特許第5848872号(P5848872)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5848872
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月27日
(54)【発明の名称】放送受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/438 20110101AFI20160107BHJP
   H04N 21/442 20110101ALI20160107BHJP
【FI】
   H04N21/438
   H04N21/442
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-276421(P2010-276421)
(22)【出願日】2010年12月10日
(65)【公開番号】特開2012-129576(P2012-129576A)
(43)【公開日】2012年7月5日
【審査請求日】2013年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(72)【発明者】
【氏名】前原 正和
【審査官】 鍬 利孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−148825(JP,A)
【文献】 特開2005−094451(JP,A)
【文献】 特開2001−292381(JP,A)
【文献】 特開2006−094498(JP,A)
【文献】 特開2008−092230(JP,A)
【文献】 特開2009−194452(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0195197(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00−21/858
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
元番組から次番組へ選局操作された場合において、前記次番組の表示が可能となる切換時点のうちの最も遅い場合である最大遅延切換時点を予測する予測手段と、
前記元番組の受信を終了した受信終了時点からは、該受信終了時点のバッファに残存している元番組データに基づいて当該元番組を表示するとともに、その表示再生速度を、前記受信終了時点から最大遅延切換時点までの間、前記元番組が表示される速度に設定する表示制御手段とを具備しており、
前記表示制御手段が、元番組から次番組へ選局操作された時点でバッファに残存している元番組データが所定量以下の場合には、バッファにさらに元番組データを記憶させ、元番組から次番組へ選局操作された時点でバッファに残存している元番組データが所定量より多い場合には、バッファにさらに元番組データを記憶させないように構成されていることを特徴とする放送受信装置。
【請求項2】
前記受信終了時点から最大遅延切換時点までの間、ユーザに選局動作中であることを報知する報知手段をさらに具備している請求項1記載の放送受信装置。
【請求項3】
前記予測手段が、前記最大遅延切換時点を、放送波に含まれるデータに基づいて算出するものである請求項1又は2記載の放送受信装置。
【請求項4】
元番組から次番組へ選局操作された場合において、前記次番組の表示が可能となる切換時点のうちの最も遅い場合である最大遅延切換時点を予測し、
前記元番組の受信を終了した受信終了時点からは、該受信終了時点のバッファに残存している元番組データに基づいて当該元番組を表示するとともに、その表示再生速度を、前記受信終了時点から最大遅延切換時点までの間、前記元番組が表示される速度に設定しており、
元番組から次番組へ選局操作された時点でバッファに残存している元番組データが所定量以下の場合には、バッファにさらに元番組データを記憶させ、元番組から次番組へ選局操作された時点でバッファに残存している元番組データが所定量より多い場合には、バッファにさらに元番組データを記憶させないことを特徴とする放送受信方法。
【請求項5】
前記受信終了時点から最大遅延切換時点までの間、ユーザに選局動作中であることを報知する請求項4記載の放送受信方法。
【請求項6】
前記最大遅延切換時点を、放送波に含まれるデータに基づいて算出する請求項4又は5記載の放送受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送波を受信して出力する放送受信装置に関し、特にデジタル放送に好適に用いられるものに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルテレビなどの放送受信装置では、デジタル放送波を受信して映像データにデコードし、さらにその映像データを所定量バッファリングした後、ディスプレイに表示する。したがって、チャンネル切換までには、従来のアナログテレビで行われている周波数チューニングに加えて、前述したようにデコード、バッファリングなどの動作が必要になるし、さらには、MPEGであれば間欠的に送信されてくるIピクチャーの出現まで映像を構築できないことから、比較的長い時間を要することとなる。
【0003】
そして、この切換の間は画面に何も表示されないブランク状態となるが、このようなブランク状態が長く続くと、ユーザに違和感を感じさせる場合がある。
【0004】
そこで、このような問題を解決すべく、従来、下記特許文献に示すような手法が考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−503181号公報
【特許文献2】特開2005−184457号公報
【特許文献3】特開2010−81275号公報
【特許文献4】特開2005−94451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2では、いずれも、最終的にブランクが発生する確率が高く、それについての解決法を見出していない。例えば特許文献2では、ユーザによるチャンネル切換操作(選局操作とも言う)を受け付けると、切換後の放送波における次のIピクチャーが出現する時刻を予想し、それに合わせて、装置内でのチャンネル切換動作を遅らせ、そのチャンネル切換動作までは、元番組を再生するようにしたものである。この動作から明らかなように、装置内でのチャンネル切換動作期間はブランクが発生する。
【0007】
また、特許文献3、4では、静止画をブランク中に表示するようにしている。ただ、これでは、ユーザに違和感を感じさせるという点で、ブランク状態とさして変わることがない。
【0008】
本発明は、これらの課題を解決すべくなされたものであって、その主たる目的は、選局操作時に、ユーザにできるだけ違和感を感じさせることなく、次番組に移行表示できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明に係る放送受信装置は、元番組から次番組へ選局操作された場合において、前記次番組の表示が可能となる切換時点のうちの最も遅い場合である最大遅延切換時点を予測する予測手段と、前記元番組の受信を終了した受信終了時点からは、該受信終了時点のバッファに残存している元番組データに基づいて当該元番組を表示するとともに、その表示再生速度を、前記受信終了時点から最大遅延切換時点までの間、前記元番組が表示される速度に設定する表示制御手段とを具備している。
なお、予測手段による最大遅延切換時点の予測は、各国あるいは各地域毎等に設定されている放送規格による。
【0010】
しかして、表示制御手段によって、その最大遅延時点まで前番組を静止させることなく、通常よりも遅い速度で表示させることができるので、次番組が表示されるまで、ブランクの発生を確実に防止することができる。また、最大遅延時点よりも早く次番組の表示が可能になれば、その時点で前番組の表示を打ち切ればよい。
【0011】
前記受信終了時点から最大遅延切換時点までの間、ユーザに選局動作中であることを報知する報知手段をさらに具備しているものであれば、例えばユーザが操作を受け付けられていないと勘違いして、何度も操作ボタンを押すといったことを回避でき、より快適な操作環境を提供することができるようになる。
【0012】
具体的態様としては、前記予測手段が、前記最大遅延切換時点を、放送波に含まれるデータに基づいて算出するものを挙げることができる。
【発明の効果】
【0013】
このように本発明によれば、例えば1チューナー構成のデジタル放送受信装置であっても、確実に選局処理の合間に生じるブランク(表示不能期間)を生じさせることなく、スムーズな選局を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態における放送受信装置を示す機能ブロック図である。
図2】同実施形態における放送受信装置の選局時の動作全体を示すフローチャートである。
図3】同実施形態における放送受信装置が、日本のデジタル放送規格にのっとって放送波を映像にするまでの動作を示すとともに、それに要する時間を示したフローチャートである。
図4】同実施形態における放送受信装置の選局時の動作を従来のものと比較して示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る放送受信装置100は、例えば、いわゆるデジタルテレビであり、この他にデジタル放送波を受信可能なものであれば、DVDプレーヤー等の録画装置などでも構わない。
【0016】
この放送受信装置100は、図1に示すような構成を有している。なお、図1において様々な処理を行う機能ブロックとして記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU、メモリ、その他のLSI等で構成することができ、ソフトウェア的には、復号処理を実現するプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。
【0017】
同図中、符号10はシステムコントローラであり、この放送受信装置100全体の制御を担う。
【0018】
符号20は、記憶部である。ここには、CPUを動作させるためのプログラムが記述されたプログラム領域や後述する映像データをバッファリングするためのフレームバッファ領域等が設けられている。
【0019】
符号30は、フロントエンド部と称されるものであり、図示しないが、所望の放送波を選局受信するチューナ部やTS(トランスポートストリーム)処理を行うデジタル復調部などからなる。ここでは、このフロントエンド部30が1つだけ設けられている。
【0020】
符号40は、復号処理部である。この復号処理部40は、前記フロントエンド部30から出力されるTSにデスクランブル処理、デマルチプレクサ処理等を施した後、これを復号(デコード)して、MPEG形式の映像データや音声データ、EPGなどを分離生成するとともに前記記憶部20に書き込むものである。
【0021】
符号50は、再生処理部である。この再生処理部50は、前記記憶部20のフレームバッファ領域から映像データ、音声データ等を取得し、各データに記述されているタイムスタンプに基づいてそれらの同期をとったうえで、この映像データ等をディスプレイが受付可能な信号にして出力するものである。
【0022】
しかしてこの実施形態では、プログラムを追加して前記システムコントローラ10に選局管理部10としての機能を担わせている。この選局管理部10は、元番組から次番組へ選局操作された場合において、前記次番組の表示が可能となる切換時点のうちの最も遅い場合である最大遅延切換時点を予測する予測機能と、前記元番組の受信を終了した受信終了時点以降は、該受信終了時点のバッファに残存している元番組データに基づいて当該元番組を表示するとともに、その表示再生速度を、前記受信終了時点から最大遅延切換時点までの間、前記元番組が表示される速度に設定する表示制御機能とを具備したものであり、その機能の詳細を動作説明を兼ねて図2を参照しながら以下に詳述する。
【0023】
ユーザーが次番組として、選局先チャンネルCH2を選択すると、選局管理部10がCH1からCH2への選局操作をフロントエンド部30を通して検知する。
【0024】
次に、選局管理部10は、CH1からCH2へ選局が完了するまでの最大の理論値である選局完了予定時間(チャンネル切換操作受付から選局完了までの最大時間)Tを算出する(ステップS1)。この機能が請求項でいうところの予測手段に該当する。また請求項でいう最大遅延切換時点とは、チャンネル切換操作受付時点から前記選局完了予定時間T経過した時点のことである。
【0025】
当該予測は各国又は各地域でのデジタル放送規格に依存するので、種々の態様があり得るが、ここでは、例えば日本のデジタル放送規格(ISDB-T/S)を例にとって説明する。
【0026】
この規格でのシーケンスは、図3に示すとおりである。
本実施形態での選局管理部10は、この規格シーケンスに沿って、以下の5通りの選局完了予定時間Tを算出する。
【0027】
(1)選局先のサービスIDがPATに存在せず、選局先が地上波で周波数変更が必要な場合
フロントエンド部30での必要時間・・・max(1200ms+100ms)
復号処理部40、再生処理部50での必要時間・・・max(500ms+500ms)
=2300ms
(2)選局先のサービスIDがPATに存在せず、選局先が地上波で周波数変更が不要な場合
フロントエンド部30での必要時間・・・max(0ms+100ms)
復号処理部40、再生処理部50での必要時間・・・max(500ms+500ms)
=1100ms
(3)選局先のサービスIDがPATに存在せず、選局先がBS又はCSで周波数変更が必要な場合
フロントエンド部30での必要時間・・・max(600ms+100ms)
復号処理部40、再生処理部50での必要時間・・・max(500ms+500ms)
=1700ms
(4)選局先のサービスIDがPATに存在せず、選局先がBS又はCSで周波数変更が不要な場合
フロントエンド部30での必要時間・・・max(0ms+100ms)
復号処理部40、再生処理部50での必要時間・・・max(500ms+500ms)
=1100ms
(5)選局先のサービスIDがPATに存在した場合
フロントエンド部30での必要時間・・・max(100ms)
復号処理部40、再生処理部50での必要時間・・・max(500ms+500ms)
=1100ms
なお、ここでは、max時間を算出する際、各部での遅延時間を加えた上で、さらに余裕をみて100ms単位に切り上げ加算している。
【0028】
次に、フレームバッファ領域に残存している未再生の映像データが所定量よりも多い場合は(ステップS2のYes)、再生処理部50が、前記未再生の映像データについて、その再生を上記Tまでに自然に収束するように再生速度を遅く調整する(ステップS4)。具体的には、STCクロック・リカバリーのPLLにおけるクロック周波数を調整することにより速度調節する。このとき、音声データは、再生しなくてもよいし、映像データに同期させてゆっくり再生したり、あるいは、音声データのみ通常速度で再生してもかまわない。
【0029】
なお、分離/復号済みの映像データが通常に再生しても前記T以上残っているのであれば、速度調節を行う必要はない。また、再生速度は一定である必要はなく、例えば、徐々に遅くしていくなど、非線形な態様にしても構わない。
【0030】
一方、残存している未再生の映像データが所定量以下で、減速再生が難しい場合は(ステップS2のNo)、復号処理部40が、フロントエンド部30からCH1のTSを、所定量(例えば1GOP分)、さらに取得して映像データ等の分離/復号を行い、CH1の映像データ等をフレームバッファ領域に十分に確保する(ステップS3)。
そして、再生処理部50が、前記同様、フレームバッファ領域に残存している未再生の映像データを再生処理する(ステップS4)。
【0031】
この再生処理部50での再生処理中に、これと並行して、フロントエンド部30はCH1からCH2への切換処理を行い、TSを出力する(ステップS5)。
【0032】
このCH2のTSを、復号処理部40がフロントエンド部30から取得し、映像データ等の分離/復号を行い、再生処理部50に渡す(ステップS6)。しかして、このときのCH2のフレームバッファ領域は、前記CH1のフレームバッファ領域と重ならないように設定してある。
再生処理部50は、この時点でCH1の再生処理を、その映像データが残存していたとしても、即座に中止するとともに、再生速度を通常速度に戻し、CH2の映像データの再生を始める。
【0033】
かかる構成による動作のタイミングチャートを示したのが図4である。この図4からも明らかなように、1チューナー構成のデジタル放送受信装置100であっても、確実に選局処理の合間に生じるブランク(表示不能期間)を生じさせることなく、スムーズな選局を実現することが可能となる。
【0034】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、前記実施形態によれば、ユーザが選局操作をしても、画面には前番組(CH1の番組)がそのまま継続表示されるため、例えばユーザが操作を受け付けられていないと勘違いして、何度も操作ボタンを押す可能性がある。これを回避するには、ユーザーによる選局操作処理が実行されていることをユーザーに示す旨の何らかの表示や音声を出力することが望ましい。例えば、CH1の映像データを減速再生処理を実行中に「CH2へ選局中」などの表示をあわせて表示するといった態様が考えられる。
【0035】
また、前記実施形態では、日本でのデジタル放送規格での処理を例としたが、ヨーロッパや北米など、国や地域に応じてデジタル放送規格が異なれば、これに応じて選局管理部の具体的な動作が異なるのは言うまでもない。
【0036】
さらに言えば、前記実施形態では、選局完了予定時間Tを複数とおり算出したが、最も長い時間の1とおりとしても構わない。
その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲に於いて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0037】
100・・・放送受信装置
10・・・予測手段(選局管理部)
10・・・表示制御手段(選局管理部)
図1
図2
図3
図4