特許第5848419号(P5848419)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5848419イメージセンサユニット、画像読取装置、画像形成装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5848419
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月27日
(54)【発明の名称】イメージセンサユニット、画像読取装置、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/04 20060101AFI20160107BHJP
   F21K 9/00 20160101ALI20160107BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20160107BHJP
   F21V 23/00 20150101ALI20160107BHJP
   F21V 8/00 20060101ALI20160107BHJP
   H04N 1/028 20060101ALI20160107BHJP
   G03B 27/54 20060101ALI20160107BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20160107BHJP
【FI】
   H04N1/04 101
   F21S2/00 230
   F21S2/00 340
   F21V23/00 113
   F21V8/00 310
   F21V8/00 320
   H04N1/028 Z
   G03B27/54 A
   F21S2/00 432
   F21Y101:02
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-178260(P2014-178260)
(22)【出願日】2014年9月2日
(62)【分割の表示】特願2013-62386(P2013-62386)の分割
【原出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-35809(P2015-35809A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2014年9月2日
(31)【優先権主張番号】特願2012-81882(P2012-81882)
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000104629
【氏名又は名称】キヤノン・コンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】爪川 慶彦
【審査官】 宮島 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−55464(JP,A)
【文献】 特開2009−117186(JP,A)
【文献】 特開平11−185516(JP,A)
【文献】 特開2010−27419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04 − 1/207
F21S 2/00
F21V 8/00
F21V 23/00
G03B 27/52 − 27/56
H04N 1/024 − 1/036
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被照明体である読取対象物を読み取るイメージセンサユニットであって、
光を発する光源と、
読取対象物に前記光源からの光を導く導光体と、
前記読取対象物からの光を集光する集光体と、
前記集光体によって集光された光を電気信号に変換するイメージセンサと、
前記光源と前記イメージセンサを実装したセンサ基板と、
前記光源、前記導光体、前記集光体、前記イメージセンサおよび前記センサ基板を収容するフレームと、
を備え、
前記導光体は、
前記光源からの光が入射する光入射面を備えた曲部と、
前記読取対象物に光を出射する光出射面と、該光出射面に対向して設けられ入射した光を拡散する拡散面と、を備えた直線部と、
を有し、
前記曲部は前記光入射面から入射された光を前記直線部に反射させ、
前記直線部は前記曲部に連結され前記導光体の長手方向に延出すると共に、前記曲部との境界部から前記光出射面とは反対側へ傾斜する傾斜面を有する
ことを特徴とするイメージセンサユニット。
【請求項2】
前記傾斜面は、前記長手方向の曲部が備えられた側とは反対の方向へ向かうにしたがって範囲が減少する
ことを特徴とする請求項1に記載のイメージセンサユニット。
【請求項3】
前記拡散面は、前記長手方向の曲部が備えられた側とは反対の方向へ向かうにしたがって範囲が増加する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のイメージセンサユニット。
【請求項4】
前記直線部のうち前記傾斜面が設けられている部分は、円錐状に拡開する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のイメージセンサユニット。
【請求項5】
前記導光体のうち前記傾斜面が設けられている部分の軸線は、前記長手方向に対して前記読取対象物に光を出射させる光出射の側と反対側に傾斜する
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のイメージセンサユニット。
【請求項6】
前記直線部のうち前記傾斜面が設けられている部分が前記軸線に対して拡開する角度は、前記軸線が前記長手方向に対して前記光出射が前記読取対象物に光を出射する側と反対側に傾斜する角度よりも小さい
ことを特徴とする請求項5に記載のイメージセンサユニット。
【請求項7】
前記長手方向から見て、前記導光体は、前記光入射面の中心位置前記光出射面の中心位置に対してずれて配置されるように屈曲または湾曲している
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のイメージセンサユニット。
【請求項8】
被照明体である読取対象物を読み取ることができる画像読取装置であって、
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のイメージセンサユニットを備え、
前記イメージセンサユニットと前記読取対象物とを相対的に移動させながら、前記読取対象物の画像を読み取る
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項9】
被照明体である読取対象物を読み取ることができると共に読み取った前記読取対象物の画像を記録媒体に形成できる画像形成装置であって、
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のイメージセンサユニットを有する画像読取部と、
前記記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
を有する
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イメージセンサユニット、画像読取装置、画像形成装置に関する。詳しくは、画像読取装置および画像形成装置としてのスキャナーや複写機や複合機、および、画像読取装置および画像形成装置などに用いられるイメージセンサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
イメージセンサユニットに用いられる照明装置として、導光体方式の照明装置が知られている。
即ち、棒状に形成される導光体の、長手方向の端面に設けられた光源が発する光を導光体内にて反射・拡散させながら導光体内を伝搬させつつ、線状化して出射面より出射することで、原稿の主走査方向に対して均一に照射する構成である。
しかしながら、光源を長手方向の端面に設けるためには、導光体の位置および形状に応じた専用の光源を用いる必要があり高価となる問題があった。
【0003】
このため、たとえば、特許文献1には、角錐部と扁平部とが組み合わされ、光入射面、傾斜面、光反射面および光出射面を有する導光体を備えることで、一般的な安価な表面実装型の光源を用いることができるイメージセンサモジュールが開示されている。
この導光体は、導光体の長手方向と異なる方向から入射させた光を、傾斜面によって導光体の長手方向に反射させた後に、光出射面から出射できる構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−117186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
イメージセンサユニットでは、導光体から原稿に出射するときの光の照度を導光体の長手方向で均一にすることが要求される。しかしながら、特許文献1の導光体のように、導光体の長手方向と異なる方向から入射された光を傾斜面によって導光体の長手方向に反射させる際に、傾斜面周辺に漏れ光が生じる虞があった。
【0006】
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、導光体の長手方向と異なる方向から入射させた光を導光体の長手方向に反射させた後に光出射面から出射させることができる導光体を用いる場合であっても、導光体の長手方向に亘って均一に光を出射することができるイメージセンサユニット、および、このイメージセンサユニットが適用される画像読取装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、被照明体である読取対象物を読み取るイメージセンサユニットであって、光を発する光源と、読取対象物に前記光源からの光を導く導光体と、前記読取対象物からの光を集光する集光体と、記集光体によって集光された光を電気信号に変換するイメージセンサと、前記光源と前記イメージセンサを実装したセンサ基板と、前記光源、前記導光体、前記集光体、前記イメージセンサおよび前記センサ基板を収容するフレームと、を備え、前記導光体は、前記光源からの光が入射する光入射面を備えた曲部と、前記読取対象物に光を出射する光出射面と、該光出射面に対向して設けられ入射した光を拡散する拡散面と、を備えた直線部と、を有し、前記曲部は前記光入射面から入射された光を前記直線部に反射させ、前記直線部は前記曲部に連結され前記導光体の長手方向に延出すると共に、前記曲部との境界部から前記光出射面とは反対側へ傾斜する傾斜面を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、導光体の長手方向と異なる方向から入射させた光を導光体の長手方向に反射させた後に光出射面から出射させることができる導光体を用いる場合であっても、導光体の長手方向に均一に光を出射することができる。このため、一部が浮いた状態の読取対象物を読み取る場合であっても、局所的に発生する照度ムラ(濃度ムラ)を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施形態のイメージセンサユニットを副走査方向から見た断面図である。
図2図2は、本実施形態のイメージセンサユニットを示す外観斜視図である。
図3図3は、第1の実施形態のイメージセンサユニットの一部構成を示す斜視図である。
図4A図4Aは、図2の(IV‐A)−(IV‐A)線断面図である。
図4B図4Bは、図2の(IV‐B)−(IV‐B)線断面図である。
図5A図5Aは、光源の平面図である。
図5B図5Bは、光源の断面図である。
図5C図5Cは、光源の断面図である。
図6図6は、第1の実施形態の導光体の構成を示す図である。
図7A図7Aは、図6の(VII‐A)−(VII‐A)線断面図である。
図7B図7Bは、図6の(VII‐B)−(VII‐B)線断面図である。
図7C図7Cは、図6の(VII‐C)−(VII‐C)線断面図である。
図7D図7Dは、図6の(VII‐D)−(VII‐D)線断面図である。
図8図8は、導光体の傾斜角度を変更したときのイメージセンサの出力値の変化を示すグラフである。
図9図9は、第2の実施形態の導光体の構成を示す図である。
図10A図10Aは、図9の(X−A)−(X−A)線断面図である。
図10B図10Bは、図9の(X−B)−(X−B)線断面図である。
図10C図10Cは、図9の(X−C)−(X−C)線断面図である。
図10D図10Dは、図9の(X−D1)−(X−D1)線断面図および(X−D2)−(X−D2)線断面図である。
図11図11は、第2の実施形態のイメージセンサユニットを主走査方向から見た断面図である。
図12図12は、第2の実施形態のイメージセンサユニットを副走査方向から見た断面図である。
図13図13は、導光体の傾斜角度を変更したときのイメージセンサの出力値の変化を示すグラフである。
図14図14は、第3の実施形態の画像読取装置を示す外観斜視図である。
図15図15は、第4の実施形態の画像形成装置を示す外観斜視図である。
図16図16は、第4の実施形態の画像形成部の構成を示す斜視図である。
図17図17は、比較例のイメージセンサユニットを副走査方向から見た断面図である。
図18図18は、遮光部材を設けたときのイメージセンサの出力値の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用できる実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本実施形態は、イメージセンサユニットと、これが適用される画像読取装置と画像形成装置である。以下の説明においては、三次元の各方向を、X,Y,Zの各矢印で示す。X方向が主走査方向であり、Y方向が主走査方向に直角な副走査方向であり、Z方向が上下方向である。本実施形態に係るイメージセンサユニットは、読取対象物としての原稿Pに対して副走査方向に相対的に移動しながら、原稿Pの画像を読み取ることができる。すなわち、Y方向が、イメージセンサユニットと原稿Pとの相対的な移動方向である。なお、読取対象物は原稿Pに限られず、その他の読取対象物に対しても適用可能である。
【0011】
(第1の実施形態)
本実施形態に係るイメージセンサユニット1について、図2図3図4Aおよび図4Bを参照して説明する。図2は、本実施形態に係るイメージセンサユニット1の構成を模式的に示した外観斜視図である。図3は、本実施形態に係るイメージセンサユニット1の内部における集光体と、回路基板と、光源と、イメージセンサとの配置状態を模式的に示した斜視図である。図4Aは、図2に示す(IV−A)−(IV−A)線断面図である。図4Bは、図2に示す(IV−B)−(IV−B)線断面図である。
イメージセンサユニット1の全体的な構成は、次のとおりである。図2に示すように、イメージセンサユニット1は、たとえば、密着型イメージセンサ(CIS;Contact Image Sensor)ユニットであり、主走査方向に長い直方体の構成を有する。図2図3に示すように、イメージセンサユニット1は、フレーム11と、導光体30と、集光体17と、回路基板18と、光源19と、イメージセンサ21と、遮光部材23と、コネクタ24とを含む。光源19は、たとえば、赤R,緑G,青Bの3色の発光波長を持つ発光素子19r,19g,19bを備え、光源19と導光体30とで照明装置が構成される。光源19とイメージセンサ21とは、回路基板18の上面に実装される。
この構成により、原稿Pの画像を読み取る場合、光源19は発光素子19r,19g,19bを順次、点灯駆動させて光を照射する。光源19からの光は、導光体30によって線状化されて原稿P(図4Aおよび図4Bを参照)の読取ラインSに向けて出射される。原稿Pからの反射光は、集光体17によってイメージセンサ21の表面に結像される。そして、イメージセンサ21は、反射光を電気信号に変換する。
【0012】
フレーム11は、イメージセンサユニット1の筐体であり、導光体30と集光体17と回路基板18などが収容される部材である。図2に示すように、フレーム11は、主走査方向に長い直方体の部材である。図4Aおよび図4Bに示すように、フレーム11の内部には、導光体30を収容可能で上方向に向かって開放する空間である導光体収容室12と、集光体17を収容可能な集光体収容室13と、回路基板18を収容可能な回路基板収容室14が形成される。また、フレーム11には、導光体収容室12に収容された導光体30を固定する導光体押さえ爪15が形成される。導光体押さえ爪15は、導光体収容室12の内側に向かって突出する弾性変形可能な突起であり、フレーム11に一体で成形される。また、フレーム11には、遮光部材23を設置する設置部16が形成される。フレーム11は、たとえば、黒色に着色された遮光性を有する樹脂材料により形成される。樹脂材料には、たとえば、ポリカーボネートが適用できる。
【0013】
集光体17は、原稿Pからの反射光をイメージセンサ21上に結像する光学部材である。集光体17には、たとえば、複数の正立等倍結像型の結像素子(ロッドレンズ)が主走査方向に直線状に配列されるロッドレンズアレイが適用される。なお、集光体17は、イメージセンサ21上に結像できればよく、上述した構成に限定されない。集光体17には、各種マイクロレンズアレイなど、公知の各種集光機能を有する光学部材が適用できる。
【0014】
光源19は、たとえば、市販されている表面実装型LEDが適用される。図5Aは、光源19の構成を、表面実装型LEDを例に模式的に示した平面図である。図5Bは、光源19の主走査方向に切断した断面図である。図5Cは、光源19の副走査方向に切断した断面図である。図5A図5Cに示すように、光源19は、発光素子19r,19g,19bが発する光を外部に出射する発光面20を有する。
【0015】
イメージセンサ21には、イメージセンサICアレイが適用される。イメージセンサICアレイは、イメージセンサユニット1の読取の解像度に応じた複数の受光素子(受光素子は光電変換素子ということもある)から構成されるイメージセンサIC22の所定数を回路基板18上に直線状に実装される。このように、イメージセンサ21は、複数の受光素子が主走査方向に直線状に配列されて形成される。イメージセンサ21は、原稿Pから反射され集光体17によって結像された反射光を電気信号に変換する。なお、イメージセンサ21は、原稿Pから反射された反射光を電気信号に変換できるものであればよく、上述した構成に限定されない。イメージセンサIC22には、従来公知の各種イメージセンサICが適用できる。
【0016】
回路基板18は、主走査方向に長い四辺形の形状を有する。回路基板18の上面には、光源19とイメージセンサ21とを実装する。回路基板18は光源19を主走査方向における一端の表面に実装することで、光源19は回路基板18の上方向に向かって光を出射できる。
【0017】
遮光部材23は、板状またはシート状の部材である。たとえば、遮光部材23には、黒く着色され板状またはシート状に成形されるPET樹脂などが適用できる。遮光部材23は、導光体30のうち後述する曲部31の上方向に位置するように、フレーム11の設置部16に固定される。遮光部材23は、導光体30の曲部31からの漏れ光を遮断することができる。
コネクタ24は、後述する画像読取装置または後述する画像形成装置に電気接続される。コネクタ24は、イメージセンサユニット1と画像読取装置または画像形成装置とを電力や電気信号が送受信可能に接続できる構成であればよく、上述した構成に限定されない。
【0018】
導光体30は、光源19が発する光を線状化して原稿Pの読取ラインSに向けて出射するための光学部材である。導光体30は、ガラスや樹脂材料などの透明な材料により形成される。透明な樹脂材料としては、たとえば、アクリル系の樹脂材料が適用できる。
【0019】
図6は、導光体30の構成を示す外観図である。図6は、導光体30を上方向から見た平面図、副走査方向から見た正面図、下方向から見た底面図を示している。また、図7A図7Dは、それぞれ図6に示す(VII−A)−(VII−A)線断面図〜(VII−D)−(VII−D)線断面図を示している。
本実施形態の導光体30は、導光体30の主走査方向と異なる方向から入射された光を導光体30の主走査方向に反射させた後に光出射面38から出射させることで原稿Pを照明することができるように構成されている。
以下、導光体30の具体的な形状について説明する。
導光体30は、一端部側で湾曲して形成された曲部31と、他端部側に向かって主走査方向に延出する直線部36とが一体で成形されている。本実施形態では、曲部31の主走査方向の長さ寸法と直線部36の主走査方向の長さ寸法との比が1:40である。
【0020】
曲部31は、光源19が発する光を直線部36に導く部分である。曲部31の端面には、光源19が発する光を入射させる光入射面32が形成される。図6の底面図に示すように、光入射面32は、矩形の角を円弧状に面取りした形状(ここでは楕円形という)に形成される。ただし、光入射面32の形状は、この形状に限定されず円形状、楕円形状などであってもよい。図4Aに示すように、光入射面32は、光源19が発する光を収率よく導光体30に入射するように、光源19の発光面20に平行でわずかな間隔を介して対向する。また、曲部31は、直線部36と繋がる境界部33に向かって湾曲して形成される。具体的には、曲部31は、光入射面32の楕円形が境界部33まで角度90°に湾曲しながら連続して形成されている。したがって、図6の正面図に示す中心線C1に対して直交する方向に曲部31を切断した場合、何れの断面形状も光入射面32の楕円形と同一形状である。
また、曲部31の外周面は、光入射面32から入射された光を直線部36に向かって反射させる反射面34である。反射面34は、主走査方向に湾曲し副走査方向に円弧状に面取りされていることから、直線部36の所定の範囲に効率的に集光させる集光作用を有する。
【0021】
直線部36は、光を原稿Pに対して出射する光出射部37と、曲部31と光出射部37とを繋げる連結部40とを有している。
光出射部37の表面には、光出射面38が形成される。光出射面38は、光出射部37の主走査方向に亘って設けられる細長い面であり、原稿Pの主走査方向に亘って線状の光を出射する面である。光出射面38は、図4Aおよび図4Bに示す原稿Pの読取ラインSに集光するため、たとえば、読取ラインSの方向に向けて凸の曲面に形成される。また、光出射部37に対向する面には、光拡散面39が形成される。
光拡散面39は、光出射部37の主走査方向に亘って設けられる細長い面であり、光拡散面39に入射される光を、光出射面38に向かって反射・拡散させる面である。光拡散面39は、光出射面38に対向して設けられており、たとえば、シルク印刷などによる光反射性の塗料からなる光拡散パターンが形成されている。光拡散パターンの分布密度は、境界部33から離れるにしたがって高密度に形成されるため、主走査方向に亘って均一の光が光出射面38から出射される。光出射部37の断面形状は、(VII−D)−(VII−D)断面から導光体30の他端部まで同一形状である。すなわち、図7Dに示す断面形状が、導光体30の他端部まで連続して形成される。なお、光出射部37において、光出射面38および光拡散面39以外の面42、43などはそれぞれ入射された光を反射させる反射面として機能する。
【0022】
連結部40は、曲部31の楕円形から光出射部37の断面形状に滑らかに遷移させるための部分である。連結部40は、上述した特異な光を抑制させることができるように形成されている。連結部40のうち光出射面38や光拡散面39が既に形成されている部位は、光出射部37と同様の機能を有する。
連結部40のうち上部は、境界部33の上部と光出射部37の光出射面38とを主走査方向に連続的に連結している。一方、連結部40のうち下部は、図6の正面図で見たときに、境界部33に接近した下端から主走査方向に対して下方向に向かって傾斜角度aで傾斜する部分を有する傾斜部41が形成されている。すなわち、傾斜部41は、境界部33に近接した位置から、光出射部37が光を出射する側の反対側(図6の正面図に示す下方向)に向かって傾斜する部分を有する。傾斜部41は、曲部31の光入射面32から入射して反射面34により反射された光が入射される範囲に形成されている。
【0023】
ここで、傾斜部41の形状について図7A図7Dを参照して説明する。図7A図7Dには、断面形状の遷移が理解できるように、境界部33の断面形状を破線で示し、境界部33の中心線をC1で示している。また、図7A図7Cには、傾斜部41が位置する範囲を二点鎖線で示している。図7A図7Cに示すように、傾斜部41は円弧状に形成される。傾斜部41は、図7Aから図7Cに遷移するにしたがって、中心線C1から徐々に離間すると共に、傾斜部41の範囲が小さくなる。最終的には、図7Dに示すように、傾斜部41はなくなり、光拡散面39などや面42に遷移する。
【0024】
次に、傾斜部41の作用について図1を参照して説明する。図1は、本実施形態のイメージセンサユニット1を副走査方向から見た断面図である。ここでは、集光体17を省略して図示している。
図1に示すように、光源19から導光体30の曲部31に入射された光は、曲部31の反射面34おいて全反射されることで直線部36に伝搬する。曲部31から直線部36に伝搬した光は、傾斜部41に入射する。傾斜部41は主走査方向に対して下方向に向かって傾斜角度aで傾斜しているので、傾斜部41に入射する光の入射角βを大きくすることができる。すなわち、傾斜部41が形成されていない図17の入射角αと比較すると、入射角α<入射角βにすることができる。傾斜部41により入射角を大きい状態に変位した光は、傾斜部41により反射された後に、光出射面38に対して入射角が大きい状態で入射させることができる。したがって、後述する図8に示すように傾斜部41により反射された光の大部分は、光出射面38から出射されず、導光体30の主走査方向に伝搬させることができる。導光体30の主走査方向に伝搬した光は、光拡散面39の光拡散パターンにより拡散されることで、光出射面38から原稿Pに出射される。このように、傾斜部41は、傾斜部41に入射される光の入射角βを大きくすることができるので、傾斜部41により反射され、かつ、光出射面38から直接出射されない光は、導光体の長手方向に伝搬される。このため、特異な光の発生を低減でき、導光体30から出射される光の照度を主走査方向に亘って均一にすることができる。
【0025】
次に、傾斜部41の傾斜角度aについて検証する。
傾斜部41に入射される光の入射角βは、傾斜部41の傾斜角度aに応じて変位する。すなわち、傾斜部41の傾斜角度aが大きい場合には、傾斜部41に入射される光の入射角βが大きくなり、傾斜部41の傾斜角度aが小さい場合には、傾斜部41に入射される光の入射角βが小さくなる。ここでは、最適な傾斜角度aについて検証する。
【0026】
検証した導光体の形状は、図6に示す導光体30において以下のとおりである。光入射面32の形状は、La=3.5mm、Lb=3.0mm、Ra=1.1mmである。曲部31の平均曲率半径Rb=6.2mmである。傾斜部41の主走査方向の長さLc=10.0mmである。境界部33から傾斜部41の傾斜開始位置までの長さLe=1.9mmである。また、図1に示す境界部33からイメージセンサ21までの長さLd=1.4mmである。ここでは、傾斜部41の傾斜角度aを、それぞれ(1)a=0°、(2)a=0.5°、(3)a=1.3°、(4)a=1.5°、(5)a=1.6°に変更してシミュレーションを行った。なお、シミュレーションでは、遮光部材23を設け、漏れ光による影響を排除した。
【0027】
図8は、傾斜部41の傾斜角度aを変更したときの原稿Pの輝度を比較したグラフである。横軸は、イメージセンサ21の主走査方向の位置を示している。横軸の「0mm」の位置は、光源19側であることを示している。また、縦軸は、イメージセンサ21の出力である。すなわち、導光体30から出射された光が原稿Pを照明したときの反射光をイメージセンサ21が読み取り、出力した値である。この出力値は、傾斜角度a=0°のときのイメージセンサ21の出力最大値で規格化した値を示している。
ここでは、傾斜角度a=0°のときのイメージセンサ21の特性線は、図18で遮光部材82を設けたときのイメージセンサ81の特性線と合致している。すなわち、傾斜角度a=0°の場合には、主走査方向の特定の位置で、導光体30の光出射面38から出射されてしまう特異な光が検出される。
一方、傾斜角度aが大きくなるにしたがって、特異な光が少なくなり、傾斜角度a=1.6°では、特異な光は検出されなかった。このように、傾斜部41の傾斜角度aを所定の角度以上にすることで特異な光の発生を低減し、導光体30の主走査方向に亘って均一に光を出射させることができる。このように傾斜部41を臨界的な傾斜角度a(ここではa=1.6°)で形成した導光体30を用いることで、イメージセンサユニット1に大幅な変更を加えることなく主走査方向に亘って均一に光を出射させることができる。
【0028】
ここで、漏れ光の生じる要因について、図17を参照して説明する。図17は、導光体の長手方向と異なる方向から入射された光を導光体の長手方向に伝搬させることができる導光体を備えた、比較例に係るイメージセンサユニット70を副走査方向から見た断面図である。
イメージセンサユニット70は、光源71、回路基板73、導光体74、イメージセンサ81を有している。ここでは、ロッドレンズアレイを省略して図示している。
【0029】
光源71は、たとえば、表面実装型LEDであり、発光素子が発する光を外部に出射する発光面72を有している。光源71は、回路基板73の上面に実装され、発光面72から上側に向かって光を出射する。
導光体74は、曲部75と、直線部78とを有する。曲部75は、光源71が発する光を直線部78に導く部分である。曲部75の端面は、光源71が発する光が入射する入射面76である。また、曲部75には、入射面76から入射された光を直線部78に向かって反射させる湾曲状の反射面77が形成される。直線部78は、主走査方向に延出する棒状に形成される。直線部78の上側には、直線部78の上方向に位置する原稿Pに対して主走査方向に亘って線状化された光を出射する光出射面79が形成される。また、直線部78の下側には、曲部75により導かれた光を光出射面79側に向かって反射させる反射面80が形成される。
イメージセンサ81は、回路基板73の上面に実装され、導光体74により出射されることにより生じた原稿Pの反射光を電気信号に変換する。
【0030】
上述したように構成されるイメージセンサユニット70において、導光体74の長手方向に均一に光を出射させることができない要因について説明する。図17に示すように、光源71の中心から導光体74に入射された光(図17に示す実線矢印)は、曲部75の反射面77により全反射されることで直線部78に導かれる。一方、光源71の周辺部から導光体74に入射された光(図17に示す破線矢印)は、曲部75の反射面77に到達するものの、反射面77に対する入射角が小さいために全反射せずに、一部が漏れ光Nとなって導光体74の外部に漏れてしまう。この漏れ光Nが、原稿Pまで到達してしまうことで、導光体74の長手方向に光が不均一に出射させてしまう。
【0031】
このような問題に対し、図17に示すように導光体74の曲部75を上方向から覆う遮光部材82を設けることが考えられる。遮光部材82は曲部75からの漏れ光Nが上方向に漏れないように遮断する。
図18は、遮光部材82を設けたときの原稿Pの輝度と、遮光部材を設けないときの原稿Pの輝度とを比較したグラフである。横軸は、イメージセンサ81の主走査方向の位置を示している。横軸の「0mm」の位置は、光源71側であることを示している。また、縦軸は、イメージセンサ81の出力である。すなわち、導光体74により出射された光によって原稿Pを照明されたときの反射光をイメージセンサ81が読み取り、出力した値である。この出力値は、遮光部材82を設けたときのイメージセンサ81の出力最大値で規格化した値を示している。
図18に示すように、遮光部材を設けない場合には、光源71側の出力値が最も大きく、光源71から遠ざかるにしたがって、出力値が低下している。これは、上述した漏れ光Nにより出力値が大きくなっていると考えられる。一方、遮光部材82を設けた場合には、出力値の最大値が大きく低下している。このように、遮光部材82を設けることで、漏れ光Nを原稿Pに到達するまでに遮断することができる。
【0032】
しかしながら、図18に示すように、遮光部材82を設けた場合であっても、横軸の所定の位置(20mm)の近辺では出力値が大きく検出され、導光体74の長手方向における不均一な照射を解消できないことが判明した。そこで、上述したイメージセンサユニット70において、導光体74に入射した光が導光体74から出射されるまでをシュミレーションし、導光体74に入射された光の経路を解析した。
その結果、主走査方向の所定の位置で導光体74から特異な光が出射されることを確認することができた。具体的には、曲部75から直線部78に伝搬した光は、直線部78の反射面80により全反射されて、直線部78の長手方向に伝搬する。このとき、曲部75から反射面80に入射する光のうち入射角が大きい光(図17に示す実線A)は、反射面80に全反射された後、直線部78の光出射面79に対して入射角が大きいまま入射される。したがって、光出射面79において全反射され、更に導光体74の長手方向に伝搬する。一方、曲部75から反射面80に入射する光のうち入射角が小さい光(図17に示す実線矢印B)は、反射面80に全反射された後、直線部78の光出射面79には入射角が小さいまま入射される。したがって、光出射面79において全反射されず光出射面79から出射され、外部に出射されてしまう。このように出射された光が特異な光となって、図18に示すように主走査方向の所定の位置で出力され、導光体74の長手方向で均一に照射させることを困難にしていた。また、このような特異な光は指向性が強いために、見開き状態の書籍のように原稿Pの一部が浮いた状態の原稿Pを読み取る場合などには局所的な照度ムラ(濃度ムラ)が発生し画質の劣化の原因になる場合があった。
【0033】
以上、上述した第1の実施形態では、導光体30の直線部36のうち、曲部31の反射面34により反射された光が入射される範囲に、光の入射角を大きくする方向に傾斜させた傾斜部41を形成したことにより、傾斜部41により反射された光は、光出射部37の光出射面38から出射されることなく全反射させることができる。したがって、傾斜部41により反射された光は、導光体30の主走査方向に光を伝搬させることができるので、特異な光の発生を低減し、導光体30から出射される光の照度を主走査方向に亘って均一にすることができる。また、指向性がある特異な光の発生を低減することで、一部が浮いた原稿Pを読み取る場合であっても局所的な照度ムラ(濃度ムラ)の発生を低減することができる。
【0034】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るイメージセンサユニット2について説明する。第2の実施形態に係るイメージセンサユニット2の外観斜視図は、図2に示す外観斜視図と同様であるが、導光体の形状が第1の実施形態と異なる。なお、第1の実施形態と共通する構成については、同一符号を付して、その説明を省略する。
図9は、本実施形態に係る導光体50の構成を示す外観図である。図9は、導光体50を上方向から見た平面図、副走査方向から見た正面図、下方向から見た底面図を示している。また、図10A図10Cは、それぞれ図9に示す(X−A)−(X−A)線断面図〜(X−C)−(X−C)線断面図を示し、図10Dは、図9に示す軸線C3に直交する方向に切断した(X−D1)−(X−D1)線断面図および(X−D2)−(X−D2)線断面図を示している。
【0035】
本実施形態の導光体50は、導光体50の主走査方向と異なる方向から入射された光を導光体50の主走査方向に反射させた後に光出射面58から出射させることで原稿Pを照明することができるように構成されている。
以下、導光体50の具体的な形状について説明する。
導光体50は、一端部側で湾曲して形成された曲部51と、他端部側に向かって主走査方向に延出する直線部56とが一体で成形されている。本実施形態では、曲部51の主走査方向の長さ寸法と直線部56の主走査方向の長さ寸法との比が1:40である。
【0036】
曲部51は、光源19が発する光を直線部56に導く部分である。曲部51の端面には、光源19が発する光を入射させる光入射面52が形成される。図9の底面図に示すように、光入射面52は、楕円形に形成される。曲部51は、直線部56と繋がる境界部53に向かって湾曲して形成される。具体的には、曲部51は、光入射面52の楕円形が境界部53まで角度90°に湾曲しながら連続して形成されている。したがって、図9に示す中心線C2に対して直交する方向に曲部51を切断した場合、何れの断面形状も光入射面52の楕円形と同一形状である。
【0037】
更に、図9の平面図および底面図に示すように、曲部51は主走査方向に対して角度bで屈曲して形成されている。このように、曲部51は、上下方向から見た場合に主走査方向に対して屈曲し、副走査方向から見た場合に湾曲した、捩れ形状を有する。また、曲部51の外周面は、光入射面52から入射された光を直線部56に向かって反射させる反射面54である。反射面54は、主走査方向に湾曲し副走査方向に円弧状に面取りされていることから、直線部56の所定の範囲に効率的に集光させる集光作用を有する。
【0038】
直線部56は、光を原稿Pに対して出射する光出射部57と、曲部51と光出射部57とを繋げる連結部60とを有している。
光出射部57の表面には、光出射面58が形成される。光出射面58は、光出射部57の主走査方向に亘って設けられる細長い面であり、原稿Pの主走査方向に亘って線状化した光を出射する面である。また、光出射部57に対向する面には、光拡散面59が形成される。
光拡散面59は、光拡散面59に入射される光を、光出射面58に向かって反射・拡散させる面である。光出射面58および光拡散面59の構成および機能は、第1の実施形態と同様である。光出射部57の断面形状は、(X−D1)−(X−D1)断面から導光体50の他端部まで同一形状である。すなわち、図10Cに示す断面形状が、導光体50の他端部まで連続して形成される。なお、光出射部57において、光出射面58および光拡散面59以外の面65〜面68はそれぞれ入射された光を反射させる反射面として機能する。
【0039】
連結部60は、曲部51の楕円形から光出射部57の断面形状に滑らかに遷移させるための部分である。連結部60は、上述した特異な光を抑制させることができるように形成されている。連結部60のうち光出射面58や光拡散面59が既に形成されている部位は、光出射部57と同様の機能を有する。
連結部60のうち境界部53に近接した上部には、主に境界部53の上部と光出射部57の光出射面58とを連結させる上側連結部61が形成される。また、連結部60の下部には、境界部53の下部と光拡散面59などとを連結させる下側連結部62が形成される。
上側連結部61と下側連結部62とを合わせた軸部の軸線C3は、図9の正面図で示すように、主走査方向の軸線Lに対して下方向に向かって角度cで傾斜して形成されている。すなわち、軸部の軸線C3は、光出射部57が光を出射する側の反対側に向かって傾斜する。更に、上側連結部61と下側連結部62とは、この軸線C3を中心にして導光体50の他端部に向かうにしたがって連結部60の断面積が大きくなるように角度dで円錐状に拡開している。ここでは、角度c>角度dになっている。また、図9の平面図および底面図に示すように、上側連結部61と下側連結部62とを合わせた軸部の軸線C3は、主走査方向の軸線Lに対して副走査方向に角度eで傾斜している。ここでは、角度b>角度eになっている。上述した円錐状に拡開する角度dは、図9の正面図に限られず、図9の平面図にも表れる。このように、連結部60の一部は、主走査方向に沿っているものの、副走査方向に角度eおよび下方向に傾斜角度cだけ傾斜した部分を有する。
図10Dは、軸線C3に直交する方向で切断した断面図であり、(X−D1)−(X−D1)線断面図を破線で示し、(X−D2)−(X−D2)線断面図を実線で示している。図10Dに示すように上側連結部61と下側連結部62によって境界部53の断面形状よりも円錐状に拡開することが確認できる。
【0040】
なお、上側連結部61は、図9の正面図で見たときに、境界部53の上端から主走査方向に対して下方向に向かって上述した角度cで傾斜するものの角度dで拡開するために、実際には角度c−角度d=傾斜角度fで下方向に傾斜した後、光出射面58に繋がっている。したがって、光出射面58の上面は、境界部53の上端よりも低い位置に配置される。図10A図10Cには、断面形状の遷移が理解できるように、境界部53の断面形状を破線で示し、境界部33の中心線をC2で示している。図10A図10Cでは、光出射面58の上端は境界部53の上端よりも低い位置であることが確認できる。
【0041】
一方、下側連結部62は、図9の正面図で見たときに、境界部53の下端から主走査方向に対して下方向に向かって上述した傾斜角度cで傾斜した上に更に所定の角度dで拡開するために、実際には角度c+角度d=傾斜角度gで下方向に傾斜する部分を有する。また、下側連結部62は下方向に傾斜した後、逆に上方向に向かって傾斜して光出射部57に連結する。ここで、傾斜角度gで傾斜する部分を含む傾斜部を第1の傾斜部63といい、上方向に向かって傾斜する部分を含む傾斜部を第2の傾斜部64という。すなわち、第1の傾斜部63は、境界部53から、光出射部57が光を出射する側の反対側(図9の正面図に示す下方向)に向かって傾斜する部分を有する。第1の傾斜部63は、曲部51の光入射面52から入射して反射面54により反射された光が入射される範囲に形成されている。
第1の傾斜部63の形状について図10Aおよび図10Dを参照して説明する。図10Aおよび図10Dには、第1の傾斜部63が位置する範囲を二点鎖線で示している。図10Aおよび図10Dに示すように、第1の傾斜部63は円弧状に形成される。図10Dから図10Aのように、導光体50の他端部に向かうにしたがって第1の傾斜部63の範囲は、徐々に小さくなる。すなわち、図9の底面図に示すように、第1の傾斜部63は導光体50の他端部に向かうにしたがって徐々に小さくなり光拡散面59および第2の傾斜部64に遷移する。
【0042】
第2の傾斜部64の形状について図10Bを参照して説明する。図10Bには、第2の傾斜部64が位置する範囲を二点鎖線で示している。図10Bに示すように、第2の傾斜部64は円弧状に形成される。第2の傾斜部64の範囲は導光体50の他端部に向かうにしたがって徐々に小さくなる。すなわち、図9の底面図に示すように、第2の傾斜部64は導光体50の他端部に向かうにしたがって徐々に小さくなり光拡散面59に遷移する。
【0043】
次に、本実施形態の導光体50を組み付けたイメージセンサユニット2について図11を参照して説明する。図11は、イメージセンサユニット2を図2に示す(IV−A)−(IV−A)線と同様な位置で切断した断面図である。
本実施形態の導光体50の曲部51は、上下方向から見た場合に主走査方向に対して屈曲し、副走査方向から見た場合に湾曲した、捩れ形状を有しており、導光体50の光入射面52の中心位置Ceは光出射部57の中心位置Cgに対してずれて配置される。したがって、導光体50の光入射面52の中心位置Ceを光出射部57の中心位置Cgよりもイメージセンサ21側に接近させて配置することができる。第1の実施形態の導光体30を備えたイメージセンサユニット1(図4Aを参照)と比較すると副走査方向に関して、光源19をイメージセンサ21に接近して実装することができる。したがって、回路基板18の副走査方向の寸法を小さくすることができ、回路基板18の小型化および軽量化を図ることができる。回路基板18の副走査方向の寸法を小さくすることにより、イメージセンサユニット2の副走査方向寸法の小型化および軽量化を図ることができる。
【0044】
ここで、中心位置とは、Z方向の平面視(回路基板18の光源19およびイメージセンサ21が実装される面の平面視)における輪郭線(外形線)のうち、副走査方向について互いに最も離れた箇所(最大外形)どうしの中心位置をいう。たとえば、光出射部57の中心位置Cgは、光出射部57の外形Olと外形Orとの中間位置である。また、光入射面52の中心位置Ceは、中間位置である。なお、光入射面52と光出射部57に局所的または部分的な凹凸が存在することがあるが、ここでいう中心位置は、このような凹凸が存在しないものとした場合の中心位置とする。
【0045】
次に、第1の傾斜部63の作用について図12を参照して説明する。図12は、本実施形態のイメージセンサユニット2を副走査方向から見た断面図である。ここでは、集光体17を省略している。
図12に示すように、光源19から導光体50の曲部51に入射された光は、曲部51の反射面54において全反射されることで直線部56に伝搬する。曲部51から直線部56に伝搬した光は、第1の傾斜部63に入射する。第1の傾斜部63は主走査方向に対して下方向に向かって傾斜角度gで傾斜しているので、第1の傾斜部63に入射する光の入射角βを大きくすることができる。すなわち、第1の傾斜部63が形成されていない図17の入射角αと比較すると、入射角α<入射角γにすることができる。第1の傾斜部63により入射角を大きい状態に変位した光は、第1の傾斜部63により反射された後に、光出射面58に対して入射角が大きい状態で入射されることができる。したがって、後述する図13に示すように第1の傾斜部63により反射された光の大部分は、光出射面58から出射されず、導光体50の主走査方向に伝搬する。導光体50の主走査方向に伝搬した光は、光拡散面59の光拡散パターンにより拡散されることで、光出射面58から原稿Pに出射される。このように、第1の傾斜部63は、第1の傾斜部63に入射される光の入射角γを大きくすることができるので、第1の傾斜部63により反射され、かつ、光出射面58から直接出射されない光は、導光体の長手方向に伝搬される。このため、特異な光の発生を低減でき、導光体50から出射される光の照度を主走査方向に亘って均一にすることができる。
【0046】
次に、最適な第1の傾斜部63の傾斜角度gについて説明する。
検証した導光体の形状は、図9に示す導光体50において以下の通りである。光入射面52の形状は、La=3.5mm、Lb=3.0mm、Ra=1.4mmである。曲部51の平均曲率半径は、Rb=6.5mmである。曲部51の角度は、b=17°である。上側連結部61と下側連結部62とを合わせた軸部の主走査方向に対する下方向に傾斜する角度は、c=4°である。第1の傾斜部63の主走査方向の長さLc=5.1mmである。また、図12に示す境界部53からイメージセンサ21までの長さLd=1.2mmである。ここでは、軸部の軸線C3と主走査方向の軸線Lとを傾斜させる角度をc=4°、e=12°にした状態で、拡開させる角度dを、それぞれ(1)d=0°、(2)d=0.5°、(3)d=1.3°、(4)d=1.5°、(5)d=1.6°、(6)d=1.7°に変更してシミュレーションを行った。角度dを変更することで、第1の傾斜部63の傾斜角度gが変更される。なお、シミュレーションでは、遮光部材23を設け、漏れ光による影響を排除した。
【0047】
図13は、拡開させる角度dを変更したときの原稿Pの輝度を比較したグラフである。横軸は、イメージセンサ21の主走査方向の位置を示している。横軸の「0mm」の位置は、光源19側であることを示している。また、縦軸は、イメージセンサ21の出力である。すなわち、導光体50から出射された光が原稿Pを照明したときの反射光をイメージセンサ21が読み取り、出力した値である。この出力値は、角度d=0°のときのイメージセンサ21の出力最大値で規格化した値を示している。
図13に示すように、角度d=0°の場合には、主走査方向の特定の位置で、導光体50の光出射面58から出射されてしまう特異な光が検出される。
一方、角度dが大きくなるにしたがって、特異な光が少なくなり、角度d=1.7°では、特異な光は検出されなかった。このように、第1の傾斜部63の傾斜角度gを所定の角度以上にすることで特異な光の発生を低減し、導光体50の主走査方向に亘って略均一に光を出射させることができる。このように第1の傾斜部63の傾斜角度g(ここでは角度d=1.7°+傾斜角度c=4°)で形成した導光体50を用いることで、イメージセンサユニット2に大幅な変更を加えることなく導光体50の主走査方向に亘って均一に光を出射させることができる。
【0048】
以上、上述した第2の実施形態の導光体50は、第1の傾斜部63を形成したことにより、第1の実施形態と同様の効果を有する。また、第2の実施形態の導光体50では、曲部51が捩れ形状を有しているので、導光体50の光入射面52を副走査方向においてイメージセンサ21に接近して配置することができる。このため、回路基板18の副走査方向の寸法を小さくすることができ、回路基板18の小型化および軽量化を図ることができる。
また、第2の実施形態の導光体50では、第1の傾斜部63を形成するために、連結部60を境界部53から主走査方向に角度dで断面積が大きくなるように円錐状に拡開させた。このとき、連結部60(上側連結部61と下側連結部62とを合わせた軸部)は、軸線方向を主走査方向に対して角度c(角度c>角度d)で下方向に傾斜させたことにより、光出射部57の位置が低くなり、導光体50の小型化を図ることができる。また、第1の傾斜部63から逆に上方向に傾斜する第2の傾斜部64を形成したことにより、光出射部57の断面積を小さくすることができ、導光体50を小型化することができる。
【0049】
(第3の実施形態)
次に、本実施形態に係る画像読取装置100について、図14を参照して説明する。本実施形態に係る画像読取装置100には、第1の実施形態に係るイメージセンサユニット1と第2の実施形態に係るイメージセンサユニット2の一方が適用される。図14は、本実施形態に係る画像読取装置100の外観斜視図である。図14に示すように、画像読取装置100は、フラットベッド方式のイメージスキャナーであり、上述したイメージセンサユニット1またはイメージセンサユニット2が組み込まれる。画像読取装置100は、筐体101と、ユニット台102と、ユニット台駆動機構とを有する。ユニット台102は、イメージセンサユニット1、2を搭載できる部材である。ユニット台駆動機構は、イメージセンサユニット1、2が搭載されるユニット台102を、副走査方向に移動させるための機構である。たとえば、ユニット台駆動機構は、駆動モータ103と、駆動モータ103の動力をユニット台102に伝達するワイヤー104とを含む。なお、ユニット台102およびユニット台駆動機構の構成は、特に限定されず、従来公知の構成が適用できる。また、筐体101の上面には、原稿支持体105が設けられる。原稿支持体105には、たとえば、透明のガラス板が適用される。さらに、筐体101の副走査方向の端部には、圧板106がヒンジなどによって開閉可能に取付けられる。圧板106は、原稿支持体105の上面に載置された原稿Pを押さえる機能を有する。
【0050】
画像読取装置100の動作および使用方法は次のとおりである。原稿支持体105の上面に、原稿Pを下向きに載置し、圧板106を閉じる。そして、駆動モータ103を駆動させてワイヤー104を動かすことによって、イメージセンサユニット1、2を副走査方向に移動させる。これにより、イメージセンサユニット1、2は、原稿Pに対して副走査方向に相対的に移動する。そしてイメージセンサユニット1、2を移動させながら、原稿Pの画像を読取ラインS毎に読み取る。
【0051】
本実施形態に係る画像読取装置100は、イメージセンサユニット1、2が適用されるため、主走査方向に亘って均一に光を出射できる。特に、原稿Pには特異な光の発生を低減できることから、原稿Pの一部が浮いている状態であっても照度ムラ(濃度ムラ)がなく画質の向上を図ることができる。なお、本実施形態に係る画像読取装置100について、説明を省略した部分については、従来公知の画像読取装置と同じ構成が適用できる。
【0052】
(第4の実施形態)
次に、本実施形態に係る画像形成装置110について、図15図16を参照して説明する。本実施形態に係る画像形成装置110には、第1および第2の実施形態に係るイメージセンサユニット1、2が適用される。図15は、画像形成装置110の外観斜視図である。図16は、画像形成装置110の筐体の内部に設けられる画像形成部111を抜き出して示した斜視図である。図15図16に示すように、画像形成装置110は、フラットベッド方式のイメージスキャナーとインクジェットプリンタとの複合機の一例としての多機能プリンタ(MFP;Multi Function Printer)であり、画像を読取る画像読取部119と、画像を形成する画像形成部111とを有する。そして、画像形成装置110の画像読取部119には、イメージセンサユニット1、2が組み込まれる。なお、画像形成装置110の画像読取部119は、上述した画像読取装置100と共通の構成が適用できる。したがって、画像読取装置100と共通の構成については同じ符号を付して示し、説明は省略する。
【0053】
図15に示すように、画像形成装置110には、操作部120が設けられる。操作部120には、操作メニューや各種メッセージなどを表示する表示部121と、画像形成装置110を操作するための各種操作ボタン122が設けられる。
また、図16に示すように、画像形成装置110の筐体の内部には、画像形成部111が設けられる。画像形成部111は、搬送ローラ112と、ガイドシャフト113と、インクジェットカートリッジ114と、モータ115と、一対のタイミングプーリ116とを有する。搬送ローラ112は、駆動源の駆動力によって回転し、記録媒体としての印刷用紙Rを副走査方向に搬送する。ガイドシャフト113は棒状の部材であり、その軸線が印刷用紙Rの主走査方向に平行となるように画像形成装置110の筐体に固定される。インクジェットカートリッジ114は、ガイドシャフト113に上をスライドすることによって、印刷用紙Rの主走査方向に往復動できる。一対のタイミングプーリ116の一方は、モータ115の回転軸に取り付けられる。そして、一対のタイミングプーリ116は、印刷用紙Rの主走査方向に互いに離れた位置に設けられる。タイミングベルト117は、一対のタイミングプーリ116に平行掛けに巻き掛けられ、所定の箇所がインクジェットカートリッジ114に連結される。
【0054】
画像形成装置110の画像読取部119は、イメージセンサユニット1、2が読み取った画像を、電気信号に変換する。そして、画像形成装置110の画像形成部111は、画像読取部119のイメージセンサユニット1、2が変換した電気信号に基づいて、搬送ローラ112、モータ115、インクジェットカートリッジ114を駆動し、印刷用紙Rに画像を形成する。このほか、画像形成装置110の画像形成部111は、外部から入力された電気信号に基づいて画像を形成することができる。なお、画像形成装置110のうち、画像形成部111の構成および動作は、公知の各種プリンタと同じ構成が適用できる。したがって、詳細な説明は省略する。
【0055】
本実施形態に係る画像形成装置110は、画像読取部119に、第1または第2の実施形態に係るイメージセンサユニット1、2が適用される。このため、主走査方向に亘って均一に光を出射させることができる。特に、原稿Pには特異な光の発生を低減できることから、原稿Pの一部が浮いている状態であっても照度ムラ(濃度ムラ)がなく画質の向上を図ることができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、上述した実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体例を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に限定されない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。たとえば、第1の実施形態と第2の実施形態を適宜組み合わせることができる。
【0057】
なお、本発明に係る画像読取装置は、上述した実施形態に記載される構成のイメージスキャナーに限定されず、たとえば、シートフィード方式のイメージスキャナーであってもよい。また、画像形成装置も、インクジェット方式に限定されず、電子写真方式、熱転写方式、ドットインパクト方式などどのような方式であってもよく、上述した実施形態に記載される複合機に限定されない。本発明に係るイメージセンサユニットが適用される複写機やファクシミリも、本発明の画像読取装置に含まれる。
【0058】
また、第1および第2の実施形態の導光体の曲部は、副走査方向から見て湾曲した形状に形成する場合について説明したが、この場合に限られない。すなわち、導光体は導光体の主走査方向と異なる方向から入射された光を導光体の主走査方向に反射させた後に光出射面から出射できればよく、たとえば、導光体の曲部は屈曲した形状であってもよい。
【0059】
また、第1の実施形態では、境界部33に接近した位置から主走査方向に対して下方向に向かって傾斜させる場合について説明したが、この場合に限定されず、境界部33から直ぐに下方向に向かって傾斜させてもよい。
また、第2の実施形態では、境界部53から直ぐに主走査方向に対して下方向に向かって傾斜させる場合について説明したが、この場合に限定されず、境界部53に近接した位置から下方向に向かって傾斜させてもよい。
また、光源19と導光体30とからなる照明装置を、原稿Pに対する反射用光源として用いたが、透過用光源として用いても構わない。
【符号の説明】
【0060】
1,2:イメージセンサユニット、11:フレーム、17:集光体、18:回路基板、19:光源、21:イメージセンサ、23:遮光部材、30:導光体、31:曲部、32:光入射面、33:境界部、34:反射面、36:直線部、37:光出射部、38:光出射面、39:光拡散面、40:連結部、41:傾斜部、50:導光体、51:曲部、52:光入射面、53:境界部、54:反射面、56:直線部、57:光出射部、58:光出射面、59:光拡散面、60:連結部、61:上側連結部、62:下側連結部、63:第1の傾斜部、64:第2の傾斜部、100:画像読取装置、110:画像形成装置、111:画像形成部、119:画像読取部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
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図18