(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平坦面状に形成された上面でシート状媒体を吸着する吸着ステージで、かつ、複数の領域に分割されているとともに、分割された領域毎に、外部との間でエアを流動させるエア流動口を備える前記吸着ステージと、
前記吸着ステージの上方に設けられ、前記吸着ステージ上を移動することで、前記シート状媒体を前記吸着ステージの上面に密着させるスキージ機構と、
前記エア流動口を介して前記吸着ステージと外部との間で流動させるエアの流動量を調整するステージ側エア調整手段とを有し、
前記スキージ機構は、前記吸着ステージの上方に所定の高さで配置され、前記吸着ステージの上面に向けてエアを吐出することによって、前記シート状媒体を前記吸着ステージの上面に密着させるエアスキージ部材を備えており、
前記ステージ側エア調整手段は、少なくとも前記エアスキージ部材が通過する各領域で前記吸着ステージの上面側から前記吸着ステージの外部にエアを吐出する吐出動作を予め実行しておき、前記エアスキージ部材の移動と同期して、前記エアスキージ部材が通過する各領域の動作を前記吐出動作から前記吸着ステージの上面側から前記吸着ステージの内部にエアを吸引する吸引動作に変更する
ことを特徴とする吸着装置。
平坦面状に形成された上面でシート状媒体を吸着する吸着ステージと、前記吸着ステージの上方に設けられ、前記吸着ステージ上を移動することで、前記シート状媒体を前記吸着ステージの上面に密着させるスキージ機構とを有する吸着装置に対し、前記吸着ステージを複数の領域に予め分割しておき、
前記吸着ステージの内部に供給されたエアを前記吸着ステージの上面側から外部に吐出する動作を吐出動作とし、前記吸着ステージの上面側から前記吸着ステージの内部にエアを吸引する動作を吸引動作とし、
前記吸着装置を制御する制御装置によって、前記吐出動作を各領域で独立して予め実行させておき、前記シート状媒体と前記吸着ステージの上面とが密着している密着部分が前記スキージ機構によって移動させられる際に、その移動に同期して、前記密着部分が通過する各領域の動作を前記吐出動作から前記吸引動作に変更させる
ことを特徴とする吸着装置の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0019】
[実施形態1]
<吸着装置を含む印字システムの構成>
以下、
図1〜
図3を参照して、本実施形態1に係る吸着装置を含む印字システムの全体の構成につき説明する。
図1は、本実施形態1に係る吸着装置4を含む印字システム1の全体の概略構成を示す図である。
図2及び
図3は、それぞれ、印字システム1の各部の概略構成を示す図であり、
図2は印字システム1を構成する印字装置8周りの概略構成を示しており、また、
図3は吸着装置4周りの概略構成を示している。
【0020】
図1に示すように、印字システム1は、制御装置2、位置決め装置3、吸着装置4、及び、印字装置8を有している。ここでは、本実施形態1に係る吸着装置4が電子デバイスの製造ライン上に設けられた印字システム1に用いられている場合を想定して説明する。ただし、吸着装置4は、このような用途に限らず、様々な用途に用いることができる。
【0021】
制御装置2は、各装置の動作を制御する装置である。
位置決め装置3は、吸着装置4の吸着ステージ61や印字装置8の印字ヘッド81を任意の位置に位置決めをする装置である。
吸着装置4は、吸着ステージ61の上面でシート状媒体(薄膜材)を吸着して、シート状媒体を任意の位置に固定する装置である。
【0022】
印字装置8は、シート状媒体やシート状媒体上に集積された加工品(電子デバイス)の表面に各種の情報(例えば、個体識別ID情報等)を印字する装置である。印字装置8(
図2参照)は、吸着ステージ61の上方に設けられている。ここでは、印字装置8は、インクジェットプリンタとして構成されており、インクジェットプリンタ本体9と印字ヘッド81とに分離された構成になっているものとして説明する。なお、インクジェットプリンタ本体9及び印字ヘッド81の個数は、運用に応じて、1乃至複数個の好適な個数に設定することができる。
【0023】
(位置決め装置の概略構成)
位置決め装置3(
図2及び
図3参照)は、撮像機構31(
図2参照)、ステージ移動機構35(
図3参照)、及び、ヘッド移動機構82(
図2参照)を有している。
【0024】
撮像機構31(
図2参照)は、複数台のカメラ32(
図1に示す例では、カメラ32a,32b,32id)で、シート状媒体St(
図4参照)に形成された位置補正のためのアライメントマーク101(
図4参照)及びシートID102(
図4参照)を撮像する機構である。ここでは、カメラ32a,32bがアライメントマーク101(
図4参照)を撮像するアライメントカメラであり、また、カメラ32idがシートを識別するためのシートID102(
図4参照)を撮像するシートIDカメラであるものとして説明する。シート状媒体St(
図4参照)の構成については後記する。
【0025】
ステージ移動機構35(
図3参照)は、吸着装置4の吸着ステージ61を移動させる機構である。ステージ移動機構35(
図3参照)は、ステージ支持部材36、及び、サーボモータ38(38x,38y,38θ)を有している。ステージ支持部材36は、吸着ステージ61をX軸方向及びY軸方向に移動自在に支持する部材である。サーボモータ38xは、ステージ支持部材36を介して、吸着ステージ61をX軸方向に移動させて、吸着ステージ61のX軸方向の位置決めをする移動手段である。サーボモータ38yは、ステージ支持部材36を介して、吸着ステージ61をY軸方向に移動させて、吸着ステージ61のY軸方向の位置決めをする移動手段である。サーボモータ38θは、ステージ支持部材36を介して、吸着ステージ61を上面に沿って回転させて、吸着ステージ61の配置方向の角度を定める移動手段である。
【0026】
ヘッド移動機構82(
図2参照)は、印字装置8の印字ヘッド81を移動させる機構である。ヘッド移動機構82(
図2参照)は、X軸ロボット83x、Y軸ロボット83y、及び、Z軸ロボット83zを有している。X軸ロボット83xは、印字ヘッド81をX軸方向に移動させる移動手段である。Y軸ロボット83yは、印字ヘッド81をY軸方向に移動させる移動手段である。Z軸ロボット83zは、印字ヘッド81をZ軸方向(上下方向)に移動させる移動手段である。ここでは、ヘッド移動機構82は、1乃至複数個の印字ヘッド81に対応して、X軸ロボット83xとZ軸ロボット83zとを印字ヘッド81と同数個ずつ備えているものとして説明する。
【0027】
(吸着装置の概略構成)
吸着装置4(
図3参照)は、スキージ機構41、エア供給装置42、真空ポンプ43、エア調整弁44,45、及び、吸着ステージ61を有している。
【0028】
スキージ機構41は、シート状媒体Stのしわや反り等を除去しながら、シート状媒体Stを吸着ステージ61の上面に密着させる機構である。スキージ機構41は、吸着ステージ61の上方に設けられている。
【0029】
スキージ機構41は、スキージ部材51、アクチュエータ53、及び、レール54を有している。
【0030】
スキージ部材51は、吸着ステージ61上をなめるように移動することで、シート状媒体Stを吸着ステージ61の上面(後記する吸着板62の上面)に密着させる部材である。ここで、「なめるように」とは、吸着ステージ61の上面に近接した空間内で、上面に対して略平行な方向に摺動する態様を意味している。本実施形態1では、スキージ部材51は、吸着ステージ61の上方に所定の高さで配置され、シート状媒体Stとは非接触な状態で、吸着ステージ61の上面に向けてエアを吐出することによって、エアの吐出圧をシート状媒体Stに与えて、シート状媒体Stを吸着ステージ61の上面に均一に密着させるエアスキージ部材として構成されている。ただし、スキージ部材51は、シート状媒体Stと直接接触する構成の部材にすることができる。
【0031】
以下、スキージ部材51を「エアスキージ部材51」と称する。エアスキージ部材51は、エアの吐出圧でシート状媒体Stを吸着ステージ61の上面(吸着板62の上面)に押し付けるため、シート状媒体Stやシート状媒体St上に集積された加工品(電子デバイス)104(
図4参照)にダメージを与えることがない。
【0032】
アクチュエータ53及びレール54は、エアスキージ部材51を吸着ステージ61の上面(吸着板62の上面)に対して略平行な方向に移動させる移動機構である。本実施形態1では、2本のレール54が、吸着ステージ61の直上から外れた領域で、互いに並行で、かつ、吸着ステージ61の上面(吸着板62の上面)に対して略平行に配置されている。2つのアクチュエータ53は、2本のレール54に取り付けられており、エアスキージ部材51を保持した状態で各レール54に沿って移動する。なお、エアスキージ部材51は、例えば、移動機構を構成するアクチュエータ53に交換可能に装着されている。
【0033】
エア供給装置42は、エアをエアスキージ部材51に供給する(送る)装置である。エアは、エア供給管55を介して、エア供給装置42からエアスキージ部材51に供給される。
【0034】
真空ポンプ43は、吸着ステージ61(主に、後記する吸着板62)の内部のエアを吸引する装置である。エアは、エア流動管65を介して、吸着ステージ61(主に、後記する吸着板62)から外部に排出される。
【0035】
エア調整弁44は、エアスキージ部材51に供給するエアの供給量を調整する調整手段である。エア調整弁44は、エア供給管55の経路上に設けられている。
【0036】
エア調整弁45は、エア流動管65内を流動させるエアの流動量を調整する調整手段である。エア調整弁45は、複数のエア流動管65の経路上のそれぞれに設けられている。なお、「エア流動管65内を流動させるエアの流動量」とは、後記するエア流動口64(
図12(b)及び(c)参照)を介して吸着ステージ61と外部との間で流動させるエアの流動量を意味している。
【0037】
吸着ステージ61は、平坦面状に形成された上面でシート状媒体Stを吸着する構成要素である。ここでは、吸着ステージ61が吸着機構(エアチャック)を備えたステージであるものとして説明する。
【0038】
吸着ステージ61は、上面でシート状媒体Stを吸着する吸着板62と、吸着板62を下から支持する台座63とを有する構成になっている。
【0039】
吸着板62は、多数の孔が形成されたポーラス材(例えば、セラミックポーラス材)によって構成されている。各孔は、エアが通過できる程度の微細な大きさに形成されている。そのため、エアが吸着板62の内部を通過することができる。吸着板62の上面は、シート状媒体Stが密着するように、平坦面状に形成されている。また、吸着板62の下面は、台座63の上に安定して設置することができるように、平坦面状に形成されている。
【0040】
台座63は、吸着板62を支持する部材である。台座63は、位置決め装置3のステージ支持部材36によって支持されている。また、台座63は、複数本のエア流動管65を介して真空ポンプ43と接続されている。
【0041】
(印字装置の概略構成)
印字装置8(
図2参照)は、1乃至複数個のインクジェットプリンタ本体9、及び、1乃至複数個の印字ヘッド81を有している。インクジェットプリンタ本体9は、内部にインクを収納しており、インクを印字ヘッド81に供給して印字させる構成要素である。
【0042】
(印字システムの制御系の構成)
図2及び
図3に示すように、印字システム1の制御装置2は、位置決めコントローラ2aと吸着コントローラ2bと印字コントローラ2cとに接続されている。
【0043】
位置決めコントローラ2aは、位置決め装置3及び印字装置8のヘッド移動機構82の動作を制御するコントローラである。
吸着コントローラ2bは、吸着装置4の動作を制御するコントローラである。
印字コントローラ2cは、印字装置8のインクジェットプリンタ本体9及び印字ヘッド81の動作を制御するコントローラである。
【0044】
(位置決めコントローラ周りの概略構成)
図2に示すように、位置決めコントローラ2aは、有線で撮像機構31と接続されている。撮像機構31は、複数台のカメラ32(ここでは、3台のカメラ32a,32b,31id)を備えている。各カメラ32は、照明33とともに、撮像ロボット34によって支持されている。撮像ロボット34は、カメラ32をX軸方向及びY軸方向に移動させて、カメラ32を所定の位置に位置決めをするロボットである。位置決めコントローラ2aは、カメラ32の移動方向及び移動量を決定して、撮像ロボット34の動作を制御する。
【0045】
また、
図2に示すように、位置決めコントローラ2aは、印字装置8のヘッド移動機構82と接続されている。位置決めコントローラ2aは、印字ヘッド81の移動方向及び移動量を決定して、ヘッド移動機構82に印字ヘッド81を移動させる。
【0046】
また、
図3に示すように、位置決めコントローラ2aは、位置決め装置3のステージ移動機構35のサーボモータ38(38x,38y,38θ)と接続されている。位置決めコントローラ2aは、吸着ステージ61の移動方向及び移動量を決定して、サーボモータ38(38x,38y,38θ)に吸着ステージ61を移動させる。
【0047】
(吸着コントローラ周りの概略構成)
図3に示すように、吸着コントローラ2bは、吸着装置4のエア供給装置42とエア調整弁44とに接続されている。吸着コントローラ2bは、エア供給装置42の起動及び停止、並びに、エア調整弁44の開閉動作及び開閉量を制御する。なお、
図3には、4本のエア供給管55が示されている。エア調整弁44は、4本のエア供給管55のそれぞれに1つずつ設けられている。
【0048】
係る構成において、エア供給装置42及びエア調整弁44は、エアスキージ部材51に供給するエアの供給量を調整するスキージ側エア調整手段を構成している。エアスキージ部材51から吐出されるエアの吐出圧は、スキージ側エア調整手段によって供給されるエアの供給量に相関する。
【0049】
なお、吸着装置4は、運用に応じて、エア供給管55の本数を増減させることができ、これに合わせてエア調整弁44の個数を増減させることができる。
【0050】
また、吸着装置4は、例えば、エア供給管55の本数分のエア供給装置42を用意し、1本のエア供給管55に対して1台のエア供給装置42を接続することによって、エア調整弁44を排除した構成にすることができる。この場合に、スキージ側エア調整手段は、各エア供給装置42によって構成される。
【0051】
また、
図3に示すように、吸着コントローラ2bは、吸着装置4の真空ポンプ43とエア調整弁45とに接続されている。吸着コントローラ2bは、真空ポンプ43の起動及び停止、並びに、エア調整弁45の開閉動作及び開閉量を制御する。なお、
図3には、3本のエア流動管65しか示されていない。しかしながら、ここでは、吸着装置4は、さらに図示せぬ6本のエア流動管65を有しており、実際には、合計9本のエア流動管65(
図12(b)参照)を有しているものとして説明する。エア調整弁45は、9本のエア流動管65のそれぞれに1つずつ設けられている。
【0052】
係る構成において、真空ポンプ43及びエア調整弁45は、後記するエア流動口64(
図12(b)及び(c)参照)を介して吸着ステージ61と外部との間で流動させるエアの流動量を調整するステージ側エア調整手段を構成している。吸着ステージ61の吸着圧は、ステージ側エア調整手段によって流動されるエアの流動量に相関する。
【0053】
なお、吸着装置4は、運用に応じて、エア流動管65の本数を増減させることができ、これに合わせてエア調整弁45の個数を増減させることができる。
【0054】
また、吸着装置4は、エア流動管65の本数分の真空ポンプ43を用意し、1本のエア流動管65に対して1台の真空ポンプ43を接続することによって、エア調整弁45を排除した構成にすることができる。この場合に、ステージ側エア調整手段は、各真空ポンプ43によって構成される。
【0055】
また、
図3に示すように、吸着コントローラ2bは、吸着装置4のスキージ機構41のアクチュエータ53と接続されている。吸着コントローラ2bは、エアスキージ部材51の移動方向及び移動量を決定して、アクチュエータ53にエアスキージ部材51を移動させる。
【0056】
(印字コントローラ周りの概略構成)
図2に示すように、印字コントローラ2cは、印字装置8の1乃至複数個のインクジェットプリンタ本体9と接続されている。印字コントローラ2cは、各インクジェットプリンタ本体9の印字動作を制御する。
【0057】
係る構成において、印字装置8で各種の情報を印字する場合に、シート状媒体Stが吸着ステージ61の上面に載置される。すると、吸着コントローラ2bが、吸着装置4を駆動して、シート状媒体Stを吸着ステージ61の上面に吸着させる。このとき、スキージ機構41が、シート状媒体Stのしわや反り等を除去しながら、シート状媒体Stを吸着ステージ61の上面に密着させて、シート状媒体Stを吸着ステージ61の上面に好適に吸着させる。なお、このときの動作については、後記する<吸着装置の吸着ステージ周りの構成及び動作>の章で説明する。
【0058】
次に、位置決めコントローラ2aが、位置決め装置3を駆動して、吸着ステージ61を所定の位置に配置させる。このとき、位置決めコントローラ2aは、カメラ32a,32bによって撮像されたシート状媒体Stの撮像画像を取得し、アライメントマーク101(
図4参照)が所定の位置に配置されるように、位置決め装置3のサーボモータ38(38x,38y,38θ)を駆動する。
【0059】
この後、印字コントローラ2cが、印字装置8を駆動して、各種の情報(例えば、個体識別ID情報105(
図4(b)参照)等)をシート状媒体Stやシート状媒体St上に集積された加工品(電子デバイス)104の表面に印字させる。
【0060】
<シート状媒体の構成>
以下、
図4を参照して、シート状媒体Stの概略構成につき説明する。
図4は、シート状媒体Stの概略構成を示す図である。
図4(a)は、シート状媒体Stの全体の概略構成を示している。
図4(b)は、シート状媒体Stの上に集積された加工品(電子デバイス)に印字される情報を示している。
【0061】
ここでは、シート状媒体Stが定尺にカットされたフィルム材によって構成されている場合を想定して説明する。
【0062】
図4(a)に示すように、本実施形態1で用いるシート状媒体Stは、矩形に形成されている。シート状媒体Stの表面には、アライメントマーク101とシートID102とが形成(印字)されており、また、加工品(電子デバイス)104が集積される加工領域103が設けられている。ここでは、1つの加工領域103がシート状媒体Stの表面に設けられているものとして説明する。また、シート状媒体Stには、加工品(電子デバイス)104がすでに集積されているものとして説明する。ただし、加工領域103は、1枚のシート状媒体Stに対して複数設けることができる。例えば、
図7に示す例では、1枚のシート状媒体Stに対して9つの加工領域103が設けられている。また、加工領域103は、各領域で形状や大きさを変えることもできる。
【0063】
アライメントマーク101は、シート状媒体Stの位置及び向きを検出するためのマークである。アライメントマーク101は、シート状媒体Stの矩形の角部分付近に形成されている。
【0064】
シートID102は、各シート状媒体Stの識別番号を表している。シートID102は、シート状媒体Stの矩形の短辺付近に形成されている。加工品(電子デバイス)104に関する各種の情報は、シートID102と対応付けられて、図示せぬデータベースで管理されている。
【0065】
印刷システム1は、シートID102に基づいて、個体識別ID等の情報を特定して、特定された情報に基づいて個体識別ID情報105(
図4(b)参照)を各加工品(電子デバイス)104の表面に印字する。なお、印刷システム1は、図示せぬ各種の情報をシート状媒体Stに印字することもできる。
【0066】
シート状媒体Stは、多数の小さな加工品(電子デバイス)104が比較的広い表面上に集積されているため、しわや反り等の発生によって吸着ステージ61の上面に好適に吸着されない場合に、良好な加工(印字等)が困難になる。この点について、以下に補足説明する。例えば、シート状媒体Stは、加工品(電子デバイス)104と比較して大きな部材であって、かつ、柔らかい部材であるため、しわや反り等が発生し易い。仮に、しわや反り等が発生すると、シート状媒体Stは、吸着ステージ61の上面に好適に吸着されないため、個々の加工品(電子デバイス)104の予め定められた印字位置に正しく印字できないことや、所定の位置からずれた位置に配置されること等が生じる。特に、シート状媒体Stは、例えば、数百mm程度の比較的大きな構成になっており、これに対して、加工品(電子デバイス)104は、例えば、十数mm程度の比較的小さな構成になっている。仮に、シート状媒体Stが所定の位置からずれた位置に配置されると、個体識別ID情報105が大きくずれた位置に印字されるため、好ましくない。そこで、本実施形態1では、吸着装置4は、スキージ機構41によって、シート状媒体Stのしわや反り等を除去しながら、シート状媒体Stを吸着ステージ61の上面に密着させているため、シート状媒体Stを吸着ステージ61の上面に好適に吸着させることができる。
【0067】
<吸着装置の細部の構成>
以下、
図5及び
図6を参照して、吸着装置4の細部の構成につき説明する。
図5は、吸着装置4の概略構成を示す図である。
図6は、吸着装置4とその周囲の部材との配置関係を示す模式図である。
【0068】
図5に示すように、吸着装置4において、エアスキージ部材51が吸着ステージ61の上方に配置されている。また、吸着装置4において、シート状媒体Stが吸着ステージ61の上面(吸着板62の上面)に載置されている。シート状媒体Stには、しわや反り等が発生している。
【0069】
エアスキージ部材51は、エア供給管55が接続されるエア供給口56と、エアが吐出される複数のエア吐出口57とを有している。各エア吐出口57は、エアスキージ部材51の、吸着ステージ61の上面(吸着板62の上面)と対向する側に形成されている。
【0070】
吸着装置4は、シート状媒体Stのしわや反り等を除去するために、エアスキージ部材51から吸着ステージ61の上面に向けてエアを吐出する。これによって、吸着装置4は、エアの吐出圧をシート状媒体Stに与えて、シート状媒体Stのしわや反り等を除去するとともに、シート状媒体Stを吸着ステージ61の上面に密着させる。
【0071】
また、このとき、吸着装置4は、エアスキージ部材51の動きと連動するように、真空ポンプ43で吸着ステージ61(主に、吸着板62)の内部のエアを吸引する。これによって、吸着装置4は、シート状媒体Stを吸着ステージ61の上面に好適に吸着する。
【0072】
係る構成において、吸着装置4と周囲の部材との配置関係は、
図6に示す通りとなっている。
すなわち、印字ヘッド81は、上下方向(
図6に示す矢印A81の方向)に移動する。その印字ヘッド81は、吸着ステージ61の上面(吸着板62の上面)から上方側に高さHhd1の位置から高さHhd2の位置までの間で下端が移動するように、配置されている。高さHhd1の位置は、印字ヘッド81の印字時の位置である。一方、高さHhd2の位置は、印字ヘッド81の退避時の位置である。
【0073】
また、エアスキージ部材51は、その中心軸が吸着ステージ61の上面(吸着板62の上面)から上方側に高さHasの位置に配置されている。エアスキージ部材51は、高さHasの位置で水平な方向(すなわち、吸着ステージ61の上面(吸着板62の上面)に対して略平行な方向)に移動する。この例では、高さHasの値は、シート状媒体Stのしわや反り等の高さHstよりも十分に大きな値で、かつ、高さHhd2よりも小さな値に設定されている。ただし、高さHasの値は、想定される高さHstの値以下になることもあり得る。なお、吸着装置4は、一定の高さHasでエアスキージ部材51を水平な方向に移動させることにより、エア吐出口57(
図5参照)から吐出されるエアの吐出圧を調整し易くしている。
【0074】
また、カメラ32は、吸着ステージ61の上面(吸着板62の上面)から上方側に配置されている。カメラ32の下端の高さHcmの値は、カメラ32の焦点距離に応じて、任意の値に設定することができる。そのカメラ32の焦点距離は、シート状媒体Stのアライメントマーク101(
図4(a)参照)や加工品(電子デバイス)104の個体識別ID情報105(
図4(b)参照)を好適に撮影することができる値に設定されている。このようなカメラ32は、例えば、ヘッド移動機構82を構成する各構成要素よりも高い位置に配置することもできる。なお、カメラ32と周囲の構成要素とが接触する可能性がある場合は、カメラ32の撮像位置P1と退避位置P2とを予め設定しておき、撮像位置P1と退避位置P2との間でカメラ32を移動させればよい(例えば、
図6に示す矢印A32の方向参照)。
【0075】
<エアスキージ部材の構成>
以下、
図7〜
図11を参照して、エアスキージ部材51の構成につき説明する。
図7は、エアスキージ部材51の配置位置及び移動方向を示す模式図である。
図8は、エアスキージ部材51の概略構成を示す図である。
図9は、エアスキージ部材51の変形例の概略構成を示す図である。
図10は、エアスキージ部材51のエア吐出口57のパターン例を示す概略構成を示す図である。
図11は、エアスキージ部材51の変形例の概略構成を示す図である。
【0076】
図7(a)に示すように、吸着装置4は、エアスキージ部材51をX軸方向に沿って配置することができる。この場合に、吸着装置4は、エアスキージ部材51をY軸方向(
図7(a)に示す矢印A51aの方向)に移動させる。
【0077】
又は、
図7(b)に示す例では、吸着装置4は、エアスキージ部材51をY軸方向に沿って配置することもできる。この場合に、吸着装置4は、エアスキージ部材51をX軸方向(
図7(b)に示す矢印A51bの方向)に移動させる。
【0078】
なお、
図7(a)及び(b)に示す例では、1枚のシート状媒体Stに対して9つの加工領域103が設けられている。係る構成において、加工領域103は、各領域で形状や大きさを変えることができる。
【0079】
エアスキージ部材51は、例えば、
図8に示すように構成することができる。
図8(a)及び
図8(b)に示す例では、エアスキージ部材51は、円筒状に形成されている。エアスキージ部材51の円筒の中腹には、エア供給口56が形成されており、エア供給管55が接続されている。エアスキージ部材51の円筒の下側部分は、吸着ステージ61の上面(吸着板62の上面)と対向する部分である。その下側部分には、複数のエア吐出口57が形成されている。エアスキージ部材51は、
図8(c)に示すように、エア供給管55を介してエア供給装置42(
図3参照)から供給されるエアを内部に取り込み、取り込まれたエアを各エア吐出口57から外部に吐出する。
【0080】
エアスキージ部材51は、例えば、
図9に示すように変形することができる。
図9(a)及び
図9(b)に示す例では、エアスキージ部材51は、円筒状に形成されている。エアスキージ部材51の円筒の端部には、エア供給口56が形成されており、エア供給管55が接続されている。エアスキージ部材51の円筒の下側部分は、吸着ステージ61の上面(吸着板62の上面)と対向する部分である。その下側部分には、複数のエア吐出口57が形成されている。エアスキージ部材51は、
図9(c)に示すように、エア供給管55を介してエア供給装置42(
図3参照)から供給されるエアを内部に取り込み、取り込まれたエアを各エア吐出口57から外部に吐出する。
【0081】
エアスキージ部材51の各エア吐出口57は、例えば、
図10に示すパターンに形成することができる。
図10(a)に示すパターン1の例では、各エア吐出口57は、同径の形成されており、一列に配置されている。
図10(b)に示すパターン2の例では、各エア吐出口57は、同径の形成されており、二列に分かれて千鳥状に配置されている。
図10(c)に示すパターン3の例では、各エア吐出口57は、小径のものと大径のものとの2種類に形成されており、小径のものと大径のものとが交互に一列に配置されている。
【0082】
エアスキージ部材51は、例えば、
図11に示すように変形することができる。
図11(a)はエアスキージ部材51の上面図であり、
図11(b)はエアスキージ部材51の下面図である。
図11(a)及び
図11(b)に示す例では、吸着装置4のスキージ機構41(
図3参照)は、1台の吸着ステージ61に対して、複数個のエアスキージ部材51を備える構成になっている。各エアスキージ部材51は、一列に配置されており、移動機構に装着されている。なお、移動機構は、各エアスキージ部材51が装着することができるように、アクチュエータ53(
図3参照)及びレール54(
図3参照)の構成が適宜変更されている。また、
図11(a)及び
図11(b)に示す例では、各エアスキージ部材51のエア吐出口57が
図10(b)に示すパターン2(千鳥状のパターン)の構成になっている。しかしながら、各エアスキージ部材51のエア吐出口57は、他のパターンに適宜変更することができる。また、
図11(a)及び
図11(b)に示す例では、各エアスキージ部材51の長さがほぼ均等になっている。しかしながら、各エアスキージ部材51の長さは、運用に応じて、異ならせることができる。
【0083】
吸着装置4のスキージ機構41は、いずれの構成のエアスキージ部材51においても、複数のエア吐出口57を有しており、また、各エア吐出口57から吐出されるエアの吐出圧がシート状媒体Stを全域に亘って平坦化させるような圧力に調整されている。
【0084】
吸着装置4のスキージ機構41は、好ましくは、複数種類のエアスキージ部材51を予め用意するとともに、シート状媒体Stのしわや反りの大きさ等の特性としわや反り等を高効率に除去できるエアスキージ部材51の種類との対応関係を予め解析しておき、シート状媒体Stの特性に応じて複数種類のエアスキージ部材51の中から任意の種類のものが選択され、選択されたエアスキージ部材51が移動機構に装着される構成にするとよい。これにより、吸着装置4は、シート状媒体Stのしわや反りの大きさ等の特性に合わせて、エア吐出口57の形状や配置を変更することができる。ここでは、
図11(a)及び
図11(b)に示すパターンのスキージ機構41が選択され、移動機構に装着されている場合を想定して説明する。
【0085】
<吸着装置の吸着ステージ周りの構成及び動作>
以下、
図12及び
図13を参照して、吸着装置4の吸着ステージ61周りの構成及び動作につき説明する。
図12は、吸着装置4の吸着ステージ61周りの概略構成を示す図である。
図12(a)は、吸着装置4の吸着ステージ61の上面の構成を示しており、
図12(b)は、吸着装置4の吸着ステージ61の下面周りの構成を示しており、
図12(c)は、側面方向から見た吸着装置4の吸着ステージ61周りのエアの動きを示している。
図13は、吸着装置4の制御例を示す図である。
【0086】
図12(a)に示すように、本実施形態1では、吸着装置4の吸着ステージ61は、分割領域D1〜D9の9つの領域に分割されている。各分割領域D1〜D9では、9枚の吸着板62が台座63に独立して貼り合わせられている。ここでは、例えば、吸着板62が多孔質な部材であるセラミックポーラス材によって形成されているものとして説明する。なお、ポーラス材の気孔径は、シート状媒体Stに変形や凹凸が生じない程度の大きさが好ましく、ここでは、例えば数十(μm)であるものとして説明する。
【0087】
図12(b)に示すように、吸着ステージ61は、分割領域D1〜D9毎に、外部との間でエアを流動させるエア流動口64を台座63の下面に備えている。各エア流動口64には、エア流動管65が接続されている。各エア流動管65の他端には、真空ポンプ43(
図3参照)が他端に接続されている。また、各エア流動管65の経路上には、エア制御弁45が配置されている。
【0088】
エア制御弁45は、吸着コントローラ2b(
図3参照)によって開閉制御されている。エア制御弁45が開放されると、吸着ステージ61(主に、吸着板62)の内部のエアが真空ポンプ43に吸引される。
【0089】
このとき、
図12(c)に示すように、吸着ステージ61の周囲のエアが吸着ステージ61の上面(吸着板62の上面)側から吸着ステージ61の内部に吸引される。これにより、吸着装置4は、吸着ステージ61の上面(吸着板62の上面)に載置されたシート状媒体Stを吸着する。この動作は、吸着コントローラ2b(
図3参照)の制御下において、各分割領域D1〜D9で独立して実行される。
【0090】
本実施形態1では、吸着コントローラ2b(
図3参照)は、例えば、
図13に示すように、吸着装置4の動作を制御する。すなわち、吸着コントローラ2bは、まず、分割領域D1〜D9に対応する全てのエア制御弁45を閉鎖させておく。これにより、吸着装置4は、全ての分割領域D1〜D9の動作を未吸引動作にする。「未吸引動作」では、吸着ステージ61の周囲のエアが吸着ステージ61の内部に吸引されないため、吸着ステージ61の上面に載置されたシート状媒体Stが吸着ステージ61の上面に吸着されない。
【0091】
次に、吸着コントローラ2bは、エアスキージ部材51の移動(吐出動作)と同期して、エアスキージ部材51が通過する各分割領域D1〜D9の動作を未吸引動作から吸引動作に変更する。
【0092】
つまり、本実施形態1の吸着装置4の制御方法は、吸着ステージ61を複数の領域(ここでは、分割領域D1〜D9)に予め分割しておき、吸引動作を各分割領域D1〜D9で独立して任意の方向に向けて順番に開始させる構成になっている。
【0093】
これにより、吸着装置4は、エアスキージ部材51から吐出されるエアの吐出圧で、シート状媒体Stのしわや反り等を除去しながら、シート状媒体Stを吸着ステージ61の上面に均一に密着させるとともに、吸着ステージ61の吸着圧でシート状媒体Stを吸着ステージ61の上面に均一に吸着させることができる。
【0094】
なお、シート状媒体Stと吸着ステージ61の上面とが密着している密着部分が、エアスキージ部材51の移動に伴って移動する。このとき、吸着装置4は、密着部分を吸着ステージ61の上面に確実に吸着させることができる。吸着コントローラ2bは、シート状媒体Stの全面が吸着ステージ61の上面に吸着された場合に、吸着装置4に、各分割領域D1〜D9での吸引動作を維持させる。
【0095】
係る構成において、吸着装置4は、シート状媒体Stのしわや反り等を除去した状態で、シート状媒体Stを吸着ステージ61の上面に均一に吸着することができる。このような吸着装置4は、例えば、加工品104として数ミリ程度の大きさの電子デバイスを高密度に集積する電子デバイスの製造ラインに好適に用いることができる。
【0096】
特に、スキージ部材51としてエアスキージ部材を用いる場合は、エアが、シート状媒体Stの形状に応じてシート状媒体Stに与える吐出圧(押圧)を分散させることができる非接触な手段である。そのため、この場合に、吸着装置4は、エアでシート状媒体Stを吸着ステージ61の上面に押圧することによって、シート状媒体Stのしわや反りの大きさ等の特性に影響されることなく、かつ、シート状媒体Stやシート状媒体Stに集積される電子デバイス等の加工品104にダメージを与えることなく、シート状媒体Stを吸着ステージ61の上面に均一に吸着することができる。
【0097】
以上の通り、本実施形態1に係る吸着装置4によれば、シート状媒体Stのしわや反り等を除去した状態で、シート状媒体Stを吸着ステージ61の上面に均一に吸着することができる。特に、スキージ部材51としてエアスキージ部材を用いる場合は、シート状媒体Stの特性に影響されることなく、かつ、シート状媒体Stやシート状媒体Stに集積される電子デバイス等の加工品104にダメージを与えることなく、シート状媒体Stを吸着ステージ61の上面に均一に吸着することができる。
【0098】
[実施形態2]
実施形態1に係る吸着装置4の制御方法は、例えば厚さが数μmオーダーのシート状媒体St等のように、シート状媒体Stが特に薄くて柔らかい場合に、シート状媒体Stと吸着ステージ61の上面との間にエアが滞留して、シート状媒体Stにしわが発生する可能性がある。そのため、実施形態1に係る吸着装置4の制御方法よりもさらに均一にシート状媒体Stの吸着を行えるようにすることが望まれる。
【0099】
そこで、本実施形態2では、例えば厚さが数μmオーダーのシート状媒体St等のように、シート状媒体Stが特に薄くて柔らかい場合であっても、シート状媒体Stのしわを確実に除去して、シート状媒体Stを好適に吸着することができる制御方法及びその制御方法に用いる吸着装置4Aを提供する。
【0100】
以下、
図14及び
図15を参照して、本実施形態2に係る吸着装置4Aの吸着ステージ61周りの構成及び動作につき説明する。
図14は、吸着装置4Aの吸着ステージ61周りの概略構成を示す図である。
図14(a)は、吸着装置4Aの吸着ステージ61の下面周りの構成を示しており、
図14(b)は、側面方向から見た吸着装置4Aの吸着ステージ61周りのエアの動きを示している。
図15は、吸着装置4Aの制御例を示す図である。
【0101】
図14(a)に示すように、本実施形態2に係る吸着装置4Aは、実施形態1に係る吸着装置4(
図12(b)参照)と比較すると、エア制御弁45の代わりに、三方弁によって構成されたエア制御弁46が各エア流動管65の経路上に配置されている点で相違している。
【0102】
エア制御弁46は、3つの弁のうち、1つ目の弁がエア流動管65を介して吸着ステージ61と接続されており、2つ目の弁がエア供給管66を介して図示せぬエア供給装置と接続されており、3つ目の弁がエア吸引管67を介して真空ポンプ43(
図3参照)と接続されている。
【0103】
エア制御弁46は、吸着コントローラ2b(
図3参照)によって、開放方向、開閉動作、及び、開閉量が制御されている。
図14(c)に示すように、エア制御弁45がエア供給管66側の弁(2つ目の弁)を開放すると、エアが図示せぬエア供給装置から吸着ステージ61側に供給される。その結果、吸着装置4Aは、吸着ステージ61の上面(吸着板62の上面)からのエアの吐出動作を実行する。
また、エア制御弁45がエア吸引管67側の弁(3つ目の弁)を開放すると、エアが吸着ステージ61から真空ポンプ43側に吸引される。その結果、吸着装置4Aは、吸着ステージ61の上面(吸着板62の上面)からエアを吸引する吸引動作を実行する。
【0104】
本実施形態2では、吸着コントローラ2b(
図3参照)は、例えば、
図15に示すように、吸着装置4Aの動作を制御する。すなわち、吸着コントローラ2bは、まず、分割領域D1〜D9に対応する全てのエア制御弁46に対し、エア供給管66側の弁(2つ目の弁)を開放させる。これにより、吸着装置4は、全ての分割領域D1〜D9の動作を吐出動作にする。「吐出動作」では、エアが吸着ステージ61の上面から外部に吐出されるため、吸着ステージ61の上面に載置されたシート状媒体Stがごく僅かに浮き上がる。
【0105】
次に、吸着コントローラ2bは、エアスキージ部材51の移動(吐出動作)と同期して、エアスキージ部材51が通過する各分割領域D1〜D9の動作を吐出動作から吸引動作に変更する。
【0106】
つまり、本実施形態2に係る吸着装置4Aの制御方法は、実施形態1の吸着装置4の制御方法において未吸引であった領域(少なくともエアスキージ部材51が通過する各領域)に対して、まず、エアを供給して、シート状媒体Stを吸着ステージ51の上面から浮き上がらせ、次に、シート状媒体Stと吸着ステージ61の上面との間のエアが外部に排出されるように、エアスキージ部材51の移動(吐出動作)と同期して、エアスキージ部材51が通過する領域の動作を吐出動作から吸引動作に変更する。
【0107】
これにより、本実施形態2に係る吸着装置4Aの制御方法は、シート状媒体Stと吸着ステージ61の上面との間のエアが外部に排出されるように、エアスキージ部材51でエアの吐出圧(押圧)をシート状媒体Stに与えながら、シート状媒体Stを吸着ステージ61の上面に吸着することができる。その結果、本実施形態2に係る吸着装置4Aの制御方法は、シート状媒体Stと吸着ステージ61の上面との間のエアを外部に排出させながら、また、シート状媒体Stのしわや反り等を除去しながら、シート状媒体Stを吸着ステージ61の上面に均一に密着させることができる。
【0108】
なお、シート状媒体Stと吸着ステージ61の上面とが密着している密着部分が、エアスキージ部材51の移動に伴って移動する。このとき、吸着装置4Aは、密着部分を吸着ステージ61の上面に確実に吸着させることができる。吸着コントローラ2bは、シート状媒体Stの全面が吸着ステージ61の上面に吸着された場合に、吸着装置4Aに、各分割領域D1〜D9での吸引動作を維持させる。
【0109】
このような吸着装置4Aは、例えば厚さが数μmオーダーのシート状媒体St等のように、シート状媒体Stが特に薄くて柔らかい場合であっても、シート状媒体Stのしわを確実に除去して、シート状媒体Stの吸着の均一化を図ることができる。
【0110】
以上の通り、本実施形態2に係る吸着装置4Aによれば、実施形態1に係る吸着装置4と同様に、シート状媒体Stのしわや反り等を除去した状態で、シート状媒体Stを吸着ステージ61の上面に均一に吸着することができる。
しかも、本実施形態2に係る吸着装置4Aによれば、実施形態1に係る吸着装置4に比べて、シート状媒体Stが特に薄くて柔らかい場合であっても、シート状媒体Stのしわを確実に除去して、シート状媒体Stの吸着の均一化を図ることができる。
【0111】
[実施形態3]
実施形態1及び実施形態2に係るエアスキージ部材51は、好ましくは、エア吐出口57(
図5参照)から吐出されるエアの吐出圧や吐出方向を容易に変更できるようにするとよい。
【0112】
そこで、本実施形態3では、吐出されるエアの吐出圧や吐出方向を容易に変更することができるように、エア吐出口57にノズルを取り付けた構成を提供する。
【0113】
以下、
図16〜
図18を参照して、本実施形態3で用いるノズル71,71a,71bの構成につき説明する。
図16〜
図18は、それぞれ、本実施形態3で用いるノズル71,71a,71bの概略構成を示す図である。
【0114】
図16に示すように、ノズル71は、取付ネジ72と、吐出圧調整つまみ73と、及び、ノズル吐出口74を備えている。ノズル71は、取付ネジ72によってエアスキージ部材51のエア吐出口57(
図5参照)に取り付けられる。また、ノズル71は、吐出圧調整つまみ73によってノズル吐出口74から吐出されるエアの吐出圧を調整することができる。なお、ノズル吐出口74は、吐出されるエアを真っ直ぐに吐出する構成になっている。
【0115】
図17に示すように、ノズル71aは、
図16に示すノズル71と比較すると、ノズル吐出口74がノズル吐出口74aに変更されている点で相違している。ノズル吐出口74aは、吐出されるエアを多方向に拡散させる構成になっている。
【0116】
図18に示すように、ノズル71bは、
図16に示すノズル71と比較すると、ノズル吐出口74がノズル吐出口74bに変更されている点で相違している。ノズル吐出口74bは、先端(下端)側が任意の方向に向けて湾曲されており、また、
図18(a)及び
図18(b)に示すように、先端(下端)を任意の方向に向けることが可能な構成になっている。ノズル71bは、先端(下端)を任意の方向に向けることによって、吐出されるエアを任意の方向に誘導させることができる。
【0117】
エアスキージ部材51は、このようなノズル71,71a,71bをエア吐出口57に選択的に取り付けることによって、吐出されるエアの吐出圧や吐出方向を容易に変更することができる。そのため、例えば、エアスキージ部材51は、シート状媒体Stのしわや反りの大きさ等の特性に応じて、吐出されるエアの吐出圧や吐出方向を容易に変更することができる。
【0118】
以上の通り、本実施形態3によれば、ノズル71,71a,71bをエアスキージ部材51のエア吐出口57に選択的に取り付けることによって、吐出されるエアの吐出圧や吐出方向を容易に変更することができる。
【0119】
本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0120】
例えば、吸着装置4,4Aは、フィルム材に限らず、シート状の様々な物品(例えば、紙や布等)をシート状媒体Stとして用いることができる。
【0121】
また、例えば、スキージ部材51は、例えば、吸着ステージ61に対向して設けられた刷毛(はけ)でシート状媒体Stに接触する棒状部材や、外周面でシート状媒体Stに接触するローラ等のような、シート状媒体Stと直接接触する構成の部材にすることができる。この場合に、スキージ機構41は、スキージ部材51をシート状媒体Stに直接接触させて、シート状媒体Stを吸着ステージ61の上面に密着させる構成となる。
【課題】シート状媒体のしわや反りの大きさ等の特性に影響されることなく、かつ、シート状媒体及びシート状媒体上に集積される電子デバイス等の加工品にダメージを与えることなく、シート状媒体を吸着ステージの上面に均一に吸着させる。
【解決手段】吸着装置4は、平坦面状に形成された上面でシート状媒体を吸着する吸着ステージ61と、吸着ステージの上方に設けられ、吸着ステージ上を移動することで、シート状媒体を吸着ステージの上面に密着させるスキージ機構41とを有する。