【文献】
KOGA NORITAKA,ARTERIOSCLEROSIS THROMBOSIS AND VASCULAR BIOLIGY,2004年11月,V24 N11,P2057-2062
【文献】
BLANK CHRISTIAN,CANCER RESEARCH,2004年 2月 1日,V64 N3,P1140-1145
【文献】
Biotechnology & Genetic Engineering Reviews,2002, Vol.19, pp.73-82
【文献】
Proceedings of the National Academy of Sciences of USA,2000, Vol.97, pp.722-727
【文献】
TOMLINSON I M,JOURNAL OF MOLECULAR BIOLOGY,英国,1992年,V227,P776-798
【文献】
COX J.P.L.,EUROPEAN JOURNAL OF IMMUNOLOGY,ドイツ,1994年,V24,P827-836
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ヒトプログラム死リガンド1(PD-L1)への結合に関して、以下を含む参照抗体またはその参照抗原結合部分と交差競合する、モノクローナル抗体、またはその抗原結合部分:
(a)SEQ ID NO:1に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:11に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域;
(b)SEQ ID NO:2に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:12に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域;
(c)SEQ ID NO:6に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:16に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域;
(d)SEQ ID NO:7に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:17に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域;
(e)SEQ ID NO:8に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:18に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域;
(f)SEQ ID NO:9に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:19に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域;または
(g)SEQ ID NO:10に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:20に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域。
参照抗体またはその参照抗原結合部分が、SEQ ID NO:2に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域とSEQ ID NO:12に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域とを含む、請求項1記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
腫瘍細胞が、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭部または頸部の癌、皮膚または眼内の悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、ファロピウス管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、腟癌、外陰癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病を含む慢性または急性の白血病、幼児期の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、腎臓または尿管の癌、腎う癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊椎腫瘍、脳幹神経膠腫、脳下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、アスベストによって誘発されるものを含む環境的に誘発される癌、および前記癌の組合せからなるリストより選択される癌のものである、請求項19記載の使用。
【発明を実施するための形態】
【0055】
詳細な説明
1つの局面において、本開示は、PD-L1に特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体、特にヒトモノクローナル抗体に関する。特定の態様において、本発明の抗体は、PD-L1に結合する高親和性、混合リンパ球反応において、T細胞増殖、IFN-γおよび/もしくはIL-2分泌を増加させる能力、PD-1受容体へのPD-L1の結合を阻害する能力、抗体応答を刺激する能力、ならびに/または調節性T細胞の抑制機能を逆転させる能力など1種または複数種の望ましい機能特性を示す。さらに、またはあるいは、本発明の抗体は、特定の重鎖生殖系列配列および軽鎖生殖系列配列に由来し、かつ/または、特定のアミノ酸配列を含むCDR領域のような特定の構造的特徴を含む。
【0056】
本開示は、例えば、単離された抗体、そのような抗体を作製する方法、そのような抗体を含む免疫複合体および二重特異性分子、ならびに本発明の抗体、免疫複合体、または二重特異性分子を含む薬学的組成物を提供する。
【0057】
別の局面において、本開示は、抗PD-L1抗体を用いて対象の腫瘍細胞の増殖を阻害する方法に関する。本発明はまた、免疫応答を変更するため、ならびに癌もしくは感染症などの疾患を治療するため、または防御的自己免疫応答を刺激するため、もしくは(例えば、対象となる抗原と共に抗PD-L1を同時投与することにより)抗原特異的免疫応答を刺激するために、抗体を使用する方法にも関する。
【0058】
本開示をより容易に理解できるようにするために、いくつかの用語を最初に定義する。その他の定義は、詳細な説明を通して説明する。
【0059】
「免疫応答」という用語は、侵入病原体、病原体に感染した細胞もしくは組織、癌細胞、または自己免疫もしくは病理学的炎症の場合には、正常なヒト細胞もしくは組織を、選択的に、損傷するか、破壊するか、またはヒト身体から除去する、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、および前述の細胞または肝臓によって産生される可溶性の高分子(抗体、サイトカイン、および補体を含む)の作用を意味する。
【0060】
「シグナルトランスダクション経路」とは、細胞の一部分から細胞の別の部分へのシグナルの伝達においてある役割を果たす様々なシグナルトランスダクション分子間の生化学的関係を意味する。本明細書において使用される場合、「細胞表面受容体」という語句は、例えば、シグナルを受け取ること、およびそのようなシグナルを細胞の形質膜を通過して伝達することができる分子および分子の複合体を含む。本発明の「細胞表面受容体」の例は、PD-L1受容体である。
【0061】
本明細書において言及される「抗体」という用語は、全抗体および任意の抗原結合断片(すなわち「抗原結合部分」)またはそれらの単鎖を含む。「抗体」とは、ジスルフィド結合によって相互に連結されている少なくとも2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖を含む糖タンパク質、またはその抗原結合部分を意味する。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてV
Hと略される)および重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、3種のドメイン、すなわちC
H1、C
H2、およびC
H3から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてV
Lと略される)および軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、すなわちC
Lから構成される。V
H領域およびV
L領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域と共に散在している、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分することができる。各V
HおよびV
Lは、3つのCDRおよび4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序で配列されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的な補体系の第1成分(Clq)を含む、宿主細胞または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0062】
抗体の「抗原結合部分」(または単に「抗体部分」)という用語は、本明細書において使用される場合、抗原(例えばPD-L1)に特異的に結合する能力を保持している、抗体の1つまたは複数の断片を意味する。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって果たされ得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例には、(i)Fab断片、すなわちV
Lドメイン、V
Hドメイン、C
Lドメイン、およびC
H1ドメインからなる単価の断片;(ii)F(ab')
2断片、すなわちヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片;(iii)V
HドメインおよびC
H1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の短腕のV
LドメインおよびV
HドメインからなるFv断片;(v)V
HドメインからなるdAb断片(Ward et al., (1989) Nature 341:544-546);ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるV
LおよびV
Hは別々の遺伝子によってコードされているが、V
L領域およびV
H領域が対になって単価の分子(単鎖Fv(scFv)として公知;例えば、Bird et al. (1988) Science 242:423-426およびHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照されたい)を形成している単一のタンパク質鎖としてそれらを作製するのを可能にする合成リンカーにより、組換え法を用いて、これらを連結することができる。このような単鎖抗体もまた、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されることが意図される。これらの抗体断片は、当業者に公知である従来の技術を用いて得られ、かつこれらの断片は、完全な抗体と同じ様式で、有用性についてスクリーニングされる。
【0063】
「単離された抗体」とは、本明細書において使用される場合、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を意味すると意図される(例えば、PD-L1に特異的に結合する単離された抗体は、PD-L1以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、PD-L1に特異的に結合する単離された抗体は、他の種に由来するPD-L1分子のような他の抗原に対する交差反応性を有してもよい。さらに、単離された抗体は、他の細胞材料および/または化学物質を実質的に含まなくてよい。
【0064】
「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、本明細書において使用される場合、単一の分子組成の抗体分子の調製物を意味する。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示す。
【0065】
「ヒト抗体,」という用語は、本明細書において使用される場合、フレームワーク領域およびCDR領域の両方がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含むと意図される。さらに、抗体が定常領域を含む場合は、定常領域もまた、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的な変異によって、またはインビボでの体細胞変異によって導入される変異)を含んでよい。しかしながら、「ヒト抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、マウスのような別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上にグラフティングされている抗体を含むとは意図されない。
【0066】
「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、フレームワーク領域およびCDR領域の両方がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する、単一の結合特異性を示す抗体を意味する。1つの態様において、ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合された、ヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物、例えばトランスジェニックマウスから得られるB細胞を含むハイブリドーマによって産生される。
【0067】
「組換えヒト抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックであるか、もしくは染色体導入された動物(例えばマウス)、またはそれから調製されるハイブリドーマ(下記に詳述する)から単離された抗体、(b)ヒト抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から、例えばトランスフェクトーマ(transfectoma)から単離された抗体、(c)組換えヒト抗体コンビナトリアルライブラリーから単離された抗体、および(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列への継ぎ合わせを含む他の任意の手段によって調製、発現、作製、または単離された抗体など、組換え手段によって調製、発現、作製、または単離されたすべてのヒト抗体を含む。このような組換えヒト抗体は、フレームワーク領域およびCDR領域がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する。しかしながら、特定の態様において、このような組換えヒト抗体は、インビトロの変異誘発(または、ヒトIg配列に関してトランスジェニックな動物が使用される場合は、インビボの体細胞変異誘発)に供されてよく、したがって、組換え抗体のV
H領域およびV
L領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列のV
H配列およびV
L配列に由来し、かつ関係しているが、インビボのヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然には存在し得ない配列である。
【0068】
本明細書において使用される場合、「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子にコードされる抗体クラス(例えば、IgMまたはIgG1)を意味する。
【0069】
「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」という語句は、「抗原に特異的に結合する抗体」という用語と同義的に本明細書において使用される。
【0070】
「ヒト抗体誘導体」という用語は、ヒト抗体の任意の改変型、例えば、その抗体と別の作用物質または抗体との結合体を意味する。
【0071】
「ヒト化抗体」という用語は、マウスのような別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上にグラフティングされている抗体を意味すると意図される。さらなるフレームワーク領域の改変を、ヒトフレームワーク配列内に起こしてもよい。
【0072】
「キメラ抗体」という用語は、可変領域配列がマウス抗体に由来し、かつ定常領域配列がヒト抗体に由来する抗体のような、可変領域配列がある種に由来し、かつ定常領域配列が別の種に由来する抗体を意味すると意図される。
【0073】
本明細書において使用される場合、「ヒトPD-L1に特異的に結合する」抗体は、1×10
-7Mもしくはそれ以下、より好ましくは5×10
-8Mもしくはそれ以下、より好ましくは1×10
-8Mもしくはそれ以下、より好ましくは5×10
-9Mもしくはそれ以下、さらにより好ましくは1×10
-8M〜1×10
-10Mの間もしくはそれ以下のK
DでヒトPD-L1に結合する抗体を意味すると意図される。
【0074】
「K
assoc」または「K
a」という用語は、本明細書において使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の結合速度を意味すると意図されるのに対し、「K
dis」または「K
d」という用語は、本明細書において使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を意味すると意図される。「K
D」という用語は、本明細書において使用される場合、K
aに対するK
dの比率(すなわちK
d/K
a)から得られ、モル濃度(M)として表される、解離定数を意味すると意図される。抗体のK
D値は、当技術分野において十分に確立された方法を用いて決定することができる。抗体のK
Dを決定するための好ましい方法は、表面プラズモン共鳴を用いること、好ましくはBiacore(登録商標)システムのようなバイオセンサーシステムを用いることによる。
【0075】
本明細書において使用される場合、IgG抗体に対する「高親和性」という用語は、標的抗原に対するK
Dが10
-8Mもしくはそれ以下、より好ましくは10
-9Mもしくはそれ以下、およびさらにより好ましくは10
-10Mもしくはそれ以下である抗体を意味する。しかしながら、「高親和性」結合は、他の抗体アイソタイプに対しては異なり得る。例えば、IgMアイソタイプに対する「高親和性」結合とは、K
Dが10
-7Mもしくはそれ以下、より好ましくは10
-8Mもしくはそれ以下、さらにより好ましくは10
-9Mもしくはそれ以下である抗体を意味する。
【0076】
本明細書において使用される場合、「対象」という用語は、任意のヒトまたは非ヒト動物を含む。「非ヒト動物」という用語は、すべての脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、雌ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などの、哺乳動物および非哺乳動物を含む。
【0077】
本開示の様々な局面を、以下の小節においてより詳細に説明する。
【0078】
抗PD-L1抗体
本発明の抗体は、抗体の特定の機能的特徴または特性を特徴とする。例えば、これらの抗体は、ヒトPD-L1に特異的に結合する。好ましくは、本発明の抗体は、高親和性で、例えば1×10
-7Mもしくはそれ以下のK
DでPD-L1に結合する。本発明の抗PD-L1抗体は、好ましくは、以下の特徴のうち1種または複数種を提示する:
(a)1×10
-7Mもしくはそれ以下のK
DでヒトPD-L1に結合する;
(b)混合リンパ球反応(MLR)アッセイ法においてT細胞増殖を増加させる;
(c)MLRアッセイ法においてインターフェロン-γ産生を増加させる;
(d)MLRアッセイ法においてIL-2分泌を増加させる;
(e)抗体応答を刺激する;ならびに/または、
(f)T細胞エフェクター細胞および/もしくは樹状細胞に対する調節性T細胞の作用を逆転させる。
【0079】
好ましくは、抗体は、5×10
-8Mもしくはそれ以下のK
DでヒトPD-L1に結合するか、1×10
-8Mもしくはそれ以下のK
DでヒトPD-L1に結合するか、5×10
-9Mもしくはそれ以下のK
DでヒトPD-L1に結合するか、4×10
-9Mもしくはそれ以下のK
DでヒトPD-L1に結合するか、2×10
-9Mもしくはそれ以下のK
DでヒトPD-L1に結合するか、または1×10
-9M〜1×10
-10Mの間もしくはそれ以下のK
DでヒトPD-L1に結合する。
【0080】
例えば、ELISA、ウェスタンブロット、およびRIAを含む、PD-L1に対する抗体の結合能力を評価するための標準的アッセイ法は、当技術分野において公知である。適切なアッセイ法は、実施例において詳細に説明される。抗体の結合動態(例えば、結合親和性)もまた、Biacore(登録商標)解析のような、当技術分野において公知の標準的アッセイ法によって評価することができる。
【0081】
モノクローナル抗体3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、および13G4
本発明の好ましい抗体は、実施例1および実施例2で説明されるように単離され、かつ構造的に特徴付けられる、ヒトモノクローナル抗体3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、および13G4である。3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、および13G4のV
Hアミノ酸配列は、それぞれ、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、およびSEQ ID NO:10において示される。3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、および13G4のV
Lアミノ酸配列は、それぞれ、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19、およびSEQ ID NO:20において示される。
【0082】
これらの各抗体はPD-L1に結合できるため、V
H配列およびV
L配列を「混合およびマッチさせて」、本発明の他の抗PD-L1結合分子を作製することができる。このような「混合およびマッチされた」抗体のPD-L1結合は、前述および実施例で説明する結合アッセイ法(例えばELISA)を用いて試験することができる。好ましくは、V
H鎖およびV
L鎖が混合およびマッチされる場合、個々のV
H/V
Lペアに由来するV
H配列は、構造的に類似したV
H配列で置換される。同様に、好ましくは、個々のV
H/V
Lペアに由来するV
L配列は、構造的に類似したV
L配列で置換される。
【0083】
したがって、1つの局面において、本発明は、以下を含む、PD-L1、好ましくはヒトPD-L1に特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部分を提供する:
(a)SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、およびSEQ ID NO:10からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに、
(b)SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19、およびSEQ ID NO:20からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。
【0084】
好ましい重鎖および軽鎖の組合せには、以下のものが含まれる:
(a)SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b)SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(a)SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b)SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(a)SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b)SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(a)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b)SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(a)SEQ ID NO:5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b)SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(a)SEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b)SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(a)SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b)SEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(a)SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b)SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(a)SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b)SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(a)SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b)SEQ ID NO:20のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。
【0085】
別の局面において、本発明は、3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、および13G4の重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3、またはそれらの組合せを含む抗体を提供する。3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、および13G4のV
HCDR1のアミノ酸配列は、それぞれ、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29、およびSEQ ID NO:30において示される。3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、および13G4のV
HCDR2のアミノ酸配列は、それぞれ、SEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:35、SEQ ID NO:36、SEQ ID NO:37、SEQ ID NO:38、SEQ ID NO:39、およびSEQ ID NO:40において示される。3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、および13G4のV
HCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ、SEQ ID NO:41、SEQ ID NO:42、SEQ ID NO:43、SEQ ID NO:44、SEQ ID NO:45、SEQ ID NO:46、SEQ ID NO:47、SEQ ID NO:48、SEQ ID NO:49、およびSEQ ID NO:50において示される。3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、および13G4のV
kCDR1のアミノ酸配列は、それぞれ、SEQ ID NO:51、SEQ ID NO:52、SEQ ID NO:53、SEQ ID NO:54、SEQ ID NO:55、SEQ ID NO:56、SEQ ID NO:57、SEQ ID NO:58、SEQ ID NO:59、およびSEQ ID NO:60において示される。3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、および13G4のV
kCDR2のアミノ酸配列は、それぞれ、SEQ ID NO:61、SEQ ID NO:62、SEQ ID NO:63、SEQ ID NO:64、SEQ ID NO:65、SEQ ID NO:66、SEQ ID NO:67、SEQ ID NO:68、SEQ ID NO:69、およびSEQ ID NO:70において示される。3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、および13G4のV
kCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ、SEQ ID NO:71、SEQ ID NO:72、SEQ ID NO:73、SEQ ID NO:74、SEQ ID NO:75、SEQ ID NO:76、SEQ ID NO:77、SEQ ID NO:78、SEQ ID NO:79、およびSEQ ID NO:80において示される。CDR領域には、Kabatシステム(Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242)を用いて、線を引いている。
【0086】
これらの各抗体はPD-L1に結合でき、かつ、抗原結合特異性は、CDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域によって主として提供されるため、V
HのCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列ならびにV
kのCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を「混合およびマッチさせて」(すなわち、異なる抗体に由来するCDRを混合およびマッチさせることができる。ただし、各抗体は、V
HのCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびにV
kのCDR1、CDR2、およびCDR3を含んでいなければならない)、本発明の他の抗PD-L1結合分子を作製することができる。このような「混合およびマッチさせた」抗体のPD-L1結合は、前述および実施例で説明する結合アッセイ法(例えば、ELISA、Biacore解析)を用いて試験することができる。好ましくは、V
HCDR配列が混合およびマッチされる場合、個々のV
H配列に由来するCDR1配列、CDR2配列、および/またはCDR3配列は、構造的に類似したCDR配列で置換される。同様に、V
kCDR配列が混合およびマッチされる場合、個々のV
k配列に由来するCDR1配列、CDR2配列、および/またはCDR3配列は、好ましくは、構造的に類似したCDR配列で置換される。1つまたは複数のV
HCDR領域配列および/またはV
LCDR領域配列を、モノクローナル抗体である抗体3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、および13G4に関して本明細書において開示するCDR配列に由来する構造的に類似した配列で置換することにより、新規なV
H配列および/またはV
L配列を作製できることは、当業者には容易に明らかになると考えられる。
【0087】
したがって、別の局面において、本発明は、以下を含む、PD-L1、好ましくはヒトPD-L1に特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部分を提供する:
(a)SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29、およびSEQ ID NO:30からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域のCDR1;
(b)SEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:35、SEQ ID NO:36、SEQ ID NO:37、SEQ ID NO:38、SEQ ID NO:39、およびSEQ ID NO:40からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域のCDR2;
(c)SEQ ID NO:41、SEQ ID NO:42、SEQ ID NO:43、SEQ ID NO:44、SEQ ID NO:45、SEQ ID NO:46、SEQ ID NO:47、SEQ ID NO:48、SEQ ID NO:49、およびSEQ ID NO:50からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域のCDR3;
(d)SEQ ID NO:51、SEQ ID NO:52、SEQ ID NO:53、SEQ ID NO:54、SEQ ID NO:55、SEQ ID NO:56、SEQ ID NO:57、SEQ ID NO:58、SEQ ID NO:59、およびSEQ ID NO:60からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域のCDR1;
(e)SEQ ID NO:61、SEQ ID NO:62、SEQ ID NO:63、SEQ ID NO:64、SEQ ID NO:65、SEQ ID NO:66、SEQ ID NO:67、SEQ ID NO:68、SEQ ID NO:69、およびSEQ ID NO:70からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域のCDR2;ならびに、
(f)SEQ ID NO:71、SEQ ID NO:72、SEQ ID NO:73、SEQ ID NO:74、SEQ ID NO:75、SEQ ID NO:76、SEQ ID NO:77、SEQ ID NO:78、SEQ ID NO:79、およびSEQ ID NO:80からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域のCDR3。
【0088】
好ましい態様において、抗体は、以下を含む:
(a)SEQ ID NO:21を含む重鎖可変領域CDR1;
(b)SEQ ID NO:31を含む重鎖可変領域CDR2;
(c)SEQ ID NO:41を含む重鎖可変領域CDR3;
(d)SEQ ID NO:51を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e)SEQ ID NO:61を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f)SEQ ID NO:71を含む軽鎖可変領域CDR3。
【0089】
別の好ましい態様において、抗体は、以下を含む:
(a)SEQ ID NO:22を含む重鎖可変領域CDR1;
(b)SEQ ID NO:32を含む重鎖可変領域CDR2;
(c)SEQ ID NO:42を含む重鎖可変領域CDR3;
(d)SEQ ID NO:52を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e)SEQ ID NO:62を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f)SEQ ID NO:72を含む軽鎖可変領域CDR3。
【0090】
別の好ましい態様において、抗体は、以下を含む:
(a)SEQ ID NO:23を含む重鎖可変領域CDR1;
(b)SEQ ID NO:33を含む重鎖可変領域CDR2;
(c)SEQ ID NO:43を含む重鎖可変領域CDR3;
(d)SEQ ID NO:53を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e)SEQ ID NO:63を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f)SEQ ID NO:73を含む軽鎖可変領域CDR3。
【0091】
別の好ましい態様において、抗体は、以下を含む:
(a)SEQ ID NO:24を含む重鎖可変領域CDR1;
(b)SEQ ID NO:34を含む重鎖可変領域CDR2;
(c)SEQ ID NO:44を含む重鎖可変領域CDR3;
(d)SEQ ID NO:54を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e)SEQ ID NO:64を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f)SEQ ID NO:74を含む軽鎖可変領域CDR3。
【0092】
別の好ましい態様において、抗体は、以下を含む:
(a)SEQ ID NO:25を含む重鎖可変領域CDR1;
(b)SEQ ID NO:35を含む重鎖可変領域CDR2;
(c)SEQ ID NO:45を含む重鎖可変領域CDR3;
(d)SEQ ID NO:55を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e)SEQ ID NO:65を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f)SEQ ID NO:75を含む軽鎖可変領域CDR3。
【0093】
別の好ましい態様において、抗体は、以下を含む:
(a)SEQ ID NO:26を含む重鎖可変領域CDR1;
(b)SEQ ID NO:36を含む重鎖可変領域CDR2;
(c)SEQ ID NO:46を含む重鎖可変領域CDR3;
(d)SEQ ID NO:56を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e)SEQ ID NO:66を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f)SEQ ID NO:76を含む軽鎖可変領域CDR3。
【0094】
別の好ましい態様において、抗体は、以下を含む:
(a)SEQ ID NO:27を含む重鎖可変領域CDR1;
(b)SEQ ID NO:37を含む重鎖可変領域CDR2;
(c)SEQ ID NO:47を含む重鎖可変領域CDR3;
(d)SEQ ID NO:57を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e)SEQ ID NO:67を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f)SEQ ID NO:77を含む軽鎖可変領域CDR3。
【0095】
別の好ましい態様において、抗体は、以下を含む:
(a)SEQ ID NO:28を含む重鎖可変領域CDR1;
(b)SEQ ID NO:38を含む重鎖可変領域CDR2;
(c)SEQ ID NO:48を含む重鎖可変領域CDR3;
(d)SEQ ID NO:58を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e)SEQ ID NO:68を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f)SEQ ID NO:78を含む軽鎖可変領域CDR3。
【0096】
別の好ましい態様において、抗体は、以下を含む:
(a)SEQ ID NO:29を含む重鎖可変領域CDR1;
(b)SEQ ID NO:39を含む重鎖可変領域CDR2;
(c)SEQ ID NO:49を含む重鎖可変領域CDR3;
(d)SEQ ID NO:59を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e)SEQ ID NO:69を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f)SEQ ID NO:79を含む軽鎖可変領域CDR3。
【0097】
別の好ましい態様において、抗体は、以下を含む:
(a)SEQ ID NO:30を含む重鎖可変領域CDR1;
(b)SEQ ID NO:40を含む重鎖可変領域CDR2;
(c)SEQ ID NO:50を含む重鎖可変領域CDR3;
(d)SEQ ID NO:60を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e)SEQ ID NO:70を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f)SEQ ID NO:80を含む軽鎖可変領域CDR3。
【0098】
CDR3ドメインは、CDR1ドメインおよび/またはCDR2ドメインから独立して、同系の抗原に対する抗体の結合特異性を単独で決定できること、ならびに共通のCDR3配列に基づく同じ結合特異性を有する複数の抗体を予想されるように作製できることは、当技術分野において周知である。例えば、Klimka et al., British J. of Cancer 83(2):252-260(2000)(マウスの抗CD30抗体Ki-4の重鎖可変ドメインCDR3のみを用いた、ヒト化抗CD30抗体の作製を記載している); Beiboer et al., J. Mol. Biol. 296:833-849(2000)(マウスMOC-31抗EGP-2親抗体の重鎖CDR3配列のみを用いた、上皮糖タンパク質-2(EGP-2)組換え抗体を記載している);Rader et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:8910-8915(1998)(マウスの抗インテグリンα
vβ
3抗体LM609の重鎖および軽鎖の可変CDR3ドメインを用いたヒト化抗インテグリンα
vβ
3抗体のパネルであって、各抗体メンバーが、CDR3ドメインの外側であり、かつマウス親抗体と同じくらい高いか、またはそれより高い親和性で、マウス親抗体と同じエピトープに結合することができる、独特な配列を含む、パネルを記載している);Barbas et al., J. Am. Chem. Soc. 116:2161-2162(1994)(CDR3ドメインが、最も顕著に抗原結合に寄与することを開示している);Barbas et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92:2529-2533(1995)(ヒト胎盤DNAに対する3種のFab(SI-1、SI-40、およびSI-32)の重鎖CDR3配列を、抗破傷風トキソイドFabの重鎖にグラフティングし、それにより、既存の重鎖CDR3を置換することを記載し、かつ、CDR3ドメインが単独で結合特異性を与えたことを実証している);ならびにDitzel et al., J. Immunol. 157:739-749(1996)(多特異性の親Fab LNA3の重鎖CDR3のみを、単特異性のIgG破傷風トキソイド結合Fab p313抗体の重鎖に導入することは、親Fabの結合特異性を保持するのに十分であった、グラフティング研究)を記載している)。これらの各参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0099】
したがって、特定の局面において、本発明は、マウス抗体またはラット抗体などの非ヒト抗体に由来する1つまたは複数の重鎖CDR3ドメインおよび/または軽鎖CDR3ドメインを含み、PD-L1に特異的に結合することができるモノクローナル抗体を提供する。いくつかの態様において、非ヒト抗体に由来する1つまたは複数の重鎖CDR3ドメインおよび/または軽鎖CDR3ドメインを含む、このような本発明の抗体は、対応する非ヒト親抗体と、(a)結合の際に競合することができるか、(b)機能的特徴を保持しているか、(c)同じエピトープに結合するか、かつ/または、(d)同様の結合親和性を有する。
【0100】
他の局面において、本発明は、例えば、非ヒト動物から得られるヒト抗体のような第1のヒト抗体に由来する1つまたは複数の重鎖CDR3ドメインおよび/または軽鎖CDR3ドメインを含むモノクローナル抗体であって、第1のヒト抗体が、PD-L1に特異的に結合することができ、かつ第1のヒト抗体に由来するCDR3ドメインが、PD-L1に対する結合特異性を欠いているヒト抗体中のCDR3ドメインを置換して、PD-L1に特異的に結合することができる第2のヒト抗体を生成する、モノクローナル抗体を提供する。いくつかの態様において、第1のヒト抗体に由来する1つまたは複数の重鎖CDR3ドメインおよび/または軽鎖CDR3ドメインを含む、本開示の抗体は、対応する第1のヒト親抗体と、(a)結合の際に競合することができるか、(b)機能的特徴を保持しているか、(c)同じエピトープに結合するか、かつ/または、(d)同様の結合親和性を有する。
【0101】
特定の生殖系列配列を有する抗体
特定の態様において、本発明の抗体は、特定の生殖系列重鎖免疫グロブリン遺伝子に由来する重鎖可変領域および/または特定の生殖系列軽鎖免疫グロブリン遺伝子に由来する軽鎖可変領域を含む。
【0102】
例えば、好ましい態様において、本発明は、ヒトV
H1-18遺伝子の産物であるか、またはヒトV
H1-18遺伝子に由来する重鎖可変領域を含む、PD-L1に特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部分を提供する。別の好ましい態様において、本発明は、ヒトV
H1-69遺伝子の産物であるか、またはヒトV
H1-69遺伝子に由来する重鎖可変領域を含む、PD-L1に特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部分を提供する。別の好ましい態様において、本発明は、ヒトV
H1-3遺伝子の産物であるか、またはヒトV
H1-3遺伝子に由来する重鎖可変領域を含む、PD-L1に特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部分を提供する。別の好ましい態様において、本発明は、ヒトV
H3-9遺伝子の産物であるか、またはヒトV
H3-9遺伝子に由来する重鎖可変領域を含む、PD-L1に特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部分を提供する。さらに別の好ましい態様において、本発明は、ヒトV
KL6遺伝子の産物であるか、またはヒトV
KL6遺伝子に由来する軽鎖可変領域を含む、PD-L1に特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部分を提供する。さらに別の好ましい態様において、本発明は、ヒトV
KL15遺伝子の産物であるか、またはヒトV
KL15遺伝子に由来する軽鎖可変領域を含む、PD-L1に特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部分を提供する。さらに別の好ましい態様において、本発明は、ヒトV
KA27遺伝子の産物であるか、またはヒトV
KA27遺伝子に由来する軽鎖可変領域を含む、PD-L1に特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部分を提供する。さらに別の好ましい態様において、本発明は、ヒトV
KL18遺伝子の産物であるか、またはヒトV
KL18遺伝子に由来する軽鎖可変領域を含む、PD-L1に特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部分を提供する。さらに別の好ましい態様において、本発明は、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供し、この抗体は、
(a)(SEQ ID NO:101、SEQ ID NO:102、SEQ ID NO:103、およびSEQ ID NO:104において示されるアミノ酸配列をそれぞれコードする)ヒトV
H1-18遺伝子、ヒトV
H1-69遺伝子、ヒトV
H1-3遺伝子、またはヒトV
H3-9遺伝子の産物であるか、またはそれらに由来する重鎖可変領域を含み、
(b)(SEQ ID NO:105、SEQ ID NO:106、SEQ ID NO:107、およびSEQ ID NO:108において示されるアミノ酸配列をそれぞれコードする)ヒトV
KL6遺伝子、ヒトV
KL15遺伝子、ヒトV
KA27遺伝子、またはヒトV
KL18遺伝子の産物であるか、またはそれらに由来する軽鎖可変領域を含み、かつ、
(c)PD-L1、好ましくは、ヒトPD-L1に特異的に結合する。
【0103】
V
H1-18およびV
KL6のV
HおよびV
Kをそれぞれ有する抗体の例は、3G10である。V
H1-69およびV
KL6のV
HおよびV
Kをそれぞれ有する抗体の例は、12A4、1B12、7H1、および12B7である。V
H1-3およびV
KL15のV
HおよびV
Kをそれぞれ有する抗体の例は、10A5である。V
H1-69およびV
KA27のV
HおよびV
Kをそれぞれ有する抗体の例は、5F8、11E6、および11E6aである。V
H3-9およびV
KL15のV
HおよびV
Kをそれぞれ有する抗体の例は、10H10である。V
H1-3およびV
KL15のV
HおよびV
Kをそれぞれ有する抗体の例は、10A5である。V
H3-9およびV
KL18のV
HおよびV
Kをそれぞれ有する抗体の例は、13G4である。
【0104】
本明細書において使用される場合、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子を使用する系から抗体の可変領域が得られる場合、ヒト抗体は、特定の生殖系列配列の「産物」であるか、またはそれに「由来する」、重鎖可変領域または軽鎖可変領域を含む。このような系は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスを関心対象の抗原で免疫化する段階、またはファージ上にティスプレイされたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーを、関心対象の抗原を用いてスクリーニングする段階を含む。ヒト生殖系列免疫グロブリン配列の「産物」であるか、またはそれに「由来する」ヒト抗体は、ヒト抗体のアミノ酸配列をヒト生殖系列免疫グロブリンのアミノ酸配列と比較し、かつヒト抗体の配列に最も配列が近い(すなわち、一致率(%)が最大である)ヒト生殖系列免疫グロブリン配列を選択することによって、それとして同定することができる。特定のヒト生殖系列免疫グロブリン配列の「産物」であるか、またはそれに「由来する」ヒト抗体は、例えば、天然の体細胞変異または部位特異的変異の意図的な導入が原因で、生殖系列配列と比べてアミノ酸に差異を含む場合がある。しかしながら、選択されたヒト抗体は、一般に、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列に対して、アミノ酸配列が少なくとも90%同一であり、かつ、他の種の生殖系列免疫グロブリンアミノ酸配列(例えばマウスの生殖系列配列)と比べた場合に、ヒト抗体をヒト由来と特定するアミノ酸を含む。特定の場合において、ヒト抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列に対して、アミノ酸配列が少なくとも95%、またはさらに少なくとも96%、97%、98%、もしくは99%同一である場合がある。特定の態様において、特定のヒト生殖系列配列に由来するヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と比べて10個以下のアミノ酸差異を示すと考えられる。他の特定の態様において、ヒト抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と比べて、5個以下、またはさらに4個、3個、2個、もしくは1個以下のアミノ酸差異を示す場合がある。
【0105】
相同な抗体
さらに別の態様において、本発明の抗体は、本発明の抗PD-L1抗体の望ましい機能特性を保持している、本明細書において説明する好ましい抗体のアミノ酸配列に相同であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。
【0106】
例えば、本発明は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供し、
(a)重鎖可変領域は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、およびSEQ ID NO:10からなる群より選択されるアミノ酸配列に少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を含み;
(b)軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19、およびSEQ ID NO:20からなる群より選択されるアミノ酸配列に少なくとも80%相同であるアミノ酸配列を含み;
(c)抗体は、1×10
-7Mまたはそれ以下のK
DでヒトPD-L1に結合し;
(d)抗体は、混合リンパ球反応(MLR)アッセイ法においてT細胞増殖を増加させ;
(e)抗体は、MLRアッセイ法においてインターフェロン-γ産生を増加させ;
(f)抗体は、MLRアッセイ法においてIL-2分泌を増加させ;
(g)抗体は、抗体応答を刺激し;かつ、
(h)T細胞エフェクター細胞および/または樹状細胞に対する調節性T細胞の作用を逆転させる。
【0107】
他の態様において、V
Hアミノ酸配列および/またはV
Lアミノ酸配列は、前述の配列に85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%相同である場合がある。前述の配列のV
H領域およびV
L領域に高い(すなわち80%またはそれ以上の)相同性を有するV
H領域およびV
L領域を有する抗体は、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29、およびSEQ ID NO:30をコードする核酸分子の変異を誘発し(例えば、部位特異的変異誘発またはPCR法による変異誘発)、続いて、本明細書において説明する機能アッセイ法を用いて、保持されている機能(すなわち、上記の(c)から(h)までに示した機能)に関して、コードされる改変抗体を試験することによって、得ることができる。
【0108】
本明細書において使用される場合、2つのアミノ酸配列間の相同率(%)は、2つの配列間の一致率(%)に等しい。2配列間の一致率(%)は、2つの配列の最適なアライメントのために導入される必要があるギャップ数および各ギャップの長さを考慮に入れた、これらの配列に共通である同一な位置の数の関数である(すなわち、相同率(%)=同一な位置の数/位置の総数×100)。配列の比較および2配列間の一致率(%)の決定は、下記の非限定的な例において説明するように、数学アルゴリズムを用いて遂行することができる。
【0109】
2つのアミノ酸配列間の一致率(%)は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み入れられたE. MeyersおよびW.Miller(Comput. Appl. Biosci., 4:11-17(1988))のアルゴリズムを用い、PAM120残基ウェイトテーブル、ギャップ長ペナルティ12、およびギャップペナルティ4を使用して、決定することができる。さらに、2つのアミノ酸配列間の一致率(%)は、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg. comで入手可能)のGAPプログラムに組み入れられたNeedlemanおよびWunsch(J. Mol. Biol. 48:444-453(1970))のアルゴリズムを用い、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、ならびに16、14、12、10、8、6、または4のギャップウェイト、および1、2、3、4、5、または6の長さウェイト(length weigh)を使用して、決定することもできる。
【0110】
特定の場合において、本開示のタンパク質配列は、例えば、関連配列を同定するために公的データベースに対する検索を実施するための「クエリ配列」としてさらに使用することもできる。このような検索は、Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10のXBLASTプログラム(バージョン2.0)を用いて実施することができる。XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いてBLASTタンパク質検索を実施して、本発明の抗体分子に相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的のためのギャップありアライメントを得るには、Altschul et al.,(1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402に記載されているようにGapped BLASTを使用することができる。BLASTプログラムおよびGapped BLASTプログラムを使用する場合、各プログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)の初期設定パラメーターを使用することができる。www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。
【0111】
保存的に改変された抗体
特定の態様において、本発明の抗体は、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域、ならびにCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含み、これらのCDR配列のうち1つまたは複数は、本明細書において説明する好ましい抗体(例えば、3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、もしくは13G4)をベースとする指定されたアミノ酸配列またはそれらの保存的改変体を含み、かつこれらの抗体は、本発明の抗PD-L1抗体の望ましい機能的特性を保持する。したがって、本発明は、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分であって、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域ならびにCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含み、
(a)重鎖可変領域のCDR3配列が、SEQ ID NO:41、SEQ ID NO:42、SEQ ID NO:43、SEQ ID NO:44、SEQ ID NO:45、SEQ ID NO:46、SEQ ID NO:47、SEQ ID NO:48、SEQ ID NO:49、およびSEQ ID NO:50のアミノ酸配列ならびにそれらの保存的改変体からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;
(b)軽鎖可変領域のCDR3配列が、SEQ ID NO:71、SEQ ID NO:72、SEQ ID NO:73、SEQ ID NO:74、SEQ ID NO:75、SEQ ID NO:76、SEQ ID NO:77、SEQ ID NO:78、SEQ ID NO:79、およびSEQ ID NO:80のアミノ酸配列ならびにそれらの保存的改変体からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;
(c)抗体が、1×10
-7Mまたはそれ以下のK
DでヒトPD-L1に結合し;
(d)抗体が、混合リンパ球反応(MLR)アッセイ法においてT細胞増殖を増加させ;
(e)抗体が、MLRアッセイ法においてインターフェロン-γ産生を増加させ;
(f)抗体が、MLRアッセイ法においてIL-2分泌を増加させ;
(g)抗体が、抗体応答を刺激し;かつ、
(h)T細胞エフェクター細胞および/または樹状細胞に対する調節性T細胞の作用を逆転させる、
単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供する。
【0112】
好ましい態様において、重鎖可変領域のCDR2配列は、SEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:35、SEQ ID NO:36、SEQ ID NO:37、SEQ ID NO:38、SEQ ID NO:39、およびSEQ ID NO:40のアミノ酸配列ならびにそれらの保存的改変体からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖可変領域のCDR2配列は、SEQ ID NO:61、SEQ ID NO:62、SEQ ID NO:63、SEQ ID NO:64、SEQ ID NO:65、SEQ ID NO:66、SEQ ID NO:67、SEQ ID NO:68、SEQ ID NO:69、およびSEQ ID NO:70のアミノ酸配列ならびにそれらの保存的改変体からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。別の好ましい態様において、重鎖可変領域のCDR1配列は、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29、およびSEQ ID NO:30のアミノ酸配列ならびにそれらの保存的改変体からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖可変領域のCDR1配列は、SEQ ID NO:51、SEQ ID NO:52、SEQ ID NO:53、SEQ ID NO:54、SEQ ID NO:55、SEQ ID NO:56、SEQ ID NO:57、SEQ ID NO:58、SEQ ID NO:59、およびSEQ ID NO:60のアミノ酸配列ならびにそれらの保存的改変体からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0113】
本明細書において使用される場合、「保存的配列改変」という用語は、アミノ酸配列を含む抗体の結合特徴に有意に影響を及ぼすことも、結合特徴を有意に変更することもない、アミノ酸改変を意味すると意図される。このような保存的改変には、アミノ酸の置換、付加、および欠失が含まれる。改変は、部位特異的変異誘発およびPCR法による変異誘発など当技術分野において公知の標準的技術によって、本発明の抗体に導入することができる。保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸残基が、類似した側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものである。類似した側鎖を有するアミノ酸のファミリーは、当技術分野において定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β-分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。したがって、本発明の抗体のCDR領域内の1つまたは複数のアミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリーに由来する他のアミノ酸残基で置換することができ、かつ改変された抗体を、本明細書において説明する機能アッセイ法を用いて、保持されている機能(すなわち、上記の(c)から(h)までに示した機能)に関して試験することができる。
【0114】
本発明の抗PD-L1抗体と同じエピトープに結合する抗体
別の態様において、本発明は、本発明のPD-L1モノクローナル抗体のいずれかと同じヒトPD-L1上のエピトープに結合する抗体(すなわち、PD-L1への結合に関して、本発明のモノクローナル抗体のいずれかと交差競合する能力を有する抗体)を提供する。好ましい態様において、交差競合研究のための参照抗体は、モノクローナル抗体3G10(SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:11においてそれぞれ示すV
H配列およびV
L配列を有する)、またはモノクローナル抗体12A4(SEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:12においてそれぞれ示すV
H配列およびV
L配列を有する)、またはモノクローナル抗体10A5(SEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:13においてそれぞれ示すV
H配列およびV
L配列を有する)、またはモノクローナル抗体10A5(SEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:13においてそれぞれ示すV
H配列およびV
L配列を有する)、またはモノクローナル抗体5F8(SEQ ID NO:4およびSEQ ID NO:14においてそれぞれ示すV
H配列およびV
L配列を有する)、またはモノクローナル抗体10H10(SEQ ID NO:5およびSEQ ID NO:15においてそれぞれ示すV
H配列およびV
L配列を有する)、またはモノクローナル抗体1B12(SEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:16においてそれぞれ示すV
H配列およびV
L配列を有する)、またはモノクローナル抗体7H1(SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:17においてそれぞれ示すV
H配列およびV
L配列を有する)、またはモノクローナル抗体11E6(SEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:18においてそれぞれ示すV
H配列およびV
L配列を有する)、またはモノクローナル抗体12B7(SEQ ID NO:9およびSEQ ID NO:19においてそれぞれ示すV
H配列およびV
L配列を有する)、またはモノクローナル抗体13G4(SEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:20においてそれぞれ示すV
H配列およびV
L配列を有する)でよい。このような交差競合する抗体は、標準的なPD-L1結合アッセイ法において、3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、または13G4と交差競合する能力に基づいて同定することができる。例えば、BIAcore解析、ELISAアッセイ法、またはフローサイトメトリーを使用して、本発明の抗体との交差競合を実証することができる。ある試験抗体が、例えば、3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、または13G4のヒトPD-L1への結合を阻害できる場合、その試験抗体は、ヒトPD-L1への結合に際して3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、または13G4と競合することができ、したがって、3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、または13G4と同じヒトPD-L1上のエピトープに結合することが実証される。好ましい態様において、3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、または13G4と同じヒトPD-L1上のエピトープに結合する抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。このようなヒトモノクローナル抗体は、実施例において説明するようにして調製および単離することができる。
【0115】
操作および改変された抗体
本発明の抗体はさらに、本明細書において開示される1つまたは複数のV
H配列および/またはV
L配列を有する抗体を、改変抗体を操作するための出発材料として用いて調製することもでき、この改変抗体は、出発抗体から変化した特性を有し得る。抗体は、一方または両方の可変領域(すなわち、V
Hおよび/またはV
L)内、例えば、1つもしくは複数のCDR領域内および/または1つもしくは複数のフレームワーク領域内の1つまたは複数の残基を改変することによって操作することができる。さらに、またはあるいは、抗体は、例えば、抗体のエフェクター機能を変更するために、定常領域内の残基を改変することによって操作することもできる。
【0116】
実施することができる1つのタイプの可変領域操作は、CDRグラフティングである。抗体は、重鎖および軽鎖の6つの相補性決定領域(CDR)中に位置しているアミノ酸残基を主に介して、標的抗原と相互作用する。このため、CDR内のアミノ酸配列の方が、CDRの外側の配列よりも、個々の抗体間で多様である。CDR配列は、大半の抗体-抗原相互作用を担っているため、異なる特性を有する異なる抗体に由来するフレームワーク配列上にグラフティングされた、特定の天然抗体に由来するCDR配列を含む発現ベクターを構築することによって、特定の天然抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが可能である(例えば、Riechmann, L. et al. (1998) Nature 332:323-327; Jones, P. et al. (1986) Nature 321:522-525; Queen, C. et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:10029-10033; Winterの米国特許第5,225,539号ならびにQueenらの米国特許第5,530,101号、同第5,585,089号、同第5,693,762号、および同第6,180,370号を参照されたい)。
【0117】
したがって、本発明の別の態様は、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分であって、それぞれ、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29、およびSEQ ID NO:30、SEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:35、SEQ ID NO:36、SEQ ID NO:37、SEQ ID NO:38、SEQ ID NO:39、およびSEQ ID NO:40、ならびにSEQ ID NO:41、SEQ ID NO:42、SEQ ID NO:43、SEQ ID NO:44、SEQ ID NO:45、SEQ ID NO:46、SEQ ID NO:47、SEQ ID NO:48、SEQ ID NO:49、およびSEQ ID NO:50からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域、ならびに、それぞれ、SEQ ID NO:51、SEQ ID NO:52、SEQ ID NO:53、SEQ ID NO:54、SEQ ID NO:55、SEQ ID NO:56、SEQ ID NO:57、SEQ ID NO:58、SEQ ID NO:59、およびSEQ ID NO:60、SEQ ID NO:61、SEQ ID NO:62、SEQ ID NO:63、SEQ ID NO:64、SEQ ID NO:65、SEQ ID NO:66、SEQ ID NO:67、SEQ ID NO:68、SEQ ID NO:69、およびSEQ ID NO:70、ならびにSEQ ID NO:71、SEQ ID NO:72、SEQ ID NO:73、SEQ ID NO:74、SEQ ID NO:75、SEQ ID NO:76、SEQ ID NO:77、SEQ ID NO:78、SEQ ID NO:79、およびSEQ ID NO:80からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分に関する。したがって、このような抗体は、モノクローナル抗体3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、または13G4のV
HCDR配列およびV
LCDR配列を含むが、これらの抗体とは異なるフレームワーク配列を含み得る。
【0118】
このようなフレームワーク配列は、生殖系列抗体遺伝子配列を含む公共のDNAデータベースまたは出版されている参考文献から得ることができる。例えば、ヒトの重鎖および軽鎖の可変領域遺伝子の生殖系列DNA配列は、「VBase」ヒト生殖系列配列データベース(インターネットでwww.mrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseから入手可能)において、ならびに、Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242; Tomlinson, I. M., et al. (1992) "The Repertoire of Human Germline V
H Sequences Reveals about Fifty Groups of V
H Segments with Different Hypervariable Loops" J. Mol. Biol. 227:776-798;およびCox, J. P. L. et al. (1994) "A Directory of Human Germ-line V
H Segments Reveals a Strong Bias in their Usage" Eur. J. Immunol. 24:827-836(各文献の内容は、参照により本明細書に明確に組み入れられる)において、確認することができる。
【0119】
抗体タンパク質配列は、当業者に周知である、Gapped BLAST(Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Research 25:3389-3402)と呼ばれる配列類似性検索法の1つを用いて、まとめられたタンパク質配列データベースに対して比較される。BLASTは、抗体配列とデータベース配列間の統計学的に有意なアライメントが、アラインされたワードの高スコアセグメントペア(HSP)を含む可能性が高いという点で、発見的アルゴリズムである。伸長またはトリミングによってスコアを改善させることができないセグメントペアはヒットと呼ばれる。手短に言えば、VBASE(vbase. mrc-cpe.cam. ac. uk/vbase1/list2.php)由来のヌクレオチド配列が翻訳され、かつFR1からFR3フレームワーク領域の間、およびそれらを含む領域が保持される。データベース配列の平均長は98残基である。タンパク質の全長に渡って完全にマッチしている全く同じ配列は、除外される。オフにされた低複雑度領域フィルター以外は初期設定の標準パラメーターおよびBLOSUM62の置換行列を用いたblastpプログラムを使用するタンパク質のBLAST検索により、配列一致を示している上位5ヒットを選択する。ヌクレオチド配列は6つの全フレームにおいて翻訳され、かつデータベース配列のマッチしたセグメント中にストップコドンを持たないフレームは潜在的なヒットとみなされる。これは、さらに、BLASTプログラムtblastxを用いて確認される。この場合、6つの全フレーム中の抗体配列を翻訳し、かつ、6つの全フレーム中の動力学的に翻訳されたVBASEヌクレオチド配列に、それらの翻訳物を比較する。
【0120】
一致とは、配列の全長に渡る、抗体配列とタンパク質データベースとのアミノ酸の完全なマッチである。陽性(一致+置換マッチ)は、同一ではなく、BLOSUM62置換行列によってアミノ酸置換が導かれている。抗体配列がデータベース配列のうちの2つに同じ一致性でマッチする場合、陽性の最も強いヒットが、マッチしている配列ヒットであると決定される。
【0121】
本発明の抗体において使用するための好ましいフレームワーク配列は、本発明の選択された抗体によって使用されるフレームワーク配列に構造的に類似しているもの、例えば、本発明の好ましいモノクローナル抗体によって使用される、V
H1-18フレームワーク配列(SEQ ID NO:101)および/もしくはV
H1-69フレームワーク配列(SEQ ID NO:102)および/もしくはV
H1-3フレームワーク配列(SEQ ID NO:103)および/もしくはV
H3-9フレームワーク配列(SEQ ID NO:104)、ならびに/またはV
KL6フレームワーク配列(SEQ ID NO:105)および/もしくはV
KL15フレームワーク配列(SEQ ID NO:106)および/もしくはV
KA27フレームワーク配列(SEQ ID NO:107)および/もしくはV
KL18フレームワーク配列(SEQ ID NO:107)に類似しているものである。V
HのCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列、ならびにV
KのCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を、フレームワーク配列が由来する生殖系列免疫グロブリン遺伝子中に存在する配列と同一の配列を有するフレームワーク領域上にグラフティングすることができるか、または、CDR配列を、生殖系列配列と比べて1つもしくは複数の変異を含むフレームワーク領域上にグラフティングすることができる。例えば、いくつかの場合において、抗体の抗原結合能力を維持または増強するためにフレームワーク領域内の残基を変異させることが有益であることが見出されている(例えば、Queenらによる米国特許第5,530,101号、同第585,089号、同第5,693,762号、および同第6,180,370号を参照されたい)。
【0122】
別のタイプの可変領域改変は、V
Hおよび/またはV
KのCDR1領域、CDR2領域、および/またはCDR3領域内のアミノ酸残基を変異させて、それによって関心対象の抗体の1種または複数種の結合特性(例えば親和性)を改善させるものである。部位特異的変異誘発またはPCR法による変異誘発を実施して、変異を導入することができ、かつ、抗体結合または関心対象の他の機能特性に対する影響を、本明細書において説明し、かつ実施例において提供するインビトロまたはインビボのアッセイ法において評価することができる。好ましくは、(前述のような)保存的改変が導入される。変異は、アミノ酸の置換、付加、または欠失でよいが、好ましくは置換である。さらに、典型的には、CDR領域内の1個、2個、3個、4個、または5個以下の残基が変更される。
【0123】
したがって、別の態様において、本発明は、以下を含む重鎖可変領域を含む、単離された抗PD-L1モノクローナル抗体、またはその抗原結合部分を提供する:
(a)SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29、およびSEQ ID NO:30からなる群より選択されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29、およびSEQ ID NO:30と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、もしくは5つのアミノ酸置換、欠失、もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む、V
HCDR1領域;
(b)SEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:35、SEQ ID NO:36、SEQ ID NO:37、SEQ ID NO:38、SEQ ID NO:39、およびSEQ ID NO:40からなる群より選択されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:35、SEQ ID NO:36、SEQ ID NO:37、SEQ ID NO:38、SEQ ID NO:39、およびSEQ ID NO:40と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、もしくは5つのアミノ酸置換、欠失、もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む、V
HCDR2領域;
(c)SEQ ID NO:41、SEQ ID NO:42、SEQ ID NO:43、SEQ ID NO:44、SEQ ID NO:45、SEQ ID NO:46、SEQ ID NO:47、SEQ ID NO:48、SEQ ID NO:49、およびSEQ ID NO:50からなる群より選択されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:41、SEQ ID NO:42、SEQ ID NO:43、SEQ ID NO:44、SEQ ID NO:45、SEQ ID NO:46、SEQ ID NO:47、SEQ ID NO:48、SEQ ID NO:49、およびSEQ ID NO:50と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、もしくは5つのアミノ酸置換、欠失、もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む、V
HCDR3領域;
(d)SEQ ID NO:51、SEQ ID NO:52、SEQ ID NO:53、SEQ ID NO:54、SEQ ID NO:55、SEQ ID NO:56、SEQ ID NO:57、SEQ ID NO:58、SEQ ID NO:59、およびSEQ ID NO:60からなる群より選択されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:51、SEQ ID NO:52、SEQ ID NO:53、SEQ ID NO:54、SEQ ID NO:55、SEQ ID NO:56、SEQ ID NO:57、SEQ ID NO:58、SEQ ID NO:59、およびSEQ ID NO:60と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、もしくは5つのアミノ酸置換、欠失、もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む、V
KCDR1領域;
(e)SEQ ID NO:61、SEQ ID NO:62、SEQ ID NO:63、SEQ ID NO:64、SEQ ID NO:65、SEQ ID NO:66、SEQ ID NO:67、SEQ ID NO:68、SEQ ID NO:69、およびSEQ ID NO:70からなる群より選択されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:61、SEQ ID NO:62、SEQ ID NO:63、SEQ ID NO:64、SEQ ID NO:65、SEQ ID NO:66、SEQ ID NO:67、SEQ ID NO:68、SEQ ID NO:69、およびSEQ ID NO:70と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、もしくは5つのアミノ酸置換、欠失、もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む、V
KCDR2領域;ならびに
(f)SEQ ID NO:71、SEQ ID NO:72、SEQ ID NO:73、SEQ ID NO:74、SEQ ID NO:75、SEQ ID NO:76、SEQ ID NO:77、SEQ ID NO:78、SEQ ID NO:79、およびSEQ ID NO:80からなる群より選択されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:71、SEQ ID NO:72、SEQ ID NO:73、SEQ ID NO:74、SEQ ID NO:75、SEQ ID NO:76、SEQ ID NO:77、SEQ ID NO:78、SEQ ID NO:79、およびSEQ ID NO:80と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、または5つのアミノ酸置換、欠失、または付加を有するアミノ酸配列を含む、V
KCDR3領域。
【0124】
本発明の操作された抗体には、例えば、抗体の特性を改善するために、V
Hおよび/またはV
K内のフレームワーク残基が改変されたものが含まれる。典型的には、このようなフレームワーク改変は、抗体の免疫原性を低減させるために実施される。例えば、1つのアプローチは、1つまたは複数のフレームワーク残基を、対応する生殖系列配列に「復帰変異させる」ものである。より具体的には、体細胞変異を経験した抗体は、その抗体が由来する生殖系列配列とは異なるフレームワーク残基を含む場合がある。このような残基は、抗体フレームワーク配列を、その抗体が由来する生殖系列配列と比較することによって、同定することができる。例えば、後述するように、いくつかのアミノ酸が、生殖系列親配列と異なる、抗PD-L1抗体3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、および13G4のフレームワーク領域中で変化している。これらのフレームワーク領域配列を生殖系列での配置に戻すために、例えば、部位特異的変異誘発またはPCR法による変異誘発によって、体細胞変異を生殖系列配列に「復帰変異」させることができる。生殖系列V
H1-18親配列に対する3G10のV
H領域のアライメントを
図11に示す。生殖系列V
H1-69親配列に対する12A4のV
H領域のアライメントを
図12に示す。生殖系列V
H1-3親配列に対する10A5のV
H領域のアライメントを
図13に示す。生殖系列V
H1-69親配列に対する5F8のV
H領域のアライメントを
図14に示す。生殖系列V
H3-9親配列に対する10H10のV
H領域のアライメントを
図15に示す。生殖系列V
H1-69親配列に対する1B12のV
H領域のアライメントを
図16に示す。生殖系列V
H1-69親配列に対する7H1のV
H領域のアライメントを
図17に示す。生殖系列V
H1-69親配列に対する11E6のV
H領域のアライメントを
図18に示す。生殖系列V
H1-69親配列に対する12B7のV
H領域のアライメントを
図19に示す。生殖系列V
H3-9親配列に対する13G4のV
H領域のアライメントを
図20に示す。
【0125】
例えば、3G10の場合、V
Hの(FR3内の)アミノ酸79番残基はバリンであるのに対し、対応するV
H1-18生殖系列配列中のこの残基はアラニンである。フレームワーク領域配列を生殖系列での配置に戻すために、例えば、部位特異的変異誘発またはPCR法による変異誘発によって、体細胞変異を生殖系列配列に「復帰変異」させることができる(例えば、3G10のV
Hの79番残基(FR3の13番残基)をバリンからアラニンに「復帰変異」させることができる)。
【0126】
別の例として、12A4の場合、V
Hの(FR1内の)アミノ酸24番残基はトレオニンであるのに対し、対応するV
H1-69生殖系列配列中のこの残基はアラニンである。フレームワーク領域配列を生殖系列での配置に戻すために、例えば、12A4のV
Hの24番残基をトレオニンからアラニンに「復帰変異」させることができる。このような「復帰変異させた」抗体もまた、本発明に包含されると意図される。
【0127】
別の例として、12A4の場合、V
Hの(FR1内の)アミノ酸27番残基はアスパラギン酸であるのに対し、対応するV
H1-69生殖系列配列中のこの残基はグリシンである。フレームワーク領域配列を生殖系列での配置に戻すために、例えば、12A4のV
Hの27番残基をアスパラギン酸からグリシンに「復帰変異」させることができる。このような「復帰変異させた」抗体もまた、本発明に包含されると意図される。
【0128】
別の例として、12A4の場合、V
Hの(FR3内の)アミノ酸95番残基はフェニルアラニンであるのに対し、対応するV
H1-69生殖系列配列中のこの残基はチロシンである。フレームワーク領域配列を生殖系列での配置に戻すために、例えば、12A4のV
Hの95番残基(FR3の29番残基)をフェニルアラニンからチロシンに「復帰変異」させることができる。このような「復帰変異させた」抗体もまた、本発明に包含されると意図される。
【0129】
別の例として、5F8の場合、(FR1内の)アミノ酸24番残基はバリンであるのに対し、対応するV
H1-69生殖系列配列中のこの残基はアラニンである。フレームワーク領域配列を生殖系列での配置に戻すために、例えば、5F8のV
Hの24番残基をバリンからアラニンに「復帰変異」させることができる。このような「復帰変異させた」抗体もまた、本発明に包含されると意図される。
【0130】
別の例として、5F8の場合、(FR1内の)アミノ酸28番残基はイソロイシンであるのに対し、対応するV
H1-69生殖系列配列中のこの残基はトレオニンである。フレームワーク領域配列を生殖系列での配置に戻すために、例えば、5F8のV
Hの28番残基をイソロイシンからトレオニンに「復帰変異」させることができる。このような「復帰変異させた」抗体もまた、本発明に包含されると意図される。
【0131】
別の例として、10H10の場合、(FR1内の)アミノ酸24番残基はバリンであるのに対し、対応するV
H3-9生殖系列配列中のこの残基はアラニンである。フレームワーク領域配列を生殖系列での配置に戻すために、例えば、10H10のV
Hの24番残基をバリンからアラニンに「復帰変異」させることができる。このような「復帰変異させた」抗体もまた、本発明に包含されると意図される。
【0132】
別の例として、10H10の場合、(FR3内の)アミノ酸97番残基の次に、1つのアミノ酸を挿入することができる。このアミノ酸はバリンである。フレームワーク領域配列を生殖系列での配置に戻すために、例えば、10H10のV
Hの97番残基の次に挿入されたアミノ酸を「復帰変異」させて、このバリンを除去することができる。このような「復帰変異させた」抗体もまた、本発明に包含されると意図される。
【0133】
別の例として、1B12の場合、(FR1内の)アミノ酸24番残基はトレオニンであるのに対し、対応するV
H1-69生殖系列配列中のこの残基はアラニンである。フレームワーク領域配列を生殖系列での配置に戻すために、例えば、1B12のV
Hの24番残基をトレオニンからアラニンに「復帰変異」させることができる。このような「復帰変異させた」抗体もまた、本発明に包含されると意図される。
【0134】
別の例として、1B12の場合、(FR1内の)アミノ酸27番残基はアスパラギン酸であるのに対し、対応するV
H1-69生殖系列配列中のこの残基はグリシンである。フレームワーク領域配列を生殖系列での配置に戻すために、例えば、1B12のV
Hの27番残基ををアスパラギン酸からグリシンに「復帰変異」させることができる。このような「復帰変異させた」抗体もまた、本発明に包含されると意図される。
【0135】
別の例として、1B12の場合、(FR3内の)アミノ酸95番残基はフェニルアラニンであるのに対し、対応するV
H1-69生殖系列配列中のこの残基はチロシンである。フレームワーク領域配列を生殖系列での配置に戻すために、例えば、1B12のV
Hの95番残基(FR3の29番残基)をフェニルアラニンからチロシンに「復帰変異」させることができる。このような「復帰変異させた」抗体もまた、本発明に包含されると意図される。
【0136】
別の例として、7H1の場合、(FR1内の)アミノ酸24番残基はトレオニンであるのに対し、対応するV
H1-69生殖系列配列中のこの残基はアラニンである。フレームワーク領域配列を生殖系列での配置に戻すために、例えば、7H1のV
Hの24番残基をトレオニンからアラニンに「復帰変異」させることができる。このような「復帰変異させた」抗体もまた、本発明に包含されると意図される。
【0137】
別の例として、7H1の場合、(FR3内の)アミノ酸77番残基はトレオニンであるのに対し、対応するV
H1-69生殖系列配列中のこの残基はセリンである。フレームワーク領域配列を生殖系列での配置に戻すために、例えば、7H1のV
Hの72番残基(FR3の11番残基)をトレオニンからセリンに「復帰変異」させることができる。このような「復帰変異させた」抗体もまた、本発明に包含されると意図される。
【0138】
別の例として、11E6の場合、(FR3内の)アミノ酸78番残基はアラニンであるのに対し、対応するV
H1-69生殖系列配列中のこの残基はトレオニンである。フレームワーク領域配列を生殖系列での配置に戻すために、例えば、11E6のV
Hの78番残基(FR3の12番残基)をアラニンからトレオニンに「復帰変異」させることができる。このような「復帰変異させた」抗体もまた、本発明に包含されると意図される。
【0139】
別の例として、12B7の場合、(FR1内の)アミノ酸13番残基はグルタミン酸であるのに対し、対応するV
H1-69生殖系列配列中のこの残基はリシンである。フレームワーク領域配列を生殖系列での配置に戻すために、例えば、12B7のV
Hの13番残基をグルタミン酸からリシンに「復帰変異」させることができる。このような「復帰変異させた」抗体もまた、本発明に包含されると意図される。
【0140】
別の例として、12B7の場合、(FR1内の)アミノ酸30番残基はアスパラギンであるのに対し、対応するV
H1-69生殖系列配列中のこの残基はセリンである。フレームワーク領域配列を生殖系列での配置に戻すために、例えば、12B7のV
Hの30番残基をアスパラギンからセリンに「復帰変異」させることができる。このような「復帰変異させた」抗体もまた、本発明に包含されると意図される。
【0141】
別の例として、12B7の場合、(FR3内の)アミノ酸77番残基はアスパラギンであるのに対し、対応するV
H1-69生殖系列配列中のこの残基はセリンである。フレームワーク領域配列を生殖系列での配置に戻すために、例えば、12B7のV
Hの377番残基(FR3の11番残基)をアスパラギンからセリンに「復帰変異」させることができる。このような「復帰変異させた」抗体もまた、本発明に包含されると意図される。
【0142】
別の例として、12B7の場合、(FR3内の)アミノ酸82番残基はアスパラギン酸であるのに対し、対応するV
H1-69生殖系列配列中のこの残基はグルタミン酸である。フレームワーク領域配列を生殖系列での配置に戻すために、例えば、12B7のV
Hの82番残基(FR3の16番残基)をアスパラギン酸からグルタミン酸に「復帰変異」させることができる。このような「復帰変異させた」抗体もまた、本発明に包含されると意図される。
【0143】
別の例として、13G4の場合、(FR1内の)アミノ酸27番残基はイソロイシンであるのに対し、対応するV
H1-69生殖系列配列中のこの残基はフェニルアラニンである。フレームワーク領域配列を生殖系列での配置に戻すために、例えば、12B7のV
Hの27番残基をイソロイシンからフェニルアラニンに「復帰変異」させることができる。このような「復帰変異させた」抗体もまた、本発明に包含されると意図される。
【0144】
別のタイプのフレームワーク改変は、フレームワーク領域内、またはさらに1つもしくは複数のCDR領域内の1つまたは複数の残基を変異させて、T細胞エピトープを除去し、それにより、抗体の潜在的な免疫原性を低減させることを含む。このアプローチは、「脱免疫化」とも呼ばれ、かつ、Carrらによる米国特許出願公開第20030153043号においてさらに詳細に記載されている。
【0145】
フレームワーク領域またはCDR領域内に起こされる改変に加えて、またはその代わりに、典型的には、血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、および/または抗原依存性の細胞障害活性など抗体の1種または複数種の機能特性を変更するために、本発明の抗体を、Fc領域内に改変を含むように操作することができる。さらに、本発明の抗体は、化学的に修飾してもよく(例えば、1つもしくは複数の化学的部分を抗体に結合することができる)、または、やはり抗体の1種もしくは複数種の機能特性を変更するために、そのグリコシル化を変更するように修飾してもよい。これらの各態様は、下記にさらに詳細に説明する。Fc領域中の残基の数は、KabatのEU指数のものである。
【0146】
1つの態様において、CH1のヒンジ領域は、ヒンジ領域中のシステイン残基の数が変更されるように、例えば、増加もしくは減少されるように、改変される。このアプローチは、Bodmerらによる米国特許第5,677,425号においてさらに記載されている。CH1のヒンジ領域中のシステイン残基の数は、例えば、軽鎖および重鎖の集合を容易にするためか、または抗体の安定性を上昇もしくは低下させるために、変更される。
【0147】
別の態様において、抗体のFcヒンジ領域は、抗体の生物学的半減期を短縮させるために変異させられる。より具体的には、1つまたは複数のアミノ酸変異が、CH2-CH3ドメインの境界領域であるFcヒンジ断片中に導入され、その結果、その抗体は、天然のFcヒンジドメインのブドウ球菌(Staphylococcyl)プロテインA(SpA)結合に比べて、SpA結合が障害される。このアプローチは、Wardらによる米国特許第6,165,745号においてさらに詳細に記載されている。
【0148】
別の態様において、抗体は、生物学的半減期を延長するために改変される。様々なアプローチが可能である。例えば、Wardによる米国特許第6,277,375号に記載されているように、1つまたは複数の以下の変異を導入することができる:T252L、T254S、T256F。あるいは、生物学的半減期を延長するために、Prestaらによる米国特許第5,869,046号および同第6,121,022号において記載されているように、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから得られるサルベージ(salvage)受容体結合エピトープを含むように、抗体のCH1領域またはCL領域内を改変することができる。
【0149】
さらに別の態様において、Fc領域は、抗体のエフェクター機能を変更するために、少なくとも1つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置換することによって、改変される。例えば、アミノ酸残基234番、235番、236番、237番、297番、318番、320番、および322番から選択される1つまたは複数のアミノ酸は、その抗体が、エフェクターリガンドに対する親和性は変更されているが、親抗体の抗原結合能力を保持するように、異なるアミノ酸残基で置換することができる。親和性が変更される対象のエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体、または補体のC1成分でよい。このアプローチは、いずれもWinterらによる米国特許第5,624,821号および同第5,648,260号においてさらに詳細に記載されている。
【0150】
別の例において、アミノ酸残基329番、331番、および322番より選択される1つまたは複数のアミノ酸は、抗体のC1q結合が変化し、かつ/または補体依存性細胞障害(CDC)が低減もしくは消滅するように、異なるアミノ酸残基で置換することができる。このアプローチは、Idusogieらによる米国特許第6,194,551号においてさらに詳細に記載されている。
【0151】
別の例において、アミノ酸231位から239位までの範囲内の1つまたは複数のアミノ酸残基が変更されて、それにより、抗体が補体に結合する能力が変更される。このアプローチは、BodmerらによるPCT公報WO94/29351においてさらに記載されている。
【0152】
さらに別の例において、Fc領域は、以下の位置の1つまたは複数のアミノ酸を改変することによって、抗体が抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介する能力を増大させるように、かつ/またはFcγ受容体に対する抗体の親和性を増大させるように、改変される:238、239、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438、または439。このアプローチは、PrestaによるPCT公報WO 00/42072においてさらに記載されている。さらに、FcγR1、FcγRII、FcγRIII、およびFcRnに対するヒトIgG1上の結合部位は、マッピングされており、かつ結合の改善された変種が説明されている(Shields, R.L.et al. (2001) J. Biol. Chem. 276:6591-6604を参照されたい)。256位、290位、298位、333位、334位、および339位の特定の変異は、FcγRIIIへの結合を改善することが示された。さらに、以下の組合せ変異体は、FcγRIII結合を改善することが示された:T256A/S298A、S298A/E333A、S298A/K224A、およびS298A/E333A/K334A。
【0153】
さらに別の態様において、抗体のグリコシル化が改変される。例えば、グリコシル化抗体を作製することができる(すなわち、この抗体はグリコシル化を欠く)。グリコシル化を変更して、例えば、抗原に対する抗体の親和性を増大させることができる。このような炭水化物改変は、例えば、抗体配列内の1つまたは複数の部位のグリコシル化を変更することによって、達成することができる。例えば、1つまたは複数の可変領域フレームワークのグリコシル化部位を消失させ、それによってその部位のグリコシル化を無くす、1つまたは複数のアミノ酸置換を実施することができる。このようなアグリコシル化(aglycosylation)は、抗原に対する抗体の親和性を増大させ得る。このようなアプローチは、Coらによる米国特許第5,714,350号および同第6,350,861号においてさらに詳細に記載されている。
【0154】
他の特定の態様において、フコシル残基の量が減少した低フコシル化(hypofucosylated)抗体または分岐GlcNac構造の増加した抗体など、グリコシル化のタイプが変更された抗体を作製することができる。このような変更されたグリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を増大させることが実証された。このような炭水化物改変は、例えば、グリコシル化機構が変更された宿主細胞において抗体を発現させることによって、達成することができる。グリコシル化機構が変更された細胞は、当技術分野において説明されており、かつ、本発明の組換え抗体を発現させて、それにより、グリコシル化が変更された抗体を産生させる場となる宿主細胞として使用することができる。例えば、細胞株Ms704、Ms705、およびMs709は、フコシルトランスフェラーゼ遺伝子のFUT8(α(1,6)フコシルトランスフェラーゼ)を欠き、その結果、Ms704、Ms705、およびMs709細胞株において発現される抗体は、炭水化物上のフコースを欠いている。Ms704、Ms705、およびMs709 FUT8
-/-細胞株は、2つの置換ベクターを用いて、CHO/DG44細胞中のFUT8遺伝子を標的として破壊することによって、作製された(Yamaneらによる米国特許出願公開第20040110704号およびYamane-Ohnuki et al. (2004) Biotechnol Bioeng 87:614-22を参照されたい)。別の例として、HanaiらによるEP1,176,195では、α1,6結合に関連した酵素を減少させるか、または排除することにより、そのような細胞株において発現される抗体が低フコシル化を示すように、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子を機能的に破壊した細胞株を記載している。Hanaiらはまた、抗体のFc領域に結合するN-アセチルグルコサミンにフコースを付加するための酵素活性が低いか、またはその酵素活性を有さない細胞株、例えば、ラット骨髄腫細胞株YB2/0(ATCC CRL 1662)も説明している。PrestaによるPCT公報WO 03/035835では、Asn(297)結合型炭水化物にフコースを結合させる能力が低減され、また、その宿主細胞において発現される抗体の低フコシル化をもたらす、変種CHO細胞株のLec13細胞を記載している(Shields, R.L. et al. (2002) J. Biol. Chem. 277:26733-26740も参照されたい)。UmanaらによるPCT公報WO 99/54342では、操作された細胞株において発現される抗体が、抗体のADCC活性の増大をもたらす分岐GlcNac構造の増加を示すように、糖タンパク質を修飾するグリコシルトランスフェラーゼ(例えば、β(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現させるように操作された細胞株を記載している(Umana et al. (1999) Nat. Biotech. 17:176-180も参照されたい)。あるいは、抗体のフコース残基を、フコシダーゼ酵素を用いて切断して除いてもよい。例えば、フコシダーゼのα-L-フコシダーゼは、抗体からフコシル残基を除去する(Tarentino, A.L. et al. (1975) Biochem. 14:5516-23)。
【0155】
本発明によって企図される、本明細書における抗体の別の改変は、ペグ化である。例えば、抗体の生物学的(例えば血清)半減期を延長するために、抗体をペグ化することができる。抗体をペグ化するには、抗体またはその断片を、典型的には、抗体または抗体断片に1つまたは複数のPEG基が結合される条件下で、ポリエチレングリコール(PEG)の反応性のエステルまたはアルデヒド誘導体などのPEGと反応させる。好ましくは、ペグ化は、反応性PEG分子(または類似した反応性の水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応を介して実施される。本明細書において使用される場合、「ポリエチレングリコール」という用語は、モノ(C1-C10)アルコキシポリエチレングリコールもしくはアリールオキシポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールマレイミドなど、他のタンパク質を誘導体化するのに使用された任意の形態のPEGを包含すると意図される。特定の態様において、ペグ化される抗体は、アグリコシル化抗体である。タンパク質をペグ化するための方法は当技術分野において公知であり、かつ本発明の抗体に適用することができる。例えば、NishimuraらによるEP 0154316およびIshikawaらによるEP 0401384を参照されたい。
【0156】
抗体を操作する方法
前述したように、本明細書において開示するV
H配列およびV
K配列を有する抗PD-L1抗体を使用して、VH配列および/もしくはV
K配列、またはそれに結合している定常領域を改変することにより、新しい抗PD-L1抗体を作製することができる。したがって、本発明の別の局面において、本発明の抗PD-L1抗体、例えば、3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、または13G4の構造的特徴を使用して、ヒトPD-L1への結合のような本発明の抗体の少なくとも1種の機能特性を保持している、構造的に関連した抗PD-L1抗体を作製する。例えば、3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、もしくは13G4、またはそれらの変異体の1つまたは複数のCDR領域を、前述したように、公知のフレームワーク領域および/または他のCDRと組換えによって組み合わせて、組換えによって操作されたさらなる本発明の抗PD-L1抗体を作製することができる。他のタイプの改変には、以前のセクションにおいて説明したものが含まれる。操作方法のための出発材料は、本明細書において提供される1つもしくは複数のV
H配列および/もしくはV
K配列、またはそれらの1つもしくは複数のCDR領域である。操作された抗体を作製するためには、本明細書において提供される1つもしくは複数のV
H配列および/もしくはV
K配列、またはそれらの1つもしくは複数のCDR領域を有する抗体を実際に調製する(すなわち、タンパク質として発現させる)ことは必要ではない。より正確に言えば、配列中に含まれる情報は、元の配列に由来する「第2世代」配列を作製するための出発材料として使用され、次いで、その「第2世代」配列が、タンパク質として調製および発現される。
【0157】
したがって、別の態様において、本発明は、以下の段階を含む、抗PD-L1抗体を調製するための方法を提供する:
(a)(i)SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29、およびSEQ ID NO:30からなる群より選択されるCDR1配列、SEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:35、SEQ ID NO:36、SEQ ID NO:37、SEQ ID NO:38、SEQ ID NO:39、およびSEQ ID NO:40からなる群より選択されるCDR2配列、ならびに/もしくはSEQ ID NO:41、SEQ ID NO:42、SEQ ID NO:43、SEQ ID NO:44、SEQ ID NO:45、SEQ ID NO:46、SEQ ID NO:47、SEQ ID NO:48、SEQ ID NO:49、およびSEQ ID NO:50からなる群より選択されるCDR3配列を含む重鎖可変領域抗体配列;ならびに/または(ii)SEQ ID NO:51、SEQ ID NO:52、SEQ ID NO:53、SEQ ID NO:54、SEQ ID NO:55、SEQ ID NO:56、SEQ ID NO:57、SEQ ID NO:58、SEQ ID NO:59、およびSEQ ID NO:60からなる群より選択されるCDR1配列、SEQ ID NO:61、SEQ ID NO:62、SEQ ID NO:63、SEQ ID NO:64、SEQ ID NO:65、SEQ ID NO:66、SEQ ID NO:67、SEQ ID NO:68、SEQ ID NO:69、およびSEQ ID NO:70からなる群より選択されるCDR2配列、ならびに/もしくはSEQ ID NO:71、SEQ ID NO:72、SEQ ID NO:73、SEQ ID NO:74、SEQ ID NO:75、SEQ ID NO:76、SEQ ID NO:77、SEQ ID NO:78、SEQ ID NO:79、およびSEQ ID NO:80からなる群より選択されるCDR3配列を含む軽鎖可変領域抗体配列を提供する段階;
(b)重鎖可変領域抗体配列および/または軽鎖可変領域抗体配列内の少なくとも1つのアミノ酸残基を変更して、少なくとも1つの改変抗体配列を作製する段階;ならびに
(c)改変抗体配列をタンパク質として発現させる段階。
【0158】
標準的な分子生物学技術を使用して、改変抗体配列を調製し、かつ発現させることができる。
【0159】
好ましくは、改変抗体配列にコードされる抗体は、本明細書において説明する抗PD-L1抗体の機能特性の1種、いくつか、またはすべてを保持しているものであり、これらの機能特性には、限定されるわけではないが、以下が含まれる:
(i)1×10
-7Mもしくはそれ以下のK
DでヒトPD-L1に結合する;
(ii)混合リンパ球反応(MLR)アッセイ法においてT細胞増殖を増加させる;
(iii)MLRアッセイ法においてインターフェロン-γ産生を増加させる;
(iv)MLRアッセイ法においてIL-2分泌を増加させる;
(v)抗体応答を刺激する;ならびに/または、
(vi)T細胞エフェクター細胞および/もしくは樹状細胞に対する調節性T細胞の作用を逆転させる。
【0160】
改変抗体の機能特性は、実施例において説明するもののような(例えば、フローサイトメトリー、結合アッセイ法)、当技術分野において利用可能であり、かつ/または本明細書において説明する、標準的なアッセイ法を用いて評価することができる。
【0161】
本発明の抗体を操作する方法の特定の態様において、抗PD-L1抗体コード配列の全体または一部分に沿ってランダムにまたは選択的に変異を導入することができ、かつ、結果として生じる改変抗PD-L1抗体を、結合活性および/または本明細書において説明する他の機能特性に関してスクリーニングすることができる。変異の方法は、当技術分野において説明されている。例えば、ShortによるPCT公報WO 02/092780では、飽和変異誘発、合成ライゲーションアセンブリー、またはそれらの組合せを用いて、抗体変異体を作製およびスクリーニングするための方法を記載している。あるいは、LazarらによるPCT公報WO 03/074679では、抗体の生理化学特性を最適化するために計算的スクリーニング方法を使用する方法を記載している。
【0162】
本開示の抗体をコードする核酸分子
本開示の別の局面は、本発明の抗体をコードする核酸分子に関する。核酸は、全細胞中、細胞溶解物中、または部分的に精製された形態もしくは実質的に純粋な形態で存在してよい。核酸は、アルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動、および当技術分野において周知の他の技術を含む標準的な技術によって、他の細胞構成要素または他の混在物、例えば他の細胞の核酸もしくはタンパク質から離れるように精製された場合、「単離」されているか、または「実質的に純粋にされて」いる。F. Ausubel, et al.編、(1987) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New Yorkを参照されたい。本発明の核酸は、例えば、DNAまたはRNAでよく、かつイントロン配列を含んでも含まなくてもよい。好ましい態様において、核酸はcDNA分子である。
【0163】
本発明の核酸は、標準的な分子生物学技術を用いて得ることができる。ハイブリドーマ(例えば、さらに後述するようなヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスから調製されるハイブリドーマ)によって発現される抗体の場合、ハイブリドーマによって産生される抗体の軽鎖および重鎖をコードするcDNAは、標準的なPCR増幅技術またはcDNAクローニング技術によって得ることができる。(例えばファージディスプレイ技術を使用する)免疫グロブリン遺伝子ライブラリーから得られる抗体の場合、抗体をコードする核酸は、そのライブラリーから回収することができる。
【0164】
本発明の好ましい核酸分子は、モノクローナル抗体3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、および13G4のVH配列およびVL配列をコードするものである。3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、および13G4のVH配列をコードするDNA配列は、それぞれ、SEQ ID NO:81、SEQ ID NO:82、SEQ ID NO:83、SEQ ID NO:84、SEQ ID NO:85、SEQ ID NO:86、SEQ ID NO:87、SEQ ID NO:88、SEQ ID NO:89、およびSEQ ID NO:90において示される。3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、および13G4のVL配列をコードするDNA配列は、それぞれ、SEQ ID NO:91、SEQ ID NO:92、SEQ ID NO:93、SEQ ID NO:94、SEQ ID NO:95、SEQ ID NO:96、SEQ ID NO:97、SEQ ID NO:98、SEQ ID NO:99、およびSEQ ID NO:100において示される。
【0165】
VHセグメントおよびVLセグメントをコードするDNA断片を得た後、これらのDNA断片を、例えば、可変領域遺伝子を完全長抗体鎖遺伝子に、Fab断片遺伝子に、またはscFv遺伝子に変換するために、標準的な組換えDNA技術によってさらに操作することができる。これらの操作において、VLまたはVHをコードするDNA断片は、抗体定常領域または柔軟なリンカーなど別のタンパク質をコードする別のDNA断片に機能的に連結される。この文脈において使用される「機能的に連結される」という用語は、2つのDNA断片が、それら2つのDNA断片によってコードされるアミノ酸配列がインフレームのままであるように結合されることを意味すると意図される。
【0166】
VHをコードするDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2、およびCH3)をコードする別のDNA分子に機能的に連結することによって、VH領域をコードする単離されたDNAを完全長の重鎖遺伝子に変換することができる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野において公知であり(例えば、Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照されたい)、かつ、これらの領域を含むDNA断片は、標準的なPCR増幅によって得ることができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM、またはIgDの定常領域でよいが、最も好ましくは、IgG1またはIgG4の定常領域である。Fab断片重鎖遺伝子の場合、VHをコードするDNAを、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に機能的に連結することができる。
【0167】
VLをコードするDNAを、軽鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子に機能的に連結することによって、VL領域をコードする単離されたDNAを完全長の軽鎖遺伝子(ならびにFab軽鎖遺伝子)に変換することができる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野において公知であり(例えば、Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照されたい)、かつ、これらの領域を含むDNA断片は、標準的なPCR増幅によって得ることができる。軽鎖定常領域はκ定常領域またはλ定常領域でよいが、最も好ましくはκ定常領域である。
【0168】
scFv遺伝子を作製するためには、VH配列およびVL配列が、柔軟なリンカーによって結合されたVL領域およびVH領域を有する連続的な単鎖のタンパク質として発現され得るように、VHおよびVLをコードするDNA断片を、柔軟なリンカーをコードする別の断片、例えば、アミノ酸配列(Gly
4-Ser)
3をコードする断片に機能的に連結させる(例えば、Bird et al. (1988) Science 242:423-426; Huston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883; McCafferty et al.,(1990) Nature 348:552-554を参照されたい)。
【0169】
本発明のモノクローナル抗体の作製
本発明のモノクローナル抗体(mAb)は、従来のモノクローナル抗体方法論、例えばKohlerおよびMilstein (1975) Nature 256:495の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術を含む、様々な技術によって作製することができる。体細胞ハイブリダイゼーション手順が好ましいが、原則としては、モノクローナル抗体を作製するための他の技術、例えばBリンパ球のウイルス性形質転換または癌性形質転換を使用することができる。
【0170】
ハイブリドーマを調製するための好ましい動物の系はマウスの系である。マウスにおけるハイブリドーマ作製は、十分に確立された手順である。融合用の免疫脾細胞を単離するための免疫化のプロトコールおよび技術は、当技術分野において公知である。融合相手(例えばマウス骨髄腫細胞)および融合手順もまた、公知である。
【0171】
本発明のキメラ抗体またはヒト化抗体は、前述したようにして調製されたマウスモノクローナル抗体の配列に基づいて調製することができる。重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードするDNAは、標準的な分子生物学技術を用いて、関心対象のマウスハイブリドーマから得、かつ、非マウス(例えばヒト)免疫グロブリン配列を含むように操作することができる。例えば、キメラ抗体を作製するために、当技術分野において公知の方法を用いて、マウスの可変領域をヒト定常領域に連結することができる(例えば、Cabillyらによる米国特許第4,816,567号を参照されたい)。ヒト化抗体を作製するために、当技術分野において公知の方法を用いて、マウスのCDR領域をヒトフレームワーク中に挿入することができる(Winterによる米国特許第5,225,539号、ならびにQueenらによる米国特許第5,530,101号、同第5,585,089号、同第5,693,762号、および同第6,180,370号を参照されたい)。
【0172】
好ましい態様において、本発明の抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。PD-L1に対するこのようなヒトモノクローナル抗体は、マウス系の代わりに、ヒト免疫系の一部分を有するトランスジェニックマウスまたは、染色体導入されたマウスを用いて生成させることができる。これらのトランスジェニックマウスおよび染色体導入されたマウスには、それぞれHuMAbマウスおよびKMマウス(商標)と本明細書において呼ばれるマウスが含まれ、本明細書において、まとめて「ヒトIgマウス」と呼ばれる。
【0173】
HuMAbマウス(登録商標)(Medarex, Inc.)は、内因性のμ鎖およびκ鎖の遺伝子座を不活性化する標的化された変異と共に、再配列されてないヒト重鎖(μおよびγ)ならびにκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ遺伝子座を含む(例えば、Lonberg, et al. (1994) Nature 368(6474): 856-859を参照されたい)。したがって、マウスは、マウスIgMまたはκの発現の低減を示し、かつ免疫化に応答して、導入されたヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖導入遺伝子は、クラススイッチおよび体細胞変異を経験して、高親和性のヒトIgGκモノクローナルを生成する(Lonberg, N. et al. (1994)、前記; Lonberg, N.(1994) Handbook of Experimental Pharmacology 113:49-101に総説がある; Lonberg, N.およびHuszar, D. (1995) Intern. Rev. Immumol. 13:65-93、ならびにHarding, F.およびLonberg, N. (1995) Ann. N.Y. Acad. Sci. 764:536-546)。HuMabマウスの調製および使用、ならびにそのようなマウスが有するゲノム改変は、Taylor, L. et al. (1992) Nucleic Acids Research 20:6287-6295; Chen, J. et al. (1993) International Immunology 5:647-656; Tuaillon et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:3720-3724; Choi et al. (1993) Nature Genetics 4:117-123; Chen, J. et al. (1993) EMBO J. 12:821-830; Tuaillon et al. (1994) J. Immunol. 152:2912-2920; Taylor, L. et al. (1994) International Immunology 6:579-591; およびFishwild, D. et al. (1996) Nature Biotechnology 14:845-851においてさらに説明されており、これらの全文献の内容は、その全体が参照により本明細書に具体的に組み入れられる。さらに、米国特許第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,789,650号、同第5,877,397号、同第5,661,016号、同第5,814,318号、同第5,874,299号、および同第5,770,429号(すべてLonbergおよびKayによる);米国特許第5,545,807号(Suraniらによる);PCT公報WO 92/03918、WO 93/12227、WO 94/25585、WO 97/13852、WO 98/24884、およびWO 99/45962(すべてLonbergおよびKayによる);ならびにPCT公報WO 01/14424(Kormanらによる)をさらに参照されたい。
【0174】
別の態様において、本発明のヒト抗体は、ヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖導入染色体を有するマウスのような、導入遺伝子および導入染色体上にヒト免疫グロブリン配列を有するマウスを用いて、産生させることができる。本明細書において「KMマウス(商標)」と呼ばれるこのようなマウスは、IshidaらによるPCT公報WO 02/43478に詳細に記載されている。
【0175】
さらになお、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替のトランスジェニック動物系も当技術分野において利用可能であり、本発明の抗PD-L1抗体を産生させるために使用することができる。例えば、Xenomouse(Abgenix, Inc.)と呼ばれる代替のトランスジェニック系を使用することができる。このようなマウスは、例えば、Kucherlapatiらによる米国特許第5,939,598号、同第6,075,181号、同第6,114,598号、同第6150,584号、および同第6,162,963号に記載されている。
【0176】
さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替の染色体導入された動物系も当技術分野において利用可能であり、本発明の抗PD-L1抗体を産生させるために使用することができる。例えば、「TCマウス」と呼ばれる、ヒト重鎖導入染色体およびヒト軽鎖導入染色体の両方を有するマウスを使用することができる。このようなマウスは、Tomizuka et al. (2000) Proc. Natl. Acad Sci. USA 97:722-727に記載されている。さらに、ヒト重鎖導入染色体およびヒト軽鎖導入染色体を有する雌ウシが当技術分野において説明されており(Kuroiwa et al. (2002) Nature Biotechnology, 20:889-894)、本発明の抗PD-L1抗体を産生させるために使用することができる。
【0177】
本発明のヒトモノクローナル抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子のライブラリーをスクリーニングするためのファージディスプレイ法を用いて調製することもできる。ヒト抗体を単離するためのこのようなファージディスプレイ法は、当技術分野において確立されている。例えば、Ladnerらによる米国特許第5,223,409号、同第5,403,484号、および同第5,571,698号;Dowerらによる米国特許第5,427,908号および同第5,580,717号;McCaffertyらによる米国特許第5,969,108号および同第6,172,197号;ならびにGriffithsらによる米国特許第5,885,793号、同第6,521,404号、同第6,544,731号、同第6,555,313号、同第6,582,915号、および同第6,593,081号を参照されたい。
【0178】
本発明のヒトモノクローナル抗体はまた、免疫化した際にヒト抗体応答を生じさせることができるようにヒト免疫細胞を再構成されたSCIDマウスを用いて調製することもできる。このようなマウスは、例えば、Wilsonらによる米国特許第5,476,996号および同第5,698,767号に記載されている。
【0179】
ヒトIgマウスの免疫化
本発明のヒト抗体を産生させるためにヒトIgマウスが使用される場合、このようなマウスは、Lonberg, N. et al. (1994) Nature 368(6474):856-859、Fishwild, D. et al. (1996) Nature Biotechnology 14:845-851、ならびにPCT公報WO 98/24884およびWO 01/14424に記載されているように、PD-L1抗原および/もしくは組換えPD-L1、またはPD-L1融合タンパク質の精製調製物または濃縮調製物で免疫化することができる。好ましくは、マウスは、初回注入時に6〜16週齢である。例えば、PD-L1抗原の精製調製物または組換え調製物(5μg〜50μg)を使用して、腹腔内によりヒトIgマウスを免疫化することができる。
【0180】
PD-L1に対する完全なヒトモノクローナル抗体を生成させるための詳細な手順は以下の実施例1において説明する。様々な抗原を用いた累積的な経験により、完全フロイントアジュバント中の抗原で最初に腹腔内により(IP)免疫化し、続いて、不完全フロイントアジュバント中の抗原で1週間おきに腹腔内により免疫化(最長で合計6回)した場合、トランスジェニックマウスが応答することが示された。しかしながら、フロイントアジュバント以外のアジュバントも、効果的であることが判明している。さらに、アジュバント不在下の全細胞も、免疫原性が高いことが判明している。免疫応答は、眼窩後からの採血によって得られる血漿試料を用いて、免疫化プロトコールの過程を通して、モニターすることができる。血漿は、(後述するように)ELISAによってスクリーニングすることができ、かつ十分な力価の抗PD-L1ヒト免疫グロブリンを有するマウスを融合用に使用することができる。屠殺および膵臓切除の3日前に、静脈内経由でマウスに抗原を追加免疫してよい。各免疫化に対して2回〜3回の融合を実施する必要があり得ると予想される。典型的には、各抗原に対して6匹〜24匹の間のマウスが免疫化される。通常、HCo7系統およびHCo12系統の両方が使用される。さらに、HCo7導入遺伝子およびHCo12導入遺伝子の両方を一緒に導入して、2種の異なるヒト重鎖導入遺伝子(HCo7/HCo 12)を有する1匹のマウスを育てることもできる。あるいは、またはさらに、実施例1で説明するように、KMマウス(商標)系統を使用することもできる。
【0181】
本開示のヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの作製
本発明のヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作製するために、免疫化マウス由来の脾細胞および/またはリンパ節細胞を単離し、かつ、マウス骨髄腫細胞株のような適切な不死化細胞株に融合させることができる。結果として生じるハイブリドーマを、抗原特異的な抗体の産生についてスクリーニングすることができる。例えば、免疫化マウス由来の脾臓リンパ球の単細胞懸濁液を、50%PEGを用いて、6分の1の数のP3X63-Ag8.653非分泌性マウス骨髄腫細胞(ATCC、CRL 1580)に融合させてよい。約2×10
5個の細胞を平底マイクロタイタープレート中に播種し、続いて、20%胎児クローン血清、18%「653」馴化培地、5%オリゲン(origen)(IGEN)、4mM L-グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、5mM HEPES、0.055mM 2-メルカプトエタノール、50ユニット/mlペニシリン、50mg/mlストレプトマイシン、50mg/mlゲンタマイシン、および1×HAT(Sigma; HATは融合後24時間目に添加する)を含む選択培地中で2週間インキュベーションする。約2週間後、細胞は、HATをHTに交換した培地中で培養してよい。次いで、個々のウェルを、ELISAにより、ヒトモノクローナルIgM抗体およびIgG抗体についてスクリーニングすることができる。大規模なハイブリドーマ増殖が一度起こったら、通常10〜14日後に培地を観察してよい。抗体を分泌するハイブリドーマを再度播種し、再びスクリーニングしてよく、かつ、ヒトIgGについて依然として陽性である場合は、モノクローナル抗体を限界希釈によって少なくとも2回サブクローニングすることができる。次いで、安定なサブクローンをインビトロで培養して、特徴付けのために組織培養培地中で少量の抗体を生成させることができる。
【0182】
ヒトモノクローナル抗体を精製するには、選択したハイブリドーマを、モノクローナル抗体精製用の2リットルスピナーフラスコ中で増殖させることができる。上清を濾過および濃縮した後、プロテインAセファロース(Pharmacia, Piscataway, N.J.)を用いたアフィニティクロマトグラフィーにかけることができる。溶出されたIgGは、ゲル電気泳動および高速液体クロマトグラフィーによってチェックして純度を保証することができる。緩衝液はPBSに交換することができ、かつ濃度は、吸光係数1.43を用いてOD280によって決定することができる。モノクローナル抗体は、等分し、かつ-80℃で保存することができる。
【0183】
本開示のヒトモノクローナル抗体を産生するトランスフェクトーマの作製
本発明の抗体はまた、例えば、当技術分野において周知の組換えDNA技術および遺伝子トランスフェクション方法の組合せ(例えば、Morrison, S.(1985) Science 229:1202)を用いて、宿主細胞トランスフェクトーマにおいて産生させることもできる。
【0184】
例えば、抗体またはそれらの抗体断片を発現させるために、軽鎖および重鎖の一部分または完全長をコードするDNAを、標準的な分子生物学技術(例えば、関心対象の抗体を発現するハイブリドーマを用いたPCR増幅またはcDNAクローニング)によって得ることができ、かつそれらのDNAを、それらの遺伝子が転写制御配列および翻訳制御配列に機能的に連結されるように発現ベクター中に挿入することができる。この文脈において、「機能的に連結される」という用語は、抗体遺伝子が、ベクター内の転写制御配列および翻訳制御配列が、その抗体遺伝子の転写および翻訳を調節する意図された機能を果たすように、ベクターに連結されることを意味すると意図される。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用される発現宿主細胞に適合するように選択される。抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子は、別々のベクター中に挿入されてよく、またはより典型的には、両方の遺伝子が同じ発現ベクター中に挿入される。抗体遺伝子は、標準的な方法(例えば、抗体遺伝子断片およびベクター上の相補的な制限部位のライゲーション、または制限部位が存在しない場合には平滑末端ライゲーション)によって、発現ベクター中に挿入される。本明細書において説明する抗体の軽鎖可変領域および重鎖可変領域は、V
Hセグメントがベクター内のC
Hセグメントに機能的に連結され、かつV
Kセグメントがベクター内のC
Lセグメントに機能的に連結されるように、所望のアイソタイプの重鎖定常領域および軽鎖定常領域を既にコードしている発現ベクター中にそれらを挿入することによって、任意の抗体アイソタイプの完全長抗体遺伝子を作製するのに使用することができる。さらに、またはあるいは、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードし得る。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されるように、ベクター中にクローニングすることができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)でよい。
【0185】
抗体鎖遺伝子に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞において抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を有する。「調節配列」という用語は、プロモーター、エンハンサー、および、抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を制御する他の発現制御エレメント(例えばポリアデニル化シグナル)を含むと意図される。このような調節配列は、例えば、Goeddel(Gene Expression Technology. Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA(1990))に記載されている。調節配列の選択を含む、発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどのような因子に依存し得ることが、当業者には理解されると考えられる。哺乳動物宿主細胞発現のために好ましい調節配列には、サイトメガロウイルス(CMV)、サルウイルス(Simian Virus)40(SV40)、アデノウイルス(例えばアデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、およびポリオーマウイルスに由来するプロモーターおよび/またはエンハンサーなど、哺乳動物細胞において高レベルのタンパク質発現を指示するウイルスエレメントが含まれる。あるいは、ユビキチンプロモーターまたはβ-グロビンプロモーターなどの非ウイルス調節配列も使用され得る。さらになお、調節エレメントは、SV40初期プロモーターおよびヒトT細胞白血病ウイルス1型の末端反復配列に由来する配列を含むSRαプロモーター系のように、異なる供給源に由来する配列から構成された(Takebe, Y. et al. (1988) Mol. Cell. Biol. 8:466-472)。
【0186】
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)および選択マーカー遺伝子など付加的な配列を有し得る。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(例えば、いずれもAxelらによる米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号、および同第5,179,017号を参照されたい)。例えば、典型的には、選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に、G418、ヒグロマイシン、またはメトトレキサートなどの薬物に対する抵抗性を与える。好ましい選択マーカー遺伝子には、(メトトレキサート選択/増幅と共にdhfr-宿主細胞において使用するための)ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子および(G418選択のための)neo遺伝子が含まれる。
【0187】
軽鎖および重鎖を発現させるために、軽鎖および重鎖をコードする発現ベクターを、標準的な技術によって宿主細胞中にトランスフェクトする。用語「トランスフェクション」の様々な形態は、原核宿主細胞または真核宿主細胞中に外因性DNAを導入するために一般に使用される多種多様な技術、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈降、およびDEAE-デキストラントランスフェクションなどを包含すると意図される。原核宿主細胞または真核宿主細胞のいずれかにおいて本発明の抗体を発現させることが理論的に可能であるが、真核細胞、および最も好ましくは哺乳動物宿主細胞における抗体の発現が最も好ましい。これは、真核細胞、および特に哺乳細胞細胞の方が、原核細胞よりも、正しくフォールディングされ、かつ免疫学的に活性な抗体を構築し、かつ分泌しやすいからである。抗体遺伝子の原核生物発現は、高収量の活性抗体を産生させるのに効果的ではないことが報告されている(Boss, M. A.およびWood, C. R.(1985) Immunology Today 6:12-13)。
【0188】
本発明の組換え抗体を発現させるために好ましい哺乳動物宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えば、R. J. Kaufmanおよび P. A. Sharp (1982) Mol. Biol. 159:601-621で記載されているように、DHFR選択マーカーと共に使用される、UrlaubおよびChasin, (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220に記載されているdhfr-CHO細胞を含む)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞、およびSP2細胞が含まれる。特に、NSO骨髄腫細胞と共に使用する場合、別の好ましい発現系は、WO 87/04462、WO 89/01036、およびEP 338,841において開示されているGS遺伝子発現系である。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞に導入される場合、宿主細胞における抗体の発現、またはより好ましくは、宿主細胞を増殖させる培地中への抗体の分泌を可能にさせるのに十分な期間、それらの宿主細胞を培養することによって、抗体が産生される。抗体は、標準的なタンパク質精製方法を用いて培地から回収することができる。
【0189】
抗原に対する抗体結合の特徴付け
本発明の抗体は、例えば、標準的なELISAによって、PD-L1に対する結合について試験することができる。手短に言えば、マイクロタイタープレートを0.25μg/mlのPBS中精製PD-L1でコーティングし、次いでPBS中5%ウシ血清アルブミンでブロッキングする。抗体の希釈物(例えば、PD-L1で免疫化したマウスに由来する血漿の希釈物)を各ウェルに添加し、かつ37℃で1時間〜2時間インキュベートする。これらのプレートをPBS/Tweenで洗浄し、次いで、アルカリ性ホスファターゼに結合させた二次反応物(例えば、ヒト抗体に対しては、ヤギ抗ヒトIgG Fc特異的ポリクローナル反応物)と共に、37℃で1時間インキュベートする。洗浄後、これらのプレートをpNPP基質(1mg/ml)を用いて発色させ、かつ405〜650のODで解析する。好ましくは、最も高い力価を示すマウスが、融合に使用される。
【0190】
前述のELISAアッセイ法はまた、PD-L1免疫原に対して陽性の反応性を示すハイブリドーマをスクリーニングするために使用することもできる。高い結合力でPD-L1に結合するハイブリドーマをサブクローニングし、さらに特徴付ける。-140℃で保存される5〜10バイアルの細胞バンクを作製し、かつ抗体を精製するために、親細胞の反応性を保持している(EILSAによる)、各ハイブリドーマに由来する1つのクローンを選択することができる。
【0191】
抗PD-L1抗体を精製するには、選択したハイブリドーマを、モノクローナル抗体精製用の2リットルスピナーフラスコ中で増殖させることができる。上清を濾過および濃縮した後、プロテインAセファロース(Pharmacia, Piscataway, NJ)を用いたアフィニティクロマトグラフィーにかけることができる。溶出されたIgGは、ゲル電気泳動および高速液体クロマトグラフィーによってチェックして純度を保証することができる。緩衝液はPBSに交換することができ、かつ濃度は、吸光係数1.43を用いてOD
280によって決定することができる。モノクローナル抗体は、等分し、かつ-80℃で保存することができる。
【0192】
選択された抗PD-L1モノクローナル抗体が特有のエピトープに結合するか判定するために、市販されている試薬(Pierce, Rockford, IL)を用いて、各抗体をビオチン標識することができる。非標識のモノクローナル抗体およびビオチン標識モノクローナル抗体を用いた競合研究は、前述したようにPD-L1でコーティングしたELISAプレートを用いて実施することができる。ビオチン標識mAbの結合は、ストレプトアビジン(strep-avidin)-アルカリ性ホスファターゼプローブを用いて検出することができる。
【0193】
精製した抗体のアイソタイプを決定するために、特定のアイソタイプの抗体に特異的な試薬を用いて、アイソタイプELISAを実施することができる。例えば、ヒトモノクローナル抗体のアイソタイプを決定するために、マイクロタイタープレートのウェルを、1μg/mlの抗ヒト免疫グロブリンで、4℃で一晩コーティングすることができる。1%BSAでブロッキングした後、これらのプレートを、周囲温度で1時間〜2時間、1μg/mlまたはそれより低濃度の試験モノクローナル抗体または精製したアイソタイプ対照と反応させる。次いで、これらのウェルを、ヒトIgG1またはヒトIgMに特異的なアルカリ性ホスファターゼ結合プローブのいずれかと反応させることができる。前述したように、プレートを発色させ、かつ解析する。
【0194】
抗PD-L1ヒトIgGは、ウェスタンブロット法によって、PD-L1抗原との反応性に関してさらに試験することができる。手短に言えば、PD-L1を調製し、かつドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動に供することができる。電気泳動後、分離された抗原をニトロセルロース膜に移し、10%ウシ胎児血清でブロッキングし、かつ試験すべきモノクローナル抗体でプローブする。ヒトIgG結合は、抗ヒトIgGアルカリ性ホスファターゼを用いて検出し、かつBCIP/NBT基質タブレット(Sigma Chem. Co., St. Louis, Mo.)を用いて発色させることができる。
【0195】
抗体の物理的特性
本発明の抗体は、抗PD-L1抗体の様々な物理的特性によってさらに特徴付けすることができる。様々なアッセイ法が、これらの物理的特性に基づいて様々なクラスの抗体を検出および/または区別するのに使用され得る。
【0196】
いくつかの態様において、本発明の抗体は、軽鎖可変領域または重鎖可変領域のいずれかに、1つまたは複数のグリコシル化部位を含み得る。可変領域中の1つまたは複数のグリコシル化部位が存在することにより、抗原結合が変わるため、抗体の免疫原性の上昇または抗体のpKの変化が起こり得る(Marshall et al (1972) Annu Rev Biochem 41:673-702; Gala FAおよびMorrison SL (2004) J Immunol 172:5489-94; Wallick et al (1988) J Exp Med 168:1099-109; Spiro RG (2002) Glycobiology 12:43R-56R; Parekh et al (1985) Nature 316:452-7; Mimura et al. (2000) Mol Immunol 37:697-706)。グリコシル化は、N-X-S/T配列を含むモチーフに存在することが公知である。可変領域のグリコシル化は、Glycoblotアッセイ法を用いて試験することができる。このアッセイ法では、抗体を切断してFabを生成させ、次いで過ヨウ素酸酸化およびシッフ塩基形成を測定するアッセイ法を用いてグリコシル化に関して試験する。あるいは、可変領域のグリコシル化は、Fab由来の糖類を単糖に切断し、かつ個々の糖類含有量を解析するDionex光クロマトグラフィー(Dionex-LC)を用いて試験することもできる。場合により、可変領域グリコシル化を含まない抗PD-L1抗体を有することが好ましい。これは、可変領域中にグリコシル化モチーフを含まない抗体を選択することによって、または当技術分野において周知の標準的技術を用いてグリコシル化モチーフ内の残基を変異させることによって、実現することができる。
【0197】
好ましい態様において、本発明の抗体は、アスパラギン異性部位を含まない。脱アミドまたはイソアスパラギン酸作用(effect)は、それぞれN-G配列またはD-G配列上で起こり得る。脱アミドまたはイソアスパラギン酸作用は、イソアスパラギン酸の生成をもたらし、これは、主鎖ではなく側鎖カルボキシ末端から離れたねじれた構造を作り出すことによって、抗体の安定性を低下させる。イソアスパラギン酸の生成は、逆相HPLCを使用してイソアスパラギン酸について試験する、等量(iso-quant)アッセイ法を用いて測定することができる。
【0198】
各抗体は、特有の等電点(pI)を有すると考えられるが、一般に、抗体は、6〜9.5の間のpH範囲に入ると考えられる。IgG1抗体のpIは、典型的には7〜9.5のpH範囲内に入り、IgG4抗体のpIは、典型的には6〜8のpH範囲内に入る。抗体は、この範囲から外れるpIを有することがある。これらの作用は一般に知られていないが、正常範囲から外れたpIを有する抗体が、インビボ条件下でアンフォールディングおよび不安定さをいくらか示す場合があるという推測がある。等電点は、pH勾配を作り出し、かつ精度を高めるためにレーザー集光を利用し得る、キャピラリー等電点電気泳動アッセイ法を用いて試験することができる(Janini et al (2002) Electrophoresis 23:1605-11; Ma et al. (2001) Chromatographia 53:S75-89; Hunt et al (1998) J Chromatogr A 800:355-67)。場合により、正常範囲に入るpI値を有する抗PD-L1抗体を有することが好ましい。これは、正常範囲のpIを有する抗体を選択することによって、または、当技術分野において周知の標準的技術を用いて表面の荷電残基を変異させることによって、実現することができる。
【0199】
各抗体は、熱安定性を示す融解温度を有する(Krishnamurthy RおよびManning MC (2002) Curr Pharm Biotechnol 3:361-71)。熱安定性が高いほど、インビボでの総合的な抗体安定性がより高いことが示される。抗体の融点は、示差走査熱量測定のような技術を用いて測定することができる(Chen et al (2003) Pharm Res 20:1952-60; Ghirlando et al (1999) Immunol Lett 68:47-52)。T
M1は、抗体が最初にアンフォールディングする温度を示す。T
M2は、抗体が完全にアンフォールディングする温度を示す。一般に、本発明の抗体のT
M1は、60℃より高く、好ましくは65℃より高く、さらにより好ましくは70℃より高いことが好ましい。あるいは、抗体の熱安定性は、円二色性を用いて測定することもできる(Murray et al. (2002) J. Chromatogr Sci 40:343-9)。本明細書において開示される抗PD-L1抗体の熱安定性を表1に要約する。
【0201】
好ましい態様において、急速に分解しない抗体が選択される。抗PD-L1抗体の断片化は、当技術分野において十分に理解されているように、キャピラリー電気泳動(CE)およびMALDI-MSを用いて測定することができる(Alexander AJおよびHughes DE (1995) Anal Chem 67:3626-32)。
【0202】
他の好ましい態様において、凝集作用が最小限である抗体が選択される。凝集は、望まれない免疫応答の誘発および/または薬物動態学的特性の変化もしくは好ましくない薬物動態学的特性をもたらし得る。一般に、凝集が25%またはそれ以下、好ましくは20%またはそれ以下、さらにより好ましくは15%またはそれ以下、さらにより好ましくは10%またはそれ以下、およびさらにより好ましくは5%またはそれ以下の抗体が許容される。凝集は、単量体、2量体、3量体、または多量体を同定するためのサイズ排除カラム(SEC)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、および光散乱を含む、当技術分野において周知のいくつかの技術によって測定することができる。
【0203】
免疫複合体
別の局面において、本発明は、サイトトキシン、薬物(例えば免疫抑制薬)、または放射性毒素などの治療的部分に結合された、抗PD-L1抗体またはその断片を特徴とする。このような複合体は、本明細書において「免疫複合体」と呼ばれる。1種または複数種のサイトトキシンを含む免疫複合体は、「免疫毒素」と呼ばれる。サイトトキシンまたは細胞傷害性物質には、細胞に有害である(例えば死滅させる)任意の作用物質が含まれる。例には、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、ならびにそれらの類似体またはホモログが含まれる。治療物質には、例えば、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン(decarbazine))、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル(thioepa chlorambucil)、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびcis-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(以前はダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、ならびに抗有糸分裂物質(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)も含まれる。
【0204】
本発明の抗体に結合され得る治療的サイトトキシンの他の好ましい例には、デュオカルマイシン、カリケアミシン、メイタンシン、およびアウリスタチン、ならびにそれらの誘導体が含まれる。カリケアミシン抗体複合体の例は、市販されている(Mylotarg(商標)、Wyeth-Ayerst)。
【0205】
サイトトキシンは、当技術分野において利用可能なリンカー技術を用いて、本発明の抗体に結合させることができる。サイトトキシンを抗体に結合させるのに使用されたリンカータイプの例には、ヒドラゾン、チオエーテル、エステル、ジスルフィド、およびペプチドを含むリンカーが含まれるが、これらに限定されるわけではない。例えば、リソソーム区画内の低pHによる切断の影響を受けやすいか、またはカテプシン(例えば、カテプシンB、C、D)のような腫瘍組織中で優先的に発現されるプロテアーゼのようなプロテアーゼによる切断の影響を受けやすいリンカーを選択することができる。
【0206】
サイトトキシンのタイプ、リンカー、および治療物質を抗体に結合させるための方法のさらなる考察については、Saito, G. et al. (2003) Adv. Drug Deliv. Rev. 55:199-215; Trail, P.A. et al. (2003) Cancer Immunol. Immunother. 52:328-337; Payne, G. (2003) Cancer Cell 3:207-212; Allen, T.M. (2002) Nat. Rev. Cancer 2:750-763; Pastan, I. およびKreitman, R. J. (2002) Curr. Opin. Investig. Drugs 3:1089-1091; Senter, P.D.およびSpringer, C.J. (2001) Adv. Drug Deliv. Rev. 53:247-264も参照されたい。
【0207】
本発明の抗体はまた、放射性同位体に結合させて、放射性免疫複合体とも呼ばれる細胞障害性放射性薬剤を作製することもできる。診断的または治療的に使用するために抗体に結合させることができる放射性同位体の例には、ヨウ素
131、インジウム
111、イットリウム
90、およびルテチウム
177が含まれるが、これらに限定されるわけではない。放射性免疫複合体を調製するための方法は、当技術分野において確立されている。Zevalin(商標)(IDEC Pharmaceuticals)およびBexxar(商標)(Corixa Pharmaceuticals)を含む、放射性免疫複合体の例は市販されており、かつ、同様の方法が、本発明の抗体を用いて放射性免疫複合体を調製するのに使用され得る。
【0208】
本発明の抗体複合体は、所与の生物学的応答を変更するために使用され得、かつ薬物部分は、従来の化学治療物質に限定されると解釈されるべきではない。例えば、薬物部分は、所望の生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドでよい。このようなタンパク質には、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナスエキソトキシン、もしくはジフテリア毒素などの酵素的に活性な毒素またはそれらの活性断片;腫瘍壊死因子もしくはインターフェロン-γなどのタンパク質;または、例えば、リンフォカイン、インターロイキン-1(「IL-1」)、インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-6(「IL-6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」)などの生体応答調節物質、または他の増殖因子が含まれ得る。
【0209】
このような治療的部分を抗体に結合させるための技術は周知であり、例えば、Arnon et al., "Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy"、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al. (編), pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985); Hellstrom et al., "Antibodies For Drug Delivery," Controlled Drug Delivery(第2版), Robinson et al. (編), pp. 623-53(Marcel Dekker, Inc. 1987); Thorpe, "Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review" 、Monoclonal Antibodies '84:Biological And Clinical Applications, Pinchera et al. (編), pp. 475-506(1985); "Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy"、Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwin et al. (編), pp. 303-16 (Academic Press 1985)、およびThorpe et al., "The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates," Immunol. Rev., 62:119-58(1982)を参照されたい。
【0210】
二重特異性分子
別の局面において、本発明は、本発明の抗PD-L1抗体またはその断片を含む二重特異性分子を特徴とする。本発明の抗体またはその抗原結合部分を誘導体化するか、または別の機能的分子、例えば、別のペプチドもしくはタンパク質(例えば別の抗体もしくは受容体に対するリガンド)に連結させて、少なくとも2種の異なる結合部位または標的分子に結合する二重特異性分子を作製することができる。本発明の抗体を実際に誘導体化するか、または他の複数の機能的分子に連結させて、2種より多い異なる結合部位および/または標的分子に結合する多重特異性分子を作製することができる。このような多重特異性分子もまた、本明細書において使用される「二重特異性分子」という用語に包含されると意図される。本発明の二重特異性分子を作製するために、本発明の抗体を、二重特異性分子が結果として生じるように、別の抗体、抗体断片、ペプチド、または結合ミメティックなど1種または複数種の他の結合分子に(例えば、化学結合、遺伝的融合、非共有結合、または別の方法によって)機能的に連結させることができる。
【0211】
したがって、本発明は、PD-L1に対する少なくとも1種の第1の結合特異性および第2の標的エピトープに対する第2の結合特異性を含む二重特異性分子を含む。本発明のある特定の態様において、第2の標的エピトープはFc受容体、例えばヒトFcγRI(CD64)またはヒトFcα受容体(CD89)である。したがって、本発明は、FcγRまたはFcαRを発現するエフェクター細胞(例えば、単球、マクロファージ、または多形核細胞(PMN))、およびPD-L1を発現する標的細胞の両方に結合することができる二重特異性分子を含む。これらの二重特異性分子は、PD-L1を発現する細胞をエフェクター細胞に導き、かつ、PD-L1を発現する細胞の食作用、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、サイトカイン放出、またはスーパーオキシドアニオンの生成などFc受容体を介したエフェクター細胞活性を誘発する。
【0212】
二重特異性分子が多重特異性である本発明の態様において、この分子は、抗Fc結合特異性および抗PD-L1結合特異性に加えて、第3の結合特異性をさらに含み得る。1つの態様において、第3の結合特異性部分は、抗増強因子(EF)部分、例えば、細胞障害活性に関与する表面タンパク質に結合し、それによって標的細胞に対する免疫応答を高める分子である。「抗増強因子部分」は、所与の分子、例えば抗原もしくは受容体に結合し、それによって、Fc受容体または標的細胞抗原に対する結合決定基の作用の増強をもたらす、抗体、機能的な抗体断片、またはリガンドでよい。「抗増強因子部分」は、Fc受容体または標的細胞抗原に結合することができる。あるいは、抗増強因子部分は、第1の結合特異性部分および第2の結合特異性部分が結合する単位とは異なる単位に結合することができる。例えば、抗増強因子部分は、(例えば、CD2、CD3、CD8、CD28、CD4、CD40、ICAM-1、または標的細胞に対する免疫応答の増大をもたらす他の免疫細胞を介して)細胞障害性T細胞に結合することができる。
【0213】
1つの態様において、本発明の二重特異性分子は、結合特異性部分として、少なくとも1つの抗体、または、例えば、Fab、Fab'、F(ab')
2、Fv、もしくは単鎖Fvを含む、その抗体断片を含む。抗体はまた、その内容が参照により明確に組み入れられるLadnerらによる米国特許第4,946,778号に記載されているように、軽鎖2量体もしくは重鎖2量体、またはFvもしくは単鎖構築物などそれらの任意の微小な断片でもよい。
【0214】
1つの態様において、Fcγ受容体に対する結合特異性は、モノクローナル抗体によって提供され、その結合は、ヒト免疫グロブリンG(IgG)によって妨害されない。本明細書において使用される場合、「IgG受容体」という用語は、第1染色体上に位置する8つのγ鎖遺伝子のいずれかを意味する。これらの遺伝子は、3つのFcγ受容体クラス、すなわちFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、およびFcγRIII(CD16)に分類される合計12種の膜貫通型受容体アイソフォームまたは可溶性受容体アイソフォームをコードする。1つの好ましい態様において、Fcγ受容体は、ヒト高親和性FcγRIである。ヒトFcγRIは、72kDaの分子であり、単量体IgGに対して高親和性を示す(10
8M
-1〜10
9M
-1)。
【0215】
いくつかの好ましい抗Fcγモノクローナル抗体の作製および特徴付けが、PCT公報WO 88/00052および米国特許第4,954,617号においてFangerらによって説明されており、これらの教示は、参照により本明細書に完全に組み入れられる。これらの抗体は、受容体のFcγ結合部位とは異なる部位で、FcγRI、FcγRII、またはFcγRIIIのエピトープに結合し、したがって、それらの結合は、生理学的レベルのIgGによって実質的に妨害されない。本発明において有用な特異的抗FcγRI抗体は、mAb22、mAb32、mAb44、mAb62、およびmAb197である。mAb32を産生するハイブリドーマは、American Type Culture Collection(アメリカ培養細胞系統保存機関)ATCCアクセッション番号HB9469から入手可能である。他の態様において、抗Fcγ受容体抗体は、モノクローナル抗体22のヒト化型(H22)である。H22抗体の作製および特徴付けは、Graziano, R.F. et al. (1995) J. Immunol 155(10):4996-5002およびPCT公報WO 94/10332に記載されている。H22抗体を産生する細胞株は、HA022CL1という呼称でAmerican Type Culture Collectionに寄託されており、アクセッション番号はCRL 11177である。
【0216】
さらに別の好ましい態様において、Fc受容体に対する結合特異性は、ヒトIgA受容体、例えばFcα受容体(FcαRI(CD89))に結合する抗体によって提供され、その結合は、好ましくは、ヒト免疫グロブリンA(IgA)によって妨害されない。「IgA受容体」という用語は、第19染色体上に位置する1つのα遺伝子(FcαRI)の遺伝子産物を含むと意図される。この遺伝子は、別の様式で(alternatively)スプライシングされたいくつかの55kDa〜110kDaの膜貫通型アイソフォームをコードすることが公知である。FcαRI(CD89)は、単球/マクロファージ、好酸性顆粒球および好中性顆粒球上で構成的に発現されるが、エフェクター細胞ではない細胞集団上では発現されない。FcαRIはIgA1およびIgA2の両方に対して中程度の親和性(約5×10
7M
-1)を有し、これは、G-CSFまたはGM-CSFなどのサイトカインに曝露されると増加する(Morton, H.C. et al. (1996) Critical Reviews in Immunology 16:423-440)。IgAリガンド結合ドメインの外側でFcαRIに結合する、A3、A59、A62およびA77として同定される4種のFcαRI特異的モノクローナル抗体が説明されている(Monteiro, R.C. et al. (1992) J. Immunol. 148:1764)。
【0217】
FcαRIおよびFcγRIは、(1)免疫エフェクター細胞、例えば、単球、PMN、マクロファージ、および樹状細胞上で主として発現され、(2)高レベルで発現され(例えば細胞当たり5,000個〜100,000個)、(3)細胞障害活性(例えば、ADCC、食作用)の媒介物であり、(4)それらを標的とする、自己抗原を含む抗原の抗原提示の亢進を媒介するため、本発明の二重特異性分子中で使用するのに好ましい誘発(trigger)受容体である。
【0218】
ヒトモノクローナル抗体が好ましいが、本発明の二重特異性分子中で使用され得る他の抗体は、マウスモノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、およびヒト化モノクローナル抗体である。
【0219】
本発明の二重特異性分子は、当技術分野において公知の方法を用いて、構成要素の結合特異性部分、例えば、抗FcR結合特異性部分および抗PD-L1結合特異性部分を結合させることによって調製することができる。例えば、二重特異性分子の各結合特異性部分を別々に作製し、次いで互いに結合させることができる。結合特異性部分がタンパク質またはペプチドである場合、共有結合させるために、様々なカップリング剤または架橋剤を使用することができる。架橋剤の例には、プロテインA、カルボジイミド、N-スクシンイミジル-S-アセチル-チオアセタート(SATA)、5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、o-フェニレンジマレイミド(oPDM)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、およびスルホスクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン(cyclohaxane)-1-カルボキシラート(スルホ-SMCC)が含まれる(例えば、Karpovsky et al. (1984) J. Exp. Med. 160:1686; Liu, MA et al. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:8648を参照されたい)。他の方法には、Paulus (1985) Behring Ins. Mitt. No. 78, 118-132; Brennan et al. (1985) Science 229:81-83およびGlennie et al. (1987) J . Immunol. 139:2367-2375に記載されているものが含まれる。好ましい結合剤は、SATAおよびスルホ-SMCCであり、いずれも、Pierce Chemical Co.(Rockford, IL)から入手可能である。
【0220】
結合特異性部分が抗体である場合、2つの重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合を介してそれらを結合させることができる。特に好ましい態様において、ヒンジ領域は、結合の前に、奇数、好ましくは1個のスルフヒドリル残基を含むように改変される。
【0221】
あるいは、両方の結合特異性部分を同じベクター中でコードし、かつ、同じ宿主細胞中で発現させ、構築することもできる。この方法は、二重特異性分子がmAb×mAb、mAb×Fab、Fab×F(ab')
2、またはリガンド×Fab融合タンパク質である場合、特に有用である。本発明の二重特異性分子は、1つの単鎖抗体および1つの結合決定基を含む単鎖分子、または2つの結合決定基を含む単鎖の二重特異性分子でよい。二重特異性分子は、少なくとも2つの単鎖分子を含み得る。二重特異性分子を調製するための方法は、例えば、米国特許第5,260,203号、米国特許第5,455,030号、米国特許第4,881,175号、米国特許第5,132,405号、米国特許第5,091,513号、米国特許第5,476,786号、米国特許第5,013,653号、米国特許第5,258,498号、および米国特許第5,482,858号に記載されている。
【0222】
特異的標的に対する二重特異性分子の結合は、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ法(RIA)、FACS解析、バイオアッセイ法(例えば増殖阻害)、またはウェスタンブロットアッセイ法によって確認することができる。これらの各アッセイ法は、一般に、関心対象の複合体に対して特異的な標識された反応物(例えば抗体)を使用することによって、具体的な関心対象のタンパク質-抗体複合体の存在を検出する。例えば、FcR-抗体複合体は、例えば、抗体-FcR複合体を認識し、かつ特異的に結合する、酵素を結合させた抗体または抗体断片を用いて検出することができる。あるいは、これらの複合体は、様々な他のイムノアッセイ法のいずれかを用いて検出することもできる。例えば、抗体は、放射標識し、かつラジオイムノアッセイ法(RIA)において使用することができる(例えば、参照により本明細書に組み入れられるWeintraub, B., Principles of Radioimmunoassays, Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques, The Endocrine Society, March, 1986を参照されたい)。放射性同位体は、γカウンターもしくはシンチレーションカウンターの使用のような手段によって、またはオートラジオグラフィーによって検出することができる。
【0223】
薬学的組成物
別の局面において、本発明は、薬学的に許容される担体と共に調剤された、本発明のモノクローナル抗体またはその抗原結合部分の1つまたは組合せを含む組成物、例えば薬学的組成物を提供する。このような組成物には、1つまたは組合せの(例えば2つもしくはそれ以上の異なる)本発明の抗体、または免疫複合体もしくは二重特異性分子が含まれ得る。例えば、本発明の薬学的組成物は、標的抗原上の異なるエピトープに結合するか、または相補的活性を有する抗体(または免疫複合体もしくは二重特異性物質)の組合せを含み得る。
【0224】
本発明の薬学的組成物はまた、併用療法において、すなわち他の作用物質と組み合わせて投与することもできる。例えば、併用療法は、少なくとも1種の他の抗炎症性物質または免疫抑制物質と組み合わせられた、本発明の抗PD-L1抗体を含み得る。併用療法において使用され得る治療物質の例は、下記の本発明の抗体の用途に関するセクションにおいてより詳細に説明する。
【0225】
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される担体」には、生理学的に適合性である任意およびすべての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、ならびに等張化剤および吸収遅延剤などが含まれる。好ましくは、担体は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、非経口投与、脊髄投与、または表皮投与(例えば、注射もしくは輸注による)に適している。投与経路に応じて、活性化合物、すなわち抗体、免疫複合体、または二重特異性分子は、化合物を不活性化する場合がある酸作用および他の天然の条件から化合物を保護するための材料でコーティングしてよい。
【0226】
本発明の薬学的化合物には、1種または複数種の薬学的に許容される塩が含まれ得る。「薬学的に許容される塩」とは、親化合物の望ましい生物活性を保持しており、かついかなる望まれない毒物学的作用も与えない塩を意味する(例えば、Berge, S.M., et al. (1977) J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照されたい)。このような塩の例には、酸付加塩および塩基付加塩が含まれる。酸付加塩には、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、および亜リン酸などの非毒性無機酸に由来するもの、ならびに、脂肪族のモノカルボン酸およびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、ならびに脂肪族スルホン酸および芳香族スルホン酸などの非毒性有機酸に由来するものが含まれる。塩基付加塩には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムなどのアルカリ土類金属に由来するもの、ならびに、N、N'-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、およびプロカインなどの非毒性有機アミンに由来するものが含まれる。
【0227】
本発明の薬学的組成物はまた、薬学的に許容される抗酸化剤も含んでよい。薬学的に許容される抗酸化剤の例には以下のものが含まれる:(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、および亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤;(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、およびα-トコフェロールなどの油溶性抗酸化剤;ならびに(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、およびリン酸などの金属キレート剤。
【0228】
本発明の薬学的組成物中で使用され得る適切な水性担体および非水性担体の例には、水、エタノール、(グリセロール、プロピレングリコール、およびポリエチレングリコールなどの)ポリオール、ならびにそれらの適切な混合物、オリーブ油のような植物油、ならびにオレイン酸エチルのような注射剤用の有機エステルが含まれる。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング材料の使用によって、分散系の場合は必要とされる粒子径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。
【0229】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などの補助剤も含んでよい。微生物の存在の防止は、前記の滅菌手順、ならびに様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、およびフェノールソルビン酸などを含めることの両方によって徹底することができる。糖および塩化ナトリウムなどの等張化剤を組成物中に含めることもまた、望ましい場合がある。さらに、注射用の薬剤形態の持続吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなど吸収を遅延させる作用物質を含めることによって、実現することができる。
【0230】
薬学的に許容される担体には、無菌の注射用溶液または注射用分散液を用時調製するための、無菌の水溶液または水性分散液および無菌粉末が含まれる。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および作用物質の使用は、当技術分野において公知である。任意の従来の媒体または作用物質が活性化合物と適合しない場合を除いて、本発明の薬学的組成物におけるそれらの使用が企図される。補助的な活性化合物もまた、組成物中に混合することができる。
【0231】
治療用組成物は、典型的には、製造および貯蔵の条件下で無菌かつ安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、または高い薬物濃度に適した他の規則構造として調製され得る。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液状ポリエチレングリコールなど)、ならびにそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒でよい。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング材料の使用によって、分散系の場合は必要とされる粒子径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。多くの場合、等張化剤、例えば、糖、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトールなど、または塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましいと考えられる。注射用組成物の持続吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物中に含めることによって実現することができる。
【0232】
無菌注射用溶液は、必要に応じて、前述の成分の1種または組合せと共に、適切な溶媒中で必要な量の活性化合物を混合し、続いて滅菌精密ろ過することによって調製することができる。一般に、分散液は、基本となる分散媒および前述したもののうち必要とされる他の成分を含む無菌ビヒクル中に活性化合物を混合することによって調製する。無菌注射用溶液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、予め滅菌ろ過したその溶液から、活性成分および任意の付加的な所望の成分の粉末を生じる、真空乾燥およびフリーズドライ法(凍結乾燥)である。
【0233】
単一の剤形を作製するために担体材料と組み合わせられ得る活性成分の量は、治療される対象および個々の投与様式に応じて変わると考えられる。単一の剤形を作製するために担体材料と組み合わせられ得る活性成分の量は、一般に、治療的効果をもたらす組成物の量であると考えられる。一般に、100パーセントのうち、この量は、薬学的に許容される担体と組み合わせた、約0.01パーセント〜約99パーセントの活性成分、好ましくは約0.1パーセント〜約70パーセント、最も好ましくは約1パーセント〜約30パーセントの活性成分の範囲であると考えられる。
【0234】
投与計画は、最適な所望の応答(例えば治療応答)を提供するように調整される。例えば、単回ボーラスを投与してよく、いくつかに分割した用量を時間をかけて投与してよく、または、治療状況の緊急性によって必要とされるように、用量を比例的に減少または増加させてよい。投与を容易にし、かつ投薬量を均一にするために、単位剤形の非経口組成物を調製することが特に有利である。本明細書において使用される単位剤形とは、治療すべき対象に対する単位投薬量として適した物理的に個別の単位を意味する。各単位は、必要とされる薬学的担体と共同して所望の治療的効果をもたらすように計算された、所定の量の活性化合物を含む。本発明の単位剤形の仕様は、(a)活性化合物の独特の特徴および実現すべき個々の治療的効果、ならびに(b)個体の感受性を治療するためにこのような活性化合物を調剤する技術に特有の制約によって決定され、かつこれらに直接依存する。
【0235】
抗体の投与の場合、投薬量は、約0.0001mg/kg〜100mg/kg(受容者体重)、およびより普通には、0.01mg/kg〜5mg/kg(受容者体重)の範囲にわたる。例えば、投薬量は、0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重、もしくは10mg/kg体重、または1mg/kg〜10mg/kgの範囲内でよい。例示的な治療計画は、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、1ヶ月に1回、3ヶ月毎に1回、または3〜6ヶ月毎に1回の投与を伴う。本発明の抗PD-L1抗体の好ましい投与計画は、静脈内投与を介した、1mg/kg体重または3mg/kg体重を含み、抗体は以下の投薬スケジュールのうち1つを用いて与えられる:(i)4週間毎に6回投薬、次いで3ヶ月毎;(ii)3週間毎;(iii)3mg/kg体重を1回、次いで3週間毎に1mg/kg体重。
【0236】
いくつかの方法において、結合特異性が異なる2種またはそれ以上のモノクローナル抗体が同時に投与され、この場合、投与される各抗体の投薬量は、指示された範囲内に収まる。抗体は、通常、複数の機会に投与される。1回の投薬の間の間隔は、例えば、毎週、毎月、3ヶ月毎、または毎年でよい。間隔は、患者の標的抗原に対する抗体の血中レベルを測定することによって示されるように、不規則でもよい。いくつかの方法において、投薬量は、約1μg/ml〜1000μg/mlの血漿抗体濃度を実現するように調整され、かつ、いくつかの方法においては、約25μg/ml〜300μg/mlの血漿抗体濃度を実現するように調整される。
【0237】
あるいは、抗体は、徐放製剤として投与することができ、この場合、必要とされる投与頻度は少なくなる。投薬量および頻度は、患者における抗体の半減期に応じて変動する。一般に、ヒト抗体が最も長い半減期を示し、続いて、ヒト化抗体、キメラ抗体、および非ヒト抗体である。投薬量および投与頻度は、治療が予防的であるか、または治療的であるかに応じて変動し得る。予防的適用では、比較的少ない投薬量が、長期間に渡って比較的頻度の低い間隔で投与される。一部の患者は、その後一生、治療を受け続ける。治療的適用では、比較的短い間隔で比較的多い投薬量が、疾患の進行が緩和または終結されるまで、および好ましくは患者が疾患の症状の部分的または全面的な改善を示すまで、必要とされることがある。その後、予防的治療計画を患者に施すことができる。
【0238】
本発明の薬学的組成物中の活性成分の実際の投薬量レベルは、個々の患者、組成物、および投与様式に対して、患者に有毒とならずに、所望の治療応答を実現するのに効果的である活性成分の量を得るために、変更してよい。選択される投薬量レベルは、使用される本発明の個々の組成物、またはそれらのエステル、塩、もしくはアミドの活性、投与経路、投与時間、使用される個々の化合物の排泄速度、治療期間、使用される個々の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物、および/または材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全体的健康状態、および以前の病歴、ならびに医薬分野において周知である同様の因子を含む、様々な薬物動態学的因子に依存すると考えられる。
【0239】
本発明の抗PD-L1抗体の「治療的に有効な投薬量」は、好ましくは、疾患症状の重症度の低減、疾患症状の無い期間の頻度および持続期間の増大、または疾患の苦痛に起因する機能障害もしくは能力障害の予防をもたらす。例えば、PD-L1+腫瘍の治療の場合、「治療的に有効な投薬量」は、好ましくは、未治療の対象に比べて、少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、および、さらにより好ましくは少なくとも約80%、細胞増殖または腫瘍増殖を阻害する。ある化合物が腫瘍増殖を阻害する能力は、ヒト腫瘍における有効性の予測に役立つ動物モデル系において評価することができる。あるいは、ある組成物のこの特性は、その化合物の阻害能力、インビトロでのそのような阻害を、当業者に公知のアッセイ法によって検査することによって評価することができる。治療的有効量の治療的化合物は、腫瘍サイズを縮小し得るか、またはそうでなければ対象の症状を改善し得る。当業者は、対象の大きさ、対象の症状の重症度、および選択される個々の組成物または投与経路のような因子に基づいてそのような量を決定できると思われる。
【0240】
本発明の組成物は、当技術分野において公知である1種または複数種の様々な方法を用いて、1種または複数種の投与経路を介して投与することができる。当業者には理解されるように、投与の経路および/または様式は、所望の結果に応じて異なると考えられる。本発明の抗体の好ましい投与経路には、静脈内投与、筋肉内投与、皮内投与、腹腔内投与、皮下投与、脊髄投与、または例えば注射もしくは輸注による他の非経口投与経路が含まれる。本明細書において使用される「非経口投与」という語句は、通常は注射による、経腸投与および局所投与以外の投与様式を意味し、非限定的に、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、包内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、気管内、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、および胸骨内の注射および輸注が含まれる。
【0241】
あるいは、本発明の抗体は、局所、表皮、または粘膜の投与経路など非経口ではない経路を介して、例えば、鼻腔内に、経口的に、腟経由、直腸経由、舌下、または局所的に投与することができる。
【0242】
活性化合物は、埋め込み剤、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤のように、急速な放出から化合物を保護すると考えられる担体と共に調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸など生分解性の生体適合性ポリマーが使用され得る。このような製剤を調製するための多くの方法は、特許権を与えられているか、または、一般に当業者に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Robinson編、Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。
【0243】
治療的組成物は、当技術分野において公知の医療器具を用いて投与することができる。例えば、好ましい態様において、本発明の治療的組成物は、米国特許第5,399,163号、同第5,383,851号、同第5,312,335号、同第5,064,413号、同第4,941,880号、同第4,790,824号、または同第4,596,556号に開示されている用具のような、針無しの皮下投与器具を用いて投与することができる。本発明において有用な周知の埋め込み剤および構成単位(module)の例には、以下が含まれる:制御された速度で医薬を投与するための埋め込み可能なマイクロインフュージョンポンプを開示している米国特許第4,487,603号;皮膚を介して医用薬剤を投与するための治療用器具を開示している米国特許第4,486,194号;正確な輸注速度で医薬を送達するための医薬注入ポンプを開示している米国特許第4,447,233号;持続的な薬物送達用の流量可変な埋め込み可能輸注装置を開示している米国特許第4,447,224号;複数のチャンバー区画を有する浸透圧薬物送達系を開示している米国特許第4,439,196号;および浸透圧薬物送達系を開示している米国特許第4,475,196号。これらの特許は、参照により本明細書に組み入れられる。多数の他のこのような埋め込み剤、送達系、および構成単位が、当業者に公知である。
【0244】
特定の態様において、本発明のヒトモノクローナル抗体を、インビボでの適切な分布を確実にするように調剤することができる。例えば、血液脳関門(BBB)は、多くの親水性の高い化合物を排除する。(所望の場合は)本発明の治療的化合物がBBBを通過するよう徹底するために、例えばリポソーム中にそれらを調剤することができる。リポソームを製造する方法に関しては、例えば、米国特許第4,522,811号、同第5,374,548号、および同第5,399,331号を参照されたい。リポソームは、特定の細胞または器官中に選択的に輸送され、それによって標的化された薬物送達を向上させる1種または複数種の部分を含んでよい(例えば、V.V. Ranade (1989) J. Clin. Pharmacol. 29:685を参照されたい)。例示的なターゲティング部分には、葉酸またはビオチン(例えば、Lowらによる米国特許第5,416,016号を参照されたい)、マンノシド(Umezawa et al., (1988) Biochem. Biophys. Res. Commun. 153:1038)、抗体(P.G. Bloeman et al. (1995) FEBS Lett. 357:140; M. Owais et al. (1995) Antimicrob. Agents Chemother. 39:180)、サーファクタントタンパク質A受容体(Briscoe et al. (1995) Am. J. Physiol. 1233:134)、p120(Schreier et al. (1994) J. Biol. Chem. 269:9090)が含まれる。K. Keinanen; M.L. Laukkanen (1994) FEBS Lett. 346:123; J.J. Killion; I. J. Fidler (1994) Immunomethods 4:273も参照されたい。
【0245】
本発明の用途および方法
本発明の抗体、抗体組成物、および方法は、例えば、PD-L1の検出またはPD-L1の遮断による免疫応答の増強を含む、インビトロおよびインビボでの多数の有用性を有する。好ましい態様において、本発明の抗体は、ヒト抗体である。例えば、これらの分子は、培養状態の細胞に、インビボもしくはエクスビボで、またはヒト対象に、例えばインビボで投与して、様々な状況における免疫を増強することができる。したがって、1つの局面において、本発明は、対象における免疫応答を変更する方法であって、対象における免疫応答が変更されるように、本発明の抗体またはその抗原結合部分を対象に投与する段階を含む方法を提供する。好ましくは、応答は、増強されるか、刺激されるか、または上方調節される。
【0246】
本明細書において使用される場合、「対象」という用語は、ヒトおよび非ヒト動物を含むと意図される。非ヒト動物には、すべての脊椎動物、例えば、哺乳動物および非哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、雌ウシ、ウマ、ニワトリ、両生類、および爬虫類が含まれるが、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、雌ウシ、およびウマなどの哺乳動物が好ましい。好ましい対象には、免疫応答の増強を必要としているヒト患者が含まれる。これらの方法は、T細胞媒介性免疫応答を増強することによって治療できる疾患を有するヒト患者を治療するのに特に適している。ある特定の態様において、これらの方法は、インビボで癌細胞を治療するのに特に適している。免疫の抗原特異的な増強を実現するために、抗PD-L1抗体は、関心対象の抗原と共に投与され得る。PD-L1に対する抗体が別の作用物質と共に投与される場合、これら2つは、順番に、または同時に投与され得る。
【0247】
本発明はさらに、試料中のヒトPD-L1抗原の存在を検出するか、またはヒトPD-L1抗原の量を測定するための方法であって、抗体またはその一部分とヒトPD-L1との複合体の形成を可能にさせる条件下で、試料および対照試料を、ヒトPD-L1に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合部分と接触させる段階を含む方法も提供する。次いで、複合体の形成を検出し、その際、試料との複合体形成が対照試料と比べて異なる場合、試料中にヒトPD-L1抗原が存在することが暗示される。
【0248】
癌
抗体によってPD-L1を遮断することにより、癌細胞に対する患者の免疫応答を増強することができる。PD-L1は、正常なヒト細胞においては発現されないが、様々なヒト癌において豊富である(Dong et al. (2002) Nat Med 8:787-9)。PD-1とPD-L1の相互作用は、腫瘍浸潤リンパ球の減少、T細胞受容体を介した増殖の減少、および癌細胞による免疫回避をもたらす(Dong et al. (2003) J Mol Med 81:281-7; Blank et al. (2004)Cancer Immunol. Immunother. [電子出版]; Konishi et al. (2004) Clin. Cancer Res. 10:5094-100)。免疫抑制は、PD-1に対するPD-1の局所的相互作用を阻害することによって逆転させることができ、かつ、PD-L1に対するPD-L2の相互作用も同様に妨害される場合、効果は相加的である(Iwai et al. (2002) PNAS 99:12293-7; Brown et al. (2003) J. Immunol. 170:1257-66)。抗PD-L1抗体は、癌性腫瘍の増殖を阻害するために、単独で使用され得る。あるいは、抗PD-L1抗体は、後述するように、他の免疫原性物質、標準的な癌治療薬、または他の抗体と組み合わせて使用され得る。
【0249】
したがって、1つの態様において、本発明は、対象において腫瘍細胞の増殖を阻害する方法であって、治療的有効量の抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分を対象に投与する段階を含む方法を提供する。好ましくは、抗体は、(本明細書において説明するヒト抗ヒトPD-L1抗体のいずれかのような)ヒト抗PD-L1抗体である。さらに、またはあるいは、抗体は、キメラ抗PD-L1抗体またはヒト化抗PD-L1抗体でよい。
【0250】
本発明の抗体を用いて増殖を阻害することができる好ましい癌には、典型的に免疫療法に応答性の癌が含まれる。治療するのに好ましい癌の非限定的な例には、黒色腫(例えば、転移性の悪性黒色腫)、腎臓癌、前立腺癌、乳癌、結腸癌、および肺癌が含まれる。本発明の方法を用いて治療することができる他の癌の例には、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭部または頸部の癌、皮膚または眼内の悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、ファロピウス管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、腟癌、外陰癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病を含む慢性または急性の白血病、幼児期の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓または尿管の癌、腎う癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊椎腫瘍、脳幹神経膠腫、脳下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、アスベストによって誘発されるものを含む環境的に誘発される癌、および前記癌の組合せが含まれる。本発明はまた、転移性癌、特にPD-L1を発現する転移性癌の治療に有用である(Iwai et al. (2005) Int. Immunol. 17:133-144)。
【0251】
任意で、PD-L1に対する抗体を、癌細胞、精製された腫瘍抗原(組換えタンパク質、ペプチド、および炭水化物分子を含む)、細胞、および免疫刺激サイトカインをコードする遺伝子をトランスフェクトされた細胞などの免疫原性物質と組み合わせてよい(He et al (2004) J. Immunol. 173:4919-28)。使用され得る腫瘍ワクチンの非限定的な例には、gp100、MAGE抗原、Trp-2、MART1、および/もしくはチロシナーゼのペプチドのような黒色腫抗原のペプチド、またはサイトカインGM-CSFを発現するようにトランスフェクトされた腫瘍細胞(下記にさらに考察する)が含まれる。
【0252】
ヒトにおいて、黒色腫のような一部の腫瘍が免疫原性であることが示された。PD-L1遮断によってT細胞活性化の閾値を上げることにより、本発明者らは、宿主における腫瘍応答を活性化することを予期し得ることが予想される。
【0253】
PD-L1遮断は、ワクチン接種プロトコールと組み合わされた場合に最も効果的である可能性が高い。腫瘍に対するワクチン接種のための多くの実験的戦略が考案されている(Rosenberg, S., 2000, Development of Cancer Vaccines, ASCO Educational Book Spring:60-62; Logothetis, C., 2000, ASCO Educational Book Spring:300-302; Khayat, D. 2000, ASCO Educational Book Spring:414-428; Foon, K. 2000, ASCO Educational Book Spring:730-738を参照されたい。同様に、Restifo, N.およびSznol, M., Cancer Vaccines, Ch. 61, pp.3023-3043、DeVita, V. et al. (編), 1997, Cancer:Principles and Practice of Oncology. 第5版も参照されたい)。これらの戦略のうち1つにおいて、ワクチンは、自己由来または同種異系の腫瘍細胞を用いて調製される。これらの細胞ワクチンは、GM-CSFを発現するように腫瘍細胞に形質導入する場合、最も効果的であることが示された。GM-CSFは、腫瘍ワクチンに対する抗原提示の強力な活性化因子であることが示されている(Dranoff et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:3539-43)。
【0254】
様々な腫瘍における遺伝子発現および大規模な遺伝子発現パターンの研究により、いわゆる腫瘍特異的抗原が定義された(Rosenberg, SA (1999) Immunity 10:281-7)。多くの場合、これらの腫瘍特異的抗原は、腫瘍において、および腫瘍が発生した細胞において発現される分化抗原、例えば、メラノサイト抗原gp100、MAGE抗原、およびTrp-2である。より重要なことには、これらの抗原の多くは、宿主中に存在する腫瘍特異的T細胞の標的であることを示すことができる。PD-L1遮断を、腫瘍において発現される組換えタンパク質および/またはペプチドの集団と組み合わせて使用して、これらのタンパク質に対する免疫応答を生じさせることができる。これらのタンパク質は、通常は、免疫系によって自己抗原としてとらえられ、したがって、それらに対して寛容性である。腫瘍抗原はまた、染色体のテロメアの合成に必要とされ、かつ、85%超のヒト癌、およびごく限られた数の体細胞組織において発現されるタンパク質テロメラーゼも含み得る(Kim, N et al. (1994) Science 266:2011-2013)。(これらの体細胞組織は、様々な手段によって免疫攻撃から保護され得る)。腫瘍抗原はまた、タンパク質配列を改変するか、もしくは2つの無関係な配列(すなわち、フィラデルフィア染色体中のbcr-abl)間の融合タンパク質を作り出す体細胞変異が理由となって癌細胞において発現される「新生抗原」またはB細胞腫瘍由来のイディオタイプでもよい。
【0255】
他の腫瘍ワクチンには、ヒトパピローマウイルス(HPV)、肝炎ウイルス(HBVおよびHCV)、ならびにカポジヘルペス肉腫ウイルス(KHSV)などヒト癌に関係があるウイルスに由来するタンパク質が含まれ得る。PD-L1遮断と組み合わせて使用され得る別の形態の腫瘍特異的抗原は、腫瘍組織それ自体から単離された、精製された熱ショックタンパク質(HSP)である。これらの熱ショックタンパク質は、腫瘍細胞由来のタンパク質の断片を含み、かつこれらのHSPは、腫瘍免疫を誘発するための抗原提示細胞への送達が著しく効率的である(Suot, RおよびSrivastava, P (1995) Science 269:1585-1588; Tamura, Y. et al. (1997) Science 278:117-120)。
【0256】
樹状細胞(DC)は、抗原特異的応答を刺激する(prime)のに使用され得る強力な抗原提示細胞である。DCは、エクスビボで作製し、かつ様々なタンパク質抗原およびペプチド抗原ならびに腫瘍細胞抽出物を添加することができる(Nestle, F. et al. (1998) Nature Medicine 4:328-332)。また、遺伝的手段によってDCに形質導入して、これらの腫瘍抗原を同様に発現させることもできる。DCはまた、免疫化するために、腫瘍細胞に直接融合された(Kugler, A. et al. (2000) Nature Medicine 6:332-336)。ワクチン接種の方法として、DC免疫化をPD-L1遮断と効果的に組み合わせて、より強力な抗腫瘍応答を活性化することができる。
【0257】
PD-L1遮断はまた、標準的な癌治療と組み合わせることもできる。PD-L1遮断は、化学療法計画と効果的に組み合わせることができる。これらの場合、投与される化学療法薬の用量を減少させることができる可能性がある(Mokyr, M. et al. (1998) Cancer Research 58:5301-5304)。このような組合せの例は、黒色腫の治療用にデカルバジンと組み合わせた抗PD-L1抗体である。このような組合せの別の例は、黒色腫の治療用にインターロイキン-2(IL-2)と組み合わせた抗PD-L1抗体である。PD-L1遮断および化学療法の併用を支持する科学的な理論的根拠は、大半の化学療法用化合物の細胞障害性作用の結果である細胞死が、抗原提示経路中の腫瘍抗原のレベルの上昇をもたらすはずであるというものである。細胞死を介したPD-L1遮断との相乗作用をもたらし得る他の併用療法は、放射線療法、外科手術、およびホルモン抑制である。これらの各プロトコールは、宿主における腫瘍抗原の供給源を作り出す。また、血管新生阻害物質をPD-L1遮断と組み合わせてもよい。血管新生の阻害は腫瘍細胞の死滅を招き、これにより、宿主の抗原提示経路中に腫瘍抗原が供給され得る。
【0258】
PD-L1阻止抗体もまた、FcαまたはFcγ受容体を発現するエフェクター細胞を腫瘍細胞に導く二重特異性抗体と組み合わせて使用することができる(例えば、米国特許第5,922,845号および第5,837,243号を参照されたい)。二重特異性抗体は、2種の別々の抗原を標的とするために使用することができる。例えば、抗Fc受容体/抗腫瘍抗原(例えばHer-2/neu)二重特異性抗体は、マクロファージを腫瘍部位に導くために使用されている。このターゲティングにより、腫瘍特異的応答がより効果的に活性化され得る。T細胞群(arm)のこれらの応答は、PD-L1遮断の使用によって増強されると思われる。あるいは、抗原は、腫瘍抗原に結合する二重特異性抗体および樹状細胞に特異的な細胞表面マーカーを使用することによって、DCに直接送達することもできる。
【0259】
腫瘍は、多種多様なメカニズムによって、宿主の免疫監視から逃れる。これらのメカニズムの多くは、腫瘍によって発現され、かつ免疫抑制性であるタンパク質を不活性化することによって克服することができる。これらには、とりわけ、TGF-β(Kehrl, J. et al. (1986) J. Exp. Med. 163:1037-1050)、IL-10(Howard, M. およびO'Garra, A. (1992) Immunology Today 13:198-200)、およびFasリガンド(Hahne, M. et al. (1996) Science 274:1363-1365)が含まれる。これらの各実体に対する抗体を抗PD-L1と組み合わせて使用して、免疫抑制物質の作用を打ち消し、かつ宿主による腫瘍免疫応答を促進することができる。
【0260】
宿主の免疫応答性を活性化するのに使用され得る他の抗体を、抗PD-L1と組み合わせて使用することができる。これらには、DCの機能および抗原提示を活性化する、樹状細胞表面の分子が含まれる。抗CD40抗体は、効果的にT細胞のヘルパー活性の代わりをすることができ(Ridge, J. et al. (1998) Nature 393:474-478)、PD-L1抗体と組み合わせて使用され得る(Ito, N. et al. (2000) Immunobiology 201(5)527-40)。OX-40(Weinberg, A. et al. (2000) Immunol 164:2160-2169)、4-1BB(Melero, I. et al. (1997) Nature Medicine 3:682-685(1997)、およびICOS(Hutloff, A. et al. (1999)Nature 397:262-266)などのT細胞共刺激分子に対する抗体、ならびにCTLA-4(例えば米国特許第5,811,097号)またはBTLA(Watanabe, N. et al. (2003) Nat Immunol 4:670-9)、B7-H4(Sica, GL et al. (2003) Immunity 18:849-61)など負の共刺激分子の活性を妨害する抗体を活性化することによっても、T細胞活性化のレベルを上昇させることができる。
【0261】
骨髄移植は、現在、造血系由来の様々な腫瘍を治療するために使用されている。移植片対宿主疾患がこの治療の結果であるが、治療的利益は、移植片対腫瘍応答から得ることができる。PD-L1遮断を用いて、ドナーの移植される腫瘍特異的T細胞の有効性を高めることができる。
【0262】
腫瘍に対する抗原特異的T細胞のために、エクスビボでの抗原特異的T細胞の活性化および増殖ならびにレシピエントへのこれらの細胞の養子移入を伴う、いくつかの実験的な治療プロトコールもある(Greenberg, R.およびRiddell, S.(1999) Science 285:546-51)。これらの方法はまた、CMVのような感染性病原因子に対するT細胞応答を活性化するのにも使用することができる。抗PD-L1抗体の存在下でのエクスビボ活性化により、養子移入されるT細胞の出現率および活性が高まると予想することができる。
【0263】
感染症
本発明の他の方法は、特定の毒素または病原体に曝露された患者を治療するのに使用される。したがって、本発明の別の局面は、対象において感染症を治療する方法であって、対象の感染症が治療されるように、抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分を対象に投与する段階を含む方法を提供する。好ましくは、抗体は、(本明細書において説明するヒト抗PD-L1抗体のいずれかのような)ヒト抗ヒトPD-L1抗体である。さらに、またはあるいは、抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗体でよい。
【0264】
上記の腫瘍への適用と同様に、抗体を介したPD-L1遮断を、単独で、またはワクチンと組み合わせてアジュバントとして使用して、病原体、毒素、および自己抗原に対する免疫応答を刺激することができる。この治療的アプローチが特に有用であり得る病原体の例には、現在のところ効果的なワクチンが無い病原体、または十分に効果的とは言えない従来のワクチンに対する病原体が含まれる。これらには、HTV、肝炎(Hepatitis)(A、B、およびC)、インフルエンザ(Influenza)、ヘルペス(Herpes)、ジアルジア(Giardia)、マラリア(Malaria)、リーシュマニア(Leishmania)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、緑膿菌(Pseudomonas Aeruginosa)が含まれるがそれらに限定されるわけではない。PD-L1遮断は、感染症の経過中に抗原の変化を示すHIVのような病原因子によって確立された感染症に対して特に有用である。これらの新規なエピトープは、抗ヒトPD-L1の投与時に異物として認識され、したがって、PD-L1を介した負のシグナルによって抑制されない強いT細胞応答が喚起される。
【0265】
本発明の方法によって治療可能な感染症を引き起こす病原性ウイルスのいくつかの例には、HIV、肝炎(A、B、またはC)、ヘルペスウイルス(例えば、VZV、HSV-1、HAV-6、HSV-II、およびCMV、エプスタイン・バー(Epstein-Barr)ウイルス)、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コルノウイルス(cornovirus)、呼吸器合胞体ウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デング熱ウイルス、パピローマウイルス、軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルス、およびアルボウイルス脳炎ウイルスが含まれる。
【0266】
本発明の方法によって治療可能な感染症を引き起こす病原性細菌のいくつかの例には、クラミジア(chlamydia)、リケッチア細菌、ミコバクテリア(mycobacteria)、ブドウ球菌(staphylococci)、連鎖球菌(streptococci)、肺炎連鎖球菌(pneumonococci)、髄膜炎菌(meningococci)およびコノコッカス(conococci)、クレブシエラ(klebsiella)、プロテウス(proteus)、セラチア(serratia)、シュードモナス(pseudomonas)、レジオネラ(legionella)、ジフテリア(diphtheria)、サルモネラ(salmonella)、桿菌(bacilli)、コレラ菌、破傷風菌、ボツリヌス菌、炭疽菌、ペスト菌、レプトスピラ菌、およびライム病菌が含まれる。
【0267】
本発明の方法によって治療可能な感染症を引き起こす病原性真菌のいくつかの例には、カンジダ属(Candida)(アルビカンス(albicans)、クルセイ(krusei)、グラブラタ(glabrata)、トロピカリス(tropicalis)など)、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、アスペルギルス(Aspergillus)属(フミガーツス(fumigatus)、ニガー(niger)など)、ケカビ目(Mucorales)の属(ケカビ属(mucor)、アブシディア属(absidia)、クモノスカビ属(rhizophus))、スポロスリックス・シェンキー(Sporothrix schenkii)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、ブラジル・パラコクシジオイデス(Paracoccidioides brasiliensis)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)およびヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)が含まれる。
【0268】
本発明の方法によって治療可能な感染症を引き起こす病原性寄生虫のいくつかの例には、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、大腸バランチジウム(Balantidium coli)、ネグレリア・フォーレリ(Naegleria fowleri)、アカントアメーバ(Acanthamoeba)種、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)種、ニューモシスティス・カリニ(Pneumocystis carinii)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、ネズミバベシア(Babesia microti)、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)、クルーズ・トリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)、ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani)、トキソプラズマ・ゴンジ(Toxoplasma gondii)、ブラジル鉤虫(Nippostrongylus brasiliensis)が含まれる。
【0269】
上記の方法すべてにおいて、PD-L1遮断は、サイトカイン治療(例えば、インターフェロン、GM-CSF、G-CSF、IL-2)のような他の形態の免疫療法、または腫瘍抗原の提示を向上させる二重特異性抗体療法と組み合わせることができる(例えば、Holliger (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448; Poljak (1994) Structure 2:1121-1123を参照されたい)。
【0270】
自己免疫反応
抗PD-L1抗体は、自己免疫反応を喚起および増幅し得る。実際、腫瘍細胞およびペプチドワクチンを用いた抗腫瘍応答の誘導により、多くの抗腫瘍応答が、抗自己反応性(前記のvan Elsasらの抗CTLA-4+GM-CSF改変B16黒色腫で観察された色素脱失;Trp-2をワクチン接種されたマウスにおける色素脱失(Overwijk, W. et al. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96:2982-2987);TRAMP腫瘍細胞ワクチン(Hurwitz, A. (2000) 前記)、黒色腫ペプチド抗原ワクチン接種によって誘発される自己免疫性前立腺炎、およびヒト臨床試験において観察された白斑(Rosenberg, SAおよびWhite, DE (1996) J. Immunother Emphasis Tumor Immunol 19(1):81-4))を伴うことが明らかになっている。
【0271】
したがって、抗PD-L1遮断を様々な自己タンパク質と共に使用することを検討して、疾患治療のためにこれらの自己タンパク質に対する免疫応答を効率的に生じさせるワクチン接種プロトコールを考案することが可能である。例えば、アルツハイマー病は、脳中のアミロイド沈着物中にAβペプチドの不適切な蓄積を伴う;アミロイドに対する抗体応答は、これらのアミロイド沈着物を除くことができる(Schenk et al.,(1999) Nature 400:173-177)。
【0272】
アレルギーおよび喘息の治療用のIgE、ならびに関節リウマチ用のTNFαなど他の自己タンパク質もまた、標的として使用することができる。最後に、様々なホルモンに対する抗体反応を、抗PD-L1抗体の使用によって誘導することができる。生殖ホルモンに対する中和抗体応答は、避妊のために使用することができる。特定の腫瘍の成長に必要とされるホルモンおよび他の可溶性因子に対する中和抗体応答は、考え得るワクチン接種標的とみなすこともできる。
【0273】
抗PD-L1抗体を使用するための前述の類似した方法は、アルツハイマー病のAβを含むアミロイド沈着物、TNFαのようなサイトカイン、およびIgEなど他の自己抗原の不適切な蓄積を有する患者を治療するために治療的自己免疫応答を誘導するのに使用することができる。
【0274】
ワクチン
抗PD-L1抗体は、抗PD-L1抗体と関心対象の抗原(例えばワクチン)の同時投与によって抗原特異的免疫応答を刺激するのに使用され得る。したがって、別の局面において、本発明は、対象における抗原に対する免疫応答を増強する方法であって、対象における抗原に対する免疫応答が増強されるように、(i)抗原、および(ii)抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分を対象に投与する段階を含む方法を提供する。好ましくは、抗体は、(本明細書において説明するヒト抗PD-L1抗体のいずれかのような)ヒト抗ヒトPD-L1抗体である。さらに、またはあるいは、抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗体でよい。抗原は、例えば、腫瘍抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、または病原体由来の抗原でよい。このような抗原の非限定的な例には、上記の腫瘍抗原(もしくは腫瘍ワクチン)、または前述のウイルス、細菌、もしくは他の病原体に由来する抗原など上記のセクションで考察したものが含まれる。
【0275】
抗PD-L1抗体はまた、大腸炎を伴う、T細胞に抑制される消耗症のような疾患に関連する二次的影響を抑止するのにも使用され得る(Kanai et al. (2003) J. Immunol. 171:4156-63)。したがって、別の局面において、本発明は、白血球浸潤を抑止して、T細胞によるIFN-γ、IL-2、およびIFN-αの産生を減少させる方法を提供する。好ましくは、抗体は、(本明細書において説明するヒト抗PD-L1抗体のいずれかのような)ヒト抗ヒトPD-L1抗体である。さらに、またはあるいは、抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗体でよい。
【0276】
抗PD-L1抗体はまた、扁平苔癬、すなわちT細胞媒介性の慢性炎症性皮膚粘膜疾患のような慢性炎症性疾患のような疾患を治療するのにも使用され得る(Youngnak-Piboonratanakit et al. (2004) Immunol Letters 94:215-22)。したがって、別の局面において、本発明は、T細胞による慢性炎症性疾患を抑止する方法を提供する。好ましくは、抗体は、(本明細書において説明するヒト抗PD-L1抗体のいずれかのような)ヒト抗ヒトPD-L1抗体である。さらに、またはあるいは、抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗体でよい。
【0277】
本発明の抗体組成物(例えば、ヒトモノクローナル抗体、多重特異性分子および二重特異性分子、ならびに免疫複合体)をインビボおよびインビトロで投与するのに適した経路は当技術分野において周知であり、かつ当業者によって選択され得る。例えば、抗体組成物は、注射(例えば、静脈内または皮下)によって投与することができる。使用する分子の適切な投薬量は、対象の年齢および体重、ならびに抗体組成物の濃度および/または配合に依存する。
【0278】
前述したように、本発明のヒト抗PD-L1抗体は、1種または複数種の他の治療物質、例えば、細胞傷害性物質、放射毒性物質、または免疫抑制物質と同時投与してよい。抗体は、(イムノコンプレックスとして)作用物質に連結させてよく、または作用物質とは別に投与してよい。後者の場合(個別投与)、抗体は、作用物質の前、後、もしくは同時に投与してよく、または、他の公知の療法、例えば、抗癌療法、例えば、放射線療法と同時に投与してよい。このような治療物質には、とりわけ、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シスプラスチン硫酸ブレオマイシン、カルムスチン、クロラムブシル、およびシクロホスファミドヒドロキシ尿素などの抗腫瘍剤が含まれ、これらは、それら自体では、患者に毒性または準毒性のレベルでのみ有効である。シスプラスチンは、4週毎に1回、100mg/用量として静脈内投与され、アドリアマイシンは、21日毎に1回、60mg/ml〜75mg/mlの用量として静脈内投与される。本発明のヒト抗PD-L1抗体またはそれらの抗原結合断片と化学療法物質との同時投与により、ヒト腫瘍細胞に細胞障害作用をもたらす異なるメカニズムを介して機能する2種の抗癌物質が提供される。このような同時投与により、薬物耐性の発生、または抗体との反応性を低下させると考えられる腫瘍細胞の抗原性の変化に起因する問題を解決することができる。
【0279】
本発明の抗体組成物(例えば、ヒト抗体、二重特異性分子もしくは多重特異性分子、または免疫複合体)および使用するための取扱い説明書を含むキットもまた、本発明の範囲内である。キットは、少なくとも1種の付加的な試薬、または1種もしくは複数種の付加的な本発明のヒト抗体(例えば、第1のヒト抗体とは異なるPD-L1抗原中のエピトープに結合する相補的活性を有するヒト抗体)をさらに含んでよい。キットは、典型的には、キットの内容物の所期の用途を示すラベルを含む。ラベルという用語は、キットの表面に、もしくはキットと共に供給されるか、または別の方法でキットに添えられる、任意の書面または記録材料を含む。
【0280】
本発明は、さらに限定するものとして解釈されるべきではない以下の実施例によってさらに例示される。本出願の全体にわたって引用されるすべての図面、ならびにすべての参考文献、特許、および公開された特許出願の内容は、参照により本明細書に明確に組み入れられる。
【実施例】
【0281】
実施例
実施例1:PD-L1に対するヒトモノクローナル抗体の作製
抗原
免疫化プロトコールは、(i)PD-L1の細胞外部分を含む組換え融合タンパク質、および(ii)膜結合型の完全長PD-L1の両方を抗原として使用した。いずれの抗原も、CHO細胞株において組換えトランスフェクション法によって作製した。
【0282】
トランスジェニックマウス(KM-Mouse(登録商標)コロニー)
PD-L1に対する完全なヒトモノクローナル抗体を、ヒト抗体遺伝子を発現する染色体導入されたトランスジェニックマウスのKM系統を用いて調製した。このマウス系統において、内因性のマウスκ軽鎖遺伝子は、Chen et al. (1993) EMBO J. 12:811-820で説明されているように、ホモ接合性に破壊されており、かつ内因性のマウス重鎖遺伝子は、PCT公報WO 01/09187の実施例1で説明されているように、ホモ接合性に破壊されている。さらに、このマウス系統は、Fishwild et al. (1996) Nature Biotechnology 14:845-851に記載されているヒトκ軽鎖導入遺伝子のKCo5、およびPCT公報WO 02/43478に記載されているSC20導入染色体を有する。
【0283】
KM Mouse(登録商標)の免疫化
PD-L1に対する完全なヒトモノクローナル抗体を作製するために、KM Mouse(登録商標)系統のマウスの同齢集団を、抗原としての精製組換えPD-L1-IgおよびPD-L1をトランスフェクトされたCHO細胞で免疫化した。HuMabマウスに対する一般的な免疫化スキームは、Lonberg, N. et al (1994) Nature 368(6474):856-859; Fishwild, D. et al. (1996) Nature Biotechnology 14:845-851、およびPCT公報WO 98/24884に記載されている。マウスは、抗原の初回注入時に6〜16週齢であった。PD-L1-Ig抗原の精製組換え調製物(5μg〜50μg)および5〜10×10
6個の細胞を用いて、腹腔内(IP)経由、皮下(Sc)経由、または足蹠注射によって、HuMabマウスを免疫化した。
【0284】
トランスジェニックマウスを、完全フロイントアジュバントまたはRibiアジュバント中の抗原で、腹腔内により2回免疫化し、続いて、不完全フロイントアジュバントまたはRibiアジュバント中の抗原で、腹腔内により3日〜21日(最多で合計11回の免疫化)免疫化した。免疫応答は、眼窩後からの採血によってモニターした。(後述のように)ELISAによって血漿をスクリーニングし、かつ、十分な力価の抗PD-L1ヒト免疫グロブリンを有するマウスを融合のために使用した。屠殺および膵臓切除の3日前に、静脈内経由でマウスに抗原を追加免疫した。典型的には、各抗原に対して10回〜35回の融合を実施した。数十匹のマウスを各抗原に対して免疫化した。
【0285】
抗PD-L1抗体を産生するKMマウス(登録商標)の選択
PD-L1に結合した抗体を産生するHuMabマウスを選択するために、免疫化したマウスに由来する血清を、Fishwild, D. et al. (1996)によって説明されているように、ELISAによって試験した。手短に言えば、マイクロタイタープレートを、PBS中に1μg/ml〜2μg/mlで溶かしたトランスフェクトCHO細胞由来の精製組換えPD-L1融合タンパク質(100μl/ウェル)でコーティングし、4℃で一晩インキュベートし、次いで、200μl/ウェルのPBS/Tween(0.05%)中5%ウシ胎児血清でブロッキングした。PD-L1免疫化マウス由来の血清の希釈物を各ウェルに添加し、かつ周囲温度で1時間〜2時間インキュベートした。これらのプレートをPBS/Tweenで洗浄し、次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)と結合させたヤギ抗ヒトIgGポリクローナル抗体と共に、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、これらのプレートをABTS基質(Sigma、A-1888、0.22mg/ml)を用いて発色させ、かつ分光光度計により、OD415〜495で解析した。最も高力価の抗PD-L1抗体を示したマウスを融合に使用した。後述するように融合を実施し、かつ、ハイブリドーマ上清の抗PD-L1活性をELISAによって試験した。
【0286】
PD-L1に対するヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの作製
KMマウスから単離したマウス脾細胞を、標準的なプロトコールに基づいて、PEGを用いてマウス骨髄腫細胞株に融合させた。次いで、結果として生じるハイブリドーマを、抗原特異的抗体の産生についてスクリーニングした。免疫化マウス由来の脾細胞の単細胞懸濁液を、50%PEG(Sigma)を用いて、4分の1の数のSP2/0非分泌性マウス骨髄腫細胞(ATCC、CRL 1581)に融合させた。細胞を約1×10
5個/ウェルで平底マイクロタイタープレート中に播種し、続いて、10%胎児クローン血清、10% P388D1(ATCC、CRL TIB-63)馴化培地、DMEM(Mediatech、CRL 10013、高グルコース、L-グルタミン、およびピルビン酸ナトリウムを含む)および5mM HEPES中3%〜5%オリゲン(origen)(IGEN)、0.055mM 2-メルカプトエタノール、50mg/mlゲンタマイシン、および1×HAT(Sigma、CRL P-7185)を含む選択培地中で約2週間インキュベーションした。1〜2週間後、細胞を、HATをHTに交換した培地中で培養した。次いで、個々のウェルを、(前述の)ELISAにより、ヒト抗PD-L1モノクローナルIgG抗体についてスクリーニングした。大規模なハイブリドーマ増殖が一度起こったら、通常10日〜14日後に培地を観察した。抗体を分泌するハイブリドーマを再度播種し、再びスクリーニングし、かつ、ヒトIgGについて依然として陽性である場合は、抗PD-L1モノクローナル抗体を限界希釈によって少なくとも2回サブクローニングした。次いで、安定なサブクローンをインビトロで培養して、さらに特徴付けするために組織培養培地中で少量の抗体を生成させた。
【0287】
ハイブリドーマクローン3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、および13G4を、さらに解析するために選択した。
【0288】
実施例2:ヒトモノクローナル抗体3G10、12A4、および、10A5の構造的特徴付け
3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、および13G4モノクローナル抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域をコードしているcDNA配列を、標準的なPCR技術を用いて、それぞれ、3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、および13G4ハイブリドーマから獲得し、かつ、標準的なDNA配列決定技術を用いて配列決定した。
【0289】
3G10の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、
図1A、ならびにそれぞれSEQ ID NO:81およびSEQ ID NO:1に示す。
【0290】
3G10の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、
図1B、ならびにそれぞれSEQ ID NO:91およびSEQ ID NO:11に示す。
【0291】
3G10重鎖免疫グロブリン配列を公知のヒト生殖系列免疫グロブリン重鎖配列と比較することにより、3G10重鎖が、ヒト生殖系列VH1-18由来のVHセグメント、未決定のDセグメント、およびヒト生殖系列JH6b由来のJHセグメントを使用していることが実証された。生殖系列VH1-18配列に対する3G10 VH配列のアライメントを
図11に示す。CDR領域を決定するKabatシステムを用いて3G10 VH配列をさらに解析して、
図1Aおよび
図11、ならびに、それぞれSEQ ID NO:21、SEQ ID NO:31、およびSEQ ID NO:41に示すように、重鎖のCDR1領域、CDR2領域、およびCD3領域に線を引いた。
【0292】
3G10軽鎖免疫グロブリン配列を公知のヒト生殖系列免疫グロブリン軽鎖配列と比較することにより、3G10軽鎖が、ヒト生殖系列VKL6由来のVLセグメントおよびヒト生殖系列JK1由来のJKセグメントを使用していることが実証された。生殖系列VKL6配列に対する3G10 VL配列のアライメントを
図21に示す。CDR領域を決定するKabatシステムを用いて3G10 VL配列をさらに解析して、
図1Bおよび
図21、ならびに、それぞれSEQ ID NO:51、SEQ ID NO:61、およびSEQ ID NO:71に示すように、軽鎖のCDR1領域、CDR2領域、およびCD3領域に線を引いた。
【0293】
12A4の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、
図2A、ならびにそれぞれSEQ ID NO:82およびSEQ ID NO:2に示す。
【0294】
12A4の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、
図2B、ならびにそれぞれSEQ ID NO:92およびSEQ ID NO:12に示す。
【0295】
12A4重鎖免疫グロブリン配列を公知のヒト生殖系列免疫グロブリン重鎖配列と比較することにより、12A4重鎖が、ヒト生殖系列VH1-69由来のVHセグメント、ヒト生殖系列3-10由来のDセグメント、およびヒト生殖系列JH6b由来のJHセグメントを使用していることが実証された。生殖系列VH1-69配列に対する12A4 VH配列のアライメントを
図12に示す。CDR領域を決定するKabatシステムを用いて12A4 VH配列をさらに解析して、
図2Aおよび
図12、ならびに、それぞれSEQ ID NO:22、SEQ ID NO:32、およびSEQ ID NO:42に示すように、重鎖のCDR1領域、CDR2領域、およびCD3領域に線を引いた。
【0296】
12A4軽鎖免疫グロブリン配列を公知のヒト生殖系列免疫グロブリン軽鎖配列と比較することにより、12A4軽鎖が、ヒト生殖系列VKL6由来のVLセグメントおよびヒト生殖系列JK1由来のJKセグメントを使用していることが実証された。生殖系列VKL6配列に対する12A4 VL配列のアライメントを
図22に示す。CDR領域を決定するKabatシステムを用いて12A4 VL配列をさらに解析して、
図2Bおよび
図22、ならびに、それぞれSEQ ID NO:52、SEQ ID NO:62、およびSEQ ID NO:72に示すように、軽鎖のCDR1領域、CDR2領域、およびCD3領域に線を引いた。
【0297】
10A5の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、
図3A、ならびにそれぞれSEQ ID NO:83およびSEQ ID NO:3に示す。
【0298】
10A5の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、
図3B、ならびにそれぞれSEQ ID NO:93およびSEQ ID NO:13に示す。
【0299】
10A5重鎖免疫グロブリン配列を公知のヒト生殖系列免疫グロブリン重鎖配列と比較することにより、10A5重鎖が、ヒト生殖系列VH1-3由来のVHセグメント、ヒト生殖系列5-5由来のDセグメント、およびヒト生殖系列JH4b由来のJHセグメントを使用していることが実証された。生殖系列VH1-3配列に対する10A5 VH配列のアライメントを
図13に示す。CDR領域を決定するKabatシステムを用いて10A5 VH配列をさらに解析して、
図3Aおよび
図13、ならびに、それぞれSEQ ID NO:23、SEQ ID NO:33、およびSEQ ID NO:43に示すように、重鎖のCDR1領域、CDR2領域、およびCD3領域に線を引いた。
【0300】
10A5軽鎖免疫グロブリン配列を公知のヒト生殖系列免疫グロブリン軽鎖配列と比較することにより、10A5軽鎖が、ヒト生殖系列VK L15由来のVLセグメントおよびヒト生殖系列JK2由来のJKセグメントを使用していることが実証された。生殖系列VK L15配列に対する10A5 VL配列のアライメントを
図23に示す。CDR領域を決定するKabatシステムを用いて10A5 VL配列をさらに解析して、
図3Bおよび
図23、ならびに、それぞれSEQ ID NO:53、SEQ ID NO:63、およびSEQ ID NO:73に示すように、軽鎖のCDR1領域、CDR2領域、およびCD3領域に線を引いた。
【0301】
5F8の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、
図4A、ならびにそれぞれSEQ ID NO:84およびSEQ ID NO:4に示す。
【0302】
5F8の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、
図4B、ならびにそれぞれSEQ ID NO:94およびSEQ ID NO:14に示す。
【0303】
5F8重鎖免疫グロブリン配列を公知のヒト生殖系列免疫グロブリン重鎖配列と比較することにより、5F8重鎖が、ヒト生殖系列VH1-69由来のVHセグメント、ヒト生殖系列6-13由来のDセグメント、およびヒト生殖系列JH4b由来のJHセグメントを使用していることが実証された。生殖系列VH1-69配列に対する5F8 VH配列のアライメントを
図14に示す。CDR領域を決定するKabatシステムを用いて5F8 VH配列をさらに解析して、
図4Aおよび
図14、ならびに、それぞれSEQ ID NO:24、SEQ ID NO:34、およびSEQ ID NO:44に示すように、重鎖のCDR1領域、CDR2領域、およびCD3領域に線を引いた。
【0304】
5F8軽鎖免疫グロブリン配列を公知のヒト生殖系列免疫グロブリン軽鎖配列と比較することにより、5F8軽鎖が、ヒト生殖系列VK A27由来のVLセグメントおよびヒト生殖系列JK1由来のJKセグメントを使用していることが実証された。生殖系列VK A27配列に対する5F8 VL配列のアライメントを
図24に示す。CDR領域を決定するKabatシステムを用いて5F8 VL配列をさらに解析して、
図4Bおよび
図24、ならびに、それぞれSEQ ID NO:54、SEQ ID NO:64、およびSEQ ID NO:74に示すように、軽鎖のCDR1領域、CDR2領域、およびCD3領域に線を引いた。
【0305】
10H10の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、
図5A、ならびにそれぞれSEQ ID NO:85およびSEQ ID NO:5に示す。
【0306】
10H10の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、
図5B、ならびにそれぞれSEQ ID NO:95およびSEQ ID NO:15に示す。
【0307】
10H10重鎖免疫グロブリン配列を公知のヒト生殖系列免疫グロブリン重鎖配列と比較することにより、10H10重鎖が、ヒト生殖系列VH3-9由来のVHセグメント、ヒト生殖系列4-17由来のDセグメント、およびヒト生殖系列JH4b由来のJHセグメントを使用していることが実証された。生殖系列VH 3-9配列に対する10H10 VH配列のアライメントを
図15に示す。CDR領域を決定するKabatシステムを用いて10H10 VH配列をさらに解析して、
図5Aおよび
図15、ならびに、それぞれSEQ ID NO:25、SEQ ID NO:35、およびSEQ ID NO:45に示すように、重鎖のCDR1領域、CDR2領域、およびCD3領域に線を引いた。
【0308】
10H10軽鎖免疫グロブリン配列を公知のヒト生殖系列免疫グロブリン軽鎖配列と比較することにより、10H10軽鎖が、ヒト生殖系列VK L15由来のVLセグメントおよびヒト生殖系列JK 2由来のJKセグメントを使用していることが実証された。生殖系列VK L15配列に対する10H10 VL配列のアライメントを
図25に示す。CDR領域を決定するKabatシステムを用いて10H10 VL配列をさらに解析して、
図5Bおよび
図25、ならびに、それぞれSEQ ID NO:55、SEQ ID NO:65、およびSEQ ID NO:75に示すように、軽鎖のCDR1領域、CDR2領域、およびCD3領域に線を引いた。
【0309】
1B12の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、
図6A、ならびにそれぞれSEQ ID NO:86およびSEQ ID NO:6に示す。
【0310】
1B12の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、
図6B、ならびにそれぞれSEQ ID NO:96およびSEQ ID NO:16に示す。
【0311】
1B12重鎖免疫グロブリン配列を公知のヒト生殖系列免疫グロブリン重鎖配列と比較することにより、1B12重鎖が、ヒト生殖系列VH1-69由来のVHセグメント、ヒト生殖系列3-10由来のDセグメント、およびヒト生殖系列JH6b由来のJHセグメントを使用していることが実証された。生殖系列VH1-69配列に対する1B12 VH配列のアライメントを
図16に示す。CDR領域を決定するKabatシステムを用いて1B12 VH配列をさらに解析して、
図6Aおよび
図16、ならびに、それぞれSEQ ID NO:26、SEQ ID NO:36、およびSEQ ID NO:46に示すように、重鎖のCDR1領域、CDR2領域、およびCD3領域に線を引いた。
【0312】
1B12軽鎖免疫グロブリン配列を公知のヒト生殖系列免疫グロブリン軽鎖配列と比較することにより、1B12軽鎖が、ヒト生殖系列VK L6由来のVLセグメントおよびヒト生殖系列JK1由来のJKセグメントを使用していることが実証された。生殖系列VK L6配列に対する1B12 VL配列のアライメントを
図26に示す。CDR領域を決定するKabatシステムを用いて1B12 VL配列をさらに解析して、
図6Bおよび
図26、ならびに、それぞれSEQ ID NO:56、SEQ ID NO:66、およびSEQ ID NO:76に示すように、軽鎖のCDR1領域、CDR2領域、およびCD3領域に線を引いた。
【0313】
7H1の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、
図7A、ならびにそれぞれSEQ ID NO:87およびSEQ ID NO:7に示す。
【0314】
7H1の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、
図7B、ならびにそれぞれSEQ ID NO:97およびSEQ ID NO:17に示す。
【0315】
7H1重鎖免疫グロブリン配列を公知のヒト生殖系列免疫グロブリン重鎖配列と比較することにより、7H1重鎖が、ヒト生殖系列VH1-69由来のVHセグメント、ヒト生殖系列3-10由来のDセグメント、およびヒト生殖系列JH6b由来のJHセグメントを使用していることが実証された。生殖系列VH1-69配列に対する7H1 VH配列のアライメントを
図17に示す。CDR領域を決定するKabatシステムを用いて7H1 VH配列をさらに解析して、
図7Aおよび
図17、ならびに、それぞれSEQ ID NO:27、SEQ ID NO:37、およびSEQ ID NO:47に示すように、重鎖のCDR1領域、CDR2領域、およびCD3領域に線を引いた。
【0316】
7H1軽鎖免疫グロブリン配列を公知のヒト生殖系列免疫グロブリン軽鎖配列と比較することにより、7H1軽鎖が、ヒト生殖系列VK L6由来のVLセグメントおよびヒト生殖系列JK1由来のJKセグメントを使用していることが実証された。生殖系列VK L6配列に対する7H1 VL配列のアライメントを
図27に示す。CDR領域を決定するKabatシステムを用いて7H1 VL配列をさらに解析して、
図7Bおよび
図27、ならびに、それぞれSEQ ID NO:57、SEQ ID NO:67、およびSEQ ID NO:77に示すように、軽鎖のCDR1領域、CDR2領域、およびCD3領域に線を引いた。
【0317】
11E6の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を
図4A、ならびにそれぞれSEQ ID NO:84およびSEQ ID NO:4に示す。
【0318】
11E6の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、
図4B、ならびにそれぞれSEQ ID NO:94およびSEQ ID NO:14に示す。
【0319】
11E6重鎖免疫グロブリン配列を公知のヒト生殖系列免疫グロブリン重鎖配列と比較することにより、11E6重鎖が、ヒト生殖系列VH1-69由来のVHセグメント、ヒト生殖系列6-19由来のDセグメント、およびヒト生殖系列JH6c由来のJHセグメントを使用していることが実証された。生殖系列VH1-69配列に対する11E6 VH配列のアライメントを
図18に示す。CDR領域を決定するKabatシステムを用いて11E6 VH配列をさらに解析して、
図8Aおよび
図18、ならびに、それぞれSEQ ID NO:28、SEQ ID NO:38、およびSEQ ID NO:48に示すように、重鎖のCDR1領域、CDR2領域、およびCD3領域に線を引いた。
【0320】
11E6軽鎖免疫グロブリン配列を公知のヒト生殖系列免疫グロブリン軽鎖配列と比較することにより、11E6軽鎖が、ヒト生殖系列VK A27由来のVLセグメントおよびヒト生殖系列JK4由来のJKセグメントを使用していることが実証された。生殖系列VK A27配列に対する11E6 VL配列のアライメントを
図27に示す。CDR領域を決定するKabatシステムを用いて11E6 VL配列をさらに解析して、
図8Bおよび
図28、ならびに、それぞれSEQ ID NO:58、SEQ ID NO:68、およびSEQ ID NO:78に示すように、軽鎖のCDR1領域、CDR2領域、およびCD3領域に線を引いた。さらに、第2の関連クローンは、SEQ ID NO:109に示すVK配列を含んだ。この抗体は、本明細書において11E6aとして示される。
【0321】
12B7の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、
図9A、ならびにそれぞれSEQ ID NO:89およびSEQ ID NO:9に示す。
【0322】
12B7の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、
図9B、ならびにそれぞれSEQ ID NO:99およびSEQ ID NO:19に示す。
【0323】
12B7重鎖免疫グロブリン配列を公知のヒト生殖系列免疫グロブリン重鎖配列と比較することにより、12B7重鎖が、ヒト生殖系列VH1-69由来のVHセグメント、ヒト生殖系列3-10由来のDセグメント、およびヒト生殖系列JH6b由来のJHセグメントを使用していることが実証された。生殖系列VH1-69配列に対する12B7 VH配列のアライメントを
図19に示す。CDR領域を決定するKabatシステムを用いて12B7 VH配列をさらに解析して、
図9Aおよび
図19、ならびに、それぞれSEQ ID NO:29、SEQ ID NO:39、およびSEQ ID NO:49に示すように、重鎖のCDR1領域、CDR2領域、およびCD3領域に線を引いた。
【0324】
12B7軽鎖免疫グロブリン配列を公知のヒト生殖系列免疫グロブリン軽鎖配列と比較することにより、12B7軽鎖が、ヒト生殖系列VK L6由来のVLセグメントおよびヒト生殖系列JK5由来のJKセグメントを使用していることが実証された。生殖系列VK L6配列に対する12B7 VL配列のアライメントを
図29に示す。CDR領域を決定するKabatシステムを用いて12B7 VL配列をさらに解析して、
図9Bおよび
図29、ならびに、それぞれSEQ ID NO:59、SEQ ID NO:69、およびSEQ ID NO:79に示すように、軽鎖のCDR1領域、CDR2領域、およびCD3領域に線を引いた。
【0325】
13G4の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を
図10A、ならびにそれぞれSEQ ID NO:90およびSEQ ID NO:10に示す。
【0326】
13G4の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、
図10B、ならびにそれぞれSEQ ID NO:100およびSEQ ID NO:20に示す。
【0327】
13G4重鎖免疫グロブリン配列を公知のヒト生殖系列免疫グロブリン重鎖配列と比較することにより、13G4重鎖が、ヒト生殖系列VH3-9由来のVHセグメント、ヒト生殖系列3-9由来のDセグメント、およびヒト生殖系列JH4b由来のJHセグメントを使用していることが実証された。生殖系列VH3-9配列に対する13G4 VH配列のアライメントを
図20に示す。CDR領域を決定するKabatシステムを用いて13G4 VH配列をさらに解析して、
図10Aおよび
図20、ならびに、それぞれSEQ ID NO:30、SEQ ID NO:40、およびSEQ ID NO:50に示すように、重鎖のCDR1領域、CDR2領域、およびCD3領域に線を引いた。
【0328】
13G4軽鎖免疫グロブリン配列を公知のヒト生殖系列免疫グロブリン軽鎖配列と比較することにより、13G4軽鎖が、ヒト生殖系列VK L18由来のVLセグメントおよびヒト生殖系列JK3由来のJKセグメントを使用していることが実証された。生殖系列VK L18配列に対する13G4 VL配列のアライメントを
図30に示す。CDR領域を決定するKabatシステムを用いて13G4 VL配列をさらに解析して、
図10Bおよび
図30、ならびに、それぞれSEQ ID NO:60、SEQ ID NO:70、およびSEQ ID NO:80に示すように、軽鎖のCDR1領域、CDR2領域、およびCD3領域に線を引いた。
【0329】
実施例3
抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体の結合特異性および結合動態の特徴付け
本実施例において、抗PD-L1抗体の結合親和性および結合動態をBiacore解析によって検査した。結合特異性および交差競合は、フローサイトメトリーによって検査した。
【0330】
結合親和性および結合動態
抗PD-L1抗体を、Biacore解析(Biacore AB、Uppsala、Sweden)により、親和性および結合動態に関して特徴付けした。精製した組換えヒトPD-L1融合タンパク質を、標準的なアミンカップリング化学反応およびBiacoreによって提供されるキットを用いて、562RUの密度まで、第1級アミンを介してCM5チップ(カルボキシメチルデキストランでコーティングされたチップ)に共有結合的に連結させた。結合は、(Biacore ABによって提供される)HBS EP緩衝液に溶かした濃度133nMの抗体を流速50μl/分で流すことによって測定した。抗原-抗体の結合動態を1分間追跡し、かつ、解離動態を1分間追跡した。結合曲線および解離曲線を、BIA評価ソフトウェア(Biacore AB)を用いて、1:1ラングミュア結合モデルにフィッティングさせた。結合定数の概算において結合活性の影響を最小化するために、結合段階および解離段階に対応するデータの最初の部分のみをフィッティングに使用した。決定されたK
D、k
on、およびk
offの値を表2に示す。
【0331】
(表2)PD-L1ヒトモノクローナル抗体に関するBiacore結合データ
【0332】
平衡結合法によって得られ、かつGraphPad Prizmで解析されるその他の結合データを表3に示す。
【0333】
(表3)PD-L1ヒトモノクローナル抗体に関するBiacore平衡結合データ
【0334】
フローサイトメトリーによる結合特異性
細胞表面で組換えヒトPD-L1を発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株を開発し、かつ、フローサイトメトリーによってPD-L1ヒトモノクローナル抗体の特異性を決定するのに使用した。CHO細胞を、膜貫通型PD-L1をコードする完全長cDNAを含む発現プラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体と共にインキュベートすることにより、3G10、10A5、および12A4抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体の結合を評価した。これらの細胞を洗浄し、かつ、FITC標識抗ヒトIgG Abを用いて結合を検出した。FACScanフローサイトメトリー(Becton Dickinson、San Jose、CA)を用いて、フローサイトメトリー解析を実施した。結合を親CHO細胞株と比較した。これらの結果は、
図32A(HuMAb 3G10)、
図32B(HuMAb 10A5)、および
図32C(HuMAb 12A4)に示す。また、様々な濃度の抗PD-L1抗体を用いて結合を試験した。これらの結果を
図33に示す。抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体3G10、10A5、および12A4は、PD-L1をトランスフェクトされたCHO細胞に、濃度依存的な様式で結合した。これらのデータにより、抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体が、細胞表面PD-L1に特異的に結合することが実証される。
【0335】
ELISAによる結合特異性
抗PD-L1モノクローナル抗体の特異性を、免疫グロブリンFc領域に対するヒトPD-L1融合物への結合に関して標準的なELISAアッセイ法を用いて決定した。
【0336】
ヒトPD-L1のFc融合タンパク質を、抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体3G10、10A5、および12A4に対する結合に関して試験した。標準的なELISA手順を実施した。様々な濃度の抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体を添加した。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)と結合させたヤギ抗ヒトIgG(κ鎖特異的)ポリクローナル抗体を二次抗体として使用した。これらの結果を
図34に示す。抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体3G10、12A4、および10A5はそれぞれ、高い特異性でPD-L1に結合した。
【0337】
実施例4:ヒトT細胞およびサルT細胞の細胞表面で発現されるPD-L1に結合する抗PD-L1抗体の特徴付け
抗PD-L1抗体を、表面でPD-L1を発現する活性化されたヒトT細胞またはカニクイザルT細胞への結合に関して、フローサイトメトリーによって試験した。
【0338】
ヒトT細胞またはサルT細胞を抗CD3抗体によって活性化して、PD-L1発現を誘導した後で、ヒト抗PD-L1モノクローナル抗体と結合させた。活性化した細胞を抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体の段階希釈物と共にインキュベートすることにより、3G10、1B12、13G4、および12A4抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体の結合を評価した。アイソタイプ対照抗体を陰性対照として使用した。これらの細胞を洗浄し、かつ、FITC標識抗ヒトIgκ軽鎖Abを用いて結合を検出した。FACScaliburフローサイトメトリー(Becton Dickinson、San Jose、CA)を用いて、フローサイトメトリー解析を実施した。これらの結果を
図35および
図36に示す。抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体3G10、1B12、13G4、および12A4は、活性化されたヒトT細胞およびサルT細胞に結合した。これらのデータにより、抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体が、ヒトおよびカニクイザルの細胞表面PD-L1に結合することが実証される。
【0339】
実施例5:ヒトT細胞の細胞表面で発現されるPD-L1に結合する抗PD-L1抗体の特徴付け
抗PD-L1抗体を、細胞表面でPD-L1を発現する活性化されたヒトT細胞への結合に関して、フローサイトメトリーによって試験した。
【0340】
ヒトT細胞を抗CD3抗体によって活性化して、T細胞上でのPD-L1発現を誘導した後で、ヒト抗PD-L1モノクローナル抗体と結合させた。活性化したT細胞を濃度20μg/mlの抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体と共にインキュベートすることにより、3G10、10A5、および12A4抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体の結合を評価した。アイソタイプ対照抗体を陰性対照として使用した。これらの細胞を洗浄し、かつ、FITC標識抗ヒトIgGAbを用いて結合を検出した。FACScaliburフローサイトメトリー(Becton Dickinson、San Jose、CA)を用いて、フローサイトメトリー解析を実施した。これらの結果を、
図37A(HuMAb 3G10)、
図37B(HuMAb 10A5)、および
図37C(HuMAb 12A4)に示す。抗PD-L1モノクローナル抗体3G10、10A5、および12A4は、対照(薄い線)と比較したヒストグラム図において示されるように、活性化されたヒトT細胞(太線)に結合した。これらのデータにより、抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体が、ヒト細胞表面PD-L1に結合することが実証される。
【0341】
実施例6:フローサイトメトリーによる結合特異性
細胞表面でヒトPD-L1を発現するES-2ヒト卵巣癌細胞株を使用して、PD-L1ヒトモノクローナル抗体の特異性をフローサイトメトリーによって決定した。ES-2細胞を500IU/mLの組換えhIFN-γで一晩処理して、PD-L1発現を基礎レベルより高くまで増大させた。誘導した細胞を抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体の段階希釈物と共にインキュベートすることにより、12A4、1B12、3G10、10A5、12B7、13G4、11E6、および5F8抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体の結合を評価した。これらの細胞を洗浄し、かつ、PE標識抗ヒトIgGAbを用いて結合を検出した。FACScaliburフローサイトメトリー(Becton Dickinson、San Jose、CA)を用いて、フローサイトメトリー解析を実施した。結合を、アイソタイプ対照抗体と比較した。これらの結果を
図38に示す。抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体12A4、1B12、3G10、10A5、12B7、13G4、11E6、および5F8は、濃度依存的な様式で、hIFN-γで誘導されたES-2細胞に結合した。これらのデータにより、抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体が、細胞表面PD-L1に特異的に結合することが実証される。
【0342】
実施例7:混合リンパ球反応における細胞増殖およびサイトカイン産生に対するヒト抗PD-L1抗体の影響
混合リンパ球反応を用いて、リンパ球エフェクター細胞へのPD-L1/PD-1経路妨害の効果を実証した。T細胞を、アッセイ法において、抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体の存在下または不在下での増殖、IFN-γ分泌、およびIL-2分泌に関して試験した。
【0343】
CD4+ポジティブ選択キット(Dynal Biotech)を用いて、PBMCからヒトCD4+T細胞を精製した。樹状細胞は、1000U/mlのIL-4および500U/mlのGM-CSF(R&D Biosystems)と共に7日間培養した精製単球に由来した。単球は、単球ネガティブ選択キット(Mitenyi Biotech)を用いて調製した。各培養物は、総体積200μl中に10
5個の精製T細胞および10
4個の同種異系樹状細胞を含んだ。様々な抗体濃度の抗PD-L1モノクローナル抗体10A5、12A4、または3G10を各培養物に添加した。抗体無し、またはアイソタイプ対照抗体のいずれかを陰性対照として使用した。これらの細胞を37℃で5日間培養した。5日後、培地100μlを各培養物からサイトカイン測定のために採取した。OptEIA ELISAキット(BD Biosciences)を用いて、IFN-γおよびIL-2のレベルを測定した。これらの細胞を
3H-チミジンで標識し、さらに18時間培養し、かつ細胞増殖に関して解析した。これらの結果を、
図39A(T細胞増殖)、
図39B(HuMAb 10A5を用いたIFN-γ分泌)、
図39C(HuMAb 12A4またはHuMAb 3G10を用いたIFN-γ分泌)、および
図39D(IL-2分泌)に示す。抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体10A5は、濃度依存的な様式で、T細胞増殖、IFN-γ分泌、およびIL-2分泌を促進する。抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体12A4および3G10もまた、IFN-γ分泌の増加を示した。一方、対照抗体を含む培養物は、T細胞増殖の増加も、IFN-γ分泌の増加も、IL-2分泌の増加も示さなかった。
【0344】
別の実験において、同種異系混合リンパ球反応(MLR)を用いて、リンパ球エフェクター細胞におけるPD-L1/PD-1経路妨害の効果を実証した。T細胞を、アッセイ法において、抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体またはアイソタイプ対照抗体の存在下または不在下での増殖およびIFN-γ分泌に関して試験した。
【0345】
CD4+ネガティブ選択キット(Miltenyi)を用いて、PBMCからヒトCD4+T細胞を精製した。単球は、単球ネガティブ選択キット(Mitenyi Biotech)を用いて調製した。樹状細胞は、1000U/mlのIL-4および500U/mlのGM-CSF(R&D Biosystems)と共に7日間培養した精製単球に由来した。各MLR培養物は、総体積200μl中に10
5個の精製T細胞および10
4個の同種異系樹状細胞を含んだ。様々な抗体濃度の抗PD-L1モノクローナル抗体12A4、11E6、3G10、13G4、1B12、10A5、および12B7を各培養物に添加した。抗体無し、またはアイソタイプ対照抗体のいずれかを陰性対照として使用した。これらの細胞を37℃で5日間培養した。5日目に、培地50μlを各培養物からサイトカイン測定のために採取し、かつ1μCiの
3H-チミジンを含む等体積の培地で置き換えた。これらの細胞をさらに18時間培養し、回収し、かつ細胞増殖に関して解析した。OptEIA hIFN-γ ELISAキット(BD Biosciences)を用いて、培養液中のIFN-γのレベルを測定した。これらの結果を
図40に示す。抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体は、濃度依存的な様式で、T細胞増殖およびIFN-γ分泌を促進する。一方、対照抗体を含む培養物は、T細胞増殖の増加も、IFN-γ分泌の増加も示さなかった。
【0346】
実施例8:調節性T細胞の機能に対するヒト抗PD-L1抗体の影響
調節性T細胞(CD4+、CD25+)は、免疫応答を抑制するリンパ球である。抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体の存在下または不在下での同種異系の樹状細胞およびT細胞のMLRにおける、増殖およびIFN-γ分泌に対する調節性T細胞の添加の影響を試験した。
【0347】
調節性T細胞は、CD4+CD25+調節性T細胞単離キット(Miltenyi Biotec)を用いてPBMCから精製した。調節性T細胞を、CD4+CD25-細胞と調節性T細胞の比率が2:1の精製したCD4+CD25-T細胞および同種異系樹状細胞を含む混合リンパ球反応(上記を参照されたい)中に添加した。抗PD-L1モノクローナル抗体10A5を、濃度10μg/mLで各培養物に添加した。抗体無し、またはアイソタイプ対照抗体のいずれかを陰性対照として使用した。これらの細胞を37℃で5日間培養し、この時、Beadlyteサイトカイン検出システム(Upstate)を用いて上清のIFN-γ分泌を解析した。これらの細胞を
3H-チミジンで標識し、さらに18時間培養し、かつ細胞増殖に関して解析した。これらの結果を、
図41A(T細胞増殖)および
図41B(IFN-γ分泌)に示す。抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体10A5を添加すると、同種異系の樹状細胞、T細胞、および調節性T細胞の細胞培養物におけるT細胞増殖およびIFN-γ分泌の両方が促進され、これにより、抗PD-L1抗体が、同種異系DC-T細胞-MLRにおける調節性T細胞の作用を逆転させ得ることが示される。
【0348】
別の実験において、ヒト抗PD-L1抗体の12A4および13G4、ならびに対照抗体1D12を、調節性T細胞を用いたMLRアッセイ法において試験した。これらの結果を、
図42(T細胞増殖)および
図43(IFN-γ分泌)に示す。抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体12A4または13G4の添加により、調節性T細胞を含む同種異系の樹状細胞およびT細胞の細胞培養物におけるT細胞増殖およびIFN-γ分泌の両方の抑制がある程度逆転され、これにより、抗PD-L1抗体が、調節性T細胞に対して作用し得ることが示される。
【0349】
実施例9:陽性のCMV応答性ドナーに由来する、ウイルス抗原によって刺激されたPBMC細胞によるサイトカイン分泌に対する抗PD-1抗体の影響
CMV抗原応答性のヒトPBMC(Astarte Biologics、Redmond、WA)を、0.5ug/ml CMV溶解物(Astarte Biologics)+/-力価検定した抗PD-L1抗体の存在下、TC処理した平底96ウェルプレート中に2e5個の細胞/ウェルで培養した。加熱不活性化したFBS(最終濃度10%)を添加したAIM-V培地(Invitrogen)を、総体積200ul/ウェルで使用した。これらの細胞を37℃、5%CO
2で4日間培養し、このときに、分泌されたインターフェロン-γをELISA(OptEIA hIFN-γELISAキット、BD Biosciences)によって測定するために、培養上清を採取した。これらの結果を
図44に示す。抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体は、CMVに特異的なT細胞によるIFN-γ分泌を用量依存的な様式で促進する。アイソタイプ対照と比べて最も強い応答は、抗体13G4、1B12、および12A4によって生じた。これらの結果は、抗PD-L1 HuMAbが、抗原に対して予め刺激されたPBMC細胞からの記憶T細胞応答におけるIFN-γ放出を刺激し得ることを示す。
【0350】
実施例10:ヒト抗PD-L1抗体による、PD-1へのPD-L1リガンド結合の妨害
抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体を、細胞数測定法を用いることによって、トランスフェクトされたCHO細胞上で発現されるPD-1へのリガンドPD-L1の結合を妨害する能力に関して試験した。
【0351】
PD-1を発現するCHO細胞を、FACS緩衝液(4%ウシ胎児血清を含むPBS)中に懸濁させた。様々な濃度の抗PD-L1 HuMAb 3G10、10A5、または12A4を、4℃で30分間、細胞懸濁液チューブに添加し、続いて、免疫グロブリンFc領域に融合させたFITC標識PD-L1を添加した。FACScaliburフローサイトメトリー(Becton Dickinson、San Jose、CA)を用いて、フローサイトメトリー解析を実施した。結果を
図45に示す。抗PD-L1モノクローナル抗体3G10、10A5、および12A4は、染色の平均蛍光強度(MFI)によって測定されるように、ヒトPD-1をトランスフェクトされたCHO細胞へのPD-L1の結合を妨害した。これらのデータにより、抗PD-L1 HuMAbが細胞表面PD-1へのPD-L1リガンドの結合を妨害することが実証される。
【0352】
実施例11:ヒト抗PD-L1抗体による細胞表面PD-L1への可溶性PD-1の結合の阻害
抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体を、フローサイトメトリーアッセイ法を用いて、hIFN-γで誘導されたES-2ヒト卵巣癌細胞上で発現されるPD-L1への可溶性2量体型のPD-1受容体(PD-1-hFc)の結合を妨害する能力に関して試験した。妨害は、アイソタイプ対照抗体と比較した。
【0353】
ES-2細胞を500IU/mLのhIFN-γを用いて一晩誘導して、hPD-L1の細胞表面発現を上方調節した。誘導した細胞をFACS緩衝液中に懸濁させた。抗PD-L1 HuMAb 12A4、1B12、3G10、10A5、12B7、13G4、11E6、および5F8の段階希釈物を、4℃で30分間、細胞懸濁液チューブに添加し、続いて、2回洗浄して未結合の抗体を除去した。次に、PD-1-hFcタンパク質を2ug/mLの定数で、4℃で30分間、すべてのウェルに添加し、続いて、2回洗浄して未結合のPD-1-hFcを除去した。次に、PD-L1に結合された場合にPD-1に結合する、ビオチン標識した非ブロッキング抗PD-1 HuMab 26D5を4℃で30分間添加し、続いて、2回洗浄して未結合の抗体を除去することによって、結合されたPD-1-FcをES-2細胞上で検出した。最後に、ストレプトアビジン-PE結合体を4℃で30分間添加し、続いて、2回洗浄して未結合の結合体を除去することによって、結合された26D5抗体を検出した。FACScaliburフローサイトメトリー(Becton Dickinson、San Jose、CA)を用いて、フローサイトメトリー解析を実施した。これらの結果を
図46に示す。抗PD-L1モノクローナル抗体12A4、1B12、3G10、10A5、12B7、13G4、11E6、および5F8は、染色の幾何平均蛍光強度(GMFI)によって測定されるように、ヒトPD-1を発現するES-2細胞へのPD-L1の結合を妨害した。これらのデータにより、抗PD-L1 HuMAbが細胞表面PD-1への可溶性PD-L1受容体の結合を妨害することが実証される。
【0354】
実施例12:抗PD-L1抗体を用いた、インビボ腫瘍モデルの治療
癌性腫瘍を移植されたマウスを、抗PD-L1抗体を用いてインビボで治療して、腫瘍増殖に対する抗体のインビボでの効果を検査する。腫瘍研究のために、6〜8週齢の間のメスのAJマウス(Harlan Laboratories)を体重に基づいて無作為に6群に分ける。0日目に、DMEM培地200μlに溶解させたSA1/N線維肉腫細胞2×10
6個をこれらのマウスの右側腹部に皮下移植する。これらのマウスを、PBSビヒクルまたは10mg/kgの抗PD-L1抗体で処置する。1日目、4日目、8日目、および11日目に、腹腔内注射によって、抗体を含むPBSまたはビヒクル約200μlをこれらの動物に投与する。各群は10匹の動物を含み、これらの群は、(i)ビヒクル群、(ii)対照マウスIgG、および(iii)抗PD-L1抗体からなる。マウスの腫瘍増殖を1週2回、約6週間モニターする。電気式カリパスを用いて、腫瘍の3寸法を測定し(高さ×幅×長さ)、腫瘍体積を算出する。腫瘍が腫瘍の終点(1500mm
3)に到達したか、または15%を超える体重減少を示す場合、マウスを安楽死させる。
【0355】
実施例13:腫瘍の確立および増殖に対する併用療法(抗CTLA-4抗体および抗PD-L1抗体)のインビボでの有効性
MC38結腸直腸癌細胞(Dr. N. Restifo、国立癌研究所(National Cancer Institute)、Bethesda、MD;またはJeffrey Schlom、国立衛生研究所(National Institutes of Health)、Bethesda、MDから入手可能)をC57BL/6マウスに移植し(2×10
6細胞/マウス)、かつ、腫瘍サイズが100mm
3〜200mm
3に達した際に治療用に選択した。0日目(すなわち、処置の最初の日)に、マウス各10匹の4群それぞれに、以下のうち1種を腹腔内(IP)注射した:(1)10mg/kgのマウスIgGおよび10mg/kgのラットIgG(対照)、(2)10mg/kgの抗CTLA-4モノクローナル抗体9D9(マウス抗マウスCTLA-4、J.Allison、Memorial Sloan-Kettering Cancer Center、New York、NYから入手)および10mg/kgのラットIgG、(3)抗PD-L1モノクローナル抗体MIH5(ラット抗マウスPD-L1、eBioscience)および10mg/kgのマウスIgG、または(4)10mg/kgの抗CTLA-4抗体9D9および10mg/kgの抗PD-L1抗体MIH5。次いで、3日目および6日目にもさらに、抗体注射を実施した。電気式カリパスを用いて、腫瘍の3寸法を測定し(高さ×幅×長さ)、腫瘍体積を算出した。腫瘍が指定の腫瘍の終点に達したら、マウスを安楽死させた。結果を
図47に示す。
【0356】
この研究により、MC38マウス腫瘍モデルにおいて、抗PD-L1抗体処置のみが腫瘍増殖に対して中程度の効果を有して、腫瘍増殖の遅延をもたらすの対し、抗CTLA-4はこのモデルにおいてほとんど効果が無いことが示される。しかしながら、CTLA-4抗体およびPD-L1抗体の併用治療は、腫瘍増殖に対して有意に大きな効果を有し、腫瘍の無いマウスをもたらす。
【0357】
実施例14:抗PD-L1抗体を用いた免疫組織化学
HuMab抗PD-L1の組織結合プロファイルを評価するために、未改変の12A4、13G4、3G10、および12B7を、脾臓、扁桃腺、大脳、小脳、心臓、肝臓、肺、腎臓、膵臓、脳下垂体、皮膚、表皮、および小腸を含む正常な(非腫瘍性)ヒト組織、ならびに肺癌組織のパネル(1サンプル/各組織)において検査した。ES-2細胞を陽性対照として使用した。Hu-IgG
1およびHu-IgG
4をアイソタイプ対照抗体として使用した。
【0358】
急速凍結され、かつOCT包埋された正常組織および腫瘍組織をCooperative Human Tissue Network(Philadelphia、PA)またはNational Disease Research Institute(Philadelphia、PA)から購入した。室温で10分間、5μmのクリオスタット切片をアセトンで固定し、使用するまで-80℃で保存した。Medarexによって開発された免疫組織化学プロトコールを、未改変HuMab抗PD-L1を用い、一次抗体(12A4、13G4、3G10、および12B7)および二次抗体(ヤギ抗Hu-IgGのFITC結合Fab断片、Jackson ImmunoResearch Laboratories.West Grove、PA)を予備複合体にした後で、切片に添加して、実施した。手短に言えば、1μg/mlまたは5μg/mlの未結合一次抗体をそれぞれ3倍過剰量の二次抗体と混合し、かつ室温で30分間インキュベートし、次いで過剰量のヒトγグロブリンをさらに30分添加して、未結合の二次抗体をブロッキングした。並行して、アイソタイプ対照抗体Hu-IgG
1またはHu-IgG
4を同様に予め複合体形成させた。スライドをPBS(Sigma、St.Louis、MO)で2回洗浄し、次いでDako EnVision+System(Dako.Carpinteria、CA)において供給されるペルオキシダーゼブロックと共に10分間インキュベートした。PBSで2回洗浄した後、スライドをDakoプロテインブロックと共にインキュベートして、非特異的な結合部位をブロッキングした。続いて、一次抗体またはアイソタイプ対照の予備複合体を切片に添加し、かつ1時間インキュベートした。PBSで3回洗浄した後、スライドをマウス抗FITC抗体(20μg/ml、Sigma)と共に30分間インキュベートした。PBSでさらに3回洗浄した後、Dako EnVision+Systemにおいて供給されるペルオキシダーゼ結合抗マウスIgGポリマーと共に、スライドを30分間インキュベートした。最後に、スライドを上記のように洗浄し、かつDako EnVision+Systemにおいて供給されるDAB基質-色素原溶液と6分間反応させた。次いで、スライドを、ルーチンな組織学的手順に従って、脱イオン水で洗浄し、マイヤーのヘマトキシリン(Dako)で対比染色し、脱水し、透徹し、かつPermount(Fischer Scientific、Fair Lawn、NJ)を用いてカバーガラスをかけた。
【0359】
弱い染色〜中程度の染色が、ES-2細胞、ならびに肺癌組織の腫瘍細胞において観察された。扁桃腺切片では、リンパ球が大量に浸潤している陰窩上皮において強い染色が認められたが、粘膜重層扁平上皮細胞においては認められなかった。中程度の染色が、濾胞間領域の一部の細胞において認められ、極めて弱い染色が、胚中心に散在する大型細胞(樹枝状細網様細胞)において認められた。肺では、弱い染色が肺胞マクロファージにおいて見出された。扁桃腺組織および肺組織における染色パターンは、市販の抗PD-L1 mAb(eBiosciences. San Diego、CA)を用いた免疫組織化学切片において同様に認められた。特に胚中心の染色に関して、HuMabによる染色は、全体的に濃さが薄かった。脾臓では、赤色髄の広範囲の薄い免疫反応性は、バックグラウンドの染色わずかにを上回っていた。さらに、弱い染色〜中程度の染色が、肝臓中のクッパー様細胞およびパイエル板中の散在細胞において、ならびに小腸の外筋層の病巣領域に主に散在するマクロファージ様細胞および線維芽細胞において、示された。
【0360】
小脳、大脳、心臓、腎臓、膵臓、脳下垂体、および皮膚の組織において、4種の抗PD-L1 HuMabすべてで染色した場合、有意な染色は観察されなかった。12B7および/または3G10が、肝臓細胞およびES-2細胞においてわずかに強い染色を示した以外は、これら4種の抗体のうちで、染色の明らかな差異は確認されなかった。
【0361】
PD-L1抗体の要約