(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で付されている符号を〔 〕付で付記して説明すると、特許文献1に記載された係止構造では、略環状に形成された突出部〔2〕が係合部〔210〕の袋状部材内に係合して抜去方向以外の移動が規制されると共に、突出部〔2〕における環状枠部〔7〕の内周面に、本体側の可撓性を有する爪部〔29〕が引っ掛かることで抜去方向の移動が規制されて、ホルダであるベルトクリップ〔21〕が携帯機器〔1〕に係止されるようになっている。
この構造では、突出部〔2〕が中抜きの環状に形成されている。そのため、携帯機器〔1〕に対して高度な信頼性が要求され、例えば係止が解除される方向に大きな動荷重(振動や衝撃)が付与されることが想定される場合、袋状部材内での係合や爪部〔29〕の引っ掛かりにおいて充分な耐力を得て高い保持強度を確保すべく、環状枠部〔7〕を充分厚肉にする必要がある。すなわち、突出部〔2〕は拡径による大型化が避けられない。
また、ホルダに対して汎用性が求められ、種々の携帯機器への適用が想定される場合、質量の大きな携帯機器でも高い安全率で保持強度が確保されている必要がある。この場合にも突出部〔2〕は拡径による大型化が避けられない。
携帯機器〔1〕はできるだけコンパクトで、把持し易いことが求められるので、ホルダ保持構造における携帯機器側の突出した構造部位である突出部〔2〕が大型化することは好ましいことではない。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、携帯機器側の構造が大型化することなく高い保持強度が確保できるホルダ保持構造及びそれを備えた携帯機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は次のいずれかの構成を有する。
1) 本体側から突出して設けられた係合部と、
ホルダ側に設けられた被係合部と、を備え、
前記係合部は、首部と、前記首部の先端に設けられ前記首部の幅より大なる
直径の円板状の台座部と、を備え、
前記被係合部は、前記首部と前記台座部との内の前記首部のみを挿通可能とするスリットを有すると共に前記スリットに前記首部を挿通した状態で前記台座部を前記スリットの延在方向に進退可能に収容するポケット部と、前記台座部が前記ポケット部内に所定距離進入した位置において前記台座部の後尾側周面に係合して前記台座部の後退を規制する可撓爪部と、を備え、
前記台座部は、周方向の所定の位置に、中心側から周縁に向かうに従って前記台座部の先端面から離れるよう形成された傾斜面からなるテーパ部を備え、
前記台座部を
、その中心線まわりに回動させて前記テーパ部が前記可撓爪部と対向する位置に
し、その後、後退させた際に、前記可撓爪部が前記テーパ部の前記傾斜面上を摺動上昇して、前記可撓爪部による前記規制が解除されることを特徴とするホルダ保持構造である。
2) 突出して設けられた係合部を有する携帯機器本体部と、
前記携帯機器本体部の前記係合部を着脱自在に保持する被係合部を有するホルダと、を備え、
前記係合部は、首部と、前記首部の先端に設けられ前記首部の幅より大なる
直径の円板状の台座部と、を備え、
前記被係合部は、前記首部と前記台座部との内の前記首部のみを挿通可能とするスリットを有し前記スリットに前記首部を挿通した状態で前記台座部を前記スリットの延在方向に進退可能に収容するポケット部と、前記台座部が前記ポケット部内に所定距離進入した位置において前記台座部の後尾側周面に係合して前記台座部の後退を規制する可撓爪部と、を備え、
前記台座部は、
その中心線まわりに回動させて周方向の所定の位置を前記可撓爪部と対向する位置にし、その後、後退させた際に、前記可撓爪部による前記規制が摺動上昇して解除されるように、前記周方向の所定の位置に中心側から周縁に向かうに従って前記台座部の先端面から離れるよう形成された傾斜面からなるテーパ部を備えること、
を特徴とする携帯機器である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、携帯機器側の構造が大型化することなく高い保持強度が確保できる、という効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態を、好ましい実施例により
図1〜
図14を用いて説明する。
【0010】
実施例の携帯機器は、ハンディタイプの無線機51である。
図1,
図2に示されるように、無線機51は、外観上の特徴として手で把持可能な筐体部HTと筐体部HTの天面から突出したアンテナATとを備えた本体部52と、本体部52をベルト等に保持するホルダHDを備えている。
本体部52の正面(
図1の左方側)における下方側には操作ボタン群SBが配設され、上方側には内蔵されたスピーカからの音が外部に放出される放音部HB及び声を収録するための収音孔Mが設けられている。
本体部52の背面(
図1の右方側)側には、バックカバーBCが着脱自在に取り付けられている。このバックカバーBCを外すことで本体部52の内部に収容したバッテリを交換できるようになっている。
バックカバーBCには、ホルダ保持構造における本体部52側の構造部材である係合部1が取り付けられている。
係合部1の位置は、係合した状態において、本体部52の重心位置よりも上方にあることが姿勢安定の観点から望ましい。無線機の使用状況を考慮すると、アンテナATは姿勢が安定した状態では上に向いていることが望ましい。実施例の無線機51の本体部52を構成する部品の中で一般的に最も重い部品はバッテリであることから、重心は本体部52の中心よりは下方側に位置することになる。係合部1の位置は、重心位置とアンテナATとの間が望ましく、係合部1の位置は、
図1,
図2に示すように、放音部HBの背面に位置している。
【0011】
係合部1によって本体部52は、ホルダHDから着脱自在に取り付けることができる。
装着においては、
図2に示されるように、ホルダHDのポケット部31に対し本体部52の係合部1を上方から係合させる。これにより、後述する構造によりロック状態となり両者は一体化される。
この実施例において、ホルダHDは、使用者のベルトBLTに着脱可能とされたベルトホルダである。
【0012】
次に、
図3〜
図8を主に参照して、係合部1及びホルダHDについて詳述する。
図3はホルダHDの組み立て図であり、
図4は係合部1がホルダHDと係合した状態を無線機51の本体部52側から見た図である。
図4において本体部52は省略してある。
図5は、
図4におけるS1−S1断面図であり、
図6は、
図4におけるS2−S2断面図であり、
図7は、
図5におけるS3−S3断面図であり、
図8は、係合部1の斜視的半断面図である。尚、以下の説明で用いる上下左右前後の各方向は、
図3に矢印で示される方向で規定される。
【0013】
ホルダHDは、同心の貫通孔32hがそれぞれ形成された一対の腕部32a,32aを有する細長板状の基部32と、基部32に概ね対応した細長板状であって、同心の貫通孔33hがそれぞれ形成され一対の腕部32a,32aの外側面に近接又は接触可能な一対の腕部33a,33aを有するクリップ片33と、一端側にフランジを有して貫通孔32h及び貫通孔33hを貫き挿通されるシャフト34と、一対の腕部32a,32aの間にシャフト34が挿通されて収められるねじりコイルばね35と、シャフト34の他端側に嵌着固定されるナット36と、を有している。
【0014】
これらの部材は、基部32とクリップ片33とが、シャフト34を軸として独立回動し、ねじりコイルばね35が、その両端部を基部32とクリップ片33とにそれぞれ係止されることで、基部32及びクリップ片33をそれらの下方端側が互いに接近する方向(閉じる方向)へ付勢するように組み立てられている。
基部32及びクリップ片33は、例えば樹脂の射出成形により形成されている。樹脂例は、ポリカーボネート(PC)またはABSである。
【0015】
基部32において、クリップ片33とは反対側となる前面32bには、ポケット部31が形成されている。
ポケット部31は、前面32bから所定距離だけ離れた位置にあって上方をスリット31sにより開放側とされた略U字状の天板31aと、上下方向に延在し前面32bから直交するよう立設して天板31aの左右側縁と前面32bとを繋ぐ側板31b,31bと、天板31aにおける下方側の弧状縁部と前面32bとを繋ぎ、最下方位置にスリット31c1(
図7参照)を有する底板31cと、を有して袋状(ポケット状)に形成されている。
このポケット部31において、基部32と側板31b,31bの内面31bnと底板31cの内面31cnと天板31aの基部32側の表面とにより、下方側が円弧状なる扁平蒲鉾状の空間V1が形成されている。
【0016】
また、基部32における空間V1に対応する中央部位には、略コ字状にスリット32kが設けられ、これにより、下方側を基端として上方に向かって延び、前後方向に可撓性を有する腕部32cが形成されている。
腕部32cにおける上方端部には、腕部32cの幅よりも小さい幅で前方に突出する爪部32dが形成されている。
爪部32dは、下方側を向いて基部32に対して直交するよう形成された係合面32c1と、係合面32c1の先端縁を含む最突出部位から腕部34cの先端に向け徐々に低くなるよう傾斜した傾斜面32c2と、を有している。すなわち、爪部32dは、側面視で概ね直角三角形となる形状で形成されている。
腕部32cは、爪部32dが前面32bに対して出没可能なほどに撓むことができる。爪部32dと腕部32cとを合わせた総称を可撓爪部32eとする。
よって、係合部1は、ポケット部31と、可撓爪部32eと、からなる被係合部3により係合される。
【0017】
係合部1は、本体部52側に形成された保持部(図示せず)に嵌着するガイド部1gを左右両端に備えたベース部1aと、ベース部1aから幅W1なる直方体形状で突出した首部1bと、首部1bの先端側に形成され、幅W1よりも大きな幅の形状(例えば大きな直径D1)で形成された円板状の台座部1cと、を有している。
図8にも示されるように、台座部1cには、下方側において、先端面1csが中心線CL1cから離れるに従って首部1b側に向かって厚さを減少させるよう傾斜したテーパ部1dが形成されている。
テーパ部1dの位置は、本体部52において係合部1が取り付けられている位置に対し、本体部52の重心がある方向(下方)に形成されているとして以降説明をしていく。
係合部1は、例えば樹脂の射出成形により形成されている。樹脂例は、ポリアセタール(POM)である。
【0018】
係合部1は、ガイド部1gが保持部に嵌着しつつ本体部52側にネジ止めを含む周知の方法により強固に固定されることで、本体部52側と一体化されている。
また、図示はしないが、テーパ部1dの向きを任意に固定できる構造としてもよい。
【0019】
ここで、台座部1cの直径D1は、側板31b,31bの内面間距離である空間V1の幅方向距離W2に対して僅かに小さく設定されている。
また、台座部1cの厚さt1は、空間V1の前後方向距離W3に対して僅かに小さく設定されている。
また、スリット31c1の幅W4は、台座部1cの直径D1よりも小さく設定されている。
台座部1cのテーパ部1dの幅W5は、爪部32dの幅W6よりも大きく設定されている。
また、空間V1の下方端位置と爪部32dの係合面32c1との間の距離W7は、台座部1cの直径D1よりも僅かに大きく設定されている。
【0020】
各部材がこれらの寸法関係に設定されていることで、係合部1と被係合部3とは、次に説明する係合とその開放とが行われる。
各寸法関係は、係合をスムースにするため、係合状態でガタを感じない程度で僅かな隙間が生じるように設定されている。
まず、係合過程について
図9〜
図12を参照して説明する。各図において、係合部1と一体化されている筐体部HTは省略してある。
図9〜
図12は、被係合部3に対し、係合部1を上方から係合させる過程における第1〜第4段階の断面図(
図4におけるS1−S1断面図)である。
【0021】
<第1段階>(
図9参照)
第1段階は、台座部1cにおける進行方向の先端部が空間V1に進入し、テーパ部1dと爪部32dとが接触した状態である。
<第2段階>(
図10参照)
第1段階からさらに係合部1を下方に移動させると、台座部1cに接触した爪部32dが後方側に押されて腕部32cが後方側であるクリップ片33側に撓む(矢印DR1)。
<第3段階>(
図11参照)
第2段階からさらに係合部1を下方に移動させると、爪部32dは台座部1cの先端面1cs上を摺動する。爪部32dが先端面1cs上を摺動している間の腕部32cの撓み量は一定となる。
<第4段階>(
図12参照,
図7参照)
第3段階からさらに係合部1を下方に移動させると、台座部1cの先頭端がポケット部31の底板31cの内面31cnに当接して移動が規制される。この位置は、爪部32dが台座部1cをわずかに越えた位置であるので、腕部32cはその撓みが解消され自然状態に復帰する(矢印DR2)。
これにより係合面32c1が、台座部1cのポケット部31内の進入方向に対して後尾側周面の側面1cyと対向し、爪部32dが台座部1cの側面1cyに引っ掛かった状態となって係合が完了する。
係合完了後は、本体部52の重心より台座部1cが天面方向にあるため、台座部1cの中心線CL1cを中心にして本体部52は回転し、外力が加わらない限り重心方向が下を向いた状態(アンテナATがほぼ上を向いた状態)で静止する。
【0022】
係合部1と被係合部3との係合を解除する場合、すなわち、本体部52をホルダHDから外す場合は次のように解除する。
【0023】
<第5段階>(
図13参照)
本体部52を180°回転させる(矢印RT)。すなわち、上下逆さまにする。回転方向は限定されない。係合部1と被係合部3とが係合した状態で、係合部1は、台座部1cの中心線CL1cの位置が変わる移動は規制されているものの、回動は許容されている。従って、本体部52の回転に伴い台座部1cも上下反対となる。
この回転動作により、台座部1cのテーパ部1dが爪部32dの係合面32c1と対向する位置に移動する。
<第6段階>(
図14参照)
第5段階から、上下逆さまになった本体部52を上方に移動させる。
これにより、テーパ部1dが爪部32dを押し、腕部32cは後方側(クリップ片33側)に撓んで爪部32dの台座部1cに対する引っ掛かりが外れる(矢印DR3)。そして、爪部32dは台座部1cの先端面1csを摺動する。
爪部32dの引っ掛かりが外れたことで、被係合部3においてこの台座部1cの上方への移動を規制する部分はなくなり、台座部1cはポケット部31から離脱可能となる。本体部52をさらに上方へ持ち上げることで、ホルダHDとの係合が解除され、両者は分離される。
【0024】
上述の係合及びその解除動作において、第4段階である係合完了状態では、台座部1cの下方への移動が底板31cの内面31cnで規制され、上方への移動が爪部32dの係合面32c1により規制され、左右方向の移動が一対の側板31b,31bの内面31bnで規制され、前後方向の移動が空間V1の前後方向を規定する天板31aの内面31anと基部32とで規制されるので、ポケット部31内に収められた台座部1cは、中心線CL1cまわりの回動を除きあらゆる方向への移動が規制されガタなく位置決めされる。
【0025】
上述の実施例は、係合部1が中抜きの環状に形成されたものではなく中実に形成されている。そして、台座部1cが台座部1cに当接する被当接部位と外方を向く外側面で対向するようになっている。
また、係合部1とホルダHDとの係合状態で、台座部1cが爪部32dの係合面32c1を付勢するように携帯機器51に力が付与された場合でも、台座部1cが係合面32c1から受ける反力は、台座部1cの側面1cyから中心線CL1cに向かうように働く。
従って、台座部1cの径が小さく係合部1がコンパクトであっても極めて高い保持強度が確保される。すなわち、携帯機器51側の構造である係合部1を大型化することなく高い保持強度が確保される。
また、係合完了状態から無線機51を180°回転させた姿勢でなければ、係合部1とホルダHDとの係合状態は解除されない。しかし、
図15に示すように、たとえ無線機51が180°回転した状態であっても、係合の際、台座部1cが、32c2の傾斜により爪部32dを後方側に押すことが可能であり、これは本体部52がどの向きであってもホルダHDに係合させることができることを意味する。つまり必ずしもテーパ部1dの向きに合わせて、無線機51を係合させる必要は無い。
【0026】
テーパ部1dの向きは無線機51の下方向としたが、無線機51の重心がある方向とするとよい。無線機51が、中心線CL1cのまわりを回動するように揺れても、静止状態から外すことが可能となるまで回転する角度が、いずれの回転方向に対しても最大となるため、容易には外れる位置まで回転しない。
従って、実施例のホルダ保持構造及びそれを備えた携帯機器は、ホルダから携帯機器本体が不用意に脱落することがない。
【0027】
本発明の実施例は、上述した構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよいのは言うまでもない。
本発明のホルダ保持構造は、携帯機器以外にも、巻尺や工具類などをベルトに保持することに使用することもできる。
また、ホルダHDは、ベルトクリップであることに限定されない。例えば、基部32自体を、フック状部を有するハンガー片とする、又は基部32にフック状のハンガー片を組み付けることにより、ハンガータイプのホルダとすることができる。また、基部32自体に磁石を収めてマグネットプレートとする、又は基部32に磁石を収めたマグネットプレートを組み付けることにより、磁力によって被保持部材(鉄骨、鉄板入ボード、スチールロッカー等)に吸引保持されるマグネットホルダとすることができる。
実施例の携帯機器は、無線機51に限るものではない。音楽プレーヤ,電話器,タブレット端末など、様々な種類の装置であってよい。
【0028】
台座部1cにおけるテーパ部1dの周方向位置が携帯機器の下方側となる例を示したが、この位置は下方側に限定されるものではない。テーパ部1dが任意の向きで台座部1cを固定できる構造である場合には、この携帯機器を使用する者が、ホルダHDとの係合を解除しやすい位置にテーパ部1dの向きを設定してもよい。