(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明のアクリルゴムは、側鎖に炭素−炭素二重結合を有する変性アクリルゴムである。当該変性アクリルゴムの主鎖は、(A)アクリル酸エチル(EA)単量体由来の構成単位と、(B)上記一般式(1)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種、すなわちアクリル酸ブチル(BA)単量体及び/又はアクリル酸メトキシエチル(MEA)単量体由来の構成単位と、(C)メタクリル酸グリシジル(GMA)単量体由来の構成単位とを含む共重合体である。一方側鎖は、(D)エポキシ基と反応し得る1つの官能基と少なくとも1つの炭素−炭素二重結合とを有する多官能化合物由来の構成単位となっている。
【0011】
主鎖は、成分(A)由来の構成単位と成分(B)由来の構成単位との合計((A)+(B))100質量部に対して、成分(C)由来の構成単位を0.5〜5質量部、好ましくは1〜3質量部含む。成分(C)由来の構成単位の割合が(A)+(B)100質量部に対して0.5質量部未満もしくは5質量部を超えると、得られる変性アクリルゴムの機械的強度、伸び、硬度等が低下する傾向にある。また、成分(A)と成分(B)との含有割合は、質量基準で成分(A):成分(B)=30:70〜70〜30が好ましく、40:60〜60:40がより好ましい。
【0012】
成分(D)中のエポキシ基と反応し得る1つの官能基としては、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基がある。そのうえで、これらのエポキシ基と反応し得る1つの官能基と共に少なくとも1つの炭素−炭素二重結合とを有する多官能化合物としては、カルボキシル基を有するものとして例えばクロトン酸、オレイン酸、アクリル酸、エルカ酸、ウンデシレン酸、リノール酸、リノレン酸等を、アミノ基を有するものとして例えばアクリルアミド、オレイルアミン、オレイン酸アミド等を、ヒドロキシル基を有するものとして例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、10−ウンデセン−1−オール等を挙げることができる。
【0013】
成分(D)は、これのカルボキシル基、アミノ基、又はヒドロキシル基が、主鎖となる共重合体中の成分(C)由来のエポキシ基と反応することで、側鎖として形成される。当該成分(D)は、主鎖となる共重合体100質量部に対して0.5〜10質量部、好ましくは1〜5質量部反応させる。成分(D)が共重合体100質量部に対して0.5質量部未満もしくは10質量部を超えると、得られる変性アクリルゴムの強度、伸び、硬度等が低下する傾向にある。
【0014】
また、本発明の変性アクリルゴムには、求められる各種性質を損なわない範囲で、必要に応じて芳香族化合物、脂環族アルコールのアクリル酸エステル、芳香族アルコールのアクリル酸エステル等から選ばれる1種又は2種以上に由来する構造単位を含むこともできる。芳香族化合物としては、例えばスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ハロゲン化スチレン等が挙げられる。脂環族アルコールのアクリル酸エステルとしては、例えば酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸シクロへキシル等が挙げられる。芳香族アルコールのアクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸ベンジル等が挙げられる。
【0015】
また、本発明の変性アクリルゴムには、架橋剤、可塑剤、充填剤、補強剤、金属酸化物、軟化剤、老化防止剤、加工助剤、難燃剤、又は紫外線吸収剤等のその他の添加剤を添加することもできる。その他の各添加剤は、下記に示す具体的材料のうち1種のみを添加してもよいし、2種以上を混合添加することもできる。
【0016】
架橋剤としては、例えばジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルヒドロパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシン)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−モノ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン等の有機過酸化物、硫黄、フェノール樹脂等が挙げられる。架橋剤の添加量は、主鎖を構成する成分(A)〜(C)の単量体の合計を100質量部とした場合において、0.1〜10質量部程度とすればよい。
【0017】
また、架橋剤の使用に際しては、架橋促進剤、架橋助剤等を用いることもできる。架橋促進剤としては、例えばN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系化合物;2−メルカプトベンゾチアゾ−ル、2−(2’,4’−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾ−ル、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾ−ル、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾ−ル系化合物;ジフェニルグアニジン、ジオルソトリルグアニジン、ジオルソニトリルグアニジン、オルソニトリルバイグアナイド、ジフェニルグアニジンフタレ−ト等のグアニジン化合物;アセトアルデヒド−アニリン反応物、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒドアンモニア等のアルデヒドアミン又はアルデヒド−アンモニア系化合物;2−メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン系化合物;チオカルバニリド、ジエチルチオユリア、ジブチルチオユリア、トリメチルチオユリア、ジオルソトリルチオユリア等のチオユリア系化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラオクチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系化合物;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジメチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオ酸塩系化合物;ジブチルキサントゲン酸亜鉛等のザンテ−ト系化合物;亜鉛華等の化合物等が挙げられる。
【0018】
架橋助剤としては、例えばp−キノンジオキシム等のキノンジオキシム系化合物;ポリエチレングリコールジメタクリレ−ト等のメタクリレ−ト系化合物;ジアリルフタレ−ト、トリアリルシアヌレ−ト等のアリル系化合物;マレイミド系化合物;ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0019】
可塑剤としては、例えばジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル類、ジメチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、オクチルデシルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソブチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、ジイソオクチルセバケート等の脂肪酸エステル類、トリメリット酸イソデシルエステル、トリメリット酸オクチルエステル、トリメリット酸n−オクチルエステル、トリメリット酸系イソノニルエステル等のトリメリット酸エステル類の他、ジ−(2−エチルヘキシル)フマレート、ジエチレングリコールモノオレート、グリセリルモノリシノレート、トリラウリルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、エポキシ化大豆油、ポリエーテルエステル等が挙げられる。
【0020】
充填剤としては、例えばシリカ、重質炭酸カルシウム、胡粉、軽微性炭酸カルシウム、極微細活性化炭酸カルシウム、特殊炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、カオリンクレー、焼成クレー、パイロフライトクレー、シラン処理クレー、合成ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、カオリン、セリサイト、タルク、微粉タルク、ウォラスナイト、ゼオライト、ゾーノトナイト、アスベスト、PMF(ProcessedMineral Fiber)、セピオライト、チタン酸カリウム、エレスタダイト、石膏繊維、ガラスバルン、シリカバルン、ハイドロタルサイト、フライアシュバルン、シラスバルン、カーボン系バルン、アルミナ、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、二硫化モリブデン等が挙げられる。
【0021】
補強剤としては、例えばSAFカーボンブラック、ISAFカーボンブラック、HAFカーボンブラック、FEFカーボンブラック、GPFカーボンブラック、SRFカーボンブラック、FTカーボンブラック、MTカーボンブラック、アセチレンカーボンブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。
【0022】
金属酸化物としては、例えば亜鉛華、活性亜鉛華、表面処理亜鉛華、炭酸亜鉛、複合亜鉛華、複合活性亜鉛華、表面処理酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、極微細水酸化カルシウム、一酸化鉛、鉛丹、鉛白等を挙げることができる。
【0023】
軟化剤としては、例えば石油系軟化剤、植物油系軟化剤、サブ等が挙げられる。石油系軟化剤としては、例えばアロマティック系、ナフテン系、パラフィン系軟化剤等が挙げられる。植物系軟化剤としては、例えばひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、木ろう等が挙げられる。サブとしては、例えば、黒サブ、白サブ、飴サブ等が挙げられる。
【0024】
老化防止剤としては、例えばナフチルアミン系、ジフェニルアミン系、p−フェニレンジアミン系、キノリン系、ヒドロキノン誘導体系、モノ、ビス、トリス、ポリフェノール系、チオビスフェノール系、ヒンダートフェノール系、亜リン酸エステル系、イミダゾール系、ジチオカルバミン酸ニッケル塩系、リン酸系の老化防止剤等が挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を併用することができる。
【0025】
加工助剤としては、例えばステアリン酸、オレイン酸、ラウリル酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリルアミン等が挙げられる。
【0026】
また、本発明の変性アクリルゴムには、ゴム成分として他のゴムを配合することもできる。他のゴムとしては、例えばスチレン−ブタジエン共重合ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエン・イソプレン共重合ゴム、ブタジエン・スチレン・イソプレン共重合ゴム、アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴム、ブチルゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム等が挙げられる。
【0027】
本発明の変性アクリルゴムは、先ず主鎖となる単量体を共重合してアクリルゴムを得たうえで、当該アクリルゴムに側鎖となる成分(D)を反応させて変性して得られる。主鎖となるアクリルゴムは、これを構成する成分(A)〜(C)の単量体を、従来から公知の方法で重合すればよい。具体的には、成分(A)〜(C)の単量体を所定量含む混合物を、ラジカル重合開始剤の存在下で共重合させればよい。ラジカル重合開始剤としては、例えば無機あるいは有機の過酸化物、アゾ化合物、レドックス系開始剤等を使用できる。ラジカル重合開始剤の使用量としては、単量体混合物の合計100質量部に対して、0.01〜2質量部程度とすればよい。重合方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の方法が可能であるが、乳化重合が特に好ましい。
【0028】
乳化重合に使用する乳化剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤及び両性界面活性剤等が挙げられる。また、フッ素系の界面活性剤を使用することもできる。これらの乳化剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。通常、アニオン系界面活性剤が多用され、例えば、炭素数10以上の長鎖脂肪酸塩、ロジン酸塩等が用いられる。具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸のカリウム塩及びナトリウム塩等が挙げられる。
【0029】
ラジカル重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物を使用することができる。また、アゾビスイソブチロニトリル等のジアゾ化合物、過硫酸カリウム等の無機過酸化物、及びこれら過酸化物と硫酸第一鉄とを組み合わせたレドックス系触媒等を用いることもできる。これらのラジカル重合開始剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。アクリルゴムの分子量を調節するために連鎖移動剤を使用することもできる。この連鎖移動剤としては、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、四塩化炭素、チオグリコール類、ジテルペン、ターピノーレン及びγ−テルピネン類等を使用することができる。
【0030】
アクリルゴムを重合する際は、各単量体、乳化剤、ラジカル重合開始剤等を反応容器に一括投入して重合を開始してもよいし、反応継続時に連続的あるいは間欠的に添加してもよい。重合は、窒素置換等酸素を除去した反応器を用いて0〜100℃、好ましくは0〜80℃で行うことができる。重合方式は連続式でもよいし、回分式であってもよい。重合時間は0.01〜30時間程度、好ましくは1〜10時間程度である。重合終了後、反応生成物(ラテックス)を塩化ナトリウム、塩化カルシウム等の無機塩の水溶液に投入して凝固させ、水洗、乾燥することによりアクリルゴムが得られる。
【0031】
得られたアクリルゴムの変性は、アクリルゴムと変性用の成分(D)とを溶融混練する方法、アクリルゴムを有機溶媒に溶解させた溶液に、変性用の成分(D)を混合する方法等、いずれの方法で行っても良いが、製造方法の簡便さから、溶融混練する方法が好ましい。
【0032】
アクリルゴムと変性用の成分(D)とを溶融混練する際、所定温度で溶融混練し、得られた溶融混練物を冷却することで変性アクリルゴムを得ることができる。溶融混練温度は、100〜300℃、好ましくは150〜250℃で行えばよい。また、冷却する際には所定形状にプレス成形しておくことも好ましい。
【0033】
本発明の変性アクリルゴムは、耐油性や耐熱性を有し、且つ引張強度等の機械的強度及び伸びに優れる。当該変性アクリルゴムは、オイルクーラーホース、エアーダクトホース、パワーステアリングホース、コントロールホース、インタークーラーホース、トルコンホース、オイルリターンホース、耐熱ホース等の各種ホース材、燃料ホース材、ベアリングシール、バルクステムシール、各種オイルシール、O−リング、パッキン、ガスケット等のシール材、各種ダイヤフラム、ゴム板、ベルト、オイルレベルゲージ、ホースマスキング、配管断熱材等の被覆材、ロール等に好適に利用することができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれに限られることはない。
【0035】
(実施例1)
窒素置換したステンレス製反応器に、水150質量部、ラウリル硫酸ナトリウム4質量部、炭酸水素ナトリウム4質量部、硫酸第一鉄七水和物0.01質量部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.025質量部、及びヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物0.25質量部仕込み、アクリル酸エチル(EA)50質量部、アクリル酸ブチル(BA)40質量部、アクリル酸メトキシエチル(MEA)10質量部、メタクリル酸グリシジル(GMA)3質量部、p−メンタンハイドロパーオキサイド0.25質量部からなる単量体・開始剤混合物を2時間かけて滴下し、反応温度30℃で乳化重合させた。重合転化率が100%に達したところで、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン0.5質量部を反応系に添加して共重合反応を停止させた(反応時間5時間)。次いで、得られた反応生成物(ラテックス)を1%塩化カルシウム水溶液に滴下してアクリルゴムを凝固させた。続いて、この凝固物を十分に水洗した後、80℃で24時間乾燥させることにより、アクリルゴムを得た。
【0036】
次に、得られたアクリルゴム100質量部とクロトン酸1.5質量部を、180℃に加熱したバンバリーミキサーに投入し、ブレード回転数100rpmにて溶融混練を行い、トルクが一定になるまで混練を行った(混練時間20分)。得られた溶融混練物をバンバリーミキサーから取り出し、プレスによってパンケーキ状に圧縮・冷却することで変性アクリルゴムを得た。
【0037】
得られた変性アクリルゴム100質量部、架橋剤として2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3(H25B)2質量部、老化防止剤として4,4’−(α,α’−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン2質量部、補強剤としてHAFカーボンブラック50質量部、加工助剤としてステアリン酸1質量部を、40℃に加熱したバンバリーミキサーに投入し、ブレード回転数50rpmにて素練りを行った(混練時間10分)。得られた混練物をバンバリーミキサーから取り出し、170℃に加熱したプレスによって15分間架橋し、アクリルゴムシートを成形した。
【0038】
(実施例2〜7、比較例1〜6)
表1に示す単量体を表1に示す割合で使用して実施例1と同様にアクリルゴムを得ると共に、表1に示す化合物(D)を表1に示す割合で使用しながら、表1に示す条件にて実施例1と同様に変性アクリルゴムを得た。さらに、表1に示す架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤、補強剤、加工助剤を表1に示す割合で使用し、実施例1と同様にアクリルゴムシートを成形した。なお、表1において組成を示す数値は、全て質量部である。
【0039】
得られた各実施例及び比較例の変性アクリルゴムに関して、そのゲル分率及びエポキシ当量を測定し、アクリルゴムシートに関して、その強度、伸び、硬度を測定した。その結果も表1に示す。なお、各物性の測定方法は次の通りである。
<ゲル分率>
約0.2gのアクリルゴム又は変性アクリルゴムを秤量し、溶媒としてアセトンを用いたソックスレー抽出を48時間行い、次式によりゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=[抽出後重量(g)/抽出前重量(g)]×100
<エポキシ当量>
JIS K 7236に準拠し、約0.1gのアクリルゴム又は変性アクリルゴムをクロロホルム30mlに溶解させ、酢酸20ml、臭化テトラエチルアンモニウムの20質量%酢酸溶液10ml、クリスタルバイオレット指示薬(酢酸溶液)4〜6滴を加え、マグネチックスターラーで撹拌しながら0.1mol/l過塩素酸酢酸溶液(0.1mol/lHClO
4)で滴定した。0.1mol/l HClO
4を1滴加えて緑色が付き始めたところを終点とした。また、溶剤の体積膨張係数は、温度による補正が必要なため、0.1mol/lHClO
4の温度を記録した。同時に試料を用いない空試験を行って同様に滴定量を測定し、得られた滴定量を用いて次式によりエポキシ当量を算出した。
エポキシ当量(g/eq)=(1000×m)/[0.1×f×(V
l−V
0)×{1−(t−t
s)/1000}]
m:試料質量(g)
V
0:空試験に要する0.1mol/l HClO
4の適定量(ml)
V
l:本試験に要する0.1mol/lHClO
4の適定量(ml)
t:本試験及び空試験時の0.1mol/l HClO
4の温度(℃)
t
s:標定時の0.1mol/lHClO
4の温度(℃)
f:標定時の0.1mol/l HClO
4のファクター
<強度・伸び>
JIS K 6251に準拠し、試験温度25℃、引張速度500mm/minの条件で引張試験を行い、強度(MPa)、伸び(%)を測定した。
<硬度>
JIS K 6253に準拠し、スプリング硬さ試験機A形によって、25℃における硬度を測定した。
【0040】
【表1】
【0041】
表1の結果から、主鎖を成分(A)〜(C)によって合成した実施例1〜7では、アクリルゴムの共重合中に組成物がゲル化することはなかった。このため、強度及び伸びが優れていた。これに対し比較例1は成分(C)を含んでいないので、架橋が進行せず、強度が低かった。比較例2は成分(C)の量が過剰であり、架橋が過度に進行したので、伸びが低かった。比較例3は側鎖として導入する成分(D)の量が少ないので、架橋が進行せず、強度が低かった。比較例4は過剰に添加した成分(D)により架橋が阻害されたので、強度が低かった。比較例5,6は、側鎖に炭素−炭素二重結合を有する単量体によってアクリルゴム(主鎖)を合成したので、その共重合中にゲル化していた。このため、強度及び伸びが低かった。