(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
塗料が流通する塗料流通空間を介して塗布部材に接続する緩衝空間を備え、前記塗料流通空間と前記緩衝空間との間における塗料及びエアの流通によって前記塗料流通空間の圧力変動を緩衝する圧力変動緩衝機構であって、
前記緩衝空間を形成する緩衝空間形成部材を備え、
前記塗料流通空間は、
前記塗料を収容する塗料収容空間と、
前記塗料収容空間から前記塗布部材へ前記塗料の供給を行う塗料供給空間と、を有し、
前記緩衝空間形成部材は、
前記緩衝空間のうち前記塗布部材側の壁を形成する塗布部材側壁部材と、
前記緩衝空間のうち前記塗料収容空間側の壁を形成する塗料収容空間側壁部材と、
前記塗布部材側壁部材及び塗料収容空間側壁部材の間に配され、前記緩衝空間に塗料流通路を形成するための塗料流通路形成部材と、
前記塗布部材側壁部材及び塗料収容空間側壁部材の間に配され、前記緩衝空間にエア流通路を形成するためのエア流通路形成部材と、を有し、
前記塗料収容空間側壁部材及び前記塗料流通路形成部材の間には、前記エア流通路と連通するバッファ空間が形成されたことを特徴とする圧力変動緩衝機構。
塗料が流通する塗料流通空間を介して塗布部材に接続する緩衝空間を備え、前記塗料流通空間と前記緩衝空間との間における塗料及びエアの流通によって前記塗料流通空間の圧力変動を緩衝する圧力変動緩衝機構であって、
前記圧力変動緩衝機構を筒へ挿入した際、自身の変形によって前記筒からの抜け止めを防止する抜け止め防止機構と、
前記緩衝空間に気密性を与えるエアタイト機構と、を備え、
前記抜け止め防止機構と前記エアタイト機構との間には逃げ空間が形成され、
前記エアタイト機構と変形状態の前記抜け止め防止機構とは、前記逃げ空間によって離れていることを特徴とする圧力変動緩衝機構。
塗料が流通する塗料流通空間を介して塗布部材に接続する緩衝空間を備え、前記塗料流通空間と前記緩衝空間との間における塗料及びエアの流通によって前記塗料流通空間の圧力変動を緩衝する圧力変動緩衝機構であって、
前記緩衝空間における前記塗布部材側端部には、前記塗料を溜める塗料溜まり空間が形成され、
前記塗料溜まり空間における前記塗布部材側の内壁面には、後方に向かって突出する内突部が形成され、
前記内突部には、前後方向に延びるようにして、前記緩衝空間を外部に開放する通気孔を有し、
前記通気孔は、前記塗料を溜める塗料溜まり空間と正対していることを特徴とする圧力変動緩衝機構。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述の筆記具に設けられた圧力変動緩衝機構に対しては、インクタンクからペン先までインクの供給を行うインク誘導芯が挿嵌される(例えば、特許文献1)。しかしながら、このインク誘導芯の挿嵌構造によって、インク誘導芯の流通性能が阻害される。そして、インク誘導芯の流通性能が阻害されると、圧力変動緩衝機構は所期の性能を奏することができない。
【0006】
本発明者の鋭意検討の結果、インク誘導芯の流通性能を確保するためには、少なくとも以下の(i)〜(ii)のいずれかが必要である、という知見を得た。
(i)インクタンクからペン先へインクを供給するインク誘導芯を保持する誘導芯保持構造と、圧力変動緩衝機構とを分離すること。
(ii)インク及びエアが、インクタンクとインク誘導芯との間において流通しやすくなること。
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、インク誘導芯の流通性能を確保することができる圧力変動緩衝機構を提供しようとするものである。さらに、本発明は、この圧力変動緩衝機構を備えた塗布具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の圧力変動緩衝機構は、塗料収容空間から塗布部材までの塗料の供給を行う塗料供給芯のうち第1の芯部分を支持する供給芯支持構造と、前記塗料供給芯の第2の芯部分を係止する供給芯係止構造と、前記塗料収容空間に接続する緩衝空間を有し、前記塗料収容空間と前記緩衝空間との間における前記塗料及びエアの流通によって前記塗料収容空間の圧力変動を緩衝する圧力変動緩衝構造と、を備え、前記圧力変動緩衝構造は、前記供給芯支持構造に形成されたことを特徴とする。
【0009】
前記塗料供給芯のうち前記第2の芯部分よりも前記塗布部材側の部分と、前記塗料収容空間とをつなぐ連通路を有することが好ましい。
【0010】
本発明の圧力変動緩衝機構は、塗料収容空間から塗布部材までの塗料の供給を行う塗料供給芯のうち第1の芯部分を支持する供給芯支持構造と、前記塗料供給芯の第2の芯部分を係止する供給芯係止構造と、前記塗料収容空間に接続する緩衝空間を有し、前記塗料収容空間と前記緩衝空間との間における前記塗料及びエアの流通によって前記塗料収容空間の圧力変動を緩衝する圧力変動緩衝構造と、を備え、前記塗料供給芯のうち前記第2の芯部分よりも前記塗布部材側の部分と、前記塗料収容空間とをつなぐ連通路を有することを特徴とする。
【0011】
前記供給芯支持構造と前記供給芯係止構造との間に配され、前記供給芯支持構造と前記供給芯係止構造とをつなぐ連結構造を備えることが好ましい。また、前記供給芯支持構造は、前記第1の芯部分を収容する筒状体であって、前記連結構造は、前記筒状体の前記塗料収容空間側の端面から、前記塗料収容空間に向かって延び、前記供給芯係止構造は、前記連結構造の前記塗料収容空間側に設けられたことが好ましい。
【0012】
前記供給芯係止構造は前記塗料収容空間に位置することが好ましい。また、前記供給芯支持構造と前記供給芯係止構造とが一体形成されたことが好ましい。さらに、前記供給芯係止構造は、前記第2の芯部分と嵌合する嵌合部を有することが好ましい。加えて、前記供給芯係止構造は、前記第2の芯部分が圧入される圧入部を有することが好ましい。そして、前記供給芯係止構造は、前記第2の芯部分と溶着される溶着部を有することが好ましい。
【0013】
前記第2の芯部分が、前記塗料収容空間に位置することが好ましい。また、前記第2の芯部分よりも前記塗料収容空間側の部分が前記塗料収容空間に位置することが好ましい。
【0014】
前記緩衝空間には塗料流通路とエア流通路とが形成され、前記圧力変動緩衝構造は、塗料用切欠き及びエア用切欠きが形成されるとともに前記緩衝空間にて所定の間隔で並ぶ複数の板を有し、前記塗料流通路は、前記塗料用切欠きによって形成され、前記エア流通路は、前記エア用切欠きによって形成されたことが好ましい。
【0015】
本発明は、塗料が流通する塗料流通空間を介して塗布部材に接続する緩衝空間を備え、前記塗料流通空間と前記緩衝空間との間における塗料及びエアの流通によって前記塗料流通空間の圧力変動を緩衝する圧力変動緩衝機構であって、前記緩衝空間を形成する緩衝空間形成部材を備え、前記塗料流通空間は、前記塗料を収容する塗料収容空間と、前記塗料収容空間から前記塗布部材へ前記塗料の供給を行う塗料供給空間と、を有し、前記緩衝空間形成部材は、前記緩衝空間のうち前記塗布部材側の壁を形成する塗布部材側壁部材と、前記緩衝空間のうち前記塗料収容空間側の壁を形成する塗料収容空間側壁部材と、前記塗布部材側壁部材及び塗料収容空間側壁部材の間に配され、前記緩衝空間に塗料流通路を形成するための塗料流通路形成部材と、前記塗布部材側壁部材及び塗料収容空間側壁部材の間に配され、前記緩衝空間にエア流通路を形成するためのエア流通路形成部材と、を有し、前記塗料収容空間側壁部材及び前記塗料流通路形成部材の間には、前記エア流通路と連通するバッファ空間が形成されたことを特徴とする。
【0016】
本発明は、塗料が流通する塗料流通空間を介して塗布部材に接続する緩衝空間を備え、前記塗料流通空間と前記緩衝空間との間における塗料及びエアの流通によって前記塗料流通空間の圧力変動を緩衝する圧力変動緩衝機構であって、前記圧力変動緩衝機構を筒へ挿入した際、自身の変形によって前記筒からの抜け止めを防止する抜け止め防止機構と、前記緩衝空間に気密性を与えるエアタイト機構と、を備え、前記抜け止め防止機構と前記エアタイト機構との間には逃げ空間が形成され、前記エアタイト機構と変形状態の前記抜け止め防止機構とは、前記逃げ空間によって離れていることを特徴とする。
【0017】
塗料が流通する塗料流通空間を介して塗布部材に接続する緩衝空間を備え、前記塗料流通空間と前記緩衝空間との間における塗料及びエアの流通によって前記塗料流通空間の圧力変動を緩衝する圧力変動緩衝機構であって、前記緩衝空間を外部に開放する通気孔を有し、前記通気孔は、前記塗料を溜める塗料溜まり空間と正対していることを特徴とする。
【0018】
本発明の塗布具は、上記の圧力変動緩衝機構を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、インク誘導芯の流通性能を確保することができる圧力変動緩衝機構、及び、これを備えた塗布具を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
(塗布具)
図1に示すように、塗布具2は、前後方向に長く延びた棒状の塗布具本体100と、塗布具本体100の前端部にて着脱自在に設けられるキャップ200と、を備える。
【0023】
(キャップ)
キャップ200は、アウターキャップ210と、アウターキャップ210の内側に配されたインナーキャップ220と、アウターキャップ210の内側において、インナーキャップ220を付勢するインナーキャップ用バネ230と、を有する。アウターキャップ210やインナーキャップ220は、合成樹脂、例えば、PP(ポリプロピレン)から形成される。
【0024】
アウターキャップ210の内周面には係合突起211が設けられる。係合突起211は、インナーキャップ220の先端部221と係合する。インナーキャップ220は、アウターキャップ210の内部空間において、先端部211と係合突起211とが係合する係合位置と、先端部211と係合突起211とが離れた係合解除位置と、の間で移動自在となっている。インナーキャップ用バネ230は、アウターキャップ210の内部空間において、アウターキャップ210の内周面とインナーキャップ220の外周面との間に配される。インナーキャップ用バネ230は、係合位置に向けてインナーキャップ220を付勢する。
【0025】
(塗布具本体)
図1〜2に示すように、塗布具本体100は、円筒状の中軸110と、中軸110の前端側に配されたブラシ120と、中軸110の前端側の開口に装着されブラシ120を保持するブラシ保持部材130と、中軸110の後端側の開口に装着された塗料タンク140と、塗料と共に塗料タンク140内に収容された撹拌部材150と、塗料タンク140に収容された塗料をブラシ120へ供給する塗料フィーダ160(塗料供給芯)と、中軸110の内部空間に配され塗料フィーダ160を保持する塗料フィーダ保持筒170と、塗料タンク140内の圧力変動を緩衝する圧力変動緩衝機構180と、塗料タンク140を覆うようにして、中軸110に装着される外軸190と、を備える。
【0026】
(中軸)
中軸110は、円筒状に形成される。中軸110において軸方向Aの中途部分110Cの外周面には係合突起111が形成される。係合突起111は、キャップ200の開口端や、外軸190の開口端と係合する。中軸110の前方筒部110Fは、前方に向かうにしたがって外径が小さくなっており、指で握りやすい形状となっている。一方、中軸110の後方筒部110Bは、前方から後方までその径はほぼ一定となっている。
【0027】
(塗料タンク)
塗料タンク140には、塗料が収容される。塗料としては、筆記具用途のインクや液状アイライナー等がある。筆記具用途のインクとしては、例えば、生インク(粘度が、例えば10poise以下のもの)、ゲルインク(粘度が、例えば100poise〜3000poiseのもの)、高粘度インク(粘度が、例えば10000poise〜100000poiseのもの)などがあり、液状アイライナーとしては、油性タイプ、水性皮膜タイプ、水性非皮膜タイプなどがある。
【0028】
塗料タンク140は、両側に開口を有する尾筒141と、尾筒141の後端側開口を塞ぐ尾栓142とを有する。尾筒141の前端側開口は、中軸110の後端側の開口に装着される。尾栓142は、尾筒141に対して着脱自在に装着されているため、尾栓142の着脱操作を介して、塗料タンク140への塗料の補充を行うことができる。
【0029】
(撹拌部材)
撹拌部材150は、塗料と共に塗料タンク140内に収容されるため、塗布具2を軸方向Aに揺らすことにより、塗料タンク140内の塗料を撹拌することができる。なお、撹拌部材150の形状としては、球体、多面体(立方体、直方体等)などいずれでもよい。また、塗料の種類によっては、撹拌部材150を省略してもよい。
【0030】
(ブラシ)
図2〜3に示すように、ブラシ120は、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の合成樹脂からなる繊維状の集合体である。なお、図示する塗布部材としてブラシ120を用いたが、本発明の塗布部材としては、ブラシ120以外のもの(例えば、ボールペンタイプ、繊維の収束体を用いたサインペンタイプ、内部に塗料の誘導孔を有するプラスチックペンタイプ、焼結ペンタイプの他、多孔質のウレタンから形成されたもの)でもよい。
【0031】
(ブラシ保持部材)
ブラシ保持部材130は、円筒状に形成される。ブラシ保持部材130は、ブラシ120の基部側と係合するブラシ係合部131を内周面に有し、中軸110と係合する中軸係合部132を外周面に有する。このため、ブラシ保持部材130は、中軸110の前端側においてブラシ120を保持することができる。
【0032】
(塗料フィーダ)
塗料フィーダ160は、棒状に形成されるものであり、塗料タンク140の内部空間からブラシ120まで延びる。塗料フィーダ160は、中間棒部160Cと、中間棒部160Cのブラシ120側の端から延びる前棒部160Fと、中間棒部160Cの塗料タンク140側の端から延びる後棒部160Bと、を有する。前棒部160Fや後棒部160Bの先端は尖っていることが好ましい。前棒部160Fの先端はブラシ120に突きささり、後棒部160Bの先端は塗料タンク140の内部空間に露出する。これにより、塗料フィーダ160は、塗料タンク140に収容された塗料をブラシ120へ供給することができる。塗料フィーダ160としては、スポンジ、ウレタン製の多孔質、または、繊維を束ねた中綿等といった部材にインクを保持させたインク吸蔵体タイプや、インクタンクにインクを直接収容させた生インキタイプ等いずれでもよい。
【0033】
(塗料フィーダ保持筒)
図3、4A〜4Dに示すように、塗料フィーダ保持筒170は、中軸110の軸方向Aに延びるものであり、塗料フィーダ160
を収容可能な本体筒部170Tと、本体筒部170Tに設けられた延出部170Sと、延出部170Sに設けられた係止部170Bと、を有する。延出部170Sは、本体筒部170Tの後方端面から塗料タンク140に向かって延びる。係止部170Bは、延出部170Sの後方部にて、本体筒部170Tの軸線AX170Tに向かって突出するように設けられる。延出部170Sや係止部170Bは、塗料タンク140に位置することが好ましい。係止部170Bには、塗料フィーダ160が圧入される圧入孔170BXが形成される。圧入孔170BXが後棒部160Bに圧入されることによって、塗料フィーダ保持筒170は、塗料フィーダ160の後棒部160Bを保持する。塗料フィーダ保持筒170によって保持された後棒部160Bのうち、一部分は塗料タンク140に位置することが好ましい。さらに、当該一部分は塗料タンク140において露出していることが好ましい。塗料タンク140において露出した当該一部分は、塗料タンク140との間において、塗料やエアの流通が行われる。塗料フィーダ保持筒170は、例えば、ポリエステル等から形成される。
【0034】
このように、本体筒部170Tは、塗料フィーダ160を収容するため、塗料フィーダ160の支持機構(供給芯支持構造)として機能する。また、係止部170Bは、塗料フィーダ160の後端部を係止するため、塗料フィーダ160の係止機構(供給芯係止構造)として機能する。そして、延出部170Sは、塗料フィーダ160の支持機構と塗料フィーダ160の係止機構とをつなぐ連結構造として機能する。
【0035】
中軸110、ブラシ保持部材130、塗料タンク140や外軸190は、合成樹脂、例えば、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ナイロン、ポリエステルやアクリル等から形成される。
【0036】
(圧力変動緩衝機構)
図3に示すように、圧力変動緩衝機構180は、塗料タンク140に対して直接的にまたは間接的に連通する緩衝空間Kを形成するためのものである。また、塗料フィーダ保持筒170と、圧力変動緩衝機構180とは一体形成されている。
図4A、4B、5に示すように、圧力変動緩衝機構180は、緩衝空間Kを形成するための緩衝空間形成部材181と、緩衝空間Kを第1緩衝空間K1及び第2緩衝空間K2を仕切る仕切部材182と、
所定の流路を有する第1緩衝空間K1を形成するための第1緩衝空間形成部材183と、所定の流路を有する第2緩衝空間K2を形成するための第2緩衝空間形成部材184と、
第1緩衝空間K1と塗料フィーダ保持筒170の内部空間とを連通させる第1つなぎ流路185と、第2緩衝空間K2と塗料フィーダ保持筒170の内部空間とを連通させる第2つなぎ流路186と、を有する。そして、第1緩衝空間形成部材183と、第2緩衝空間形成部材184とは、圧力変動緩衝構造として個別に機能する。
【0037】
(緩衝空間形成部材)
緩衝空間形成部材181は、塗料フィーダ保持筒170において、軸方向Aに所定の間隔を空けて並ぶように設けられる。例えば、一方の緩衝空間形成部材181は、塗料フィーダ保持筒170の前端部170F(本体筒部170Tの前端部)に設けられ、他方の緩衝空間形成部材181は、塗料フィーダ保持筒170の中途部170C(本体筒部170Tの後端部)に設けられる。それぞれの緩衝空間形成部材181は、塗料フィーダ保持筒170の外周面から起立し中軸110の内周面に向かって延びる。こうして、少なくとも2つの緩衝空間形成部材181の間には、塗料フィーダ保持筒170の外周面から中軸110の内周面にかけて緩衝空間Kが形成される。
【0038】
(仕切部材)
仕切部材182は、前方の緩衝空間形成部材181と後方の緩衝空間形成部材181との間の塗料フィーダ保持筒170に設けられる。仕切部材182は、塗料フィーダ保持筒170の外周面から起立し中軸110の内周面に向かって延びる。仕切部材182により、緩衝空間Kは、第1緩衝空間K1と第2緩衝空間K2とに仕切られる。
【0039】
(第1緩衝空間形成部材)
図4A、6に示すように、第1緩衝空間形成部材183は、円環状の第1凸板183Tを複数有する。複数の第1凸板183Tは、所定の間隔を空けて軸方向Aにおいて並ぶとともに、それぞれ、塗料フィーダ保持筒170の外周面から起立し中軸110の内周面に向かって延びる。第1緩衝空間K1において、複数の第1凸板183Tの間にはそれぞれ第1周溝183Sが形成される(
図7A参照)。
【0040】
図6に示すように、複数の第1凸板183Tには、それぞれ、エア用切欠き部183TAと塗料用切欠き部183TBとが設けられる。
【0041】
図7Aに示すように、複数の第1凸板183Tに設けられた塗料用切欠き部183TBは軸方向Aに並ぶ。第1周溝183Sの幅W
183Sや、塗料用切欠き部183TBの幅W
183TB(
図6参照)は、毛管力によって塗料が侵入可能なものとなっている。すなわち、塗料用切欠き部183TBと、第1周溝183Sのうち塗料用切欠き部183TBとの間に位置する部分とは、第1緩衝空間K1における第1塗料用連通溝183B(第1の塗料流通路)として機能する。なお、塗料用切欠き部183TB(
図6参照)における塗料は、第1周溝183S(
図7A参照)における塗料よりも、流れやすいことが好ましい。したがって、塗料用切欠き部183TBの幅W
183TB(
図6参照)は、第1周溝183Sの幅W
183S(
図7A参照)よりも、狭いことが好ましい。
【0042】
図8に示すように、複数の第1凸板183Tに設けられたエア用切欠き部183TAは、複数の第1凸板183Tにおいて軸方向Aに並ぶ。エア用切欠き部183TAと、第1周溝183Sのうちエア用切欠き部183TAとの間に位置する部分とは、第1エア用縦溝183A(第1のエア流通路)として、すなわち、第1緩衝空間K1における第1エア用連通溝として機能する。なお、第1エア用縦溝183TAは、第1塗料用連通溝183TBに対して反対側に位置することが好ましい(
図6参照)。
【0043】
(第1つなぎ流路)
図5〜6に示すように、第1つなぎ流路185は、塗料用切欠き部183TBの切欠き面から塗料フィーダ保持筒170の内周面まで貫通するように形成される。第1つなぎ流路185により、第1緩衝空間K1と、塗料フィーダ保持筒170に挿入された塗料フィーダ160との間で塗料の流通が可能になる。第1つなぎ流路185の数は、1つまたは2つ以上のいずれでもよい。
【0044】
図4Bに示すように、塗料フィーダ保持筒170は、さらに、抜け防止部170Rと、エアタイト部170Eと、塗料タンク連通路170TXと、を有する。抜け防止部170Rは、中軸110の内周面に密着する抜け防止面を有するものであり、後方の緩衝空間形成部材181の周面に設けられる。エアタイト部170Eは、後方の緩衝空間形成部材181よりも後ろにおいて、塗料フィーダ保持筒170から突出する。エアタイト部170Eの先端には、中軸110の内周面に密着するエアタイト面が形成される。塗料タンク連通路170TXは、一端側が第1つなぎ流路185に開口し、他端側が塗料タンク140に開口する。したがって、塗料タンク連通路170TXによって、第1つなぎ流路185と塗料タンク140とが連通する。さらに、塗料タンク連通路170TXによって、塗料フィーダ160の中間棒部160Cの周面が塗料タンク140とつながる。したがって、塗料タンク連通路170TXによって、塗料フィーダ160と塗料タンク140との間における塗料及びエアの流通が可能となる。なお、塗料フィーダ保持筒170の内周面に形成された凹み部分を、塗料タンク連通路170TXとしてもよい。
【0045】
ところで、中軸110の内周面との密着によって抜け防止部170Rが変形する。そして、抜け防止部170Rの変形は、中軸110からの抜け防止に寄与する。しかしながら、抜け防止部170Rとエアタイト部170Eとが一体形成されている場合には、抜け防止部170Rの変形が、エアタイト部170Eによる気密性能に悪影響を及ぼす。かかる課題を解決するために、抜け防止部170Rとエアタイト部170Eとの間に逃げ空隙ERを設けてもよい(
図4A、4B、5参照)。逃げ空間ERの大きさは、中軸110の内周面との密着によって変形した抜け防止部170Rが、エアタイト部170Eと接触しない程度であることが好ましい。これにより、抜け防止部170Rが変形した場合であっても、エアタイト部170Eによる気密性能が確保される。すなわち、逃げ空間ERを設けることにより、抜け防止性能と、気密性能との両立を図ることができる。
【0046】
(第2緩衝空間形成部材)
図4、8に示すように、第2緩衝空間形成部材184は、円環状の第2凸板184Tを複数有する。複数の第2凸板184Tは、所定の間隔を空けて軸方向Aにおいて並ぶとともに、それぞれ、塗料フィーダ保持筒170の外周面から起立し中軸110の内周面に向かって延びる。こうして、第2緩衝空間K2において、複数の第2凸板184Tの間にはそれぞれ第2周溝184Sが形成される(
図9A参照)。
【0047】
さらに、複数の第2凸板184Tには塗料用切欠き部184TBが設けられる(
図8参照)。複数の第2凸板184Tに設けられた塗料用切欠き部184TBは、軸方向Aに並ぶ(
図7A参照)。第2周溝184Sの幅W
184S(
図7A参照)や、塗料用切欠き部184TBの幅W
184TB(
図8参照)は、毛管力によって塗料が侵入可能なものとなっている。すなわち、第2周溝184Sと塗料用切欠き部184TBとは、第2緩衝空間K2における第2塗料用連通溝184B(第2の塗料流通路)として機能する。なお、塗料用切欠き部184TB(
図8参照)における塗料は、第2周溝184S(
図7A参照)における塗料よりも、流れやすいことが好ましい。したがって、塗料用切欠き部184TBの幅W
184TB(
図8参照)は、第2周溝184Sの幅W
184S(
図7A参照)よりも、狭いことが好ましい。
【0048】
そして、第2塗料用連通溝184Bは、第1塗料用連通溝183Bから離れている。第2塗料用連通溝184Bと第1塗料用連通溝183Bとの間には、仕切部材182が位置する。言い換えれば、第2塗料用連通溝184Bと第1塗料用連通溝183Bとは、この仕切部材182によって遮られている。
【0049】
図8に示すように、第2凸板184Tの先端面と中軸110の内周面との間には隙間184Aが形成される。この隙間184Aは、第2緩衝空間K2における第2エア流通路として機能する。
【0050】
なお、複数の第2凸板184Tには、塗料用切欠き部184TBとともに、エア用切欠き部184TA(
図9B参照)が設けられていてもよい。
図9Bに示すように、複数の第2凸板184Tに設けられたエア用切欠き部184TAは、複数の第2凸板184Tにおいて軸方向Aに並ぶ。こうして、エア用切欠き部184TAと、第2周溝184Sのうちエア用切欠き部184TAとの間に位置する部分とは、第2緩衝空間K2における第2エア用連通溝として機能する。
【0051】
(第2つなぎ流路)
図5、8に示すように、第2つなぎ流路186は、第2周溝184Sの溝面から塗料フィーダ保持筒170の内周面まで貫通する。第2つなぎ流路186により、第2緩衝空間K2と、塗料フィーダ保持筒170に挿入された塗料フィーダ160との間で塗料の流通が可能になる。第2つなぎ流路186の数は、1つまたは2つ以上のいずれでもよい。
【0052】
図7Aに示すように、第1周溝183Sの幅W
183Sは、後方から前方に向かうにしたがって次第に広くなるため、後方から前方に向かうにしたがって塗料の浸入が起こりやすくなる。同様に、第2周溝184Sの幅W
184Sは、後方から前方に向かうにしたがって次第に広くなるため、後方から前方に向かうにしたがって塗料の浸入が起こりやすくなる。
【0053】
また、第1周溝183Sの幅W
183Sは、第2周溝184Sの幅W
184Sに比べて狭い。このため、毛管力による塗料の浸入は、第2周溝184Sに比べ、第1周溝183Sのほうが起こりやすい。
【0054】
塗料フィーダ保持筒170や圧力変動緩衝機構180は、合成樹脂から形成される。水性の塗料を用いる場合、この合成樹脂としては、ABS樹脂、AS樹脂、PET樹脂、PBT樹脂、スチレン樹脂、POM樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、変性ポリフェニレンエーテル等を用いることが好ましい。また、油性の塗料(中でも、アルコールを主溶剤とする塗料)を用いる場合、この合成樹脂としては、PE樹脂、PP樹脂、POM樹脂、PET樹脂、PBT樹脂、ポリアミド等を用いることが好ましい。
【0055】
次に、本発明の作用について説明する。
【0056】
図5に示すように、塗料フィーダ保持筒170は、前端部170Fと中途部170Cとの間に、第1緩衝空間形成部材183や第2緩衝空間形成部材184を有し、後端部に係止部170Bを有する。ここで、塗料フィーダ160を本体筒部170Tに挿入すると、塗料フィーダ160のうち圧入孔170BXに圧入された部分は、圧縮される結果、他の部分に比べ塗料の流通が阻害される。本発明では、係止部170Bが、本体筒部170Tから離れているため、係止部170Bによる係止を行っても、塗料フィーダ160における塗料の流通は確保される。
【0057】
また、塗料フィーダ保持筒170は、塗料タンク連通路170TXを有する。そして、塗料タンク連通路170TXによって、塗料フィーダ160と塗料タンク140との間における塗料及びエアの流通が可能となる。このため、塗料フィーダ保持筒170によって保持された後棒部160Bのうち、一部分は塗料タンク140に位置することが好ましい。さらに、当該一部分は塗料タンク140において露出していることが好ましい。塗料タンク140において露出した当該一部分は、塗料タンク140との間において、圧力変動緩衝構造を介さずに、塗料及びエアの流通が行われる。このように、本発明によれば、塗料及びエアが、塗料タンク140と塗料フィーダ160との間において、流通しやすくなるため、所期の圧力変動緩衝機能を発揮することができる。
【0058】
上記実施形態では、塗料フィーダ160の係止構造として、圧入孔170BXを有する係止部170B(
図4A〜4D参照)を採用したが、本発明はこれに限られず、
図4Eのような、圧入凹部170BYを有する係止部170Bを採用してもよい。さらに、塗料フィーダ160の係止構造として、塗料フィーダ160の後棒部160Bと溶着された溶着部を有する係止部や、塗料フィーダ160の後棒部160Bと嵌合する嵌合部を有する係止部を、採用してもよい。ここで、塗料フィーダ160の係止構造として、圧入の代わりに溶着・嵌合を採用した場合にも、塗料フィーダ160の溶着部分が溶ける、または、嵌合部分が圧縮することとなり、この結果として、圧入の場合と同様にして塗料の流通が阻害される。しかしながら、本発明によれば、圧入の場合と同様に、塗料フィーダ160における塗料の流通は確保される。
【0059】
また、第1周溝183Sの幅W
183Sは、第2周溝184Sの幅W
184Sに比べて狭いため、塗料の浸入は、第2緩衝空間K2に優先して、第1緩衝空間K1のほうが起こりやすく、塗料の流出は、第1緩衝空間K1に優先して、第2緩衝空間K2のほうが起こりやすい。したがって、塗料タンク140(
図3参照)内の圧力が増大した場合には、第2緩衝空間K2に優先して、第1緩衝空間K1に塗料が侵入する。そして、所定の量の塗料が第1緩衝空間K1に充填された後、第2緩衝空間K2への塗料の侵入が開始する。また、塗料タンク140内の圧力が減少した場合には、第1緩衝空間K1に優先して、第2緩衝空間K2からの塗料が流出する。そして、全ての塗料、または、ほとんどの塗料が第2緩衝空間K2から流出した後、第1緩衝空間K1からの塗料の流出が開始する。この結果、第1緩衝空間K1への塗料の侵入によって、塗料タンク140内の圧力変動を抑えることができる。そして、塗料の溜まりやすさが異なる第1緩衝空間K1と第2緩衝空間K2とを緩衝空間Kに設けることにより、通常の使用条件における塗料タンク140の圧力変動の緩衝機能を第1緩衝空間K1に、通常とは異なる使用条件における塗料タンク140の圧力変動の緩衝機能を第2緩衝空間K2に、それぞれ分担させることができる。
【0060】
上記実施形態では、第1周溝183Sにおける毛管力による塗料の浸入が、第2周溝184Sに優先して起こりやすくするために、第1周溝183Sの幅W
183Sは、第2周溝184Sの幅W
184Sに比べて狭いものとしたが、本発明はこれに限られず、第1緩衝空間K1における塗料が、第2緩衝空間K2における塗料よりも流れやすいものであればよい。具体例としては、塗料用切欠き部183TBの幅W
183TBを塗料用切欠き部184TBの幅W
184TBに比べて狭いものや、塗料の濡れ性が第2緩衝空間K2よりも第1緩衝空間K1のほうが高いもの、あるいは、これらの組み合わせ等がある。
【0061】
また、
図4A、10に示すように、前方の緩衝空間形成部材181には、第2緩衝空間K2とブラシ120とを連通するブラシ連通孔181FXが形成されていることが好ましい。中でも、第2塗料用連通溝184B(特に、塗料用切欠き部184TB)がブラシ120に開口するように、ブラシ連通孔181FXが形成されていることが好ましい(
図7、11参照)。すなわち、第2塗料用連通溝184Bの開口部分は、ブラシ120に正対していることが好ましく、さらに、ブラシ120に近接することがより好ましい。ブラシ連通孔181FXの形成により、ブラシ120に対して第2緩衝空間K2が開口するため、余剰の塗料が塗料フィーダ160にある場合と余剰の塗料がブラシ120にある場合との双方において、余剰の塗料を第2緩衝空間K2に収容する、すなわち、塗料の漏れを防止することができる。なお、ブラシ連通孔181FXの幅は、毛管力によって塗料が侵入可能なものとなっていればよい。
【0062】
上記実施形態では、仕切部材182によって、緩衝空間Kを第1緩衝空間K1及び第2緩衝空間K2を仕切ったが、本発明はこれに限られず、緩衝空間Kを第1緩衝空間K1と第2緩衝空間K2とに仕切ることができる仕切構造であればよい。
【0063】
上記実施形態では、仕切部材182を用いて緩衝空間Kを第1緩衝空間K1及び第2緩衝空間K2を仕切ったが、本発明はこれに限られず、仕切部材182の省略により、1つの緩衝空間Kにおいて、塗料流通路及びエア流通路を設けた場合でもよい。
【0064】
上記実施形態では、
図5に示すように、仕切部材182自体に毛管力による塗料の浸入が可能な塗料流通路を設けていないが、本発明はこれに限られず、
図7Bに示すように、仕切部材182に、毛管力による塗料の浸入が可能なスリット182FXが形成されていてもよい。このスリット182FXによって、第1緩衝空間K1と第2緩衝空間K2とが連通する。また、スリット182FXは、第1塗料用連通溝183B及び第2塗料用連通溝184Bに対して正対する位置に設けられることが好ましい。さらに、図示するように、スリット182FX、第1塗料用連通溝183B及び第2塗料用連通溝184Bは、同一直線上に形成されていることが好ましい。また、塗料用切欠き部183TBの幅W
183TB(
図6参照)は、塗料用切欠き部184TBの幅W
184TB(
図8参照)よりも、狭いことが好ましい。
【0065】
このような仕切構造の例として、第1緩衝空間K1における第1塗料用連通溝183Bの前端側の開口と、第2緩衝空間K2における第2塗料用連通溝184Bの後端側の開口とが離れている構造が挙げられる。そして、これら2つの開口の間隔は、当該2つの開口の間において毛管力が生じない程度であればよい。また、これら2つの開口の位置関係は、軸方向Aにおいて互いに正対する位置関係でもよいし、当該位置関係から外れたものでもよい。さらに、これら2つの開口の間隔が、当該2つの開口の間において毛管力が生じない程度である場合には、仕切部材182を省略してもよい。
【0066】
なお、
図6に示すように、第1凸板183Tの先端面(外周面)と中軸110の内周面との隙間(以下、第1隙間と称する)WX1は、塗料用切欠き部183TBの幅W
183TBよりも広い方が好ましい。同様に、第2凸板183Tの先端面(外周面)と中軸110の内周面との隙間(以下、第2隙間と称する)WX2は、塗料用切欠き部184TBの幅W
184TBよりも広い方が好ましい(
図8参照)。これにより、第1隙間WX1及び第2隙間WX2における塗料の流通が、塗料用切欠き部183TBや塗料用切欠き部184TBに優先して起こりにくくなるため、中軸110の内周面に沿った塗料の流通に起因した「塗料の漏れ」を防ぐことができる。
【0067】
なお、第2隙間WX2は、第1隙間WX1よりも広いことが好ましい。かかる場合には、第2緩衝空間K2における塗料の流通が、第1緩衝空間K1に比べて抑制される。
【0068】
ところで、塗料タンク140内において圧力の増大があった場合、第1つなぎ流路185や第1周溝183Sへの塗料の流入が発生する。しかしながら、この圧力の増大が急激なものである場合には、第1つなぎ流路185や第1周溝183Sを介して、塗料が中軸110の内壁に付着してしまう。中軸110の内壁に付着した塗料は、当該内壁に沿って流通する結果、塗料の漏れの原因となる。かかる塗料の漏れを抑えるためには、
図12(A)に示すように、エア溜まりKA1が第1緩衝空間K1に形成されていることが好ましい。エア溜まりKA1を形成するためには、例えば、第1凸板183Tの高さを低くして、第1隙間WX1を大きくすればよい。そして、エア溜まりKA1は、第1塗料用連通溝183Bを介して、第1つなぎ流路185に対向する位置に設けられることが好ましい。同様にして、第2緩衝空間K2に、エア溜まりKA1と同様のエア溜まりK2を設けてもよい(
図12(B)参照)。第1塗料用連通溝183Bを介してエア溜まりKA1と対向する第1つなぎ流路185は、塗料の流通路であるとともに、エアの流通路であることが好ましい。
【0069】
図10、11に示すように、塗布具本体100は、第2緩衝空間K2を外部空間に接続させる外部接続機構192を備えていてもよい。外部接続機構192は、前方の緩衝空間形成部材181に形成された接続孔192Aと、中軸110及びブラシ保持部材130の前端隙間192Xと、を有する。接続孔192Aは、前端隙間192Xと第2緩衝空間K2とをつなぐ。前端隙間192Xは、外部空間に対して開放されているため、第2緩衝空間K2は、接続孔192A及び前端隙間192Xを介して外部空間に接続する。
【0070】
ここで、前端隙間192Xは、塗料を貯めることができるクランク構造192XCを有することが好ましい。このクランク構造192XCによって、第2緩衝空間K2及び外部空間におけるエアの流通を維持しながら、第2緩衝空間K2から接続孔192Aへ流れた塗料をクランク構造192XCで保持することができる。
【0071】
なお、塗料を貯める塗料溜め部としてクランク構造192XCを用いたが、本発明はこれに限られず、塗料を貯めることができるものであればよい。
【0072】
ところで、
図1に示すように、キャップ200を塗布具本体100に装着する際、塗布具本体100の周辺にあるエアが、前端隙間192Xを通じて、第2緩衝空間K2に押し込まれる場合がある。そして、塗布具本体100の周辺にあるエアが第2緩衝空間K2に押し込まれるため、塗料タンク140内の圧力が増大し、結果として、塗料がブラシ120から漏れ出してしまう。
【0073】
塗布具2のキャップ200は、インナーキャップ220及びインナーキャップ用バネ230を備える。このため、キャップ200を塗布具本体100に装着する際、インナーキャップ220は、インナーキャップ用バネ230の付勢力に抗しながら係合解除状態から係合状態へと遷移する。したがって、キャップ200の装着操作において、塗料タンク140内の圧力の増大を緩やかなものとすることができる。この結果、キャップ200の装着操作に起因する塗料の漏れ出しを抑えることができる。
【0074】
さらに、
図5に示すように、後方の緩衝空間形成部材181と第1凸板183Tとの間には、緩衝溝170Mが形成される。緩衝溝170Mと第1緩衝空間K1とは、第1の塗料流通路を介さずに、第1エア流通路を介して連通している。ここで、緩衝溝170Mは、エア溜まりKA1を介して第2緩衝空間K2と連通していることが好ましい。このような緩衝溝170Mは、キャップ200の装着操作に起因する圧力変動を緩衝するバッファ空間として機能する。
【0075】
本発明の塗布具としては、所定の物に塗料を塗布できるものであれば、筆記具(例えば、インクペン、筆ペン、万年筆等)、化粧具等、いずれでもよい。
【0076】
ところで、万年筆においては、塗料フィーダ160(
図2参照)が存在せずに、第1の塗料流通路や第2の塗料流通路が塗料フィーダを兼ねる。すなわち、万年筆においては、第1の塗料流通路等の第1の緩衝空間や第2の塗料流通路等の第2の緩衝空間が、塗布部材(ペン先)と塗料タンクとをつなぐ。これにより、万年筆においては、塗料タンクの塗料は、第1の塗料流通路と第2の塗料流通路とを順次通過した後に、塗布部材(ペン先)に到達する。
【0077】
図13に示すように、ブラシ保持部材130は通気孔192Hを有することが好ましい。通気孔192Hはブラシ保持部材130を貫通するように設けられるため、第2緩衝空間K2は、接続孔192A及び通気孔192Hを介して外部空間に接続する。ここで、通気孔192Hは、ブラシ保持部材130の前方内壁面192NFから後方に向かって突出する内突部192Tにおいて、前後方向に延びる。そして、内突起192Tの形成によって、内突起192Tと側方内壁面192NSとの間には、通気孔192Hから出た塗料を一時的に溜めることができる塗料溜まり空間KA2が形成される。
通気孔192Hは、塗料溜まり空間KA2と正対することが好ましい。これにより、通気孔192Hからの塗料の漏れを防ぐことができる。
【0078】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。