特許第5849249号(P5849249)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5849249
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年1月27日
(54)【発明の名称】出力補正装置、方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/00 20060101AFI20160107BHJP
【FI】
   G06T1/00 340B
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-275889(P2011-275889)
(22)【出願日】2011年12月16日
(65)【公開番号】特開2013-125530(P2013-125530A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000210964
【氏名又は名称】中央電子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000113665
【氏名又は名称】マスプロ電工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100078824
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 竹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100166051
【弁理士】
【氏名又は名称】駒津 啓佑
(74)【代理人】
【識別番号】100158883
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 哲平
(72)【発明者】
【氏名】松崎 智彦
(72)【発明者】
【氏名】平井 晴之
(72)【発明者】
【氏名】新倉 広高
(72)【発明者】
【氏名】武田 政宗
(72)【発明者】
【氏名】荒川 孝
(72)【発明者】
【氏名】高橋 順一
(72)【発明者】
【氏名】遠松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘康
(72)【発明者】
【氏名】澤谷 邦男
(72)【発明者】
【氏名】水野 皓司
【審査官】 新井 則和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−281737(JP,A)
【文献】 特開2006−148205(JP,A)
【文献】 特開平06−038217(JP,A)
【文献】 特開2001−154646(JP,A)
【文献】 特開2010−008273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00−7/60
G01S 7/03
G01S 13/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラインセンサを走査する撮像装置における前記ラインセンサを構成する撮像素子からの信号出力を補正する出力補正装置において、
撮像範囲における撮像対象が必ず入るであろうあらかじめ設定された範囲である測定エリアに前記撮像対象が入ったかを判断する対象判断手段と、
前記対象判断手段が前記測定エリアに撮像対象がいないと判断すると、背景温度を記憶する背景温度記憶手段と、
前記対象判断手段が前記測定エリアに撮像対象が入ったと判断すると、前記測定エリアにおける撮像対象部分を検出する対象検出手段と、
前記対象検出手段が検出した前記撮像対象部分以外の部分の背景温度を前記背景温度記憶手段から読み出し、前記撮像対象部分以外の部分の温度との差分を算出する差分算出手段と、
前記差分算出手段が算出した前記差分と、前記対象検出手段が検出した前記撮像対象部分の背景温度とから、前記撮像対象部分の背景温度を推定する温度推定手段と、
前記温度推定手段が推定した前記撮像対象部分の背景温度と、前記撮像対象部分の温度との間で前記信号出力をスケーリングするスケーリング手段と、
を備えることを特徴とする出力補正装置。
【請求項2】
前記撮像対象が人であることを特徴とする請求項1記載の出力補正装置。
【請求項3】
前記撮像素子がミリ波を受信するための撮像素子であることを特徴とする請求項1記載の出力補正装置。
【請求項4】
前記スケーリング手段が、
256階調で前記スケーリングを行うことを特徴とする請求項1記載の補正装置。
【請求項5】
ラインセンサを走査する撮像装置における前記ラインセンサを構成する撮像素子からの信号出力を補正する出力補正方法において、
対象判断手段が、撮像範囲における撮像対象が必ず入るであろうあらかじめ設定された範囲である測定エリアに前記撮像対象が入ったかを判断するステップと、
背景温度記憶手段が、前記対象判断手段が前記測定エリアに撮像対象がいないと判断すると、背景温度を記憶するステップと、
対象検出手段が、前記対象判断手段が前記測定エリアに撮像対象が入ったと判断すると、前記測定エリアにおける撮像対象部分を検出するステップと、
差分算出手段が、前記対象検出手段が検出した前記撮像対象部分以外の部分の背景温度を前記背景温度記憶手段から読み出し、前記撮像対象部分以外の部分の温度との差分を算出するステップと、
温度推定手段が、前記差分算出手段が算出した前記差分と、前記対象検出手段が検出した前記撮像対象部分の背景温度とから、前記撮像対象部分の背景温度を推定するステップと、
スケーリング手段が、前記温度推定手段が推定した前記撮像対象部分の背景温度と、前記撮像対象部分の温度との間で前記信号出力をスケーリングするステップと、
を含むことを特徴とする出力補正方法
【請求項6】
ラインセンサを走査する撮像装置の前記ラインセンサを構成する撮像素子からの信号出力を補正する出力補正プログラムにおいて、
コンピュータを、
撮像範囲における撮像対象が必ず入るであろうあらかじめ設定された範囲である測定エリアに前記撮像対象が入ったかを判断する対象判断手段、
前記対象判断手段が前記測定エリアに撮像対象がいないと判断すると、背景温度を記憶する背景温度記憶手段、
前記対象判断手段が前記測定エリアに撮像対象が入ったと判断すると、前記測定エリアにおける撮像対象部分を検出する対象検出手段、
前記対象検出手段が検出した前記撮像対象部分以外の部分の背景温度を前記背景温度記憶手段から読み出し、前記撮像対象部分以外の部分の温度との差分を算出する差分算出手段、
前記差分算出手段が算出した前記差分と、前記対象検出手段が検出した前記撮像対象部分の背景温度とから、前記撮像対象部分の背景温度を推定する温度推定手段、
前記温度推定手段が推定した前記撮像対象部分の背景温度と、前記撮像対象部分の温度との間で前記信号出力をスケーリングするスケーリング手段、
として機能させることを特徴とする出力補正プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力補正装置、方法、およびプログラムに関し、特にラインセンサを走査する撮像装置における前記ラインセンサを構成する撮像素子からの信号出力を補正する出力補正装置、方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラインセンサを走査して1枚の画像作りを行う撮像方法がある(たとえば、特許文献1参照)。このような撮像方法は、ラインセンサを構成する撮像素子が特殊であって高価なものが用いられる場合に特に有効である。つまり、少ない撮像素子を用いて広角かつ高精細な画像を撮像することができるため、特殊な撮像素子を用いることが要求されても低コストで特殊な撮影をすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−254980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のようなラインセンサを走査して1枚の画像作りを行う撮像方法によると、ラインセンサを構成する撮像素子からの信号出力にバラつきがあると、走査して生成した画像に、走査方向に伸びる縞模様が生じてしまうという問題があった。
【0005】
二次元に配列された撮像素子を用いて走査を行うことなく画像を生成するときは、それぞれの撮像素子の信号出力にバラつきがあったとしても、その1点1点でバラつきが生じるのみで、上記縞模様が生じてしまうという問題は起こらない。つまり、撮像素子からの信号出力のバラつきによって画像に縞模様が生じてしまうのは、ラインセンサを走査して画像作りを行う撮像方法特有の問題である。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、ラインセンサを走査して生成した画像に走査方向に伸びる縞模様が現れることを防止することができる出力補正装置、方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では上記問題を解決するために、ラインセンサを走査する撮像装置における前記ラインセンサを構成する撮像素子からの信号出力を補正する出力補正装置において、撮像範囲における撮像対象が必ず入るであろうあらかじめ設定された範囲である測定エリアに前記撮像対象が入ったかを判断する対象判断手段と、前記対象判断手段が前記測定エリアに撮像対象がいないと判断すると、背景温度を記憶する背景温度記憶手段と、前記対象判断手段が前記測定エリアに撮像対象が入ったと判断すると、前記測定エリアにおける撮像対象部分を検出する対象検出手段と、前記対象検出手段が検出した前記撮像対象部分以外の部分の背景温度を前記背景温度記憶手段から読み出し、前記撮像対象部分以外の部分の温度との差分を算出する差分算出手段と、前記差分算出手段が算出した前記差分と、前記対象検出手段が検出した前記撮像対象部分の背景温度とから、前記人物部分の背景温度を推定する温度推定手段と、前記温度推定手段が推定した前記人物部分の背景温度と、前記人物部分の温度との間で前記信号出力をスケーリングするスケーリング手段とを備えることを特徴とする出力補正装置が提供される。
【0008】
これにより、対象判断手段が、撮像範囲における撮像対象が必ず入るであろうあらかじめ設定された範囲である測定エリアに前記撮像対象が入ったかを判断し、背景温度記憶手段が、前記対象判断手段が前記測定エリアに撮像対象がいないと判断すると、背景温度を記憶し、対象検出手段が、前記対象判断手段が前記測定エリアに撮像対象が入ったと判断すると、前記測定エリアにおける撮像対象部分を検出する。そして、差分算出手段が、前記対象検出手段が検出した前記撮像対象部分以外の部分の背景温度を前記背景温度記憶手段から読み出し、前記撮像対象部分以外の部分の温度との差分を算出し、温度推定手段が、前記差分算出手段が算出した前記差分と、前記対象検出手段が検出した前記撮像対象部分の背景温度とから、前記人物部分の背景温度を推定し、スケーリング手段が、前記温度推定手段が推定した前記人物部分の背景温度と、前記人物部分の温度との間で前記信号出力をスケーリングする。
【0009】
また、本発明では、ラインセンサを走査する撮像装置における前記ラインセンサを構成する撮像素子からの信号出力を補正する出力補正方法において、対象判断手段が、撮像範囲における撮像対象が必ず入るであろうあらかじめ設定された範囲である測定エリアに前記撮像対象が入ったかを判断するステップと、背景温度記憶手段が、前記対象判断手段が前記測定エリアに撮像対象がいないと判断すると、背景温度を記憶するステップと、対象検出手段が、前記対象判断手段が前記測定エリアに撮像対象が入ったと判断すると、前記測定エリアにおける撮像対象部分を検出するステップと、差分算出手段が、前記対象検出手段が検出した前記撮像対象部分以外の部分の背景温度を前記背景温度記憶手段から読み出し、前記撮像対象部分以外の部分の温度との差分を算出するステップと、温度推定手段が、前記差分算出手段が算出した前記差分と、前記対象検出手段が検出した前記撮像対象部分の背景温度とから、前記人物部分の背景温度を推定するステップと、スケーリング手段が、前記温度推定手段が推定した前記人物部分の背景温度と、前記人物部分の温度との間で前記信号出力をスケーリングするステップとを含むことを特徴とする出力補正方法が提供される。
【0010】
これにより、対象判断手段が、撮像範囲における撮像対象が必ず入るであろうあらかじめ設定された範囲である測定エリアに前記撮像対象が入ったかを判断し、背景温度記憶手段が、前記対象判断手段が前記測定エリアに撮像対象がいないと判断すると、背景温度を記憶し、対象検出手段が、前記対象判断手段が前記測定エリアに撮像対象が入ったと判断すると、前記測定エリアにおける撮像対象部分を検出する。そして、差分算出手段が、前記対象検出手段が検出した前記撮像対象部分以外の部分の背景温度を前記背景温度記憶手段から読み出し、前記撮像対象部分以外の部分の温度との差分を算出し、温度推定手段が、前記差分算出手段が算出した前記差分と、前記対象検出手段が検出した前記撮像対象部分の背景温度とから、前記人物部分の背景温度を推定し、スケーリング手段が、前記温度推定手段が推定した前記人物部分の背景温度と、前記人物部分の温度との間で前記信号出力をスケーリングする。
【0011】
また、本発明では、ラインセンサを走査する撮像装置の前記ラインセンサを構成する撮像素子からの信号出力を補正する出力補正プログラムにおいて、コンピュータを、撮像範囲における撮像対象が必ず入るであろうあらかじめ設定された範囲である測定エリアに前記撮像対象が入ったかを判断する対象判断手段、前記対象判断手段が前記測定エリアに撮像対象がいないと判断すると、背景温度を記憶する背景温度記憶手段、前記対象判断手段が前記測定エリアに撮像対象が入ったと判断すると、前記測定エリアにおける撮像対象部分を検出する対象検出手段、前記対象検出手段が検出した前記撮像対象部分以外の部分の背景温度を前記背景温度記憶手段から読み出し、前記撮像対象部分以外の部分の温度との差分を算出する差分算出手段、前記差分算出手段が算出した前記差分と、前記対象検出手段が検出した前記撮像対象部分の背景温度とから、前記人物部分の背景温度を推定する温度推定手段、および前記温度推定手段が推定した前記人物部分の背景温度と、前記人物部分の温度との間で前記信号出力をスケーリングするスケーリング手段、として機能させることを特徴とする出力補正プログラムが提供される。
【0012】
これにより、対象判断手段が、撮像範囲における撮像対象が必ず入るであろうあらかじめ設定された範囲である測定エリアに前記撮像対象が入ったかを判断し、背景温度記憶手段が、前記対象判断手段が前記測定エリアに撮像対象がいないと判断すると、背景温度を記憶し、対象検出手段が、前記対象判断手段が前記測定エリアに撮像対象が入ったと判断すると、前記測定エリアにおける撮像対象部分を検出する。そして、差分算出手段が、前記対象検出手段が検出した前記撮像対象部分以外の部分の背景温度を前記背景温度記憶手段から読み出し、前記撮像対象部分以外の部分の温度との差分を算出し、温度推定手段が、前記差分算出手段が算出した前記差分と、前記対象検出手段が検出した前記撮像対象部分の背景温度とから、前記人物部分の背景温度を推定し、スケーリング手段が、前記温度推定手段が推定した前記人物部分の背景温度と、前記人物部分の温度との間で前記信号出力をスケーリングする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の出力補正装置、方法、およびプログラムによれば、スケーリング手段が、撮像素子ごとに、空間温度と、人体温度との間で信号出力をスケーリングするので、各撮像素子の信号出力が補正され、ラインセンサを走査して生成した画像に走査方向に伸びる縞模様が現れることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の形態に適用される発明のブロック図である。
図2】撮像範囲における電波吸収体、および測定エリアの位置関係について説明する模式図である。
図3】測定エリアに人がいるときといないときの測定方法について説明する図である。
図4】補正モデルを表すグラフである。
図5】スケーリング後の出力結果の一例を示す図である。
図6】ミリ波パッシブ撮像装置100が行う撮影処理に伴う画像処理部150(特に、補正値算出・更新処理部151)が行う出力補正処理の手順を示すフローチャートである。
図7】ミリ波パッシブ撮像装置100が行う撮影処理に伴う画像処理部150(特に、補正値算出・更新処理部151)が行う出力補正処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の形態に適用される発明のブロック図である。
図1に示すように、本実施の形態に係るミリ波パッシブ撮像装置100は、振動リフレクタ部110、ラインセンサ120、同期・アドレス生成部130、変換部140、および画像処理部150を備える。
【0016】
振動リフレクタ部110は、首振り動作を行う振動リフレクタ111と、首振り動作のタイミングを伝えるための水平同期パルスを発するパルス生成部112を備えている。
【0017】
ラインセンサ120は、人10などの撮影対象が発するミリ波を振動リフレクタ111を介して受信する。ラインセンサ120は、水平方向に撮像素子が並ぶように配置されており、振動リフレクタ111が上下の首振り動作を行うことにより、人10などの撮影対象の各部が走査され、適宜ラインセンサ120によってミリ波が受信される。
【0018】
人10などの撮影対象の背後には電波吸収体11を設ける。これは撮影対象の背後方向から放射されてくるミリ波を遮断し、撮像対象方向から放射されてくるミリ波を吸収することにより外来ノイズがラインセンサ120によって受信されないようにするためである。
【0019】
同期・アドレス生成部130は、パルス生成部112から水平同期パルスを受け取ると、ラインセンサ120とフレームメモリ142に同期信号およびメモリアドレスを生成して送信する。ラインセンサ120は、受け取った同期信号に基づいて変換部140に受信したミリ波に基づくアナログ電圧を出力する。
【0020】
変換部140は、A/D変換回路141とフレームメモリ142を備え、ラインセンサ120から出力されたアナログ電圧がA/D変換回路141によりデジタル化され、同期・アドレス生成部130が生成したメモリアドレスに基づいてフレームメモリ142に記憶される。これによって、振動リフレクタ111が首振り動作して走査され、ラインセンサ120が撮像した各水平ラインのデータが2次元画像データとしてフレームメモリ142に記憶される。
【0021】
画像処理部150は、補正値算出・更新処理部151、補正値メモリ152、補正部153、および出力処理部154を備えている。
【0022】
補正値算出・更新処理部151は、フレームメモリ142に記憶された2次元画像データを読み出して補正値を算出し、算出した補正値を補正値メモリ152に記憶・更新する。
【0023】
補正部153は、補正値メモリ152に記憶された補正値に基づいてフレームメモリ142に記憶された画像データを補正し、出力処理部154を介してモニタ20などの表示装置に出力される。
これにより、リアルタイムに適宜補正された画像データが出力されて表示される。
次に、ミリ波パッシブ撮像装置100が行う撮影処理およびそれに伴う画像処理部150が行う画像処理について説明する。
【0024】
図2は、撮像範囲における電波吸収体、および測定エリアの位置関係について説明する模式図である。
図2に示すように、撮影対象である人10は、電波吸収体11の前に立って撮影される。電波吸収体11における撮影方向から見たとき撮影対象である人10が入ると想定される範囲に測定エリアが設定される。
【0025】
図3は、測定エリアに人がいるときといないときの測定方法について説明する図である。
当然のことではあるが、背景測定時(つまり、測定エリアに人10がいないとき)には測定エリア全面の背景温度(電波吸収体11が発するミリ波強度)を測定することができるが、人体測定時(つまり、測定エリアに人10がいるとき)には、人体測定時における測定エリア全面の背景温度は測定できない。つまり、測定エリアにおける人10が映る部分の背景温度は測定できない。
【0026】
本実施の形態に係る発明においては、各撮像素子ごとに人体温度と背景温度との間で撮像素子の信号出力をスケーリングするが、人10を映している画素については当然そのときの背景温度を測定できずスケーリングをすることができない。
【0027】
さらに、当該画素における背景温度を背景測定時に測定しているが、当該背景温度を用いて必ずしも適切なスケーリングができるとは限らない。なぜなら、ミリ波は物体の温度に応じて放射強度が変化するが、電波吸収体11の温度が背景測定時と人体測定時とで同一であるとは限らず(つまり、受信できるミリ波強度が同一であるとは限らない)、たとえば背景測定時の電波吸収体11の温度を用いてスケーリングを行うことが適切であるとは限らないからである。したがって、人体測定時における人10の部分の背景温度は推定を行い、その推定した背景温度を用いてスケーリングを行う。この詳細については後述する。
【0028】
次に、上記構成の撮影システムによりラインセンサの出力を補正するときの補正モデルについて、図4を用いて説明する。
【0029】
図4は、補正モデルを表すグラフである。
図4に示すように、横方向のある左からi番目の画素における人体温度基準の電界強度A〔i〕と、空間温度基準の電界強度B〔i〕との間で補正モデルをy=Cx+Dとして当該画素の電界強度をスケーリングすることにより、横方向の何番目にある画素であっても同一温度で同一の値が出力されるように補正される。
【0030】
測定エリアにおいて、人10を撮像する撮像素子の信号出力については通常通りスケーリングができるが、電波吸収体11を撮像する撮像素子の信号出力についてはスケーリングをすることができない。したがって、人10を撮像する撮像素子を特定し、当該撮像素子のみスケーリングが行われる。この詳細については後述する。なお、本実施の形態においては、256階調でスケーリングする例を示している。
【0031】
図5は、スケーリング後の出力結果の一例を示す図である。
図5に示すように、空間温度と人体温度との間でスケーリングを行うと、人物が所持している所持物の温度は空間温度より高く、人体温度より低くなる傾向にある。つまり、空間温度と人体温度との間でスケーリングを行うことにより、人物が所持している所持物の温度もそのスケーリングされた範囲内に入ることがわかる。
次に、フローチャートを用いて上述の出力補正処理の内容を具体的に説明する。
【0032】
図6,7は、ミリ波パッシブ撮像装置100が行う撮影処理に伴う画像処理部150(特に、補正値算出・更新処理部151)が行う出力補正処理の手順を示すフローチャートである。以下、図6,7に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
【0033】
〔ステップS11〕補正値算出・更新処理部151は、フレームメモリ142に記憶されている画像データのイメージ配列を取り込む。
【0034】
〔ステップS12〕補正値算出・更新処理部151は、取り込んだイメージ配列からあらかじめ設定されてるしきい値th1により二値画像を作成する。
【0035】
〔ステップS13〕補正値算出・更新処理部151は、撮像範囲に設定された撮像エリアにおけるしきい値th1以上になった画素の数(ACntとする)を計測する。
【0036】
〔ステップS14〕補正値算出・更新処理部151は、ACntがあらかじめ設定されたしきい値th2より大きいか否かを判断する。しきい値th2より大きいときは処理をステップS23へ進め、しきい値th2以下のときは処理をステップS15へ進める。ステップS14における判断は、測定エリア内に撮像対象の人10がいるかを判断するために行うものであり、ステップS12の二値化処理はステップS14における判断を行うためになされるものである。したがって、ステップS12の二値化処理におけるしきい値th1は人10とそれ以外の部分を識別することができる値に設定される。
【0037】
〔ステップS15〕補正値算出・更新処理部151は、画像データにおける横方向の画素の数をカウントする横方向カウンタを初回はリセットし、初回以降カウンタ値を1加算する。
【0038】
〔ステップS16〕補正値算出・更新処理部151は、画像データにおける縦方向の画素の数をカウントする縦方向カウンタ値を初回は200に設定し、初回以降カウンタ値を1加算する。
【0039】
〔ステップS17〕補正値算出・更新処理部151は、縦横方向の各カウンタの値を読み出し、当該画素の電界強度を読み出し、横方向カウンタの値iごとに電界強度平均BV〔i〕を算出していく。ここでは、縦横方向の画素の始点が左上であるとする。
【0040】
〔ステップS18〕補正値算出・更新処理部151は、縦方向カウンタの値が240未満であるか否かを判断し、240以上であるときは処理をステップS19へ進め、240未満であるときは処理をステップS16へ戻す。
【0041】
〔ステップS19〕補正値算出・更新処理部151は、横方向カウンタの値が100未満であるか否かを判断し、100以上であるときは処理をステップS20へ進め、100未満であるときは処理をステップS15へ戻す。
【0042】
〔ステップS20〕補正値算出・更新処理部151は、画像データにおける横方向の画素の数をカウントする横方向カウンタを初回はリセットし、初回以降カウンタ値を1加算する。
【0043】
〔ステップS21〕補正値算出・更新処理部151は、ステップS17において横方向カウンタの値iごとに算出した電界強度平均BV〔i〕を背景メモリに保存する。
【0044】
〔ステップS22〕補正値算出・更新処理部151は、横方向カウンタの値が100未満であるか否かを判断し、100以上であるときは処理を終了し、100未満であるときは処理をステップS20へ戻す。
【0045】
〔ステップS23〕補正値算出・更新処理部151は、画像データにおける横方向の画素の数をカウントする横方向カウンタを初回はリセットし、初回以降カウンタ値を1加算する。
【0046】
〔ステップS24〕補正値算出・更新処理部151は、初回に縦方向カウンタの値に200を設定し、初回以降カウンタの値を1加算する。
【0047】
〔ステップS25〕補正値算出・更新処理部151は、縦横方向の各カウンタの値を読み出し、当該撮像素子に対応する画素のヒストグラムH〔i〕を作成していく。
【0048】
〔ステップS26〕補正値算出・更新処理部151は、縦方向カウンタの値が240未満であるか否かを判断し、240以上であるときは処理をステップS27へ進め、240未満であるときは処理をステップS24へ戻す。
【0049】
〔ステップS27〕補正値算出・更新処理部151は、横方向カウンタの値が100未満であるか否かを判断し、100以上であるときは処理をステップS28へ進め、100未満であるときは処理をステップS23へ戻す。
【0050】
ステップS15からステップS19までの処理において、縦方向を201〜240画素でループさせ、横方向を1〜100画素でループさせるが、これは上述の測定エリアを上から201〜240ライン目の合計40ラインとしたときの例であり、横方向の画素数(つまり、ラインセンサを構成する撮像素子の数でもある。)を100としたときの例である。したがって、電界強度平均BV〔i〕は、縦方向201〜240の電界強度の合計を合計ライン数である40で割ったものである。また、横方向に100個の撮像素子が並んでいることから、電界強度平均BV〔i〕は、共に100個の値が算出されることになる。このように電界強度の平均をとることによって、測定エリアの中でノイズが生じていたときでも空間(背景)温度で本来出力されるべき信号出力がいくつであるかを算出することができる。
【0051】
さらに、ステップS23〜ステップS27で縦方向を201〜240画素でループさせるが、ヒストグラムH〔i〕は、縦方向201〜240ライン目の値の合計に係るものである。また、横方向に100個の撮像素子が並んでいることから、ヒストグラムH〔i〕は、共に100個の値が作成されることになる。
【0052】
〔ステップS28〕補正値算出・更新処理部151は、横方向カウンタを初回はリセットし、初回以降カウンタの値を1加算する。
【0053】
〔ステップS29〕補正値算出・更新処理部151は、ヒストグラムH〔i〕にローパスフィルタ処理を行う。
【0054】
〔ステップS30〕補正値算出・更新処理部151は、ヒストグラムH〔i〕における最大側から走査し、最初に表れるピークを人体温度の電界強度最大値としA〔i〕とする。このことにより人体温度の電界強度のノイズ成分を除去できる。このピークを適切に検出するためにステップS29においてローパスフィルタ処理を行っている。
【0055】
〔ステップS31〕補正値算出・更新処理部151は、横方向カウンタの値が100未満であるか否かを判断し、100以上であるときは処理をステップS32へ進め、100未満であるときは処理をステップS28へ戻す。
【0056】
〔ステップS32〕補正値算出・更新処理部151は、横方向カウンタを初回はリセットし、初回以降カウンタの値を1加算する。
【0057】
〔ステップS33〕補正値算出・更新処理部151は、横方向カウンタの値iに対応する撮像素子が人体を撮像しているかを検出するための人体検出係数K〔i〕をA〔i〕−BV〔i〕によって算出する。
【0058】
〔ステップS34〕補正値算出・更新処理部151は、人体検出係数K〔i〕がしきい値th3より小さいか否かを判断する。人体検出係数K〔i〕がしきい値th3より小さいときは、背景を撮像していると判断して処理をステップS36へ進め、人体検出係数K〔i〕がしきい値th3以上のときは人体を検出したとして処理をステップS39へ進める。
【0059】
〔ステップS35〕補正値算出・更新処理部151は、横方向カウンタの値iに対応する撮像素子が人体を検出したか否か表す人体画像フラグFLAG〔i〕に、人体を検出しなかった(背景を検出した)ことを表すfalseを設定する。
【0060】
〔ステップS36〕補正値算出・更新処理部151は、差分E〔i〕をA〔i〕−BV〔i〕によって算出する。
【0061】
〔ステップS37〕補正値算出・更新処理部151は、横方向カウンタの値が100未満であるか否かを判断し、100以上であるときは処理をステップS39へ進め、100未満であるときは処理をステップS32へ戻す。
【0062】
〔ステップS38〕補正値算出・更新処理部151は、人体画像フラグFLAG〔i〕に、人体を検出したことを表すtrueを設定する。
【0063】
〔ステップS39〕補正値算出・更新処理部151は、全画素分の差分E〔i〕の平均Mを算出する。この平均Mによって、背景測定時と人体測定時とでどれくらい電界強度が変わったか(背景温度が変わったか)を知ることができる。したがって、背景測定時の電界強度と差分Mを用いて、人体測定時の人10を撮像している撮像素子において、背景を撮像していたとしたときの電界強度が推定できる。
【0064】
〔ステップS40〕補正値算出・更新処理部151は、画像データにおける横方向の画素の数をカウントする横方向カウンタを初回はリセットし、初回以降カウンタ値を1加算する。
【0065】
〔ステップS41〕補正値算出・更新処理部151は、人体画像フラグFLAG〔i〕にtrueが設定されているかを判断する。trueが設定されているときは処理をステップS42へ進め、trueが設定されていない(falseが設定されている)ときは処理をステップS44へ進める。
【0066】
〔ステップS42〕補正値算出・更新処理部151は、補正モデルの係数C〔i〕=255/(A〔i〕−M−BV〔i〕)を求める。これにより、求めた補正係数C〔i〕でゲイン補正がなされる。
【0067】
〔ステップS43〕補正値算出・更新処理部151は、補正モデルの係数D〔i〕=(255×BV〔i〕)/(A〔i〕−BV〔i〕)を求める。これにより、求めた補正係数D〔i〕でオフセット補正がなされる。
【0068】
〔ステップS44〕補正値算出・更新処理部151は、補正モデルの係数C〔i〕を0に設定する。これは、ステップS41における判断は、人体画像フラグFLAG〔i〕にtrueが設定されていないときは測定エリアには人10がいない、もしくは当該撮像素子は人10を撮像していない(背景を撮像している)ことを意味することに基づく。つまり、人10がいないときは人体温度を検出できないのでゲイン補正の対象としない。
【0069】
〔ステップS45〕補正値算出・更新処理部151は、補正モデルの係数D〔i〕を0に設定する。これは、ステップS44と同様に測定エリアには人10がいない、もしくは当該撮像素子は人10を撮像していないときはオフセット補正の対象としないことを意味する。
【0070】
〔ステップS46〕補正値算出・更新処理部151は、補正係数C〔i〕を補正値メモリ152に保存する。また、補正値メモリ152に補正係数が保存されている場合には、その値を更新する。
【0071】
〔ステップS47〕補正値算出・更新処理部151は、補正係数D〔i〕を補正値メモリ152に保存する。また、補正値メモリ152に補正係数が保存されている場合には、その値を更新する。
【0072】
〔ステップS48〕補正値算出・更新処理部151は、横方向カウンタの値が100未満であるか否かを判断し、100以上であるときは処理を終了し、100未満であるときは処理をステップS40へ戻す。
【0073】
以上のような処理により、横方向に並べられたラインセンサ120の各撮像素子の信号出力は、測定エリアにおける人10の部分の信号出力と、当該人10の部分の背景から放射されているであろうと予測される量のミリ波の電界強度における信号出力との間でスケーリングが行われる。したがって、ラインセンサ120の各撮像素子の信号出力自体にバラつきが生じていても各撮像素子間の信号出力はスケーリング後には同一の値を示すように補正される。よって、各撮像素子間のバラつきが解消し、ラインセンサ120を走査して生成した2次元画像における走査方向に伸びる縞模様が現れることを防止することができるようになる。
【0074】
なお、上記の処理機能は、コンピュータによって実現することができる。その場合、出力補正装置が有すべき機能の処理内容を記述した出力補正プログラムが提供される。その出力補正プログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述した出力補正プログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリなどがある。磁気記録装置には、HDD、FD、磁気テープなどがある。光ディスクには、DVD(Digital Versatile Disc)、DVD−RAM、CD−ROM、CD−R(Recordable)/RW(ReWritable)などがある。光磁気記録装置には、MO(Magneto
Optical disk)などがある。
【0075】
出力補正プログラムを流通させる場合には、たとえば、その出力補正プログラムが記録されたDVD、CD−ROMなどの可搬型記録媒体が販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにその出力補正プログラムを転送することもできる。
【0076】
出力補正プログラムを実行するコンピュータは、たとえば、可搬型記録媒体に記録された出力補正プログラムもしくはサーバコンピュータから転送された出力補正プログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置から出力補正プログラムを読み取り、出力補正プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記録媒体から直接出力補正プログラムを読み取り、その出力補正プログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータから出力補正プログラムが転送される毎に、逐次、受け取った出力補正プログラムに従った処理を実行することもできる。
【0077】
なお、本発明は、上述の実施の形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0078】
上記については単に本発明の原理を示すものである。さらに、多数の変形、変更が当業者にとって可能であり、本発明は上記に示し、説明した正確な構成および応用例に限定されるものではなく、対応するすべての変形例および均等物は、添付の請求項およびその均等物による本発明の範囲とみなされる。
【符号の説明】
【0079】
10 人
11 電波吸収体
20 モニタ
100 ミリ波パッシブ撮像装置
110 振動リフレクタ部
111 振動リフレクタ
112 パルス生成部
120 ラインセンサ
130 同期・アドレス生成部
140 変換部
141 A/D変換回路
142 フレームメモリ
150 画像処理部
151 補正値算出・更新処理部
152 補正値メモリ
153 補正部
154 出力処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7