(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
i)第1重合ステップにおいて、エチレンモノマー及び任意の1種以上のα-オレフィンコモノマーを重合触媒の存在下で重合させて、第1エチレンホモポリマー又はコポリマー画分(A)を得るステップと、
ii)第2重合ステップにおいて、エチレンモノマー及び任意の1種以上のα-オレフィンコモノマーを重合触媒の存在下で重合させて、画分(A)に比べてより大きな平均分子量を有する第2エチレンホモポリマー又はコポリマー画分(B)を得るステップと
を含み、
第1重合ステップ(i)及び第2重合ステップ(ii)は任意の順序で実施される、
請求項1から7のいずれか一項に定義したポリエチレン組成物の製造方法。
【背景技術】
【0001】
当今、ポリマー材料からなるパイプは、種々の目的、例えば、輸送の際に加圧されることもある流体の輸送、すなわち液体又は気体、例えば水又は天然ガスの輸送などに使用されることが多い。さらに、輸送される流体は、通常的には約0℃〜約50℃の温度範囲内の様々な温度を有する可能性がある。このような耐圧パイプは、好ましくは、中密度ポリエチレン(MDPE、密度:0.930〜0.942g/cm
3)及び高密度ポリエチレン(HDPE、密度:0.945〜0.965g/cm
3)などのポリオレフィン系プラスチックで作られる。本明細書において、表現「耐圧パイプ」とは、使用される場合に、正圧にさらされる、すなわち、パイプの内側の圧力が、パイプの外側の圧力よりも高いパイプを意味する。
【0002】
ポリマーパイプは、一般に、押出し又は射出成形によって製造される。押出し又は射出成形によって製造されるこのような従来型ポリマーパイプの特性は、多くの目的に対して十分であるが、例えば、高い耐圧性を必要とする応用分野、すなわち長時間及び/又は短時間にわたって内部流体圧にさらされるパイプにおいて、高められた特性が所望される可能性がある。設計応力等級によるPE100パイプの耐圧性を表現するための一般的な基準は、ISO 9080:2003により測定される。プラスチック耐圧パイプの使用適合性は、まず、考えられる使用条件(例えば、温度)を考慮に入れた、その材料の構造物の応力下での性能によって決められる。当該材料で作られたプラスチックパイプが、水を内部試験媒体として使用し、20℃の周囲温度で50年間耐えることができると予想される静水圧(フープ)応力によって適合性を表現するのが通常的である。外側環境は水又は空気でよい。該基準は、重回帰分析によって解析される異なる温度での試験データを使用する外挿を組み込んだ典型的方法を提供する。その結果は、関連するシステム基準中に記載の方法による材料に特異的な設計値の決定を可能にする。この重回帰分析は、最も正確にはlog
10(応力)対log
10(時間)モデルによって記述される速度過程に基づく。
【0003】
耐圧パイプ中で使用される予定のポリエチレン材料の製造は、例えば、Scheirsらの論文中で考察されている(Scheirs,Bohm,Boot and Leevers「PE100 Resins for Pipe Applications」TRIP Vol.4,No.12(1996)pp.408〜415)
国際公開第00/22040号には、二峰性樹脂から作られ、良好な機械的特性を有するパイプが開示されている。
【0004】
今日、高級パイプ材料は、PE100を超える耐圧性レベルにも適合すべきである。したがって、耐圧パイプは、PE112さらにはPE125(20℃で少なくとも50年の寿命のために11.2MPa又は12.5MPaを超えるMRS)の要件に合致すべきである。
【0005】
これらの要件に合致させるための1つの試みが、このような耐圧パイプに使用されるポリオレフィン組成物の密度を高めることであった。しかし、密度を高めることによって、緩慢亀裂成長抵抗性(SCGR)が低下し、より早期の脆性破壊がもたらされ、かくしてMRS等級にも負の影響が及ぶ。
【0006】
国際公開第01/02480号には、二峰性分子量分布を有するポリエチレン成形材料、及びISO/DIS 9080によるPE100のレベルに合致している既知のパイプ材料に比較して高められた強度を備えたこの成形材料から製造された耐圧パイプが開示されている。開示されたポリエチレン成形材料は、23℃の温度で、生地のまま、すなわち染料無添加製品としての少なくとも948kg/m
3から、黒色化製品(黒色化製品の全重量を基準にして2〜5重量%の範囲のカーボンブラック含有量を有する)としての少なくとも959kg/m
3までの範囲の密度を有し、且つ低分子量画分と比較的高分子量の画分との重量比が0.5〜2.0、好ましくは0.8〜1.8の範囲にある幅広の二峰性分子量分布を有する。
【0007】
欧州特許出願公開第1460105号には、多峰性ポリエチレン組成物及びそれから作られる耐圧パイプが開示されている。多峰性ポリエチレン組成物は、低分子量のエチレンホモポリマー画分及び高分子量のエチレンコポリマー画分を含み、ここで、低分子量画分は45〜55重量%の量で存在し、高分子量画分は45〜55重量%の量で存在し、そのポリマーは0.10g/10分を超えるMFR
5を有し、且つ952kg/m
3以上の密度を有する。このような材料から作製されたパイプは、PE125の耐圧性基準に合致し、垂れ下がりの傾向が小さい。
【0008】
種々の最新技術(パイプバースティング、傾斜堀、再ライニングなど)が、より速くより安価な設置と組み合わせて開発されてきた。しかし、これらの技術は、より積極的であることが可能で、且つ硬い又は鋭い物体と接触することのあるパイプ材料に対して要求が厳しい。したがって、急速亀裂伝播抵抗性(RCPR)と同様に緩慢亀裂成長抵抗性(SCGR)などの衝撃特性も要求される。
【0009】
高レベルに改善又は維持することが望ましいさらなる特性は、パイプ材料の加工性、引張り弾性率、短期耐圧性、及び衝撃特性である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
このようなポリエチレン組成物は、
i)第1重合ステップにおいてエチレンモノマー及び任意の1種以上のα-オレフィンコモノマーを重合触媒の存在下で重合させて、第1エチレンホモポリマー又はコポリマー画分(A)を得るステップ、
ii)第2重合ステップにおいてエチレンモノマー及び任意の1種以上のα-オレフィンコモノマーを重合触媒の存在下で重合させて、画分(A)に比べてより大きな平均分子量を有する第2エチレンホモポリマー又はコポリマー画分(B)を得るステップ(ここで、第1重合ステップ(i)及び第2重合ステップ(ii)は任意の順序で実施される)を含む方法によって得ることができる。
【0014】
前記の目的は、さらに、パイプ又はフィッティング(fitting)を製造するための前記ポリエチレン組成物を使用することによって達成することができる。
【0015】
本発明のポリエチレン組成物は、20℃及び12.4MPaの応力レベルでISO 1167-1:2006により測定される実質的に改善された低温短期耐圧性によって特徴付けられる。
【0016】
本発明の好ましい実施形態によれば、該ポリエチレン組成物は、上記条件でISO 1167-1:2006により測定して少なくとも1000時間、さらに好ましくは少なくとも2000時間の短期耐圧性(STPR)を有する。
【0017】
類似の引張り弾性率値で、本発明による組成物は、実質上より高い耐圧性値(上記条件でのISO 1167-1:2006による)を示す。したがって、本発明の組成物によって、耐圧性と剛性/延性との間の改善された比率を達成することができる。
【0018】
同時に、本発明のポリエチレン組成物は、少なくとも-20℃、好ましくは少なくとも-22℃、さらにより好ましくは少なくとも-25℃でのISO 13477:2008によるS4試験における臨界温度T
critによって表現される優れた急速亀裂伝播抵抗性を提示する。
【0019】
該組成物は、MRS8.0(8.0MPaの内部応力に20℃で50年間耐える)、好ましくはMRS10.0(10.0MPaの内部応力に20℃で50年間耐える)、又はそれ以上のISO 9080:2003による設計応力等級を提示する。
【0020】
本発明の組成物は、さらに、優れた衝撃特性を提示する。例えば、0℃でISO 179/1eAにより測定された切欠き付シャルピー衝撃強度は、好ましくは少なくとも24kJ/m
2、より好ましくは少なくとも25kJ/m
2、さらにより好ましくは少なくとも30kJ/m
2である。-20℃でISO179/1eAにより測定された切欠き付シャルピー衝撃強度は、好ましくは少なくとも18kJ/m
2、より好ましくは少なくとも20kJ/m
2である。
【0021】
本発明の組成物は、さらに、2.8MPa、80℃でPENT試験法により決定された、好ましくは少なくとも30時間、より好ましくは少なくとも40時間、さらにより好ましくは少なくとも50時間の緩慢亀裂成長抵抗性を提示する。他の実施形態によれば、本発明の組成物は、同一条件でPENTにより測定して好ましくは少なくとも100時間、より好ましくは少なくとも500時間、さらにより好ましくは少なくとも1000時間の緩慢亀裂成長抵抗性を提示する。
【0022】
メルトフローレート(MFR)は、本発明によるパイプのための多峰性ポリエチレンのもう1つの重要な特性である。MFRは、ISO 1133により決定され、g/10分で示される。MFRは、ポリマーの流動性、それゆえ加工性の指標である。メルトフローレートが大きいほど、ポリマーの粘度は低い。MFRは、2.16kg(MFR
2、ISO 1133、条件D)、5kg(MFR
5、ISO 1133、条件T)又は21.6kg(MFR
21、ISO 1133、条件G)などの様々な荷重で決定される。
【0023】
本発明により、ポリエチレン組成物のメルトフローレートが特定の限界まで低減され、且つSTPRと引張り弾性率との比率が、前に定義したような方式で調節されるなら、驚くべきことに、低温短期耐圧性、緩慢亀裂成長抵抗性、急速亀裂伝播抵抗性、及び衝撃強度に関して優れた性能を達成できることが見出された。
【0024】
ポリエチレン組成物が、STPRと引張り弾性率との間の前に規定した関係を満たすなら、この挙動は、従来のポリエチレン組成物に対して同程度の剛性又は同程度の密度で、改善された耐圧性の特性を示すものである。ひるがえって、このことは、本発明により、ポリエチレン組成物の改善された短期耐圧性を達成するのに、密度の増加(引張り弾性率の増加)は必須でないことを意味する。
【0025】
特に、本発明によるポリエチレン組成物のMFR
5は、0.2g/10分を超えず、好ましくは0.18g/10分を超えない。本発明によるポリエチレン組成物のMFR
5は、好ましくは0.15g/10分を超えなくても、より好ましくは0.10g/10分を超えなくてもよい。
【0026】
本発明の目的は、また、ポリエチレン組成物のMFR
21を低下した範囲に調節することによって達成することができる。特に、本発明によるポリエチレン組成物のMFR
21は、5.0g/10分を超えず、好ましくは4.0g/10分を超えず、さらにより好ましくは3.0g/10分を超えない。
【0027】
ポリマー画分(A)は、好ましくはエチレンホモポリマーである。ポリマー画分(A)は、好ましくは960〜980kg/m
3の密度を有する。
【0028】
本発明は、さらに、高められたフローレート比(FRR)、すなわち、ISO 1133により測定されるMFR
21とMFR
5との比率で特徴付けられる。したがって、本発明の組成物のFRRは、好ましくは、少なくとも24、より好ましくは少なくとも25、さらにより好ましくは少なくとも30である。
【0029】
ポリエチレン組成物の高分子量(HMW)成分を構成するポリマー画分(B)は、エチレンと少なくとも1種のα-オレフィンコモノマーとのコポリマーであることが好ましい。α-オレフィンコモノマーは、好ましくは3〜12個の炭素原子、より好ましくは4〜8個の炭素原子を有するα-オレフィンコモノマーから選択される。適切なα-オレフィンコモノマー種は、1-ブテン、1-ヘキセン及び1-オクテンである。そのため、1-ブテン及び1-ヘキセンが特に好ましい。
【0030】
多峰性ポリエチレンの密度は、中密度〜高密度の範囲、より詳細には930〜970kg/m
3、さらにより詳細には943kg/m
3未満でない範囲にあってよい。好ましくは、943〜965kg/m
3の密度が利用される。中密度多峰性ポリエチレンと比べて高い密度の多峰性ポリエチレンを用いてより高い設計応力等級の耐圧パイプを得ることが可能である。
【0031】
ポリエチレン組成物は、好ましくは、少なくとも0.1モル%、より好ましくは少なくとも0.2モル%の少なくとも1種のα-オレフィンコモノマーを含む。コモノマーの量は、好ましくは、多くても3.0モル%、より好ましくは多くても2.0モル%、さらにより好ましくは多くても1.0モル%である。
【0032】
ベース樹脂に加えて、ポリエチレン組成物中には、ポリオレフィンと共に利用するのに有用な添加剤、例えば、顔量、安定剤(酸化防止剤)、酸中和剤(antacid)及び/又は紫外線防止剤(anti-UV)、静電気防止剤、及び有用な薬剤(加工助剤など)が好ましくは存在することができ、これらの添加剤の量は、全組成物の10wt%以下、さらに好ましくは8wt%以下、さらにより好ましくは4wt%以下である。組成物は、カーボンブラックを全組成物の8wt%以下、さらに好ましくは1〜4wt%の量で含むことができる。
【0033】
本発明の多峰性ポリマー組成物は、前に規定した特徴の任意のたった1つによってではなく、請求項1中で規定されるすべての特徴の組合せによって特徴付けられることに留意されたい。特徴のこの独特の組合せによって、とりわけ、ISO 1167-1:2006による耐圧性、急速亀裂伝播抵抗性、設計応力等級、衝撃強度、及び加工性に関して優れた性能の耐圧パイプを得ることが可能である。
【0034】
本発明のポリエチレン組成物は、特に、耐圧パイプを製造するために設計される。この目的に関して、組成物は、好ましくは、多峰性ポリエチレン、より好ましくは二峰性ポリエチレンでよい。接頭辞「多(multi)」は、組成物を構成する様々なポリマー画分の数に関する。したがって、例えば、2つの画分のみからなる組成物は、「二峰性」と呼ばれる。
【0035】
このような多峰性ポリエチレンの分子量分布曲線の形状、すなわち、ポリマー重量画分のその分子量の関数としてのグラフの様相は、2つ以上の極大点を示すか、個々の画分に関する曲線と比較して少なくとも明白に幅広である。
【0036】
例えば、ポリマーが、直列に連結された反応器を利用し、且つ各反応器で異なる条件を利用する逐次多段階プロセスで製造されるなら、異なる反応器中で製造されたポリマー画分は、それぞれ、それら自身の分子量分布及び重量平均分子量を有する。このようなポリマーの分子量分布曲線を記録すると、これらの画分に由来する個々の曲線は、生じた全ポリマー生成物に関する分子量分布曲線中に重畳され、通常的には、2つ以上の明瞭な極大点を有する曲線を生じる。
【0037】
多峰性ポリエチレンは、低分子量(LMW)エチレンホモポリマー画分及び高分子量(HMW)エチレンコポリマー画分を含むことができる。多峰性ポリエチレンが二峰性であるか、或いはより多くの峰を有するか否かに応じて、LMW及びHMW画分は、それぞれたった1つの画分を含むか、或いは下位画分を含み、すなわち、LMWは、2つ以上のLMW下位画分を含むことができ、同様にHMW画分は、2つ以上のHMW下位画分を含むことができる。好ましい実施形態によれば、LMW画分はエチレンホモポリマーであり、HMW画分はエチレンコポリマーである。すなわち、コモノマーを含むのはHMW画分のみである。好ましくは、HMW画分は、エチレンと、1-プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン及び1-オクテンから選択される少なくとも1種のさらなるα-オレフィンコモノマーとのコポリマーである。定義の問題として、表現「エチレンホモポリマー」は、本明細書中で使用する場合、実質上、すなわち少なくとも97重量%、好ましくは少なくとも99重量%、より好ましくは少なくとも99.5重量%、最も好ましくは99.8重量%のエチレンからなるエチレンポリマー、したがって、好ましくはエチレンモノマー単位のみを含むHDエチレンポリマーに関する。さらに、HMW画分の分子量範囲の下限は、3500、好ましくは4000である。このことは、本発明のパイプ用多峰性ポリエチレン組成物中のほとんどすべてのエチレンコポリマー分子が、少なくとも3500、好ましくは少なくとも4000の分子量を有することを意味する。この理由は、LMW画分中にコモノマーが存在すると、強度の乏しい耐圧パイプが得られるからである。
【0038】
本発明において、LMWとHMW画分との比率(画分間の「スプリット」としても知れれる)は、適切に選択される。より詳細には、LMW画分とHMW画分との重量比率は、好ましくは、範囲(35〜55):(65〜45)、より好ましくは(43〜51):(57〜49)、最も好ましくは(43〜48):(57〜52)の範囲にあるべきである。スプリットがこれらの範囲内にあるなら、HMW画分の比率は、高い強度値及び小さなゲル量をもたらす。
【0039】
重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比率で定義される分子量分布、すなわち多峰性ポリエチレンのMw/Mnは、やや狭い値からやや広い値までの範囲に及ぶことができ、好ましくは3〜40、好ましくは15〜40の範囲にある。この理由は、良好な加工性と良好な強度との望ましい組合せを備えた耐圧パイプが得られるからである。さらに、数平均分子量Mnは、7000〜16000、好ましくは8000〜15000の範囲にあり、一方、重量平均分子量Mwは、180000〜350000、好ましくは220000〜330000の範囲にある。
【0040】
本発明のポリエチレン組成物は、多段階プロセス、すなわち少なくとも2つの反応器(1つは低分子量の成分を製造するための反応器、もう1つは高分子量の成分を製造するための反応器)を使用する方法によって調製されるのが通常である。これらの反応器は、並列的に採用することができ、この場合、製造後に成分を混合しなければならない。より一般的には、反応器は直列的に採用され、その結果、1つの反応器の生成物は次の反応器の出発原料として使用され、例えば、第1成分は第1反応器中で形成され、第2成分は、第2反応器中で第1成分の存在下に形成される。この方式では、一方の成分が他方の成分の存在下で形成されるので、2つの成分は、より完全に混合される。
【0041】
各段階で使用される重合反応は、従来からの反応器、例えば、ループ式反応器、気相反応器、バッチ式反応器などを使用する、エチレンの従来からの単独重合又は共重合反応、例えば、気相、スラリー相、液相重合を含むことができる。
【0042】
重合は、連続的に又はバッチ方式で実施することができ、好ましくは、重合は連続的に実施される。
【0043】
公知の2段階プロセスは、例えば、液相-液相法、気相-気相法、及び液相-気相法である。また、これらの2段階プロセスを、さらに、気相、スラリー相又は液相重合法から選択される1つ以上のさらなる重合ステップと組み合わせることができることが知られている。
【0044】
本発明の多峰性ポリエチレン組成物は、より低分子量の及びより高分子量のポリマー(成分)を異なる重合ステップにおいて任意の順序で製造する多段階プロセスで好ましくは製造される。
【0045】
相対的に低密度(又はHMW画分)のコポリマーを第1重合ステップで、相対的に高密度(又はLMW画分)のポリマーを第2重合ステップで調製することができる。これを、リバースモードと呼ぶことができる。別法として、低分子量ポリマーを第1重合ステップで、高分子量コポリマーを第2重合ステップで調製することができる。これを、ノーマルモードと呼ぶことができ、好まれる。
【0046】
2段階プロセスは、例えば、スラリー-スラリー又は気相-気相法、とりわけ好ましくはスラリー-気相法でよい。任意選択で、本発明による方法は、1つ又は2つのさらなる重合ステップを含むことができる。
画分(A)を得るための重合は、好ましくは、スラリー反応器中で実施される。画分(B)を得るための重合は、好ましくは、気相反応器中で実施される。
【0047】
これらの任意選択の1つ又は2つのさらなる重合ステップは、好ましくは、気相重合ステップを含む。
【0048】
スラリー及び気体の段階は、当技術分野で公知の任意の従来型反応器を使用して実施することができる。スラリー相での重合は、例えば、撹拌付槽型連続式反応器、撹拌付槽型バッチ式反応器、又はループ式反応器中で実施することができる。好ましくは、スラリー相での重合は、ループ式反応器中で実施される。このような反応器では、スラリーを、循環ポンプを使用することによって閉鎖されたパイプに沿って高速で循環させる。ループ式反応器は、当技術分野で一般に公知であり、例えば、米国特許第4,582,816号、米国特許第3,405,109号、米国特許第3,324,093号、欧州特許出願公開第479186号、及び米国特許第5,391,654号中に例が記載されている。
【0049】
用語「気相反応器」は、任意の機械的に混合される流動床式反応器、急速流動床式反応器、又は沈降床式反応器、或いは2つの分離ゾーン、例えば、1つの沈降床ゾーンと組み合わされた1つの流動床を有する気相反応器を包含する。好ましくは、第2重合ステップのための気相反応器は、流動床式反応器である。
【0050】
スラリー及び気相法は、周知であり、従来技術中に記載されている。
【0051】
本発明の好ましい実施形態において、LMW画分が最初に製造され、HMW画分はLMW画分の存在下に製造される。この場合、LMW画分は第1ポリエチレン画分(A)であり、HMW画分は第2ポリエチレン画分(B)である。
【0052】
ベース樹脂を製造するための重合触媒は、遷移金属の配位触媒、例えば、チーグラー・ナッタ(ZN)、メタロセン、非メタロセン、Cr-触媒などを含むことができる。触媒を、例えば、シリカ、Alを含有する担体、及び二塩化マグネシウムをベースにした担体を含む従来型担体で担持することができる。好ましくは、触媒はZN触媒であり、より好ましくは、触媒は、非シリカ材料で担持されたZN触媒、最も好ましくはMgCl
2をベースにしたZN触媒である。
【0053】
チーグラー・ナッタ触媒は、さらに、好ましくは、第4族(族の番号付けは新たなIUPACシステムによる)金属化合物、好ましくはチタン、二塩化マグネシウム及びアルミニウムを含む。
【0054】
触媒は、購入可能であるか、文献に従って又は類似して製造することができる。本発明で使用できる好ましい触媒の調製については、Borealis社の国際公開第2004/055068号及び国際公開第2004/055069号、並びに欧州特許第0810235号が参照される。これらの文献の内容は、とりわけその中に記載の触媒の一般的な及びすべての好ましい実施形態並びに該触媒の製造方法に関して、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。とりわけ好ましいチーグラー・ナッタ触媒は、欧州特許第0810235号中に記載されている。
【0055】
生じる最終生成物は、反応器からのポリマーの完全混合物からなり、これらのポリマーの様々な分子量分布曲線は一緒になって、幅広の1つの極大点又はいくつかの極大点を有する分子量分布曲線を形成する。すなわち最終生成物は、多峰性ポリマー混合物である。
【0056】
本発明による多峰性ポリエチレン組成物は、ポリマー画分(A)及び(B)からなり、任意選択で少量の予備重合画分をさらに含む二峰性ポリエチレン混合物であるのが好ましい。また、この二峰性ポリマー混合物は、直列に連結された2つ以上の重合反応器中での異なる重合条件下での前記のような重合によって製造されるのが好ましい。したがって、反応条件に関する順応性を得るために、重合をループ式反応器/気相反応器の組合せで実施するのが最も好ましい。
【0057】
好ましい2段階プロセスにおける重合条件は、好ましくは、高含有量の連鎖移動剤(水素ガス)のため、コモノマーを含有しない比較的低分子のポリマーを1つの段階、好ましくは第1段階で製造し、一方、コモノマーを含有する高分子のポリマーをもう1つの段階、好ましくは第2段階で製造する。しかし、これらの段階の順序は、逆でもよい。
【0058】
後に気相反応器が続くループ式反応器中での重合の好ましい実施形態において、ループ式反応器中での重合温度は、好ましくは85〜115℃、より好ましくは90〜105℃、及び最も好ましくは92〜100℃であり、気相反応器中での温度は、好ましくは70〜105℃、より好ましくは75〜100℃、最も好ましくは82〜97℃である。ループ式反応器中の圧力は、典型的には、1〜150バール、好ましくは1〜100バールであり、気相反応器中の圧力は、典型的には、少なくとも10バール、好ましくは少なくとも15バールであるが、典型的には30バールを超えず、好ましくは25バールを超えない。
【0059】
スラリー相反応器中での重合は、通常、不活性希釈剤、典型的には、C
3〜C
8炭化水素、例えば、メタン、エタン、プロパン、n-ブタン、イソブタン、ヘキサン(n-ヘキサンなど)、ヘプタン、オクタンなど、又はこれらの混合物からなる群から選択される炭化水素系希釈剤中で行われる。好ましくは、希釈剤は、1〜4個の炭素原子を有する低沸点炭化水素、又はこのような炭化水素の混合物である。特に好ましい希釈剤は、ことによれば少量のメタン、エタン及び/又はブタンを含有するプロパンである。不活性希釈剤は、別の重合ステップにおいてと同様でも異なっていてもよい。
【0060】
スラリー相反応器中のスラリーの流動相中のエチレン含有量は、0.5〜50モル%、好ましくは1〜20モル%、とりわけ2〜10モル%でよい。
【0061】
気相反応器の好ましい実施形態において、重合は、重合触媒の存在下に上向きに移動する気体流の中でオレフィンを重合する流動床式気相反応器中で行われる。反応器は、典型的には、流動化用グリッド上に配置された活性触媒を含む成長ポリマー粒子を含む流動床を含む。ポリマー床は、オレフィンモノマー、最終的にはコモノマー(複数可)、最終的には連鎖成長調節剤又は水素などの連鎖移動剤、及び最終的には不活性気体を含む流動化用気体の助けで流動化される。
【0062】
また、必要なら、気相反応器中に静電気防止剤(複数可)を導入することができる。適切な静電気防止剤及びそれらの使用方法は、数ある中でも、米国特許第5,026,795号、米国特許第4,803,251号、米国特許第4,532,311号、米国特許第4,855,370号、及び欧州特許出願公開第560035号中に開示されている。それらの帯電防止剤は、通常、極性化合物であり、数ある中でも、水、ケトン、アルデヒドアルコールが挙げられる。
【0063】
重合方法は、さらに、重合ステップに先行する予備重合ステップを含むことができる。予備重合の目的は、触媒上で低温及び/又は低モノマー濃度で少量のポリマーを重合させることである。予備重合により、スラリー中での触媒の性能を改善し、且つ/又は最終ポリマーの特性を変更することが可能である。予備重合ステップは、スラリー又は気相中で実施することができる。好ましくは、予備重合はスラリー中で実施される。
【0064】
したがって、予備重合ステップは、ループ式反応器中で実施することができる。次いで、予備重合を、好ましくは、不活性希釈剤、典型的にはメタン、エタン、プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなど又はそれらの混合物などの炭化水素系希釈剤中で実施する。好ましくは、希釈剤は、1〜4個の炭素原子を有する低沸点炭化水素、又はこのような炭化水素の混合物である。最も好ましい希釈剤はプロパンである。
【0065】
予備重合ステップの温度は、典型的には、0〜90℃、好ましくは20〜80℃、より好ましくは40〜70℃である。
【0066】
圧力は、必ずしも決定的ではなく、典型的には1バール〜150バール、好ましくは10バール〜100バールである。
【0067】
連鎖移動剤、好ましくは、水素は、反応器にとって必要とされる場合に添加され、その反応器中でLMW画分が製造される場合には、1kモルのエチレンにつき好ましくは200〜800モルのH
2が反応器に添加され、その気相反応器中でHMW画分が製造される場合には、1kモルのエチレンにつき0〜50モルのH
2が気相反応器に添加される。
【0068】
用語「ベース樹脂」は、本発明によるポリエチレン組成物中のポリマー系成分の全体を意味し、通常、全組成物の少なくとも90wt%を構成する。好ましくは、ベース樹脂は、ポリマー画分(A)及び(B)からなり、任意選択で、さらに、プレポリマー画分を、全ベース樹脂の20wt%まで、より好ましくは10wt%まで、最も好ましくは5wt%までの量で含む。
【0069】
任意選択で、配合ステップ中で、組成物に添加剤又はその他のポリマー系成分を、前記のような量で添加することができる。好ましくは、反応器から得られる本発明の組成物は、押出機中で、当技術分野で公知の方式で添加剤と一緒に配合される。
【0070】
本発明の組成物が、好ましくは、配合ステップを含む方法で製造されるなら、反応器からポリオレフィンベース樹脂の粉末として典型的には得られる組成物すなわちブレンド物は、押出機中に押し出され、次いで、当技術分野で公知の方式でポリマーペレットにペレット化される。押出機は、例えば、従来から使用されている任意の押出機でよい。本配合ステップのための押出機の例としては、日本製鋼所、神戸製鋼、Farrel-Pominiによって供給されるもの、例えば、JSW460P又はJSW CIM90Pでよい。
【0071】
一実施形態において、押出しステップは、100kg/h〜500kg/h、より好ましくは150kg/h〜300kg/hの供給速度で実施される。
【0072】
押出機のスクリュー回転速度は、好ましくは200rpm〜500rpm、より好ましくは300rpm〜450rpmである。
【0073】
好ましくは、前記押出しステップにおいて、押出機のSEI(比エネルギー入力)は、100kWh/トン〜400kWh/トン、より好ましくは200kWh/トン〜300kWh/トンでよい。
【0074】
前記押出しステップにおける溶融温度は、好ましくは200℃〜300℃、より好ましくは230℃〜270℃である。
【0075】
本発明の特定の実施形態において、前記の押出し条件は、前記の範囲から逸脱してもよい。
【0076】
さらに、本発明は、本発明の、又は前記のような多段階プロセスによって得ることのできるポリエチレン組成物を含
むパイプ又はフィッティング
である物品、及びこのようなポリエチレン組成物
のパイプ又はフィッティング
である物品を製造するための使用
、及びパイプ又はフィッティングの寿命を増加させるためのこのようなポリエチレン組成物の使用に関する。
【実施例】
【0077】
1.定義及び測定法
a)密度
ポリマーの密度は、EN ISO 1872-2(2007年2月)により調製した圧縮成形標本に関してISO 1183-1:2004(方法A)により測定し、kg/m
3で表した。
【0078】
b)メルトフローレート/フローレート比
メルトフローレート(MFR)は、ISO 1133により決定し、g/10分で示した。MFRは、ポリマーの流動性、それゆえ加工性の指標である。メルトフローレートが大きいほど、ポリマーの粘度は低い。MFRは、ポリエチレンについては190℃で、2.16kg(MFR
2)、5.00kg(MFR
5)、又は21.6kg(MFR
21)の荷重で決定される。
【0079】
量FRR(フローレート比)は、分子量分布の指標であり、異なる荷重でのフローレートの比を意味する。したがって、FRR
21/5は、MFR
21/MFR
5の値を意味する。
【0080】
c)コモノマー含有量
定量核磁気共鳴(NMR)分光法を使用して、ポリマーのコモノマー含有量を定量した。
【0081】
1H及び
13Cについてそれぞれ500.13及び125.76MHzで機能するBruker Advance III 500 NMR分光計を使用して、溶融状態で
13C{
1H}定量NMRスペクトルを記録した。すべてのスペクトルを、
13Cに対して最適化された7mmのマジック角回転(MAS)プローブヘッドを150℃で使用し、すべての空圧装置に窒素ガスを使用して記録した。ほぼ200mgの材料を外径7mmのジルコニアMASローター中に詰め、4kHzで回転させた。この設定は、主として、迅速な同定及び正確な定量に必要とされる高い感度を目指して選択された(Klimke,K.,Parkinson,M.,Piel,C.,Kaminsky,W.,Spiess,H.W.,Wilhelm,M.,Macromol.Chem.Phys.2006;207:382;Parkinson,M.,Klimke,K.,Spiess,H.W., Wilhelm,M.,Macromol.Chem.Phys.2007;208:2128;Castignolles,P.,Graf,R.,Parkinson,M.,Wilhelm,M.,Gaborieau,M.,Polymer 50(2009)2373)。3秒の短い待ち時間での過渡的NOE(Pollard,M.,Klimke,K.,Graf,R.,Spiess,H.W.,Wilhelm,M.,Sperber,O.,Piel,C.,Kaminsky,W.,Macromolecules 2004;37:813;Klimke,K.,Parkinson,M.,Piel,C.,Kaminsky,W.,Spiess,H.W.,Wilhelm,M.,Macromol.Chem.Phys.2006;207:382)及びRS-HEPTデカップリングスキーム(Filip,X.,Tripon,C.,Filip,C.,J.Mag,Resn.2005,176,239;Griffin,J.M.,Tripon,C.,Samoson,A.,Filip,C., and Brown,S.P.,Mag.Res.in Chem.2007 45,S1,S198)を利用する標準的な単一パルス励起を採用した。1つのスペクトルにつき全部で1024(1k)のトランジェントを得た。この設定は、小さいコモノマー含有量に対するその高い感度のため選択された。
【0082】
13C{
1H}定量NMRスペクトルを、処理し、積分し、特注のスペクトル解析自動プログラムを使用して定量的特性値を求めた。すべてのケミカルシフトを、30.00ppmの大きなメチレンシグナル(δ+)に内部標準とした(J.Randall,Macromol.Sci.,Rev.Macromol.Chem.Phys.1989,C29,201)。
【0083】
1-ブテンの組み込みに対応する特徴的なシグナル(J.Randall,Macromol.Sci.,Rev.Macromol.Chem.Phys.1989,C29,201)を観察し、ポリマー中に存在するすべてのその他のモノマーに関してすべての含有量を計算した。
【0084】
孤立した1-ブテンの組み込みに由来する特徴的なシグナル、すなわち、EEBEEコモノマー配列を観察した。孤立した1-ブテンの組み込みを、コモノマー当たりのレポーティング部位の数を説明するαB2部位に帰属される34.23ppmのシグナルの積分を利用して定量した。
【0085】
B=(1/2)*I
αB2
他のコモノマー配列を示す他のシグナルがない、すなわち、連続的なコモノマーの組み込みが観察されたなら、1-ブテンコモノマーの総含有量を、孤立した1-ブテン配列の量だけに基づいて計算した。
【0086】
B
total=B
飽和末端基に由来する特徴的なシグナルを観察した。このような飽和末端基の含有量は、2s及び3s部位にそれぞれ帰属される22.84及び32.23ppmのシグナルの積分値の平均を使用して定量した。
【0087】
S=(1/2)*(I
2s+I
3s)
不飽和ビニル末端基に由来する特徴的なシグナルも観察した。このような不飽和末端基の含有量は、αU部位に帰属される33.93ppmのシグナルの積分値を使用して定量した。
【0088】
U=I
αU
エチレンの相対的含有量を、30.00ppmの大きなメチレン(δ+)シグナルの積分値を使用して定量した。
【0089】
E=(1/2)*I
δ+
エチレンコモノマー総含有量を、大きなメチレンシグナルに基づいて、且つ他の観察されるコモノマー配列又は末端基中に存在するエチレン単位を考慮して計算した。
【0090】
E
total=E+(5/2)*B+(3/2)*S+(3/2)*U
次いで、ポリマー中の1-ブテンの総モル分率を、次のように計算した。
【0091】
fB=(B
total/(E
total+B
total)
1-ブテンの総コモノマー組み込みを、モル分率から通常の方式でモル%として計算した。
【0092】
B[モル%]=100*fB
1-ブテンの総コモノマー組み込みを、モル分率から標準的な方式で重量%として計算した。
【0093】
B[wt%]=100*(fB*56.11)/((fB*56.11)+((1-fB)*28.05))
d)平均分子量(Mn、Mw)及び分子量分布(MWD)の決定
平均分子量(Mw、Mn)、分子量分布(MWD)、及び多分散指数PDI=Mw/Mn(ここで、Mnは数平均分子量でありMwは重量平均分子量である)によって記述されるその幅を、ISO 16014-4:2003及びASTM D 6474:1999によるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定した。赤外(IR)検出器を備えたPolymerChar GPC装置を、Polymer Laboratories社からの3×Olexisカラム及び1×Olexisガードカラム、及び溶媒としての1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB、250mg/lの2,6-ジtert-ブチル-4-メチル-フェノールで安定化された)を160℃で1ml/分の一定流速で使用した。200μlのサンプル溶液を分析毎に注入した。カラムの設定は、0.5kg/モル〜11500kg/モルの範囲の少なくとも15種の狭いMWDのポリスチレン(PS)標準を用いるユニバーサルキャリブレーション(ISO 16014-2:2003による)を利用して較正した。使用されるPS、PE及びPPに対するMark-Houwink定数は、ASTM D 6474-99に記載の通りである。すべてのサンプルは、5.0〜9.0mgのポリマーを8ml(160℃)の安定化されたTCB(移動相中と同様)に、GPC装置のオートサンプラー中で連続的に穏やかに振盪しながら160℃でPPでは2.5時間、PEでは3時間溶解させることによって調製した。
【0094】
当技術分野で公知であるように、その成分の分子量が既知であるなら、次式によりブレンド物の重量平均分子量を計算することができる:
【数1】
【0095】
(式中、Mw
bはブレンド物の重量平均分子量であり、w
iは、ブレンド物中の成分「i」の重量分率であり、Mw
iは成分「i」の重量平均分子量である)。
【0096】
数平均分子量は、次の混合規則を使用して計算することができる:
【数2】
【0097】
(式中、Mn
bはブレンド物の重量平均分子量であり、w
iは、ブレンド物中の成分「i」の重量分率であり、Mn
iは成分「i」の重量平均分子量である)。
【0098】
e)急速亀裂伝播
パイプの急速亀裂伝播(RCP)抵抗性は、ロンドンのImperial Collegeで開発され、ISO 13477:2008中に記載されているS4試験(Small Scale Steady State)と呼ばれる方法により決定することができる。パイプの外径は約110mm以上、その壁厚は約10mm以上である。本発明との関連でパイプのRCP特性を決定する場合、外径及び壁厚は、それぞれ110mm及び10mmであるように選択した。パイプの長さは785mmである。パイプの外部は周囲圧力(大気圧)であるが、パイプは内部加圧され、パイプの内部圧力は、4.0バールの陽圧で一定に保持される。ゲージの長さは590mmである。パイプ及びそれを取り囲む装置を、所定の温度に整える。試験中の減圧を防止するためにパイプ内部の軸上にいくつかの円盤を取り付けた。急速に進行する軸方向亀裂を開始させるために、十分に規定された形状及び1500gの質量を有するナイフ状発射体を、いわゆる開始ゾーン中のその一端に近いパイプに向かって発射する。ナイフの速度は、16±1 m/秒である。開始ゾーンは、パイプの不要な変形を回避するための橋台(abutment)を備える。試験装置は、当該材料中で亀裂の開始が起こるような方式で調節され、いくつかの試験が異なる温度で実施される。直径の4.7倍の全長を有する測定ゾーン中での軸方向の亀裂の長さを、試験ごとに測定し、設定試験温度に対してプロットする。亀裂の長さが直径の4.7倍を超えたなら、亀裂は伝播したと評価される。パイプが所定の温度で合格したなら、パイプが試験にもはや合格しない(亀裂の伝播がパイプの直径の4.7倍を超える)温度に到達するまで、温度を逐次的に降下させる。臨界温度(T
crit)、すなわち、ISO 13477:2008により測定されるような延性脆性転移温度は、パイプが試験に合格する最低温度である。臨界温度が低いほど、パイプの応用可能性の拡大をもたらすので、より優れている。
【0099】
f)短期耐圧性
長さが450mmの切欠きのない32mmSDR11パイプに関する耐圧試験を、ISO 1167-1:2006により内部も水、外部も水の環境中で実施した。エンドキャップA型を使用した。破壊までの時間を時間単位で決定した。12.4MPaのフープ応力及び20℃の温度を印加した。
【0100】
g)緩慢亀裂成長抵抗性
緩慢亀裂成長抵抗性は、PENT試験法(ASTM F 1473-01)により80℃、2.8MPaの応力で決定される。EN ISO 1872-2(2007年2月)の第3.3章中に規定された条件を使用して圧縮成形された厚さが10mmのプレートから、厚さが10mmで60×25mmの長方形標本を機械で作製する。この長方形標本を、ASTM F 1473-01に記載の方法により切欠く。長方形標本の一端を正しい位置で固定し、一方、他端に荷重(静荷重)を吊り下げる。切欠きの主な目的は、切欠きの先端に三軸応力状態を導入して脆性による緩慢な亀裂成長破断状態を確実にすることである。この試験の結果は、破壊までの時間、或いはいずれが先であるにせよ、標本の2つの半分が完全に分割される、又は0.5インチの分割に到達するのに要する時間である。
【0101】
h)シャルピー衝撃強度
シャルピー衝撃強度は、V型切欠きのある80*10*4mmのサンプルに関して0℃(シャルピー衝撃強度(0℃))及び-20℃(シャルピー衝撃強度(-20℃))でISO 179/1eA:2000により決定した。サンプルは、ISO 1872-2:2007の第3.3章中に規定された条件を使用し、ISO 293:2004による圧縮成形によって調製された厚さが4mmの小板から切り出した。
【0102】
i)引張り弾性率
剛性の測定と同様、組成物の引張り弾性率(E-modulus)を、圧縮成形標本に関して23℃でISO 527-2:1993により測定した。標本(1B型)は、ISO 1872-2:2007の第3.3章中に規定された条件を使用しISO 293:2004による圧縮成形によって調製された厚さが4mmの小板から切り出した。弾性率は、1mm/分の速度で測定した。
【0103】
k)レオロジーパラメーターEta 747(η
747)
クリープ試験を、Anton Paar MCR501応力制御回転レオメーターで、25mmの平行な幾何的プレートを使用し、1.8mmの間隙に設定して実施した。サンプルの調製は、200℃での圧縮成形により実施した。圧縮成形に関して使用される溶融及び圧力負荷工程は、5分間の総時間で実施した。クリープ試験は、一定の剪断応力、747Paのτを印加することによって190℃で実施した。測定開始時点で、3.5N未満の垂直抗力を設定した。得られる応答を、1860秒の全クリープ時間にわたり、変形量γ及び剪断粘度ηの双方に関して監視した。いわゆるETA 747(η
747)は、747Paの剪断応力で1740b秒のクリープ時間にわたって決定された剪断粘度である。
【0104】
線形粘弾性領域内でのクリープ応答を保証にするため、前以て、振動剪断測定によって、印加される適切なクリープ応力を決定した。
【0105】
l)固有粘度(IV)の測定
ポリエチレン及びポリプロピレンの換算粘度(粘度数としても知られる)η
red、及び固有粘度[η]を、ISO 1628-3「キャピラリー粘度計を使用する希薄溶液中でのポリマー粘度の決定」により決定する。
【0106】
希薄ポリマー溶液(〜1mg/ml)及び純溶媒(デカヒドロナフタレン)の相対粘度を、シリコン油で満たされた恒温浴中に配置された4このウベローデ型キャピラリーを備えた自動キャピラリー粘度計(Lauda PVS1)で決定した。浴温は135℃で維持される。各測定スタンドは、ポンプ、バルブ機能、時間測定、メニスカス検出を制御するための電子機器を備え、磁気撹拌機を有する。サンプルを秤量し、キャピラリー中に直接入れる。キャピラリーを、自動ピペットを使用して正確な体積の溶媒で満たす。サンプルを、完全溶解が達成されるまで(典型的には60〜90分)絶えず撹拌しながら溶解する。
【0107】
ポリマー溶液及び純溶媒の留出時間を、連続した3回の読みが0.1秒(標準偏差)を超えて相違しなくなるまで、数回測定する。
【0108】
ポリマー溶液の相対粘度が、ポリマー溶液及び溶媒の双方について得られた平均流出時間(秒)の比率として求められる:
【数3】
【0109】
換算粘度(η
red)は、次式を利用して計算される:
【数4】
【0110】
(式中、Cは、135℃でのポリマー溶液の濃度:
【数5】
【0111】
であり、mはポリマーの質量であり、Vは溶媒の体積であり、γは20℃及び135℃での溶媒密度の比率(γ=ρ
20/ρ
135=1.107)である。)
固有粘度[η]の計算は、単一濃度での測定から、次のSchulz-Blaschkeの式を利用して実施される:
【数6】
【0112】
(式中、Kは、ポリマーの構造及び濃度に依存する係数である。[η]に関して概略値を計算する場合、K=0.27である。)
2.ポリマー組成物及びパイプの製造
ベース樹脂を、50dm
3のループ式反応器中、二塩化マグネシウムをベースにした塩化チタン触媒であるLynx200(商標)の商品名でBASFによって供給される重合触媒の存在下でのスラリー状態での第1(予備)重合段階を含む多段反応で製造した。助触媒としてトリエチルアルミニウムを使用し、続いてスラリー反応器の後で気化させ、スラリーを500dm
3のループ式反応器に移送し、その中で重合をスラリー状態で継続して低分子量成分を生成させ、そして気相反応器中で、第2ループ式反応器からの生成物の存在下での二次的重合により、コモノマーを含有する高分子量成分を生成させる。コモノマーとして、1-ブテンを使用した。
【0113】
得られたポリマーを窒素(約50kg/h)で1時間パージし、2200ppmのイルガノックスB225及び1500ppmのステアリン酸カルシウムで安定化し、次いで、マスターバッチ組成物にカーボンブラック(ポリマー組成物中の最終濃度:2.3wt%)を添加しながら、対向回転二軸押出機CIM90P(日本製鋼所製)で、処理量が232kg/hであり、スクリュー速度が400rpmであるように押し出してペレットとした。
【0114】
適用された重合及び押出し条件、並びにペレット形状で押しだされた組成物の最終特性を表1に列記する。CE1及びCE2と一緒に、さらなる比較例CE3〜CE11の抜粋された特性を表2に示す。本発明の実施例1及び2(Ex.1、Ex.2)、並びに比較例CE1及びCE2により調製されたポリマー組成物の抜粋された特性を表3及び4に示す。
【0115】
表5には、調製された本発明の組成物1及び2(Ex.1、Ex.2)及び比較組成物CE1〜CE11についての請求項1に記載の関係に関するパラメーター及び結果を示す。
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
【表3】
【表4】
【表5】
【0118】
上記の結果から、0.18g/10分を超えないMFR
5、及び5.0g/10分を超えないMFR
21、かくして比較組成物に比べて実質上より
大きな最終分子量を有する本発明の二峰性ポリエチレン組成物は、従来技術で行われるような組成物の密度増加なしに、20℃、12.4MPaの応力レベルで測定して著しい耐圧性の改善を示したことが明らかである。さらに、これらの結果から、MFR
5及びMFR
21を本発明の範囲内に調節すると、請求項1の不等式を満たす短期耐圧性と引張り弾性率との間の関係も達成されることが明らかである(前記表4)。比較例3〜11による組成物は、MFR
5及びMFR
21についての本発明による範囲を満たさない。したがって、それらは、
図1に示した回帰線に実質上従う、短期耐圧性と引張り弾性率との間の関係をもたらす。
図1から、本発明の組成物が、予想外に、回帰直線のはるか上にあることが認識でき、これは、類似の引張り弾性率において実質上増加した短期耐圧性(12.4MPa/80℃)を有することを意味する。同時に、大きな引張り弾性率を、比較組成物におけると同様の所望レベルで維持することができ、且つ改善された衝撃特性(シャルピー衝撃強度及びPENT衝撃強度)を達成することができた。さらに、急速亀裂伝播抵抗性は、比較組成物より優れていた。