特許第5848745号(P5848745)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5848745
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月27日
(54)【発明の名称】サプライチェーン向け新決済スキーム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/02 20120101AFI20160107BHJP
【FI】
   G06Q40/02 190
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-267088(P2013-267088)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-125453(P2015-125453A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2013年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】397077955
【氏名又は名称】株式会社三井住友銀行
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 達也
【審査官】 塩田 徳彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−285590(JP,A)
【文献】 特開2007−011540(JP,A)
【文献】 特開2005−044251(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0179330(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 50/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一のサプライチェーンにおける企業間での決済を行うシステムであって、前記システムは、
前記同一のサプライチェーンにおける1つの頂点企業、および1つまたは複数の下請け企業の仮想口座データを作成する手段であって、前記仮想口座データは、電子マネーとして預金額を有し、前記仮想口座データのうち、前記頂点企業の仮想口座データは、前記頂点企業の実口座データと関連付けられる、作成する手段と、
前記頂点企業、または前記下請け企業の端末を介して、前記頂点企業または前記下請け企業から前記同一のサプライチェーンにおける他の企業への支払い要求を受信する手段と、
前記支払い要求に応答して、前記支払い要求に係る支払い額が、前記支払い要求を行った企業の前記仮想口座データの預金額を超えているかどうか判定し、前記支払い額が前記支払い要求を行った企業の前記仮想口座データの預金額を超えていないと判定した場合、前記支払い要求を行った企業の前記仮想口座データの預金額から、支払い先である前記他の企業の前記仮想口座データの預金額に対し振替処理を実行する手段と
前記下請け企業の端末を介して、前記下請け企業から、前記電子マネーの現金化要求を受信する手段と、
前記現金化要求に応答して、前記現金化要求に係る現金化要求額が、前記現金化要求を行った企業の前記仮想口座データの預金額を超えているかどうか判定し、前記現金化要求額が前記現金化要求を行った企業の前記仮想口座データの預金額を超えていないと判定した場合、前記現金化要求額分の電子マネーを現金化し、前記現金化要求を行った企業が指定する実口座に対し振込処理を実行する手段と
を備えたことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記振込処理は、前記現金化要求額が前記現金化要求を行った企業の前記仮想口座データの預金額から、前記現金化要求額を減算すると共に、前記頂点企業の前記仮想口座データおよび前記実口座データの預金額から前記現金化要求額を減算し、前記現金化要求を行った企業が指定する実口座の預金額に前記現金化要求額を加算する処理であることを特徴とする請求項に記載のシステム。
【請求項3】
前記支払い額が前記支払い要求を行った企業の前記仮想口座データの預金額を超えていると判定した場合、前記振替処理は実行せず、前記支払い要求を行った企業の端末に対し、エラーメッセージを送信する手段と、
前記現金化要求額が前記現金化要求を行った企業の前記仮想口座データの預金額を超えていると判定した場合、前記振込処理は実行せず、前記現金化要求を行った企業の端末に対し、エラーメッセージを送信する手段と
をさらに備えたことを特徴とする請求項に記載のシステム。
【請求項4】
同一のサプライチェーンにおける企業間での決済を行う方法であって、前記方法は、
前記同一のサプライチェーンにおける1つの頂点企業、および1つまたは複数の下請け企業の仮想口座データを作成するステップであって、前記仮想口座データは、電子マネーとして預金額を有し、前記仮想口座データのうち、前記頂点企業の仮想口座データは、前記頂点企業の実口座データと関連付けられる、作成するステップと、
前記頂点企業、または前記下請け企業の端末を介して、前記頂点企業または前記下請け企業から前記同一のサプライチェーンにおける他の企業への支払い要求を受信するステップと、
前記支払い要求に応答して、前記支払い要求に係る支払い額が、前記支払い要求を行った企業の前記仮想口座データの預金額を超えているかどうか判定し、前記支払い額が前記支払い要求を行った企業の前記仮想口座データの預金額を超えていないと判定した場合、前記支払い要求を行った企業の前記仮想口座データの預金額から、支払い先である前記他の企業の前記仮想口座データの預金額に対し振替処理を実行するステップと
前記下請け企業の端末を介して、前記下請け企業から、前記電子マネーの現金化要求を受信するステップと、
前記現金化要求に応答して、前記現金化要求に係る現金化要求額が、前記現金化要求を行った企業の前記仮想口座データの預金額を超えているかどうか判定し、前記現金化要求額が前記現金化要求を行った企業の前記仮想口座データの預金額を超えていないと判定した場合、前記現金化要求額分の電子マネーを現金化し、前記現金化要求を行った企業が指定する実口座に対し振込処理を実行するステップと
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項5】
同一のサプライチェーンにおける企業間での決済を行う方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を有するコンピュータプログラムであって、前記方法は、
前記同一のサプライチェーンにおける1つの頂点企業、および1つまたは複数の下請け企業の仮想口座データを作成するステップであって、前記仮想口座データは、電子マネーとして預金額を有し、前記仮想口座データのうち、前記頂点企業の仮想口座データは、前記頂点企業の実口座データと関連付けられる、作成するステップと、
前記頂点企業、または前記下請け企業の端末を介して、前記頂点企業または前記下請け企業から前記同一のサプライチェーンにおける他の企業への支払い要求を受信するステップと、
前記支払い要求に応答して、前記支払い要求に係る支払い額が、前記支払い要求を行った企業の前記仮想口座データの預金額を超えているかどうか判定し、前記支払い額が前記支払い要求を行った企業の前記仮想口座データの預金額を超えていないと判定した場合、前記支払い要求を行った企業の前記仮想口座データの預金額から、支払い先である前記他の企業の前記仮想口座データの預金額に対し振替処理を実行するステップと
前記下請け企業の端末を介して、前記下請け企業から、前記電子マネーの現金化要求を受信するステップと、
前記現金化要求に応答して、前記現金化要求に係る現金化要求額が、前記現金化要求を行った企業の前記仮想口座データの預金額を超えているかどうか判定し、前記現金化要求額が前記現金化要求を行った企業の前記仮想口座データの預金額を超えていないと判定した場合、前記現金化要求額分の電子マネーを現金化し、前記現金化要求を行った企業が指定する実口座に対し振込処理を実行するステップと
を備えたことを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サプライチェーン向け新決済スキームに関する。より詳細には、他企業間、特に、サプライチェーンにおける他企業間の決済でのネッティングを電子的に実現する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、商取引におけるB2B決済は、銀行振込を利用するケースが大半を占めている(手形取引を除く)。その場合、振込手数料(他行3万円以上の場合、735円)が発生するだけでなく、支払日に資金が口座から引き落とされるため、企業は、効率的な資金運用ができていない。一方で、グループ会社間の支払いは、グループ間キャッシュマネジメントサービスを利用し、親会社が、グループ会社あての与信をとることにより、銀行振込を利用せず、親会社との貸借取引(仮想口座での決済)で処理することが可能となっている。本件は、銀行が電子マネーを発行し、本システムを用いることにより、サプライチェーンでの決済を、銀行振込を利用せずに、仮想口座で決済を行うことを可能とするシステムであり、諸費用および手数料の削減などを図ることができる。さらに、外国為替取引においては為替変動によるリスクの軽減を図ることもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このグループ間キャッシュマネジメントサービスを同一グループ企業間の取引において電子的に実現するシステムはあるものの、法的にも資本的にも関係のないような企業間(以下、他企業間という)でこれを実現するようなシステムは存在しない。これは、グループ会社と違って、他企業間の与信をとることができない、債務・債権の相殺処理や各企業の銀行口座へのアクセス処理に伴うセキュリティリスク、ならびに短期取引企業間での導入コストなどの問題による。
【0004】
このような問題を鑑みて、他企業間でグループ間キャッシュマネジメントサービスを実現する方法またはシステムが求められている。特に本発明においては、サプライチェーンにおける他企業間の決済(頂点企業→下請け企業→孫受け企業→・・・で発生する決済)での決済を銀行振込以外の方法で実現する方法またはシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、このような目的を達成するために、同一のサプライチェーンにおける企業間での決済を行うシステムであって、前記システムは、
前記同一のサプライチェーンにおける1つの頂点企業、および1つまたは複数の下請け企業の仮想口座データを作成する手段であって、前記仮想口座データは、電子マネーとして預金額を有し、前記仮想口座データのうち、前記頂点企業の仮想口座データは、前記頂点企業の実口座データと関連付けられる、作成する手段と、
前記頂点企業、または前記下請け企業の端末を介して、前記頂点企業または前記下請け企業から前記同一のサプライチェーンにおける他の企業への支払い要求を受信する手段と、
前記支払い要求に応答して、前記支払い要求に係る支払い額が、前記支払い要求を行った企業の前記仮想口座データの預金額を超えているかどうか判定し、前記支払い額が前記支払い要求を行った企業の前記仮想口座データの預金額を超えていないと判定した場合、前記支払い要求を行った企業の前記仮想口座データの預金額から、支払い先である前記他の企業の前記仮想口座データの預金額に対し振替処理を実行する手段と
を備えたことを特徴とする。
【0006】
また、前段落に記載の発明において、前記下請け企業の端末を介して、前記下請け企業から、前記電子マネーの現金化要求を受信する手段と、
前記現金化要求に応答して、前記現金化要求に係る現金化要求額が、前記現金化要求を行った企業の前記仮想口座データの預金額を超えているかどうか判定し、前記現金化要求額が前記現金化要求を行った企業の前記仮想口座データの預金額を超えていないと判定した場合、前記現金化要求額分の電子マネーを現金化し、前記現金化要求を行った企業が指定する実口座に対し振込処理を実行する手段と
をさらに備えたことを特徴とする。
【0007】
さらに、前段落に記載の発明において、前記振込処理は、前記現金化要求額が前記現金化要求を行った企業の前記仮想口座データの預金額から、前記現金化要求額を減算すると共に、前記現金化要求を行った企業が指定する実口座の預金額に前記現金化要求額を加算する処理であることを特徴とする。
【0008】
また、前段落に記載の発明において、前記支払い額が前記支払い要求を行った企業の前記仮想口座データの預金額を超えていると判定した場合、前記振替処理は実行せず、前記支払い要求を行った企業の端末に対し、エラーメッセージを送信する手段と、
前記現金化要求額が前記現金化要求を行った企業の前記仮想口座データの預金額を超えていると判定した場合、前記振込処理は実行せず、前記現金化要求を行った企業の端末に対し、エラーメッセージを送信する手段と
をさらに備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明によれば、他企業間、特に、サプライチェーンにおける他企業間の決済を電子的に実現することができる。これにより、他企業間で発生し得る決済、債務・債権の相殺処理や各企業の銀行口座へのアクセス処理に伴うセキュリティリスクの軽減、ならびに諸費用および手数料の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るサプライチェーン向け新決済スキームの概要を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るシステム構成を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る実口座データ記憶部に格納されたデータを示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る仮想口座データ記憶部に格納されたデータを示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る支払いデータ記憶部に格納されたデータを示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る振込データ記憶部に格納されたデータを示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る仮想口座開設処理を示すフローチャートである。
図8】本発明の一実施形態に係る支払い処理を示すフローチャートである。
図9】本発明の一実施形態に係る現金化処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態に係るサプライチェーン向け新決済システムを詳細に説明する。
【0012】
まず始めに、新決済スキームの概要を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るサプライチェーン向け新決済スキームの概要を示す図である。銀行などの金融機関は、サプライチェーンにおける頂点企業との間で、金融機関のWebサイト内にサプライチェーンサイトを立ち上げる契約を締結する。これにより、金融機関は、頂点企業の仮想口座を開設し、頂点企業から現金を預かる。この預金額は頂点企業の実口座(仮想口座でない)に預金されるものであるが、その全部または一部を電子マネーとして発行し、これが仮想口座の預金額となる。
【0013】
次に、サプライチェーンサイトに参加する下請け企業と、頂点企業、および金融機関の三者契約を締結し、これにより、金融機関は、下請け企業の仮想口座を開設する。なお、これは孫請け企業も同様である。
【0014】
頂点企業は、下請け企業に対する支払いを現金ではなく、発行された電子マネーで行う。すなわち、支払いは、サプライチェーンサイトを介して、頂点企業と下請け企業の仮想口座間での振替処理にて行われる。なお、下請け企業から孫請け企業への支払いも同様である。
【0015】
下請け企業や孫請け企業は、支払われた電子マネーを現金化したい場合、サプライチェーンサイトを介して、金融機関に現金化要求を行う。金融機関は現金化要求を受け、下請け企業や孫請け企業の実口座に対し、現金の振込処理を実行する。なお、この際、サプライチェーンサイトに参加していない企業への支払いを、当該不参加企業の実口座に対して振込処理を実行することにより、行うこともできる。
【0016】
次に、新決済システムの概要を説明する。図2は、本発明の一実施形態に係るシステム構成を示す図である。図2において、サプライチェーンマネージメント(SCM)サーバ200は、銀行などの金融機関が管理するサーバである。データセンタなどに設置されたSCMサーバ200は、ネットワーク201(例えば、インターネット)を介して、サプライチェーンにおける各企業内のネットワークに設置された、頂点企業端末202、下請け企業端末203、および孫請け端末204と通信を行うように構成されている。なお、図2において各企業端末は便宜上1台ずつ記載しているが、複数台設定することもできる。さらに他の企業が存在する場合はその分、端末が増えていくことになる。また、図2において、SCMサーバ200を単一のサーバとして示しているが、複数台のサーバによる分散サーバシステムとして構成することも可能である。なお、SCMサーバ200と、各企業端末とのやり取りは原則、金融機関のWebサイト内のサプライチェーンサイトを介して行われる。
【0017】
次に、SCMサーバ200の構成を詳細に説明する。なお、図2では、単一のコンピュータシステムを想定し、必要な機能構成だけを示している。
【0018】
SCMサーバ200は、CPU210に、システムバス215を介してRAM211、入力装置212、出力装置213、通信制御装置214、および不揮発性記憶媒体(ROMやHDDなど)で構成される記憶装置216が接続された構成を有する。記憶装置216は、与信管理システムの各機能を奏するためのソフトウェアプログラムを格納するプログラム格納領域と、当該ソフトウェアプログラムで取り扱うデータを格納するデータ格納領域とを備えている。以下に説明するプログラム格納領域の各手段は、実際は独立したソフトウェアプログラム、そのルーチンやコンポーネントなどであり、CPU210によって記憶装置216から呼び出されRAM211のワークエリアに展開されて、データベースなどを適宜参照しながら順次実行されることで、各機能を奏するものである。
【0019】
記憶装置216におけるデータ格納領域は、本発明に関連するものだけを列挙すると、実口座データ記憶部231、仮想口座データ記憶部232、支払いデータ記憶部233、および振込データ記憶部234を備える。いずれも、記憶装置216内に確保された一定の記憶領域である。
【0020】
実口座データ記憶部231は、各企業の実口座(仮想口座でない)に関するデータを格納する。図3は、本発明の一実施形態に係る実口座データ記憶部231に格納されたデータを示す図である。図3における実口座データは、各企業の実口座に係る金融機関データおよび口座データ、ならびに実口座の「預金額」を含む。
【0021】
仮想口座データ記憶部232は、各企業の仮想口座に関するデータを格納する。図4は、本発明の一実施形態に係る仮想口座データ記憶部232に格納されたデータを示す図である。図4における仮想口座データは、各企業の仮想口座に仮想口座番号とその「預金額」、属するサプライチェーングループのIDを一意に示す「SCグループID」、頂点企業か否かを示す「頂点フラグ」、および紐付く実口座の口座番号である「実口座番号」を含む。「SCグループID」が同一の企業は、同一のサプライチェーンサイトおよび電子マネーを共有する。「頂点フラグ」は、同一のSCグループ内で、どの企業が頂点企業であるかを示すフラグであり、例えば、頂点企業であれば「1」、それ以外の企業であれば「0」を格納する。また、「実口座番号」は、頂点企業以外は何も格納しなくてもよい(すなわち、頂点企業のみ、仮想口座と実口座が紐付いていれば足りる)。
【0022】
支払いデータ記憶部233は、同一のSCグループ内での電子マネーを使用した仮想口座間の支払いデータを格納する。図5は、本発明の一実施形態に係る支払いデータ記憶部233に格納されたデータを示す図である。図5における支払いデータは、発信者(代金を支払う側)の仮想口座番号を示す「発信仮想口座番号」、受信者(代金を受け取る側)の仮想口座番号を示す「受信仮想口座番号」、支払い額を示す「取引額」、および支払期日を示す「取引日、請求書番号などの入金消込に利用可能な「備考欄」」を含む。
【0023】
振込データ記憶部234は、電子マネーを現金化する際の実口座間の振込データを格納する。図6は、本発明の一実施形態に係る振込データ記憶部234に格納されたデータを示す図である。図6における振込データは、発信者(現金化する側、すなわち頂点企業)の実口座番号を示す「発信口座番号」、受信者(現金化を要求した企業が指定した実口座)の実口座番号を示す「受信口座番号」、現金化する額を示す「取引額」、および現金化する日を示す「取引日」を含む。
【0024】
次に、記憶装置216におけるプログラム格納領域に格納されているソフトウェアプログラムは、本発明に関連するものだけを列挙すると、データ送受信手段220、仮想口座データ作成手段221、支払いデータ作成手段222、および振込データ作成手段223を備えている。これらの手段220−223は、CPU210によって実行される。
【0025】
データ送受信手段220は、頂点企業端末202から、仮想口座の開設要求を受信する。また、頂点企業が仮想口座を開設し、サプライチェーンサイトを立ち上げた後、データ送受信手段220は、さらに当該サプライチェーンサイトに所属させる下請け企業などから、下請け企業端末203などを介して、仮想口座の開設要求を受信する。そして、データ送受信手段220は、頂点企業端末202などから、下請け企業などへの支払い要求を受信する。また、データ送受信手段220は、下請け企業端末203などから、電子マネーの現金化要求を受信する。この際、現金化要求額が預金額を超えるなどにより現金化できない場合は、データ送受信手段220は、下請け企業端末203などに対し、エラーメッセージを送信する。
【0026】
仮想口座データ作成手段221は、頂点企業端末202などから、仮想口座の開設要求を受信したことに応答して、仮想口座データを作成し、仮想口座データ記憶部232に格納する。この際または別途、頂点企業の場合は、仮想口座データ作成手段221は、頂点企業端末202からの指示に基づいて、実口座データの預金額の全部または一部を電子マネーとして発行し、仮想口座データの預金額に格納する。
【0027】
支払いデータ作成手段222は、頂点企業端末202などから、下請け企業などへの支払い要求を受信したことに応答して、支払い額が、支払う側の企業の仮想口座の預金額を超えているかどうかの判定を行う。支払い額が預金額内であれば、支払いデータ作成手段222は、支払いデータを作成し、支払いデータ記憶部233に格納する。さらに、当該支払いデータに基づいて、仮想口座間の振替処理を実行することにより、代金の支払い側(頂点企業など)から、受け取り側(下請け企業など)への支払いを電子マネーにより行う。
【0028】
振込データ作成手段223は、下請け企業端末203などから、電子マネーの現金化要求を受信したことに応答して、現金化要求額が、現金を要求した企業の仮想口座の預金額(電子マネーの額)を超えているかどうかの判定を行う。現金化要求額が預金額内であれば、振込データ作成手段223は、振込データを作成し、振込データ記憶部234に格納する。さらに、当該振込データに基づいて、実口座への現金の振込処理を実行する。
【0029】
次に、図7のフローチャート、ならびに図3および4を参照して、本発明の一実施形態に係る仮想口座開設処理を流れに沿って説明する。
【0030】
図7は、本発明の一実施形態に係る仮想口座開設処理を示すフローチャートである。まず、ステップ701にて、データ送受信手段220が、頂点企業端末202から、仮想口座の開設要求を受信する。これは例えば、金融機関のWebサイトから、その旨のリンクやフォーム入力を介して行われる。
【0031】
仮想口座の開設要求を受信すると、仮想口座データ作成手段221は、頂点企業の仮想口座データ(図4)を作成する(ステップ702)。本実施形態では、仮想口座データを開設する前提として、頂点企業は、仮想口座を開設しようとしている金融機関の実口座を持っていることを想定している。そのため、ステップ702にて仮想口座データを作成する際、当該仮想口座データに、実口座の口座番号(実口座データ(図3)の「口座番号」から取得)を持つことにより(仮想口座データ(図4)の「実口座番号」に格納)、実口座と仮想口座とが紐付けられる。そのため、この場合は、ステップ701における解説要求の際、対応する実口座の口座番号など、実口座を指定するデータを併せて受信することになる。また、ステップ702にて作成する仮想口座データは頂点企業のものであるため、仮想口座データ(図4)の「頂点フラグ」には、頂点企業に係るものであることを示す「1」を格納する。なお、「SCグループID」は、例えば、連番で採番するように管理し、サプライチェーングループごとに一意のデータを格納する。また、仮想口座データ作成手段221は、頂点企業の仮想口座を開設すると共に、金融機関内のWebサイトに専用のサプライチェーンサイトを開設する。当該サプライチェーンサイトを介して、頂点企業や下請け企業などは、電子マネー取引を行うことになる。そのため、仮想口座を開設すると共に、仮想口座データ作成手段221は、さらにサプライチェーンサイトへのログインIDやパスワード(本パスワードは仮パスワードとし、後で取引企業などのクライアントが自由に変更可能とすることもできる)を発行する。
【0032】
次に、仮想口座データ作成手段221は、頂点企業端末202からの指示に基づいて、実口座データの預金額の全部または一部を電子マネーとして発行する(ステップ703)。当該電子マネーの発行とは、実口座の預金額内で、電子マネーである仮想口座の預金額に入金(仮想口座データ(図4)の「預金額」に格納)することである。ただし、この際、実口座の預金額が減るわけではない。実口座の預金額が変動するのは、あくまでも現金化要求された場合のみである。なお、頂点企業端末202からの指示は、ステップ701の開設要求の受信と併せて受信することもできる。この場合は、ステップ703の処理をステップ702の前で行い、ステップ702の仮想口座データ作成の際に、発行した電子マネーの金額を、仮想口座データの「預金額」に格納する。
【0033】
次に、データ送受信手段220は、ステップ701にて開設したサプライチェーンサイトを利用する下請け企業の仮想口座の開設要求を受信する(ステップ704)。当該開設要求は、金融機関のWebサイトを介して、頂点企業端末202から送信することもできるし、実際にサイトを利用する下請け企業端末203から直接受信することもできる。また、図7では、ステップ703から704を一連の処理として表わしているが、必ずしも連続して実施する必要はない。
【0034】
仮想口座の開設要求を受信すると、仮想口座データ作成手段221は、下請け企業の仮想口座データ(図4)を作成する(ステップ705)。ステップ705の仮想口座データの作成は、ステップ702における頂点企業のものと同様、実口座との紐付けが行われる。「SCグループID」は、所属するサプライチェーングループを、例えば、ステップ704の開設要求の中で指定することにより、該当するサプライチェーングループのIDを格納する。また、ステップ705にて作成する仮想口座データは頂点企業のものではないため、「頂点フラグ」は、頂点企業以外を示す「0」を格納する。また、仮想口座を開設した下請け企業に対しても、仮想口座データ作成手段221は、サプライチェーンサイトへのログインIDやパスワードを発行する。
【0035】
ステップ705の後、本処理は終了する。しかしながら、ステップ704および705は、ステップ701にて開設したサプライチェーンサイトを利用する下請け企業や孫請け企業、さらにそれらの下請け企業が存在する分、繰り返される。
【0036】
次に、図8のフローチャート、ならびに図4および5を参照して、本発明の一実施形態に係る支払い処理を流れに沿って説明する。
【0037】
図8は、本発明の一実施形態に係る支払い処理を示すフローチャートである。まず、ステップ801にて、データ送受信手段220は、頂点企業端末202などを介して、下請け企業に支払いを行う企業から、下請け企業などへの支払い要求を受信する。一実施形態では、当該支払い要求には、代金の支払い側の仮想口座、代金の受け取り側の仮想口座、支払い代金の額(取引額)、および支払期日(取引日)に関するデータが含まれる。支払期日とは取引日を指定することにより、その日に支払いが行われることを意味する。すなわち、支払期日には、支払い要求した日以降の日が指定されることになり、支払期日になると、支払い処理が実行されることになる。
【0038】
支払い要求を受信すると、支払いデータ作成手段222は、支払い代金の額(取引額)が、代金の支払い側の仮想口座データ(図4)の「預金額」を超えているかどうかの判定を行う(ステップ802)。ステップ802にて取引額が預金額を超えていると判定された場合、Yesルートに進み、データ送受信手段220は、要求のあった頂点企業端末202などに対し、預金額不足により、支払い処理ができない旨のエラーメッセージを送信する(ステップ803)。
【0039】
一方、ステップ802にて取引額が預金額を超えていないと判定された場合、Noルートに進み、支払いデータ作成手段222は、支払いデータ(図5)を作成し、支払いデータ記憶部233に格納する(ステップ804)。
【0040】
続いて、ステップ805にて、支払いデータ作成手段222は、作成された支払いデータに基づいて、支払い取引を行う企業の仮想口座間の振替処理を実行する。具体的には、代金の支払い側の仮想口座データ(図4)の預金額から、支払いデータ(図5)の取引額を減算し、受け取り側の仮想口座データの預金額に加算する。ただし、これはあくまでも仮想口座間の電子マネーの移動であり、実口座間の現金の移動は発生しない。また、ステップ804から805を一連の処理として表わしているが、ステップ805は、支払いデータ(図5)の各「取引日」ごとに、その取引日に実行される。ステップ805の後、本処理は終了する。
【0041】
次に、図9のフローチャート、ならびに図3、4、および6を参照して、本発明の一実施形態に係る現金化処理を流れに沿って説明する。
【0042】
図9は、本発明の一実施形態に係る現金化処理を示すフローチャートである。まず、ステップ901にて、データ送受信手段220は、下請け企業端末203などを介して、下現金化を要求する企業から、現金化要求を受信する。一実施形態では、当該現金化要求には、現金化を要求する企業の仮想口座、現金化要求額(取引額)、現金を振り込む実口座、および振込日指定する場合は振込日(取引日)に関するデータ含まれる。なお、現金を振り込む実口座は、現金化を要求する企業の仮想口座に対応する実口座であってもよいし、全く異なる口座であってもよい。これにより、例えば、サプライチェーンサイトに所属しない企業への支払いを現金化と共に行うことができる。すなわち、電子マネーにより、サプライチェーンサイトに所属しない企業への支払いを行うことができる。
【0043】
現金化要求を受信すると、振込データ作成手段223は、現金化要求額が、現金化を要求する企業の仮想口座データ(図4)の「預金額」を超えているかどうかの判定を行う(ステップ902)。ステップ902にて要求額が預金額を超えていると判定された場合、Yesルートに進み、データ送受信手段220は、要求のあった下請け企業端末203などに対し、預金額不足により、現金化要求に対する振込処理ができない旨のエラーメッセージを送信する(ステップ903)。
【0044】
一方、ステップ902にて要求額が預金額を超えていないと判定された場合、Noルートに進み、振込データ作成手段223は、振込データ(図6)を作成し、振込データ記憶部234に格納する(ステップ904)。
【0045】
続いて、ステップ905にて、振込データ作成手段223は、作成された振込データに基づいて、電子マネーの現金化と共に、実口座への振込処理を実行する。具体的には、現金化を要求した企業の仮想口座データ(図4)の預金額から、振込データ(図6)の取引額を減算し、さらに振込データの発信口座番号に紐付けられる仮想口座(すなわち頂点企業の仮想口座)データの預金額から取引額を減算する。また、振込データの発信口座番号が示す実口座(すなわち頂点企業の実口座)データ(図3)の預金額から取引額を減算し、振込データの受信口座番号が示す実口座(振込先の実口座)の預金額に取引額を加算する。これにより、電子マネーを現金化すると共に、指定された実口座に対して現金の振込みを行うことができる。例えば、振込先の実口座に、サプライチェーンサイトに所属しない企業の口座を指定した場合、電子マネーにより当該所属しない企業に対し支払いを行うことと実質的に同一になる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9