特許第5849104号(P5849104)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5849104繊維形成のための性能向上添加剤及びポリスルホン繊維
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5849104
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月27日
(54)【発明の名称】繊維形成のための性能向上添加剤及びポリスルホン繊維
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/76 20060101AFI20160107BHJP
【FI】
   D01F6/76 D
【請求項の数】14
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-552667(P2013-552667)
(86)(22)【出願日】2012年2月3日
(65)【公表番号】特表2014-505805(P2014-505805A)
(43)【公表日】2014年3月6日
(86)【国際出願番号】US2012023744
(87)【国際公開番号】WO2012106583
(87)【国際公開日】20120809
【審査請求日】2013年12月26日
(31)【優先権主張番号】61/439,396
(32)【優先日】2011年2月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508180910
【氏名又は名称】フレセニウス メディカル ケア ホールディングス インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100152319
【弁理士】
【氏名又は名称】曽我 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】フォード,シェリル
(72)【発明者】
【氏名】テオ,ジウン
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,レスリー
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/125598(WO,A1)
【文献】 特開平11−253771(JP,A)
【文献】 特開2008−284471(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/035793(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F1/00〜6/96
9/00〜9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアリールエーテルポリマー繊維を紡糸する方法であって、
少なくとも1つのポリアリールエーテルポリマーと少なくとも1つの有機溶剤とを含む紡糸材料を準備する工程と、
少なくとも1つの水性溶剤及び/又は少なくとも1つの有機溶剤を含む孔流体を準備する工程と、
前記紡糸材料と孔流体とを組み合わせる工程であって、前記ポリアリールエーテルポリマー繊維を形成する工程と、
を含み、
前記紡糸材料若しくは前記孔流体又は両方が少なくとも1つの添加剤を含み、
前記紡糸材料が、K値40〜55を持つ少なくとも1つの中分子量(MW)PVPを重量で0.1〜10wt%含み、及び低分子量(MW)PVPの含有量が重量で0〜4wt%であり
前記孔流体が、該孔流体の重量で0〜1wt%の低MW PVPの含有量であり
前記低MW PVPが100kDa未満の重量平均分子量を有する、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの添加剤が、前記紡糸材料中で、少なくとも1つの二価塩、高分子電解質、グリセリン、界面活性剤、ビニルピロリドン/ビニルアセテートコポリマー、ビニルカプロラクタム/ビニルピロリドン/ジメチルアミノ−プロピルメタクリルアミドターポリマー、ポリエチレングリコールポリエステルコポリマー若しくはポリ(エチレンイミン)(PEI)、又はそれらの任意の組合せを含む、又は、前記少なくとも1つの添加剤が、前記孔流体中で、少なくとも1つの二価塩、高分子電解質、グリセリン、界面活性剤、ビニルピロリドン/ビニルアセテートコポリマー、ビニルカプロラクタム/ビニルピロリドン/ジメチルアミノ−プロピルメタクリルアミドターポリマー、ポリエチレングリコールポリエステルコポリマー若しくはポリ(エチレンイミン)(PEI)、又はそれらの任意の組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの添加剤が前記孔流体中で少なくとも1つの高分子電解質を含む、又は、前記少なくとも1つの添加剤が少なくとも1つの二価塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記紡糸材料が低MW PVPを含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記紡糸材料も孔流体も低MW PVPを含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記紡糸材料がPVPの単一の重量平均MW種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの添加剤が少なくとも1つの中MW PVPを含み、該それはK値41〜53である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
高分子繊維がポリアリールエーテルポリマー繊維である、高分子繊維を形成する方法が、孔流体と同時に紡糸材料をスピナレットに供給することと、高分子繊維をキャストすることとを含み、
前記紡糸材料が少なくとも1つのポリマーと少なくとも1つの有機溶剤とを含み、前記孔流体が少なくとも1つの水性溶剤及び/又は少なくとも1つの有機溶剤を含み、同様のプロセスで作られるものの添加剤が存在しない同様の高分子繊維と比較して、前記紡糸材料、孔流体又は両方が、以下の特性:
a)中分子除去を改善させるためにふるい分け曲線をシャープにすること、
b)流体からより大きい尿毒症性溶質を除去すること、
c)アルブミン漏出をあまり増大させることなく中分子除去を改善させること、並びに、
d)紡糸材料中に存在するPVP又はPVPのMWクラス又は類似の少数高分子成分に完全に又は部分的に取って代わること、及び前記製造される繊維にかかる同様又は類似の特性を依然として得ること、
の少なくとも1つを実現するのに十分な量で少なくとも1つの添加剤を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマーがポリスルホンであり、前記紡糸材料中の前記有機溶剤がジメチルアセトアミドである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記紡糸材料が紡糸材料の低分子量PVPが0wt%であり、前記添加剤が、前記紡糸材料中で少なくとも1つの中分子量PVPと前記紡糸材料中で0.1〜4wt%の水とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの添加剤が、前記紡糸材料中に存在する唯一のPVPタイプである少なくとも1つの中分子量PVPと、前記紡糸材料中で0.1〜4wt%の水とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記中分子量PVPが、K45〜K53のK値を有するPVPを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記紡糸材料が、前記低分子量PVPが0wt%であり、0〜10wt%の高分子量PVPとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記紡糸材料が該紡糸材料の重量ベースで0.001wt%〜3wt%の水を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析膜繊維として有用となり得る中空繊維等の繊維、並びに該繊維を製造する方法及び材料に関する。
【0002】
本願は、2011年2月4日に出願された米国仮特許出願第61/439,396号の米国特許法第119条(e)項に基づく利益を主張するものであり、この出願の全体は引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0003】
既存の中空繊維は、中分子除去に関してのふるい分け曲線は満足のいくものではない。透析の際、尿毒症性毒素の分子量は広い範囲にわたって様々な値をとることがある。ほとんどの透析繊維は低レベルの分子量スペクトルの溶質しか除去することができない。これらの既存の透析製品がより大きな尿毒症性溶質を血液から除去することができないことによって透析患者の健康が損なわれるおそれがある。
【0004】
加えて、現行のポリスルホン繊維は数種類のポリビニルピロリドンで作られているため、得られる繊維は数種類のポリビニルピロリドン(PVP)を含有し得る。1又は複数の高分子量PVPを伴う1又は複数の低分子量PVPというように幾つかの分子量タイプが使用されることがある。これは、取り扱うことが複雑な調合物とされ、また製品性能のバラツキを引き起こすおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、中分子量及びより大きい分子量の溶質の除去をより良好にする透析膜に形成することができる繊維の必要性が存在している。さらに繊維調合物中のPVP含有量についての組成を単純化する必要性も存在している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴は、中空繊維を作製するのに使用される1又は複数の従来成分に少なくとも部分的に取って代わることができる1又は複数の添加剤を提供することである。
【0007】
本発明の更なる特徴は、中分子除去を改善させるためにシャープなふるい分け曲線を有するように中空繊維の形成を操作することである。
【0008】
本発明の付加的な特徴は、血液等の患者の体液からより大きい尿毒症性溶質を少なくとも部分的に除去することができる中空繊維を提供することである。
【0009】
本発明の更なる特徴は、紡糸材料(spin mass)中におけるPVP等のポリマーに完全に又は部分的に取って代わり、及び/又は添加剤として働くことができる1又は複数の種々の添加剤を提供することである。
【0010】
本発明の付加的な特徴は、繊維特性を変えるように孔流体(bore fluid)及び/又は紡糸材料中に1又は複数の添加剤を供給することである。
【0011】
本発明の付加的な特徴及び利点は、続く本明細書中に一部説明されて、本明細書から一部明らかになるか、又は本発明の実施によっても分かるであろう。本発明の目的及び他の利点は、本明細書及び添付の特許請求の範囲において特に指摘される要素及び組合せによって認識されるとともに達せられるであろう。
【0012】
これらの及び他の利点を実現するために、また本明細書中に具現化されかつ広く記載される本発明の目的に従って、本発明は、ポリスルホン系繊維等の繊維を紡糸する方法であって、ポリマー(例えばポリスルホン)と少なくとも1つの溶剤とを含有する紡糸材料を準備する工程と、孔流体を準備する工程と、紡糸材料と孔流体とを組み合わせる工程であって、ポリマー繊維(例えばポリスルホン系繊維)を形成する工程とを含み、紡糸材料及び/又は孔流体が少なくとも1つの添加剤を含有する、方法に関する。紡糸材料は、紡糸材料の重量で約10wt%未満の低分子量(MW)PVPを有していてもよい。孔流体は、孔流体の重量で約10wt%未満の低MW PVPを有していてもよい。低MW PVPは100kDa未満の重量平均分子量又はK36以下のK値を有するものとする。添加剤(複数の場合もある)は紡糸材料、孔流体又は両方に含まれていてもよい。
【0013】
本発明は、ポリスルホン系繊維等の繊維を紡糸する方法であって、ポリマー(例えばポリスルホン)と少なくとも1つの溶剤とを含有する紡糸材料を準備する工程と、孔流体を準備する工程と、紡糸材料と孔流体とを組み合わせる工程であって、ポリマー繊維(例えばポリスルホン繊維)を形成する工程とを含み、紡糸材料及び/又は孔流体が少なくとも1つの添加剤を含有する、方法に関する。紡糸材料は、紡糸材料の重量で約10wt%未満の高分子量及び/又は低分子量(MW)PVPを有していてもよい。孔流体は、孔流体の重量で約10wt%未満の高MW及び/又は低MW PVPを有していてもよい。低MW PVPは100kDa未満の重量平均分子量又はK36以下のK値を有するものとする。高MW PVPは900kDaより大きい重量平均分子量又はK80以上のK値を有するものとする。添加剤は紡糸材料、孔流体又は両方に含まれていてもよい。
【0014】
また、本発明は、本発明の方法によって製造することができるポリアリールエーテルポリマー繊維(例えば、ポリスルホン繊維のようなスルホンポリマー繊維)に関する。本発明のポリマー繊維は、約−500mV〜約500mVのゼータ電位(すなわち流動電位)を有していてもよい。本発明のポリマー繊維は、膜1m当たり約1ml/時間・mmHg〜約1000ml/時間・mmHgの限外濾過定数(KUF)を有していてもよい。本発明のポリマー繊維は、20%未満のアルブミンふるい係数、及び/又はビタミンB12約1ml/分〜ビタミンB12約800ml/分のビタミンB12クリアランス率、及び/又はクレアチニン約1ml/分〜クレアチニン約800ml/分のクレアチニンクリアランス率、及び/又はナトリウム約1ml/分〜ナトリウム約800ml/分のナトリウムクリアランス率、及び/又はβ−2−ミクログロブリン約1ml/分〜β−2−ミクログロブリン約800ml/分のβ−2−ミクログロブリンクリアランス率、及び/又はリゾチーム約1ml/分〜リゾチーム約800ml/分の中分子(リゾチーム)クリアランス率を有していてもよい。これらのクリアランスは水溶液中のものである。クリアランスは流入量と同程度の大きさにすることができる。例えば、患者の最大(正常)血流量は、約450(200)ml/分〜約500ml/分とすることができる。例えば、本発明のポリマー繊維は、約20%未満のアルブミンふるい係数、及び側方血流量(blood side flow rate)の100%未満のクリアランス率を有していてもよい。本発明のポリマー繊維は、約100μm〜約0.5mmの外径、約100μm〜0.5mm未満の内径、約0.001μm〜約250μmの壁厚、及び約1cm〜約1mの長さの繊維形状を有していてもよい。例えば、繊維は、420μmの外径及び少なくとも10cmの長さを有していてもよい。本発明のポリマー繊維は、約0.1MPa〜10MPaの引張強度を有していてもよい。繊維はこれらの特性の1又は複数を有していてもよい。
【0015】
さらに、本発明は、少なくとも1つのポリアリールエーテルポリマー(例えば、ポリスルホンのようなスルホンポリマー)と、40〜55又は45〜55のK値、又はより狭い範囲若しくはこの範囲内の単一のK値を有する少なくとも1つの中重量PVPを含む少なくとも1つのポリビニルピロリドン(PVP)とを有するポリアリールエーテルポリマー繊維(例えば、ポリスルホン繊維のようなスルホンポリマー繊維)に関する。ポリアリールエーテルポリマー繊維は、低分子量PVPを少量有するか若しくは全く有していなくてもよく、及び/又は高分子量PVPを少量有するか若しくは全く有していなくてもよい。ポリアリールエーテルポリマー繊維は上記に特定され及び/又は本明細書中に述べた特性の1又は複数を有していてもよい。
【0016】
加えて、本発明は、内部濾過又は血液透析装置内で生じる対流を活用する繊維の作製を提供する。内部濾過により中分子クリアランスを増大させることによって、高流量透析(HFD)処置が血液透析(HDF)に相当するものになり得る。内部濾過を活用するために、シャープなふるい分け曲線、すなわち約65kDa以下の分子量の分子については高いふるい係数を有する一方で、約65kDaより大きい分子量を有するタンパク質、例えば67000Daの分子量を有するアルブミンについては1%以下のふるい係数を維持する繊維を使用する。本発明は、1又は複数の添加剤を紡糸材料、孔流体又は両方に添加することによってこの目的及び他の目的を達成することができる。
【0017】
上記の包括的記載及び下記の詳細な記載はともに例示的なものであり、説明的なものにすぎず、特許請求される本発明の更なる説明を与えることのみを意図するものであることが理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、新規な高分子繊維(例えば、ポリスルホン繊維のようなスルホンポリマー繊維等のポリアリールエーテルポリマー繊維)と、高分子繊維(例えば中空繊維)を形成する方法とに関する。高分子繊維は、繊維を含有する膜のような透析装置に有用となり得る。本発明は、繊維形成プロセス、紡糸材料調合物及び/又は孔流体において典型的には使用されない1又は複数の添加剤を利用することを伴い得る。添加剤は、有効量で存在する場合に、高分子繊維の特徴/特性に影響を及ぼす(又はそれを変える)、例えば、(「添加剤」を用いずに作った同様の高分子繊維と比較して)以下の特性:
a)透析装置内等の中分子除去を改善させるためにふるい分け曲線をシャープにすること、
b)血液等の流体からより大きい尿毒症性溶質を除去すること、
c)アルブミン漏出をあまり増大させることなく中分子除去を改善させること、
d)紡糸材料中に存在するPVP(例えば、1又は複数のPVPのMWクラス若しくはMWタイプ)又は類似の少数高分子成分に完全に又は部分的に取って代わること、及び製造された繊維にかかる同様又は類似の特性を依然として得ること、及び/又は、
e)以下に述べる1又は複数の他の特徴/特性、
の1又は複数を実現させる機能を有していてもよい。
【0019】
本発明の高分子繊維は膜に形成することができる。
【0020】
高分子繊維がポリスルホン繊維のようなスルホンポリマー繊維等のポリアリールエーテルポリマー(複数の場合もある)繊維である場合に、本発明は特に有用である。本発明の目的で、「ポリスルホン系繊維」は、ポリスルホン繊維とみなすことができる。紡糸材料中に使用される溶剤がDMACであるか又はこれを含有する場合に、本発明は特に有用となり得る。唯一のPVP(例えば、或る重量平均MWを有する1つの均質なPVP、例えば中MW PVP)が紡糸材料中に存在する場合に、本発明は特に有用であるが、選択肢として2タイプ以上のPVPを使用してもよいことを理解されたい。繊維についてスポンジ構造を形成する場合に本発明は有用となり得る。
【0021】
紡糸材料及び/又は孔流体中に使用される1又は複数の添加剤は、上述の条件a)〜条件e)(条件の1又は複数)を満たすいずれの添加剤であってもよく、及び/又は添加剤は、紡糸材料及び/又は孔流体について以下の1又は複数であってもよい:
紡糸材料添加剤
二価塩(複数の場合もある)
窒素含有ポリマー(複数の場合もある)
低MW化合物(複数の場合もある)(例えば、約100kDa、10kDa、1kDa又は100Da未満の重量平均MW)
親水性窒素含有ポリマー(複数の場合もある)
グリセリン(複数の場合もある)
界面活性剤(複数の場合もある)(例えば、Pluronic界面活性剤、PLURONIC 108)
ポリエチレングリコール
エチレンオキシド/プロピレンブロックコポリマー(複数の場合もある)
孔流体添加剤
二価塩(複数の場合もある)
界面活性剤(複数の場合もある)(例えば、Pluronic界面活性剤、PLURONIC 108、Aerosol OT)
高分子電解質(複数の場合もある)又は電解質(例えばGAFQUAT440)
親水性ポリマー(複数の場合もある)
PVP(複数の場合もある)(例えば、低MW、中MW及び/又は高MW)
PEI。
【0022】
より具体的な例としては、ビニルピロリドン/ビニルアセテートコポリマー(複数の場合もある)、ビニルカプロラクタム/ビニルピロリドン(正:vinylpyrrolidone)−ジメチルアミノ−プロピルメチルアクリルアミドターポリマー(複数の場合もある)、ポリエチレングリコールポリエステルコポリマー(複数の場合もある)、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム若しくはポリ(エチレンイミン)(PEI)、又は任意の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。紡糸材料添加剤について一覧に上述した低MW化合物は非PVP化合物である。
【0023】
添加剤の任意の組合せ又は混合物を使用してもよい。異なる添加剤(複数の場合もある)又は同じ添加剤(複数の場合もある)が紡糸材料及び孔流体中に存在していてもよい。
【0024】
本発明で使用される添加剤は、従来のプロセスにおけるPVP成分の部分的又は完全な代替物として働くことができる。よって、本発明の添加剤は任意にPVP代替成分とみなすことができる。PVP代替成分は、低MW PVP代替成分、中MW PVP代替成分及び/又は高MW PVP代替成分、又はそれらの任意の組合せであってもよい。したがって、一例として、本発明はかかるプロセスにおいて低MW PVP、中MW PVP及び/又は高MW PVP、又はそれらの任意の組合せを低減又は排除する機能を有する。
【0025】
本明細書中で更に詳細に示す場合、本発明の添加剤(複数の場合もある)は、1又は複数のPVPであってもよい。本発明では、主なPVP成分又は単独のPVP成分として中MW PVPで高分子繊維を作ることができることが見出された。言い換えれば、方法及び得られる繊維において、或る特定量のPVPが使用されるか又は存在し、本発明における1つの選択肢として、主なPVP成分(例えば総PVP含有量の50wt%以上)が、K37〜K79又はK40〜K70又はK45〜K65又はK45〜K55のK値を有する1又は複数のPVP等の1又は複数の中MW PVPである。このPVP添加剤が他のPVP成分(低MW及び/又は高MW PVP等)に部分的又は完全に取って代わることができ、かつ改善とは言わないまでも同程度の本明細書中に述べられるような1又は複数の特性を達成することができることが見出された。極めて少量、例えば、紡糸材料の重量ベースで4wt%以下、3.5wt%以下、3wt%以下、2.5wt%以下、2.0wt%以下、1.5wt%以下、例えば0.1wt%〜4wt%の水が紡糸材料中に存在する場合に、特にこれを実現することができる。本発明の目的では、K値はダルトンの代わりにPVPをより良好に特性決定するものであると考えられることに留意されたい。
【0026】
各成分の様々な量の例を以下に記載する。
【0027】
紡糸材料に関して、本発明のための組成は、以下のようにすることができる:
ポリマー(例えば、ポリアリールエーテルポリマー、ポリスルホンのようなスルホンポリマー繊維) 約10wt%〜約30wt%又は他の量、
溶剤(例えば、DMAC等の有機溶剤) 約70wt%〜約90wt%又は他の量、
本発明の添加剤(複数の場合もある)(PVP以外) 0wt%〜約10wt%又は他の量、
水 0wt%〜4wt%(例えば、0.01wt%〜4wt%、0.1wt%〜3wt%、0.5wt%〜2.5wt%、又は他の量)、
PVP(低MW) 0wt%〜約10wt%又は他の量、
PVP(中MW) 0wt%〜約10wt%又は他の量、
PVP(高MW) 0wt%〜約10wt%又は他の量、
[存在する総PVPは、約0wt%〜約25wt%、例えば8wt%以上、又は1wt%〜8wt%、又は約4wt%〜約6wt%とすることができる]。重量パーセントは紡糸材料の重量ベースである。
【0028】
ポリスルホン等のポリマーは、DMAC又は他の有機溶剤中に溶解させることができる。
【0029】
孔流体について、本発明の孔流体は、水性溶剤若しくは有機溶剤、又はそれらの混合物とすることができる。例えば、孔流体は以下の成分であってもよく又はそれらを含有していてもよい:
水性溶剤(例えば水) 0wt%〜100wt%又は約10wt%〜約100wt%、
有機溶剤(例えば、DMAC、NMP、アルコール、非極性有機物) 0wt%〜100wt%又は約10wt%〜約90wt%、及び、
本発明の添加剤(複数の場合もある)(1又は複数のタイプのPVPであってもよく又はそれらを含んでいてもよい) 0wt%〜約10wt%又は他の量。
【0030】
例えば、孔流体は以下の成分を含有していてもよい:
水性溶剤(例えば水) 約38wt%〜約55wt%、
有機溶剤 約36wt%〜約62wt%、及び、
本発明の添加剤(複数の場合もある) 0wt%〜約10wt%。
【0031】
紡糸材料に関する(特に指定のない限り)重量パーセントは紡糸材料の総重量パーセントベースであり、孔流体に関する重量パーセントは孔流体の総重量パーセントベースである。
【0032】
紡糸材料及び/又は孔流体中に使用される添加剤(複数の場合もある)は、添加剤(複数の場合もある)を含有する紡糸材料の総重量又は孔流体の総重量ベースで、約0wt%〜10wt%以上、例えば、0.001wt%〜10wt%、0.01wt%〜10wt%、0.1wt%〜10wt%、1wt%〜10wt%、2wt%〜10wt%、0.001wt%〜0.25wt%、0.1wt%〜1wt%の量で存在し得る。
【0033】
紡糸材料及び最終的には高分子繊維中に存在するポリマーは、1又は複数のポリアリールエーテルポリマー、例えばスルホンポリマーとすることができる。スルホンポリマーとしては、下記式Iのジフェニルスルホン基が挙げられる。
【化1】
【0034】
本発明のプロセスによって生成されるスルホンポリマーは、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、又はそれらの任意の組合せであってもよい。
【0035】
ポリビスフェノールスルホンとも称されるポリスルホンは、下記式IIの繰返し単位を有していてもよい。
【化2】
【0036】
ポリエーテルスルホンは、下記式IIIの下記繰返し単位を有していてもよい。
【化3】
【0037】
ポリスルホンは、例えば、式II単独、式III単独又は両方(すなわちそれらのコポリマー)の単位で構成されていてもよい。これらの式II及び式III中のフェニル基は独立して置換されていなくてもよく又は置換されていてもよい。置換されている場合、フェニル基は例えば、水素、C〜Cアルキル又はC〜Cシクロアルキルから独立して選択される1−4置換基を有していてもよい。本発明の1つの特定の実施形態の化合物において、ポリスルホンはフェニル基上に置換基を有しない。式II若しくは式IIIの単位を含むホモポリマー又は両方の繰返し単位を含むコポリマーについて、n、m又は両方は、ポリアリールエーテル産物に関する上記の重量平均分子量のいずれかを有するポリマーをもたらすように選択され得る。これらのポリスルホンは別々に又は配合物として使用してもよい。
【0038】
本発明によって提供することができる他のポリアリールスルホンポリマーは例えば、式I並びに下記式IV及び式Vの少なくとも1つの単位を含む:
【化4】
【化5】
(ここで、単位I、単位IV及び/又は単位Vは、エーテルによる連結(−O−結合)によって互いに接続していてもよく、これらの式中のフェニル基は独立して置換されていなくてもよく又は既述の置換基で置換されていてもよい)。選択肢として、ポリアリールスルホンはフェニル基上に置換基を有しない。式I並びに式IV及び式Vの少なくとも1つの単位を含むポリマーはランダムに又は規則的に並べられていてもよい。
【0039】
繊維形成における性能向上添加剤となり得る添加剤の存在を伴って高分子繊維を形成する方法の特定の例を以下に説明する。
【0040】
ポリアリールエーテルポリマー繊維(例えば、ポリスルホン繊維のようなスルホンポリマー繊維)等の高分子繊維を紡糸する方法は、少なくとも1つのポリアリールエーテルポリマー(例えば、ポリスルホンのようなスルホンポリマー(複数の場合もある))と、少なくとも1つの溶剤(例えば有機溶剤)とを含む紡糸材料を準備することと、少なくとも1つの溶剤(例えば、少なくとも1つの水性溶剤及び/又は少なくとも1つの有機溶剤)を含有する孔流体を準備することとを含み得る。本方法は、紡糸材料と孔流体とを組み合わせることであって、ポリアリールエーテルポリマー繊維(例えば、ポリスルホン繊維のようなスルホンポリマー繊維)等の高分子繊維を形成することを更に含む。
【0041】
紡糸材料及び孔流体から中空繊維を直接作る方法は紡糸法を含む。紡糸法は例えば湿式紡糸法又は乾式紡糸法であってもよい。
【0042】
中空繊維を湿式紡糸するには、例えば、ポリマー繊維形成物質を溶剤に事前溶解又は溶解させて、紡糸材料を含有し得る外側環状ダクトと、凝結溶液(孔流体)を同時に供給する中空コアとを備えるスピナレットの環状ダクトを通じて紡糸することができるキャスト溶液を準備し、該溶液を、繊維成分の凝結が起こる空隙分だけスピナレットから離した水性浴内にキャストする。溶剤の大部分は、溶解して、形成される繊維から洗い出すことができ、繊維は回収し、乾燥させ、所望の長さに切断することができる。湿式紡糸では、相反転によるポリマーの凝結の代わりに、空気又は不活性ガスの流れの中で溶剤を気化させることによって固化が達成される。
【0043】
紡糸材料は、例えば、約25℃又はおよそ室温で約500cps〜10000cps以上、より詳細には1000cps〜2500cps(センチポアズ)の粘度を有していてもよい。これらの粘度値は、Haake測定器等の標準的な回転式粘度測定装置を用いて測定することができる。キャスト溶液は、存在する場合にはそれを濾過することによって未溶解粒子を含まずに、その後、押出スピナレット又は湿式紡糸用スピナレットに供給することができる。
【0044】
本発明の中空繊維を紡糸するのに使用され得る湿式紡糸用スピナレットは、例えば米国特許第3,691,068号、同第4,906,375号及び同第4,051,300号(それらは全て引用することにより本明細書の一部をなすものとする)に示される任意の適切なタイプのものとすることができる。上記のキャスト溶液は、同心管を備える環状押出スピナレットにポンプ輸送することができる。例えば、オリフィス外径は約0.3mm〜0.5mmをとることができ、内径は約0.2mm〜約0.4mm又は他の好適なサイズをとることができる。キャスト溶液を凝結溶液(孔流体)と同時にスピナレットに供給して、紡糸組成物を形成することができる。
【0045】
スピナレット又はノズルは例えば、中空繊維の所望の外径に等しいか又はそれに近い直径を有する環状ダクトを備えていてもよい。スピナレット中空コアは典型的に、中空コアの外面と環状ダクトの内口径との間に供給されるキャスト溶液と同時に凝結溶液を供給するこのダクト内に貫通するように同軸で突出していてもよい。この点で、中空コアの外径は概して中空繊維の所望の内径、つまりその内腔径に等しいか又はこれに近いということができる。凝結溶液(孔流体)はこの中空コアを通じてポンプ輸送され得るため、凝結溶液はコアの先端から出て、押し出されたキャスト溶液(紡糸材料)からなる中空繊維構造物と接触する。凝結溶液は、キャスト溶液(ポリマー溶液)中で繊維構築ポリマーの凝結を開始させ得る。
【0046】
スピナレット内でキャスト溶液に供給される凝結溶液の量又は比率は、例えば湿式紡糸用スピナレットの寸法、したがって完成した中空繊維の寸法に左右され得る。凝結する際、選択肢として、繊維の寸法は、凝結前かつ押出後の中空繊維構造物の寸法と異なるようには変化しない。この目的で、凝結溶液とポリマー溶液との使用される容量比は、例えば約1:0.5〜約1:5の範囲とすることができ、かかる容量比は、凝結溶液とキャスト溶液との流出速度が等しい場合に、中空繊維の面積比、すなわち高分子物質によって形成される環の面積と、繊維内腔径の面積との比率に等しい。押し出された構造物にスピナレットよりすぐ上流で凝結溶液を供給することができるため、押し出されているが未だ凝結されていない構造物の内径すなわち内腔径は概して、材料を押し出す環状スピナレットの寸法に相当する。
【0047】
中空繊維膜又はキャピラリー膜は、湿式紡糸用スピナレットから出た後のポリマー溶液の外側方向に作用する凝結溶液によって形成することができる。凝結は概して、中空繊維に含まれる有機液体を溶出して最後に繊維構造を固定するすすぎ浴(rinsing bath)の表面まで中空繊維が達する前に終了させることができる。凝結が起こる場合、第1の工程は、繊維状構造の内面を凝固して、約60000ダルトンより大きい分子のバリア形態の緻密な識別層を形成し得るためのものとすることができる。すなわち、アルブミンより小さいものが通過することができる。このバリアからの距離が増大すると、紡糸組成物に含まれる溶剤によって凝結溶液がより希釈されるため、凝結特性は外側方向に向かってそれ程強くなくなる。この結果、外側径方向に、径方向内膜の支持層として機能し得る粗大孔のスポンジ状構造を形成することができる。
【0048】
凝結が起こる場合、使用される場合、親水性ポリマー(例えばPVP)の一部分(ポリアリールエーテルポリマー、例えば、ポリスルホンのようなスルホンポリマー)は紡糸組成物から溶出され得るが、一部が凝固された繊維内に残ることがある。第2のポリマー(例えば親水性ポリマー(複数の場合もある))の約5重量%〜約95重量%を紡糸組成物から溶出して、使用される親水性ポリマーの約95重量%(以上)〜約5重量%を紡糸組成物内に残してもよい。一例として、親水性ポリマー、例えばPVPの大部分が繊維内に残留していてもよい。例えば、親水性ポリマーの50wt%〜99wt%、51wt%〜90wt%、60wt%〜80wt%が繊維内に残留していてもよい。孔の形成は、必ずしも溶出されなくても、繊維の内腔径に向かうPVPの移動によっても起こり得る。
【0049】
ドラフトは、環状スピナレットからの繊維状構造の流出速度が、凝結された繊維が引き抜かれる速度と異なる(通常これよりも大きい)ことを指す。ドラフトは、繊維の凝結中に環状スピナレットから出る繊維構造の伸長を起こすものであり、形成される孔をドラフト方向に伸長し、このため永久変形が起こり得る。ドラフトを伴って紡糸された繊維は、このようなスピナレットドラフトなしに生成された繊維の場合よりもはるかに遅いか又ははるかに速いとされる限外濾過速度を有し得る。紡糸組成物がスピナレットから出る速度と生成された繊維の引抜速度とを包括的に同じにして、紡糸ドラフトを防止すると、孔の変形又は繊維内腔径の収縮の発生、及び繊維壁の薄化の予想される発生を抑えることができる。選択肢として、凝結(precipitative)繊維のポンプ輸送速度はスピナレットからの延伸速度よりも遅いことがあり、この場合、繊維の直径を低減させる繊維の延伸が起こる。この延伸又は引抜(pulling)は繊維を形成するのに任意に使用してもよい。
【0050】
更なる紡糸パラメータはすすぎ浴の表面とスピナレットとの間の距離である。なぜならば、このような距離が所定の下方運度速度、つまり、所定の押出速度における凝結時間を制御しているからである。この距離は、繊維の粘度、重量及び凝結速度に左右され得る。スピナレットと凝結浴との間の距離は、例えばわずか約1mの長さの距離で設定することができる。凝結後、凝固された繊維は、水を通常含有する浴内ですすいでもよく、この浴内で、溶解した有機成分を洗い出しかつ繊維の微孔性構造を固定するために、例えば約3分〜10分以上中空繊維を保持する。その後、繊維を熱乾燥帯域に通してもよい。生成される中空繊維は、開口気孔を有する外側支持層に隣接する薄い径方向内側バリア層を内面に有していてもよい。例えば、親水性ポリマーが紡糸溶液中に含まれる場合、製造される内面繊維は、例えば約0.0005μm〜約0.1μm又は他の値の孔径を有する高密度バリア層を含有していてもよい。この内側バリア層の外側に隣接して発泡体状の支持構造が存在し得る。
【0051】
中空繊維はその交換特性を改善させるために嵩高加工されていてもよい。この後、このように生成された繊維は、従来の方法で、例えば、ボビン又はホイールに巻き取り、所望の長さに繊維を切断することにより取り扱うことができ、及び/又は従来どおり切断した繊維から透析装置を製造するのに使用することができる。紡糸材料は押出又はキャストしてシート形態にすることができる。本発明のリアクタ溶液を用いて膜フィルム又はシートをキャストするのに好適な方法及び機器としては、例えば米国特許第3,691,068号に記載されているもの等が挙げられる。紡糸材料はまた、連続コーティング若しくは不連続コーティング又はフィルムとして基体表面(例えば、織布又は不織布)上の適当な位置にコート又は固化させてもよい。
【0052】
本発明の具体例として、少なくとも1つのポリアリールエーテルポリマー(例えば、ポリスルホンのようなスルホンポリマー(複数の場合もある))と少なくとも1つの溶剤(例えば有機溶剤)とを含む紡糸材料を準備する工程と、少なくとも1つの水性溶剤及び少なくとも1つの有機溶剤等の少なくとも1つの溶剤を含有する孔流体を準備する工程と、紡糸材料と孔流体とを組み合わせる工程であって、ポリアリールエーテルポリマー繊維(例えば、ポリスルホン繊維のようなスルホンポリマー繊維)を形成する工程とを含む、ポリアリールエーテルポリマー繊維(例えば、ポリスルホン繊維のようなスルホンポリマー繊維)を紡糸する方法が提供される。この方法では、紡糸材料及び/又は孔流体が本発明の1又は複数の添加剤を含有する。紡糸材料は紡糸材料の重量で10wt%未満の低MW PVPを有していてもよく、及び/又は紡糸材料中の総PVP含有量は10wt%未満の低MW PVPであり得る。孔流体は孔流体の重量で10wt%未満の低MW PVPを有していてもよい。低MW PVPは、約100kDa未満(又は、36以下、例えば1〜35、若しくは30以下若しくは25以下のK値)の重量平均分子量を有すると考えられ得る。紡糸材料(又は、紡糸材料中の総PVP含有量)、孔流体又は両方は、約7.5wt%未満、約5wt%未満、約2.5wt%未満、約1wt%未満、0.2wt%未満、又は約0.001wt%未満の低MW PVPを有していてもよい。これらの範囲の各々について下限は0.0001wt%とすることができる。紡糸材料はジメチルアセトアミド(DMAC)(及び/又は異なる溶剤)を含有していてもよく、及び/又は孔流体はDMAC(及び/又は異なる溶剤)と水とを含有していてもよい。
【0053】
紡糸材料を調製する際にPVPを使用する場合、選択肢として、紡糸材料を調製する際に粉末形態のPVPを添加することが好ましい。これは紡糸材料溶液のより良好な制御を可能にする。
【0054】
本発明の紡糸材料は少量の水を含有することが好ましい。例えば、紡糸材料は(紡糸材料の重量ベースで)4wt%以下、例えば、0.001wt%〜4wt%、0.01wt%〜4wt%、0.1wt%〜4wt%、0.5wt%〜3.5wt%、0.75wt%〜3wt%、0.9wt%〜1.7wt%等の水を含有していてもよい。
【0055】
一旦形成された使用前の紡糸材料は透明で曇っていないことが好ましい。言い換えれば、紡糸材料溶液は透過性で不透明ではない。紡糸材料溶液は(水と異なる色であっても)水のように透明であることが好ましい。
【0056】
一選択肢として、本明細書中に記載される1又は複数の添加剤を使用して、ポリアリールエーテルポリマー繊維(例えば、ポリスルホン繊維のようなスルホンポリマー繊維)等の高分子繊維を製造する方法は、唯一のタイプのPVPを使用すること(低MW若しくは中MW若しくは高MW PVPを意味する、又は指定のK値又はK値範囲、例えば、K50、又はK45〜K55若しくはK40〜K55を有する1つのPVPを使用すること)により、及び/又は、低分子量及び/又は中分子量を使用することなく、可能となる。紡糸材料及び/又は孔流体中でPVP及び/又は高分子量PVP、及び/又は唯一のタイプのPVPを使用すること(例えば、低MW PVPのみを用いること、中MW PVPのみを用いること、又は高MW PVPのみを用いること)。本明細書中及び全体を通じた分子量についての言及は、重量平均分子量(ダルトン単位)についての言及である。とりわけポリスルホン繊維を生成する場合、PVPは紡糸材料中に使用される好ましい成分であり、非常に少量の或る特定のタイプのPVP、とりわけ種々のMWのPVPの組合せの存在が、中空繊維について、とりわけ透析装置用の膜に使用される中空繊維について所望の特性を得る上で有用であると考えられている。ポリスルホン繊維等の高分子繊維を製造する方法に存在するPVPの(タイプの)数を低減することができることが有益であると考えられ、及び/又は、高分子繊維を製造する方法に存在する或る特定のタイプのPVPの量を低減すると同時に、例えば紡糸材料中で少量(例えば4wt%以下)の水を使用することができることが有益であると考えられる。本明細書中に記載される本発明の添加剤は、これらの利点の1又は複数をもたらすものであってもよい。
【0057】
PVPはK値で特性決定することができる。様々なグレードのPVPに割り当てられるK値は、平均分子量、重合度及び固有粘度の関数を表す。本明細書中で(本発明に関して)使用される場合、K値は、粘度測定値に由来するものであり、下記式によって算出される。
【数1】
【0058】
上記のものはK値の決定に関してより正確なものと考えられるが、一部の文献では、"Kollidon: Polyvinylpyrrolidone for the PharmaceuticalIndustry"と題されるBASF技術情報文献の図15にも図示される下記式を用いてポリビニルピロリドンの重量平均分子量をK値により決定してもよいと提示されている。式中、MWは重量平均分子量であり、KはK値であり、aはexp(1.055495)である。
【数2】
【0059】
高分子繊維を製造する方法においてPVPの存在を制御及び/又は低減する性能の更に具体的な例を以下に示す。低MW PVPの例としては、PVP K12、PVP K30、若しくは1〜36のK値(又はK値範囲)を有する任意のPVPの少なくとも1つ、又は任意の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。選択肢として、紡糸材料及び/又は孔流体は低MW PVPを含まない。選択肢として本発明では、紡糸材料及び/又は孔流体が、PVPの単一の重量平均MW種(重量平均種)(例えば、単一のPVP K値又は単一のPVP Kグレード)を含有していてもよい。選択肢として、紡糸材料及び/又は孔流体は中MW PVPを含有する。紡糸材料は、紡糸材料中に存在する総PVPの重量で25wt%未満の中MW PVP(例えば、0.001wt%〜24wt%、1wt%〜10wt%、1wt%〜5wt%、0.01wt%〜3wt%、0.01wt%〜1wt%)を含有していてもよい。孔流体は、孔流体の重量で25wt%未満の中MW PVP(例えば、0.001wt%〜24wt%、1wt%〜10wt%、1wt%〜5wt%、0.01wt%〜3wt%、0.01wt%〜1wt%)を含有していてもよい。中MW PVPは、100kDa〜900kDa未満、例えば約100kDa〜850kDa(又はK37〜K79のK値)の重量平均分子量を有していてもよい。選択肢として、紡糸材料(すなわち、PVPの総重量パーセントベースの紡糸材料中の総PVP含有量)、孔流体又は両方は、紡糸材料の重量で(紡糸材料中に存在するPVPの総重量パーセントベースで)及び/又は孔流体の重量で、約90wt%未満、約75wt%未満、約50wt%未満、約25wt%未満、約15wt%未満、約7.5wt%未満、約5wt%未満、約2.5wt%未満、約1wt%未満、0.1wt%未満又は約0.001wt%未満の中MW PVPを有していてもよい。これらの範囲について下限は0.0001wt%とすることができる。中MW PVPは、K37〜K79、例えば、K40〜K75、K45〜K70、K45〜K65、K45〜K60、K45〜K55、又はこれらの範囲内の任意の個々のK値というK値又はK値範囲を有するPVPであってもよく又はこれを含んでいてもよい。本発明ではK45〜K55のK値が特に有効である。選択肢として、紡糸材料及び/又は孔流体は高MW PVPを含有していてもよい。ここで、紡糸材料は(紡糸材料の総重量ベースで、又は紡糸材料中に存在するPVPの総重量パーセントベースで)紡糸材料の重量で25wt%未満の高MW PVPを含有し、及び/又は孔流体は、孔流体の重量で25wt%未満の高MW PVPを含有し、高MW PVPは、900kDa以上の重量平均分子量(又はK80以上のK値)を有する。選択肢として、紡糸材料(紡糸材料の総重量ベースで、又は紡糸材料中に存在するPVPの総重量パーセントベースで)、孔流体又は両方は、約90wt%未満、約75wt%未満、約50wt%未満、約25wt%未満、約15wt%未満、約7.5wt%未満、約5wt%未満、約2.5wt%未満、約1wt%未満、0.1wt%未満、又は約0.001wt%未満の高MW PVPを有する。これらの範囲について下限は0.0001wt%とすることができる。高MW PVPは、K80〜K105以上、例えば、K80〜K90、K81〜K88若しくはK81〜K86、又はこれらの範囲内の任意の個々のK値というK値又はK値範囲を有していてもよい。本例で使用される高MW PVPは約900000Daの重量平均MWを有するものとした。
【0060】
一例として、紡糸材料調合物は、紡糸材料中の総PVP含有量の重量で25wt%未満の高分子量PVPを含有していてもよい。これらの量の更に具体的な例は、本段落のすぐ上に記載される範囲のものであってもよい。紡糸材料(紡糸材料の重量で又は総PVP含有量の重量で)及び/又は孔流体は、約10wt%未満の高分子量PVP、例えば、0.001wt%未満の高分子量PVP又は0wt%の高分子量PVPを有していてもよい。選択肢として、紡糸材料はPVP成分に関して、中分子量PVP、例えば、約50000Da〜約310000Da、例えば約200000Da〜300000Da又は約215000Da〜約285000Da等の平均分子量を有するPVPを幾らか又は排他的に含有していてもよい。中分子量PVPは、K37〜K79、例えば、K40〜K75、K45〜K70、K45〜K65、K40〜K55、K45〜K60、K45〜K55というK値、又はこれらの範囲内の任意の個々のK値を有するPVPであってもよく、K40、K41、K42、K43、K44、K45、K46、K47、K48、K49、K50、K51、K52、K53、K54及び/又はK55のPVPであってもよく又はこれを含んでいてもよい。中分子量PVP(又は2タイプ以上の中MW PVP)の使用は、高分子量PVP成分に部分的に又は完全に取って代わっても、及び/又は低分子量PVP成分に部分的に又は完全に取って代わっても、繊維に関してより優れているとは言わないまでも同程度の性能特性を実現することができ、本発明において、これは紡糸材料中の4wt%以下の含水量で実現することができることが分かった。PVP成分は、(紡糸材料中の総PVP含有量ベースで)孔流体及び/又は紡糸材料又は両方中に、100wt%、10wt%〜100wt%、20wt%〜100wt%、30wt%〜100wt%、40wt%〜100wt%、50wt%〜100wt%、60wt%〜100wt%、75wt%以上、85wt%以上の全てのPVP含有成分を含む中分子量PVPであってもよい。特に指定のない限り、分子量についての言及は、本明細書を通じて重量平均分子量についての言及である。
【0061】
また、本発明は、少なくとも1つのポリアリールエーテルポリマーと、40〜55又は45〜55のK値を有する少なくとも1つの中重量PVPを含む少なくとも1つのポリビニルピロリドン(PVP)とを含むポリアリールエーテルポリマー繊維に関する。ポリアリールエーテルポリマー繊維は、47〜53のK値を有する中分子量PVPを有していてもよい。中分子量PVPは、ポリアリールエーテルポリマー繊維の重量ベースで約0.1wt%〜15wt%、例えば、ポリアリールエーテルポリマー繊維の重量ベースで約1wt%〜10wt%又はポリアリールエーテルポリマー繊維の重量ベースで約3wt%〜8wt%の量で存在していてもよい。ポリアリールエーテルポリマー繊維はスルホンポリマー繊維であってもよい。ポリアリールエーテルポリマー繊維はポリスルホン繊維であってもよい。繊維中に存在するPVPは、ポリアリールエーテルポリマー中に均一に又は不均一に分散又は分布されると考えられ得る。PVPは、PVP濃度が繊維の外面領域上で大きくなるように分散又は分布されていてもよい(例えば、PVPの重量濃度は繊維の外面領域で1%から100%へと大きくなり得る)。
【0062】
ポリアリールエーテルポリマー繊維は、0wt%〜15wt%、例えば、0wt%〜10wt%、若しくは0wt%〜5wt%、0wt%〜0.3wt%、0wt%〜0.2wt%、0wt%〜0.1wt%、若しくは0wt%〜1wt%の、36以下のK値又は30以下のK値を有する少なくとも1つの低分子量PVPを更に含んでいてもよい。本発明のポリアリールエーテルポリマー繊維では、PVPが、30以下といった36以下のK値を有する0wt%の任意の低分子量PVPを更に含んでいてもよい。
【0063】
本発明のポリアリールエーテルポリマー繊維は、0wt%〜15wt%の、80以上のK値を有する少なくとも1つの高分子量PVP、例えば、0wt%〜10wt%の、80以上のK値を有する少なくとも1つの高分子量PVP、又は0wt%〜0.3wt%、0wt%〜0.2wt%、0wt%〜0.1wt%、0wt%〜5wt%の、80以上のK値を有する少なくとも1つの高分子量PVP、又は0wt%〜1wt%の、80以上のK値を有する少なくとも1つの高分子量PVP、又は0wt%の、80以上のK値を有する任意の高分子量PVPを更に含んでいてもよい。
【0064】
本発明のポリアリールエーテルポリマー繊維は、44以下、42以下、40以下、39以下又は30以下のK値(例えばK1〜K40)を有するPVPを含まないものであってもよい。
【0065】
本発明のポリアリールエーテルポリマー繊維は、56以上又は60以上又は70以上又は80以上又は90以上のK値(例えばK56〜K120)を有するPVPを含まないものであってもよい。
【0066】
本発明のポリアリールエーテルポリマー繊維は、以下の特性の1又は複数を有し得る:
a)約−100mV〜約100mVのゼータ(流動)電位、
b)約100ml/時間・mmHg・m〜約1000ml/時間・mmHg・mの限外濾過定数(KUF)、
c)約0.001%〜約1%のアルブミンふるい係数、
d)Q/Q=300/500ml/分における約150ml/分〜約250ml/分のビタミンB12クリアランス率、
e)Q/Q=300/500ml/分でのクレアチニン約50ml/分〜クレアチニン約290ml/分のクレアチニンクリアランス率、
f)Q/Q=300/500ml/分でのナトリウム約30ml/分〜ナトリウム約300ml/分のナトリウムクリアランス率、
g)Q/Q=300/500ml/分でのβ−2−ミクログロブリン約10ml/分〜β−2−ミクログロブリン約250ml/分のβ−2−ミクログロブリンクリアランス率、
h)Q/Q=300/500ml/分でのリゾチーム約50ml/分〜リゾチーム約250ml/分の中分子(リゾチーム)クリアランス率、
i)1%〜10%の吸水度。
【0067】
選択肢として、特性a)〜特性i)の全て、又は2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上若しくは8つ以上が存在するものであってもよい。ポリアリールエーテルポリマー繊維は、約100μm〜約0.5mmの外径、約100μm〜約0.5mmの内径、約0.001μm〜約250μmの厚み及び約0.01m〜約1mの長さの繊維形状を有していてもよい。ポリアリールエーテルポリマー繊維は約0.1MPa〜約10MPaの引張強度を有していてもよい。上述の部分範囲等を含む、上記及び下記に記載される繊維及び性能特性が、本発明に記載される繊維のいずれにも存在し得ることを理解されたい。
【0068】
本発明の別の特徴は、本発明の方法又は任意の他の好適な方法によって製造されるポリアリールエーテルポリマー繊維(例えば、ポリスルホン繊維のようなスルホンポリマー繊維)である。製造されるポリアリールエーテルポリマー繊維(例えば、ポリスルホン繊維のようなスルホンポリマー繊維)は、約−500mV〜約500mV、約−250mV〜約250mV、約−100mV〜約100mV、約−25mV〜約25mV、又は約−10mV〜約10mVのゼータ(流動)電位を有していてもよい。繊維から形成される膜の透水度は、限外濾過係数(KUF)を求めることによって評価することができる。KUFは、膜にかかるmmHg圧勾配に従う、膜を介して移動する1時間当たりの流体のml数と規定される。生成される中空繊維膜は、例えば、約1ml/時間・mmHg・m〜約1000ml/時間・mmHg・m以上、約10ml/時間・mmHg・m〜約50ml/時間・mmHg・m、約25ml/時間・mmHg・m〜約1000ml/時間・mmHg・m、約30ml/時間・mmHg・m〜約900ml/時間・mmHg・m、約100ml/時間・mmHg・m〜約600ml/時間・mmHg・m、若しくは約150ml/時間・mmHg・m〜約250ml/時間・mmHg・m、約750ml/時間・mmHg・m超、又は他の値の透水度(面積当たりのKUF)を有していてもよい。
【0069】
本発明の中空繊維は、例えば、約1重量%〜約10重量%、若しくは約2重量%〜約9重量%、若しくは約3重量%〜約8重量%、又は他の値の吸水度を有していてもよい。吸水度は以下の方法で確認することができる。水蒸気飽和空気を、室温(25℃)において中空繊維を装着した乾燥状態の透析装置に通す。これに関して、空気は加圧下で水浴に導入し、水蒸気で飽和させた後、透析装置内に通す。定常状態に達し次第、吸水度を測定することが可能となる。
【0070】
本発明のポリアリールエーテルポリマー繊維(例えば、ポリスルホン繊維のようなスルホンポリマー繊維)は、様々なふるい/クリアランス特性を考慮して設計され得る。クリアランスデータは、例えばDIN58,352に従って本発明の中空繊維について測定することができる。ポリアリールエーテルポリマー繊維(例えば、ポリスルホン繊維のようなスルホンポリマー繊維)は、約20%未満、約0.001%〜約1%、約0.01%〜約0.75%、約0.1%〜約0.5%、約0.05%〜約10%、又は0.5%超のアルブミンふるい係数を有していてもよい。例えば、患者の最大血流量は約450ml/分〜約500ml/分とすることができる。ポリアリールエーテルポリマー繊維(例えば、ポリスルホン繊維のようなスルホンポリマー繊維)は、約20%未満のアルブミンふるい係数、及び側方血流量の100%未満のクリアランス率を有していてもよい。例えば約1.4m面積の透析装置となるポリアリールエーテルポリマー繊維(例えば、ポリスルホン繊維のようなスルホンポリマー繊維)は、(例えば、Q/Q=300/500ml/分においてそれぞれ)ビタミンB12約1ml/分〜ビタミンB12約300ml/分、ビタミンB12約10ml/分〜ビタミンB12約300ml/分、ビタミンB12約150ml/分〜ビタミンB12約250ml/分、又はビタミンB12約75ml/分〜ビタミンB12約150ml/分のビタミンB12クリアランス率を有していてもよい。ビタミンB12クリアランス率はQ/Q=300/500ml/分において約250ml/分であってもよい。例えば約1.4m面積の透析装置へと組み上げられるポリスルホン系繊維は、リゾチーム約1ml/分〜リゾチーム約300ml/分、リゾチーム約10ml/分〜リゾチーム約300ml/分、リゾチーム約50ml/分〜リゾチーム約250ml/分、又はリゾチーム約75ml/分〜リゾチーム約150ml/分の中分子(リゾチーム)クリアランス率を有していてもよい。リゾチームクリアランス率は約92ml/分とすることができる。クリアランス率はいずれもQ/Q=300/500ml/分について述べられ得る。
【0071】
例えば約1.4m面積の透析装置へと組み上げられるポリアリールエーテルポリマー繊維(例えば、ポリスルホン繊維のようなスルホンポリマー繊維)は、クレアチニン約1ml/分〜クレアチニン約300ml/分、クレアチニン約10ml/分〜クレアチニン約300ml/分、クレアチニン約50ml/分〜クレアチニン約290ml/分、又はクレアチニン約75ml/分〜クレアチニン約150ml/分のクレアチニンクリアランス率を有していてもよい。例えば約1.4m面積の透析装置へと組み上げられるポリアリールエーテルポリマー繊維(例えば、ポリスルホン繊維のようなスルホンポリマー繊維)は、β−2−ミクログロブリン約1ml/分〜β−2−ミクログロブリン約300ml/分、β−2−ミクログロブリン約10ml/分〜β−2−ミクログロブリン約300ml/分、β−2−ミクログロブリン約20ml/分〜β−2−ミクログロブリン約200ml/分、又はβ−2−ミクログロブリン約30ml/分〜β−2−ミクログロブリン約150ml/分のβ−2−ミクログロブリンクリアランス率を有していてもよい。クリアランス率はいずれもQ/Q=300/500ml/分について述べられ得る。
【0072】
ナトリウムクリアランスは、DIN58,352に従って、約280ml/分の血流量において、1.25mの有効表面積を有する中空繊維のための水溶液により確認することができる。クリアランスは血流量又は流入量以下である。本発明の中空繊維のナトリウムクリアランスは、例えば、約200〜約300、若しくは約250〜約275、若しくは約260〜約280、若しくは約265〜約275、又は他の値をとることができる。ポリアリールエーテルポリマー繊維(例えば、ポリスルホン繊維のようなスルホンポリマー繊維)は、ナトリウム約1ml/分〜ナトリウム約300ml/分、ナトリウム約10ml/分〜ナトリウム約300ml/分、ナトリウム約50ml/分〜ナトリウム約290ml/分、又はナトリウム約75ml/分〜ナトリウム約295ml/分のナトリウムクリアランス率を有していてもよい。クリアランス率はいずれもQ/Q=300/500ml/分について述べられ得る。例えば、ナトリウムクリアランス率は、Q/Q=300/500ml/分でナトリウム約30ml/分〜ナトリウム約300ml/分であってもよい。
【0073】
ポリアリールエーテルポリマー繊維(例えば、ポリスルホン繊維のようなスルホンポリマー繊維)は任意の繊維形状を有していてもよい。例えば、繊維は、約1μm〜約1mm、約5μm〜約500μm、約25μm〜約250μm、約15μm〜約150μm、又は約50μm〜約100μmの外径を有していてもよい。例えば、外径は約420μmとすることができる。内径は、約10μm〜約1mm、約25μm〜500μm未満、約50μm〜約250μm、約15μm〜約150μm、又は約50μm〜約100μmであってもよい。壁厚は、約0.001μm〜250μm未満、約0.01μm〜約100μm、約0.1μm〜約50μm、約1μm〜約25μm、又は約10μm〜約20μmであってもよい。繊維長は、約0.01m〜約1m、例えば約25cm〜約60cmであってもよい。ポリアリールエーテルポリマー繊維(例えば、ポリスルホン繊維のようなスルホンポリマー繊維)は、約0.1MPa〜約10MPa、約0.1MPa〜約5MPa、約1MPa〜約5MPa、約2MPa〜約8MPa以上の引張強度を有していてもよい。代替的に、引張強度は、g(力)単位で測定することができる。例えば、繊維は、約1g(力)〜約50g(力)、約5g(力)〜約40g(力)、約10g(力)〜約30g(力)、約2g(力)未満、又は約50g(力)超のg(力)に耐えることができる。例えば、約18g(力)〜約30g(力)に耐える繊維は、約15μm以上の壁厚、約215μmの外径、及び約185μmの内径を有し得る。内径は、約170μmの外径を有する繊維について約140μm以上とすることができる。
【0074】
本発明の繊維からなる膜は優れた分離境界を有していてもよい。ふるい係数は例えば、ビタミンB12について1.0、イヌリンについて約0.99、ミオグロビンについて約0.9〜約1.0、及びヒトアルブミンについて0.01未満、又は他の値として測定することができる。中空繊維の外径は、例えば約0.1mm〜約0.4mmに等しいものとすることができるのに対し、膜の厚みは約10μm〜約100μm又は約15μm〜約50μmとすることができる。本発明により生成される中空繊維は、分離特性(例えばふるい係数)に関して天然の腎臓機能に少なくとも或る程度近似し得るものである。
【0075】
膜は本発明の繊維で作ることができる。膜は例えばフラットシート又は中空繊維であってもよい。膜は例えば、透析膜、限外濾過膜又は精密濾過膜に使用することができる。透析膜は例えば血液透析膜であってもよい。精密濾過及び限外濾過を含む半透膜濾過は、タンパク質の精製において使用することができる。精密濾過は、一般に直径が約0.1μmより大きい懸濁固体及びコロイドを除去する低圧膜濾過プロセスとして定義することができる。このようなプロセスは、細胞、マクロファージ及び細胞残屑等の粒子又は微生物を分離するのに使用することができる。限外濾過膜は、約500ダルトン〜約1000000ダルトンの範囲の分子量を有する巨大分子を保持することができるポアサイズを特徴とする。限外濾過は、場合によっては、最大約0.1μmサイズ、例えば、約0.01μm〜約0.1μmの範囲の溶質を分離することができる低圧膜濾過プロセスである。限外濾過は、タンパク質を濃縮し、また溶液から細菌及びウイルスを除去するのに使用することができる。限外濾過は浄水等の精製処理にも使用することができる。透析膜は、生体適合材料を含有する限外濾過膜であってもよい。膜が中空繊維である場合、中空繊維は、微孔質であってもよく、また崩壊することなく約100psi〜約2000psi以上の印加圧力に耐えることができるものである。
【0076】
血液透析等の透析に使用され得る本発明の中空繊維は、例えば、生体適合性、高い透水率、シャープな分離特徴、関係する圧力に耐えるのに十分な程度の機械的強度、及び優れた安定性を含む所望の特性の1又は複数を有することができる。
【0077】
本発明は以下の態様/実施形態/特徴を任意の順序及び/又は任意の組合せで包含する:
1. 本発明は、ポリアリールエーテルポリマー繊維を紡糸する方法であって、
少なくとも1つのポリアリールエーテルポリマーと少なくとも1つの有機溶剤とを含む紡糸材料を準備する工程と、
少なくとも1つの水性溶剤及び/又は少なくとも1つの有機溶剤を含む孔流体を準備する工程と、
前記紡糸材料と孔流体とを組み合わせる工程であって、前記ポリアリールエーテルポリマー繊維を形成する工程と、
を含み、
前記紡糸材料若しくは前記孔流体又は両方が少なくとも1つの添加剤を含み、
前記紡糸材料が該紡糸材料の重量で4wt%未満の低分子量(MW)PVPを含み、
前記孔流体が該孔流体の重量で1wt%未満の低MW PVPを含み、
前記低MW PVPが約100kDa未満の重量平均分子量(又はK36以下のK値)を有する、方法に関する。
2. 前記紡糸材料がジメチルアセトアミド(DMAC)を含み、前記孔流体がDMACと水とを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
3. 前記少なくとも1つの添加剤が、前記紡糸材料中で、少なくとも1つの二価塩、高分子電解質、グリセリン、界面活性剤、ビニルピロリドン/ビニルアセテートコポリマー、ビニルカプロラクタム/ビニルピロリドン/ジメチルアミノ−プロピルメタクリルアミドターポリマー、ポリエチレングリコールポリエステルコポリマー若しくはポリ(エチレンイミン)(PEI)、又はそれらの任意の組合せを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
4. 前記少なくとも1つの添加剤が前記孔流体中で少なくとも1つの高分子電解質を含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
5. 前記紡糸材料が前記少なくとも1つの添加剤を含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
6. 前記少なくとも1つの添加剤が、前記孔流体中で、少なくとも1つの二価塩、高分子電解質、グリセリン、界面活性剤、ビニルピロリドン/ビニルアセテートコポリマー、ビニルカプロラクタム/ビニルピロリドン/ジメチルアミノ−プロピルメタクリルアミドターポリマー、ポリエチレングリコールポリエステルコポリマー若しくはポリ(エチレンイミン)(PEI)、又はそれらの任意の組合せを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
7. 前記孔流体が前記少なくとも1つの添加剤を含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
8. 前記少なくとも1つの添加剤が少なくとも1つの二価塩を含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
9. 前記低MW PVPがK35以下のK値を有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
10. 前記紡糸材料が低MW PVPを含まない、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
11. 前記紡糸材料も孔流体も低MW PVPを含まない、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
12. 前記紡糸材料がPVPの単一の重量平均MW種を含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
13. 前記紡糸材料が少なくとも1つの中MW PVPを含み、
前記紡糸材料が該紡糸材料の重量で25wt%未満の中MW PVPを含み、
前記孔流体が該孔流体の重量で25wt%未満の中MW PVPを含み、
前記中MW PVPが約100kDa〜900kDaの重量平均分子量(又はK37〜K79のK値)を有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
14. 前記中MW PVPが40〜53のK値を有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
15. 前記紡糸材料の少なくとも1つが高MW PVPを含み、
前記紡糸材料が該紡糸材料の重量で25wt%未満の高MW PVPを含み、
前記孔流体が該孔流体の重量で25wt%未満の高MW PVPを含み、
前記高MW PVPが900kDaより大きい重量平均分子量(又はK80以上のK値)を有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
16. 前記高MW PVPが80〜100のK値を有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
17. 前記少なくとも1つの添加剤が少なくとも1つの中MW PVPを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
18. 前記紡糸材料が0.1wt%〜10wt%の少なくとも1つの中MW PVPを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
19. 前記孔流体が0wt%のPVPを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
20. 前記紡糸材料及び前記孔流体が両方とも少なくとも1つの添加剤を含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
21. 前記紡糸材料及び前記孔流体が同じ少なくとも1つの添加剤を含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
22. 前記少なくとも1つのポリアリールエーテルポリマーが少なくとも1つのポリスルホンである、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
23. 前記少なくとも1つのポリアリールエーテルポリマーが少なくとも1つのスルホンポリマーである、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
24. 製造される前記繊維が約−100mV〜約100mVのゼータ(流動)電位を有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
25. 製造される前記繊維が約100ml/時間・mmHg・m〜約1000ml/時間・mmHg・mの限外濾過定数(KUF)を有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
26. 製造される前記繊維が約0.001%〜約1%のアルブミンふるい係数を有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
27. 製造される前記繊維が、Q/Q=300/500ml/分において約150ml/分〜約250ml/分のビタミンB12クリアランス率を有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
28. 製造される前記繊維が、Q/Q=300/500ml/分でクレアチニン約50ml/分〜クレアチニン約290ml/分のクレアチニンクリアランス率を有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
29. 製造される前記繊維が、Q/Q=300/500ml/分でナトリウム約30ml/分〜ナトリウム約300ml/分のナトリウムクリアランス率を有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
30. 製造される前記繊維が、Q/Q=300/500ml/分でβ−2−ミクログロブリン約50ml/分〜β−2−ミクログロブリン約250ml/分のβ−2−ミクログロブリンクリアランス率を有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
31. 製造される前記繊維が、Q/Q=300/500ml/分でリゾチーム約50ml/分〜リゾチーム約250ml/分の中分子(リゾチーム)クリアランス率を有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
32. 製造される前記繊維が、約100μm〜約0.5mmの外径、約100μm〜0.5mm未満の内径、約0.001μm〜約250μmの厚み及び約0.01m〜約1mの長さの繊維形状を有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
33. 製造される前記繊維が約0.1MPa〜約10MPaの引張強度を有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
34. 任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法によって製造されるポリスルホン系繊維等のポリマー繊維。
35. 高分子繊維を形成する方法であって、孔流体と同時に紡糸材料をスピナレットに供給することと、高分子繊維をキャストすることとを含み、
前記紡糸材料が少なくとも1つのポリマーと少なくとも1つの有機溶剤とを含み、前記孔流体が少なくとも1つの水性溶剤及び/又は少なくとも1つの有機溶剤を含み、同様のプロセスで作られるものの添加剤が存在しない同様の高分子繊維と比較して、前記紡糸材料、孔流体又は両方が、以下の特性:
a)中分子除去を改善させるためにふるい分け曲線をシャープにすること、
b)流体からより大きい尿毒症性溶質を除去すること、
c)アルブミン漏出をあまり増大させることなく中分子除去を改善させること、並びに、
d)紡糸材料中に存在するPVP(又はPVPの特定のMWクラス)又は類似の少数高分子成分に完全に又は部分的に取って代わること、及び前記製造される繊維にかかる同様又は類似の特性を依然として得ること、
の少なくとも1つを実現するのに十分な量で少なくとも1つの添加剤を更に含む、方法。
36. 前記ポリマーがポリアリールエーテルである、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
37. 前記ポリマーがポリスルホンであり、前記紡糸材料中の前記有機溶剤がジメチルアセトアミドである、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
38. 前記紡糸材料が紡糸材料の重量で0wt%の低分子量PVPを含み、前記添加剤が、前記紡糸材料中で少なくとも1つの中分子量PVPと前記紡糸材料中で4wt%以下の水とを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
39. 前記少なくとも1つの添加剤が、前記紡糸材料中に存在する唯一のPVPタイプである少なくとも1つの中分子量PVPと、前記紡糸材料中で4wt%以下の水とを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
40. 前記中分子量PVPが100000Da〜210000Daの重量平均分子量を有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
41. 前記中分子量PVPが125000Da〜200000Daの重量平均分子量を有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
42. 前記中分子量PVPが、K40〜K75のK値又は範囲を有するPVPを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
43. 前記紡糸材料が、0wt%の前記低分子量PVPと25wt%未満の高分子量PVPとを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
44. 前記紡糸材料が、0wt%の前記低分子量PVPと10wt%未満の高分子量PVPとを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
45. 前記紡糸材料が、0wt%の前記低分子量PVPと0wt%の高分子量PVPとを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
46. 少なくとも1つのポリアリールエーテルポリマーと、40〜55のK値を有する少なくとも1つの中重量PVPを含む少なくとも1つのポリビニルピロリドン(PVP)とを含む、ポリアリールエーテルポリマー繊維。
47. 前記中重量PVPが45〜53のK値を有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様のポリアリールエーテルポリマー繊維。
48. 前記中重量PVPが、前記ポリアリールエーテルポリマー繊維の重量ベースで約0.1wt%〜15wt%の量で存在する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様のポリアリールエーテルポリマー繊維。
49. 前記中重量PVPが、前記ポリアリールエーテルポリマー繊維の重量ベースで約1wt%〜10wt%の量で存在する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様のポリアリールエーテルポリマー繊維。
50. 前記中重量PVPが、前記ポリアリールエーテルポリマー繊維の重量ベースで約3wt%〜8wt%の量で存在する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様のポリアリールエーテルポリマー繊維。
51. 前記PVPが、0wt%〜15wt%の、30以下のK値を有する少なくとも1つの低分子量PVPを更に含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様のポリアリールエーテルポリマー繊維。
52. 前記PVPが、0wt%〜10wt%の、30以下のK値を有する少なくとも1つの低分子量PVPを更に含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様のポリアリールエーテルポリマー繊維。
53. 前記PVPが、0wt%〜5wt%の、30以下のK値を有する少なくとも1つの低分子量PVPを更に含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様のポリアリールエーテルポリマー繊維。
54. 前記PVPが、0wt%〜1wt%の、30以下のK値を有する少なくとも1つの低分子量PVPを更に含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様のポリアリールエーテルポリマー繊維。
55. 前記PVPが、0wt%の、30以下のK値を有する任意の低分子量PVPを更に含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様のポリアリールエーテルポリマー繊維。
56. 前記PVPが、0wt%〜15wt%の、80以上のK値を有する少なくとも1つの高分子量PVPを更に含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様のポリアリールエーテルポリマー繊維。
57. 前記PVPが、0wt%〜10wt%の、80以上のK値を有する少なくとも1つの高分子量PVPを更に含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様のポリアリールエーテルポリマー繊維。
58. 前記PVPが、0wt%〜5wt%の、80以上のK値を有する少なくとも1つの高分子量PVPを更に含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様のポリアリールエーテルポリマー繊維。
59. 前記PVPが、0wt%〜1wt%の、80以上のK値を有する少なくとも1つの高分子量PVPを更に含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様のポリアリールエーテルポリマー繊維。
60. 前記PVPが、0wt%の、80以上のK値を有する任意の高分子量PVPを更に含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様のポリアリールエーテルポリマー繊維。
61. 前記PVPが40以下のK値を有するPVPを含まない、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様のポリアリールエーテルポリマー繊維。
62. 前記PVPが56以上のK値を有するPVPを含まない、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様のポリアリールエーテルポリマー繊維。
63. 以下の特性:
a)約−100mV〜約100mVのゼータ(流動)電位、
b)約100ml/時間・mmHg・m〜約1000ml/時間・mmHg・mの限外濾過定数(KUF)、
c)約0.001%〜約1%のアルブミンふるい係数、
d)Q/Q=300/500ml/分における約150ml/分〜約250ml/分のビタミンB12クリアランス率、
e)Q/Q=300/500ml/分でのクレアチニン約50ml/分〜クレアチニン約290ml/分のクレアチニンクリアランス率、
f)Q/Q=300/500ml/分でのナトリウム約30ml/分〜ナトリウム約300ml/分のナトリウムクリアランス率、
g)Q/Q=300/500ml/分でのβ−2−ミクログロブリン約50ml/分〜β−2−ミクログロブリン約250ml/分のβ−2−ミクログロブリンクリアランス率、
h)Q/Q=300/500ml/分でのリゾチーム約50ml/分〜リゾチーム約250ml/分の中分子(リゾチーム)クリアランス率、
i)1%〜10%の吸水度、
の1又は複数を有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様のポリアリールエーテルポリマー繊維。
64. 特性a)〜特性i)の各々を有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様のポリアリールエーテルポリマー繊維。
65. 前記特性の少なくとも2つを有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様のポリアリールエーテルポリマー繊維。
66. 前記特性の少なくとも3つを有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様のポリアリールエーテルポリマー繊維。
67. 前記特性の少なくとも4つを有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様のポリアリールエーテルポリマー繊維。
68. 前記特性の少なくとも5つを有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様のポリアリールエーテルポリマー繊維。
69. 約100μm〜約0.5mmの外径、約100μm〜約0.5mmの内径、約0.001μm〜約250μmの厚み、及び約0.01m〜約1mの長さの繊維形状を有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様のポリアリールエーテルポリマー繊維。
70. 約0.1MPa〜約10MPaの引張強度を有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様のポリアリールエーテルポリマー繊維。
71. スルホンポリマー繊維である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様のポリアリールエーテルポリマー繊維。
72. ポリスルホン繊維である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様のポリアリールエーテルポリマー繊維。
73. 前記紡糸材料が該紡糸材料の重量ベースで4wt%以下の水を含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
74. 前記紡糸材料が該紡糸材料の重量ベースで約0.001wt%〜3wt%の水を含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
75. 前記紡糸材料の外観が透明である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様の方法。
【0078】
本発明は文及び/又は段落に記載される上記及び/又は下記のこれらの様々な特徴又は実施形態の任意の組合せを包含し得る。本明細書に開示される特徴の任意の組合せが本発明の一部であるとみなされ、組み合わせることができる特徴に関しては何ら限定を意図しない。
【0079】
以下の実施例は本発明を更に説明するものであり、当然のことながらその範囲を限定するものとは解釈されない。
【実施例】
【0080】
実施例1
本発明に従って、本実施例により本発明の透析繊維の優れた性能を実証する。
【0081】
透析装置に使用される膜の特性は、紡糸材料又は孔流体中における添加の観点から調査した。
【0082】
以下の表1に記載されるように、紡糸材料又は孔流体中に1又は複数の添加剤を使用することの効果を判断するために様々な実験を行った。使用するポリスルホンは、約75000Da〜86000Daの範囲のMWを有する、Solvay Specialty Polymerにより製造される市販品であるP−3500とした。高MW PVPは、約81〜86のK値範囲を有するISP Chemicals製のポリビニルピロリドンとした。
【0083】
ポリスルホンは、実施例の各々において、およそ同等の量すなわち720gで使用した。実施例の2つを除いた全てにおいて、高MW PVPは180gの量で存在させた。繊維1−5及び繊維1−6では、高MW PVPの代わりに、約46〜約55のK値を有するより低分子量のPVP添加剤を使用した。繊維1−5では、繊維1−5についての紡糸材料中に更に過剰な水を使用したのに対し、繊維1−6についての紡糸材料中に水は使用しなかった。これらの実施例の各々で、紡糸材料は全溶液ベースで約1.8wt%〜2.5wt%の水を有するものとした。
【0084】
より詳細には、繊維1−1及び繊維1−2では、添加剤で孔流体を変更した。繊維1−1では、添加剤を塩、すなわち塩化カルシウムとしたのに対し、繊維1−2では、添加剤を界面活性剤、すなわちPluronic F108界面活性剤とした。
【0085】
繊維1−3では、添加剤、すなわち塩化カルシウムとした塩で紡糸材料を変更した。繊維1−4及び繊維1−7では、高分子電解質で孔流体を変更した。上述の繊維1−5及び繊維1−6では、約46〜約55のK値を有するより低分子量のPVPを用いて紡糸材料を変更し、このPVPを高MW PVPの代わりに使用した。繊維1−7では、高分子電解質を用いて孔流体を変更した。
【0086】
事例の各々において、パイロットラインにおいて透析試験のために繊維を紡糸し、透析装置はeビームによって滅菌した。
【0087】
特性に関しては、標準的な試験手法、すなわちDIN EN1283に従って性能特性を測定した。限外濾過係数(Kuf)は、血液の代わりに水溶液を用いて求めたところ、血流の10%であった。
【0088】
繊維1−1〜繊維1−6の各々において、紡糸材料は紡糸材料の重量で4wt%未満の低分子量PVPを有し、孔流体は孔流体の重量で1wt%未満の低分子量PVPを有するものとした。実際のところこれらの実施例において、紡糸材料及び孔流体は意図的な量の低分子量PVPを全く含有しないものとした。
【0089】
実施例に示すように、ゼータ電位、アルブミンふるい係数(アルブミンSC)、ビタミンB12クリアランス率、ナトリウムクリアランス率及びクレアチニンクリアランス率に加えて、限外濾過係数(Kuf)を求めた。
【0090】
繊維1−1〜繊維1−7の各々について、表1に記載されるような様々な性能特性が許容されると考えられた。さらに、表1に示されるように、添加剤は、1又は複数の性能特性を変える能力を有するものであった。例えば繊維1−7に関して、孔流体中のGafquat高分子電解質は、膜上の表面電荷を変化させる目的で有用となり得るゼータ電位を大きく変える能力を有していた。よって、実施例から、透析装置に使用される繊維の1又は複数の特性、とりわけ性能特性を変え、好ましくは改善させるために、1又は複数の添加剤を用いることによって、孔流体及び/又は紡糸材料を上手く変えることができることが裏付けられた。
【0091】
表1は、本発明による種々の透析繊維の成分及び特性を示すものである。
【0092】
表1:透析繊維の成分及び特性
【表1】
*紡糸材料
NA=入手不可
【0093】
表1に見ることができるように、本発明の繊維は全て1又は複数の好適な性能特性をもたらすものであった。繊維1−5及び繊維1−6は、低MW PVP及び高MW PVPを用いることなく中分子量PVPのみを用いて、許容可能な繊維を作ることができることを示した。中MW PVPは、他のMWクラスのPVPの必要性を排除する能力を有し、また多数の利得を繊維及び繊維特性にもたらす添加剤として機能するものであった。
【0094】
出願人らは、全ての引用文献の全内容を具体的に引用することにより本開示の一部としている。さらに、量、濃度又は他の値若しくはパラメータが範囲、好ましい範囲、又は好ましい上限値と好ましい下限値とのリストのいずれかとして与えられる場合、これは範囲が別々に開示されているかに関わらず、任意の範囲上限又は好ましい値と任意の範囲下限又は好ましい値との任意の対からなる全ての範囲を具体的に開示するものと理解される。数値の範囲が本明細書で言及されている場合、特に指定のない限り、範囲はその端点、並びに範囲内の全ての整数及び少数を含むことが意図される。本発明の範囲は、範囲を規定する場合に言及された特定の値に限定されることは意図されない。
【0095】
本発明の他の実施形態は、本明細書の考察及び本明細書に開示される本発明の実施から当業者にとって明らかであろう。本明細書及び本実施例は単なる例示とみなされ、本発明の真の範囲及び趣旨は添付の特許請求の範囲及びその均等物により示されることが意図される。