(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5849870
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】電動車両の充電制御装置
(51)【国際特許分類】
B60L 11/18 20060101AFI20160114BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20160114BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20160114BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20160114BHJP
【FI】
B60L11/18 C
H02J7/00 303C
H02J7/00 P
H02J7/10 B
H01M10/44 P
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-145032(P2012-145032)
(22)【出願日】2012年6月28日
(65)【公開番号】特開2014-11832(P2014-11832A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 泰由
【審査官】
相羽 昌孝
(56)【参考文献】
【文献】
特開平7−15807(JP,A)
【文献】
特開平4−325801(JP,A)
【文献】
特開2008−86060(JP,A)
【文献】
特開2011−55682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00− 3/12
B60L 7/00−13/00
B60L 15/00−15/42
H02J 7/00− 7/12
H02J 7/34− 7/36
H01M 10/42−10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外部の電力供給装置から供給された電力により充電され、前記車両を駆動する電動機に電力を供給する第1蓄電池と、
前記第1蓄電池から出力される電力を降圧する電圧変換手段と、
前記電圧変換手段から出力された電力により充電され、前記車両の補機に電力を供給する第2蓄電池と、
前記電圧変換手段の出力電圧を設定する電圧設定手段と、を備え、
前記電圧設定手段は、
前記外部の電力供給装置と前記車両とが電気的に接続された状態で、前記第1蓄電池が充電されている際は、前記電圧変換手段の前記出力電圧を第1所定電圧に設定し、
前記外部の電力供給装置と前記車両とが電気的に切断された状態で、前記車両を起動した際は、前記電圧変換手段の前記出力電圧を前記第1所定電圧よりも低い第2所定電圧に設定して前記第2蓄電池を充電することを特徴とする電動車両の充電制御装置。
【請求項2】
前記電圧設定手段は、
前記第2蓄電池を暖機する所定時間が経過した後は、前記電圧変換手段の前記出力電圧を前記第2所定電圧よりも低い第3所定電圧に設定することを特徴とする、請求項1に記載の電動車両の充電制御装置。
【請求項3】
前記電圧設定手段は、前記電圧変換手段が作動状態から非作動状態となった後に、再度前記電圧変換手段が作動状態となるまでの期間に応じて前記所定時間を変化させることを特徴とする、請求項2に記載の電動車両の充電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の充電制御装置に係り、詳しくは、補機用バッテリの充電制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動機で走行する電気自動車やハイブリッド自動車等の電動車両では、電動機を駆動するための高電圧の電力を蓄電する高電圧バッテリ(駆動用バッテリ)と、車両のランプ等の補機を駆動するための低電圧の電力を蓄電する低電圧バッテリ(補機用バッテリ)の2種類の蓄電池を備えている。そして、駆動用バッテリでは、車両外部の車外充電装置より電力の供給を受け充電している。また、補機用バッテリでは、高電圧の電力を低電圧の電力に変換する電圧変換器(DC−DCコンバータ)を介して、駆動用バッテリより電力の供給を受け充電している。
【0003】
補機用バッテリは、一般に鉛蓄電池を用いており、充電を行うと発熱する。また、補機用バッテリは、外気温や補機用バッテリ自体の温度が上昇するにつれ、充電可能な最高電圧が低下し、当該最高電圧よりも高電圧で充電を行うと充電による発熱が更なる発熱を招き、補機用バッテリの温度制御が出来なくなる熱逸走(熱暴走)が発生する。また、補機用バッテリは、外気温や補機用バッテリ自体の温度が低下するにつれ、補機用バッテリを充電することのできる最低電圧が上昇し、当該最低電圧よりも低電圧の電力で充電を行うと充電できずに充電不足が発生する。
【0004】
このようなことから、特許文献1の電動車両の電源システムでは、温度センサ等によって補機用バッテリの温度を検出し、補機用バッテリの温度に応じて充電電圧を可変に設定している。
しかしながら、このように補機用バッテリの温度を検出する温度センサを設けることはコストの増加を招き好ましいことではない。
【0005】
そこで、特許文献2では、補機用バッテリ(低電圧バッテリ)の温度を検出する温度センサを設けずに、エンジン冷却水温センサで検出されるエンジン冷却水温度と外気温センサで検出される外気温度とに基づいて補機用バッテリの状態を判別し充電電圧を設定することで温度センサの増設によるコストの増加を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−10503号公報
【特許文献2】特開2008−86060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように上記特許文献2の車両用バッテリの充電制御装置では、エンジン冷却水温センサでの検出結果に基づき補機用バッテリの状態を判別し充電電圧を設定している。
しかしながら、電動機のみで走行する電気自動車では、エンジンが搭載されておらずエンジン冷却水温センサでの検出結果に基づき、補機用バッテリの暖機状態を推定することは困難である。
【0008】
したがって、補機用バッテリの暖機状態によって、補機用バッテリへの充電電圧を可変に設定することが困難となり、駆動用バッテリから出力する電力量が増加し、駆動用バッテリの消費電力が増大する虞がある。
本発明は、この様な問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、駆動用バッテリの電力消費を抑えつつ、確実に充電することのできる電動車両の充電制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1の電動車両の充電制御装置では、車両の外部の電力供給装置から供給された電力により充電され、前記車両を駆動する電動機に電力を供給する第1蓄電池と、前記第1蓄電池から出力される電力を降圧する電圧変換手段と、前記電圧変換手段から出力された電力により充電され、前記車両の補機に電力を供給する第2蓄電池と、前記電圧変換手段の出力電圧を設定する電圧設定手段と、を備え、前記電圧設定手段は、前記外部の電力供給装置と前記車両とが電気的に接続された状態で、前記第1蓄電池が充電されている際は、前記電圧変換手段の前記出力電圧を第1所定電圧に設定し、前記外部の電力供給装置と前記車両とが電気的に切断された状態で、前記車両を起動した際は、前記電圧変換手段の前記出力電圧を前記第1所定電圧よりも低い第2所定電圧に設定して前記第2蓄電池を充電することを特徴とする。
【0010】
また、請求項2の電動車両の充電制御装置では、請求項1において、前記電圧設定手段は、前記第2蓄電池を暖機する所定時間が経過した後は、前記電圧変換手段の前記出力電圧を前記第2所定電圧よりも低い第3所定電圧に設定することを特徴とする。
また、請求項3の電動車両の充電制御装置では、請求項2において、前記電圧設定手段は、前記電圧変換手段が作動状態から非作動状態となった後に、再度前記電圧変換手段が作動状態となるまでの期間に応じて前記所定時間を変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、外部の電力供給装置から充電が行われている際には、電圧変換手段の出力電圧を第1所定電圧とし、外部の電力供給装置から充電が行われていない際には、電圧変換手段の出力電圧を第1所定電圧より低い第2所定電圧とすることで、外部から車両に電力を供給できる際には、電圧変換手段の出力電圧を十分に高めておくことができる。一方、外部から車両に電力を供給できない際には、第1蓄電池の電力消費を考慮して低い出力電圧で第2蓄電池を充電することで、第1蓄電池の電力消費を極力低減することができる。
【0012】
また、請求項2の発明によれば、車両の走行時には、電圧変換手段の出力電圧を第2所定電圧よりも低い第3所定電圧とすることで、第1蓄電池からの電力の持ち出しを減らすことができるので、更に第1蓄電池の電力消費を抑制することができる。
また、請求項3の発明によれば、電圧変換手段が作動状態から非作動状態となった後に、再度電圧変換手段が作動状態となるまでの期間に応じて所定時間を変化させているので、例えば車両の走行を終了した後に、走行終了から短期間の内に再度走行し、第2蓄電池の暖機が完了しているような場合に、所定時間を短くして第2蓄電池の暖機運転を短くすることができる。
【0013】
したがって、第1蓄電池からの電力の持ち出しを減らすことができるので、更に第1蓄電池の電力消費を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る電動車両の充電制御装置の概略構成図である。
【
図2】本発明に係る電動車両の充電制御装置のDC−DCコンバータの出力電圧の変化の一例を時系列で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明に係る電動車両の充電制御装置の概略構成図である。図中の実線は、高電圧回路13を、破線は、低電圧回路22を、一点鎖線は、充電ケーブル31をそれぞれ示す。また、
図2は、本発明に係る電動車両の充電制御装置のDC−DCコンバータの出力電圧の変化の一例を時系列で示す図である。
図2中の(a)は、駆動用バッテリ11が車外充電装置30の電力により充電されている期間、即ち駆動用バッテリ11の充電中を、(b)は、補機用バッテリ19の暖機運転期間を、(c)は、車両10が走行している期間をそれぞれ示している。暖機運転期間は、車両10の主電源がONとなってから所定時間(例えば40分)を経過するまでの期間である。そして、所定時間は、予め実験等によって設定される。また、
図2中の(e)及び(h)は、ランプ17を点灯している期間を示している。なお、
図2中のDC−DCコンバータ20の出力電圧が0(ゼロ)の期間は、車両10の主電源がOFFされている期間である。以下、電動車両の充電制御装置の構成を説明する。
【0016】
図1に示すように、本発明に係る電動車両の充電制御装置が用いられる車両10は、当該車両10の走行装置として、駆動用バッテリ(第1蓄電池)11より高電圧回路13を介して高電圧の電力が供給されインバータ14により作動が制御されるモータ(電動機)15を備え、車両10の充電リッドに車外充電装置(電力供給装置)30より延びる充電ケーブル31を接続し、車載充電器16にて駆動用バッテリ11を充電することができる電動車両である。そして、車両10のランプ(補機)17やその他の補機18は、補機用バッテリ(第2蓄電池)19より低電圧回路22を介して低電圧の電力が供給され作動する。
【0017】
図1に示すように、本発明に係る電動車両の充電制御装置は、車両10に搭載される駆動用バッテリ11と、車載充電器16と、ランプ17と、補機用バッテリ19と、DC−DCコンバータ(電圧変換手段)20と、車両の総合的な制御を行うための制御装置であって、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)及び中央演算処理装置(CPU)等を含んで構成される電子コントロールユニット(以下、EV−ECUという)(電圧設定手段)21とで構成されている。そして、各々の機器は、電気的に接続されている。
【0018】
駆動用バッテリ11は、リチウムイオン電池等の二次電池で構成されるものである。また、駆動用バッテリ11は、電池セルを監視するセルモニタリングユニットを備える複数の電池セルを一つのモジュールとし更に複数のモジュールで構成される電池モジュールと、セルモニタリングユニットの出力に基づき電池モジュールの温度及び電池残量等を監視するバッテリモニタリングユニット(以下、BMUという)12とで構成されている。駆動用バッテリ11は、車外充電装置30より車載充電器16を介して高電圧(例えばDC300V)の電力が供給され充電される。そして、駆動用バッテリ11は、インバータ14或いはDC−DCコンバータ20を介して、モータ15或いは補機用バッテリ19に電力を供給するものである。
【0019】
車載充電器16は、車外充電装置30から供給される電力を駆動用バッテリ11にて蓄電可能な電圧に変換し、駆動用バッテリ11に供給するものである。
ランプ17は、車両10の前方に配設される前照灯である。そして、ランプ17は、運転者の操作或いはEV−ECU21からの信号により作動する。
補機用バッテリ19は、鉛蓄電池等の二次電池である。そして、補機用バッテリ19は、駆動用バッテリ11よりDC−DCコンバータ20を介して低電圧の電力が供給され充電される。そして、補機用バッテリ19は、低電圧回路22を介してランプ17やEV−ECU21や車両10のウインカー等の補機18に低電圧の電力を供給するものである。
【0020】
DC−DCコンバータ20は、駆動用バッテリ11から供給される電力を補機用バッテリ19にて蓄電及びランプ17やEV−ECU21や車両10のウインカー等の補機18に供給が可能な電圧に変化し、補機用バッテリ19及び補機用バッテリ19を介して、ランプ17及び補機18に供給するものである。そして、DC−DCコンバータ20の出力電圧は、EV−ECU21によって制御される。
【0021】
EV−ECU21は、車両10の総合的な制御を行うための制御装置であり、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央演算処理装置(CPU)及びタイマ等を含んで構成される。
EV−ECU21の入力側には、上記駆動用バッテリ11のBMU12、インバータ14、車載充電器16及びDC−DCコンバータ20が接続されており、これらの機器からの検出情報が入力される。
【0022】
一方、EV−ECU21の出力側には、上記インバータ14、ランプ17、補機18及びDC−DCコンバータ20が接続されている。
そして、EV−ECU21は、駆動用バッテリ11の充電或いは非充電、車両10の走行或いは停止、及びランプ17の点灯或いは非点灯によって、DC−DCコンバータ20の出力電圧を制御する。詳しくは、
図2に示すように、駆動用バッテリ11が車外充電装置30によって充電中である時には、DC−DCコンバータ20の出力電圧を補機用バッテリ19が高温であっても熱逸走(熱暴走)を起こさない上限の電圧である第1所定電圧(例えば14.4V)に設定する(
図2(a))。なお、第1所定電圧は、補機用バッテリ19が高温であっても熱逸走(熱暴走)を起こさない電圧であれば良く、上限近傍の電圧であってもよい。そして、車両の主電源がONとなりDC−DCコンバータ20が作動してから所定時間(例えば40分)を経過するまでの補機用バッテリ19の暖機運転中には、DC−DCコンバータ20の出力電圧を第1所定電圧よりも低い第2所定電圧(例えば14.3V)に設定する(
図2(d)及び(f))。そして、車両10が走行を開始し、車両10の走行中には、DC−DCコンバータ20の出力電圧を第2所定電圧よりも低い第3所定電圧(例えば14.2V)に設定する(
図2(g))。なお、補機用バッテリ19の暖機運転中及び車両10の走行中にランプ17が点灯された場合には、DC−DCコンバータ20の出力電圧を第3所定電圧よりも低い第4所定電圧(例えば13.9V)に設定する(
図2(e)及び(h))。
【0023】
このように、本発明に係る電動車両の充電制御装置では、駆動用バッテリ11の充電時には、DC−DCコンバータ20の出力電圧を補機用バッテリ19が熱逸走(熱暴走)を起こさない上限の電圧である第1所定電圧(例えば、14.4V)或いは上限近傍の電圧とすることで、温度センサ等による補機用バッテリ19の温度検出を省略して、温度センサ等の設置によるコスト増加を抑制しつつ、充電により発熱して補機用バッテリ19の温度制御が出来なくなる熱逸走の発生の防止、更に補機用バッテリ19が低温であることで発生するDC−DCコンバータ20の出力電圧不足による充電不足を防止することができる。
【0024】
また、熱逸走を起こさない上限或いは上限近傍の出力電圧で補機用バッテリ19を充電することで効率よく補機用バッテリ19を充電することができる。
更に、駆動用バッテリ11を充電していない補機用バッテリ19の暖機運転時には、DC−DCコンバータ20からの出力電圧を第1所定電圧よりも低い第2所定電圧(例えば、14.3V)とすることで、駆動用バッテリ11からの電力の持ち出しを減らすことができるので、駆動用バッテリ11の電力消費を抑制することができる。延いては、モータ15による走行距離を延長することができる。
【0025】
また、車両10の走行時には、DC−DCコンバータ20の出力電圧を第2所定電圧よりも低い第3所定電圧(例えば、14.2V)とすることで、駆動用バッテリ11からの電力の持ち出しを減らすことができるので、更に駆動用バッテリ11の電力消費を抑制することができる。
また、車両の主電源がONとなりDC−DCコンバータ20の作動後から所定時間(例えば、40分)経過するまでの期間を補機用バッテリ19の暖機運転としているので、温度センサ等を用いることなく簡易に補機用バッテリ19の暖機を判定することができる。
【0026】
以上で発明の実施形態の説明を終えるが、発明の形態は本実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、所定時間を一定としているが、これに限定されるものではなく、例えば、DC−DCコンバータ20の作動から非作動となった後に、再度DC−DCコンバータ20が作動となるまでの期間に応じて所定時間を変化するようにしても良く、これによって、例えば車両10の走行を終了した後に、走行終了から短期間の内に再度走行するような場合に、所定時間を短くすることで補機用バッテリ19の暖機運転を短くすることができ、駆動用バッテリ11からの電力の持ち出しを減らし、更に駆動用バッテリ11の電力消費を抑制することができる。
【符号の説明】
【0027】
10 車両
11 駆動用バッテリ(第1蓄電池)
15 モータ(電動機)
17 ランプ(補機)
18 補機
19 補機用バッテリ(第2蓄電池)
20 DC−DCコンバータ(電圧変換手段)
21 EV−ECU(電圧設定手段)
30 車外充電装置(電力供給装置)