特許第5849488号(P5849488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5849488
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年1月27日
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20160107BHJP
【FI】
   H02M3/28 X
   H02M3/28 B
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-158863(P2011-158863)
(22)【出願日】2011年7月20日
(65)【公開番号】特開2013-27120(P2013-27120A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2014年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 啓
【審査官】 鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−023461(JP,A)
【文献】 特開2000−060118(JP,A)
【文献】 特開2010−109344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00− 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電源とトランスの一次巻線とに直列に接続されたスイッチング素子と、当該スイッチング素子をオンオフ制御してスイッチング動作させるスイッチング制御回路とを備え、
前記トランスに生じる二次起電力を整流平滑して直流電力を出力するスイッチング電源装置であって、
前記入力電源の投入時に、前記入力電源又は前記スイッチング素子の高圧電極から入力される高圧電源を使って前記スイッチング制御回路に動作電流を供給する起動用電流供給回路と、
前記スイッチング動作が開始された後の定常時に、前記トランスの二次起電力による低圧電源を使って前記スイッチング制御回路に動作電流を供給する定常時電流供給回路と、
前記定常時に前記起動用電流供給回路をオフ状態に設定する起動時制御回路と、
前記起動用電流供給回路がオフ状態で、前記高圧電源から前記起動用電流供給回路を経由して接地端子に流れるもれ電流の経路に、前記低圧電源を使って前記もれ電流を阻止もしくは低下させるバイアス電圧を供給するバイアス電圧供給回路とを具備すると共に、
前記起動用電流供給回路は、前記スイッチング制御回路への動作電流の供給をオンオフするエンハンスメントモードFETと、
前記高圧電源を使って前記エンハンスメントモードFETのゲート端子にオン電圧を供給するデプレッションモードFETとを具備し、
前記バイアス電圧供給回路は、前記高圧電源から前記デプレッションモードFETを経由して接地端子に流れる前記もれ電流の経路に、前記低圧電源を使って前記もれ電流を阻止させるバイアス電圧を供給することを特徴とするスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング動作によって出力電圧制御を行うスイッチング電源装置に関し、特に起動回路を有するスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング動作によって出力電圧制御を行うスイッチング電源装置は、入力電源とトランスの一次巻線とに直列に接続されたスイッチング素子と、当該スイッチング素子をオンオフ制御してスイッチング動作させるスイッチング制御回路とを備え、トランスの二次巻線に生じる二次起電力を整流平滑して直流電力を出力するように構成されている。スイッチング制御回路への動作電流の供給は、一般的にトランスの補助巻線に生じる二次起電力を用いる電流供給回路によって行われるが、起動時には、二次起電力を用いることができないため、入力電源を直接用いた起動用電流供給回路が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は、従来のスイッチング電源装置の回路構成を示す回路構成図である。
ダイオードがブリッジ構成された整流回路DBの交流入力端子ACin1、ACin2には商用交流電源ACが接続され、商用交流電源ACから入力された交流電圧が全波整流されて整流回路DBから出力される。整流回路DBの整流出力正極端子と整流出力負極端子との間には、平滑コンデンサC1が接続されている。また、整流回路DBの整流出力負極端子は接地端子に接続されている。これにより、商用交流電源ACを整流回路DBと平滑コンデンサC1とで整流平滑した直流電源が得られる。
【0004】
1次側(入力側)から2次側(負荷2側)へ電力を供給するトランスTは、一次巻線P1および補助巻線P2と、二次巻線S1とで構成されている。整流回路DBの整流出力正極端子と接地端子との間には、トランスTの1次巻き線P1とパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等のスイッチング素子Q1とが直列に接続されている。スイッチング素子Q1のゲート端子はスイッチング制御回路1に接続されている。これにより、スイッチング制御回路1によってスイッチング素子Q1がオンオフ制御され、トランスTの一次巻線P1に与えられた電力が、トランスTの二次巻線S1に伝達され、トランスTの二次巻線S1に脈流が発生する。
【0005】
トランスTの2次側巻き線S1の両端子間には、整流ダイオードD1を介して平滑コンデンサC2が接続され、トランスTの2次側巻き線S1に誘起される二次起電力は、整流ダイオードD1と平滑コンデンサC2により整流平滑され、直流電力として負荷(RL)2に供給される。なお、平滑コンデンサC2の正極端子に接続されているラインが電源ラインとなり、平滑コンデンサC2の負極端子が接続されたラインは接地端子に接続されたGNDラインとなる。
【0006】
電源ラインとGNDラインとの間には、フォトカプラの発光ダイオードPCDとエラーアンプ3とが直列に接続されている。エラーアンプ3は、電源ラインとGNDラインとの間に接続され、出力電圧と図示しない内部の基準電圧との差に応じて、フォトカプラの発光ダイオードPCDに流れる電流を制御する。また、スイッチング制御回路1には受光トランジスタPCTRが接続されており、出力電圧に応じたフィードバック(FB)信号が2次側の発光ダイオードPCDから1次側の受光トランジスタPCTRに送信され、スイッチング制御回路1に入力される。
【0007】
トランスTの補助巻線P2の両端子間には、整流ダイオードD2を介して平滑コンデンサC3が接続され、整流ダイオードD2と平滑コンデンサC3との接続点がスイッチング制御回路1及び起動時制御回路4に接続されている。トランスTの補助巻線P2、整流ダイオードD2及び平滑コンデンサC3は、スイッチング制御回路1に動作電流を供給する定常時電流供給回路として機能し、補助巻線P2に発生した二次起電力は、ダイオードD2及び平滑コンデンサC3により整流平滑されて、スイッチング制御回路1及び起動時制御回路4に供給される。
【0008】
整流回路DBの整流出力正極端子とトランスTの1次巻き線P1との接続点には、デプレッションモードFETからなるスイッチ素子N1のドレイン端子が接続されていると共に、スイッチ素子N1のゲート端子・ソース端子間にバイアス用の抵抗R1が接続されている。また、スイッチ素子N1のソース端子は抵抗R2を介して整流ダイオードD2と平滑コンデンサC3との接続点に接続され、スイッチ素子N1のゲート端子がnpnバイポーラトランジスタからなるスイッチ素子N2を介して接地端子に接続されている。
【0009】
スイッチ素子N2のオンオフは起動時制御回路4によって制御される。商用交流電源ACの投入直後は、起動時制御回路4によってスイッチ素子N2はオフ状態に制御され、スイッチ素子N1のゲート−ソース間電圧が0Vになるため、スイッチ素子N1がオン状態となる。これにより、スイッチ素子N1を介してスイッチング制御回路1及び起動時制御回路4に動作電流が供給される。なお、抵抗R2は、オン状態のスイッチ素子N1に流れる電流を制限するための素子である。スイッチ素子N1、抵抗R1、R2、スイッチ素子N2及び起動時制御回路4が起動用電流供給回路として機能する。
【0010】
2次側からのFB信号によってトランスTの二次起電力が立ち上がったことが検出されると、起動時制御回路4はスイッチ素子N2をオンさせることで、スイッチ素子N1をオフ状態とする。これにより、定常時には、補助巻線P2に発生した二次起電力がダイオードD2及び平滑コンデンサC3によって整流平滑され、スイッチング制御回路1及び起動時制御回路4の動作電流として供給される。なお、抵抗R1は、スイッチ素子N1がオフ状態の時に、スイッチ素子N1、抵抗R1、スイッチ素子N2の経路で流れる電流を制限するための素子であり、抵抗R2よりも数100〜1000倍程度の抵抗値を有する。
【0011】
また、図5に示すスイッチング電源装置において、点線で示すように、スイッチング素子Q1やスイッチング制御回路1をIC化した場合には、ST端子と、D端子、GND端子と、FB端子と、Vcc端子とが設けられる。ST端子は、スイッチ素子N1のドレイン端子が接続され、入力電源、すなわち平滑コンデンサC1の正極端子とトランスTの一次巻線P1の一端との接続点が接続される端子である。D端子は、スイッチング素子Q1のドレイン端子が接続され、トランスTの一次巻線P1の他端が接続される端子である。GND端子には、接地端子が接続され、FB端子には、2次側からのFB信号が入力される。また、Vcc端子は、スイッチング制御回路1及び起動時制御回路4の動作電圧Vccが印加される端子であり、整流ダイオードD2と平滑コンデンサC3の正極端子との接続点が接続される。
【0012】
ここで、ST端子とD端子とは、高圧が入力される端子である。このように高圧が入力される端子が2本あると、端子間の絶縁対策が大変になるため、図6に示すように、D端子とST端子とを共通化したD/ST端子を設け、スイッチング素子Q1のドレイン端子への入力と、スイッチ素子N1のドレイン端子への入力とを共通化させることが行われている。この場合には、動作中にD/ST端子の電圧よりもVcc端子の電圧が高くなる場合があるため、Vcc端子からD/ST端子への逆流防止回路(ダイオードD3)が起動用電流供給回路に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2000−23461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、図5に示す従来技術では、定常的にはスイッチ素子N1をオフ状態となるため、定常的に生じる電力損失を削減することができるが、スイッチ素子N2がオンであるため、スイッチ素子N1、抵抗R1、スイッチ素子N2の経路で50μA以下のもれ電流が流れる。定常的に流れるもれ電流は、50μA以下と低いが、スイッチ素子N1のドレイン電圧が高いため、消費電力が大きくなってしまうという問題点があった。仮に、スイッチ素子N2がオン状態でのスイッチ素子N1のゲート−ソース間電圧が−5V(スイッチ素子N1のソース電圧Vsが5V)、抵抗R1が2.5MΩだとすると、もれ電流(ドレイン電流)は2μAとなり、スイッチ素子N1のドレイン電圧が380Vならば、スイッチ素子N1の消費電力は0.78mWになってしまう。
【0015】
また、図6に示す従来技術では、スイッチ素子N1のドレイン電圧がトランスTで昇圧され、スイッチ素子N1の消費電力がさらに大きくなってしまうという問題点があった。仮に、スイッチ素子N2がオン状態でのスイッチ素子N1のゲート−ソース間電圧が−5V(スイッチ素子N1のソース電圧Vsが5V)、抵抗R1が2.5MΩだとすると、もれ電流は2μAとなり、スイッチ素子N1のドレイン電圧が500Vならば、スイッチ素子N1の消費電力は1mWになってしまう。
【0016】
本発明の目的は、上記問題点に鑑みて従来技術の上記問題を解決し、起動用電流供給回路による定常時の消費電力を削減することができるスイッチング電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のスイッチング電源装置は、入力電源とトランスの一次巻線とに直列に接続されたスイッチング素子と、当該スイッチング素子をオンオフ制御してスイッチング動作させるスイッチング制御回路とを備え、前記トランスに生じる二次起電力を整流平滑して直流電力を出力するスイッチング電源装置であって、前記入力電源の投入時に、前記入力電源又は前記スイッチング素子の高圧電極から入力される高圧電源を使って前記スイッチング制御回路に動作電流を供給する起動用電流供給回路と、前記スイッチング動作が開始された後の定常時に、前記トランスの二次起電力による低圧電源を使って前記スイッチング制御回路に動作電流を供給する定常時電流供給回路と、前記定常時に前記起動用電流供給回路をオフ状態に設定する起動時制御回路と、前記起動用電流供給回路がオフ状態で、前記高圧電源から前記起動用電流供給回路を経由して接地端子に流れるもれ電流の経路に、前記低圧電源を使って前記もれ電流を阻止もしくは低下させるバイアス電圧を供給するバイアス電圧供給回路とを具備すると共に、前記起動用電流供給回路は、前記スイッチング制御回路への動作電流の供給をオンオフするエンハンスメントモードFETと、前記高圧電源を使って前記エンハンスメントモードFETのゲート端子にオン電圧を供給するデプレッションモードFETとを具備し、前記バイアス電圧供給回路は、前記高圧電源から前記ジャンクションFETを経由して接地端子に流れる前記もれ電流の経路に、前記低圧電源を使って前記もれ電流を阻止させるバイアス電圧を供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、起動用電流供給回路をオフ状態とした時に、高圧電源から起動用電流供給回路を経由して接地端子に流れるもれ電流の経路に、もれ電流を阻止もしくは低下させるバイアス電圧を、低圧電源を使って供給することにより、起動用電流供給回路による定常時の消費電力を削減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係るスイッチング電源装置の第1の実施の形態の回路構成を示す回路構成図である。
図2】本発明に係るスイッチング電源装置の第2の実施の形態における起動用電流供給回路の回路構成を示す回路構成図である。
図3図2に示す起動用電流供給回路の等価回路図である。
図4】本発明に係るスイッチング電源装置の第3の実施の形態における起動用電流供給回路の回路構成を示す回路構成図である。
図5】従来のスイッチング電源装置の回路構成を示す回路構成図である。
図6】D端子とST端子とを共通化した従来のスイッチング電源装置の回路構成を示す回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施の形態)
図1を参照すると、第1の実施の形態のスイッチング電源装置は、図6に示す従来のスイッチング電源装置における起動用電流供給回路の構成に加えて、ダイオードD3と並列に接続された抵抗R3が設けられていると共に、抵抗R2を流れる電流の変動を防止するための定電流回路としてPチャネルのエンハンスメントモードFETからなるスイッチ素子PQ1とが設けられている。スイッチ素子PQ1のソース端子はスイッチ素子N1のゲート端子と抵抗R1との接続点に接続され、スイッチ素子PQ1のドレイン端子は接地端子に接続されている。また、スイッチ素子PQ1のゲート端子はダイオードD3と抵抗R2との接続点に接続されている。
【0021】
商用交流電源ACの投入直後のスイッチ素子N1がオン状態(起動時)では、並列に接続された抵抗R3及びダイオードD3に電流が流れて平滑コンデンサC3を充電し、平滑コンデンサC3の充電電圧が所定の電圧に達すると、スイッチング制御回路1がオンしてスイッチング動作を開始させる。同時に起動時制御回路4は、スイッチ素子N2をオン状態にしてスイッチ素子N1をオフさせる。
【0022】
定常時になり、スイッチ素子N1がオフ状態になると、スイッチ素子N1のソース電圧Vsは、定常時の動作電圧Vccを抵抗R3及び抵抗R2と抵抗R1とで分圧した電圧になる。従って、抵抗R3の抵抗値でスイッチ素子N1のソース電圧Vsが決定される。第1の実施の形態では、スイッチ素子N1のソース電圧Vsとスイッチ素子N1のゲート電圧(0V)との電位差、すなわち、スイッチ素子N1のゲート−ソース間電圧がピンチオフ電圧以下になるように、抵抗R3の抵抗値が設定されている。抵抗R3は、バイアス電圧供給回路として機能する。すなわち、これにより、抵抗R2と抵抗R1との接続点には、高圧電源が入力されるD/ST端子からスイッチ素子N1に流れるもれ電流(ドレイン電流)を阻止するバイアス電圧が低圧電源である動作電圧Vccから抵抗R3を介して供給される。従って、定常時には、スイッチ素子N1にもれ電流が流れることなく、スイッチ素子N1のドレイン電圧よりも低い動作電圧Vccから抵抗R3、抵抗R2、抵抗R1、スイッチ素子N2の経路で電流が流れることになり、消費電力を低減させることができる。
【0023】
動作電圧Vccが最低動作電圧の9Vである場合、図1に示すように、抵抗R1が2.5MΩ、抵抗R3が0.5MΩとし、抵抗R2の抵抗値は抵抗R3の抵抗値に比較して十分に小さいので無視すると、スイッチ素子N1のソース電圧Vsは、7.5Vになる。ここで−7.5Vがスイッチ素子N1のピンチオフ電圧以下であれば、スイッチ素子N1にもれ電流が流れることなく、動作電圧Vcc(9V)から抵抗R3、抵抗R2、抵抗R1、スイッチ素子N2の経路で3μAの電流が流れる。従って、消費電力は、9V*3μA=0.027mWとなり、従来技術と比較して大幅に消費電力を低減させることができる。
【0024】
また、動作電圧Vccが最大動作電圧の30Vである場合、同様に、スイッチ素子N1のソース電圧Vsは、25Vになり、動作電圧Vcc(30V)から抵抗R3、抵抗R2、抵抗R1、スイッチ素子N2の経路で10μAの電流が流れる。従って、消費電力は、30V*10μA=0.3mWとなり、これも従来技術と比較して大幅に消費電力を低減させることができる。
【0025】
以上のように、第1の実施の形態によれば、スイッチ素子N1がオフ状態で、高圧電源からスイッチ素子N1を経由して接地端子に流れるもれ電流の経路に、端子Vccからの低圧電源を使ってもれ電流を阻止するバイアス電圧を、抵抗R3を介して供給することにより、定常時の消費電力を削減することができるという効果を奏する。
【0026】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、チップの構造上、デプレッションモードFETを使用できない場合に、エンハンスメントモードFETと、ジャンクションFET(junction gate field-effect transistor)とを組み合わせて起動用電流供給回路を構成している。
【0027】
図2を参照すると、D/ST端子とVcc端子との間にNチャネルMOSFETからなるスイッチ素子N3と、抵抗R2と、ダイオードD3とが直列に接続されている。また、D/ST端子と接地端子との間にJFET5と、抵抗R4、R5と、スイッチ素子N2とが直列に接続されていると共に、JFET5のゲート端子は接地端子に接続され、抵抗R5とスイッチ素子N2との接続点がスイッチ素子N3のゲート端子に接続されている。JFET5は、スイッチ素子N2がオフ状態(起動時)において、D/ST端子から入力される高圧電源を使ってスイッチ素子N3のゲート端子にオン電圧を供給する。さらに、Vcc端子にダイオードD4のアノードが接続され、ダイオードD4のカソードが抵抗R4と抵抗R5との接続点との間に接続されている。
【0028】
ここで、D/ST端子に入力される電圧を500V、動作電圧Vccを9.6V、スイッチ素子N2がオン状態でのJFET5のソース電圧を15V、抵抗R4の抵抗値を3MΩ、抵抗R5の抵抗値を1MΩ、ダイオードD4の順方向電圧を0.6Vとし、スイッチ素子N2がオン状態(定常時)における、ダイオードD4が接続されていない場合の消費電力と、図2に示すように、ダイオードD4が接続されている場合の消費電力とを検証する。
【0029】
図2において、ダイオードD4が接続されていない場合には、JFET5には、3.75μAのもれ電流が流れることになり、消費電力は、500V*3.75μA=1.88mWになってしまう。
【0030】
これに対し、図2に示すように、ダイオードD4が接続されている場合には、図3に示す等価回路から明らかなように、抵抗R4と抵抗R5との接続点の電圧が9Vになり、JFET5に流れるもれ電流は、2μAに低減する。ダイオードD4は、バイアス電圧供給回路として機能する。すなわち、抵抗R4と抵抗R5との接続点には、高圧電源が入力されるD/ST端子からJFET5に流れるもれ電流を低下させるバイアス電圧が低圧電源である動作電圧VccからダイオードD4を介して供給される。従って、D/ST端子に入力される電圧500Vによる消費電力は、500V*2μA=1mW、また、動作電圧Vcc(9.6V)による消費電力は、(9.6V)*1MΩ=0.09mWとそれぞれなり、合計の消費電力は1.09mWに低減させることができる。
【0031】
なお、動作電圧Vccが12.6Vの場合には、抵抗R4と抵抗R5との接続点の電圧が12Vになり、JFET5に流れるもれ電流は、1μAに低減する。従って、D/ST端子に入力される電圧500Vによる消費電力は、500V*1μA=0.5mW、また、動作電圧Vccを12.6Vによる消費電力は、(12.6V)*1MΩ=0.16mWとそれぞれなり、合計の消費電力は0.66mWにさらに低減させることができる。
【0032】
以上のように、第2の実施の形態によれば、スイッチ素子N3がオフ状態で、高圧電源からJFET5を経由して接地端子に流れるもれ電流の経路に、端子Vccからの低圧電源を使ってもれ電流を低下させるバイアス電圧を、ダイオードD4を介して供給することにより、定常時の消費電力を削減することができるという効果を奏する。
【0033】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では、デプレッションモードFETとエンハンスメントモードFETとを組み合わせて起動用電流供給回路を構成している。
【0034】
図4を参照すると、D/ST端子とVcc端子との間にエンハンスメントモードのMOSトランジスタからなるスイッチ素子N4と、抵抗R2と、ダイオードD3とが直列に接続されている。デプレッションモードFETからなるスイッチ素子N5のドレイン端子がD/ST端子に接続され、スイッチ素子N5のソース端子がスイッチ素子N4のゲート端子に接続されている。スイッチ素子N5のゲート端子はスイッチ素子N2を介して接地端子に接続され、スイッチ素子N5のゲート端子とソース端子との間に抵抗R6が接続されている。また、Vcc端子にダイオードD5のアノードが接続され、ダイオードD5のカソードが抵抗R7を介してスイッチ素子N5のソース端子とスイッチ素子N4のゲート端子との接続点に接続されている。スイッチ素子N5は、スイッチ素子N2がオフ状態(起動時)において、D/ST端子から入力される高圧電源を使ってスイッチ素子N4のゲート端子にオン電圧を供給する。
【0035】
ここで、D/ST端子に入力される電圧を500V、動作電圧Vccを9V、スイッチ素子N2がオン状態でのスイッチ素子N5のソース電圧を5V、抵抗R6の抵抗値を2.5MΩ、抵抗R7の抵抗値を0.5MΩ、ダイオードD4の順方向電圧を0.6Vとし、スイッチ素子N2がオン状態(定常時)における、ダイオードD5が接続されていない場合の消費電力と、図4に示すように、ダイオードD5が接続されている場合の消費電力とを検証する。
【0036】
図4において、ダイオードD5が接続されていない場合には、スイッチ素子N5には、2μAのもれ電流が流れることになり、消費電力は、500V*2μA=1mWになってしまう。
【0037】
これに対し、図4に示すように、ダイオードD5が接続されている場合には、抵抗R6と抵抗R7との接続点の電圧が7Vになる。ダイオードD5及び抵抗R7は、バイアス電圧供給回路として機能する。すなわち、抵抗R6と抵抗R7との接続点には、高圧電源が入力されるD/ST端子からスイッチ素子N5に流れるもれ電流を阻止するバイアス電圧が低圧電源である動作電圧VccからダイオードD5及び抵抗R7を介して供給される。なお、抵抗R7は、スイッチ素子N2がオン状態でのスイッチ素子N5のソース電圧よりも高く、且つスイッチ素子N4のピンチオフ電圧よりも低い電圧に、動作電圧Vccを電圧降下させるために設けられている。抵抗R6と抵抗R7との接続点の電圧が、5Vよりも高いので、スイッチ素子N5にはもれ電流が流れることなく、動作電圧Vcc(9V)から抵抗R7、抵抗R6、スイッチ素子N2の経路で3μAの電流が流れる。従って、消費電力は、9V*3μA=0.027mWとなり、大幅に消費電力を低減させることができる。
【0038】
以上のように、第3の実施の形態によれば、スイッチ素子N4がオフ状態で、高圧電源からスイッチ素子N5を経由して接地端子に流れるもれ電流の経路に、端子Vccからの低圧電源を使ってもれ電流を阻止するバイアス電圧を、ダイオードD5及び抵抗R7を介して供給することにより、定常時の消費電力を削減することができるという効果を奏する。
【0039】
以上、本発明を具体的な実施形態で説明したが、上記実施形態は一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更して実施できることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0040】
1 スイッチング制御回路
2 負荷
3 エラーアンプ
4 起動時制御回路
5 JFET
AC 商用交流電源
C1〜C3 平滑コンデンサ
D1〜D5 ダイオード
DB 整流回路
T トランス
P1 一次巻線
P2 補助巻線
S1 2次巻線
PCD 発光ダイオード
PCTR 受光トランジスタ
PQ1 スイッチ素子
Q1 スイッチング素子
N1〜N5 スイッチ素子
R1〜R7 抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6