(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明の減衰バルブ構造は、油圧緩衝器に利用され、油圧緩衝器は、車両のサスペンションに装備される。
【0021】
油圧緩衝器は、
図1に示すように、車両の車軸側に連結される車軸側部材とされて作動油を収容するシリンダ1と、車両の車体側に連結される車体側部材とされて
図1中での右端側となる先端側がシリンダ1内に出入自在に挿通される軸体たるピストンロッド2とを有している。
【0022】
そして、減衰バルブ構造は、ピストンロッド2と、ピストンロッド2の先端インロー部2aに保持されてシリンダ1内に挿通される隔壁体たる環状に形成のピストン3と、ピストン3に積層されるバルブたる伸側のバルブ4とを有している。
【0023】
ピストン3は、シリンダ1内に一方室R1と他方室R2とを区画すると共に、一方室R1と他方室R2との連通を許容するポートたる伸側のポート3aおよび図示しない圧側のポートを有している。伸側のポート3aは、
図1中で左端となる下流側端がピストン3の一端、すなわち、一方室R1側端に形成されて一方室R1に連通する凹部3bに開口し、
図1中で右端となる下流側端がピストン3の他端、すなわち、他方室R2側端に形成される環状溝3cに開口する。
【0024】
伸側のバルブ4は、
図1に示すところにあって、異径の環状リーフバルブが複数枚積層された積層環状リーフバルブからなり、内周端部固定で外端部自由の態勢に設けられ、外周側端部(符示せず)がピストン3の他端に形成の外周側シート部3dに離着座自在に着座して環状溝3cを開放可能に閉塞する。
【0025】
ちなみに、ピストン3の他端には、圧側のバルブ5が内周端部固定で外周端部自由の態勢に積層され、圧側のポートの下流側端を開放可能に閉塞するとしており、
図1に示すところでは、異径となる複数枚の環状リーフバルブを積層しているが、これに代えて、一枚の環状リーフバルブを有して良い。
【0026】
なお、伸側のバルブ4および圧側のバルブ5は、ピストン3を
図1中で左右から挟む態勢でロッド2の先端インロー部2aの外周に介装され、内周側端部(符示せず)がピストン3の内周側ボス部3e,3fに着座された状態でロッド2の段差部2bとロッド2の先端螺条部2cに螺装のピストンナット6との間に挟持されて定着される。
【0027】
また、伸側のバルブ4は、図示するところでは、積層環状リーフバルブからなるが、この発明が意図するところからすれば、減衰作用をなす限りには、その他の任意の構成が選択されて良い。
【0028】
それゆえ、この発明の減衰バルブ構造にあっては、ピストン3がシリンダ1内を移動して、たとえば、一方室R1が狭くなるときには、一方室R1からの作動油が伸側のバルブ4の外周側端部を撓ませ外周側シート部3dとの間に出現する隙間を通過して他方室R2に流出することになり、その際の圧力損失で所定の減衰作用がなされることになる。
【0029】
ちなみに、他方室R2が狭くなるときには、他方室R2からの作動油が圧側のバルブ5の外周側端部を撓ませて、一方室R1に流出することになり、その際の圧力損失で所定の減衰作用がなされる。
【0030】
また、この発明の減衰バルブ構造にあっては、ピストンロッド2は、伸側のポート3aおよび伸側のバルブ4を迂回して一方室R1の他方室R2への連通を許容するバイパス路Lをこのピストンロッド2内に有している。
【0031】
そして、バイパス路Lには、弁体11と、弁体11を離着座させるシート部12と、弁体11をシート部12に着座させる附勢バネSと、弁体11の上流に設けられる制御バルブ14とを有し、弁体11は、附勢バネSの附勢力に抗してシート部12から離座してバイパス路Lを開放すると共に、制御バルブ14は、この制御バルブ14の上流側と下流側との差圧の変更を可能にしている。
【0032】
以下に、説明すると、先ず、バイパス路Lは、
図1に示すところでは、ピストンロッド2の軸部(符示せず)に径方向に形成されて外側端が一方室R1に開口する横孔L1と、横孔L1の内側端に基端が連通すると共にピストンロッド2の先端インロー部2aおよび先端螺条部2cの軸芯部に形成されて先端が他方室R2に開口する縦孔L2とで形成されている。
【0033】
弁体11は、
図1に示すところでは、縦孔L2に移動可能に設けられたニードル状体で形成されており、弁体11を離着座させるシート部12は、同じく縦孔L2に設けられた環状体で形成されている。
【0034】
弁体11は、
図1に示すところでは、尖端状に形成の先端部11aをシート部12の内側の孔12aに出入自在に臨ませており、先端部11aの外周がシート部12の内周縁部12bに当接することで、弁体11とシート部12との間を通じてバイパス路Lが連通することを阻止している。
【0035】
そして、弁体11は、符示しない本体部の外周にシール部材11bを有して縦孔L2の内周に摺接しており、シール部材11bが縦孔L2の軸線方向に整列される二つとされることで、弁体11のいわゆる上流側と下流側との連通を遮断すると共に、弁体11の縦孔L2内での摺動時の安定性を保障している。また、弁体11は、本体部の外周が縦孔L2の内周に摺接するから、本体部に孔11cを有し、孔11cによって、弁体11の上流側と下流側との連通を許容している。
【0036】
なお、二つのシール部材11bについては、これに代えて、図示しないが、縦孔L2の軸線方向に沿う単一の軸受部材とされても良く、この場合には、部品点数の削減を図れる点で有利となる。また、図示しないが、縦孔L2の内周にシール部材を設け、弁体11の外周にシール部材11bを設けることを省略しても良い。
【0037】
一方、シート部12は、内側の孔12aに出入自在に臨む弁体11の先端部11aの外周が内側縁部12bに当接されることで、孔12aを閉鎖し、先端部11aの外周が内側縁部12bから離れて両者間に環状流路(図示せず)を形成することで、バイパス路Lを開放するとしている。
【0038】
ところで、シート部12は、
図1に示すところでは、バイパス路Lに、すなわち、縦孔L2に設けられる制御バルブ14に保持されてなるとする。以下に、説明すると、制御バルブ14は、
図2に示すように、複数、すなわち、4個の通孔14a,14b,14c,14dを有する有底筒状に形成のロータリバルブとされ、シート部12は、制御バルブ14の
図1中で右端となる開口端を閉塞するように設けられている。
【0039】
このように、シート部12が制御バルブ14の開口端に設けられる場合には、シート部12を制御バルブ14と分離して設ける場合に比較して、バイパス路Lにおける縦孔L2の基本長さを小さくできる点で有利となる。
【0040】
戻って、制御バルブ14は、
図1に示すところでは、外周に一対となるシール部材14eを有して、縦孔L2内に回動可能に、つまり、縦孔L2の中心を回転中心にするようにして縦孔L2内に回動可能に設けられている。なお、制御バルブ14の外周と縦孔L2の内周との間でいわゆるシール性が保障されるのであれば、シール部材14eの配設が省略されても良い。
【0041】
そして、制御バルブ14は、図示するところでは、
図2に示すように、4個の異径となる通孔14a,14b,14c,14dを周方向に等間隔に有し、これらの通孔14a,14b,14c,14dのいずれかが選択されることで、制御バルブ14の上流側と下流側との差圧を設定すると共にその変更を可能にする。なお、
図2に示すところにあって、両方向矢印aは、制御バルブ14の回動方向を示す。
【0042】
戻って、制御バルブ14にあって、径が最大となる通孔14dが選択されるときには、制御バルブ14の上流側と下流側との差圧を最も小さくし、径が最小となる通孔14aが選択されるときには、制御バルブ14の上流側と下流側との差圧を最も大きくする。
【0043】
したがって、たとえば、一方室R1におけるピストン速度が同じ場合には、制御バルブ14において、最大径の通孔14dが選択されることで、弁体11に作用する圧力が比較すれば高くなり、最小径の通孔14aが選択されることで、弁体11に作用する圧力が比較すれば低くなる。
【0044】
また、制御バルブ14は、底部たる後端部(符示せず)にコントロールロッド15の
図1中で右端部となる先端部(符示せず)を連結させており、コントロールロッド15の回動で上記の4個の通孔14a,14b,14c,14dのいずれかを選択して横孔L1に対向させるとしている。なお、コントロールロッド15の回動状況によっては、いずれの通孔14a,14b,14c,14dも横孔L1に対向せずしてバイパス路Lを閉鎖することも可能になる。
【0045】
ちなみに、コントロールロッド15は、ピストンロッド2の軸芯部に開穿されてバイパス路Lにおける縦孔L2に連通する透孔2d内に回動自在に設けられ、図示しない後端には、入力手段たる、たとえば、外部からの人力や機械力の利用で回動もしくは進退するアジャスタが連結され、アジャスタの回動もしくは進退で、制御バルブ14を回動もしくは進退させる。
【0046】
また、上記したところでは、制御バルブ14は、回動可能かつ軸方向に移動不能としたため、4個の通孔14a,14b,14c,14dを周方向に等間隔に有しているが、この構成に限定されない。
【0047】
たとえば、制御バルブ14を回動不能かつ軸方向に移動可能とし、4個の通孔14a,14b,14c,14dを軸線方向に沿って等間隔にあるいは任意の間隔で有するとしても良い。
【0048】
また、当然、制御バルブ14を回動可能かつ軸方向に移動可能とし、4個の通孔14a,14b,14c,14dを軸線方向に沿って等間隔にあるいは任意の間隔で有するとしても良い。
【0049】
そして、たとえば、
図4および
図5を示して後述するように、制御バルブ14を回動可能かつ軸方向に移動可能とし、4個の通孔14a,14b,14c,14dを軸線方向に対して傾斜する方向に沿って等間隔にあるいは任意の間隔で有するとしても良い。
【0050】
また、
図1に示すところでは、制御バルブ14を軸方向に移動不能にしたため、通孔14a,14b,14c,14dの選択の際に弁体11を附勢する附勢バネSのバネ力は変更されない。しかし、上記の別例のように、制御バルブ14を軸方向に移動可能とする場合には、通孔14a,14b,14c,14dの選択の際に弁体11を附勢する附勢バネSのバネ力
が変更され
るので、たとえば、
図3中に示すポート特性Pを抑制する特性Cに変化を生じることになる。
【0051】
附勢バネSは、
図1に示すところでは、コイルスプリングからなり、
図1中で左端となる先端が弁体11の後端に係止され、
図1中で右端となる後端が支持部材13に支持されている。
【0052】
そして、附勢バネSは、先端が弁体11の後端に形成の嵌合部(符示せず)に嵌合し、後端が支持部材13の先端に形成の嵌合部(符示せず)に嵌合するとして、弁体11と支持部材13とに一体的に連結され、ガタを生じないように配慮されている。
【0053】
ところで、この発明の減衰バルブ構造にあって、附勢バネSは、ピストン3に積層された伸側のバルブ4が言わば完全な開放状態になる際の油圧で収縮作動する設定とされている。
【0054】
つまり、伸側のバルブ4の開放作動に続いて伸側のポート3aを作動油が通過することでポート特性の減衰力が発生されるときに、附勢バネSが収縮作動して弁体11の後退を許容し、それまで閉鎖状態にあったシート部12と弁体11との間の環状流路を開放状態にする、つまり、バイパス路Lを開放状態にする。
【0055】
もっとも、附勢バネSの附勢力の設定については、基本的には任意であり、特に、附勢バネS自体を別の附勢力を備えるものに交換することで選択されるとしても良い。
【0056】
支持部材13は、附勢バネSの後端を支持するもので、それゆえ、附勢バネSの後端を支持する限りには任意に形成されて良いが、図示するところでは、バイパス路Lの他方室R2側の開口を閉鎖するように、ピストンロッド2の先端螺条部2cの内側に設けられ、バイパス路Lの他方室R2への連通を許容する孔13aがバイパス路Lにおける抵抗を設定する流路とされる。
【0057】
ちなみに、支持部材13が有する孔13aは、バイパス路Lの下方室R2への連通を可能にすることからすれば、図示しないが、支持部材13への形成に代えて、たとえば、ピストンロッド2の先端螺条部2cに形成されるとしても良い。
【0058】
もっとも、孔13aが弁体11の背後側に設けられることからすると、孔13aは、バイパス路Lにおける抵抗を設定し得ることになり、バイパス路Lにおける抵抗を変更する場合には、ポート特性から抑制される特性になる際の傾きを変更できる。そして、この場合には、支持部材13がピストンロッド2の先端螺条部2cの内側に分離可能に螺合されていることで、孔13aの抵抗を変更することが容易になる。
【0059】
以上のように形成された減衰バルブ構造にあっては、たとえば、一方室R1が高圧側となるときに、バイパス路Lへの作動油の流入で弁体11が
図1中で右行するように後退して、弁体11とシート部12との間に環状流路を出現させ、したがって、バイパス路Lが開放され、作動油が他方室R2に流出する。つまり、バイパス路Lが開放されることで、減衰バルブ構造における流路面積が大きくなり、したがって、減衰係数が低下されて、高い減衰力の発生が抑制されることになる。
【0060】
このことを
図3に基づいて説明すると、ピストン速度が
図3中のX1点に至るまでの低速領域にあるときには、たとえば、伸側のバルブ4が有する絞りによるオリフィス特性Oの減衰力が発生される。
【0061】
ピストン速度が上昇して、
図3中のX1点からX2点に至るまでの中高速領域にあるときは、伸側のバルブ4の作動でバルブ特性Vの減衰力が発生されることになり、ピストン速度がさらに上昇して、
図3中のX2点以上になるときには、伸側のポート3aを作動油が通過することによるポート特性Pの減衰力が発生される。
【0062】
そして、ピストン速度がさらに速くなってもポート特性Pの減衰力が発生する場合には、
図3中に破線図で示すように、減衰力が高過ぎる状態になり、好ましくない状況になるので、バイパス路Lが開放状態になることで、ポート特性Pから抑制された特性Cの減衰力が発生される状況になる。
【0063】
ところで、この減衰バルブ構造にあっては、弁体11の上流に制御バルブ14を有してなり、制御バルブ14がこの制御バルブ14の上流側と下流側との差圧を設定すると共にその変更を可能にしている。
【0064】
すなわち、先ず、
図3に示すように、ピストン速度がX2点を過ぎて
図3中のX3点に至ると、一方室R1からのバイパス路Lへの油圧で、弁体11が附勢バネSの附勢力に抗して後退しシート部12との間の環状流路を出現させ、バイパス路Lを開放状態にして一方室R1の他方室R2への連通を許容し、ポート特性Pから抑制された特性Cに移行し、バイパス路Lを有しない場合に比較して、発生減衰力を低くすることが可能になる。
【0065】
そして、制御バルブ14が最大径の通孔14dを横孔L1に対向させて、一方室R1からの作動油がバイパス路Lに流入することを許容する場合には、制御バルブ14の上流側と下流側との差圧が小さくなることから、弁体11に作用する圧力が比較すれば高くなる。
【0066】
したがって、開放されたバイパス路Lにあっては、比較すれば多量の作動油が通過することになり、高速領域にあるピストン速度が言わば遅いときに抑制された特性Cが
図3中のC1点でいわゆる傾斜の緩い低い特性になる。
【0067】
それに対して、制御バルブ14における最小径の通孔14aを横孔L1に対向させる場合には、制御バルブ14の上流側と下流側との差圧が大きくなることから、弁体11に作用する圧力が低くなり、高速領域にあるピストン速度が比較すればX3点より速くならないと、弁体11がシート部12から離座してバイパス路Lを開放し得ないことになり、抑制された特性Cが
図3中のC4点でいわゆる傾斜の急な高い特性になる。
【0068】
このことから、制御バルブ14において通孔14aより径を大きくする通孔14bが選択される場合には、抑制された特性Cが
図3中のC2点で、C1点で抑制される特性に比較して傾斜が急な高い特性になり、制御バルブ14において通孔14bより径を大きくする通孔14cが選択される場合には、抑制された特性Cが
図3中のC3点で、C2点で抑制される特性に比較して傾斜が急な高い特性になる。つまり、ポート特性Pから抑制された特性Cになるのについて、制御バルブ14における差圧の変更で抑制される特性のタイミングおよび傾斜が変更されることになる。
【0069】
それゆえ、上記した減衰バルブ構造が油圧緩衝器に利用されるとき、部品交換を伴わずして油圧緩衝器におけるピストン速度が高速領域となる大入力時に過剰な減衰力の発生を抑制し得ると共に、抑制したいピストン速度領域を選択でき、油圧緩衝器を備えるサスペンションを装備する車両における乗り心地の最適化を可能にし得ることになる。
【0070】
一方、減衰バルブ構造にあっては、バイパス路Lがピストン3の軸芯部を挿通するピストンロッド2内に設けられ、バイパス路Lに弁体11,シート部12,附勢バネS,支持部材13および制御バルブ14が設けられるから、弁体11,環状体12,附勢バネS,支持部材13および制御バルブ14がピストン3に直列する場合、つまり、特許文献1に開示されているように、ピストン3の外たる他方室R2側に突出するように設けられる場合に比較して、減衰バルブ構造を長大化させないことが可能になり、減衰バルブ構造を利用する油圧緩衝器の車両におけるサスペンションへの装備性を低下させないことが可能になる。
【0071】
図4は、他の実施形態の減衰バルブ構造を備える油圧緩衝器を示し、以下には、この油圧緩衝器における減衰バルブ構造について説明するが、図示するところにあって、その構成が
図1に示すところと同様となるところについては、
図4中に同一の符号を付するのみとして、要する場合を除き、その説明を省略する。
【0072】
図4に示す減衰バルブ構造にあっては、
図1に示す制御バルブ14に代わる制御バルブ21を有すると共に、支持部材13が弁体11の後端に向かう突出部13bを有している。
【0073】
制御バルブ21は、バイパス路Lにおける縦孔L2にあって、
図4中で左右方向に移動可能とされており、これが移動されるとき、すなわち、制御バルブ21に設けられている複数の通孔21a,21b,21c,21dを横孔L1に対向させるべく移動されるときに、弁体11を移動させて附勢バネSの附勢力を積極的に変更するとしている。
【0074】
少し説明すると、制御バルブ21は、有底筒状に形成のロータリバルブとされ、また、
図4中で右端となる開口端に弁体11を離着座させるシート部12を有している。
【0075】
ちなみに、シート部12が制御バルブ21の開口端に設けられることで、シート部12を制御バルブ21と分離して設ける場合に比較して、バイパス路Lにおける縦孔L2の基本長さを小さくできる。
【0076】
戻って、制御バルブ21は、
図4に示すところでは、外周に複数となるシール部材21eを有して、縦孔L2内に回動可能にして摺動可能に設けられている。なお、制御バルブ21の外周と縦孔L2の内周との間でのいわゆるシール性が保障され、また、相隣する通孔間の連通が効果的に阻止されるのであれば、シール部材21eの配設が省略されても良い。
【0077】
そして、制御バルブ21は、図示するところでは、
図5に示すように、4個の異径となる通孔21a,21b,21c,21dを筒状体の軸線方向に傾斜する周方向に等間隔に有する。なお、
図5中にあって、両方向矢印bは、制御バルブ21の移動方向を示す。
【0078】
また、制御バルブ21は、通孔21a,21b,21c,21dを選択することで、この制御バルブ21の上流側と下流側との差圧を設定すると共に、その変更を可能にし、この差圧による油圧が弁体11に作用する。
【0079】
つまり、制御バルブ21が最大径の通孔21dを横孔L1に対向させて、一方室R1からの作動油がバイパス路Lに流入することを許容する場合には、制御バルブ21の上流側と下流側との差圧が小さくなるから、弁体11に作用する圧力が比較すれば高くなり、ピストン速度が高速領域での言わば遅い領域にあるときに、弁体11をシート部12から離座させてバイパス路Lを開放状態にするから、ポート特性Pから抑制された特性Cがいわゆる傾斜の緩い低い特性になる。
【0080】
それに対して、制御バルブ21における最小径の通孔21aを横孔L1に対向させる場合には、制御バルブ21の上流側と下流側との差圧が大きくなるから、弁体11に作用する圧力が比較すれば低くなり、ピストン速度が高速領域での言わば速い領域になるときに、弁体11をシート部12から離座させてバイパス路Lを開放状態にするから、ポート特性Pから抑制された特性Cがいわゆる傾斜の急な高い特性になる。
【0081】
戻って、制御バルブ21は、底部たる後端部(符示せず)にコントロールロッド15の
図4中で右端部となる先端部(符示せず)を連結させており、コントロールロッド15の回動しながらの軸線方向の移動で上記の4個の通孔21a,21b,21c,21dのいずれかを選択して横孔L1に対向させるとしている。
【0082】
ちなみに、コントロールロッド15は、ピストンロッド2の軸芯部に開穿されてバイパス路Lにおける縦孔L2に連通する透孔2d内に回動自在に設けられ、図示しない後端には、入力手段たる、たとえば、油圧緩衝器の外部からの人力や機械力で回動されて進退するアジャスタが連結され、アジャスタへの回動操作で制御バルブ21を回動させながら軸線方向に移動させる。
【0083】
なお、上記したところでは、制御バルブ21は、4個の通孔21a,21b,21c,21dを筒状体の軸線方向に傾斜方向に等間隔に有しているが、これに代えて、
図5中の破線図で示すように、筒状体の軸線方向に4個の通孔
21a,
21b,
21c,
21dを等間隔に有するとしても良い。つまり、通孔
21a,
21b,
21c,
21dを横孔L2に対向させる観点からすれば、制御バルブ
21が回動ではなく、軸線方向に移動可能とされても良い。
【0084】
次に、支持部材13は、基本的には、
図1に示す支持部材13と同様に、弁体11を附勢する附勢バネSの
図4中で右端となる後端を支持するが、その一方で、
図4に示すところにあっては、弁体11の後端に対向する先端に突出部13bを有してなるとする。そして、突出部13bが形成されることで、弁体11の後退量を規制することが可能になるとしている。
【0085】
すなわち、制御バルブ21が、
図4に示す状態、つまり、径を最小にする通孔21aが一方室R1に通じる横孔L1に対向する状態にあるときには、弁体11に作用する圧力が言わば低くなり、したがって、ピストン速度が
図7中のX3点より一層速くなるX4点になるときに弁体11が後退することになる。
【0086】
附勢バネSは、収縮が許容される範囲内で最大長さを有していてバネ力を比較すれば小さくし、しかも、弁体11が上記の突出部13bに後退を規制されないから、上記のX4点でポート特性Pから抑制された特性Cは、傾斜を緩くすることになる。
【0087】
一方、
図6に示すように、径を最大にする通孔21dが一方室R1に通じる横孔L1に対向する状態にあるときには、弁体11に作用する圧力が言わば高くなり、したがって、ピストン速度が
図8中のX3点にあるときに弁体11が後退することになる。
【0088】
附勢バネSは、収縮が許容される範囲内で言わば最収縮状態に近い状態にあってバネ力を比較すれば大きくし、しかも、弁体11が上記の突出部13bに後退を規制されるから、上記のX3点でポート特性Pから抑制された特性Cは、傾斜を急にすることになる。
【0089】
なお、
図7および
図8にあって、Oは、オリフィス特性を示し、Vは、バルブ特性を示し、Pは、ポート特性を示し、さらに、Cは、ポート特性Pが抑制された特性を示すことは、
図3に示すところと同様である。
【0090】
以上からすれば、
図4に示す実施形態にあっては、ピストン速度がポート特性Pの発生領域を超えて言わば極めて高速になる時点で抑制された特性Cの減衰力を発生させるか、または、ピストン速度がポート特性Pの発生領域を余り超えない時点で抑制された特性Cの減衰力を発生させるかを選択できることになる。
【0091】
図4に示す実施形態にあって、支持部材13が有する突出部13bについては、これが支持部材13に植設されることで形成されるとしても良く、この場合にはは、植設されるいわゆるピン状部品を用意することで足りる利点がある。
【0092】
また、
図4に示す実施形態にあって、支持部材13が突出部13bを有してなるとしたが、突出部13bの形成を省略しても良いことはもちろんであり、この場合には、弁体11の後退ストロークが制限されないから、
図8中に一点鎖線図で示すように、緩やかな傾斜の減衰力が発生されることになる。
【0093】
それゆえ、
図4に示す減衰バルブ構造が油圧緩衝器に利用されるとき、油圧緩衝器におけるピストン速度が高速領域にあるとき、つまり、大入力時の発生減衰力を適正にすることが可能になり、油圧緩衝器をサスペンションに装備する車両の仕様に適した乗り心地を得ることが可能になる。
【0094】
前記したところでは、減衰バルブ構造を構成する弁体11がニードル状体からなり、シート部12が環状体で形成されるとしたが、この発明が意図するところからすると、図示しないが、弁体11が環状体からなり、シート部12がニードル状体で形成されるとしても良い。
【0095】
そして、前記したところでは、隔壁体がシリンダ1内のピストン3であるとして説明したが、これに代えて、図示しないが、隔壁体がシリンダ1内のベースバルブを構成するバルブディスクであるとしても良い。