルポリシロキサン化合物(D)の側鎖として含まれていても、ジメチルポリシロキサン化合物(D)の末端基として含まれていてもよいが、粘着力と帯電防止性の観点から、ジメチルポリシロキサン化合物(D)の側鎖として含まれていることが好ましい。
【0076】
また上記ポリオキシアルキレン基の末端は、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基のいずれであってもよい。
【0077】
上記ジメチルポリシロキサン化合物(D)は、HLB値が9以下である。ジメチルポリシロキサン化合物(D)のHLB値が9を超えると耐糊転着性や剥離帯電防止性能が悪化する傾向がある。HLB値が9を超えるジメチルポリシロキサン化合物(D)においても、添加量を増量すれば耐糊転着性や剥離帯電防止性能は良好だが、粘着力が低下する傾向がある。さらに共重合体との相溶性、表面偏在性、及び粘着性の観点から、HLB値は5以上8以下であることが好ましい。
【0078】
上記HLB値は、ジメチルポリシロキサン化合物(D)の親水性と疎水性のバランスを示す尺度である。本発明においては、下記式2で算出されるグリフィン法の定義に従うが、上記ジメチルポリシロキサン化合物(D)が市販品の場合、そのカタログデータを優先して採用する。
式2 {(親水性基部分の式量の総和)/(界面活性剤の分子量)}×20
【0079】
上記ジメチルポリシロキサン化合物(D)のHLB値を上記範囲に調整する方法としては、通常用いられる手法を特に制限なく用いることができる。例えば、ジメチルポリシロキサン化合物の分子量と親水性基であるポリオキシアルキレン基の含有量とを適宜選択する方法等を挙げることができる。
【0080】
上記ポリオキシアルキレン基を有し、HLB値が9以下のジメチルポリシロキサン化合物(D)の具体例としては、例えば、「L−7001」(HLB値5)、「L−7002」(HLB値8)、「SF−8427」(HLB値9)、「SF−8428」(HLB値0)、「SH−3749」(HLB値6)、「SH−3773M」(HLB値8)、「SH−8400」(HLB値7)〔以上、東レ・ダウ(株)製〕等を挙げることができる。これらの中でも、「L−7001」(HLB値5)、「L−7002」(HLB値8)、「SF−8427」(HLB値9)、「SH−3749」(HLB値6)、「SH−3773M」(HLB値8)、及び「SH−8400」(HLB値7)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、「L−7001」(HLB値5)、「SH−8400」(HLB値7)、及び「SH−3773M」(HLB値8)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0081】
上記粘着剤組成物におけるジメチルポリシロキサン化合物(D)の含有量は、共重合体との相溶性、表面偏在性、及び粘着性の観点から、上記アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.01質量部〜1.0質量部であることが好ましく、0.1質量部〜0.5質量部であることがより好ましい。
【0082】
上記ポリオキシアルキレン基を有するジメチルポリシロキサン化合物(D)の粘着剤組成物中の含有量が、上記下限値以上であれば、保護フィルム表面が外的応力を受けた場合であっても粘着剤層が光学部材に転着することなく剥離でき、剥離帯電による静電気の発生も抑制できる傾向があるため好ましい。また、上記ポリオキシアルキレン基を有するジメチルポリシロキサン化合物(D)の粘着剤組成物中の含有量が、上記上限値以下であれば、粘着性が経時変化したり、光学部材の表面に過剰のジメチルシロキサン化合物が残存して表面汚染したりすることが抑制される傾向があり、好ましい。
【0083】
(架橋剤)
上記粘着剤組成物は、架橋剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。上記架橋剤としてはイソシアネート化合物の少なくとも1種であることが好ましく、多価イソシアネート化合物の少なくとも1種であることがより好ましい。粘着剤組成物の構成成分が架橋剤(好ましくは、イソシアネート化合物)により架橋されることにより、粘着剤組成物の凝集力がより向上し、粘着特性により優れる粘着剤組成物を得ることができる。
【0084】
上記イソシアネート化合物としては、例えば、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、上記芳香族イソシアネート化合物の水素添加物等の脂肪族又は脂環族イソシアネート;それらイソシアネート化合物の2量体もしくは3量体又はそれらイソシアネート化合物とトリメチロールプロパンなどのポリオールとのアダクト体などの各種イソシアネートに由来するイソシアネート化合物誘導体を挙げることができる。なかでも、ヘキサメチレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートに由来するイソシアネート化合物誘導体から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらのイソシアネート化合物は、単独でまたは2種類以上混合して使用することができる。
【0085】
上記イソシアネート化合物は、例えば「コロネートHX」、「コロネートHL−S」、「コロネート2234」「アクアネート200」、「アクアネート210」〔以上日本ポリウレタン(株)製〕、「デスモジュールN3400」「デスモジュールN3300」〔住友バイエルウレタン(株)製〕、「デュラネートE−405−80T」、「デュラネート24A−100」、「デュラネートTSE−100」〔旭化成工業(株)製〕、「タケネートD−110N」、「タケネートD−120N」、「タケネートM−631N」「MT−オレスターNP1200」〔以上三井武田ケミカル(株)製〕などの商品名により市販されているものを好適に使用することができる。
【0086】
上記粘着剤組成物におけるこれらイソシアネート化合物の含有量は、前記アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部〜15質量部であることが好ましく、0.5質量部〜5.0質量部であることがより好ましい。
また上記粘着剤組成物は、必要に応じてジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート等の硬化触媒を更に含んでいてもよい。
【0087】
上記粘着剤組成物には、以上述べたアクリル系共重合体(A)、ポリオキシアルキレン基含有共重合体(B)、アルカリ金属塩(C)、ジメチルポリシロキサン化合物(D)、並びに必要に応じて含まれるイソシアネート化合物及び硬化触媒に加えて、その他の添加剤を更に含んでいてもよい。その他の添加剤は、粘着剤組成物に通常用いられる添加剤から必要に応じて適宜選択することができる。その他の添加剤としては例えば、耐候性安定剤、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、無機充填剤などを挙げることができる。
【0088】
上記粘着剤組成物は、必要に応じて溶媒をさらに含んでいてもよい。溶媒としては粘着剤組成物を溶解可能であれば特に制限されない。既述の重合用の有機溶剤として例示したものから目的等に応じて適宜選択して用いることができる。
【0089】
上記粘着剤組成物は、アクリル系共重合体(A)、ポリオキシアルキレン基含有共重合体(B)、アルカリ金属塩(C)、ジメチルポリシロキサン化合物(D)、並びに必要に応じて含まれるイソシアネート化合物及び硬化触媒を通常用いられる方法で混合することで調製することができる。
【0090】
本発明の粘着剤組成物は例えば、光学部材用の表面保護フィルムを作製するため、適宜の透明な表面保護基材の少なくとも一方の面に、従来公知の方法によって粘着剤層を形成するために用いられる。
【0091】
[光学部材用フィルム]
本発明の光学部材用フィルムは、基材と、該基材上に設けられ、上記粘着剤組成物の塗膜である粘着剤層とを備える。上記光学部材用フィルムは必要に応じてその他の構成要素を更に備えていてもよい。上記光学部材用フィルムは光学部材用の表面保護フィルムとして好適に用いられる。
【0092】
上記本発明の光学部材用フィルムにおける基材としては、粘着剤組成物を塗布できる基材であれば特に制限されない。中でも樹脂を含む基材であることが好ましい。上記基材を構成する樹脂としては、透視による光学部材の検査や管理の観点から、例えば、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂などからなるフィルムを挙げることができる。中でも、表面保護性能の観点から、ポリエステル系樹脂が好ましく、実用性を考慮すればポリエチレンテレフタレート樹脂が特に好ましい。
【0093】
上記基材の厚さは一般には500μm以下とすることができる。好ましくは5μm〜500μmであり、より好ましくは5μm〜300μmであり、さらに好ましくは10μm〜200μmである。これらの基材には、片面又は両面には、剥離時の帯電防止を目的に、帯電防止層が設けられていてもよい。また該基材の、粘着剤層が設けられる側の表面には、粘着剤層との密着性を向上させるためにコロナ放電処理等が施されていてもよい。
【0094】
基材上に形成される粘着剤層の厚さは、光学部材用フィルムの求められる粘着力や光学部材表面粗さなどに応じて適宜設定することができる。一般には1μm〜100μmとすることができる。好ましくは5μm〜50μmであり、さらに好ましくは15μm〜30μmである。上記基材上の粘着剤層の厚さは、マイクロメーターを用いて3点の厚さを測定し、その算術平均値として求められる。
【0095】
粘着剤層の形成方法としては、上記粘着剤組成物を、そのまま又は必要に応じて適宜の溶媒で希釈し、これを表面保護ベースフィルムである基材上に、直接塗布・乾燥し、溶媒を除去する方法を採用することができる。また、先ずシリコーン樹脂等により離型処理が施された紙やポリエステルフィルム等の適宜のフィルムからなる剥離シート上に、上記粘着剤組成物を塗布し、加熱乾燥して粘着剤層を形成させ、次に該剥離シートの接着剤層側を表面保護ベースフィルムである基材に圧接して該接着剤層を該基材上に転写させて形成することもできる。
粘着剤組成物の塗布方法は特に制限されず、通常用いられる塗布方法から適宜選択して用いることができる。塗布方法としては例えば、ブレードコーティング、ダイレクトコーティング、ナイフコーティング等を挙げることができる。
【0096】
かくして得られる光学部材用フィルムは、光学部材の表面に積層されて、その光学部材の表面が汚染されたり損傷したりしないよう保護し、該光学部材が液晶表示板などに加工される際には、該光学部材用フィルムが光学部材に積層された状態のまま、打抜加工、検査、輸送、液晶表示板の組立などの各工程に供され、必要に応じて、オートクレーブ処理や高温エージング処理などの加熱加圧処理が施され、表面保護が不要となった段階で光学部材から剥離除去される。
【実施例】
【0097】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明の効果を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0098】
アクリル系共重合体(A)溶液の製造
(製造例A−1)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却器を備えた反応容器内に、酢酸エチル35.0質量部を入れた。別の容器に2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)55.0質量部、n−ブチルアクリレート(BA)42.0質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)3.0質量部を入れて混合して単量体混合物を調製し、その中の15質量%を反応容器中に加え、次いで窒素雰囲気下で攪拌しながら還流温度まで加熱した。その後、残りの単量体混合物の全量と、酢酸エチル10質量部、トルエン10質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部とを混合した混合液を、100分かけて還流温度の反応容器に逐次添加し、引き続いて45分間還流温度を維持したまま反応させた。さらにその後、酢酸エチル15質量部とt−ブチルパーオキシピバレート0.2質量部とを混合した溶液を60分かけて還流温度の反応容器に逐次添加し、引き続いてさらに80分間還流状態にて反応させた。反応終了後、酢酸エチルにて適宜希釈して固形分50質量%のアクリル系共重合体(A−1)溶液を得た。得られたアクリル系共重合体(A−1)溶液の固形分、ガラス転移温度(Tg)、重量平均分子量(Mw)、粘度、重量平均分子量(Mw)の数平均分子量に対する比である分散度(Mw/Mn)を表1に示す。なお、表1中の「−」は未配合であることを示す。
また、「固形分」とはアクリル系共重合体溶液から溶媒を除去した残渣量である。粘度は、BH型粘度計を用いて25℃、回転数10rpmで測定した。ガラス転移温度(Tg)は既述の方法で算出したものであり、重量平均分子量(Mw)は既述の方法で測定したものである。
【0099】
(製造例A−2〜A−12)
単量体組成を表1に示す単量体組成に変更し、適宜開始剤量等を調整したこと以外は製造例A−1と同様にしてアクリル系共重合体(A−2)〜(A−12)溶液を製造した。得られたアクリル系共重合体溶液の固形分、ガラス転移温度(Tg)、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を表1に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
ポリオキシアルキレン基含有共重合体(B)の製造
(製造例B−1)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器、滴下ロートを備えた反応容器内に、メチルエチルケトン100.0質量部を入れ、窒素雰囲気下で攪拌しながら還流温度まで過熱した。滴下ロートに、予め混合しておいた、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(アルキレンオキシド単位の平均付加モル数:23)10質量部、t−ブチルメタクリレート90質量部、メチルエチルケトン100質量部、アゾビスイソブチロニトリル5.0質量部の混合溶液を入れ、120分かけて還流温度の反応容器に逐次添加した。その後、240分間還流温度を維持したまま反応させ、反応を終了した。得られたポリオキシアルキレン基含有共重合体(B−1)溶液の固形分、重量平均分子量(Mw)を表2に示す。
【0102】
(製造例B−2、B−3)
単量体組成を表2に示す単量体組成に変更し、適宜開始剤量等を調整する以外は製造例B−1と同様にしてシド鎖含有共重合体(B−2)、(B−3)溶液を製造した。得られたポリオキシアルキレン基含有共重合体溶液の固形分、重量平均分子量(Mw)を表2に示す。
【0103】
【表2】
【0104】
なお、表1、2における各配合物の略号は以下の通りである。また、表1におけるガラス転移温度(Tg)の算出には、以下に示す各単量体の単独重合体のガラス転移温度(Tg)をそれぞれ用いた。
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート(Tg:−76℃)
n−OA:n−オクチルアクリレート(Tg:−80℃)
BA:n−ブチルアクリレート(Tg:−57℃)
EA:エチルアクリレート(Tg:−27℃)
MA:メチルアクリレート(Tg:5℃)
4HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート(Tg:−30℃)
t−BMA:t−ブチルメタクリレート
MePEGMA:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、アルキレンオキシド単位の平均付加モル数は23
【0105】
[実施例1] 光学部材用フィルム用の粘着剤組成物の作製
攪拌羽根、温度計を備えた四つ口フラスコに、製造例A−1で得られたアクリル系共重合体(A−1)溶液100質量部(ただし、固形分として50質量部)、製造例B−1で得られたポリオキシアルキレン基含有共重合体(B−1)溶液0.6質量部(ただし、アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、有効成分として0.4質量部)、アルカリ金属塩(C)としてLiCFSO(以下、「LiTFS」と略称することがある)0.05質量部(ただし、アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、有効成分として0.1質量部)、ジブチルスズジラウレート0.01質量部(ただし、アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、有効成分として0.02質量部)を仕込み、フラスコ内の液温を25℃付近に保って4.0時間混合撹拌を行い、アクリル系共重合体混合溶液を得た。これにジメチルシロキサン化合物(D)として、SH−8400 0.075質量部(ただし、アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、有効成分として0.15質量部)、イソシアネート化合物としてN3300 0.75質量部(住化バイエルウレタン(株)製ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体であるイソシアヌレート構造を有するイソシアネート化合物、アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、有効成分として1.5質量部)を添加し、十分に攪拌して、表3に示す光学部材用フィルム用の粘着剤組成物を得た。
【0106】
(試験用粘着シートの作製)
上記で得られた粘着剤組成物を用いて以下のようにして、光学部材用フィルムとして試験用粘着シートを得た。
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム〔商品名;帝人テトロンフィルム、タイプG2、厚み38μm;帝人デュポンフィルム(株)製〕上に、アプリケーターを用いて、乾燥後の塗工量が20g/mとなるように粘着剤組成物を塗布し、100℃で60秒間熱風循環式乾燥機にて乾燥して粘着剤層を形成した後、シリコーン系離型剤で表面処理された離型フィルム上に該粘着剤層面が接するように載置し、加圧ニップロールを通して圧着して貼り合わせた後、23℃、50%RHで3日間養生を行って試験用粘着シートを得た。
【0107】
[実施例2〜16、比較例1〜9]
実施例1の配合条件の代わりに表3に示した各実施例及び比較例の配合条件を適用したこと以外は、実施例1と同様にして表3に示すような光学部材用フィルム用の粘着剤組成物をそれぞれ作製した。これらの粘着剤組成物を用い、上記試験用粘着シートの作製方法に従って試験用粘着シートをそれぞれ作製した。
【0108】
【表3】
【0109】
なお、表3中、各配合物の略号は以下の通りであり、Dry比として記載した値は、アクリル系共重合体(A)の固形分を100とした場合の各有効成分の質量比率である。
LiTFS:LiCFSO、アルカリ金属塩(C)
LiTFSI:Li(CFSON、アルカリ金属塩(C)
N−3300:住化バイエルウレタン(株)製ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体であるイソシアヌレート構造を有するイソシアネート化合物、商品名:デスモジュールN3300、有効成分100質量%、架橋剤(イソシアネート化合物)
SH−8400:東レ・ダウ(株)製、側鎖にポリオキシアルキレン基を導入したジメチルシロキサン化合物、ポリオキシアルキレン基の末端はアセチルオキシ基、HLB値=7、ジメチルポリシロキサン化合物(D)成分
L−7001:東レ・ダウ(株)製、側鎖にポリオキシアルキレン基を導入したジメチルシロキサン化合物、ポリオキシアルキレン基の末端はメトキシ基、HLB値=5、ジメチルポリシロキサン化合物(D)成分
SH−3773M:東レ・ダウ(株)製、側鎖にポリオキシアルキレン基を導入したジメチルシロキサン化合物、ポリオキシアルキレン基の末端は水酸基、HLB値=8、ジメチルポリシロキサン化合物(D)成分
FZ−2104:東レ・ダウ(株)製、側鎖にポリオキシアルキレン基を導入したジメチルシロキサン化合物、ポリオキシアルキレン基の末端はメトキシ基、HLB値=14
KP−355:信越化学工業(株)製、ポリオキシアルキレン基を導入したジメチルポリシロキサン化合物、HLB値=10
DBTDL:ジブチルスズジラウレート、硬化触媒
【0110】
[評価]
(粘着力)
上記で作製した試験用粘着シートを25mm×150mmにカットしたのち、この試験用粘着シート片を、卓上ラミネート機を用いて、離型フィルムを剥がしつつ、粘着剤層面をアンチグレア処理された偏光フィルムに圧着して試験サンプルとした。この試験サンプルを23℃、50%RHの条件下で24時間放置した後、180゜剥離における粘着力を剥離速度300mm/分(低速)、もしくは30m/分(高速)にて測定した。結果を表4に示した。
剥離速度300mm/分における粘着力が0.07N/25mm以上であれば、光学部材の表面保護が必要とされる間、該部材の表面上でずれを生じたり表面から脱落したりすることがなく好ましい。
また、剥離速度30m/分における粘着力が2.0N/25mm以下であれば、剥離作業性が良好であり好ましい。
【0111】
(耐糊転着性)
上記で作製した試験用粘着シートを20mm×150mmにカットしたのち、この試験用粘着シート片を、卓上ラミネ−ト機を用いて、離型フィルムを剥がしつつ、粘着剤層面をクリア偏光フィルム(表面処理を施していない)に圧着して試験サンプルとした。この試験サンプルのPETフィルム表面にボールペンを垂直に固定し、500gの荷重をかけ1mm/sの速度で試料30mmの距離を3往復ボールペンで引っかき、引っかき試験を行った。引っかき試験後、試験サンプルから試験用粘着シートを剥離し、クリア偏光フィルムの表面から目視観察により、粘着剤組成物のクリア偏光フィルムへの転着状態を、下記評価基準に従って評価した。結果を表4に示した。
【0112】
(評価基準)
A:粘着剤組成物の転着が全く認められなかった。
B:粘着剤組成物の転着がほとんど認められなかったが、薄く転着の痕跡が認められた。
C:粘着剤組成物の転着が多少認められ、実用上問題があるレベルであった。
D:粘着剤組成物の転着が認められた。
【0113】
(なじみ性)
上記で作製した試験用粘着シートを200mm×150mmにカットしたのち、離型フィルムを剥がして、粘着剤層面をアンチグレア処理された偏光フィルムに23℃、50%RHの条件下で中心部分より貼り合せ、自然重力により濡れ広がる時間を測定し、下記評価基準に従って評価した。結果を表4に示した。
【0114】
(評価基準)
A:端部まで完全になじむ時間が45秒未満であった。
B:端部まで完全になじむ時間が45秒以上60秒未満であった。
C:端部まで完全になじむ時間が60秒以上、又は端部まで完全になじまなかった。
【0115】
(剥離帯電圧)
上記で作製した試験用粘着シートを25mm×150mmにカットしたのち、この試験用粘着シート片を、卓上ラミネート機を用いて、離型フィルムを剥がしつつ、粘着剤層面をアンチグレア処理された偏光フィルムに圧着して試験サンプルとした。この試験サンプルを23℃、50%RHの条件下で24時間放置(コンディショニング処理)した後、180゜剥離、剥離速度30m/分(高速剥離条件)で剥離した。このときの発生する偏光板表面の電位を図1に示すように所定の位置に固定してある電位測定機〔春日電機(株)製KSD−0303〕にて測定した。測定は、23℃、50%RHの環境下で行った。結果を表4に示した。
剥離速度30m/分で剥離した際の、剥離帯電圧の絶対値が0.3kV以下であれば、光学部材から表面保護フィルムを剥離する際に、剥離帯電による静電気の発生が少なく、液晶表示装置の回路が破壊したり、光学部材表面にごみや埃を吸着したりすることがなく好ましい。
【0116】
(基材密着性)
上記で作製した試験用粘着シートを作製した離型フィルムを剥がし、粘着剤層にカッターにて、2mm幅×2mm幅で100個のクロスカット部分を形成した。指にてクロスカット部を3回強くこすり、こすった箇所の粘着剤層が基材から剥離したかどうか目視にて観察した。また剥離したクロスカット部分の数を計数し、クロスカット部分の総数に対する比率(%)を求め、下記評価基準に従って評価した。結果を表4に示した。
【0117】
(評価基準)
A:剥離は無かった、または5%未満の剥離部分が見られたが、実用上問題ない程度であった。
B:クロスカット部分の5%以上の剥離部分が見られ、実用上問題となる程度であった。
C:全面的に剥離が見られた。
【0118】
【表4】
【0119】
表4から、本発明の粘着剤組成物は、剥離帯電による静電気の発生が少なく、粘着性、耐糊転着性に優れることが分かる。更に、なじみ性及び基材密着性にも優れることが分かる。
【0120】
日本国特許出願2011−070407号の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。
図1