(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
側壁同士を対向させて直交方向に並べて配置される駆動列を夫々動かすことで前記駆動列の上に載せられている粒状搬送物を搬送し、且つ前記駆動列の下方から前記粒状搬送物に冷却流体を供給するクーラ装置のシール構造であって、
対向する前記側壁のうち一方の側壁に取り付けられ、前記一方の側壁とで他方の側壁の上面及び前記直交方向の両側面を囲って前記対向する側壁の間にある隙間を上方から覆うカバー体と、
前記カバー体と前記他方の側壁との間に設けられているシール部材とを備える、クーラ装置のシール構造。
前記カバー体と前記他方の側壁との間に形成される通路であり、前記隙間に繋がるラビリンスにおいて、前記シール部材より下流側に設けられ、前記ラビリンスに狭路を形成する狭路形成部材を備える、請求項1に記載のクーラ装置のシール構造。
前記カバー体は、他方の側壁と対向する対向部の下端部分が格子付近まで延在し、前記下端部分と前記格子との間に狭路を形成している、請求項4に記載のクーラ装置のシール構造。
【背景技術】
【0002】
セメントプラントには、予熱、仮焼及び焼成を経て生成された高温のセメントクリンカを冷却しながら搬送するクーラが備わっており、例えば、特許文献1のようなクーラがある。特許文献1のクーラは、特許文献1の
図10に記載されるように搬送方向に延在する複数の厚板を有しており、厚板の両端部には、横壁が設けられている。厚板は、この横壁同士を対向させるようにして搬送方向に直交する方向に並べられている。また、厚板の上にはセメントクリンカが積層されて層を形成しており、このセメントクリンカが横壁の間を通って下方に落ちないようにクーラにはシール構造が備わっている。
【0003】
クーラのシール構造は、ホルダーを有している。ホルダーは、横壁の間を通って上方に突き出るように延在している。この上端部には、断面U字状のシールセクションが開口を下に向けて設けられている。シールセクションは、対向する2つの横壁の上側部分がその中に収まるように前記2つの横壁に被せられている。これにより、シールセクションと横壁との間に逆L字状の通路が形成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のクーラでは、厚板の下側のスペースに冷却エアを供給されており、この冷却エアが格子状に形成された厚板を介してセメントクリンカに与えられてセメントクリンカを冷却するようになっている。積層されたセメントクリンカ全体を均一に冷却するためにセメントクリンカにて所定の圧力損失を生じさせており、その圧力損失を生じさせるべく厚板の下側のスペースには、高めの圧力の冷却エアが供給されている。そのため、冷却エアは、厚板を介してだけでなく、様々な隙間、例えば横壁の間の隙間からセメントクリンカの方へと冷却エアが漏れ出す。そうすると、必要以上の冷却エアを送らなければならず、冷却空気を送る送風機の電力消費量が無駄に増加することになる。
【0006】
そこで本発明は、側壁の間の隙間から漏れ出る冷却空気の量を低減することができるクーラ装置のシール構造、及びクーラ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のクーラ装置のシール構造は、側壁同士を対向させて直交方向に並べて配置される駆動列を夫々動かすことでその上に載せられている粒状搬送物を搬送し、且つ前記駆動列の下方から前記粒状搬送物に冷却流体を供給するクーラ装置のシール構造であって、対向する前記側壁のうち一方の側壁に取り付けられ、前記一方の側壁とで他方の側壁の上面及び前記直交方向の両側面を囲って前記対向する側壁の間にある隙間を上方から覆うカバー体と、前記カバー体と前記他方の側壁との間に設けられているシール部材とを備えるものである。
【0008】
本発明に従えば、カバー体と他方の側壁との間がシールされているので、駆動列の下方に導かれる冷却流体がカバー体と他方の側壁との間の隙間に導かれても、冷却流体がこの隙間を介して外方に漏れ出ることを防ぐことができる。即ち、側壁の間の隙間から漏れ出る冷却流体の量を低減することができる。
【0009】
上記発明において、前記カバー体と前記他方の側壁との間に形成される通路であり、前記隙間に繋がるラビリンスにおいて、前記シール部材より下流側に設けられ、前記ラビリンスに狭路を形成する狭路形成部材を備えることが好ましい。
【0010】
上記構成に従えば、シール部材と側壁又はカバー体との間を通って冷却流体が漏れ出たとしても狭路によってこの漏れ出る冷却流体に抵抗を与えることできる。これにより、仮に冷却流体が漏れ出ることがあっても、漏れ出る冷却流体の量を少なくすることができる。
【0011】
上記発明において、前記一方の側壁は、その上部に前記直交方向であって前記他方の側壁から離れる方向に延在する締結部分を有しており、前記カバー体は、直交方向に延在する平板部分を有し、この平板部分を前記締結部分に載せてそこで締結されることが好ましい。
【0012】
上記構成に従えば、締結部分を上側に表出させることができる。これにより、カバー体上にある粒状搬送物を除けることによって締結部分を露出させることができるので、カバー体の取り外しが容易である。
【0013】
上記発明において、前記駆動列は、前記粒状搬送物に供給する冷却流体を透過可能な格子を備え、前記狭路形成部材は、前記格子を押えるための格子押え部材であり、前記格子押え部材は、前記他方の側壁に固定されていることが好ましい。
【0014】
上記構成に従えば、格子押え部材を狭路形成部材として兼用することができるので、部品点数を低減することができる。
【0015】
上記発明において、前記カバー体は、他方の側壁と対向する対向部の下端部分が格子付近まで延在し、前記下端部分と前記格子との間に狭路を形成していることが好ましい。
【0016】
上記構成に従えば、駆動列を動かす際にカバー体が格子に対して接触することを防ぐことができ、且つカバー体と格子との間から粒状搬送物が入り込むことを防ぐことができる。
【0017】
上記発明において、前記狭路形成部材は、前記シール部材を取り付けるためのシール押え部材を含み、前記シール押え部材は、前記カバー体に向かって突出するように前記他方の側壁に設けられていることが好ましい。
【0018】
上記構成に従えば、シール押え部材を狭路形成部材として兼用することができるので、部品点数を低減することができる。
【0019】
本発明のクーラ装置は、前述するいずれか1つに記載のクーラ装置のシール構造を備えるものである。
【0020】
上記構成に従えば、上述するような機能を有するクーラ装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、横壁の間の隙間から漏れ出る冷却空気の量を低減することができ、例えば冷却流体を供給する供給装置の電力消費量を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、前述する図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るシール構造1及びそれを備えるクーラ装置2について説明する。なお、実施形態における上下左右前後等の方向の概念は、説明の便宜上使用するものであって、シール構造1及びクーラ装置2に関して、それらの構成の配置及び向き等をその方向に限定することを示唆するものではない。また、以下に説明するシール構造1及びクーラ装置2は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明は実施の形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0024】
<セメントプラント>
セメントは、石灰石、粘土、けい石、及び鉄等を含むセメント原料を粉砕する原料粉砕工程と、粉砕されたセメント原料を焼成する焼成工程と、最終工程である仕上げ工程を経て生成され、これらの3つの工程がセメントプラントにて行われる。これら3つの工程のうちの1つである焼成工程では、粉砕されたセメント原料を焼成して冷却し、粒状のセメントクリンカを生成している。
図1に示す構成は、セメントプラントの焼成設備3を示すものであり、セメント製造における焼成工程を行っている部分である。焼成設備3は、原料粉砕工程にて粉砕されたセメント原料を予熱、仮焼、及び焼成し、焼成されて高温となった粒状のセメントクリンカを冷却するようになっている。
【0025】
焼成工程を行う部分について更に詳細に説明すると、焼成設備3は、予熱器4を備えており、予熱器4は、複数のサイクロン5によって構成されている。サイクロン5は、上下方向に並べて段状に設けられており、その中の排気を上段のサイクロン5に吹き上げ(
図1の破線の矢印参照)、投入されたセメント原料を旋回流により分離し、下段のサイクロン5へと投入するようになっている(
図1の実線の矢印参照)。最下段の一段上に位置するサイクロン5は、セメント原料を仮焼炉6に投入するようになっている。仮焼炉6は、バーナ6aを有しており、このバーナ6aによる熱と後述する排気の熱とによって投入されたセメント原料中の炭酸ガスを分離する反応(即ち、仮焼反応)が行われる。仮焼炉6で仮焼反応が促進されたセメント原料は、後述のように最下段のサイクロン5に導かれ、更にこのサイクロン5内のセメント原料がロータリキルン7へと投入されるようになっている。
【0026】
このロータリキルン7は、いわゆる回転窯であり、数十メートル以上の横長円筒状に形成されている。ロータリキルン7は、サイクロン5側である入口から先端側にある出口に向かって僅かに下向きに傾いて配置されており、軸線を中心にロータリキルン7を回転させることによって、入口側にあるセメント原料が出口側へと搬送されるようになっている。また、ロータリキルン7の出口には、燃焼装置8が設けられている。燃焼装置8は、入口側に向かって高温の火炎を形成し、セメント原料を焼成するようになっている。
【0027】
燃焼装置8により発生した燃焼ガスは、セメント原料を焼成しながらロータリキルン7内を入口の方へと流れる。燃焼ガスは、高温の排気として仮焼炉6の下端から噴流となって仮焼炉6内を上方に吹き上がり(
図1の破線の矢印参照)、仮焼炉6内に投入されたセメント原料を上方に吹き上げるようになっている。セメント原料は、この排気及びバーナ6aによって約900℃まで加熱される、即ち仮焼される。また、吹き上げられたセメント原料は、排気と共に最下段のサイクロン5に流入し、ここで流入する排気とセメント原料とが分離される。分離されたセメント原料は、ロータリキルン7に投入され、排気は、一段上のサイクロン5へと吹き上げられる。吹き上げられた排気は、各サイクロン5でそこに投入されたセメント原料と熱交換を行ってセメント原料を加熱し、再びセメント原料と分離される。分離された排気は、更にその上のサイクロン5へと上昇して熱交換を繰り返す。そして、最上段のサイクロン5から排出された排気は、図示しない排ガス処理設備を経て大気に排出される。
【0028】
このように構成される焼成設備3では、セメント原料が最上段のサイクロン5付近から投入され、排気と熱交換しながら十分に予熱されて最下段より一段上のサイクロン5まで降り、そして仮焼炉6に投入される。仮焼炉6では、セメント原料がバーナ6a及び高温の排気により仮焼され、その後、セメント原料は、最下段のサイクロン5へと導かれそこで排気から分離されてロータリキルン7に投入される。投入されたセメント原料は、ロータリキルン7内で焼成されながら出口側へと搬送される。このように予熱、仮焼、及び焼成されることによって、セメントクリンカが生成される。ロータリキルン7の出口には、クーラ装置2が設けられており、ロータリキルン7の出口からクーラ装置2に生成されたセメントクリンカが排出される。
【0029】
[クーラ装置]
クーラ装置2は、ロータリキルン7から排出されるセメントクリンカ(粒状搬送物)を予め定められる搬送方向(前後方向)に搬送しながら冷却するようになっている。クーラ装置2は、
図2に示すように、ロータリキルン7の出口直下に固定傾斜グレート11を有している。固定傾斜グレート11は、ロータリキルン7の出口側から搬送方向に向かって下方に傾斜している。ロータリキルン7の出口から排出された粒状のセメントクリンカは、固定傾斜グレート11上を転がるように搬送方向に落ちていくようになっている。また、固定傾斜グレート11の搬送方向先端部には、複数の冷却ユニット列13が設けられており、セメントクリンカが複数の冷却ユニット列13上に堆積してクリンカ層14を形成するようになっている。
<冷却ユニット列>
冷却ユニット列13は、搬送方向に延在する構造体であり、搬送方向に直交する直交方向(即ち、左右方向)に並設されている。また、冷却ユニット列13の間は、セメントクリンカが下方に落ちないように後述するシール構造1によってシールされており、これら複数の冷却ユニット列13の全てを覆い隠すようにその上にクリンカ層14(
図2の1点鎖線参照)が載っている。
【0030】
また、複数の冷却ユニット列13は、このクリンカ層14を搬送方向に搬送しながら冷却するようになっており、クリンカ層14の移動と停止を繰り返すことで粒状のセメントクリンカを搬送するようになっている。その具体的な搬送方法としては、例えば全ての冷却ユニット列13を前進させた後に隣接しない冷却ユニット列13を複数回に分けて後退させる方法がある。この方法によれば、冷却ユニット列13を前進させたときにクリンカ層14が移動し、他方、冷却ユニット列13を後退させている間はクリンカ層14が止まる。それ故、粒状のセメントクリンカを搬送方向に搬送することができる。このような方法にてセメントクリンカを搬送する冷却ユニット列13は、複数の冷却ユニット15を有しており、この冷却ユニット15を搬送方向に一列に並べることによって構成されている。
<冷却ユニット>
冷却ユニット15は、
図2に示すように大略長方体の箱状に構成されており、ケーシング21を有している。ケーシング21は、大略長方体の箱状になっており、
図3に示すように上側が開口している。ケーシング21の両側壁21a,21bは、後述するシール構造1を設けるために前後壁(図示せず)より高く形成されている。また、ケーシング21の両側壁21a,21bには、格子支持部材22,23が設けられている。2つの格子支持部材22,23は、両側壁21a,21bの内面に設けられており、ケーシング21の内方にオフセットされている。これら2つの格子支持部材22,23の上には、それらに架け渡すように格子24が載せられている。
【0031】
格子24は、冷却空気を通すための複数の通気孔(図示せず)を有する多孔部材である。通気孔は、セメントクリンカがそこを通って下方に落下しないようになっており、格子24は、その上にセメントクリンカを載せて積層し、クリンカ層14を形成することができるようになっている。格子24は、例えば、複数の板状部材を部分的に重ねて水平方向に並べることによって構成され、またその重なる部分に通気孔が形成されるように板状部材の間に上下方向に隙間をあけられている。
【0032】
このように構成される格子24は、その外形寸法がケーシング21の開口の外形寸法と略一致している。そのため、格子24は、ケーシング21内に隙間なく嵌まり込み、格子24の両側縁部が格子支持部材22,23によって夫々支持されている。また、ケーシング21の側壁21a,21bの内面には、格子押え部材25が夫々設けられており、格子押え部材25は、格子支持部材22,23に対して上下方向に夫々対向するように位置している。この格子押え部材25は、搬送方向に延在する断面円形状の部材であり、格子24の両側側縁部に当接して格子24を押えている。
【0033】
このようにしてケーシング21内に設けられている格子24は、ケーシング21内の空間44を上下2つの領域44a,44bに仕切っている。上側の領域44aは、セメントクリンカが充填されるクリンカ領域44aとなっており、そこには、搬送するセメントクリンカより低温のセメントクリンカが充填されてデッド層40が形成されている。また、下側の領域44bは、冷却空気が供給されるエア領域44bとなっている。
【0034】
また、ケーシング21の下方には、空間27が形成されており、空間27には、冷却空気供給装置28(
図2参照)が繋がっており、この冷却空気供給装置28から空間27に冷却空気が供給されている。更に、ケーシング21の底部には、この空間27とエア領域44bとを繋ぐ開口部が形成されている。
【0035】
このように構成される冷却ユニット15は、前後の端面を互いに対向させて搬送方向に一列に並べて配置され、前述のように搬送方向に延在する冷却ユニット列13を構成している。更に、冷却ユニット列13は、冷却ユニット15の側壁21a,21bを互いに対向させて直交方向に並べられている。このようにして並べられる冷却ユニット列13の間、即ち側壁21a,21bの間には、
図3及び4に示すように互いが接触しないように隙間29があいており、空間27に供給された冷却空気が隙間29に入り込むようになっている。導かれる冷却空気がクリンカ層14(詳細には、デッド層40)側へと漏れ出ないように、且つクリンカ層14(詳細には、デッド層40)を形成するセメントクリンカが隙間29に入り込まないように、隣接する2つの側壁21a,21bには、隙間29を覆うべくシール構造1が構成されている。なお、シール構造1は、隣接する2つの側壁21a,21b毎に夫々設けられている。これらのシール構造1の構成は、全て同一であるので、以下では、1つのシール構造1の構成だけを説明し、その他のシール構造1の構成についての説明は省略する。
【0036】
<シール構造>
シール構造1は、
図4に示すように、基本的にカバー体31と、シール部材32と、締結部材33とを備えている。カバー体31は、断面L字状になっており、少なくとも冷却ユニット列13の搬送方向一端から他端、即ち前端から後端まで延在している。また、冷却ユニット15の一方の側壁21a(本実施形態では左側壁21a)は、その上端部に他方の側壁21bに向かって直交方向一方(本実施形態では、右方向)に突出する締結部21cを有している。締結部21cは、搬送方向に延在しており、その上面にカバー体31の水平部31aの一端側部分がシールされた状態で載せられて締結されている。
【0037】
カバー体31の水平部31aは、締結部21cから更に直交方向他方(本実施形態では、左方向)に延在し、その他端部分が左方に隣接する冷却ユニット15の他方の側壁21b(以下、単に「右側壁21b」ともいう)より直交方向他方側(本実施形態では、左側)に位置している。この水平部31aの他端部分には、垂直部31bが形成されており、垂直部31bは、水平部31aの他端部分から鉛直下方に延在している。垂直部31bは、隣接する右側壁21bの内面21dに対向し、且つ直交方向に所定距離h1だけ離されて位置している。また、垂直部31bの下端部分は、格子24の右側縁部付近まで延在しており、格子24の右側縁部との間には隙間34(例えば、0.5mm〜2mm程度)があいている。
【0038】
このようにして構成されるカバー体31は、搬送方向に延在する断面U字状のカバー35を左側壁21aの上端側部分と共に構成し、このカバー35が右側壁21bの上面及び左右両側面を覆うようになっている。これにより、カバー35の中には、両側壁21a,21bの間の隙間29に繋がるラビリンス36が形成されている。このラビリンス36は、断面L字状になっており、隙間29の上部開口に繋がってそこからカバー体31の垂直部31bに向かって直交方向他方に延在し、更に垂直部31bの手前で屈曲して鉛直下方へと延びている。このような形状に形成されるラビリンス36は、その下側が垂直部31bの下方に位置する隙間34を介してケーシング21内の空間、つまり外側空間と繋がっている。
【0039】
このような形状を有するラビリンス36には、右側壁21bに溶接された格子押え部材25が設けられている。格子押え部材25は、カバー体31の垂直部31bから直交方向に離し且つそれと部分的に対向させて配置されている。これにより、垂直部31bの下端側部分と格子押え部材25との間には、ラビリンス36の幅(h1)より幅(h2)が狭い第1狭路41(例えば、1mm〜3mm程度)が形成されている。また、このラビリンス36には、シール部材32が設けられている。
【0040】
シール部材32は、搬送方向に延在する棒状の部材であり、例えばその断面が四角形状になっている。シール部材32は、ラビリンス36において格子押え部材25より隙間29側に位置している。即ち、漏れ出る冷却空気の流れに対して格子押え部材25がシール部材32の下流側に位置している。更に具体的に説明すると、シール部材32は、ラビリンス36において上下方向に延在している部分である垂直部分36aに位置し、格子押え部材25より上方に位置している。このシール部材32は、2つのシール押え部材38,39によって保持されている。
【0041】
第1シール押え部材38は、搬送方向に延在する板状の部材であり、右側壁21bの上面に固定されている。第1シール押え部材38の左端側の部分は、右側壁21bからラビリンス36の垂直部分36aへと突き出ている。第2シール押え部材39は、この突き出る部分と上下方向において対向するように右側壁21bに設けられている。第2シール押え部材39は、搬送方向に延在する大略角柱状の部材であり、第1シール押え部材38から下方に離れてラビリンス36に位置し、右側壁21bに溶接されている。即ち、第1シール押え部材38は、ラビリンス36においてシール部材32より上流側に位置している。シール部材32は、このようにして配置されている2つのシール押え部材38,39の間に介在するように嵌め込まれており、この状態で右側壁21bとカバー体31との間をシールしている。
【0042】
このようにシールすることで、隙間29に導かれる冷却空気の流れをシール部材32によって止めることができ、ラビリンス36を通ってクリンカ層14側(詳細には、デッド層40)に漏れ出ることを防ぐことができる。これにより、冷却空気供給装置28から冷却空気を格子24の通気孔を通して高温のクリンカ層14へ適正に供給することができ、所望の冷却性能を得ることができる。また、漏れを防ぐことで冷却空気供給装置28の電力消費量を低減することができる。また、カバー体31は、左側壁21aとで右側壁21bの上面及び両側面を囲んでおり、これによって隙間29の上方が覆われている。それ故、隙間29の上方にセメントクリンカが積層されても、カバー体31によって隙間29にセメントクリンカが入ることを防ぐことができる。また、カバー体31によってラビリンス36を形成し、垂直部31bの下端部分を格子24の外側縁部近傍まで延在させてラビリンス36とデッド層40とを繋ぐ隙間を狭めることで、ラビリンス36を介してセメントクリンカが隙間29に入ることを防ぐことができる。
【0043】
このように構成されているクーラ装置2では、ロータリキルン7から排出された粒状のセメントクリンカを固定傾斜グレート11上で受けて冷却ユニット列13の方へと転がす。そして、セメントクリンカを冷却ユニット列13の上に堆積させ、冷却ユニット列13の上にクリンカ層14を形成し、前述するような方法で冷却ユニット列13を駆動することでこのクリンカ層14を搬送方向に搬送する。搬送中、冷却空気供給装置28(ファン)が稼動しており、この冷却空気供給装置28から下方空間44bに冷却空気が供給される。下方空間44bに導かれた冷却空気は、格子24及びデッド層40を介してクリンカ層14に供給される。この冷却空気は、更にクリンカ層14の粒状のセメントクリンカと熱交換してそれを冷却しながらその間を通り、クリンカ層14上部から上方へと抜けていく。上方に抜けた空気は、粒状のセメントクリンカと熱交換することによって高温になっており、高温になった空気の一部は、クーラ装置2から排出されてキルン7と、排出管45を介して仮焼炉6に導入される。このように、クーラ装置2では、冷却ユニット15によってクリンカ層14の粒状のセメントクリンカを冷却しつつ搬送し、粒状のセメントクリンカが大気温度より少し高い温度まで冷却し続ける。
【0044】
クーラ装置2では、前述の通り、セメントクリンカ搬送作業時において冷却ユニット列13を後退させる際、隣接する冷却ユニット列13同士が相対変位する。シール構造1では、シール性を持たせるために隣接する側壁21a,21bに当接させており、前述のように隣接する冷却ユニット列13同士が相対変位することでシール部材32が相対変位によって磨耗する。磨耗が繰り返されることでシール部材32とカバー体31との間等に間隙が生じ、この隙間から冷却空気がデッド層40に漏れることが考えられる。しかし、カバー体31の垂直部31bに向かって突出する第2シール押え部材39によってカバー体31との間に幅h3の第2狭路42(例えば、1mm〜3mm程度)が形成されており、この第2狭路42によってラビリンス36を通る冷却空気に抵抗が与えられている。前述する第1狭路41や垂直部31bの下方に位置する隙間34もまた、第2狭路42と同様にラビリンス36を流れる冷却空気に対して抵抗を与えている。このように複数の狭路41,42を設けることによってシール構造1のシール性能が高められており、仮にシール部材32が磨耗して冷却空気がシール部材32とカバー体31との間等の間隙から漏れ出ても、第1及び第2狭路41,42や垂直部31bの下方に位置する隙間34によってデッド層40に漏れ出る冷却空気の量を抑制することができる。これにより、シール部材32が仮に磨耗した後も、格子24の通気孔から高温のクリンカに冷却空気を適正に供給することができ、所望の冷却性能を得ることができる。
【0045】
また、シール構造1では、カバー体31の一端部が左側壁21aの締結部分21cに載せられてその部分が締結部材33によって締結されている。締結部材33は、ボルト33aとナット33bとから成り、カバー体31の一端部と左側壁21aの締結部分21cとにボルト33aを挿通させてボルト33aの先端部にナット33bを螺合させることによってカバー体31と左側壁21aとを締結している。それ故、ボルト33a又はナット33bがカバー体31の上面に表出し、締結部材33をカバー体31から外しやすくなっている。シール構造1では、前述の通りシール部材32が磨耗しやすく耐久性が低いので、シール部材32の交換時期が短くなっている。それ故、前述のようにカバー体31から外しやすくして交換を容易にすることで、交換作業の負担を低減することができる。
【0046】
また、格子押え部材25及び第2シール押え部材39を狭路41,42を形成する狭路形成部材として兼用することができるので、部品点数を低減することができる。
【0047】
<そのほかの実施形態について>
本実施形態では、デッド層40を形成する粒状物としてセメントクリンカを用いたが、セメントクリンカ以外の耐熱の粒状物、例えば、金属やセラミック等の粒状物を用いてもよい。また、搬送される粒状物及びデッド層40を形成する粒状物の粒径の大小は問わない。また、必ずしもデッド層40が設けられている必要もない。