(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5848411
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月27日
(54)【発明の名称】引込線係留構造
(51)【国際特許分類】
H02G 7/02 20060101AFI20160107BHJP
F16B 35/00 20060101ALI20160107BHJP
F16B 37/00 20060101ALI20160107BHJP
【FI】
H02G7/02
F16B35/00 X
F16B35/00 Y
F16B37/00 D
F16B37/00 E
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-144935(P2014-144935)
(22)【出願日】2014年7月15日
【審査請求日】2014年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000163408
【氏名又は名称】近畿電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112531
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】鷲野 賢一
【審査官】
神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−284228(JP,A)
【文献】
実公昭39−10933(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 7/02
F16B 35/00
F16B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺子軸が一体に形成された引留具本体の該螺子軸にナットを螺締することにより引込線が止着される引込線引留具と、前記螺子軸が螺合される雌螺子孔が形成された固定部材とからなり、該固定部材を家屋等の所要外壁面に固定し、該固定部材の前記雌螺子孔に前記螺子軸を少なくとも1回転以上螺入しつつも非締結状態にすることにより、前記引込線引留具が該固定部材に搖動自在に係留されるようにしたことを特徴とする引込線係留構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ドロップケーブル等の引込線を家屋等の加入者施設に引き込むための引込線係留構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ドロップケーブル(ドロップ型光ファイバケーブル)は、周知のようにポリエチレンシース中に支持線と光ファイバとを一体的に配設した引込線で、架空から家屋等の加入者施設への光ファイバ線の引き込みを容易にするものである。
図11にポール間に架設されたメッセンジャーワイヤからこの光ドロップケーブルを家屋に引き込む際の従来から採られている構成を示す。同図中、1はポール間に架設されたメッセンジャーワイヤ、2は該メッセンジャーワイヤに沿って配設された光ドロップケーブルである。50は該メッセンジャーワイヤ1に分線金物51を用いて止着したフック金具である。52は下記特許文献1等に示された引込線引留具で、該引込線引留具52に突設された掛止環53を前記フック金物50に係合するとともに、光ドロップケーブル2の光ファイバ線2aから支持線2bを部分的に分離させ、該支持線2bを該引込線引留具52に巻き付けることにより光ドロップケーブル2を該メッセンジャーワイヤ1から分岐させている。なお、2cは該光ドロップケーブル2の光ファイバ線2aと支持線2bとの分離部に巻着した粘着テープである。
また、
図12は、ポール55に固定バンド56によってフック金具57を固定し、該フック金具に
図11と同様の掛止環53,引込線引留具52を係留し、光ドロップケーブル2を該ポール55から家屋等に引き込むのに従来から採られている構成である。
一方、
図13は、家屋の外壁面57に固定金具58をビス59により固定し、該固定金具58に形成されたフック部60に前記と同様に掛止環53,引込線引留具52を係留し、前記メッセンジャーワイヤ1または前記ポール55から引き込まれた光ドロップケーブル2を該外壁面57に係留する従来からの構成を示す。
【0003】
また、特許文献2は、引留具本体に螺子軸が形成され、該螺子軸にナットを締め込むことにより、メッセンジャーワイヤに止着できる引込線引留具を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3117509号公報
【特許文献2】特開2003−284228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、
図11〜
図13に示したように、掛止環53をフック金物50に係合することで引込線引留具52を家屋外壁面やポール、或いはメッセンジャーワイヤに係留した構造では、強風時等に該引込線引留具52が激しく揺れることで、掛止環53がフック金物50を激しく打ちたたき騒音を発するとともに、該掛止環53がフック金物50から外れてしまうおそれがあった。
また、特許文献1に示された引込線引留具を使用するに際しては、メッセンジャーワイヤや通信線補強用の支持線に固定するための分線金具のフック金具、ポールに固定するための分線金具のフック金具、家屋外壁面に固定する固定金具等、それぞれ別の金具を必要とするために、部品点数が多く、コストが高くなるという問題があった。
【0006】
また、特許文献2に示された引込線引留具は、使用するに際し支持線を引き留めるための吊具が引留具本体とは別に必要であるとともに、該吊具が強風によって揺れ動くことで該引留具本体のフック部から脱落するおそれがあり、該吊具は絡まり易い形状であったので工場から出荷するに際して梱包に苦慮するという問題がある。
本発明はこのような問題点を解決し得る引込線係留構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために本発明に係る引込線係留構造は、螺子軸が一体に形成された引留具本体の該螺子軸にナットを螺締することにより引込線が止着される引込線引留具と、前記螺子軸が螺合される雌螺子孔が形成された固定部材とからなり、該固定部材を家屋等の所要外壁面に固定し、該固定部材の前記雌螺子孔に前記螺子軸を少なくとも1回転以上螺入しつつも非締結状態にすることにより、前記引込線引留具が該固定部材に搖動自在に係留されるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る引込線係留構造によれば、簡単に引込線を係留することができるとともに、強風等により引込線が揺れても大きな騒音が出たり、外れるおそれなく確実に、しかも引込線にストレスを掛けることなく引込線を係留することができる。また、所要部品点数が少ないのでコストが軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る引込線係留構造の引留具本体の斜視図。
【
図2】本発明に係る引込線係留構造の引留具本体の側面図。
【
図3】本発明に係る引込線係留構造のナットの斜視図。
【
図4】本発明に係る引込線係留構造の固定部材の斜視図。
【
図5】本発明に係る引込線係留構造の固定部材の正面図。
【
図9】本発明に係る引込線引留具の使用状態を示した斜視図。
【
図11】従来の引込線引留具の使用状態を示した斜視図。
【
図12】従来の引込線引留具の使用状態を示した斜視図。
【
図13】従来の引込線引留具の使用状態を示した斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この引込線引留具は、
図1,
図2に示した合成樹脂製の引留具本体10と、
図3に示した合成樹脂製のナット20とからなる。引留具本体10は基板部11に螺子軸12が一体に形成され、該螺子軸12の基部を刳るような形態にて切込13を形成し、該切込13と相対するように突壁14を該基板部11の端縁に一体に形成することにより窪所15を該螺子軸12と突壁14との間に形成するとともに、該窪所15内の底部中央に溝16を形成している。なお、17はこの引留具本体10の各部の肉厚を均一化するために基板部11の両側面に形成された凹部、18も同様に螺子軸12の肉厚を均一化するために形成された凹部である。なお、該凹部18内であって該螺子軸12の先端部寄りに該螺子軸12を横断状に貫通する貫通孔19が形成されている。
【0011】
また、ナット20は、前記螺子軸12に螺合し得る雌螺子が内周面21に形成され、一端部の外周縁22は六角形に形成され、他端部の端面23は円周方向に山波形が連なる凹凸面状に形成されている。
【0012】
一方、家屋の外壁面やポールの外壁面に固定される固定部材30を
図4,
図5に示す。該固定部材30は、周縁部に取付孔31を形成した板状基部32の中央に筒状部33が一体に形成され、該筒状部33の内周に螺子溝を形成することにより前記螺子軸12を螺合し得る雌螺子孔34を形成してなる。なお、35は該筒状部33の底部に形成された取付ベルト通し用の一対の長孔である。
【0013】
該固定部材30は、前記取付孔31にビス36を貫挿することにより
図6に例示したように家屋の外壁面37に固設され、或いは、
図8に例示したように前記長孔35に取付ベルト38を通すことによりポールの外壁面39に固設される。そして、前記引留具本体10の螺子軸12にナット20を螺合し、該螺子軸12の先端部を固定部材30の雌螺子孔34に少なくとも1回転以上螺入する。ただし、該螺子軸12は非締結状態(ルーズ)にすることで、該引留具本体10が該固定部材30に対し自由に軽摩擦で回転動し得るようにする。言い換えれば、
図7にも示すように、螺子軸12を固定部材30に対し螺合途中の状態に留め、決して締め付けないようにする。
【0014】
図6,
図8中、2は引込線たる光ドロップケーブルを示し、該光ドロップケーブルはポリエチレンシース中に光ファイバ線2aと支持線2bとを分離可能に一体的に配設してなり、2cはその分離部の両端部に巻着した粘着テープである。こうして、光ファイバ線2aから分離させた支持線2bを前記溝16に定置したうえで前記ナット20を螺締し、該ナット20によって該支持線2bを溝16中に止着する。こうして、引込線2が家屋等の加入者施設に配線される。
【0015】
このように、本発明に係る引込線係留構造は、螺子軸12の先端部を雌螺子孔34に少なくとも1回転以上螺入しつつも非締結状態にしたことにより、引込線引留具が固定部材30に対し搖動自在に係留されるので、強風等によって引込線2が
図6に矢印で示したように搖動しても螺子軸12が自由回転することでその搖動が吸収され、引込線2の支持線2b等に余計なストレスを掛けない。このため、強風等による引込線2の破断が防止される。また、螺子軸12の螺合部にて騒音を発生することもないとともに、搖動によって外れるおそれもない。しかも、従来の掛止環のような部品を要さず少ない部品点数で構成され、施工工事も簡単になるので、コストが大幅に軽減される。
【0016】
一方、
図9,
図10は、メッセンジャーワイヤ1に沿って配設された引込線2をこの引込線引留具を使用することで適当な位置で家屋等の加入者施設に向けて方向転換し配線する形態を示し、この場合、支持線2bを前記引留具本体10に形成された溝16に定置したうえで、メッセンジャーワイヤ1が窪所15に定置するようにし、その状態で前記ナット20を螺子軸12に螺締する。これによって、メッセンジャーワイヤ1が溝16上に覆い被さるように止着される。なお、ナット20は、螺子軸12に螺締することにより凹凸面状の端面23によりメッセンジャーワイヤ1を押圧し、その凹面部に該メッセンジャーワイヤ1が入り込むことで、該ナット20の振動等による無用な弛みが防止される。
【0017】
この実施形態はメッセンジャーワイヤから光ドロップケーブルを引き込むものについて説明したが、その他の通信線、電線等の引込線を引き込む際にも本発明に係る引込線係留構造を採ることができる。
【符号の説明】
【0018】
2 引込線
2a 光ファイバ線
2b 支持線
10 引留具本体
11 基板部
12 螺子軸
15 窪所
16 溝
20 ナット
30 固定部材
34 雌螺子孔
37,39 外壁面
【要約】
【課題】光ドロップケーブル等の引込線を家屋等に引き込む引込線の係留構造であって、工事作業を容易にし、所要部品点数を少なくし、コストを軽減する。
【解決手段】螺子軸12が一体に形成された引留具本体10の該螺子軸にナット20を螺締することにより引込線2が止着される引込線引留具と、前記螺子軸12が螺合される雌螺子孔34が形成された固定部材30とからなり、該固定部材を家屋等の所要外壁面37に固定し、雌螺子孔34に螺子軸12を少なくとも1回転以上螺入しつつも非締結状態にすることにより、引込線引留具が固定部材30に搖動自在に係留されるようにした。
【選択図】
図4