(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アニオン交換樹脂を含む吸収剤が、不均一系イオン交換膜の構成成分であり、場合によっては、前記膜を使用するより前に、最初に水和させ、次いで乾燥させることによってイオン交換膜を前処理する工程を含む、請求項1記載のプロセス。
【発明を実施するための形態】
【0017】
広い意味合いにおいて、本発明は、一つの態様においては、従来からのCO
2抽出方法か、または本願発明者らの上述のPCT出願に開示された改良されたCO
2抽出方法の一つを使用して、環境空気から二酸化炭素を抽出し、その抽出したCO
2の少なくとも一部を、閉じられた環境へ放出する。
【0018】
第一の例示的な実施態様においては、この閉じられた環境が温室である。CO
2抽出器を、温室に隣接させるのが好ましく(必須という訳ではない)、好ましい実施態様においては、その抽出器がさらに、強い日光の影響を受けやすい温室内で生育している作物に日陰を与えるか、および/または温室に対する冷却の必要性を抑制させるようにする。
【0019】
CO
2の捕捉に対する一つのアプローチ方法においては、加温した高湿度の空気と接触させることによって、樹脂媒体を再生させる。貯蔵媒体上に貯蔵されたCO
2の放出を湿度が刺激すること、ならびに、この方法によって3%〜10%の間のCO
2濃度が達成可能であり、減圧/脱水系の場合においては、ほぼ100%の達成が可能であることが判った。このアプローチ方法においては、CO
2がガス相に戻り、液状媒体が捕集器材料と接触状態になることはない。
【0020】
CO
2抽出器が温室と直に隣接していて、温室の外側へ移動させてCO
2を捕集し、温室の内側へ移動させてCO
2を放出させる。そのような実施態様においては、乾燥させるとイオン交換樹脂がCO
2を抽出し、高湿度に暴露させるとCO
2を放出するような、湿度感受性イオン交換樹脂をCO
2抽出器が含んでいるのが好ましい。乾燥気候条件下では、湿度スイングを使用するのに最適であろう。そのような環境下においては、抽出器を温室の外側の熱い乾燥空気に暴露させて、そこで空気からCO
2を抽出する。次いでその抽出器を、温室の温かい高湿度の環境に移すと、そのイオン交換樹脂がCO
2を放出する。抽出器を温室の外から内へ、またはその逆に移動させるためのエネルギー以外には、エネルギーを直接投入することなく、そのすべてのプロセスを達成することができる。
【0021】
イオン交換樹脂は市販されており、たとえば水の軟化や精製のために使用されている。湿度感受性イオン交換樹脂であり且つ強い塩基性の樹脂を含む、ある種の市販のイオン交換樹脂を使用すると、本発明による空気からCO
2を抽出する目的に有利に使用できることを本願発明者らは見出した。そのような物質を用いると、湿度が低い程、その樹脂への平衡炭素担持量が高くなる。
【0022】
したがって、高湿度レベルではCO
2を担持していて、特定のCO
2の分圧と平衡状態になっているように見える樹脂は、湿度が高くなればCO
2を吐き出し、湿度が低くなればさらなるCO
2を吸収するであろう。その効果は大きく、その平衡分圧を数百ppm、さらには数千ppmも容易に変化させることができる。その全取り込み性能と比較した場合、樹脂の上に炭素をさらに取り込んだり、減らしたりすることもまた意味のあることである。
【0023】
湿度が移送係数におよぼす影響もまた存在している、すなわち、湿度を変動させると反応動力学もまた変動するように見える。しかしながら、樹脂から出入りする流束を測定すると、実際の分圧と熱力学的な平衡圧力との間の差に強く依存しているように見える。平衡圧力が湿度に連れて変動するために、反応動力学における実際の変動なしで、流束の大きさを左右することができる。
【0024】
さらに、他の要件によっても動力学に影響を与えることが可能である。たとえば、本願発明者らが特に有用であることを見出したイオン交換材料は、カリフォルニア州サン・クレメンツ(San Clements,CA)のスノウピュア・LLC(Snowpure LLC)から入手可能なアニオン(Anion)I−200イオン交換膜材料である。その製造業者の説明では、アニオン(Anion)I−200イオン交換膜材料は、強塩基性のタイプ1(Type 1)官能性イオン交換材料であるとされている。この材料は、特許文献3に従って製造されたものと考えられ、また、ポリプロピレンのような不活性ポリマー中に封入された(または、部分的に封入された)小さな樹脂チャートを含んでいると考えられる。本願発明者らの見出したところでは、この材料をまず水和させ、次いでそれを乾燥させると、この材料は多孔質となって、その中を空気が容易に通過する。水和/脱水の処理は、主としてポリプロピレンバインダーを膨潤させることに作用していると考えられ、樹脂に対する恒久的な影響はほとんどまたはまったく無いが、それに対して、それに続く湿度スイングは、ポリプロピレンバインダーに対して観察されるような影響はまったく与えない。本願発明者らの見出したところでは、これらの強い塩基性のイオン交換樹脂材料は、乾燥空気からCO
2を抽出する性能を有しており、他の介入が一切なくても、湿度を上げさえすればCO
2を放出する。これらの材料が、乾燥状態では空気からCO
2を直接抽出し、湿度が高くなるとそのCO
2を吐き出す性能を有しているということは、これまで報告されたことがない。
【0025】
上で示したように、使用する前にこの材料をまず水和させ、次いでそれを乾燥させることが必要であり、それによってこの材料が多孔質となって、その中に空気を通過させることが容易となる。水和させる前には、その膜材料は実質的に非多孔質であるか、または少なくとも、かなりの量の空気をその膜を通過させることは不可能である。しかしながら、水和と乾燥をさせた後では、その材料が、水和の際に樹脂が膨潤している間に、ポリプロピレンマトリックスが不可逆な変形を受けたのであろうと考えられる。その材料が一旦変形してしまうと、乾燥してその樹脂粒子が収縮した後でさえも、そのポリプロピレンマトリックスが広がった形を維持している。したがって、上述のスノウピュア(Snowpure)イオン交換材料のような実質的に非多孔質な材料では、使用する前に、その材料を水和させてから乾燥させることによって、その材料を前処理する必要がある。
【0026】
本願発明者らは、湿度を変化させると、樹脂の上でのCO
2の平衡分圧にも大きな変化が起きることを観察した。湿度が、樹脂の状態を変化させるか、またはそれに代えて考慮するべき全部の系がCO
2/H
2O樹脂系である。理論に拘束されることを望むものではないが、CO
2を樹脂に結合させる自由エネルギーは、樹脂が平衡状態になっているH
2Oの分圧の関数であると考えられる。
【0027】
このことによって、温度スイングおよび/または圧力スイング(これらは、エネルギーコストをさらに加えることになって、系の総合的な二酸化炭素バランスに関して不利な影響をもたらす可能性がある)に依存する必要もなく、単に湿度をスイングさせることによって、樹脂にCO
2を吸収させたり、吐き出させたりすることが可能となる。
【0028】
そのようなスイングに含まれる水の量は、極めて少量であると考えられる。湿度スイングの可能性としてはさらに、最小限の水のロスがあるだけで、空気捕集器からCO
2を回収することが可能となる。
【0029】
その他の強い塩基性のタイプ1(Type 1)およびタイプ2(Type 2)官能性イオン交換材料は、ダウ(Dow)、デュポン(DuPont)およびローム・アンド・ハース(Rohm and Haas)など多くの供給業者から市販されており、製造業者から入手したままか、あるいはたとえば特許文献3の教示に従った不均質なイオン交換膜に成形した形かのいずれかで、本発明において有利に採用することができる。
【0030】
図1に、本願発明者らの発明の第一の実施態様を示す。再循環サイクルの中に、第一イオン交換フィルター材料4を設ける。第一ポンプ1または第二ポンプ(図示せず)を用いて、バルブV
1を開きながら系の大部分の空気を除去し、空気排出口2を通して押し出す。この時点では、バルブV
1を閉じ、バルブV
2およびV
3を開くことによって、第二イオン交換捕捉樹脂を系の中に切り替える。第二イオン交換樹脂を使用して、湿度と場合によっては幾分かの熱を与えることができる。温かいスチームが第一イオン交換フィルター材料4からのCO
2の放出を刺激し、次いでそれを、CO
2分圧とはまだ平衡に達していない第二イオン交換樹脂の上で捕捉する。系の中の水の容積は、それが再循環され、第二樹脂によって捕捉される訳ではないので、少量に留まったままである。CO
2が第一イオン交換樹脂材料14から解放され、第二イオン交換樹脂によって吸収されるのに対して、大部分の水は装置の中を循環する。移動されたり吸収されたりする可能性のある水の量は、移送されるCO
2の量よりは、はるかに少ない。サイクルの終わりの時点では、第一イオン交換フィルター材料14がリフレッシュされ、第二イオン交換捕捉樹脂にCO
2が担持される。
【0031】
この系を使用すれば、第一樹脂を洗浄したり濡らしたりすることなく、空気捕捉媒体たとえばイオン交換樹脂から第二樹脂の上に、CO
2を移送することが可能である。このことは二つの利点を有している。第一には、その第一樹脂が、過去には使用されていた、本願発明者らの上述の特許文献2に記載されている、アミンのような化学物質に直接暴露されない。第二には、本願発明者らが見出したどころでは、湿らせた樹脂は、それを完全に乾燥させない限り、CO
2を吸収させるには有効ではない。したがって、材料を湿らせることを避け、樹脂を低圧のスチームを用いて湿らせるような場合には、この方式で運転するのが有利である。スチーム圧力は100Pa未満として、周囲の数値と同程度の温度で飽和させることができる。しかしながら、CO
2の交換は、温度が高いほど、そしてスチーム圧力が高いほど、明らかに加速される。温度を上げると不利になるのは、エネルギーをさらに消費するからである。
【0032】
本明細書に概略説明する設計は、第二樹脂を、水を吸収することなくCO
2を吸収することが可能な各種のその他の吸収剤物質に置き換えるようなより広いタイプの設計の特別な一つの例である。そのような吸収剤としては、液状アミン、イオン性液体、固体のCO
2吸収剤たとえば、ジルコン酸リチウム、ケイ酸リチウム、水酸化マグネシウムもしくは水酸化カルシウム、または水蒸気およびCO
2を含むガス混合物からCO
2を吸収することが可能な、広く各種のタイプの化学的もしくは物理的吸収剤などが挙げられる。中心となるコンセプトは、第一吸収剤から、それを第二吸収剤と直接物理的に接触させることなくCO
2を除去するために、圧力スイングまたは温度スイングよりも湿度スイングを使用するという点にある。
【0033】
[作物の収量を改良するための、温室における適用]
上で述べたように、温室における作物の収量は、温室の空気の中の二酸化炭素のレベルを上げることによって改良することができる。本発明は、化石燃料CO
2を空気中に放出する燃料の燃焼を用いずに、温室の中に二酸化炭素を導入する方法を提供する。より詳しくは、本願発明者らは、本願発明者らが湿度感受性イオン交換樹脂を採用すると、乾燥した室外の空気からCO
2を捕捉し、次いでその樹脂を加温加湿した温室の空気に暴露させることによって、そのCO
2を温室の中へ放出させることが可能であるということを見出した。
【0034】
米国の南西部にあるような、砂漠気候の温かい場所にある温室では、屋外でのCO
2の取り込みは、屋外の温度が低い夜間に実施するのがよく、それによってCO
2の取り込み容量を増大させることができる。温室が部分的にラジエーター加熱に依存するような、より寒冷な気候の場所では、本発明のCO
2取り込み系は、CO
2を再生させるために冷たい空気中に放置することは必要とせず、そのため、温度があまりにも低くて燃料を用いた加熱が必要となるまでは、化石燃料を採用した加熱の必要性が抑制される。
【0035】
一つの実施態様においては、本願発明者らは、湿度感受性イオン交換活性材料から作った数種のフィルターを採用している。サイクルの一部において、自然の風の流れによるか、熱対流によるかまたはファンで駆動することによって、フィルターを外部の空気に暴露させる。ファンを使用すると、不必要なエネルギーの損失が加わることになるので、ファンを使用しないのが好ましい。系の第二の部分においては、温室内部からの湿った空気を、たとえばファンによってフィルター材料の中を通過させ、それによって、温室雰囲気の中にCO
2を放出させるのが好ましい。いずれにしても、温室の中の環境制御は典型的にはファンシステムに依存するので、エネルギーの損失は、ほとんどまたはまったく無い。
【0036】
植物は、夜間には呼吸するので、いくつかの温室の設計においては、温室の空気をフィルターを通過させて吸引することによって温室の空気からCO
2を除去することも可能である。日中には、そのフィルターをより高い湿度に暴露させて、CO
2が温室内に放出されるようにすることが可能である。
【0037】
一つの実施態様においては、
図2Aおよび2Bに示すように、フィルターユニット10を、温室の外壁12に隣接したところに配置し、場合によっては、旋回可能に取り付けられた壁パネル14を介して、外部の空気または温室の空気を選択的にその中を通過させて循環させる。別な方法として、
図3Aおよび3Bに示すように、フィルター材料10を、温室の屋根18の外側または隣接させて配置するが、場合によっては、旋回可能に取り付けられた屋根パネル20を介して、外部の空気または温室の空気を選択的にその中を通過させて循環させる。
【0038】
本発明のさらに別な実施態様においては、
図4に示すように、フィルターユニット10を、空気からCO
2を抽出する場合の外側から、捕捉したCO
2を放出させる場合には温室の内側へと動かすことができる。これを実施するための一つの可能なオプションは、旋回可能な取り付けられた壁パネルまたは屋根パネル22に取り付けられたフィルターユニットを有しているものであって、それを回転させることによって、温室の外側にあるフィルターユニットを温室の内側に暴露させたり、その逆を行わせたりすることができる。温室の内側にあるフィルターユニットは、ファンシステムによって空気をその中に吹き込んで通過させることができる。外部のフィルターユニットは、環境空気に暴露される。一つの好ましい実施態様においては、
図4に示すように、太陽光発電で駆動される対流タワー24の底端部に隣接させて屋外のフィルターユニット10を配置する。その入口は、対流タワーの底端部に取り付けて、そこから冷たい空気が入って、自然対流によりタワーの中を上向きに流れるようにするのが好ましい。
【0039】
また別な実施態様においては、
図5に示すように、フィルターユニット10を、たとえば、トラック26から吊り下げて、温室に出入りさせる。
【0040】
図6を参照すると、温室のためのさらに別なオプションでは、温室の外側の上に二重ガラス壁として対流タワーを位置させ、発生する対流の流れを使用して外部のCO
2を捕集する。その二重の壁は、日中では内部における熱負荷を抑制するのに役立ち、そのため空気を交換させる必要が低下するので、ひいては、温室の中で上昇させたCO
2レベルを維持することが可能となる。その二重ガラス壁は、夜間には熱のロスも抑制する。
【0041】
この例においては、保護ガラスの表面40が備わっていることで、ガラスハウス42のメインの屋根から逃げる熱がいくぶんかは保持され、その屋根の表面上の環境空気の対流流れ44を起こさせることができる。環境空気の流れは、CO
2吸収性フィルター媒体46の中を通過し、そのフィルター媒体は、たとえば回転屋根パネル48のような、なんらかのメカニズムによって、第二の同様なフィルター媒体50と置き換わって、そこで、温室内側の上部の空気がファン52によって駆動されてそのフィルター媒体の中を通過して、そのフィルター媒体が温室の外側で環境空気に暴露されていたときに捕捉されたCO
2を取り出す。温室の内部の空気は湿っているので、そのフィルター媒体からCO
2が容易に放出され、温室の中で利用されるCO
2が増加する。
【0042】
そのようなユニットの利点は、燃料を燃焼させることなく、CO
2を高めたレベルで運転できる点にある。温室の中に空気を吹き込む必要がなく、CO
2を温室の内部に送達するので、このことによって、温室の外部と内部との間で空気を入れ換えることを減らすことが可能となり、そのため、温室の熱管理および湿度管理が改良される。
【0043】
本発明の第二の例示的な実施態様においては、CO
2を抽出して、藻類または菌類のバイオリアクターに送達する。このことは、従来からのCO
2抽出方法を使用するか、あるいは本願発明者らの上述のPCT出願に開示されているような改良された抽出方法を使用するか、あるいは本明細書に開示されているような、たとえば湿度スイング法によって、実施することができる。湿度スイングは、藻類に送達するためのCO
2を抽出するには有利であるが、その理由は、その物理的な分離方法では、媒体と藻類の培養溶液との間の両立性には無関係に、各種の捕集器媒体を使用することが可能となるからである。ガス状のCO
2を移送することによって、マクロ藻類およびミクロ藻類、海水藻類または淡水藻類などいかなる藻類種でも選択可能となる。したがって、生長させる藻類種の選択は、環境因子および捕集器サイトの水質のみに依存することとなろう。たとえば、使用する藻類種は、その局所的な雰囲気、環境および水質条件に独自に順応させた、そのサイトで自然に生成する藻類から選択することができる。
【0044】
捕捉したCO
2をガス状の形態で移送することには、二つの大きな利点が存在する。第一の利点は、その捕集器媒体および/または捕集器再生溶液が、藻類の培養溶液および/または藻類と接触することがないという点にある。第二の利点は、藻類のすべての種が、ガス状のCO
2を吸収することが可能であるという点である。
【0045】
特定の藻類の培地のCO
2耐性に応じて、CO
2富化空気を複数の藻類の培地に連続的にポンプ送入して、CO
2耐性を低下させ、CO
2の取り込み効率を上昇させることができる。別な方法として、その空気を希釈して、最適なCO
2濃度とすることもできる。
【0046】
図7を参照すると、本発明の一つの実施態様では、湿度スイングを使用してガス状のCO
2を捕集器媒体から追い出すことが可能であるという事実を利用している。その湿度スイングでは、捕捉したCO
2をガス状CO
2として、捕集器110から藻類の培地116へと移送している。CO
2を担持したイオン交換捕集器媒体は、湿度を上昇させるかまたは水を用いて湿らせると、ガス状CO
2を放出するであろう。次いで、CO
2供給ガス流れの湿度が低下したりおよび/または捕集器媒体が乾燥したりすると、その捕集器媒体がより多くのガス状CO
2を吸収するであろう。
【0047】
本発明では、捕集器媒体および藻類の培地の上に共通のヘッドスペースを備えている。このことによって、捕集器媒体を藻類の培養溶液から物理的に分離しながらも、藻類をガス状CO
2に暴露させている。そのヘッドスペースは、環境空気からは隔離する。次いで、その密閉されたヘッドスペース容積の中で湿度を上げる。別な方法として、その捕集器媒体を加湿してもよい。捕集器媒体から放出されたCO
2は、ヘッドスペース全体に速やかに拡散し、藻類の培養溶液の表面に接触する。
【0048】
次いでCO
2を、藻類の培地の中に移送するが、それには、ガス拡散によるか、あるいは再循環ポンプを使用してヘッドスペースガスを藻類の培養溶液中へバブリングさせるかのいずれかの方法を用いる。藻類がヘッドスペースからCO
2を除去するにつれて、捕集器媒体はガスを排出しつづけて、平衡に到達させようとする。藻類の培養溶液は機械的に撹拌することもできる。必要に応じて、すべてその他の栄養素および光を藻類に与える。次いで藻類を、藻類収穫器(algae harvester)120の中に捕集するのがよい。
【0049】
濡らした捕集器媒体上のヘッドスペース中のCO
2濃度は最大で20%、すなわち0.2大気分圧である。その濃度は、捕集器媒体対ヘッドスペースの容積対容積の比によって調節することができる。さらに、捕集器媒体は、湿度スイング/加湿の間に捕捉したCO
2の60%を放出することができる。
【0050】
別な方法として、CO
2を移送する目的で、捕集器媒体容積から藻類の培地の中へガスをポンプ移送することも可能である。藻類池(algae pond)が温かく湿っているならば、その藻類池からの湿分が、これもまた湿度スイングメカニズムによって、乾燥樹脂からのCO
2の放出を刺激するのには充分となりうるであろう。
【0051】
図8を参照すると、本発明の別な実施態様においては、環境空気の中のCO
2濃度は、CO
2が重炭酸塩アニオンとして結合できるレベルにまで、CO
2を用いてイオン交換媒体を飽和させることができる。この実施態様は、アルカリ性の溶液を使用して捕集器媒体を再生させることも提供する。その再生の間に、溶液の中のアニオン組成物がほぼ100%の重炭酸塩に変化する。重炭酸塩水溶液は大気圧条件化では不安定であって、ガス状のCO
2を放出する。ガス状のCO
2の放出は、再循環ポンプを使用してその溶液にヘッドスペースの空気をバブリングさせることによって加速させることができる。
【0052】
それに代わる実施態様では、捕集器再生溶液と藻類の培養溶液との上に共通のヘッドスペースを与える。このことによって、再生溶液を藻類の培養溶液から分離しながらも、藻類をガス状CO
2に暴露させる。また別な態様においては、このヘッドスペースを、先に説明したように、捕集器媒体のためのヘッドスペースと同様に操作する。
【0053】
図9を参照すると、本発明のまた別な代わりの実施態様においては、電気透析(ED)プロセスを使用して、担持状態の捕集器溶液からガス状のCO
2を遊離させる。次いでその遊離されたCO
2を、藻類の培地216の中に移送する。電気透析(ED)プロセスを介して、捕集器210から藻類の培地216へガス状CO
2を移送することは、捕集器溶液または吸収剤と藻類の培養溶液とが、そのプロセスのすべての段階で、相互に物理的に分離されているという利点を有している。このことは、それら二つの溶液の混合を防止し、さらにそれらの溶液の間でのイオン交換も防止する。EDプロセスはこの点では、湿度スイングプロセスと共通点がある。さらに、湿度プロセスの場合と同様に、そのように物理的に分離されていることによって、媒体と藻類の培養溶液との間の両立性とは無関係に、どのような捕集器媒体を使用することも、またどのような藻類を使用することも可能となる。
【0054】
本発明のそれに代わる実施態様では、EDプロセスを使用して、ガス状のCO
2を捕集器再生溶液から追い出すことができるという利点を有している。EDプロセスにおいては、担持状態の捕集器再生溶液を、二つの流れに分けて、EDセル214の中に送る。二次膜236を通してプロトンを第一の流れに加え、無機炭素をガス状のCO
2として追い出す一方で、カチオン膜234を通してナトリウムカチオンを第二の流れに移送する。ナトリウムイオンに加えて、水酸基イオンを別の二次膜236を通してその第二の流れに添加することによって、この流れの中の重炭酸塩を中和して炭酸塩とする。
【0055】
第一の流れは、水または希重炭酸ナトリウム溶液としてEDセルから出るが、それに対して第二の流れは、濃炭酸ナトリウム溶液として出て行く。その二つの流れを合わせて、フレッシュな捕集器溶液を形成させる。第一の流れから追い出されたガス状のCO
2を、藻類の培地の中へバブリングさせ、バイオマスとして固定化させる。
【0056】
無機炭素が塩水から除去されるにつれて、その溶液がよりアルカリ性となり、そのpHを維持するためには、追加の重炭酸塩を添加することが必要となる。濾過によって、流体の幾分かを回収し、それによりバイオリアクターからの水およびナトリウムを戻すことができる。一つの具体的な実施態様においては、その電気化学セルを二つの分離された流体サイクルの間で使用するが、その一つはかなりのアルカリ性であって、それを捕集器と電気化学セルの塩基側との間に流し、もう一つは、ほぼ中性のpHで、藻類リアクターとセルの酸側との間に流す。炭酸は、セルの塩基側から酸側へと移送される。このステップで洗液を再生し、流体にCO
2を再び担持させる。
【0057】
重炭酸塩吸収剤を藻類に供給することによって、CO
2をまず転換させてCO
2ガスに戻すことなく、CO
2を吸収剤から除去することができる。さらに、空気捕捉側で好適な吸収剤物質を選択することによって、洗浄流体のpHを低く保つことが可能となり、そして、比較的高いpHに耐性のある藻類を使用するならば、電気透析によって作る必要があるpH差が比較的小さくなり、いくつかの実施態様においては、透析セルを完全に省略することが可能である。
【0058】
図10を参照すると、本発明のまた別な実施態様では、EDプロセスを使用して、捕集器溶液中の重炭酸塩濃度を下げ、藻類の培養溶液中の重炭酸塩濃度を上げる。捕集器溶液が重炭酸塩状態でEDセル214に入るのに対して、藻類の培養溶液は炭酸塩状態でEDセルに入る。流体がEDセルから出ていくときには、捕集器溶液が炭酸塩状態となり、藻類の培養溶液が重炭酸塩状態となっている。
【0059】
カチオンが藻類の培養溶液から捕集器溶液へと移送されるので、藻類の培養溶液は希釈されてその規定度がほぼ半分になるのに対して、捕集器溶液の規定度はほぼ倍になる。ナトリウムのアンバランスを埋め合わせるために、担持状態の捕集器溶液(重炭酸塩の形)の半分を、捕集器から藻類の培地に直接移送する。
【0060】
本発明によるプロセススキームにおいては、カチオン交換膜234を通過させて、藻類溶液から捕集器溶液の中へとカチオンを移送させる。その藻類の培養溶液に主としてナトリウムカチオンが含まれるが、さらにはカリウム、マグネシウムおよびカルシウムイオン、さらには微量のその他の金属カチオンが含まれる。マグネシウムおよびカルシウムの移送の可能性が問題となるが、その理由はそれらいずれのイオンも、かなり難溶性の炭酸塩および水酸化物を形成するからである。それらの塩の形成は、スケーリングとも呼ばれ、EDセルおよび/または捕集器媒体の中で膜を汚染する可能性がある。
【0061】
藻類の生長サイクルの開始時に、カルシウムおよびマグネシウムを鉱物質栄養素として藻類の培地に添加する。藻類バイオマスが増殖するにつれて、カルシウムおよびマグネシウムがそのバイオマスの中に取り込まれ、藻類の培養溶液におけるそれらの濃度が低下する。同時に、重炭酸塩溶液が炭酸塩溶液に変化するために、培養溶液のpHが高くなる。マグネシウム、カルシウムおよび炭酸イオンがそれらの溶解度積よりも多く存在すると、化学的な沈降のために、マグネシウムおよびカルシウムイオン濃度がさらに低下するであろう。
【0062】
カルシウムおよびマグネシウム濃度が低下し、pHの高い、排出された培養溶液がEDセルの中に入っていく。そこで、培養溶液が炭酸塩溶液から重炭酸塩溶液へと変化し、それに従ってそのpHも低下する。炭酸イオン濃度が低下するにつれて、その溶液はより大量のカルシウムおよびマグネシウムを保持することが可能となる。そのために、EDセルのこの部分ではスケーリングは起きにくい。
【0063】
しかしながら、同時に、カルシウムおよびマグネシウムを含むカチオンが、藻類の培養溶液216からEDの捕集器溶液ハーフセルへ移送される。このハーフセルにおいては、捕集器から来た重炭酸塩溶液が変化して炭酸塩溶液となり、炭酸塩濃度とpHが高くなる。さらに、浸透セル224を使用して、重炭酸塩溶液から過剰のH
2Oを除去してもよい。
【0064】
そのプロセスは、出て行く捕集器溶液のpHが入ってくる藻類溶液のpHに近くなるように設計する。したがって、すべてのバランスがとれている限り、スケーリングが起きる筈がない。しかしながら、完全なバランスをとることは、マクロスケールでは必ずしも現実的ではなく、またEDセルの内部のようなミクロスケールでは不可能かもしれない。水酸基またはカチオン濃度の高いミクロ層またはポケットが膜の表面上に形成さることもあり得る。膜の表面での濃度が高くなると、捕集器溶液ハーフセル中でのスケーリングの原因となる可能性がある。
【0065】
スケーリングを最小限とするためには、カルシウムおよびマグネシウムカチオンの流束を最小限としなければならない。このことは、電気透析による海水からの塩の製造、水酸化ナトリウムの製造、およびスキムミルクの加工などにおいては周知の問題である。(T.サタ(T.Sata)、1972;T.サタ(T.Sata)ら、1979、2001;J.バルスター(H.Balster)、2006)。流束を最小限とするためには、二つのハーフセルを分離しているカチオン膜が、1価イオン選択性でなければならない。一般的には、強酸のカチオン交換膜は、1価イオンよりも2価イオンに対して、高い輸率を示す。このことは、負に荷電した固定されたイオン交換サイトと共に、静電引力が高いためであると推測される。従来技術からも、膜の上の電荷密度が低いほど、2価カチオンの輸率が低くなることは判っていた。
【0066】
2種の市販されている高度に1価のカチオン選択性膜が、このプロセスに特に好適であることが立証された。一つの膜は、旭硝子(Asahi Glass)により製造され、セレミオン(Selemion)CSVの名称で販売されているものである。第二のものは、徳山曹達(Tokuyama Soda)により製造され、ネオセプタ(Neosepta)(登録商標)CIMSの名称で販売されているものである。セレミオン(Selemion)CSVの場合の輸率(t)は、t(Na)<0.92、t(Ca、Mg)<0.04である。ネオセプタ(Neosepta)CIMSの場合の輸率は、t(Na、K)=0.90、t(Ca、Mg)=0.10である。輸率とは、電気透析の際のカチオンの等価流束を全等価流束で割り算をしたものと定義される。
【0067】
本発明のこの態様では、1価カチオン選択性膜を使用して、多価カチオンが藻類の培養溶液から捕集器再生溶液に移送されることを最小限に抑える。時間とともに堆積するスケーリングはすべて、酸溶液を使用すれば除去できるであろう。
【0068】
捕集器溶液と同様に藻類の培養溶液も共に、EDセルへ入る前に濾過して、粒状物による膜の汚れを防止する。有機分子は、有機物捕捉イオン交換樹脂の手段を用いて、藻類の培養溶液から捕捉する。
【0069】
図11を参照すると、本発明のまた別な実施態様においては、空気から捕捉されたCO
2を、それを担持した状態の捕集器溶液310を藻類に与えることによって藻類に渡す。その担持状態の捕集器溶液は、重炭酸ナトリウムに富んでいる。その捕集器溶液に栄養素を添加すると、それが藻類のための飼料となる。本発明のこの実施態様においては、その溶液供給物は再循環されないので、その捕集器溶液は消耗品となる。
【0070】
このプロセスにおいては、重炭酸ナトリウムが次々と加わってくると、藻類の培養溶液316の塩含量が高くなるであろう。藻類を生長させる間に、重炭酸ナトリウムが変化して炭酸塩となる。炭酸塩濃度を低下させるため、および塩漬けになるのを遅らせるために、ナトリウム塩としての代わりに酸として残りの栄養素のいくつかを加えることが可能であり、それが炭酸イオンを重炭酸塩に転化させ、ナトリウムの追加を最小限に抑える。
【0071】
別な方法として、重炭酸ナトリウム吸収剤を藻類リアクターに直接供給して、藻類にCO
2を供給し、その藻類を除去してさらなる加工にかけ、炭酸ナトリウムを空気抽出ステーションに戻す。
【0072】
多くの藻類は、それらの炭素源として重炭酸塩を利用することができる。さらに、いくつかの藻類は、それらの炭素源としてCO
2よりは重炭酸塩の方を好む。それらは多くの場合、アルカリ性湖に固有の藻類であることが多いが、そのような場所では無機炭素が主として重炭酸塩として存在している。それらの藻類は、8.5から最高11までの広いpHの変動に耐えることができる。他の藻類では、それらの炭素源としてHCO
3−を利用することができるが、それらはpH=9未満のpH域を必要としており、そのためには重炭酸塩/炭酸塩溶液の中にCO
2をバブリングしてやる必要がある。
【0073】
藻類は炭素源を使用して、光合成によりバイオマスを産生する。光合成では、重炭酸塩ではなくCO
2を必要とするので、藻類は次の反応の触媒作用を果たす。
HCO
3− → CO
2 + OH
−
【0074】
HCO
3−の存在下では、これが次のようになる。
HCO
3− + OH
− → CO
3−2 + H
2O
【0075】
重炭酸塩溶液の中で藻類が生長すると、その溶液には次の変化が現れる:(1)HCO
3−濃度の低下;(2)CO
3−2濃度の上昇;および(3)pHの上昇。
【0076】
また別な実施態様では、本発明では、藻類の培養溶液を使用して捕集器を再生させる。炭酸塩の形態にある捕集器媒体は、その媒体のアニオン組成がほとんど重炭酸塩100%となるまで、環境空気からガス状CO
2を吸収する。この状態においては、捕集器媒体が完全に担持状態となり、CO
2の吸収は停止する。炭酸塩溶液を再生において使用し、イオン交換によって、担持状態の捕集器媒体を炭酸塩の形態に戻す。完全に担持状態となった捕集器媒体にアニオン交換させることによって、その再生溶液のアニオン組成を、炭酸塩100%から重炭酸塩ほぼ100%に変化させることができる。向流再生プロセスにおいて、捕集器媒体を炭酸塩の形態にすることが可能であり、その一方で炭酸塩の再生溶液は重炭酸塩溶液に変化する。その再生溶液は、重炭酸塩の形態になれば完全に担持された状態であるが、その理由は、それがもはや捕集器媒体からそれ以上の重炭酸塩を除去することができないからである。
【0077】
重炭酸塩の脱水と中和(上記参照)によって、担持状態の再生溶液から捕捉されたCO
2を除去するために、藻類がそのプロセスに導入される。藻類は、バイオマス生長のために、その遊離状態となったCO
2を利用する。そして再生溶液は、重炭酸塩から元の炭酸塩の溶液に変化する。
【0078】
このプロセスにおいては、炭酸塩再生溶液と捕集器媒体はリサイクルさせるが、その一方で環境空気のCO
2は藻類バイオマスへと変化する。このことが、
図11に示されている。
【0079】
このプロセスは、イオン交換捕集器媒体が空気のCO
2を吸収するサイクルを与える。その吸収の間に、捕集器媒体が炭酸塩から重炭酸塩の形態に変化する。次いでその再生溶液が、担持状態の捕集器媒体から空気のCO
2を引き出す。この交換において、捕集器媒体は元のその炭酸塩の形態へと戻り、それに対して再生溶液は炭酸塩から重炭酸塩溶液へと変化する。最後に、藻類が、担持状態の再生溶液から空気中CO
2を除去して、バイオマスの中にそれを固定化する。このステップにおいては、藻類が、重炭酸塩からCO
2と炭酸塩への反応の触媒作用を果たす。CO
2の炭素が藻類のバイオマスの中に結合される。炭酸塩は溶液の中に残る。こうして得られた再生溶液は炭酸塩の形態である。
【0080】
本発明のまた別な実施態様においては、藻類の培養溶液を、捕集器の再生溶液として使用する。このことは、その捕集器再生溶液が、炭酸塩に加えて、藻類が必要としているその他の栄養素も含んでいるということを意味している。それらの栄養素の中には、捕集器媒体とのイオン交換の際に炭酸塩アニオンと競合するようなアニオンも存在している。
【0081】
このプロセスにおいては、珪藻植物は使用しないが、それは、珪藻植物はシリカを必要とするが、シリカは、炭酸塩洗浄を用いては捕集器媒体から十分に除去できないからである。
【0082】
藻類の培地に典型的に見出されるその他のアニオン性の栄養素は、硝酸塩(NO
3−)、硫酸塩(SO
4−2)、およびリン酸塩(PO
4−3)である。リンは、pHに依存して、二塩基性リン酸塩(HPO
4−)として、または一塩基性リン酸塩(H
2PO
4−)として存在することもできる。
【0083】
典型的な藻類培地における硝酸塩、硫酸塩およびリン酸塩の濃度は、次の通りである。
【0085】
しかしながら、先行技術の示すところでは、藻類は、典型的な培地に含まれているよりは遙かに低い栄養素濃度で生長することができる。
【0086】
捕集器媒体の上での栄養素濃度の効果を推定するために、以下の割合で栄養素含有再生溶液を混合した:0.14MのCO
3−2、0.04MのNO
3−、0.0017MのSO
4−2、および0.0017MのH
3PO
4−。これらは、藻類の培地に見出しうる最高濃度を表しており、従って、最悪のケースのシナリオである。
【0087】
次いで、捕集器媒体をこの「最悪のケース」の溶液を用いてフラッシュして、その溶液と捕集器媒体との間で平衡に達するようにする。炭酸塩溶液のpHにおいては、リンは二塩基性リン酸塩(HPO
4−2)として存在している。二塩基性リン酸塩は、CO
2を吸収させるには十分な塩基性である。したがって、捕集器媒体に二塩基性リン酸塩アニオンが存在していることによって、その媒体のCO
2取り込み性能が低下するということはないであろう。平衡状態においては、捕集器媒体の全交換サイトの約50%が、炭酸塩およびリン酸塩イオンで占められ、50%が硝酸塩および硫酸塩で占められていることが判った。他の栄養素が炭酸塩よりも圧倒的に多いが、それらが完全に置き換わる訳ではなく、むしろ、アニオン平衡が成立していて、それは、捕集器媒体にさらなる量の溶液を加えても変化しない。
【0088】
実験から、最悪のケースのシナリオにおいては、捕集器媒体がそのCO
2取り込み性能の約50%を放棄することが判った。しかしながら、上述の検討からも判るように、溶液中の栄養素濃度は、藻類が生長している間に、顕著に低下させることができる。たとえば、硝酸塩は、無機炭素に次いで圧倒的に最も豊富な栄養素であるが、0.002M、すなわち最悪のケースのシナリオ実験で使用された濃度のほんの5%まで低下させることができる。さらに、リン酸塩は最悪のケースのシナリオの45%にまで低下する。
【0089】
さらに、栄養素が低減した溶液を用いて洗浄した捕集器媒体は、そのCO
2取り込み性能の約20%を放棄することになるであろう。したがって、その捕集器媒体を使用し、藻類生長媒体から取り出した炭酸塩溶液を用いてそれを洗浄することが可能となる。
【0090】
藻類は、代謝または崩壊の際に、溶液の中に有機化合物を分泌または放出するであろう。それらの有機物は、その溶液を捕集器媒体に適用するより前に、その溶液から捕捉する。有機物の捕捉は、吸着剤タイプのイオン交換樹脂またはその他のプロセスを用いて実施するのがよい。
【0091】
このプロセスにおいては、珪藻植物は使用しないが、それは、珪藻植物はシリカを必要とするが、シリカは、炭酸塩洗浄を用いては捕集器媒体から十分に除去できないからである。
【0092】
本発明の実施態様において好適な藻類は、次のような特性を有するものである:それらは、高イオン強度液体に順応する;それらは、8.5からほぼ11の範囲のpHにおいて生長することができる;それらは、徐々に起きるpH変化に耐えられる;それらは、それらの炭素源として重炭酸塩を使用することができる;それらは、栄養素としてのシリカをほとんど必要としない;それらは、溶液のpHを8.5から11以上にまで変化させることが可能である;それらは、栄養素濃度を低いレベルまで下げることができる;それらは、生化学、農業、水産業、食品、バイオ燃料などにおいて使用することができる。
【0093】
アルカリ性の水中に住む、たとえばスピルリナ・プラテンシス(Spirulina platensis)、スピルリナ・フジフォルミス(Spirulina fusiformis)、スピルリナ(Spirulina)種、テトラエドロン・ミニマム(Tetraedron minimum)などの藻類が有望な候補であるが、これらに限定される訳ではない。
【0094】
この実施態様には種々の代替え方法が存在する。担持状態の捕集器溶液(栄養素を欠乏させた重炭酸塩溶液)を、フレッシュな栄養素と共に藻類の培地に添加する;藻類の培地が、その無機炭素源として重炭酸塩を利用し、重炭酸塩の炭素の約50%をバイオマスの中に取り込み、残りの50%を炭酸塩アニオンに変化させる。同時に、藻類の培地によって、溶液中の栄養素濃度が低下する。その培地を濾過して、藻類のバイオマスを収穫し、その一方で栄養素が欠乏した溶液をCO
2捕集器に向けて流す。その栄養素が欠乏した溶液から、捕集器媒体にとって有害な有機物およびその他の物質を除去する。そこで今や炭酸塩リッチとなった溶液を使用して、捕集器を再生させる。そのプロセスにおいては、それぞれの炭酸塩アニオンを、捕集器溶液が担持状態になるまで、2個の重炭酸塩アニオンによって置換する。担持状態の捕集器溶液を、フレッシュな上述のような栄養素と共に、藻類の培地に添加する。
【0095】
そのプロセスは、実際の場所や藻類のタイプなどにより、連続ループまたはバッチプロセスの、いずれかより実際的な方法として実施することができる。そのプロセスでは、既に使用され実証されている藻類培養技術を用いることもできるし、あるいは、新規な技術を用いることもできる。たとえば、カリフォルニア(California),ハワイ(Hawaii)、フィリピン(the Philippines)およびメキシコ(Mexico)などの土地においては、スピルリナ(Spirulina)、クロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)、アンキストロデスムス・ブラウニイ(Ankistrodesmus braunii)およびその他の種を戸外の池で培養することに成功した。国立再生エネリギー研究所(the National Renewable Energy Laboratory)(NREL)によれば、戸外の池、たとえば、いわゆる「レイス・ポンズ(race ponds)」が、藻類の大量のバイオマスを生長させるには最も効率的な方法である。
【0096】
培養には、太陽エネルギー、人工照明またはそれら両方を使用してもよいが、いずれにするかは、藻類の種と運転場所に依存する。藻類の培養溶液を撹拌して、光の進入度が最も高いゾーンに藻類を戻してやってもよい。あるいは、鏡、光ファイバーおよびその他の手段を用いて、藻類の培地に光を持ち込むこともできる。
【0097】
藻類は、溶液の中に懸濁させても、固定化させてもよい。懸濁させる場合には、藻類はそれら自体の生長パターンたとえば単細胞、コロニー、凝集塊などに従う。天然の生長パターンが、工業的に使用する場合にも最適な適合になるとは限らない。たとえば、小型の単細胞の藻類では、採取プロセスを構成する必要があるかもしれない。
【0098】
たとえばマクロ藻類のように、藻類が、それ自体表面に付着して、自然に固定化されることもあり得る。あるいは、藻類は、k−カラゲーナンもしくはアルギン酸ナトリウムを使用したビーズ中、ポリウレタンフォーム中、フィルター材料上、またはカラム充填物上のバイオフィルムとして、あるいはその他の方法で固定化することができる。
【0099】
固定化された状態においても、藻類をたとえばビーズの形態でさらに懸濁させ、溶液と共に移動させることもできる。別な方法として、その固定化された藻類をカラムまたはその他の装置の固定相とし、それに対して溶液を浸透通過させてもよい。
【0100】
本発明のまた別な実施態様においては、捕集器媒体を藻類の培地の中に浸漬させる。これは、バッチプロセスで実施することも、連続プロセスで実施することも可能である。バッチプロセスにおいては、捕集器媒体のバッチの、藻類の培地の中への浸漬と、環境空気への暴露とを、交互に実施する。連続プロセスにおいては、捕集器媒体を連続的に経路にそって移動させ、その経路の上で、藻類の培地の中への浸漬と空気への暴露とを交互に実施する。最も容易なやり方は、捕集器媒体の円板として、それをその中心のまわりに連続的に回転させる。その円板を、その中心点まで藻類の培地に浸して、いつの時点であっても、捕集器媒体の半分は液体の中に浸漬され、残りの半分が空気に暴露されているようにする。
【0101】
本発明のこの実施態様においては、捕集器媒体は、高栄養素含量の時点、および低栄養素含量の時点に、藻類の培養溶液の中に浸漬できるかもしれない。したがって、その捕集器媒体のCO
2容量は、その全容量の50%〜80%の範囲となるであろう。空気暴露の時間を調節して、性能の低下に見合うようにすることができる。
【0102】
図12を参照すると、本発明のまた別な実施態様で、藻類を担持状態の捕集器溶液の中で洗浄することによって、捕集器溶液から藻類へと重炭酸ナトリウムを移送することが開示されている。しかしながら、捕集器溶液に栄養素を添加することはないであろう。その代わりに、栄養素富化した炭素欠乏性の溶液からなる、第二の分離洗浄を介して、藻類に栄養素が与えられるであろう。
【0103】
このプロセスにおいては、藻類は、栄養素欠乏性の重炭酸塩溶液(担持状態の捕集器溶液)と、無機炭素欠乏性の栄養素溶液326とに交互に浸漬されるであろう。それらの洗浄の間では、短時間の洗い流しサイクルを採用する。その洗い流しは、それに先行する洗浄液の溶液に添加する。
【0104】
栄養素および重炭酸塩洗浄液を循環させることによって、使用される藻類種に最適な状態となるであろう。重炭酸塩溶液(担持状態の捕集器溶液)の炭酸塩溶液(フレッシュな捕集器溶液)への転換を最適化させるためには、1種または複数の藻類種を混合してもよいし、あるいは順次に使用してもよい。フレッシュな捕集器溶液は濾過をして粒子状物質を除去し、有機分子またはその他の有害物を浄化した後で、捕集器媒体に適用する。
【0105】
そのプロセスは、懸濁させた藻類または固定化させた藻類を使用するように設計することができる。藻類を懸濁させる場合には、そのプロセスはバッチプロセスとして運転しなければならず、また藻類を溶液から濾過しなければならない。濾過を容易にするためには、粒子サイズを大きくするために、藻類を懸濁させたビーズに「固定化」してもよい。
【0106】
固定化された藻類を含むプロセスでは、自然に生長して固定化された藻類、たとえば自体表面に付着するマクロ藻類、またはバイオフィルムを形成するミクロ藻類などを使用することができる。
【0107】
本出願の他の箇所で開示されているその他の方法に加えて、カラム、傾斜導水路、池またはその他の容器の中で藻類を固定化することも可能である。それらの容器は、重力で流体が流れるような配置とするのがよい。それらの容器の壁面または床面上、および/またはその中に組み込まれた板、充填物などの構造物の上で、固定化させることができる。必要に応じて、天然光、人工照明、鏡、光ファイバーなどのいずれかを用いて、容器の中に光を持ち込む。
【0108】
図13を参照すると、本発明のまた別な実施態様では、担持状態の捕集器溶液410から藻類の培養溶液416へ疎水性微孔質膜434を通過させて、ガス状のCO
2を移送させる。ガス状のCO
2は、重炭酸塩溶液から疎水性膜を通過して炭酸塩溶液の中に移行させることができ、その二つの液体流れの間のCO
2の分圧差は、その移送を起こさせるには十分な大きさである。水の移送は、より希薄な溶液からより濃厚な溶液へとされていた。その膜が疎水性であるために、その移送は、ガス状の水分子についてのものである。
【0109】
単純化すれば、そのプロセスは、微孔質の疎水性膜によって分離された二つのハーフセルと記述することができる。第一のハーフセル438が、担持状態の捕集器溶液(重炭酸ナトリウム溶液)を保持しているのに対して、第二のハーフセル418は、藻類の培地(栄養素および藻類を含む炭酸ナトリウム溶液)を保持している。
【0110】
捕集器溶液のハーフセルの反応は次式と定義される:
2HCO
3−(aq) → CO
2(g) + CO
3−2(aq) + H
2O
これに続いて、膜を通過してのCO
2(g)の藻類の培地ハーフセルへの拡散が起きる。藻類の培地のハーフセルにおける反応は、下記の二つの内の一つに従うであろう:
藻類がCO
2(g)を吸収するか、
または、
CO
3−2(aq) + CO
2(g) + H
2O → 2HCO
3−(aq)
および
HCO
3−(aq) + OH
− → CO
3−2(aq) + H
2O
【0111】
ハーフセルの反応からも判るように、重炭酸塩が反応して、ガス状のCO
2の脱気を伴いながら炭酸塩となるにつれて、捕集器溶液の中のpHは連続的に高くなっていくであろう。バランスのとれた系においては、ガス状CO
2が藻類の生長によってバイオマスの中に固定化されるので、藻類の培養溶液はそのpHを変化させないであろう。藻類の培地は、炭酸塩溶液に近いのが好ましい。その場合、それは、かなりの量の重炭酸塩を含まないであろう。この状況は、捕集器溶液と藻類の培地との間のガス状のCO
2分圧差を最大化させるであろう。
【0112】
それら二つのハーフセルの物理的配置は、本明細書に記載したような各種の形態をとることができるが、それらに限定される訳ではない。それぞれの配置では、液−膜接触面積の溶液容積に対する比率を最適化する。一般的には、藻類の培地の中に浸漬させた膜のチャンネルに捕集器溶液を通過させるのが有利であるが、その理由は、このことによって、藻類の培地に光を供給することが可能となるからである。藻類の培地が膜の導管(conduit)の中に含まれているような場合には、その導管の内側に光を供給する。
【0113】
その膜の導管は各種の形状をとることができる。たとえば、それらは平行な膜のシートであってもよく、それによって、膜の間に挟まれた溶液がシート状の流れとなる。あるいは、それらが筒状であって、その筒の断面が各種の形態、たとえば、円、正方形、長方形、波形などをとっていてもよい。溶液の中での経路の長さを大きくする目的で、筒がらせん状またはその他の形状になっていてもよい。
【0114】
そのプロセスは、バッチプロセス、連続ループプロセス、またはそれらの各種組合せとして、実施することができる。必要に応じて、光と栄養素を供給する。
【0115】
純粋なバッチプロセスにおいては、1バッチの担持状態の捕集器溶液を、1バッチの藻類の培地と膜接触させ、平衡に達するまで放置する。
【0116】
純粋な連続ループプロセスにおいては、両方の溶液を連続ループ中に流す。担持状態の捕集器溶液を、膜の経路に流し、そこを流れている間に、それがガス状のCO
2を藻類溶液に移送させ、それから捕集器媒体のための再生系に入り、そこで、CO
2を担持してから、膜の導管の中に再びはいる。藻類溶液は、膜の経路を通過して流れ、藻類がガス状のCO
2を固定化し、そこから、収穫系420に入り、そこで藻類の一部または全部を溶液から取り出し、次いで、新規なCO
2の固定化および藻類の生長をさせるために、膜系の中に再びはいる。連続流れまたはループプロセスでは、それら二つの流れは並流でも、あるいは向流でも使用することができる。
【0117】
疎水性膜を通過させてCO
2を移送させることの主なメリットは、藻類の培地から捕集器溶液へとイオンが横断できない点にある。藻類溶液の中に含まれるカチオンには、アルカリ土類金属が含まれており、それが、pHが上昇したときに捕集器溶液の経路に沿ってスケーリングを起こす可能性がある。藻類溶液の中に含まれるアニオンたとえば、硝酸塩および硫酸塩は、捕集器媒体上の炭酸塩と競合し、そのために、捕集器媒体のCO
2保持能力を低下させる。したがって、イオン類が捕集器溶液の中へ入らないようにするのが有利である。藻類のための栄養素の構成成分であるイオンが、捕集器溶液の中に入っていけないために、藻類の培地の栄養素の含量を、藻類を生長させるための最適な濃度に常に保つことができる。
【0118】
それに加えて、従来技術が開示していることであるが、疎水性で、さらには疎有機性でもある膜は、藻類溶液から捕集器溶液への有機分子の移送を妨害することができる。捕集器溶液の中へ移送される可能性がある各種の有機物が、それが捕集器媒体の中へ入る前に、捕集器溶液から除去されるであろう。たとえば、このことは、イオン交換樹脂の上に有機化合物を捕捉させることによって実施することができる。
【0119】
膜は、その疎水性、CO
2透過性、疎有機性、および水漏出圧力などの面から選択される。このプロセスに好適な藻類は、炭酸塩溶液中で繁茂し、ガス状のCO
2と重炭酸塩の両方を利用できるようなものである。しかしながら、プロセス全体を最適化する目的でその他の藻類もまた使用することができる。
【0120】
図14を参照すると、本発明のまた別な実施態様では、捕集器溶液410から藻類の培養溶液418の中へ、アニオン透過性の膜を通して重炭酸塩を移送している。捕集器溶液を、そのアニオン透過性の膜434の一方の側と接触状態にさせ、それに対して藻類の培養溶液を、その膜のもう一方の側と接触状態にさせる。
【0121】
それらの溶液が、濃度勾配に従ってアニオンを交換する。このイオン交換を最適化するためには、溶液を向流で膜面に流すことができる。系の他の部分を最適化する目的で、それらの溶液を並流で流すことも可能である。別な方法として、そのプロセスを、連続流動プロセスよりはバッチプロセスとして設定することもできる。
【0122】
藻類の培養溶液は、溶液中に懸濁された藻類と共に、あるいは藻類なしで、そのアニオン交換プロセスの中に導入することができる。
図15を参照されたい。溶解されている有機化合物は、膜チャンバーに入るより前に、その藻類の培養溶液から除去することができる。
【0123】
栄養素の影響は先に説明した通りである。藻類を含む藻類の培地全体を膜交換器の中へ入れる場合には、その栄養素濃度が高く、捕集器溶液が高い栄養素濃度を得るであろう。このことによって、捕集器媒体のCO
2取り込み容量が50%にまで低下する。藻類を含まない培養溶液を膜交換器の中へ入れる場合には、そのプロセスを、栄養素欠乏性の溶液が入るように設定することが可能であり、その場合、捕集器の容量の低下は20%までとなるであろう。
【0124】
二つの溶液の間でカチオンが交換されることはなく、このことは、スケーリングの可能性を大幅に低下させる。
【0125】
別な方法として、藻類バイオリアクターの合成燃料製造ユニットに捕捉したCO
2を直接注入することも可能である。特に単純な設計では、湿度感受性イオン交換樹脂を担持している、パドルホイールまたはディスクまたは類似のものを備えさせ、それを、空気からCO
2を抽出する、主として水の表面より上に暴露させ、次いで徐々に回転させて、一部分を水の表面より下へ沈めて、そこでCO
2を放出させて、空気から水へのCO
2の高い移送率を得る。
【0126】
図16を参照すると、また別な実施態様においては、第一の例示的な実施態様と同様の、抽出ステーション140においてややアルカリ性の洗浄水を用いてイオン交換樹脂にシャワーして、バイオリアクターからの水の蒸発ロスおよび製造ロスを補給することが可能である。洗浄水が第一樹脂の上をしたたり流れるので、それが結合されたCO
2を拾い上げ、それをバイオリアクター系142の中へ垂らしこむ。
【0127】
別な方法として、
図17に示しているように、夜間に樹脂142を水に加えておいて、呼吸のために藻類から失われる可能性があるCO
2を保持してもよい。したがって、本願発明者らは、夜間にバイオリアクターからのCO
2の放出を防止することによって、藻類のCO
2取り込み効率を改良することが可能である。そのような実施態様においては、第二の樹脂が系における炭素バッファーとして機能する。夜間には、このバッファーが藻類によって放出されたCO
2を貯蔵し、それに対して日中はそれが藻類に対してCO
2を供給するが、ただし、そのCO
2含量は、空気捕集器によって捕集されたCO
2によって補充されてもよい。一旦捕捉されれば、CO
2は、第一樹脂を再生するために使用されたより高濃度の洗浄液から樹脂に移送される。空気捕集器から藻類を排除するための水の濾過は一般的に問題とはならないが、その理由は、空気側の第一樹脂が、サイクルの間では完全に乾燥されるように設計されているからである。
【0128】
第二樹脂へのこの移送もまた、
図1に示したような、水との直接的な接触を避ける湿度スイングを実施することによって、低圧力の密閉加湿系の中での直接的な接触なしで実施することが可能である。そのような系は、CO
2をガス相に戻さないという上述の利点を失いはするが、それは、化学薬品を使用することなく、藻類池を一定のpHとする緩衝作用という別な利点を有するであろう。
【0129】
本発明の一つの好ましい実施態様においては、水のロスを低下させ、収量を増やし、藻類をよりよく限定するために、本願発明者らは、集光器を有するバイオリアクターを採用する。そのような系は、光ファイバーの光パイプに光を供給する鏡または反射系によって取り囲んだガラス管で構成されていて、大容量の液体全体に光を分散させる。集光器を有するバイオリアクターを使用することの利点は、それらによって水の表面が大幅に減少し、そのために水のロスが減少する点にある。したがって、藻類リアクターを直接妨害することなく、CO
2をすぐ近くで捕集することができる。実際のところ、空気捕集器は、空気流れを作るために鏡系を利用することができる。
【0130】
藻類は典型的には、光が流入している時間帯ではCO
2を固定化し、暗黒サイクルにはCO
2を吐き出す。さらなる捕集器媒体を系の戦略的な位置に追加することによって、CO
2を捕捉する。その捕集器媒体は、たとえば、藻類の培地の中に浸漬させることができる。この場合においては、呼吸の際には、培養溶液のpHが低くなるために、それが重炭酸塩を蓄積して炭酸塩を放出するが、光合成の間では、培養溶液のpHが高くなるために、それが重炭酸塩を放出し、炭酸塩を蓄積することになるであろう。
【0131】
捕集器媒体はさらに、培養溶液から放出されたCO
2を吸収させるために、藻類の培地に近接した空間に配置することも可能である。このことは、密閉構造の場合には特に有効となるであろう。培養溶液の近傍に配置された捕集器媒体は、先に挙げたプロセスの一つを使用して再生されるであろう。
【0132】
本出願には、プロセスを最適化させるのに必要な藻類の培地の各種の組合せを使用した、本特許に記載された無機炭素の移送方法の各種の組合せを含むものとする。最適化に含まれるのは、炭素移送効率、炭素移送速度、バイオマスの市場価値(たとえば脂肪含量、デンプン含量など)、藻類の産生効率、および各種気候条件または気候調節条件下における藻類の生長速度などであるが、これらに限定される訳ではない。
【0133】
本発明について、環境空気からCO
2を抽出し、その抽出されたCO
2を湿度スイングによって温室に送達させるための、湿度感受性イオン交換樹脂材料を採用した好ましい実施態様に関連させて説明してきたが、本発明に伴う利点は、本願発明者らの上述の特許文献1および特許文献2(代理人整理番号グローバル(Global)05.02PCT)に記載された、いくつかのスキームに従った吸収剤を使用して環境空気から二酸化炭素を抽出すること、ならびに吸収剤を適切に操作することによって温室の中へ抽出されたCO
2を放出させることによって実現することができる。