特許第5848636号(P5848636)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カヤバ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5848636-減衰バルブおよび緩衝器 図000002
  • 特許5848636-減衰バルブおよび緩衝器 図000003
  • 特許5848636-減衰バルブおよび緩衝器 図000004
  • 特許5848636-減衰バルブおよび緩衝器 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5848636
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月27日
(54)【発明の名称】減衰バルブおよび緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/44 20060101AFI20160107BHJP
   F16F 9/34 20060101ALI20160107BHJP
   F16F 9/20 20060101ALI20160107BHJP
   F16F 1/12 20060101ALI20160107BHJP
   F16K 17/06 20060101ALI20160107BHJP
【FI】
   F16F9/44
   F16F9/34
   F16F9/20
   F16F1/12 K
   F16K17/06 A
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-47682(P2012-47682)
(22)【出願日】2012年3月5日
(65)【公開番号】特開2013-181644(P2013-181644A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067367
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 泉
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】森田 雄二
【審査官】 保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】 実開平07−038783(JP,U)
【文献】 特開昭61−010131(JP,A)
【文献】 実開昭57−080747(JP,U)
【文献】 特開2005−003173(JP,A)
【文献】 特開平06−109052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F1/00−6/00
9/00−9/58
F16K17/00−17/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポートを備えたバルブディスクと、上記ポートを開閉するバルブと、当該バルブを上記ポートを閉じる方向へ附勢するコイルばねとを備えた減衰バルブにおいて、
上記コイルばねに螺着されて当該コイルばねにおける支持位置を変更可能な支持部材と、
上記バルブディスクに取り付けた軸部材と、
上記軸部材に固定されて上記コイルばねの一端を固定して当該コイルばねを回り止めする固定部材とを備え、
上記支持部材は、筒状であって上記軸部材の外周に周方向に回転及び軸方向に移動自在に装着されるとともに、上記コイルばねの外周へ配置されて当該外周に螺着され、内部へのコイルばねの侵入を許容する
ことを特徴とする減衰バルブ。
【請求項2】
ポートを備えたバルブディスクと、上記ポートを開閉するバルブと、当該バルブを上記ポートを閉じる方向へ附勢するコイルばねとを備えた減衰バルブにおいて、
上記コイルばねに螺着されて当該コイルばねにおける支持位置を変更可能な支持部材と、
上記バルブディスクに取り付けた軸部材と、
上記軸部材に固定されて上記コイルばねの一端を固定して当該コイルばねを回り止めする固定部材とを備え、
上記固定部材は、環状の上方ピースと、環状の下方ピースとを備えるとともに、上記上方ピースと上記下方ピースとで上記コイルばねの一端を挟持する
ことを特徴とする減衰バルブ。
【請求項3】
ポートを備えたバルブディスクと、上記ポートを開閉するバルブと、当該バルブを上記ポートを閉じる方向へ附勢するコイルばねとを備えた減衰バルブにおいて、
上記コイルばねに螺着されて当該コイルばねにおける支持位置を変更可能な支持部材と、
上記バルブディスクに取り付けた軸部材と、
上記軸部材に固定されて上記コイルばねの一端を固定して当該コイルばねを回り止めする固定部材とを備え、
上記コイルばねは、他端を上記バルブへ向けて配置され、
上記支持部材は、上記コイルばねの一端と他端を避けて上記コイルばねに螺着される突条を備える
ことを特徴とする減衰バルブ。
【請求項4】
上記支持部材は筒状であって上記軸部材の外周に周方向に回転及び軸方向に移動自在に装着されることを特徴とする請求項2または3に記載の減衰バルブ。
【請求項5】
上記支持部材は、上記コイルばねの外周へ配置されて当該外周に螺着されるとともに、内部へのコイルばねの侵入を許容することを特徴とする請求項4に記載の減衰バルブ。
【請求項6】
上記支持部材は、上記バルブディスクに対して上記コイルばねの伸縮方向に遠近可能であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の減衰バルブ。
【請求項7】
シリンダと、当該シリンダ内に摺動自在に挿入されるピストンと、上記シリンダ内に上記ピストンで区画される伸側作動室と圧側作動室と、液室と、上記シリンダの側方に設けられて外方へ開口する中空部を備えたバルブケースとを備え、上記バルブケースの中空部に請求項1から6のいずれか一項に記載の減衰バルブを収容した緩衝器において、
上記減衰バルブの上記バルブは、上記軸部材の外周に装着される環状のリーフバルブであり、
上記支持部材は、外部から操作可能とされることを特徴とする緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰バルブおよび緩衝器の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、減衰バルブにあっては、たとえば、車両用の緩衝器のピストン部等に具現化され、ピストン部に設けたポートの出口端に環状のリーフバルブを積層し、このリーフバルブでポートを開閉するものが知られている。
【0003】
そして、特に、リーフバルブの内周を固定支持し外周側を撓ませることによりポートをリーフバルブで開閉する減衰バルブでは、ピストン速度が中高速領域における減衰力が大きくなりすぎ車両における乗り心地を損なう場合があり、これを解消するため、リーフバルブの内周側を固定的に支持せずに、リーフバルブの内周を筒状のピストンナットの外周に摺接させ、コイルばねでメインバルブを介してリーフバルブの背面を附勢した減衰バルブが提案されるに至っている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
この減衰バルブにあっては、ピストンが上方へ移動する際のピストン速度が低速領域にあるときにはリーフバルブの外周側がリーフバルブに積層したメインバルブの当接部位を支点として撓むので、内周が固定的に支持される減衰バルブと略同様の減衰特性を発揮し、ピストン速度が中高速領域に達すると、ポートを通過する作動油の圧力がリーフバルブに作用し、コイルばねの附勢力に抗してリーフバルブがメインバルブとともにピストンから軸方向にリフトして後退するので、内周が固定的に支持される減衰バルブに比較して流路面積が大きくなり、減衰力が過大となること抑制して、車両における乗り心地を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−20056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような減衰バルブでは、ピストン速度が中高速域にある際の減衰力過多を解消することができるが、コイルばねの一端がピストンナットによって支持されているため、コイルばねのばね定数を変更するには、コイルばね自体を交換する以外に無く、ばね定数のチューニング作業は非常に手間がかかる作業であった。
【0007】
そこで、本発明は、上記した問題点を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、容易にバルブを附勢するコイルばねの有効ばね定数のチューニングを行うことができる減衰バルブおよび緩衝器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明の第一の課題解決手段は、ポートを備えたバルブディスクと、上記ポートを開閉するバルブと、当該バルブを上記ポートを閉じる方向へ附勢するコイルばねとを備えた減衰バルブにおいて、上記コイルばねに螺着されて当該コイルばねにおける支持位置を変更可能な支持部材と、上記バルブディスクに取り付けた軸部材と、上記軸部材に固定されて上記コイルばねの一端を固定して当該コイルばねを回り止めする固定部材とを備え、上記支持部材は、筒状であって上記軸部材の外周に周方向に回転及び軸方向に移動自在に装着されるとともに、上記コイルばねの外周へ配置されて当該外周に螺着され、内部へのコイルばねの侵入を許容することを特徴とする。
上記した課題を解決するために、本発明の第二の課題解決手段は、ポートを備えたバルブディスクと、上記ポートを開閉するバルブと、当該バルブを上記ポートを閉じる方向へ附勢するコイルばねとを備えた減衰バルブにおいて、上記コイルばねに螺着されて当該コイルばねにおける支持位置を変更可能な支持部材と、上記バルブディスクに取り付けた軸部材と、上記軸部材に固定されて上記コイルばねの一端を固定して当該コイルばねを回り止めする固定部材とを備え、上記固定部材は、環状の上方ピースと、環状の下方ピースとを備えるとともに、上記上方ピースと上記下方ピースとで上記コイルばねの一端を挟持することを特徴とする。
上記した課題を解決するために、本発明の第三の課題解決手段は、ポートを備えたバルブディスクと、上記ポートを開閉するバルブと、当該バルブを上記ポートを閉じる方向へ附勢するコイルばねとを備えた減衰バルブにおいて、上記コイルばねに螺着されて当該コイルばねにおける支持位置を変更可能な支持部材と、上記バルブディスクに取り付けた軸部材と、上記軸部材に固定されて上記コイルばねの一端を固定して当該コイルばねを回り止めする固定部材とを備え、上記コイルばねは、他端を上記バルブへ向けて配置され、上記支持部材は、上記コイルばねの一端と他端を避けて上記コイルばねに螺着される突条を備えることを特徴とする。
【0009】
このように減衰バルブを構成することで、支持部材を周方向に回転することでコイルばねの支持位置、つまり、コイルばねの巻線数を変更することができ、コイルばねの支持部材が支持する部位よりもバルブディスク側のみが伸縮可能な状態となって、コイルばねは、この部位のみでバルブを附勢する附勢力を発揮するから、コイルばねが有効に附勢力をバルブへ作用させることができる有効長さを調節することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上より、本発明の減衰バルブおよび緩衝器によれば、容易にバルブを附勢するコイルばねの有効ばね定数のチューニングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施の形態における減衰バルブおよび緩衝器の縦断面図である。
図2】一実施の形態における減衰バルブの拡大縦断面図である。
図3】支持部材でコイルばねの支持位置を変更した場合の緩衝器の減衰特性を説明する減衰特性図である。
図4】支持部材でコイルばねの圧縮量を変更した場合の緩衝器の減衰特性を説明する減衰特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1に示すように、一実施の形態における減衰バルブVは、ポート2を備えたバルブディスク1と、ポート2を開閉するバルブとしてのリーフバルブ3と、当該リーフバルブ3をポート2を閉じる方向へ附勢するコイルばね4と、コイルばね4に螺着されて当該コイルばね4における支持位置を変更可能であってバルブディスク1に対してコイルばね4の伸縮方向に遠近可能な支持部材5とを備えて構成されている。
【0013】
また、この減衰バルブVは、緩衝器Dに適用されており、この緩衝器Dは、シリンダ10と、当該シリンダ10内に摺動自在に挿入されるピストン11と、シリンダ10内にピストン11で区画される伸側作動室R1と圧側作動室R2と、液室Lと、シリンダ10の側方に設けられて外方へ開口する中空部12aを有するバルブケース12とを備え、このバルブケース12に減衰バルブVを収容するようにしている。
【0014】
そして、上記したバルブディスク1は、バルブケース12内を副作動室13と副液室14とに区画しており、副作動室13を圧側作動室R2へ連通路12bで連通し、副液室14を液室Lへ液室通路12cで連通し、副作動室13と副液室14とを上記ポート2で連通していて、上記リーフバルブ3は、副作動室13から副液室14へ向かう液体の流れのみを許容するとともに液体の流れに抵抗を与えるようになっている。この緩衝器Dは、伸縮の際に、減衰バルブVを通過する液体の流れに当該減衰バルブVで抵抗を与えることで減衰力を発揮して、たとえば、車両の車軸と車体との間に介装されて車体や車軸の振動を抑制する。
【0015】
また、本実施の形態における緩衝器Dの場合、上記構成の他に、液室Lを加圧する加圧手段Pと、伸側作動室R1と圧側作動室R2とを連通する伸側通路15と、伸側作動室R1と液室Lとを連通する吸込通路16と、伸側通路15を開閉し伸側作動室R1から圧側作動室R2へ向かう液体の流れのみを許容するとともに液体の流れに抵抗を与える伸側バルブ21と、吸込通路16の途中に設けられて液室Lから伸側作動室R1へ向かう液体の流れのみを許容する吸込チェック弁26とを備えている。
【0016】
以下、減衰バルブVおよび緩衝器Dの各部について詳細に説明する。この実施の形態では、シリンダ10は、外周側に配置されるアウターチューブ19内に収容されており、このアウターチューブ19内であってシリンダ10の下方に液室Lが設けられている。つまり、アウターチューブ19は、シリンダよりも長く、この例では、液室Lは上記した伸側作動室R1および圧側作動室R2よりも下方に設けられている。このように、シリンダ10は、アウターチューブ19によって外周が覆われており、この場合、アウターチューブ19との間に環状の隙間を形成している。また、シリンダ10内には、ピストン11が摺動自在に挿入されていて、シリンダ10内は、図1中上方の伸側作動室R1と下方の圧側作動室R2とに区画されている。
【0017】
なお、シリンダ10は、内周が表面処理されており、ピストン11と円滑な摺動を実現できるようになっている。このように、アウターチューブ19よりも短いシリンダ10の表面処理を行えばよいので、長いアウターチューブ19の表面処理を行わなくて済むから加工コストを低減でき、ピストン11から入力される図中横方向の力をシリンダ10で受けるので、アウターチューブ19に軽量で比較的軟らかい金属を使用することも可能となる。
【0018】
ピストン11は、環状とされており、ピストンロッド20の中間に固定されている。具体的には、ピストンロッド20は、上部20aと、下部20bとで構成され、上部20aの下端に設けた螺子軸20cを下部20bの上端に設けた螺子孔20dに螺子締結することで一体とされ、上部20aと下部20bでピストン11を挟み込んでピストン11を固定している。なお、本実施の形態では、緩衝器Dは、ピストン11がピストンロッド20の中間に固定され、ピストンロッド20の上端と下端とがアウターチューブ19から外部へ突出する、いわゆる、両ロッド型の緩衝器とされているが、ピストンロッド20の下部20bを廃止して上部20aの下端にピストン11を固定する、いわゆる、片ロッド型の緩衝器とされてもよい。
【0019】
戻って、ピストン11は、シリンダ10内を伸側作動室R1と圧側作動室R2とに区画していて、伸側作動室R1と圧側作動室R2とを連通する伸側通路15を備えている。そして、ピストン11の図1中下端には、伸側通路15の下端を開閉する環状のリーフバルブでなる伸側バルブ21が積層されている。伸側バルブ21は、ピストン11がシリンダ10に対して図1中上方へ移動する伸長作動時において液体が、伸側通路15を圧縮される伸側作動室R1から拡大される圧側作動室R2へ向けて流れる際に、開弁して当該液体の流れに抵抗を与えるようになっている。反対に、収縮作動時には、伸側通路15を閉塞して、圧側作動室R2から伸側作動室R1へ向かう液体の流れを阻止する。
【0020】
なお、伸側バルブ21は、伸側作動室R1から圧側作動室R2へ向かう液体の流れのみを許容し、当該液体の流れに抵抗を与えればよいので、リーフバルブ以外の減衰バルブとされてもよく、チョークやオリフィス等といった双方向通行を許すバルブとチェック弁との組み合わせとされてもよいし、また、リーフバルブの背面をピストン11側へ向けて附勢するばねを備える構造を採用してもよい。
【0021】
アウターチューブ19は、上方に内径を小径にして設けた上方小径部19aと、当該上方小径部19aよりも図1中上方の開口部内周に設けた雌螺子部19bと、下方の内周を小径にして設けた下方小径部19cと、下方小径部19cよりも下方に設けられて内周側へ突出する環状凸部19dと、当該環状凸部19dの内周に設けた内周螺子部19eと、下端外周に設けた雄螺子部19fと、下方小径部19cの上端段部から開口して環状凸部19dの下端段部へ通じる穿孔19gと、側方に突出するように一体化されるバルブケース12と、外周であってバルブケース12よりも上方に設けた外周螺子部19hとを備えている。
【0022】
雄螺子部19には、符示はしないが、アウターチューブ19を車両の図示しない車軸側へ連結可能なブラケットが螺着される。また、外周螺子部19hには、環状の懸架ばね受22が螺着されている。この懸架ばね受22は、車両の車体を支承する懸架ばねSを支持するものであり、ピストンロッド20の上端に連結される上方側の懸架ばね受23と協働して、この懸架ばねを挟持するようになっている。この場合、懸架ばね22は、外周螺子部19hの軸方向設置範囲内であれば、アウターチューブ19に対する軸方向取付位置を変更することが可能であるが、アウターチューブ19に対して固定的に取り付けるようにされてもよい。
【0023】
アウターチューブ19は、シリンダ10よりも長く、上記した上方小径部19aの内周には、シリンダ10内に移動自在に挿入されるピストンロッド15の図1中上部15a側を軸支する環状のロッドガイド24が嵌合されている。また、アウターチューブ19の下方小径部19cには、ピストンロッド20の図1中下部20b側を軸支する環状のロッドガイド25が嵌合されている。
【0024】
ロッドガイド24は、下方に設けられて切欠24bを備えた筒状のソケット部24aと、外周に装着されて上方小径部19aの内周に密着してアウターチューブ19とロッドガイド24との間をシールするシールリング24cとを備えている。このソケット部24aの内周には、環状の吸込チェック弁26が収容されている。また、このソケット部24aには、吸込チェック弁26の下方に環状の弁固定部材27が装着されている。この弁固定部材27は、これを軸方向に貫くポート27aと、外周に上記ソケット部24a内に嵌合する筒状の嵌合部27bとを備え、下方側がシリンダ10の上端開口端内周に嵌合される。このように、弁固定部材27をロッドガイド24とシリンダ10に嵌合すると、弁固定部材27の嵌合部27bとロッドガイド24とで吸込チェック弁26の外周が挟持される。吸込チェック弁26は、上記したように外周側が固定されるので内周のみの撓みが許容される。また、吸込チェック弁26は、内周をロッドガイド24に密着させる状態では、シリンダ10とアウターチューブ19との隙間に通じる切欠24bとポート27aとの連通を遮断するが、撓んで開弁すると切欠24bとポート27aとを連通する。ロッドガイド25は、環状であって図1中上端から外周へ通じる孔25aを備えている。
【0025】
また、ロッドガイド24よりも上方には、当該ロッドガイド24とピストンロッド20との間をシールする環状のシール部材28とスペーサ29とが積層され、アウターチューブ19の下方小径部19cの内周であって環状凸部19dとロッドガイド25との間にはピストンロッド20とアウターチューブ19との間をシールする環状のシール部材30とスペーサ31が収容される。
【0026】
そして、アウターチューブ19の内方に、スペーサ31、シール部材30、ロッドガイド25、シリンダ10、弁固定部材27、吸込チェック弁26、ロッドガイド24、シール部材28およびスペーサ29の順に収容し、雌螺子部19bに外周に螺子部を持つナット32を螺着すると、上記したアウターチューブ19内に収容される各部材がナット32と環状凸部19dとで挟持されてアウターチューブ19に固定される。このようにして上記シール部材28,30とシールリング24cとでピストンロッド20とアウターチューブ19との間が密にシールされ、伸側作動室R1および圧側作動室R2は、液密に保たれている。
【0027】
また、アウターチューブ19の環状凸部19dの内周に設けた内周螺子部19eには、筒状のロッド挿通筒33が螺着されている。ロッド挿通筒33は、下端にアウターチューブ19の内周に嵌合するキャップ34を備え、ピストンロッド20の下部20bの挿通を許容しており、ピストンロッド20のアウターチューブ19に対する上下動を可能としている。
【0028】
上述のようにアウターチューブ19内にシリンダ10を収容して固定すると、アウターチューブ19における上方小径部19aと下方小径部19cとの間の内面とシリンダ10の外面との間には、環状の隙間が形成される。この隙間は、アウターチューブ19の下方小径部19cの上端段部から開口して環状凸部19dの下端段部へ通じる穿孔19gによってアウターチューブ19の下方に設けた液室Lへ通じている。したがって、この場合、シリンダ10とアウターチューブ19との間に形成される隙間と、ポート27a、切欠24bおよび穿孔19gで伸側作動室R1と液室Lとを連通する吸込通路16を形成している。なお、シリンダ10とアウターチューブ19との間に形成される隙間は環状隙間に限られず、形状は問われない。
【0029】
液室Lは、アウターチューブ19の環状凸部19dよりも下方の内周と上記したロッド挿通筒33の外周の双方に軸方向移動可能に摺接する環状のフリーピストン35によって画成されている。また、アウターチューブ19とロッド挿通筒33との間の空隙はロッド挿通筒33の下端に設けた環状のキャップ34で閉塞されており、フリーピストン35は、このキャップ34と協働して、アウターチューブ19とロッド挿通筒33との間に気室Gを画成している。そして、この気室G内の圧力で、フリーピストン35を図1中上方へ押圧して液室Lを加圧しており、これによって、附勢手段としての気体ばねを形成している。
【0030】
すなわち、この実施の形態の場合、加圧手段Pは、アウターチューブ19内に摺動自在に挿入されるフリーピストン35と、当該フリーピストン35を液室Lへ向けて附勢する附勢手段としての気体ばねとで構成されている。また、キャップ34には、気室Gへ通じる気道34aが設けられており、気道34aを止バルブ34bによって閉塞することで気室Gは気密に保たれる。そして、気道34aを介して気室Gへ気体を供給したり、気室Gから気体を排出したりして、気室G内の圧力を調節することができるようになっている。この緩衝器Dにあっては、気室Gと気体とで気体ばねを構成して液室Lを加圧することができ、液室Lの圧力は、上記した吸込通路16を通じて伸側作動室R1と圧側作動室R2へ伝播するので、シリンダ10内をも加圧することができる。なお、この実施の形態の場合、気体ばねで液室Lを加圧するが、気体ばねの他に、コイルばね等といった気体ばね以外のばねを附勢手段として用いてもよく、加圧手段としては、その他にも、液室L内に内部に気体を充填した金属ベローズやダイヤフラム等を収容し、これを加圧手段としてもよく、金属ベローズやフリーピストン35を使用する場合には、内部に気体ばね以外のばねを設けるようにしてもよい。附勢手段をフリーピストン35で区画した気室G内に封入した気体で液室Lを加圧する気体ばねとすることで、附勢手段における附勢力の調節が容易となるだけでなく、金属製のコイルばね等を用いるものに比較して緩衝器Dを軽量化することができる利点がある。
【0031】
つづいて、バルブケース12は、アウターチューブ19の側方に設けられていて、この実施の形態の場合、下方に向けて開口する中空部12aを備えており、この中空部12aは、シリンダ10の軸線方向で上記伸側作動室R1および上記圧側作動室R2よりも下方に配置されている。この場合、バルブケース12は、アウターチューブ19の側方に一体化されて、これらで一部品となっている。なお、バルブケース12は、アウターチューブ19と別部品で構成して、アウターチューブ19に一体化するようにしてもよい。また、このバルブケース12の開口部は、減衰バルブVの一部を構成する軸部材36と支持部材5とによって閉塞されており、バルブケース12内が液密に保たれている。
【0032】
詳しくは、バルブケース12は、図1および図2に示すように、下端から開口する中空部12aと、中空部12aと圧側作動室R2とを連通する連絡路12bと、中空部12aと液室Lとを連通する液室通路12cと、中空部12aの底から開口して外部へ通じる透孔12dとを備えている。連絡路12bは、詳しくは、ロッドガイド25の外周の孔25aの開口端に面し、この孔25aを通じて、圧側作動室R2へ連通されている。液室通路12cは、この実施の形態では、液室Lの上端に通じており、液室L側の出口端がフリーピストン35の摺動範囲に配置しないようになっていて、フリーピストン35の外周に装着されるシールリング35aを当該出口端でかじることがないようになっている。
【0033】
そして、この実施の形態では、連絡路12bの中空部12a側の出口端は、伸側作動室R1の下端及び圧側作動室R2の下端よりも下方側へ配置されている。そのため、この実施の形態では、中空部12aが下方へ向けて開口しており、緩衝器Dを図1に示す姿勢から天地逆向きの姿勢にして中空部12aの開口を上方へ向ける場合、減衰バルブVをバルブケース12から取り除いて中空部12aを外部へ開放しても、中空部12a内の液体の液面が連絡路12bの中空部側の出口端よりも上方にあれば伸側作動室R1および圧側作動室R2へ外部の気体が侵入することがないようになっている。つまり、緩衝器Dを図1に示す姿勢から天地逆向きの姿勢にして中空部12aの開口を上方へ向けた場合、連絡路12bの中空部12a側の出口端が伸側作動室R1と圧側作動室R2よりも上方に配置されるので、連絡路12bから伸側作動室R1と圧側作動室R2への気体の侵入が防止される。なお、この実施の形態では、液室Lは、フリーピストン35で気室Gと区画されているので、緩衝器Dを図1に示す姿勢から天地逆向きの姿勢にした状態においてフリーピストン35が液室Lの下端の移動限界まで移動して移動が拘束されるか、或いは、予めフリーピストン35の移動を拘束しておけば、中空部12a内の液体の液面が液室通路12cの中空部12a側の出口端よりも上方にある限り、液室Lへ気体が侵入しない。このように、フリーピストン35や金属ベローズ、ダイヤフラムといった気室Gと液室Lとを分離する部材を設けておき、液室Lの容積が変化しないように拘束すれば、減衰バルブVをバルブケース12から取り外した際の中空部12a介しての液室Lへの気体の侵入を防止できる。
【0034】
なお、中空部12aの開口方向は任意に設定することができ、たとえば、中空部12aが図1中横方向或いは上方へ向けて開口する場合であっても、中空部12aの開口を上方へ向けた状態において、連絡路12bの中空部12a側の出口端を伸側作動室R1の上端及び圧側作動室R2の上端よりも上方側へ配置すればよい。そうすることで、伸側作動室R1および圧側作動室R2への外部の気体の侵入を防止できる。液室通路12cの中空部12a側の出口端に関しては、液室Lが気室Gと区画するフリーピストン35などの部材を設けない場合、液室Lの下端より少なくとも上方へ配置し、気体の侵入を防止できるように配慮すればよい。このように、バルブケース12に対して中空部12aの開口方向と、液室Lを気室Gから区画する部材の有無とに応じて、連絡路12bの中空部12a側の出口端と伸側作動室R1および圧側作動室R2との位置関係、液室通路12cの中空部12a側の出口端と液室Lとの位置関係を気体の侵入を防止できるように決定すればよい。
【0035】
また、バルブケース12の中空部12aには、バルブディスク1が嵌合されている。このバルブディスク1は、外周をバルブケース12の中空部12aの内面に接していて、当該中空部12a内を図1中上方側の副作動室13と図1中下方側の副液室14とに区画している。副作動室13は、上記した連絡路12bおよび孔25aを介して圧側作動室R2へ通じており、また、副液室14は、上記した液室通路12cを介して液室Lに通じている。
【0036】
バルブディスク1は、図1および図2に示すように、環状であって、副作動室13と副液室14とを連通するポート2と、同じく副作動室13と副液室14とを連通する補償通路37とを備えている。そして、バルブディスク1は、バルブケース12内に収容される軸部材36の外周に装着されることで、バルブケース12に固定されている。
【0037】
また、バルブディスク1の図1中下面となる副液室面には、軸部材36の外周に固定されてポート2の図1中下端開口部を開閉する減衰バルブとしての環状のリーフバルブ3が積層され、図1中上面となる副作動室面には、軸部材36の外周に固定されて補償通路37の図1中上端開口部を開閉する環状の補償チェック弁38が積層されている。なお、バルブとしてのリーフバルブ3は、圧側作動室R2から液室Lへ向かう液体の流れのみを許容し当該流れに対して抵抗を与えるものであればよいので、リーフバルブ以外のバルブとされてもよい。このリーフバルブ3は、補償通路37の図1中上端開口部を閉塞しないようになっており、補償用チェック弁38もまたポート2の図1中下端開口部を閉塞しないようになっている。
【0038】
軸部材36は、図1および図2に示すように、バルブケース12に固定される第一軸40と、第一軸40に連結される第二軸41と、第二軸41に連結されるキャップ部42と、第一軸40をバルブケース12に固定するナット43とを備えて構成されている。
【0039】
より詳細には、第一軸40は、バルブケース12における中空部12aの底に設けた透孔12dを介してバルブケース12外へ突出する外方螺子軸40aと、外方螺子軸40aの基端に連なるフランジ40bと、フランジ40bから外方螺子軸40aとは反対側へ伸びて先端に螺子部が形成される内方螺子軸40cとを備えている。そして、この第一軸40は、中空部12a内に挿入しつつ、外方螺子軸40aを透孔12dから外方へ突出させつつ、フランジ部40bを中空部12aの底に中空部12d内側から当接させ、外方螺子軸40aにナット43を螺着することで、バルブケース12に固定することができる。フランジ部40bの図1中上端には、環状のシールリング40dが装着されており、このシールリング40aがフランジ部40bとバルブケース12との間をシールして、透孔12dから液漏れしないようになっている。そして、この内方螺子軸40cの外周には、補償チェック弁38、バルブディスク1およびリーフバルブ3の順に装着される。
【0040】
つづいて、第二軸41は、図1および図2に示すように、外径が第一軸40の内方螺子軸40cよりも大径な基部41aと、基部41aの先端から立ち上がる螺子軸41bと、基部41aの図1中上端から開口する螺子穴41cとを備えていて、第一軸40の内方螺子軸40cを上記螺子穴41cに螺子締結することで第二軸41と第一軸40とが一体化される。また、第一軸40を第二軸41に螺子締結する際には、予め第一軸40の外周に上記した補償チェック弁38、バルブディスク1およびリーフバルブ3を装着しておき、これらが第一軸40と第二軸41とで挟持されて軸部材36に固定される。このように補償チェック弁38が軸部材36に固定されると内周が第一軸40と第二軸41とで挟持されて固定されて外周の撓みが許容され、補償通路37側からの圧力を受けて撓むことで補償通路37を開放するようになっている。また、リーフバルブ3も同様に内周が第一軸40と第二軸41とで挟持されて固定されて外周の撓みが許容されるので、ポート2側からの圧力を受けて撓むことでポート2を開放するようになっている。
【0041】
キャップ部42は、図1および図2に示すように、円盤状であって、図1中下方側となる反バルブケース側の外周に設けた螺子部42aと、同じく外周であって螺子部42aよりも図1中上方に設けたシールリング42bと、図1中上端となるバルブケース側端から開口する螺子穴42cとを備えており、第二軸41の螺子軸41bを螺子穴42cに螺子締結することで第二軸41にキャップ部42を一体化することができるようになっている。
【0042】
このキャップ部42と第二軸41の基部41aの図1中下端となる反バルブケース側端との間には、固定部材44が介装されており、この固定部材44は、キャップ部42と基部41aとで挟持されて軸部材36に固定される。固定部材44は、環状であって図1中上方側の上方ピース44aと同じく環状であって図1中下方側の下側ピース44bとで構成されており、上方ピース44aと下方ピース44bとは重ね合わせると、外周にコイルばね4を掴むための螺旋状の溝が形成されており、これら上方ピース44aと下方ピース44bとで軸部材36の外周に配置されるコイルばね4の一端である図1中下端を上下から挟持することができ、固定部材44にキャップ部42と第二軸41とで軸方向の力を作用させることで、コイルばね4を強固に把持でき、また、固定部材44が軸部材36に強固に固定されるので、コイルばね4は固定部材44によって軸部材36に対して回り止めされて固定されることになる。なお、固定部材44は、上記構成に限定されるものではなく、たとえば、コイルばね4の一端を軸部材36に回転不能に固定することができればよいが、上記のようにツーピースで構成されることで第二軸41とキャップ部42との締付力でコイルばね4を強固に固定することができる利点がある。
【0043】
また、第二軸41の外周には、リーフバルブ3の図1中下面となる背面に積層される環状のバルブ抑え45が軸方向移動自在に積層されており、軸部材36に一端が固定されるコイルばね4の他端は、このバルブ抑え45に当接している。このように、コイルばね4の一端が固定部材44によって固定され、コイルばね4の他端がバルブ抑え45に支承されることで、コイルばね4は圧縮状態とされていて、その附勢力をバルブ抑え45を介してリーフバルブ3に作用させており、リーフバルブ3は当該コイルばね4によってポート2を閉じる方向へ附勢されている。
【0044】
さらに、支持部材5は、図1および図2に示すように、内径がコイルばね4の外径以上とされる筒状であって、内方へコイルばね4の侵入を許容するようになっていて、外周に設けたバルブケース12の中空部12aの内壁面に摺接するシールリング5aと、内周に設けられて上記したコイルばね4の線条に沿う螺旋状の突条5bとを備えて構成されている。そして、この支持部材5は、キャップ部42の外周に摺動自在に装着されていて、軸部材36に対して周方向の回転及び軸方向への移動が許容されている。したがって、この支持部材5は、バルブディスク1に対してコイルばね4の伸縮方向に遠近可能である。また、支持部材5とキャップ部42との間は、シールリング42bによってシールされており、支持部材5とバルブケース12との間はシールリング5aによってシールされているので、中空部12aは液密に保たれている。上記のように構成された減衰バルブVを中空部12aに収容すると、支持部材5はバルブケース12の外方へ突出して、外部から支持部材5を操作することができるようになっている。
【0045】
この支持部材5は、螺子の要領でコイルばね4の線条間に突条5bを侵入させることでコイルばね4の外周に螺着されていて、この突条5bは、少なくともコイルばね4の線条の一巻を支持することができるように支持部材5に対して周方向に一巻以上に亘って設けられている。したがって、支持部材5を外部から操作して周方向へ回転させることで、螺子のように、突条5bがコイルばね4を支持する部位をコイルばね4の図1中上下へ移動させることができる。
【0046】
なお、キャップ部42の外周に設けた螺子部42aには、固定ナット46,47が螺着され、この固定ナット46,47によって、支持部材5が軸部材36に対して図1中下方となる反バルブディスク側への移動を規制している。そして、支持部材5の移動が規制される位置で、コイルばね4における支持部材5が当該コイルばね4を支持する部位よりも図1中上方側を圧縮状態にすると、コイルばね4は、リーフバルブ3を附勢することができる。なお、コイルばね4は、支持部材5を固定ナット46,47側へ附勢するので、支持部材5は、固定ナット46,47側へも押し付けられるので、軸部材36に対しコイルばねの伸縮方向となる図1中上下方向へ動くことはない。
【0047】
以上から理解できるように、支持部材5は、周方向に回転させられることで、コイルばね4の支持位置、つまり、コイルばね4における突条5bによって掴かまれている位置を図1中上下方向へ移動させることができ、これによって、突条5bとバルブ抑え45との間のコイルばね4の巻線数を変更することができる。そして、コイルばね4における突条5bから固定部材44までは、支持部材5とキャップ部42との相対変位が規制されるため伸縮しない。したがって、コイルばね4は、支持部材5の突条5bから図1中下方側は、伸縮不能な状態とされるので、突条5bから図1中上方側のみが伸縮可能な状態に置かれる。
【0048】
このように、コイルばね4に螺着されて当該コイルばね4における支持位置を変更可能な支持部材5を設けたので、コイルばね4の支持部材5が支持する部位よりも図1中上方側であるバルブディスク側のみが伸縮可能な状態となって、この部位のみでリーフバルブ3を附勢する附勢力を発揮するから、コイルばね4が有効に附勢力をリーフバルブ3へ作用させることができる部位の長さ、つまり、コイルばね4の有効長さを調節することができ、コイルばね4の見掛け上のばね定数(有効ばね定数)をチューニングすることができる。
【0049】
また、支持部材5がバルブディスク1に対して遠近可能であるから、リーフバルブ3を有効に附勢することができる伸縮可能なコイルばね4の部位の圧縮量を調節することができ、リーフバルブ3に与える附勢力を変更することができる。したがって、リーフバルブ3の開弁圧を調節することもできる。
【0050】
なお、軸部材36は、上記のように構成されるが、たとえば、第一軸40、第二軸41およびキャップ部42と一部品で構成するようにしてもよいし、一部の部品をバルブディスク1とともに一部品とすることもできる。また、この実施の形態の場合、リーフバルブ3の内周を第一軸40と第二軸41とで挟持して内周固定に設定しているが、たとえば、リーフバルブ3を第一軸40と第二軸41とで挟持せずに第二軸41の外周に軸方向移動可能に装着するようにして、ポート2からの圧力でコイルばね4の有効長さ部分を押し縮める場合にリーフバルブ3がバルブディスク1から離間するようにしてもよい。
【0051】
また、この場合、バルブを環状のリーフバルブ3としているので、端部が環状であるコイルばね4と形状が一致して附勢しやすく、減衰バルブVの構成が簡単となる利点がある。
【0052】
さらに、バルブディスク1に取り付けた軸部材36にコイルばね4の一端を固定してコイルばね4を回り止めする固定部材44を備えているので、支持部材5を回転させてコイルばね4を支持する部位を変更する際に、コイルばね4が支持部材5とともに供回りすることがなく支持部位の変更を確実に行うことができる。
【0053】
そして、さらに、支持部材5は筒状であって、軸部材36の外周に周方向に回転及び軸方向に移動自在に装着されるので、バルブディスク1と支持部材5とを軸部材36を介して一体化してアセンブリ化することができ、軸部材36に減衰バルブVを構成する部材を組み付けることでこれら各部材が調心されるから、緩衝器Dへの組み込みが非常に簡単になる。なお、この実施の形態では、支持部材5を軸部材36の外周で移動を規制するようにしているが、バルブケース12側で移動を規制することも可能である。
【0054】
また、支持部材5は、コイルばね4における支持位置を変更可能であればよいのでコイルばね4の外周に螺着される構造に限定されるものではないが、コイルばね4の外周側に配置されてコイルばね4の内部への侵入を可能としているので、支持部材をコイルばね4の内側へ配置する構造を採用するよりも減衰バルブVの構造が簡単となる。つまり、支持部材をコイルばね4の内周へ配置する場合、コイルばね4の回り止めする固定部材をバルブケース12側に取り付けるような構造となって構造が複雑となり、減衰バルブVの全部材をアッセンブリ化することができず、緩衝器Dへの組み込み作業も煩雑となるが、このような構成を採用することも可能である。
【0055】
つづいて、上述のように構成された緩衝器Dの作動について説明する。まず、図1中でピストン11が上方へ移動して緩衝器Dが伸長する場合について説明する。この伸長作動時においてピストン11の上昇によって圧縮される伸側作動室R1の液体は、伸側バルブ21を押し開いて圧側作動室R2へ移動する。したがって、緩衝器Dが伸長作動する際には、伸側バルブ21が開いて液体の流れに抵抗を与えるため、伸側バルブ21によって伸側減衰力が発生される。この緩衝器Dは、両ロッド型に設定されており、伸側バルブ21が開弁し伸側作動室R1と圧側作動室R2とが連通され、伸側作動室R1で減少する容積に見合って圧側作動室R2の容積が増大するため、液室Lとシリンダ10内とで液体の出入りがないが、緩衝器Dが片ロッド型に設定される、つまり、ピストンロッド20の下部20bを廃した場合には、補償チェック弁38が開いて液室Lから不足する液体が圧側作動室R2へ供給されることになる。
【0056】
次に、図1中でピストン11が下方へ移動して緩衝器Dが収縮する場合について説明する。この収縮作動時においてピストン11の下降によって圧縮される圧側作動室R2の液体は、リーフバルブ3を押し開いて液室Lへ移動する。したがって、緩衝器Dが収縮作動する際には、リーフバルブ3が開いて液体の流れに抵抗を与えるため、リーフバルブ3によって圧側減衰力が発生される。また、拡大される伸側作動室R1には、吸込チェック弁26が開弁することで、液室Lから液体が供給される。
【0057】
このように、この実施の形態では、緩衝器Dの収縮作動時にポート2を流れる液体の流れにリーフバルブ3で抵抗を与えて圧側の減衰力を発生するので、支持部材5を周方向に回転させてコイルばね4の有効ばね定数を変更すると、減衰係数を図3中の破線及び矢印で示すよう大小させるように緩衝器Dの圧側の減衰特性(ピストン速度に対する減衰力の特性)を変更することができ、また、支持部材5をバルブディスク1に対して遠近させることでコイルばね4の有効長さ部分の圧縮度合いを変更することができリーフバルブ3を附勢する附勢力を調節でき、リーフバルブ3の開弁圧を大小させることで図4の破線及び矢印に示すように緩衝器Dの圧側の減衰特性において減衰力を大小させることができる。なお、図3および図4の線Xで示すピストン速度が比較的低速である際の放物線状の減衰特性は、リーフバルブ3の外周に設けた図示しない切欠で設けたオリフィスやバルブディスク1のリーフバルブ3が着座する弁座50に設けた図示しない打刻オリフィスによる特性であるが、オリフィスを設ける代わりにチョーク通路を設けておいてチョーク特性を発生させてもよい。
【0058】
このように緩衝器Dは作動するが、この緩衝器Dにあっては、液室Lと液室Lを加圧する加圧手段Pを備えているので、シリンダ10内の伸側作動室R1と圧側作動室R2内の液柱剛性を高めることができる。
【0059】
そして、この緩衝器Dにあっては、伸長行程時に圧縮される伸側作動室R1が何ら抵抗の無い通路を介して液室Lに連通されることがなく、収縮行程時においても圧縮される圧側作動室R2がリーフバルブ3を介して液室Lに連通されるため何ら抵抗の無い通路介して液室Lに連通されることがないので、その伸縮両行程時において液室Lが圧縮側の室として振る舞うことがなく液体の液柱剛性の低下を招くことがない。
【0060】
このように、緩衝器Dによれば、伸側作動室R1と圧側作動室R2の液柱剛性を高めることができるだけでなく、伸縮行程時においても液室Lが圧縮側の室として振る舞うことなく液柱剛性が低下しないので、伸縮時のピストン速度が低速である場合であっても減衰力発生応答性を向上することができ、車両における乗り心地をも向上することができる。したがって、この緩衝器Dにあっては、車両旋回時、制動時や加速時といった車体の姿勢変化を姿勢変化初期からしっかり抑制することができる。
【0061】
さらに、この緩衝器Dにあっては、シリンダ10と、当該シリンダ10内に摺動自在に挿入されるピストン11と、シリンダ10内にピストン11で区画される伸側作動室R1と圧側作動室R2と、液室Lと、シリンダ10の側方に設けられて外方へ開口する中空部12aを備えたバルブケース12とを備え、バルブケース12の中空部12aに減衰バルブVを収容し、上記支持部材5を外部から操作可能としたので、緩衝器Dを分解することなく、減衰バルブVにおけるコイルばね4の有効ばね定数を変更することができる。
【0062】
また、この緩衝器Dにあっては、アウターチューブ19の側方に設けたバルブケース12内にポート2を備えたバルブディスク1を設け、当該ポート2を開閉し副作動室13から副液室14へと向かう液体の流れのみを許容するとともに液体の流れに抵抗を与えるリーフバルブ3をバルブケース12内に収容したので、減衰力発生応答性を高めつつ、アウターチューブ19の外周に懸架ばねSを支承する懸架ばね受22を設けることができるとともに、減衰バルブVをアウターチューブ19外に設置しているからシリンダ長も短くなるので、車両への搭載性も犠牲になることがない。
【0063】
また、緩衝器Dでは、伸側作動室R1を起点とすれば、液体の流れは、伸側作動室R1から圧側作動室R2、液室Lを経て伸側作動室R1へ循環する一方通行の流れとなるので、緩衝器Dの伸縮の切り換わりにて液体の流れが反転しなくなる。このように、液体の流れの反転が生じなくなるので、緩衝器Dの伸縮の切り換わりにおける減衰力発生遅れを抑制することが可能となる。また、この緩衝器Dでは、補償通路37および補償チェック弁38とを廃止することも可能であるが、これらを設けておく場合には、圧側作動室R2内で圧力が減少した場合に液室Lから圧側作動室R2へ液体を速やかに供給することができ、圧側作動室R2の圧力を補償してバキュームを防止することが可能となる。
【0064】
また、本実施の形態における緩衝器Dでは、両ロッド型とされているので、伸縮作動に際して、液室Lとシリンダ10内とで液体の出入りがなくいため、液室L内での圧力変動がなく、更なる減衰力発生応答性の向上に寄与できる。
【0065】
なお、上記したところでは、減衰バルブVで圧側の減衰力を発生するとしているが、伸側作動室R1を副作動室13に連通するようにすれば、減衰バルブVを緩衝器Dが伸長作動する際に減衰力を発生する伸側バルブとして機能させることもでき、その場合には、たとえば、伸側バルブ21を廃止して伸側通路15を圧側通路とし利用しピストン11に圧側バルブとして機能するリーフバルブ等のバルブを設けるようにしてもよい。また、この場合、吸込通路16を廃止して、液室Lを圧側作動室R2へ連通する通路を設けて、この通路を介して緩衝器Dの伸長作動時に圧側作動室R2へ液体を供給するようにしておくとよく、シリンダ10とアウターチューブ19との間の環状隙間を利用して伸側作動室R1と副作動室13とを連通するようにすることできる。
【0066】
なお、減衰バルブVは、上記した緩衝器D以外の緩衝器にも適用可能であって、たとえば、一般的な複筒型の緩衝器の圧側減衰力を発揮するためのベースバルブに適用して、シリンダ端から支持部材5を外部へ突出させておけば、外部操作で圧側減衰力の調整が可能となる。
【0067】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の緩衝器は、制振用途に利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 バルブディスク
2 ポート
3 バルブとしてのリーフバルブ
4 コイルばね
5 支持部材
10 シリンダ
11 ピストン
12 バルブケース
12a 中空部
36 軸部材
44 固定部材
L 液室
R1 伸側作動室
R2 圧側作動室
V 減衰バルブ
図1
図2
図3
図4