(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
りん酸エステル基含有不飽和単量体(a1)および/またはポリオルガノシロキサン基含有不飽和単量体(a2)ならびに疎水性不飽和単量体(a3)の反応物であるアクリルポリマー(A)とエポキシ基含有シルセスキオキサン(B)を含有する熱硬化性樹脂組成物を用いてなる銀薄膜用オーバーコーティング剤。
【背景技術】
【0002】
金や銀、銅、アルミニウム等の金属からなる薄膜は、各種製品の意匠性を高めるだけでなく、様々な技術的効果をも付与するため種々用途で賞用されており、特に銀は美しい光沢に加えて優れた展性、延性を有しており、電気や熱の伝導性も良好であるため、薄膜としての用途は多岐に亘る。
【0003】
例えば身近な例でいうと、洋食器等を銀メッキした場合には高級感が生じ、商品価値を高めることができる。また、エレクトロニクス分野においては、各種電極や電子回路、電界シールド等の各種工業製品に銀薄膜は利用されている。また、銀薄膜は可視光領域における反射率が非常に高いため、反射用部材や鏡面部品等にも応用されている。
【0004】
一方、銀は化学的に不安定であり、例えば銀薄膜が大気中の酸素や水分、硫化水素、亜硫酸ガス等と反応すると、酸化銀や硫化銀の皮膜が生じ、銀薄膜の特徴である光沢が失われたり、褐色ないし黒色に変色したり、反射率が低下したりする。また、これらの問題は銅やアルミニウム等、他の金属薄膜にも多少なり生ずる。
【0005】
そこで斯界では、金属薄膜の表面を保護するための各種オーバーコーティング剤が提案されており、例えば特許文献1には、常温硬化性のシリコンアクリル樹脂を必須成分とする塗料組成物が記載されている。この塗料組成物によれば、そのベースとなるシリコンアクリル樹脂が加水分解性シリル基を有しており、大気中の水分と反応して自己縮合することによって硬度のある塗膜を与えるとされるが、銀薄膜に適用した場合にはその変色を招くことがある。
【0006】
また、例えば特許文献2には、ポリオルガノシロキサン基と他の架橋性官能基を有する重合体を必須成分とするコーティング剤が開示されており、その塗膜は特に銀薄膜との密着性に優れるとされるが、高温或いは高湿の条件の下に曝すと塗膜中に微細な泡が発生することがある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、りん酸エステル基含有不飽和単量体(a1)(以下、(a1)成分という)および/またはポリオルガノシロキサン基含有不飽和単量体(a2)(以下、(a2))成分という)ならびに疎水性不飽和単量体(a3)(以下、(a3)成分という)の反応物であるアクリルポリマー(A)(以下、(A)成分という)とエポキシ基含有シルセスキオキサン(B)(以下、(B)成分という)を必須成分として含有するものである。
【0013】
(a1)成分としては、一分子中にラジカル重合性の炭素−炭素不飽和二重結合とりん酸エステル基の双方を有する単量体であれば、各種公知のものを特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、モノ[2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート]アシッドホスフェート、モノ[2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート]アシッドホスフェート、モノ[3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート]アシッドホスフェート、モノ[3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート]アシッドホスフェート、(メタ)アリルアルコールアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロキシエチルアシッドホスフェート等が挙げられ、これらは2種以上を組み合わせてもよい。(a1)成分を用いることにより特に塗膜の耐硫化性が良好となる。
【0014】
(a2)成分としては、一分子中にラジカル重合性の炭素−炭素不飽和二重結合とポリオルガノシロキサン基の双方を有する単量体であれば、各種公知のものを特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、γ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリルオキシアルキルアルコキシアルキルシラン、トリメトキシビニルシラン、ジメトキシエチルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリエトキシアリルシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン等が挙げられ、これらは2種以上を組み合わせてもよい。(a2)成分を用いることにより特に塗膜の耐湿性が良好となる。
【0015】
(a3)成分としては、一分子中にラジカル重合性の炭素−炭素不飽和二重結合を有し、かつりん酸エステル基とポリオルガノシロキサン基のいずれも有しない疎水性の不飽和単量体であれば、各種公知のものを特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート等の脂肪族系疎水性単量体や、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)クリレート等の脂環族系疎水性単量体等が挙げられ、これらは2種以上を組み合わせてもよい。これらの中でも、特に塗膜の密着性と耐熱性を考慮すると脂肪族系疎水性単量体および/または脂環族系疎水性単量体が好ましく、特にそのホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が65℃〜185℃のものがいっそう好ましい。なお、Tg値はポリマーハンドブック(Polymer
handbook/edited by J. Brandrup, E.H.Immergut.-3
rd ed.)に記載された値を用いる。また、これに記載されていないTg値はMSDS等の二次的資料に求める。
【0016】
(A)成分における(a1)成分、(a2)成分および(a3)成分の使用量は特に限定されないが、(a1)成分と(a2)成分のいずれかを用いる場合には、通常は〔(a1)成分または(a2)成分〕および(a3)成分が順に0.1〜1.0モル%程度および99.0〜99.9モル%程度、好ましくは0.1〜0.5モル%および99.5〜99.9モル%である。また、三成分全てを用いて(A)成分を合成する場合には、(a1)成分、(a2)成分および(a3)成分が順に0.1〜1.0モル%程度、20〜40モル%程度および59〜79.9モル%程度であり、好ましくは0.1〜0.5モル%程度、25〜30モル%程度および69.5〜74.9モル%程度である。
【0017】
なお、本発明では(a1)成分〜(a3)成分以外の単量体(以下、(a4)成分ということがある。)として、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシルプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシルブチル等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル類や、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリル酸エステル、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリル酸エステル等のジアルキルアミノエチル(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族単量体類、(メタ)アクリル酸やマレイン酸、フマル酸のようなカルボキシル基含有単量体を必要に応じて少量使用してもよい。但し本発明の効果を損なうおそれがあるため、その使用量は通常、(a1)成分〜(a3)成分の合計100モル%に対して10モル%未満であり、好ましくは0モル%である。
【0018】
(A)成分の製造法は特に限定されず、溶液重合や塊状重合等、各種公知のラジカル重合方法を採用できる。例えば溶液重合法の場合、(a1)成分〜(a3)成分及び必要に応じて少量の(a4)成分を適当な有機溶剤中でラジカル重合開始剤の存在下、80〜120℃程度において、2〜6時間程度共重合反応させればよい。
【0019】
有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素類、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテルやエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、その他酢酸エチル、クロロホルム、ジメチルホルムアミド等が挙げられ、これらは2種以上を組み合わせてもよい。なお、有機溶剤の使用量は通常、(A)成分を含む溶液の不揮発分が通常10〜60重量%程度となる範囲である。
【0020】
ラジカル重合開始剤としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等が挙げられ、これらは2種以上を組み合わせてもよい。なお、その使用量は通常、(A)成分の固形分総重量に対して通常1〜5重量%程度となる範囲である。
【0021】
得られる(A)成分の物性は特に限定されないが、耐熱性、耐湿性および耐硫化性のバランスを考慮すると、通常、重量平均分子量(Mw)が25000〜40000程度、数平均分子量(Mn)が10000〜20000程度、多分散度(Mw/Mn)が1.5〜2.5程度である。なお、MwとMnはいずれもゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算値である。
【0022】
(B)成分としては、分子内にエポキシ基を含有するシルセスキオキサン類であれば各種公知のものを特に制限なく使用することができる。シルセスキオキサン類は、その基本構成単位(T単位)において中心となるケイ素が3個の酸素及びアルキル基と結合したものであり、Si−O−Si骨格は、例えばランダム構造やラダー構造、カゴ構造が知られている。
【0023】
(B)成分は、一般式(1):R
1Si(OR
2)
3(式中、R
1は少なくとも1つのエポキシ基を有する炭素数1〜12の炭化水素基を表し、R
2は水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表す(但し、全てのR
2が水素原子である場合を除く。)。)で示されるエポキシ基含有アルコキシシラン類(b1)(以下、(b1)成分という)を加水分解反応および縮合反応して得られる化合物である。
【0024】
(b1)成分としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリプロポキシシランなどのグリシドキシプロピルトリアルコキシシラン類や、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシランなどの(エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン類などが挙げられ、これらは2種以上を組み合わせてもよい。これらのうち3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランと2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランは加水分解反応時の反応性が高く、入手が容易であるため特に好ましい。
【0025】
(b1)成分の加水分解反応は、各種公知の方法を採用できる。また、加水分解反応に必要な水の量は、[加水分解反応に用いる水のモル数]/[(b1)成分に含まれる各アルコキシ基の合計モル数](モル比)が通常0.4〜10、好ましくは1程度となる量である。
【0026】
なお、加水分解反応の際、各種公知の触媒を使用できる。具体的には、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類、ギ酸、酢酸などの有機酸類や、アンモニア、水酸化ナトリウムなどの無機塩類、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどの有機塩類が挙げられる。これらのうち有機酸類、特にギ酸は触媒活性が高く、また加水分解反応後の縮合反応の触媒としても機能するので好ましい。触媒の使用量は特に限定されないが、(b1)成分に対して通常0.1〜25重量%程度、好ましくは1〜10重量%である。
【0027】
加水分解反応の温度と時間も特に限定されないが、通常0〜100℃程度(好ましくは20〜60℃)、1分〜2時間程度である。また、加水分解反応は溶剤の存在下または不存在下に行うことができ、溶剤としては前述したものを適宜選択できる。
【0028】
また、加水分解反応は、[(b1)成分の加水分解により生じる水酸基のモル数]/[(b1)にもともと含まれるアルコキシ基のモル数](モル比)が0.5以上、好ましくは0.8以上になるまで進行させるのが好ましい。
【0029】
加水分解反応に続く縮合反応においては、(b1)成分の加水分解により生じた水酸基同士の縮合と、該水酸基および残存アルコキシ基の縮合とが起き、シロキサン結合(Si−O−Si)が生ずる。縮合反応の反応温度や時間は特に限定されず、通常は40〜150℃程度(好ましくは60〜100℃)、30分〜12時間程度である。また、縮合反応の際にも前記した溶剤を必要により使用することができる。こうして得られた(B)成分からは、必要により残存アルコールや水、触媒、溶剤等を減圧下に除去してもよい。
【0030】
こうして得られる(B)成分の恒数は特に限定されないが、例えば[(B)成分中の未反応の水酸基およびアルコキシ基のモル数]/[(b1)成分にもともと含まれていたアルコキシ基のモル数]が通常0.3以下、エポキシ基当量が150〜600g/eq程度、不揮発分が50〜90重量%程度である。
【0031】
本発明の組成物は、前記方法で得られた(A)成分に(B)成分を混合することにより得られる。両者の重量比((A)/(B))は特に限定されないが、通常、固形分換算で3/0.5〜3/0.1程度である。
【0032】
本発明の組成物によれば、(A)成分に含まれるポリオルガノシロキサン基と(B)成分に含まれるエポキシ基との架橋反応により硬化塗膜が得られる。また、本発明の組成物には、塗膜の硬度を更に高めるために、各種公知の硬化触媒(C)(以下、(C)成分という)を含めることができる。具体的には、例えば、オクチル酸スズ、ジブチルスズジラウレート等のゾルゲル硬化触媒や、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール等のエポキシ硬化触媒等が挙げられ、これらは2種以上を組み合わせてもよい。また、(C)成分の使用量も特に限定されないが、通常は(A)成分と(B)成分の総重量(固形分換算)に対して0.5〜2重量%程度である。
【0033】
また、本発明の組成物には、必要に応じて、難燃剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、粘度調節剤等の添加剤を配合できる。
【0034】
本発明のオーバーコーティング剤は、熱硬化性樹脂組成物を用いたものであり、各種の金属薄膜に適用できる。
【0035】
金属薄膜としては、例えば、金薄膜、銀薄膜、銅薄膜、アルミニウム薄膜、ニッケル薄膜等が挙げられる。また、薄膜の形成手段も特に限定されず、展延法、メッキ法、金属蒸着法等が挙げられる。また、薄膜の厚みも特に限定されないが、金属蒸着薄膜の場合には通常0.3〜2μm程度である。金属蒸着薄膜の中でも特に銀蒸着薄膜が好ましい。
【0036】
また、金属薄膜を形成する基材も特に限定されず、ポリイミド、ポリイミド−シリカハイブリッド、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリスチレン樹脂(PSt)、ポリカーボネート樹脂(PC)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)等の有機基材や、鉄、アルミニウム、銅等の金属基材、セラミック基材等が挙げられる。
【0037】
本発明のコーティング剤を金属薄膜に塗工する手段も特に限定されず、ハケ塗り、ロールコート法、カーテンフローコート法、スプレー法等が挙げられ、塗工量は通常500〜5000g/m
2程度である。
【0038】
なお、スプレー法を採用する場合には、スプレー適性を高めるために、本発明のコーティング剤には各種公知の表面調整剤(以下、(D)成分という)を配合できる。具体的には、例えばポリエーテル変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーン、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン等のシリコーン系表面調整剤や、フルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸等のフッ素系表面調整剤、パーフルオロ変性シリコーン等のシリコーン−フッ素系表面調整剤、ポリエーテル変性アクリルポリマー、ポリエステル変性アクリルポリマー、パーフルオロアルキル変性アクリルポリマー等のアクリル系表面調整剤を、(A)成分〜(C)成分の合計重量に対して固形分換算で0.1〜2重量%程度配合することができる。
【0039】
硬化塗膜の形成条件も特に限定されず、通常は70〜170℃程度、20分〜1時間程度である。
【実施例】
【0040】
以下に本発明を、実施例及び比較例により具体的に説明する。尚、例中の部はすべて重量部である。
【0041】
また、数平均分子量と重量平均分子量はいずれも、ゲルパーメーションクロマトグラフィー(東ソー(株)製、HLC−8220)および市販のカラム(東ソー(株)製、TSK−GEL)を用い、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を展開溶媒として測定されたポリスチレン換算値であり、求めた数平均分子量と重量平均分子量より多分散度(Mw/Mn)を算出した。
【0042】
<(A)成分の合成>
合成例1
冷却管、撹拌装置、温度計および滴下漏斗を備えた4つ口フラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)1240部およびエチレングリコールモノエチルエーテル(EGME)1240部を仕込み、窒素気流下に95℃まで昇温した。次いで、滴下漏斗よりメチルメタクリレート(MMA、Tg105℃)350部、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製:商品名「KBM−503」)117部、2−メタクリロキシエチルアシッドホスフェート(共栄社化学(株)製:商品名「ライトエステルP−1M」)0.94部、ラジカル重合開始剤(日油(株)製、商品名「パーブチルO」)9.4部、PGME23部、EGME23部、イソプロピルアルコール824部およびメタノール217部からなる混合溶液を2時間かけて滴下して重合反応を行った。次いで、パーブチルO4.7部、PGME384部、EGME384部からなる混合溶液を滴下して2時間重合反応を行うことにより、数平均分子量(Mn)が約17000、重量平均分子量(Mw)が約32000、多分散度(Mw/Mn)が約1.88のアクリルポリマー(A1)の溶液を得た。
【0043】
合成例2
合成例1と同様のフラスコに、PGME1240部およびEGME1240部を仕込み、窒素気流下に95℃まで昇温し、滴下漏斗より、MMAを175部、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA、Tg66℃)を175部、KBM−503を117部、ライトエステルP−1Mを0.94部、パーブチルOを9.4部、PGMEを23部、EGMEを23部、イソプロピルアルコールを824部、メタノールを217部混合させて得られる溶液を2時間かけて滴下して重合反応を行い、さらにパーブチルO 4.7部、PGME384部、EGME384部を加えて2時間重合を行い、数平均分子量(Mn)が約17000、重量平均分子量(Mw)が約33000、多分散度(Mw/Mn)が約1.94のアクリルポリマー(A2)の溶液を得た。
【0044】
合成例3
合成例1と同様のフラスコに、PGME1240部およびEGME1240部を冷却管、撹拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で撹拌しながら95℃まで昇温し、滴下漏斗より、MMAを175部、イソボルニルメタクリレート(IBMA、Tg180℃)を175部、KBM−503を117部、ライトエステルP−1Mを0.94部、パーブチルOを9.4部、PGMEを23部、EGMEを824部、メタノールを217部混合してなる溶液を2時間かけて滴下して重合反応を行い、さらにパーブチルO4.7部、PGME384部、EGME384部を加えて2時間重合を行い数平均分子量(Mn)が約17000、重量平均分子量(Mw)が約34000、多分散度(Mw/Mn)が約1.99のアクリルポリマー(A3)の溶液を得た。
【0045】
【表1】
【0046】
<(B)成分の調製>
撹拌機、冷却管、分水器、温度計、窒素吹き込み口を備えた反応装置に、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製:商品名「KBM−403」)1000部、イオン交換水240部([加水分解反応に用いる水のモル数]/[3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランに含まれるアルコキシ基のモル数](モル比)=1.05)、95%ギ酸9.0部、トルエン800部を仕込み、室温で30分間加水分解反応させた。なお、加水分解反応における[加水分解により生じる水酸基のモル数]/[もともと含まれるアルコキシ基のモル数](モル比)は0.9であった。加水分解反応後、反応系を70℃となるまで昇温させたところで、加水分解により発生したメタノールが系外に留去され始めた。30分かけて75℃まで昇温し、縮合反応によって発生した水を留去した。さらに30分、75℃で反応させた後、50℃で3時間、段階的に圧力を下げながら減圧して、残存するメタノール、水、ギ酸、トルエンを留去することで、エポキシ基含有シルセスキオキサン(B1)を765部得た。なお、(B1)成分の[未反応の水酸基およびアルコキシ基のモル数]/[3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランに含まれるアルコキシ基のモル数](モル比)は0.15、濃度は94.1%、エポキシ当量は200g/eqであった。
【0047】
<熱硬化性組成物の調製>
実施例1
(A1)成分85部、(B1)成分0.9部、オクチル酸スズ(エーピーアイコーポレーション(株)製:商品名「スタノクト」)0.09部、2−メチルイミダゾール0.007部、有機変性ポリシロキサン(共栄社化学(株)製:商品名「グラノールB1484」)0.05部、PGME2.8部およびEGME2.8部を配合し、良く混合することにより熱硬化性組成物を調製し、そのままオーバーコーティング剤として用いた。
【0048】
実施例2〜3
実施例1において、用いる原料を表2に示すものに変更した他は同様にして、オーバーコーティング剤を調製し、いずれもそのままオーバーコーティング剤として用いた。
【0049】
比較例1
(A1)成分を30.0部、メチルトリメトキシシランオリゴマー(多摩化学工業(株)製:商品名「MTMS−A」)を0.17部、スタノクトを0.03部、グラノールB1484を0.03部、PGMEを0.5部、EGMEを0.5部配合することにより熱硬化性組成物を調製し、そのままオーバーコーティング剤として用いた。
【0050】
(塗膜の形成)
実施例1に係るオーバーコーティング剤を、表面に銀を蒸着したポリカーボネート基板(6cm×11cm×3mm)の蒸着面に、硬化後膜厚が約5μmとなるようにスプレーで塗布し、120℃で15分間硬化反応させることにより試験板を得た。他の実施例および比較例のオーバーコーティング剤についても同様にして試験板を得た。
【0051】
(耐湿性の評価)
実施例1に係る試験板と同じものを加湿処理(恒温恒湿器(エスペック(株)製、50℃及び95%RHで240時間放置)した処理試験板とについて、外観評価、全反射率及び正反射率の測定、ならびにオーバーコート被膜の密着性の評価を行った。また、他の実施例及び比較例に係る試験版についても同様にして加湿処理を行い、各種測定、評価を行った。なお、比較例1の試験版は塗膜の外観が不良(発泡)であった為、耐熱性試験には供しなかった。
【0052】
外観評価:加熱処理前後の蒸着面の外観の変化を目視評価した。
全反射率及び正反射率:加熱処理前後の蒸着面について、550nmにおける全反射率及び正反射率を市販の分光光度計(日本分光(株)製:商品名「V−560」)で測定し、変化率を求めた。変化率±1.0%は正常とみなす。
オーバーコート被膜の密着性:碁盤目テープ剥離試験(JIS−K5400)に準拠して実施した。
【0053】
(耐熱性試験)
実施例1に係る試験板と同じものを加熱処理(順風乾燥器(エスペック(株)製、120℃で240時間放置)した処理試験板について前記同様の評価を行った。また、他の実施例に係る試験版についても同様に加熱処理し、前記同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0054】
(耐硫化性の評価)
硫化アンモニウム溶液(黄色)(和光純薬(株)製)5mlをミニカップ(アズワン(株)製)に入れ、実施例1に係る試験板で、その蒸着面が下となるように蓋をし、60分間放置した後の蒸着面の外観の変化を目視評価した。結果を表2に示す。
【0055】
【表2】