特許第5849114号(P5849114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5849114
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月27日
(54)【発明の名称】水流を利用したもやし移送システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 51/01 20060101AFI20160107BHJP
   B65G 53/30 20060101ALI20160107BHJP
【FI】
   B65G51/01
   B65G53/30 Z
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-29479(P2014-29479)
(22)【出願日】2014年2月19日
(65)【公開番号】特開2014-88271(P2014-88271A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年5月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508363074
【氏名又は名称】門馬 直志
(74)【代理人】
【識別番号】100122574
【弁理士】
【氏名又は名称】吉永 貴大
(72)【発明者】
【氏名】門馬 直志
【審査官】 大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−055122(JP,A)
【文献】 特開平03−280847(JP,A)
【文献】 特開平10−057034(JP,A)
【文献】 特開平10−136714(JP,A)
【文献】 実開平02−039643(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G51/01,53/30
A23N1/00−17/02
A01G9/00−9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
もやしを水流に載せて移送するための萌送管と、
もやし育成室内の床面に形成され、水流によりもやし育成室の外にもやしを移送するための移送溝と、
前記移送溝から移送されたもやしを前記もやし育成室外に移送するための流路を有する外付け管と、
前記外付け管から移送されたもやし及び水に遠心力を付与し、渦巻状の流れを形成するための渦巻形成漏斗と、
もやしを前記渦巻形成漏斗から前記萌送管に投入するための投入管と、
前記萌送管から移送されてきたもやしを一時的に集積するためのもやし/水分離水槽と、
を備えた、水流を利用したもやし移送システム。
【請求項2】
さらに、前記もやし/水分離水槽の水を吸引するための水中ポンプと、
水中ポンプから供給された水を前記萌送管に供給するための循環管と、
を備えた、
請求項に記載の水流を利用したもやし移送システム。
【請求項3】
さらに、前記移送溝の上流に水を噴出して水流を発生させるための噴水ノズルを備えた、請求項又はに記載の水流を利用したもやし移送システム。
【請求項4】
前記外付け管が、水流の流速を減じるための曲管部を有する、請求項からのいずれか1項に記載の水流を利用したもやし移送システム。
【請求項5】
前記外付け管の下流端部が、前記渦巻形成漏斗の中心部に開口している穴からずれた位置に設置された、請求項からのいずれか1項に記載の水流を利用したもやし移送システム。
【請求項6】
前記投入管の下流端部が、前記循環管の下流方向に向かって緩やかな湾曲状に形成された、請求項からのいずれか1項に記載の水流を利用したもやし移送システム。
【請求項7】
前記萌送管の内径が、φ150〜φ300mmである、請求項からのいずれか1項に記載の水流を利用したもやし移送システム。
【請求項8】
前記萌送管の一部又は全部が、地中に埋設されてなる、請求項からのいずれか1項に記載の水流を利用したもやし移送システム。
【請求項9】
前記萌送管の横配管時の勾配が、1/100〜1/200である、請求項からのいずれか1項に記載の水流を利用したもやし移送システム。
【請求項10】
前記萌送管、45°の角度を有する2つの曲管部で構成した配管部又は緩やかな湾曲形状に形成された配管部を備えた、請求項からのいずれか1項に記載の水流を利用したもやし移送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、もやし移送システムに関し、具体的には、もやし育成室で育成されたもやしをわずかな労力で移送することが可能な、もやし移送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
古来、もやしの育成は、所定の広さを有する室内に、底部に水切り用の穴が開いた大型の桶やタンク等の容器に洗浄した原料種子を投入し、暗所で温度等の育成環境をコントロールしながら定期的に散水し、1週間から10日前後の育成期間を経て出荷されてきた。育成が終わったもやしは、容器から手で取り出す、容器をひっくり返す、などの方法で容器から取り出して洗浄し、種子殻の除去や根切りなどの処理が行われた後に包装される。もやしはあまり日持ちがしないため、従来はもやしを製造していた場所から比較的近隣の小売店で販売されていた。すなわち、もやし製造業は、各都市に点在する、ある意味ローカルな地域密着型の零細業者によって支えられてきたといえる。
【0003】
近年、もやしを取り巻く環境も、大量生産、大量販売、大量消費へと変化した。その上、いわゆる太もやしの出現などによってもやし育成技術も競争の時代に突入し、一定レベルの品質を維持しながら、大規模化した小売業者からの大量供給と低価格化への要求に応えなければならないという、零細業者にとっては極めて厳しい状況になってきた。
【0004】
もやし育成技術の変化としては、所定の広さを有する室内に小さな樽容器を並べて撒水する「大室方式」と呼ばれる育成室環境から、量販店や消費者からの要求により、生産量の拡大と品質の向上のため、1つの大きな育成室を複数の小さな育成室に区切り、育成日数に合わせて温度や撒水条件などを各育成室ごとに育成環境条件を精緻に調節できる「個室方式」へと変化してきた。その結果、育成が終了したもやしを各育成室からパッケージ作業場へ移送するための手段を検討する必要が生じた。
【0005】
「個室方式」では、育成したもやしを移送する手段として、ベルトコンベアを利用してもやしを移送する「ベルトコンベア方式」か、もやしを仕込んだ容器を荷役機器により容器ごとパッケージ作業場に移動する「移動枠方式」に大別することができる。また、一部の業者では、容器で育成し、場所を固定してあるコンベアに、もやしを載せる場所まで移動させる、いわば個室方式とベルトコンベア方式の組み合わせの折衷方式をとっているところもある。
【0006】
「ベルトコンベア方式」としては、例えば、特開2008−17809号公報には、所定間隔の升目を形成して移動する升目コンベアと、同升目コンベアの下方に同升目コンベアと小間隔を保って走行するベルトコンベアとを有し、同升目コンベアの上に処理すべきもやしを分散状態で供給して移送することで所定長さ以上のもやしを升目コンベア上に残し、未生育なもやし及び所定長さ以下のもやしをベルトコンベア上に分離して除去するもやしの選別装置が開示されている(特許文献1)。
【0007】
また、特開2002−34537号公報には、もやし類を水切りするための水切り装置であって、出口側を高く傾斜させた複数個の無端ベルトコンベアを隣り合うもの同士の出口側と入口側が連なるように直列に配設するとともに、無端ベルトコンベアの表面から付着物を除去するスクレーパと、最初の無端ベルトコンベアに水切りすべきもやし類を供給する供給コンベアとを配設したことを特徴とするもやし類の水切り装置が開示されている(特許文献2)。
【0008】
「移動枠方式」としては、例えば、特開2002−34339号公報に、給水口と、上部に換気用開口と、下部に開閉可能な排水口とを有する栽培容器が開示され、この栽培容器にもやし種子を入れ、排水口を閉じて給水口から給水して内部のもやし種子を冠水させたのち、排水口を開けて排水し併せて内部の換気を行なうことを繰り返すことによるもやしの栽培方法が開示されている(特許文献3)。
【0009】
また、特願平8−336200号公報に、底板、四周の側壁、及び底板から間隔を保ってその上に配置されたスダレ状又は多孔状の底板で構成され、底板には複数個の通気孔と気密排水孔を設けたことを特徴とするもやしの栽培容器が開示されている(特許文献4)。
【0010】
その他の例として、特開平5−260839号公報に、大型の栽培容器内で堆く積み重なって群生した大量のもやしを栽培容器の前面開口から掻き出すものであって、栽培容器の前方側を前後左右に移動可能に設置されたロボット本体と、このロボット本体のハンドに取り付けられたすきとを備え、すきを栽培容器内で下降させながらロボット本体を適宜移動させてもやしを栽培容器の前面開口から掻き出すという動作を繰り返すもやし掻き出しロボットが開示されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−17809号公報
【特許文献2】特開2002−34537号公報
【特許文献3】特開2002−34339号公報
【特許文献4】特願平8−336200号公報
【特許文献5】特開平5−260839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
「ベルトコンベア方式」は、育成室からパッケージ作業場まで、何台ものベルトコンベアを設置する(並べ繋げる)もので、次の育成室のもやしを移送する場合は、再度ベルトコンベアを設置し直す作業が生じるとともに、日常のベルトコンベアの衛生管理やコンベアのゴムベルト又はベアリング部の維持管理の負担も大きい。また、ベルトコンベアを使用しないときはその保管場所に広いスペースが必要で、仮にそのままもやし育成室前の通路に保管する場合であっても、通路のスペースを大きく占領するという問題がある。さらに、ベルトコンベアの繋ぎ部では前後のコンベアの高低差による搬送中のもやしの落下が生じるため、繋ぎ部が多ければそれだけ、もやしが折れるという品質不良が発生するリスクも高くなり、「くず」が入ったと言われるようなクレームの元にもなる。さらにまた、2台のベルトコンベアの設置時には、コンベアの荷重により、移動取り扱い時の建屋床部への破損傷が発生することが多くなる。また、育成室内でもやしをベルトコンベアに載せる作業(もやし出し作業)は腰に負担がかかり、もやし出し作業による腰痛はもやし業界の職業病といっても過言ではない。加えて、ベルトコンベアを稼働するために必要な電力や防水電源コンセントの設置のためのコストも発生する。
【0013】
そのため、もやし業界では実際には「大室移動枠方式」か「個室移動枠方式」などの移動枠方式を採用する場合が断然多い。しかしながら、「移動枠方式」では、工場通路内の狭い空間でのフォークリフト、手動あるいは電動のリフター、またはプラッター等々の荷役機器の運転操作は、事故や建屋床部や腰板部の破壊・破損に通じ、イニシャルコストもかかる上にその荷役機器の車輪やベアリングのメンテナンス費用や労力がかかるという問題がある。また、「ベルトコンベア方式」と比較して、もやし育成室の撒水する面積に比べてもやしの育成量が制限される(もやしの育成量が少ない)という問題や、工場建設時の費用も、移動枠自体の値段も高くプラスチックでは経時変化による劣化もあり育成室内面積も広い為に撒水機も大型化し、撒水量も多く掛かる等々、イニシャルである建設時費用が相当に高くなるという問題もある。
【0014】
そのため、もやし栽培法の一種である「個室方式」におけるもやし移送手段で問題となっていた、イニシャルコストとランニングコストを抑えた経済的な移送手段であって、移送時のもやしの損傷や品質劣化が起きにくく、もやし移送作業に伴う現場作業労働者の身体の負担を軽減するような移送手段の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明は、もやし育成室で育成されたもやしを移送するためのシステムであって、水の流れを利用してもやしを所定の場所に移送するための流路を備えた、水流を利用したもやし移送システムを提供するものである。
【0016】
具体的には、もやしを水流に載せて移送するための萌送管と、もやし育成室内の床面に形成され、水流によりもやし育成室の外にもやしを移送するための移送溝と、移送溝から移送されたもやしをもやし育成室外に移送するための流路を有する外付け管と、外付け管から移送されたもやし及び水に遠心力を付与し、渦巻状の流れを形成するための渦巻形成漏斗と、もやしを前記萌送管に投入するための投入管と、もやしと水とを分離するためのもやし/水分離水槽と、を備えた、もやし移送システムを提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の水流を利用したもやし移送システムによれば、もやしを水流に載せて移送するシステムであるため、ベルトコンベア、栽培容器などの移動枠、荷役機器などの重機によるイニシャルコストとそのランニングコストが、動力に用いるのが2馬力(1.5Kw)程度の水中ポンプ1台のみであり、極めて経済的である。
【0018】
また、水流で移送するため移送時のもやしの損傷が起き難く、脱殻作業や根切り作業も同時にできるため後々の洗浄工程でも効率的である。
【0019】
さらに、もやしを水流に落とし込むだけでよいため、作業従事者はもやし移送作業に伴う重労働から解放され、もやし出庫作業従事者の身体の負担が大きく軽減されることにより、従来、屈強な男性のみで行なっていた作業が、女性でも作業できるようになる。
【0020】
建設時の通路のスペースも少なくて済む上に、ベルトコンベアなどの装置が不要になるため、整頓、整理が容易となり、衛生的な環境を維持しやすくなる。
【0021】
また、通路の腰板部の破損防止の防御パイプも不要であるため、作業終了時の通路の掃除も簡単である。
【0022】
もやしの落ちこぼれが殆んど無いため通路流し清掃作業も簡単で短時間で済み、もやし滓が残るようなことも無く、職場の衛生環境も大きく改善される。
【0023】
また、もやし/水分離水槽は、前記の出庫作業のどの方式でも、育成済みのもやしは殆んど水槽に投入する作業から始められるが、本発明のシステムも、もやしと水の分離用ステンレス製漉し網部があればよく、コストも特に負担分は増えることはない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態のもやし移送システム1の概略を説明するための概略図である。
図2図1のX−X線断面図である。
図3図1のY−Y線断面図である。
図4】渦巻形成漏斗と外付け管を示す平面図である。
図5】もやし育成室10内においてもやし30を移送する様子を説明するための図である。
図6】外付け管4から渦巻形成漏斗5へもやし30が流れて行く様子を説明するための図である。
図7】渦巻形成漏斗5から投入管6を介してもやし30が萌送管2によって移送される様子を示した図である。
図8】萌送管2によって移送されてきたもやし30がもやし/水分離水槽40に流入する様子を示す図である。
図9】移送されたもやし30がコンベア26によってもやし/水分離水槽40から回収される様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のもやし移送システムは、もやし育成室で育成されたもやしを移送するためのシステムであって、水の流れを利用してもやしを所定の場所に移送するための流路を備えたことを特徴としている。
【0026】
前記流路は、もやし育成室の内部に形成されていても、外部に形成されていても、両方に形成されていてもよく、その流路に水を流すことができ、もやしをその水流に載せて移送できるものであれば、その直径、材質等に特に制限はない。
【0027】
もやし育成室の内部に形成される流路は、例えば、もやし育成室の床面にハーフパイプ状の溝を形成し、その溝に水を流して水流を形成すると共に、溝にもやしを落とし込んで水流にもやしを載せて移送することができる。
【0028】
もやし育成室の外部に形成される流路は、例えば、通路上にパイプを設置し、そこに水を流してもやし育成室からもやしを投入するようにしてもよいし、通路の床面にハーフパイプ状の溝を形成し、その溝に水を流してもやしを投入してもよいし、パイプを地面に埋設して、その地中のパイプに水を流してそこにもやしを投入するようにしてもよい。
【0029】
なお、もやし育成室内の流路と、もやし育成室外の流路を接続して、連続的にもやしを移送するように構成してもよい。
【0030】
前記流路は、もやしを任意の場所に簡便に移送することができるため、移送先は任意に設定することができるが、通常、育成されたもやしは包装工程に供されるため、もやしと水とを分離するためのもやし/水分離水槽に移送されることが好ましい。
【0031】
もやしと水とを分離した後の水は、そのまま排水してもよいが、ろ過を行って雑物を除去した後、再び上流に戻してもやしを移送するための循環水としてもよい。水を循環させるには、例えば、もやし/水分離水槽にポンプを設置し、ポンプにより水を吸引して前記流路の上流に水を移動すればよい。もやし製造業は撒水にも、パッケージの際にも水を多量使うため、水の倹約のためにも循環水方式の方が望ましい。
【0032】
次に、本発明の実施形態について、図を参照しつつ更に詳細に説明する。
【0033】
図1は本実施形態の水流を利用したもやし移送システム1の概略を説明するための概略図である。図2図1のX−X線断面図であって、萌送管2の埋設状態を示す図である。図3図1のY−Y線断面図であって、もやし育成室10(10a)を側面から見た図である。図4は渦巻形成漏斗5と外付け管4の平面図である。
【0034】
本実施形態に係るもやし移送システム1は、萌送管2、移送溝3、外付け管4、渦巻形成漏斗5、投入管5、ポンプ7、循環管8を備えている。
【0035】
萌送管2は、もやし育成室10、20の外に設置され、もやしを水流に載せて移送するためのものであり、内部に水を移送するための流路を有している。萌送管2の内径は、移送するもやしの量や水量等に応じて適宜設定することができるが、本実施形態においては、ブリッジの出来難い水の使用量や時間当たりの経済的なもやし移送量の現実的なバランスを考慮すれば、管の口径はφ150〜φ300mmであることが好ましい。
【0036】
萌送管2の材質は一般的な管の材料に使用される材質を使用することができ、例えば、塩化ビニル(VP管やVU管)、ステンレス、PET樹脂、コンクリート等を利用することが好ましい。
【0037】
萌送管2の設置は、上流から下流にかけて緩やかな勾配を設けることが好ましい。具体的には、例えば、配管の勾配は1/100〜1/200とすることが好ましい。萌送管2の配管の勾配を1/100〜1/200とすることで、水とともにもやしがスムーズに移動し、目詰まり(ブリッジ)を未然に防止することができる。一方、配管の勾配を急勾配とすると却ってもやしと水との分離が起き易く目詰まりしやすくなるため好ましくない。
【0038】
萌送管2は、工場の設計の都合に応じて、壁面、天井、地中に配管することができるが、本実施形態においては、図1及び図2に示すように、地中に埋設されている。
【0039】
なお、萌送管2は、もやしが目詰まりせずスムーズに移送されるように、萌送管2の直角配管部2aに代えて、45°の角度を有する2つの曲管部で構成した配管部(図示せず)又は緩やかな湾曲形状に形成された配管部(図示せず)にすることもできる。
【0040】
移送溝3は、もやし育成室10、20内の床面の略中央に形成され、水流によりもやし育成室10の外にもやしを移送するためのものである。溝の形状は、もやしをスムーズに移送する観点からは断面が半円状のハーフパイプ形状とすることが好ましいが、これに限定されることはなく、例えば、上開きコ状、U字、V字状等であってもよい。
【0041】
移送溝3に供給する水は、ホース等を用いて上流から下流へ向けて水を流す方法でもよいが、より効率的にもやし育成室からもやしを外に移送するため、移送溝3の上流端部3aに水を噴出して水流を発生させるための噴水ノズル12を設け、水供給部14から水供給管16を介して水を供給し、噴水ノズル12から水を噴射することが好ましい。なお、図示しないが、後述する循環管8の水を誘導してもよい。
【0042】
外付け管4は、移送溝3から移送されたもやしをもやし育成室10、20の外に移送するためのものである。外付け管4は容易に移動できるように着脱可能になっており、上流端部4aが移送溝3の下流端部3bに設置され、下流端部4bが後述する渦巻形成漏斗5内に設置される。
【0043】
外付け管4の基本構成は円筒状のパイプであるが、図4に示す外付け管4は、その両端部が断面が半円形状に形成され、流路4aが視認できるようになっている。また、外付け管4は曲管部のない真っ直ぐな形状としてもよいが、水流の流速を減じ、もやしや水の飛散を防止するための曲管部4dを設けることが好ましい。この曲管部4dの角度は水流の流速に応じて適宜設定することができる。
【0044】
外付け管4の材質は一般的な管の材料に使用される材質を使用することができ、例えば、塩化ビニル(VP管、VU管)、ステンレス、PET樹脂、コンクリート等を利用することが好ましい。
【0045】
渦巻形成漏斗5は、外付け管4から移送されたもやし及び水に遠心力を付与し、渦巻状の流れを形成するためのものである。全体形状は、図3に示すように、逆円錐形の本体部5aと、円錐の先端から伸びる管状部5bから構成される。管状部5bは後述する投入管6の内径に嵌合できる程度の直径を有している。
【0046】
また、渦巻形成漏斗5の側面には、先述した外付け管4の下流端部4bが挿入可能な開口部5cが形成され、使用時には外付け管4の下流端部4bが挿入され、投入管6と外付け管4によって固定される。
【0047】
ここで、渦巻形成漏斗5における外付け管4の下流端部4bは、渦巻形成漏斗5の中心部に開口している穴5dからずれた位置に設置されることが好ましい。すなわち、渦巻きが形成されやすいように、外付け管4の下流端部4bは、本体部5aの側壁面により近い位置に設置されることが好ましい。
【0048】
渦巻形成漏斗5の材質は一般的な管の材料に使用される材質を使用することができ、例えば、塩化ビニル(VP管、VU管)、ステンレス、PET樹脂等を利用することが好ましい。
【0049】
投入管6は、もやしを萌送管2に投入するためのものであり、萌送管2から垂直方向に延設され、上端部6aが渦巻形成漏斗5の管状部5bを軸支するように構成されている。また、図2に示すように、投入管6の下端部6bは、萌送管2の下流方向(図2においては図面右方向)に向かって緩やかな湾曲状に形成されることが好ましい。このような形状にすることで、もやしを投入した際にもやしが積層し萌送管2内部に橋を架け渡したような目詰まりが形成される、いわゆるブリッジと呼ばれる不具合を事前に回避することができる。
【0050】
投入管6の数は任意に設定することができ、例えば図1及び図2に示すようにもやし育成室10ごとに1つづつ設けてもよいし、図示しないが複数のもやし育成室で1つの投入管6を共用してもよい。なお、使用していない投入管6は、上端部6aの開口部から異物が混入しないように、キャップ18などでカバーしておくことが好ましい。
【0051】
もやし/水分離水槽40は、萌送管2によって移送されたもやしを一時的に集積する場所である。もやし育成室10、20から搬出されたもやしは、水流で撹拌されながらもやし/水分離水槽40に移送されるため、その過程で脱殻や根切りも行われる。また、未熟なもやしは成熟したもやしよりも比重が重いため水に沈む。そのため、浮遊物はもやし/水分離水槽40内に回転可能に設置されたローラー22、23おいて取り除き、沈降物はもやし/水分離水槽40の底に形成された排出口(図示せず)から排出する。そして、精製されたもやしはコンベア26により掻き取られ、包装工程に供される。
【0052】
ポンプ7は、水を循環して循環(ループ)水流を発生させるためのものである。萌送管2から流れてきた水は、もやし/水分離水槽40から排出してもよいが、図1に示すように、ポンプ7がもやし/水分離水槽40から水を吸い上げ、後述する循環管8を介して萌送管2に水を供給し、矢印方向に水を移送して再びもやし/水分離水槽40に戻り、いわゆる水流のサーキットを形成することもできる。なお、本実施形態においては、ポンプ7の数は1つであるが、複数のポンプ7を任意の場所に設置してもよい。
【0053】
循環管8は、もやし/水分離水槽40から吸い上げられた水を萌送管2に供給するためのものである。循環管8は横配管でも縦配管でもよく、もやし工場の設計によって適宜変更することができる。なお、図示しないが、循環管8をもやし育成室10、20に接続し、移送溝3の上流端部3aから水を噴出するように構成してもよい。
【0054】
次に、図5から図9に従い、循環(ループ)水流を利用してもやし育成室10からもやし/水分離水槽40にもやしを移送する実施例について、順を追って説明する。
【0055】
図5はもやし育成室10内においてもやし30を移送する様子を説明するための図である。実際には、もやし育成中は移送溝3の上に多数の穴が形成されたカバー(図示せず)が覆っており、図はもやしの育成が終了し移送時にカバーを取り外した状態を示している。
【0056】
もやし育成室10からもやしを搬出するには、移送溝3の上流端部3aに設けられた噴水ノズル12から水を勢いよく噴出し、移送溝3に水の流れを形成する。そして、もやし30を移送溝3に落としてもやしを循環(ループ)水流に乗せていく。
【0057】
このように、もやし育成室10からもやしを搬出するには移送溝3にもやしを落としていけばよいため、もやしを移送する負担が大幅に軽減される。
【0058】
図6は外付け管4から渦巻形成漏斗5へもやし30が流れて行く様子を説明するための図である。外付け管4の下流端部4bは渦巻形成漏斗5に形成された開口部5cから本体部5aの側壁面付近に設置され、これにより水と共にもやし30が流入した際に渦巻を形成しながらもやし30が穴5d(投入管6)に流れ込んでいく。
【0059】
図7は渦巻形成漏斗5から投入管6を介してもやし30が萌送管2によって移送される様子を示した図である。萌送管2の上流からは、常時、所定の流速を有する水が流れており、投入管6から流れてきたもやし30が本流と合流して下流へ移送される。ここまでの過程で、もやし30付着していた殻やひげ状の根が水流による撹拌によって除去されていく。
【0060】
図8は萌送管2によって移送されてきたもやし30がもやし/水分離水槽40に流入する様子を示す図である。移送過程で精製されたもやし30は、ここで一時的に集積される。殻や根などの浮遊物は図示しないローラー22、23等によって除去され、未成熟のもやしなどの沈降物は排出口等から排出される。
【0061】
図9は精製されたもやし30がコンベア26によってもやし/水分離水槽40から回収される様子を示した図である。もやし30はこの後、清浄水で種子の殻や切れた根を取り除きながら洗浄され、さらにもやしの表面に付着している余分な水が除去されて袋詰めされる。一方、もやし/水分離水槽40の縁には循環管8とポンプ7が設置され、フィルター等により雑物等を除去した後、もやし/水分離水槽40の水を循環管8に供給して再度循環させる。
【符号の説明】
【0062】
1…もやし移送システム
2…萌送管
2a…直角配管部
3…移送溝
3a…上流端部
3b…下流端部
4…外付け管
4a…上流端部
4b…下流端部
4c…流路
4d…曲管部
5…渦巻形成漏斗
5a…本体部
5b…管状部
5c…開口部
5d…穴
6…投入管
6a…上端部
6b…下端部
7…ポンプ
8…循環管
10、20…もやし育成室
12…噴水ノズル
14、15…水供給部
16、17…水供給管
18…キャップ
22、23…ローラー
26…コンベア
40…もやし/水分離水槽
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9