(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水平断面形状が略長円形の筒状の鉄皮と、前記鉄皮に内張りされた複数の耐火物製レンガと、を備え、前記複数の耐火物製レンガの内側に、溶鋼を収容する溶鋼収容部が形成された略長円形溶鋼容器であって、
前記鉄皮は、直線状に延びる直線部分と、該直線部分の両端から連続する円弧部分とを有して、水平断面形状が略長円形をなしており、前記直線部分に内張りされた前記耐火物製レンガは直線状の前記鉄皮に沿って直線状に並べられているとともに、前記円弧部分に内張りされた前記耐火物製レンガは円弧状の前記鉄皮に沿って円弧状に並べられており、 前記直線部分に内張りされた前記耐火物製レンガは、水平断面形状が略台形をなす四角柱体であり、溶鋼容器外方側端部の幅よりも溶鋼容器内方側端部の幅が小さく、溶鋼容器内方側に向かって幅が先細りになる形状をなしており、前記直線部分に内張りされた前記耐火物製レンガからなるレンガ群は、全体として水平断面形状が略台形をなし、前記レンガ群の溶鋼容器外方側端部の幅よりも溶鋼容器内方側端部の幅が小さく、溶鋼容器内方側に向かって幅が先細りになる形状をなしていることを特徴とする略長円形溶鋼容器。
前記直線部分に内張りされた前記耐火物製レンガは、隣接する耐火物製レンガと接する2つの側面の少なくとも一方に勾配が付けられることにより、溶鋼容器内方側に向かって幅が先細りになる形状をなしており、溶鋼容器外方側端面に直交する仮想線と勾配が付けられた前記側面とのなす角度が0.5°以上6°以下であることを特徴とする請求項1に記載の略長円形溶鋼容器。
前記直線部分に内張りされた前記耐火物製レンガのうち一部は、隣接する耐火物製レンガと接する2つの側面に同方向に勾配が付けられており、該勾配の角度が異なることにより、溶鋼容器内方側に向かって幅が先細りになる形状をなしていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の略長円形溶鋼容器。
【背景技術】
【0002】
高純度鋼の生産に使用されるRH式真空脱ガス装置は、溶鋼が収容され真空脱ガス処理が行われる真空槽と、取鍋内の溶鋼中に浸漬され真空槽と取鍋との間で溶鋼を循環させる一対の浸漬管と、を備えている。真空槽は、通常は、水平断面形状が略円形をなしており、円筒形状の鉄皮と、鉄皮に内張りされた複数の耐火物製レンガと、を備えている。耐火物製レンガは、水平断面形状が略等脚台形をなす四角柱体であり、鉄皮の内面に沿って環状に並べられている。
【0003】
その際には、耐火物製レンガは、等脚台形の長い方の底辺に対応する側面を略円形の真空槽の外方側に向け(鉄皮に対向させ)、短い方の底辺に対応する側面を真空槽の内方側に向けつつ、隣接する耐火物製レンガと等脚台形の脚に対応する側面同士を接触させて、鉄皮に沿って並べられている(特許文献1を参照)。よって、この耐火物製レンガは、真空槽の内方側に向かって幅が先細りになっている。
【0004】
また、水平断面形状が略長円形をなす真空槽を備えるRH式真空脱ガス装置が知られている(
図12を参照)。真空槽の水平断面形状を略長円形にすると、浸漬管の断面積を大きくとることができるので、RH式真空脱ガス装置による真空脱ガス処理の処理効率を向上させることができる。よって、このような水平断面形状が略長円形をなす真空槽を備えるRH式真空脱ガス装置は、高純度鋼の生産に好適である。
【0005】
真空槽の水平断面形状が略円形である場合は、前述したように、耐火物製レンガは環状に並べられるが、真空槽の水平断面形状が略長円形である場合は、環状(円弧状)に並べられる部分と直線状に並べられる部分とがある。すなわち、水平断面形状が略長円形である真空槽の鉄皮は、直線状に延びる直線部分と、直線部分の両端から連続する2つの円弧部分とからなるため、円弧部分の内側に内張りされた耐火物製レンガは、水平断面形状が略円形である真空槽の場合と同様に円弧状の鉄皮に沿って円弧状に並べられているが、直線部分の内側に内張りされた耐火物製レンガは直線状の鉄皮に沿って直線状に並べられている。
【0006】
鉄皮の円弧部分に内張りされた耐火物製レンガは、水平断面形状が略円形である真空槽の場合と同様に、水平断面形状が略等脚台形をなす四角柱体であり、真空槽の内方側に向かって幅が先細りになる形状をなしている。このような形状であれば、隣接する耐火物製レンガ同士が競り合うため、耐火物製レンガが真空槽の内方側に抜け落ちにくい。また、耐火物製レンガに亀裂等が発生して割れ、内外方向の分断が生じたとしても、耐火物製レンガ同士の競り合いにより、耐火物製レンガの内方側部分の真空槽の内方側への剥落(スポーリング)は生じにくい。
【0007】
一方、鉄皮の直線部分に内張りされた耐火物製レンガは、水平断面形状が長方形をなす四角柱体であるため、隣接する耐火物製レンガ同士の競り合いがなく、耐火物製レンガが真空槽の内方側に抜け落ちやすい。また、耐火物製レンガに亀裂等が発生して割れ、内外方向の分断が生じた場合には、耐火物製レンガの内方側部分が真空槽の内方側に剥落しやすい。
【0008】
そこで、鉄皮の直線部分に内張りされた耐火物製レンガを、
図13に示すような形状の四角柱体とすることにより、耐火物製レンガの真空槽の内方側への抜け落ちやスポーリングを抑制する技術が提案されている。すなわち、
図13の耐火物製レンガは、水平断面形状が略台形をなす四角柱体であり、隣接する耐火物製レンガと接する2つの側面の一方100のみに勾配が付けられ、非線対称且つ真空槽の内方側に向かって幅が先細りになる形状をなしている。
このような形状の耐火物製レンガを用いることにより、隣接する耐火物製レンガ同士の競り合いが生じるため、鉄皮の直線部分に内張りされた耐火物製レンガの真空槽の内方側への抜け落ちやスポーリングを低減させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述した従来の技術では、鉄皮の直線部分に内張りされた(直線状に並べられている)耐火物製レンガの真空槽の内方側への抜け落ちやスポーリングは低減するものの、その効果は十分ではなく、鉄皮の円弧部分に内張りされた(円弧状に並べられている)耐火物製レンガに比べると、真空槽の内方側への抜け落ちやスポーリングは生じやすかった。
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、鉄皮の直線部分に内張りされ直線状に並べられている耐火物製レンガの溶鋼容器の内方側への抜け落ちやスポーリングが生じにくい略長円形溶鋼容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明の態様は、次のような構成からなる。すなわち、本発明の一態様に係る略長円形溶鋼容器は、水平断面形状が略長円形の筒状の鉄皮と、前記鉄皮に内張りされた複数の耐火物製レンガと、を備え、前記複数の耐火物製レンガの内側に、溶鋼を収容する溶鋼収容部が形成された略長円形溶鋼容器であって、前記鉄皮は、直線状に延びる直線部分と、該直線部分の両端から連続する円弧部分とを有して、水平断面形状が略長円形をなしており、前記直線部分に内張りされた前記耐火物製レンガは直線状の前記鉄皮に沿って直線状に並べられているとともに、前記円弧部分に内張りされた前記耐火物製レンガは円弧状の前記鉄皮に沿って円弧状に並べられており、前記直線部分に内張りされた前記耐火物製レンガは、水平断面形状が略台形をなす四角柱体であり、溶鋼容器外方側端部の幅よりも溶鋼容器内方側端部の幅が小さく、溶鋼容器内方側に向かって幅が先細りになる形状をなしており、前記直線部分に内張りされた前記耐火物製レンガからなるレンガ群は、全体として水平断面形状が略台形をなし、前記レンガ群の溶鋼容器外方側端部の幅よりも溶鋼容器内方側端部の幅が小さく、溶鋼容器内方側に向かって幅が先細りになる形状をなしていることを特徴とする。
【0012】
この略長円形溶鋼容器においては、前記直線部分に内張りされた前記耐火物製レンガは、隣接する耐火物製レンガと接する2つの側面の少なくとも一方に勾配が付けられることにより、溶鋼容器内方側に向かって幅が先細りになる形状をなしており、溶鋼容器外方側端面に直交する仮想線と勾配が付けられた前記側面とのなす角度を0.5°以上6°以下としてもよい。
また、前記直線部分に内張りされた前記耐火物製レンガのうち一部は、隣接する耐火物製レンガと接する2つの側面に同方向に勾配が付けられており、該勾配の角度が異なることにより、溶鋼容器内方側に向かって幅が先細りになる形状をなしていてもよい。
さらに、この略長円形溶鋼容器は、真空脱ガス装置の真空槽であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る略長円形溶鋼容器は、鉄皮の直線部分に内張りされた耐火物製レンガが、水平断面形状が略台形をなす四角柱体であり、溶鋼容器外方側端部の幅よりも溶鋼容器内方側端部の幅が小さく、溶鋼容器内方側に向かって幅が先細りになる形状をなしており、鉄皮の直線部分に内張りされた耐火物製レンガからなるレンガ群は、全体として水平断面形状が略台形をなし、レンガ群の溶鋼容器外方側端部の幅よりも溶鋼容器内方側端部の幅が小さく、溶鋼容器内方側に向かって幅が先細りになる形状をなしているので、鉄皮の直線部分の内側に内張りされ直線状に並べられている耐火物製レンガの溶鋼容器の内方側への抜け落ちやスポーリングが生じにくい。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る略長円形溶鋼容器の実施の形態を、図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
図1は、本発明に係る略長円形溶鋼容器の一実施形態であるRH式真空脱ガス装置の真空槽の構造を示す縦断面図であり、
図2は、
図1のRH式真空脱ガス装置の真空槽の水平断面図である。
図1,2の真空脱ガス装置は、溶鋼が収容され真空脱ガス処理が行われる真空槽1を備えており、この真空槽1の下部に、図示しない取鍋内の溶鋼中に浸漬され真空槽1と取鍋との間で溶鋼を循環させる一対の浸漬管2,2が設けられている。
【0016】
真空槽1は、水平断面形状が略長円形をなしており、水平断面形状が略長円形の筒状の鉄皮11と、不定形耐火物又は定形耐火物であるパーマライニング12を介して鉄皮11に内張りされた複数の耐火物製レンガ13(定形耐火物)と、を備えている。
耐火物製レンガ13は、筒状の鉄皮11の内側に鉄皮11の周方向に沿って無端状に並べられており、無端状に並べられた耐火物製レンガ13の上に、鉄皮11の周方向に沿って無端状に並べられた耐火物製レンガ13がさらに積み重ねられている。このようにして、無端状に並べられた耐火物製レンガ13が鉛直方向に複数段積み重ねられることにより、鉄皮11の内側が耐火物製レンガ13で覆われ、これら内張りされた耐火物製レンガ13の内側に、溶鋼を収容する溶鋼収容部15が形成される。
【0017】
鉄皮11は、直線状に延びる直線部分と、該直線部分の両端から連続する円弧部分とを有して、水平断面形状が略長円形をなしているため、鉄皮11の直線部分に内張りされた耐火物製レンガ13A,13B,13C(13D,13E)は直線状の鉄皮に沿って直線状に並べられているとともに、鉄皮11の円弧部分に内張りされた耐火物製レンガ13Zは円弧状の鉄皮11に沿って円弧状に並べられている。
【0018】
鉄皮11の円弧部分に内張りされた耐火物製レンガ13Zは、水平断面形状が略等脚台形をなす四角柱体であり(
図3を参照)、全ての耐火物製レンガ13Zがほぼ同一の形状をなしている。そして、等脚台形の長い方の底辺に対応する側面13a(以下「外方側端面13a」と記す)を真空槽1の外方側に向け(鉄皮11に対向させ)、短い方の底辺に対応する側面13b(以下「内方側端面13b」と記す)を真空槽1の内方側に向けつつ、隣接する耐火物製レンガ13と等脚台形の脚に対応する側面13c(以下「接触側面13c」と記す)同士を接触させて、鉄皮11に沿って並べられている。よって、鉄皮11の円弧部分に内張りされた耐火物製レンガ13Zは、外方側端部の幅よりも内方側端部の幅が小さくなっており、真空槽1の内方側に向かって幅が先細りになる形状をなしている。
【0019】
次に、鉄皮11の直線部分に内張りされた耐火物製レンガ13A〜13Eについて説明する。鉄皮11の直線部分には複数の耐火物製レンガ13A,13B,13C(13D,13E)が内張りされているが、これら複数の耐火物製レンガ13A,13B,13C(13D,13E)からなるレンガ群30は、全体として水平断面形状が略台形をなし、レンガ群30の外方側端部の幅よりも内方側端部の幅が小さく、真空槽1の内方側に向かって幅が先細りになる形状をなしている(
図2を参照)。
【0020】
また、該レンガ群30を構成する耐火物製レンガ13A,13B,13C(13D,13E)は、いずれも水平断面形状が略台形をなす四角柱体であるが(
図4〜8を参照)、レンガ群30における配置箇所によってその形状が異なっている。個々の耐火物製レンガ13A〜13Eの詳細な形状については後に詳述するが、各耐火物製レンガ13A〜13Eは、鉄皮11の円弧部分に内張りされた耐火物製レンガ13Zと同様に、台形の長い方の底辺に対応する側面13a(本発明の構成要件である「溶鋼容器外方側端面」に相当し、以下「外方側端面13a」と記す)を真空槽1の外方側に向け(鉄皮11に対向させ)、短い方の底辺に対応する側面13b(以下「内方側端面13b」と記す)を真空槽1の内方側に向けつつ、隣接する耐火物製レンガ13A〜13Eと等脚台形の脚に対応する側面13c(以下「接触側面13c」と記す)同士を接触させて、鉄皮11に沿って並べられている。よって、鉄皮11の直線部分に内張りされた耐火物製レンガ13A〜13Eは、鉄皮11の円弧部分に内張りされた耐火物製レンガ13Zと同様に、外方側端部の幅よりも内方側端部の幅が小さくなっており、真空槽1の内方側に向かって幅が先細りになる形状をなしている。
【0021】
なお、鉄皮11の円弧部分に内張りされた耐火物製レンガ13Zと鉄皮11の直線部分に内張りされた耐火物製レンガ13A〜13Eとの間には、前記両耐火物製レンガ13A〜13E,13Zを接続する接続用の耐火物製レンガ13Yが配されている。この接続用の耐火物製レンガ13Yは、鉄皮11の円弧部分に内張りされた耐火物製レンガ13Zと同様に、水平断面形状が略等脚台形をなす四角柱体である(
図9,10を参照)。
【0022】
ここで、鉄皮11の直線部分に内張りされた耐火物製レンガ13A〜13Eの形状について説明する。レンガ群30を構成する耐火物製レンガ13の個数は特に限定されるものではないが、奇数個か偶数個かによって、その形状パターンが異なる。まず、レンガ群30を構成する耐火物製レンガ13の個数が奇数個である場合の耐火物製レンガ13の形状を、5個の場合を例にして説明する。レンガ群30を構成する耐火物製レンガ13の個数が奇数個である場合は、中央の耐火物製レンガ13Aとその他の耐火物製レンガ13B,13Cとで、形状が異なる。
【0023】
中央の耐火物製レンガ13Aは、鉄皮11の円弧部分に内張りされた耐火物製レンガ13Zと同様に、水平断面形状が略等脚台形をなす四角柱体である。すなわち、
図4に示すように、四角柱体の2つの接触側面13c,13cには逆方向に同角度(例えば1.3°)の勾配が付けられており、線対称且つ真空槽1の内方側に向かって幅が先細りになる形状をなしている。なお、勾配の角度とは、耐火物製レンガ13の外方側端面13aに直交する仮想線と勾配が付けられた接触側面13cとのなす角度である。
【0024】
一方、中央以外の4個の耐火物製レンガ13B,13Cは、水平断面形状が略台形をなす四角柱体であるが、
図5,6に示すように、四角柱体の2つの接触側面13c,13cには同方向に異なる角度の勾配が付けられており、該勾配の角度が異なることにより、非線対称且つ真空槽1の内方側に向かって幅が先細りになる形状をなしている。
そして、レンガ群30を構成する耐火物製レンガ13において、隣接する2つの耐火物製レンガ13の対向する接触側面13cの勾配の角度は、同角度となっている。
【0025】
一例を挙げると、耐火物製レンガ13Bの2つの接触側面13cの勾配の角度は、1.3°と2.5°であり、耐火物製レンガ13Cの2つの接触側面13cの勾配の角度は、2.5°と3.8°である。
また、中央の耐火物製レンガ13Aの隣に配される2つの耐火物製レンガ13B,13B(
図5を参照)は、中央の耐火物製レンガ13Aを対称軸として互いに線対称をなす形状であり、両端の2つの耐火物製レンガ13C,13C(
図6を参照)も同様に、中央の耐火物製レンガ13Aを対称軸として互いに線対称をなす形状である。
【0026】
これら5個の耐火物製レンガ13A,13B,13Cを一列に並べることにより構成されるレンガ群30は、前述したように、全体として水平断面形状が略台形をなし、レンガ群30の外方側端部の幅よりも内方側端部の幅が小さく、真空槽1の内方側に向かって幅が先細りになる形状をなしている。
【0027】
次に、レンガ群30を構成する耐火物製レンガ13の個数が偶数個である場合の耐火物製レンガ13の形状を、4個の場合を例にして説明する。レンガ群30を構成する耐火物製レンガ13の個数が偶数個である場合は、中央の2個の耐火物製レンガ13D,13Dとその他の耐火物製レンガ13E,13Eとで、形状が異なる。
中央の2個の耐火物製レンガ13D,13D(
図7を参照)は、水平断面形状が略台形をなす四角柱体であり、四角柱体の2つの接触側面13c、13cの一方のみに勾配が付けられ、他方は外方側端面13a及び内方側端面13bと直交し、非線対称且つ真空槽1の内方側に向かって幅が先細りになる形状をなしている。
【0028】
一方、端部の2個の耐火物製レンガ13E,13E(
図8を参照)は、水平断面形状が略台形をなす四角柱体であるが、レンガ群30を構成する耐火物製レンガ13の個数が奇数個の場合における中央以外の耐火物製レンガ13B,13Cと同様の形状であり、四角柱体の2つの接触側面13c、13cには同方向に異なる角度の勾配が付けられており、該勾配の角度が異なることにより、非線対称且つ真空槽1の内方側に向かって幅が先細りになる形状をなしている。
【0029】
そして、レンガ群30を構成する耐火物製レンガ13において、隣接する2つの耐火物製レンガ13の対向する接触側面13cの勾配の角度は、同角度となっている。
一例を挙げると、耐火物製レンガ13Dの勾配が付けられた接触側面13cの勾配の角度は、2.5°であり、耐火物製レンガ13Eの2つの接触側面13cの勾配の角度は、2.5°と3.8°である。
【0030】
また、中央の2個の耐火物製レンガ13D,13Dは、互いに線対称をなす形状であり、端部の2つの耐火物製レンガレンガ13E,13Eも同様に、互いに線対称をなす形状である。
これら4個の耐火物製レンガ13D,13Eを一列に並べることにより構成されるレンガ群30は、前述したように、全体として水平断面形状が略台形をなし、レンガ群30の外方側端部の幅よりも内方側端部の幅が小さく、真空槽1の内方側に向かって幅が先細りになる形状をなしている。
【0031】
前述したように、無端状に並べられた耐火物製レンガ13が鉛直方向に複数段積み重ねられるが、その場合には、鉄皮11の直線部分に内張りされた耐火物製レンガ13A,13B,13C(13D,13E)については、レンガ群30を構成する耐火物製レンガ13の個数が奇数個の段と偶数個の段とを交互に積み重ねることが好ましい。これにより、隣接する耐火物製レンガ13の境目の位置が上下の段において重なることを避けることができる。
【0032】
なお、
図2においては、真空槽1の紙面上側のレンガ群30は奇数個の耐火物製レンガ13で構成され、紙面下側のレンガ群30は偶数個の耐火物製レンガ13で構成されており、両レンガ群30が同じ段に位置しているように図示されているが、説明の便宜上このように図示したものであって、真空槽1において両レンガ群30は異なる段に位置するものである。
【0033】
このように構成した真空槽1は、全ての耐火物製レンガ13において、隣接する耐火物製レンガ13の対向する接触側面13cに勾配が付けられている(耐火物製レンガ13Dは一方の接触側面13cのみ)。そのため、鉄皮11の円弧部分に内張りされた耐火物製レンガ13Zのみならず、鉄皮11の直線部分に内張りされた耐火物製レンガ13A,13B,13C(13D,13E)についても、隣接する耐火物製レンガ13同士が競り合う。よって、いずれの耐火物製レンガ13も、真空槽1の内方側に抜け落ちにくい。
また、耐火物製レンガ13に亀裂等が発生して割れ、内外方向の分断が生じたとしても、耐火物製レンガ13同士の競り合いにより、耐火物製レンガ13の内方側部分の真空槽1の内方側への剥落(スポーリング)は生じにくい。
【0034】
さらに、真空槽1の築炉中に耐火物製レンガ13がずれたり抜け落ちることがなく、容易に築炉できるので、施工時間を大幅に短縮することができ、また、経時的に耐火物製レンガ13の損耗が進み残寸が小さくなっても真空槽1の内方側に抜け落ちにくいので、真空槽1の寿命の延長と安定操業が可能となる。さらに、耐火物製レンガ13の損傷又は抜け落ちに対して実施されていた補修作業の頻度を低くすることができるとともに、補修作業において使用する補修材の量を低減することができるので、真空槽1の操業コストを低減することができる。
【0035】
ここで、上記のような本実施形態の真空槽(
図2に示すもの)と、従来の真空槽(
図13に示す耐火物製レンガを鉄皮の直線部分に内張りした、水平断面形状が略長円形をなす真空槽)とにおいて、耐火物製レンガの内方側部分のスポーリング等による損耗速度を比較した。結果を
図11のグラフに示す。
本実施形態の真空槽は、従来の真空槽に比べて、鉄皮の直線部分に内張りされた耐火物製レンガの損耗速度が12%低かった。なお、鉄皮の円弧部分に内張りされた耐火物製レンガの損耗速度については、本実施形態の真空槽と従来の真空槽とで差異はないため、
図11のグラフにおいてはまとめて示してある。
【0036】
鉄皮11の直線部分に内張りされた耐火物製レンガ13A〜13Eにおいて、隣接する耐火物製レンガ13A〜13E同士の競り合いを十分に生じさせるためには、いずれの耐火物製レンガ13A〜13Eにおいても、外方側端面13aに直交する仮想線と勾配が付けられた接触側面13cとのなす角度(勾配の角度)は、0.5°以上6°以下であることが好ましく、1°以上4°以下であることがより好ましい。
【0037】
勾配の角度が前記下限値未満であると、競り合いが十分に生じにくく、耐火物製レンガ13A〜13Eの抜け落ちやスポーリングが生じやすくなるおそれがある。一方、勾配の角度が前記上限値を超えると、築炉において施工しにくくなるおそれがある。なお、勾配の角度が前記数値範囲内であれば、熱の影響による耐火物製レンガ13A〜13Eの損傷が少ないという効果も奏される。
【0038】
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
例えば、無端状に並べられた耐火物製レンガ13の内周面が滑らかな曲面となり、段差が生じないように、一部の耐火物製レンガ13の内方側端面13bを外方側端面13aと非平行な傾斜面としてもよい。
【0039】
鉄皮11の円弧部分に内張りされた耐火物製レンガ13Zと鉄皮の直線部分に内張りされた耐火物製レンガ13A〜13Eとの間には、前記両耐火物製レンガ13を接続する接続用の耐火物製レンガ13Y(
図2の例ではそれぞれ2個)が配されているが、この接続用の耐火物製レンガ13Yと、これに接する耐火物製レンガ(鉄皮11の円弧部分に内張りされた耐火物製レンガ13Z及び鉄皮11の直線部分に内張りされた耐火物製レンガ13C,13E)とは、内方側端部の角同士が一致しないので、無端状に並べられた耐火物製レンガ13の内方側端面が滑らかに連続せず段差が生じ、この段差の角部にスポーリングが生じやすい(
図12を参照)。
【0040】
そこで、例えば
図2に示すように、鉄皮11の円弧部分に内張りされた耐火物製レンガ13Zと接する接続用の耐火物製レンガ13Y(
図10を参照)、及び、接続用の耐火物製レンガ13Yと接する鉄皮11の直線部分に内張りされた耐火物製レンガ13C,13Eについては、内方側端面13bを外方側端面13aと非平行な傾斜面として、相互に接する耐火物製レンガ13の内方側端部の角同士が一致するようにすれば、無端状に並べられた耐火物製レンガ13の内方側端面13bが滑らかに連続するので、段差が生じない。よって、耐火物製レンガ13の内方側端部にスポーリングが生じにくい。
【0041】
また、鉄皮11の直線部分に内張りされた耐火物製レンガ13A〜13Eは、鉄皮11の円弧部分に内張りされた耐火物製レンガ13Zよりも、厚さ(内方側端面13bと外方側端面13aとの間の距離)を大きくすることが好ましい。そうすれば、耐火物製レンガ13A〜13Eの内方側部分にスポーリングが生じたとしても残っている部分が多いので、真空槽1の寿命を延長することができる。さらに、隣接する耐火物製レンガ13A〜13Eとの摩擦が大きくなるので、耐火物製レンガ13A〜13Eの真空槽1の内方側への抜け落ちが生じにくい。
【0042】
さらに、耐火物製レンガ13は熱伝導率が高いことが好ましい。そうすれば、耐火物製レンガ13の内方側部分と外方側部分との温度差に起因する亀裂や割れが生じにくくなる。耐火物製レンガ13の熱伝導率を向上させるためには、炭素等の熱伝導率の高い成分を添加することが好ましい。