【実施例1】
【0014】
図1は、実施例1に係る分波器10の構成を示す図である。
図1に示すように、アンテナ端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ12が、アンテナ端子Antと受信端子Rxとの間に受信フィルタ14が、それぞれ接続されている。送信フィルタ12及び受信フィルタ14は、それぞれ共通端子であるアンテナ端子Antを共有している。
【0015】
送信フィルタ12は、アンテナ端子Antと送信端子Txとの間に直列に接続された直列共振器S11〜S13と、各直列共振器S11〜S13と接地との間に接続された並列共振器P11〜P13とを含む。直列共振器S11〜S13及び並列共振器P11〜P13は、圧電基板上に形成された弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)共振器から構成され、それぞれ対向する1組のIDT(Interdigital Transducer)20と、その両端に配置された2つの反射電極22とを含む。
図1では、直列共振器S12についてのみIDT等の符号を付し、その他の共振器においては符号の記載を省略する。
【0016】
直列共振器S11は、直列に接続された共振器S11a及びS11bから構成される。これは、1個の直列共振器11を直列に分割して2個の直列共振器(S11a、S11b)にしたものである。以下、このように分割された共振器を「分割共振器」と称する。直列共振器S13も、S11と同様に直列に分割された3つの共振器(S13a、S13b、S13c)から構成されている。並列共振器P11及びP13も、それぞれ直列に分割された分割共振器(P11a、P11b、P13a、P13b)となっている。並列共振器P13の他端は単独で接地され、並列共振器P11及びP12の他端は共通化された上で接地されている。
【0017】
受信フィルタ14は、アンテナ端子Antと受信端子Rxとの間に直列に接続された直列共振器S21及びDMS部50を含む。直列共振器S21は、直列に3分割された分割共振器(S21a、S22b、S22c)となっている。DMS部50は、1入力2出力の二重モードSAW(DMS:Double Mode SAW)フィルタであるDMS1及びDMS2を含む。また、受信フィルタ14は、アンテナ端子Antと接地との間に接続された並列共振器P21を含む。並列共振器P21は、直列に3分割された分割共振器(P21a、P22b、P22c)となっている。
【0018】
送信フィルタ12の場合と同様に、直列共振器S21、並列共振器P21、及びDMS部50は、圧電基板上に形成されたSAW共振器から構成され、それぞれ対向する1組のIDTと、その両端に配置された2つの反射電極とを含む。分割共振器P21a〜P21cは、弾性表面波の伝搬方向に分割されている。
【0019】
図2(a)は、受信信号と妨害波の関係を示すグラフである。アンテナ端子Antを介して受信フィルタ14に入力される妨害波の周波数をf1、送信フィルタ12から受信フィルタ14に入力される送信信号の周波数をf2、3次相互変調歪み発生周波数をIM3でそれぞれ示す。並列共振器P21の共振周波数frは、送信フィルタの通過周波数をf
TL〜f
TH、受信フィルタの通過周波数をf
RL〜f
RHとした場合に、fr=2×(f
TL〜f
TH)−(f
RL〜f
RH)となるようにすることが好ましい。例えば、バンド5(送信Tx帯域:824〜949MHz、受信Rx帯域:869〜894MHz)であれば、fr=2×(824〜849)−(869〜894)=779〜804MHzに並列共振器P21の共振周波数frを設定することが好ましい。
【0020】
図2(b)は、妨害周波数の具体例を示すグラフである。例えば、Band5のデュプレクサでは、Band13(送信Tx帯域:777〜787MHz、受信Rx帯域:746〜756MHz)の送信信号と、Band5の送信信号の相互変調信号の周波数が、Band5の受信帯域に重なる。このとき、分割共振器である並列共振器P21の共振周波数は、Band13の送信帯域の一部(779〜804MHz)とすることが好ましい。これにより、相互変調歪みを低減することができる。
【0021】
図3は、比較例に係る分波器の構成を示す図である。実施例1(
図1)と異なり、受信フィルタ14側に並列共振器P21が設けられていないが、その他の構成は
図1と同一である。以下、実施例1(
図1)と比較例(
図3)の比較について記述する。
【0022】
図4は、実施例1及び比較例に係る分波器のフィルタ特性を示すグラフであり、
図5は、受信フィルタ14における両者のIMD抑圧特性を示すグラフである。
図4に示すように、通過帯域(Tx、Rx)においては、両者のフィルタ特性(挿入損失及び帯域幅)にほとんど差はない。しかし、
図5に示すように、相互変調歪み(IMD)の周波数帯域においては、実施例1の方が比較例に比べて抑圧特性が良好となっている。
【0023】
図6は、実施例1及び比較例に係る分波器の広域フィルタ特性を示すグラフである。妨害周波数をf1、送信周波数をf2、相互変調歪み周波数をIM3でそれぞれグラフ中に示す。また、P21は並列共振器P21の共振特性を示す線である。
【0024】
実施例1に係る分波器によれば、受信フィルタ14においてアンテナ端子Antと接地との間に並列共振器P21を配置することにより、相互変調歪みを低減することができる。このとき、並列共振器P21を分割共振器(P21a〜P12c)とすることにより、1つの電極に妨害波が集中することを抑制することができるため、フィルタ特性を損なわずに相互変調歪みを低減することができる。
【0025】
実施例1では、分割共振器P21a〜P21cを構成するIDTのうち、隣り合うIDTの隣接部分に位置する電極指同士が、同じ方向を向いた構成となっている。以下、この点について詳細に説明する。
【0026】
図7は、実施例1及び変形例に係る分割共振器の構成を示す図である。
図7(a)は実施例1、
図7(b)は第1の変形例にそれぞれ対応するものである。
図7(a)及び
図7(b)に示すように、分割共振器P21a〜P21cは、それぞれ対向する1組のIDT30〜35と、その両端に配置された2つの反射電極40を含む。IDT31及び32、IDT33及び34は、互いに基部において接続され一体となっている。
【0027】
図7(a)に示すように、実施例1では、隣接するIDT(IDT30及び33、IDT32及び35)の隣接部分の電極指同士(ハッチで表示)が、同じ方向を向いている。これに対し、
図7(b)に示すように、第1の変形例では、隣接するIDT(IDT30及び32、IDT33及び35)の隣接部分の電極指同士(ハッチで表示)が、異なる(逆の)方向を向いている。
【0028】
図8は、実施例1及び第1の変形例に係る分波器のフィルタ特性を示すグラフである。
図8(a)は送信フィルタ12の通過帯域部分におけるフィルタ特性を、
図8(b)は受信フィルタ14の通過帯域部分におけるフィルタ特性を、それぞれ示す。
図8(a)及び
図8(b)に示すように、実施例1の方が、第1の変形例に比べ、送信フィルタ12及び受信フィルタ14の双方において、挿入損失が低減されている。従って、分割共振器P21a〜P21cにおいて、隣接するIDTの隣接部分に位置する電極指の向きは、同じとすることが好ましい。
【0029】
実施例1では、受信フィルタ14の並列共振器P21を3分割としたが、分割の数はこれ以外であってもよい。
【0030】
図9は、第2の変形例に係る分波器の構成を示す図である。実施例1(
図1)と異なり、並列共振器P21が2分割の共振器となっている。その他の構成は実施例1と同様である。本構成においても、実施例1と同様に、並列共振器P21を分割共振器とすることで、フィルタ特性を損なわずに相互変調歪みを低減することができる。なお、並列共振器P21の分割数は、4以上とすることも可能である。
【実施例3】
【0034】
実施例3は、受信フィルタの構成を様々に変更した例である。各図の説明においては、実施例1(
図1)との相違点を中心に説明する。
図11〜
図14に共通する構成として、実施例3に係る分波器の受信フィルタ14は、直列共振器S21を備えていない。
【0035】
図11は、実施例3に係る分波器の第1の構成を示す図である。
図1のDMS部50では、DMS1及びDMS2を直列に結合(縦結合)した構成を採用していたが、
図11では代わりにDMS3が単体で配置されている。DMS3は、弾性表面波の伝搬方向に配置された3つのIDTと、その両端に配置された反射電極とを含む。3つのIDTのうち、中央のIDTがアンテナ端子Antに接続され、その他のIDTは、受信端子Rxの平衡出力端子のそれぞれに接続されている。
【0036】
図12は、実施例3に係る分波器の第2の構成を示す図である。DMS部50の前段において、導波路が2つに分岐し、一方が直列接続されたDMS4及びDMS5に、他方が直列接続されたDMS6及びDMS7に、それぞれ接続されている。DMS5〜DMS7は、それぞれ3つのIDTが弾性表面波の伝搬方向に配置された構成を有する。DMS4及びDMS6の中央のIDTは、アンテナ端子Antに接続され、DMS5及びDMS7の中央のIDTは、受信端子Rxの平衡出力端子のそれぞれに接続されている。DMS4及びDMS5の両端のIDT同士、DMS6及びDMS7の両端のIDT同士は、互いに接続されている。
【0037】
図13は、実施例3に係る分波器の第3の構成を示す図である。DMS部50の前段において、導波路が2つに分岐し、一方がDMS8に、他方がDMS9に、それぞれ接続されている。DMS8及びDMS9は、共に3つのIDTが弾性表面波の伝搬方向に配置された構成を有する。DMS8及びDMS9の中央のIDTは、アンテナ端子Antに接続され、その他のIDTは、受信端子Rxの平衡出力端子のそれぞれに共通に接続されている。
【0038】
図14は、実施例3に係る分波器の第4の構成を示す図である。DMS部50は、4つのIDTが弾性表面波の伝搬方向に配置されたDMS10を含む。DMS部50の前段において、導波路が2つに分岐し、それぞれ4つのIDTのうち両端に位置するIDTと接続されている。DMS10における中央の2つのIDTは、受信端子Rxの平衡出力端子のそれぞれに接続されている。MS10における中央の2つのIDTは、互いに基部において接続され一体となっている。
【0039】
以上、実施例3(
図11〜
図14)に係る分波器においても、実施例1と同様に、アンテナ端子Antに最も近い並列共振器P21を分割共振器とすることで、フィルタ特性を損なわずに相互変調歪みを低減することができる。なお、実施例2のように、並列共振器P21を弾性表面波の伝搬方向と異なる方向に分割する構成としてもよい。また、並列共振器P21の分割数も、2以上であれば任意の数とすることができる。なお、実施例3に係る受信フィルタ14をラダー型で構成する場合には、DMSの出力を不平衡出力で構成してもよい。
【0040】
以上のように、実施例1〜3に係る分波器は、複数の共振器を含み、そのうち少なくとも1つの共振器は接地されている。そして、当該接地された共振器のうち、共通端子(アンテナ端子)に最も近い側に配置された共振器は、2分割以上に分割された分割共振器となっている。すなわち、上記の「最も近い側」とは、ラダー型フィルタの並列腕の中で最も共通端子に近い並列腕を意味し、並列腕が1つしかない場合には、当該並列腕を意味する。従って、接地された分割共振器よりも共通端子に近い側(分割共振器と共通端子の間の直列腕)に、他の接地されていない共振器(直列共振器)が配置された構成も、上述の分波器の構成に含まれるものである。ただし、妨害波の集中を避ける観点からは、上記の接地された分割共振器を、直列共振器を含むすべての共振器の中で、最もアンテナ端子に近い側に配置することが好ましい。
【0041】
実施例1〜3では、並列共振器P21を直列に分割する例について説明したが、並列共振器P21を並列に分割する構成としてもよい。すなわち、2つの並列共振器P21a及びP21bの一方がアンテナ端子Antに接続され、他方がそれぞれ単独で接地される構成としてもよい。この場合も、1つの電極に妨害波が集中することを抑制することができるため、フィルタ特性を損なわずに相互変調歪みを低減することができる。
【0042】
また、実施例1〜3では、共振器及びDMSを構成する弾性波デバイスとして、弾性表面波(SAW)を用いる弾性波デバイスを例に説明を行ったが、他にも圧電基板上にIDTが形成された形態の弾性波デバイスとして、ラブ波・弾性境界波等を用いる弾性波デバイスを採用することができる。なお、圧電基板には、例えばニオブ酸リチウム(LiNbO
3)基板またはタンタル酸リチウム(LiTaO
3)基板を用いることができる。また、IDT等の配線パターン(
図1、
図3、
図9〜
図14における黒塗り部分)を形成するための金属には、例えばアルミニウム(Al)、銅(Cu)を用いることができる。
【0043】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。