特許第5848432号(P5848432)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5848432
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月27日
(54)【発明の名称】ミルタザピンを含有する口腔内崩壊錠
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/55 20060101AFI20160107BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20160107BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20160107BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20160107BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20160107BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20160107BHJP
【FI】
   A61K31/55
   A61K9/20
   A61K47/10
   A61K47/32
   A61K47/36
   A61P25/24
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-266370(P2014-266370)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-129124(P2015-129124A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2014年12月26日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0168527
(32)【優先日】2013年12月31日
(33)【優先権主張国】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515003330
【氏名又は名称】コーロン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】キュ−ヒョン,イ
(72)【発明者】
【氏名】サン−フン,カム
(72)【発明者】
【氏名】キュ−サン,チェ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン−ラン,キム
(72)【発明者】
【氏名】テ−フン,クォン
【審査官】 加藤 文彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0010101(US,A1)
【文献】 特表2007−507548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/55
A61K 9/20
A61K 47/10
A61K 47/32
A61K 47/36
A61P 25/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填剤としてマンニトールを含み、崩壊剤としてクロスポビドンと澱粉グリコール酸ナトリウムを含み、
前記澱粉グリコール酸ナトリウムとクロスポビドンとの混合重量比が、1:1.5〜1:4(澱粉グリコール酸ナトリウム:クロスポビドン)であり、
糖、糖アルコールまたは微結晶セルロースのコアにコーティングされたミルタザピンを含むことを特徴とする、ミルタザピンを含む口腔内崩壊錠。
【請求項2】
前記充填剤として使用されたマンニトールの含量が、口腔内崩壊錠の全体重量対比35〜60重量%であることを特徴とする請求項1に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項3】
前記充填剤として使用されたマンニトールの含量が、ミルタザピンまたはミルタザピン含有粒子を除いた他の添加剤の全体重量対比70〜90重量%であることを特徴とする請求項1に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項4】
前記口腔内崩壊錠が、ミルタザピンがコーティングされた糖、糖アルコールまたは微結晶セルロースのコアを口腔内崩壊錠の全体重量対比30〜70重量%含むことを特徴とする請求項1に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項5】
前記ミルタザピンが、コアとして使用されたマンニトール粒子にコーティングされたことを特徴とする請求項4に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項6】
糖、糖アルコールまたは微結晶セルロースのコアにコーティングされた薬物粒子を含む口腔内崩壊錠において、
充填剤としてマンニトールを含み、崩壊剤としてクロスポビドンと澱粉グリコール酸ナトリウムを含み、
前記澱粉グリコール酸ナトリウムとクロスポビドンとの混合重量比が、1:1.5〜1:4(澱粉グリコール酸ナトリウム:クロスポビドン)であること
を特徴とする口腔内崩壊錠。
【請求項7】
前記充填剤として使用されたマンニトールの含量が、口腔内崩壊錠の全体重量対比35〜60重量%であることを特徴とする請求項6に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項8】
前記充填剤として使用されたマンニトールの含量が、薬物粒子を除いた他の添加剤の全体重量対比70〜90重量%であることを特徴とする請求項6に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項9】
前記口腔内崩壊錠が、薬物がコーティングされた糖、糖アルコールまたは微結晶セルロースのコアを口腔内崩壊錠の全体重量対比30〜70重量%を含むことを特徴とする請求項6に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項10】
前記薬物粒子が、コアとして使用されたマンニトール粒子にコーティングされたことを特徴とする請求項6に記載の口腔内崩壊錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主成分としてミルタザピン(mirtazapine)を含む口腔内崩壊錠に関する。
【0002】
本出願は、2013年12月31日出願の韓国特許出願第10−2013−0168527号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
ミルタザピンは鬱病の治療に使用される薬物であり、ミルタザピンの経口投与用服用単位は通常錠剤の剤形である。このようなミルタザピンの1回投与量は一般に15〜45mgの範囲である。
【0004】
丸薬あるいは錠剤という形態の製剤は、薬物を体内に供給するために長年に亘って便利且つ有用に用いられてきた。しかし、意外と多くの人が錠剤を飲み込むことに対する恐怖を覚えており、手ブレや嚥下障害を有する年寄り、錠剤を飲み込めず、シロップの形態で飲ませるか又は錠剤を磨り潰し水に溶かして飲ませなければならない幼小児、旅行中など水を得難い場合、水分攝取制限の患者(例えば、腎臓病の患者)、寝たきりで薬物服用のために起きることができない患者などには依然として不便な剤形である。これを改善するために開発されたものが速崩錠(Fast Disintegrating Tablet)である。
【0005】
速崩錠は、口腔内に錠剤を入れれば、唾液によって数秒〜数十秒以内に錠剤が崩壊し、水がなくても唾液とともに服用できるようにした錠剤の一形態である。速崩錠は、口腔内崩壊錠(Orally Disintegrating Tablet)、迅速溶融錠(Rapidly Melting Tablet)、口腔内拡散錠(Orodispersible Tablet)、速溶錠(Fast Dissolving Tablet)、迅速崩壊錠(Rapidly Eroding Tablet)などと多様に呼ばれている。速崩錠は、上述した対象の外に一部の精神疾患者にも有用である。彼らの一部は看護婦などの前では錠剤を飲むふりをしながら舌の下に錠剤を隠し、看護婦などがいないときに吐き捨てることもあるため、彼らに対するより確実な投薬のためにも速崩錠は有用に使用できる製剤の一形態である。
【0006】
理想的な速崩錠は、口腔内で迅速且つなめらかに崩壊する特性と共に、円滑な生産、運搬、包装、保管などに適した物理的特性を要するが、このような物理的特性としては高い硬度と低い摩損度が挙げられる。しかし、一般に、崩壊が速ければ錠剤の物理的特性が悪く、物理的特性が良ければ崩壊が遅くなる。
【0007】
一方、ミルタザピンを有効成分として含む錠剤としては、Remeron soltabTM及びMirtaxTMが知られている。Remeron soltabTM(ミルタザピン製剤、MSD社製)は、発泡性物質を含む速崩錠剤形であるため、口腔内に発泡ガスが発生し服薬性が悪く、低硬度のため生産、運搬、包装、保管などが容易ではないという短所がある。また、MirtaxTM(ミルタザピン製剤、SANDOZ社製)は、好適な硬度で物理的特性に優れるが、口腔内崩壊性が足りないという短所がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国特許登録第10−0708560号
【特許文献2】韓国特許公開第10−2013−0076511号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、ミルタザピンを含む口腔内崩壊錠であって、異物感がなくざらざら感がないなど全体的な服用感に優れ、包装、取り扱い、流通過程で錠剤が破損されないように高い硬度を有し、高い硬度を有しながらも口腔内で迅速に崩壊し、保存安定性に優れた口腔内崩壊錠を提供することである。
【0010】
本発明が解決しようとする他の課題は、口腔内崩壊錠に含まれる薬効成分が糖、糖アルコールまたは微結晶セルロースのコアにコーティングされた薬物粒子の形態で他の成分とともに口腔内崩壊錠に含まれる場合、異物感がなくざらざら感がないなど全体的な服用感に優れ、包装、取り扱い、流通過程で錠剤が破損されないように高い硬度を有し、高い硬度を有しながらも口腔内で迅速に崩壊し、保存安定性に優れた口腔内崩壊錠を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明は、ミルタザピンを含む口腔内崩壊錠において、充填剤としてマンニトールを含み、崩壊剤としてクロスポビドンと澱粉グリコール酸ナトリウムの2種の崩壊剤を含むことを特徴とするミルタザピンを含む口腔内崩壊錠を提供する。
【0012】
また、本発明は、糖、糖アルコールまたは微結晶セルロースのコアにコーティングされた薬物粒子を含む口腔内崩壊錠において、充填剤としてマンニトールを含み、崩壊剤としてクロスポビドンと澱粉グリコール酸ナトリウムの2種を共に含むことを特徴とする口腔内崩壊錠を提供する。
【0013】
本発明者等は、多様な試みと実験を繰り返した結果、主要充填剤としてマンニトールを使用し、崩壊剤として澱粉グリコール酸ナトリウムとクロスポビドンを共に使用する場合、ミルタザピンを含む口腔内崩壊錠において、特に、糖、糖アルコールまたは微結晶セルロースのコアにコーティングされた薬物(好ましくは、ミルタザピン)粒子を含む口腔内崩壊錠において、高い硬度と素早い崩壊という二律背反的な目的を果たせるだけでなく、異物感、ざらざら感などがなく服用感に優れた口腔内崩壊錠が製造できるという驚くべき知見に想到した。
【0014】
したがって、本発明による口腔内崩壊錠は、主要充填剤(賦形剤)としてマンニトールを含む。充填剤として使用されたマンニトールの含量は、本発明の多くの目的上、口腔内崩壊錠の全体重量対比35〜60重量%であることが好ましく、45〜60重量%であることがより好ましく、50〜57重量%であることが最も好ましい。また、薬効成分または薬効成分の粒子を除いた他の添加剤の全体重量を基準に充填剤として使用されたマンニトールの含量は、本発明の多くの目的上、55〜90重量%であることが好ましく、70〜90重量%であることがより好ましく、75〜88重量%であることが最も好ましい。本明細書において、前記マンニトールの含量を計算する場合、薬物粒子自体に含まれ得るマンニトールは除いて計算する。
【0015】
本発明による口腔内崩壊錠は、前記主要充填剤であるマンニトールの外に、本発明の目的から逸脱しない範囲内で、微結晶セルロース、トウモロコシ澱粉、乳糖、マンニトールを除いた他の糖アルコール(例えば、ソルビトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、ラクチトール)、糖(例えば、グルコース、マルトース、デキストロース、白糖、トレハロース)、澱粉加水分解物(例えば、デキストリン及びマルトデキストリン)などの他の充填剤を、上記の好ましいマンニトールの含量範囲が外れないようにする少量の範囲内で含むことができる。
【0016】
本発明による口腔内崩壊錠は、崩壊剤としてクロスポビドンと澱粉グリコール酸ナトリウムを共に含み、特にこの2つの崩壊剤の混合重量比は本発明の多くの目的上、1:1〜5(澱粉グリコール酸ナトリウム:クロスポビドン)の比率であることが好ましく、1:1.5〜4の比率であることがより好ましく、1:1.5〜2.5の比率であることがさらに好ましく、1:2の比率であることが最も好ましい。
【0017】
本発明による口腔内崩壊錠において、崩壊剤の全体含量は本発明の多くの目的上、口腔内崩壊錠の全体重量対比6〜25重量%であることが好ましく、7〜20重量%であることがより好ましく、8〜15重量%であることがさらに好ましく、8〜12重量%であることが最も好ましい。
【0018】
本発明による口腔内崩壊錠に含まれる薬効成分の一例としては、ミルタザピンが好ましく、このようなミルタザピンとしてはミルタザピン無水物、半水和物、水和物など多様な形態を使用することができる。このようなミルタザピンは粒子の形態で含まれることが好ましく、特に、糖、糖アルコールまたは微結晶セルロースのコアにコーティングされた形態で含まれることが好ましい。
【0019】
ミルタザピン粒子の製造のため、ミルタザピンをコーティングするためのシード(seed)として使用する糖、糖アルコールまたは微結晶セルロースのコアとしては、マンニトール粒子、砂糖粒子、乳糖粒子、微結晶セルロース粒子、トウモロコシ澱粉粒子などを単独でまたは混合して使用できるが、本発明の多くの目的上、マンニトール粒子を使用することが好ましい。
【0020】
本発明の口腔内崩壊錠に含まれるミルタザピン粒子において、ミルタザピンの含量は粒子の全体重量対比25〜80重量%であり得る。
【0021】
本発明の口腔内崩壊錠に含まれるミルタザピン粒子は、粒子の製造のために、すなわち、ミルタザピンをシードに付着させるために、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、澱粉、キサンタンガム、ゼラチンなどの結合剤を単独でまたは混合して使用することができる。また、製造されたミルタザピン粒子は、味のマスキング、保管性向上などを目的で、ジメチルアミノエチルメタクリレート‐ブチルメタクリレート‐メチルメタクリレートの共重合体(例えば、EUDRAGIT(登録商標) E 100)などの胃溶性または難溶性高分子であるコーティング基材でコーティングされ得る。
【0022】
本発明の口腔内崩壊錠に含まれるミルタザピン粒子の含量は、口腔内崩壊錠の全体重量対比30〜70重量%であり得る。
【0023】
本発明による口腔内崩壊錠は、上述した主成分であるミルタザピン、ミルタザピン粒子または薬物粒子;充填剤(好ましくは、マンニトール);特定崩壊剤の外に、スクラロース、アスパルテーム、ステビオシド、ネオヘスペリジン、アリターム、アセスルファムカリウムなどの甘味剤;着香剤(香料);コロイド性二酸化珪素、マグネシウムステアレート、ステアリン酸フマレート、ステアリン酸、タルク、グリセリルベヘネート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどの滑沢剤;安定化剤;防腐剤;pH調節剤などを本発明の目的から逸脱しない範囲内で含むことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、ミルタザピンを含む口腔内崩壊錠であって、異物感がなくざらざら感がないなど全体的な服用感に優れ、包装、取り扱い、流通過程で錠剤が破損されないように高い硬度を有し、高い硬度を有しながらも口腔内で迅速に崩壊し、保存安定性に優れた口腔内崩壊錠を提供する。
【0025】
また、本発明は、糖、糖アルコールまたは微結晶セルロースのコアにコーティングされた薬物粒子を含む口腔内崩壊錠であって、異物感がなくざらざら感がないなど全体的な服用感に優れ、包装、取り扱い、流通過程で錠剤が破損されないように高い硬度を有し、高い硬度を有しながらも口腔内で迅速に崩壊し、保存安定性に優れた口腔内崩壊錠を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の理解を助けるために実施例などを挙げて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形でき、本発明の範囲が後述される実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
特に、後述される「比較例」という表現は、本発明による最適の実施例との比較のための表現であるだけで、このような比較例に含まれた該当技術思想を本発明から排除する意味で解釈されてはならない。
【0027】
<ミルタザピン含有粒子の製造>
後述される実施例及び比較例で使用されるミルタザピン含有粒子は、次のような方法で製造した。
【0028】
シードとしてマンニトールコア(33mg、60重量%)を使用した。粒子当り15mg(27.3重量%)のミルタザピンをコーティングし、ミルタザピンコーティング時の結合剤としてはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を5.5mg(10重量%)使用した。ミルタザピンをコーティングした後、コーティング基材(オイドラギット(Eudragit)E100TM、1.5mg、2.7%)を用いて2次コーティングした。
【0029】
通常の流動層コーティング機を用いてミルタザピン含有粒子を製造した。流動層コーティング機(bottom、GPCG−1、Glatt)内に微結晶セルロースコアを投入し、ミルタザピンと結合剤を溶解させた結合液を噴射してコーティングした後、コーティング基材を用いて2次コーティングした。
【0030】
本発明者等は前記マンニトール以外の他の糖、糖アルコールなども用いて製造してみたが、薬物がミルタザピンである場合、粒子を形成するためのコアとしてマンニトール粒子を使用することが、本発明の多くの目的上、最も好ましかった。
【0031】
<評価方法>
下記実施例及び比較例の評価のために、次のような方法で硬度(kp)、崩壊時間(sec)及び残留感を評価した。
【0032】
硬度の場合、通常の硬度測定機(例えば、ファーマテスト(Pharma Test)社製PTB 311E)を用いて測定し、10回測定して平均値を使用した。
インビトロ(in vitro)崩壊時間の場合、ペトリ皿に濾紙を敷いて精製水を入れた後、錠剤を置き、口腔内崩壊錠が完全に崩壊する時間を測定して、それを崩壊時間として使用した。インビトロ崩壊時間の場合、6回測定して平均値を使用した。
【0033】
インビボ(in vivo)崩壊時間の場合、試験者が口腔内で錠剤が完全に崩壊する時間を測定して使用し、3回測定して平均値を使用した。
【0034】
残留感は、下記基準に従って、試験者が口腔内で口腔内崩壊錠が崩壊するときに感じる残留感を数値化し、3回評価して平均値を使用した。
【0035】
[残留感の評価基準]
【0036】
【数1】
【0037】
上記評価方法において、通常、崩壊時間は40秒以内、より好ましくは30秒以内、硬度は4kp以上、より好ましくは5kp以上、残留感は2.5点以下、より好ましくは2点以下を好ましい物性として設定したが、本発明はこのような基準に限定されるものではない。
【0038】
<充填剤による影響評価>
充填剤の種類による影響を評価するため、下記表1による処方と含量で実施例及び比較例を製造した。具体的に、各成分を混合した後、同一圧力で打錠して口腔内崩壊錠を製造した。それぞれの実施例及び比較例の評価結果は表2に示した。
【0039】
【表1】
【0040】
(表1において、カッコ内の数字は主薬であるミルタザピン粒子を除いた他の添加剤において、他の添加剤の全体重量に対する各添加剤の含量(重量%)を意味する。以下の実施例及び比較例の処方表でも同様である。)
【0041】
【表2】
【0042】
表2に示されたように、充填剤として微結晶セルロースを使用した比較例1の場合、残留感とざらざら感が酷くて試験者に不快感を引き起こした。また、それぞれ乳糖及びマルトデキストリンを使用した比較例2と3の場合、残留感と崩壊時間で満足できず、比較例2の場合は、乳糖のため、浸湿後の崩壊過程で不快なべたつきが感じられた。また、トウモロコシ澱粉を使用した比較例4の場合、硬度、崩壊時間及び残留感のすべての側面で良好ではない結果が得られた。したがって、本発明による多くの目的上、賦形剤(充填剤)としてはマンニトールが好ましいことが分かった。
【0043】
<崩壊剤の種類及び含量による影響の評価>
崩壊剤の種類及び含量による影響を評価するため、下記表3による処方と含量で実施例及び比較例を製造した。具体的に、各成分を混合した後、同一圧力で打錠して口腔内崩壊錠を製造した。それぞれの実施例及び比較例の評価結果は表4に示した。
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
表4において、陰影処理された部分は多少好ましくない結果を示した部分である。
表4に示されたように、崩壊剤としてクロスポビドンと澱粉グリコール酸ナトリウムを共に使用することが好ましく、特に、この2つの崩壊剤の混合重量比は1:1〜5(澱粉グリコール酸ナトリウム:クロスポビドン)の比率であることが、本発明の多くの目的上(特に、崩壊時間と残留感などの服用感を考慮するとき)好ましく、1:1.5〜4の比率であることがより好ましく、1:1.5〜2.5の比率であることがさらに好ましく、1:2の比率であることが最も好ましかった。
【0047】
<マンニトールの含量による影響の評価>
充填剤として使用したマンニトールの含量による影響を評価するため、下記表5による処方と含量で実施例及び比較例を製造した。具体的に、各成分を混合した後、同一圧力で打錠して口腔内崩壊錠を製造した。それぞれの実施例及び比較例の評価結果は表6に示した。
【0048】
【表5】
【0049】
【表6】
【0050】
1錠中にマンニトールを30重量%含む(ミルタザピン粒子を除いた他の添加剤の全体重量対比45.7重量%を含む)比較例17の場合、崩壊時間と残留感で好ましくない結果を示し、1錠中にマンニトールを63重量%含む(ミルタザピン粒子を除いた他の添加剤の全体重量対比96重量%を含む)比較例18の場合、ラミネートによって実質的に打錠することができなかった。
【0051】
1錠中にマンニトールを35重量%含む(ミルタザピン粒子を除いた他の添加剤の全体重量対比55重量%を含む)実施例2の場合、残留感の側面で他の実施例よりは好ましくなく、ミルタザピン粒子を除いた他の成分の全体重量を基準に崩壊剤の全体含量が25重量%以上の場合、残留感に問題があるか又は後述する保管安定性が好ましくなかった。
1錠中にマンニトールを60重量%含む(ミルタザピン粒子を除いた他の添加剤の全体重量対比90重量%を含む)実施例8の場合、打錠障害が生じるか(生じ)、崩壊遅延の問題も生じる恐れがある。また、崩壊剤がミルタザピン粒子を除いた他の成分の全体重量を基準に8重量%以下で使用される場合、崩壊遅延の問題も発生することがある。
【0052】
したがって、充填剤としてマンニトールを使用し、崩壊剤として澱粉グリコール酸ナトリウムとクロスポビドンを共に使用する場合(特に、口腔内崩壊錠の薬効成分として、薬効成分がコーティングされた糖粒子が使用される場合)、マンニトールの含量は口腔内崩壊錠の全体重量を基準に35〜60重量%であることが好ましく、45〜60重量%であることがより好ましく、50〜57重量%であることが最も好ましい。また、薬効成分または薬効成分の粒子を除いた他の添加剤の全体重量を基準にしてマンニトールの含量は55〜90重量%であることが好ましく、70〜90重量%であることがより好ましく、75〜88重量%であることが最も好ましい。
【0053】
<保管安定性の評価>
口腔内崩壊錠の保存中の安定性を評価するため、保存中の厚さ増減率(%)及び摩損度の変化(%)を測定し、その結果をそれぞれ表7〜表9に示した。対照群としては市販中のミルタザピン口腔内崩壊錠であるRemeron soltabTMを使用した。
【0054】
まず、包装せずに開封された状態で40℃、75%RH条件で保管し、経時的な厚さの増減率(%)及び摩損度の変化(%)をそれぞれ下記表7及び表8に示した。
【0055】
【表7】
【0056】
【表8】
【0057】
表7及び表8に示されたように、本発明によるミルタザピン口腔内崩壊錠の場合、保存安定性が対照群に比べて非常に優れたことが分かる。
【0058】
また、PTP(PVC材質)包装した状態で40℃、75%RH条件で保管し、経時的な厚さの増減率(%)を下記表9に示した。
【0059】
【表9】
【0060】
表9に示されたように、本発明によるミルタザピン口腔内崩壊錠の場合、保存安定性が対照群に比べて非常に優れたことが分かる。