(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
起動前のファンモータの誘起電圧を検出するにあたり、誘起電圧を検出するための検出回路の入力をファンモータの巻線に接続する必要がある。また、検出回路がファンモータに接続されていることによる電力損失をできるだけ低減させるためにも、検出回路のインピーダンスは、できるだけ高いことが好ましい。
【0006】
しかしながら、インピーダンスが高い程、検出回路の検出結果には、室外ユニットに含まれる圧縮機等に起因する外来ノイズが重畳してしまう。この検出結果が、上記特許文献1に示されるようにファンモータの起動方法の決定に用いられると、ファンモータの起動方法を誤って決定してしまい、ファンモータの起動不良が生じる虞がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、誘起電圧に重畳している外来ノイズが起因して生じるモータの起動不良を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、空気調和装置(70)に含まれる
複数相のモータ(77)に電力を供給する電力変換装置であって、互いに直列に接続された上アーム側スイッチング素子(25u,25v,25w)及び下アーム側スイッチング素子(26u,26v,26w)
から成るスイッチング素子対(24u,24v,24w)を
上記モータ(77)の相数に応じて含
んでおり、上記上アーム側スイッチング素子(25u,25v,25w)及び上記下アーム側スイッチング素子(26u,26v,26w)同士の接続ノード(cn1,cn2,cn3)が上記モータ(77)に接続されているインバータ回路(23)と、上記接続ノード(cn1,cn2,cn3)と接続され、起動前の上記モータ(77)の誘起電圧を
、上記モータ(77)の複数相のうち少なくとも1相について検出する検出回路(27)と、上記検出回路(27)の検出結果に応じて上記上アーム側スイッチング素子(25u,25v,25w)及び上記下アーム側スイッチング素子(26u,26v,26w)それぞれのオン及びオフを制御することにより、上記モータ(77)を起動させることが可能なスイッチング制御部(28)と、を備え、上記スイッチング制御部(28)は、上記検出回路(27)が検出動作を行う際、
該検出動作の対象となる相に対応した上記下アーム側スイッチング素子(26w)を含む少なくとも1つの上記下アーム側スイッチング素子(26u,26v,26w)を、上記誘起電圧の周波数よりも高い所定周波数にてオン及びオフを繰り返させるスイッチング制御を行うことを特徴とする。
【0009】
第1の発明によると、下アーム側スイッチング素子(26w)に対するスイッチング制御時、モータ(77)から下アーム側スイッチング素子(26w)への電流経路のインピーダンスは、見掛け上、上記スイッチング制御を行わない場合に比して低下する。これにより、外来ノイズは、モータ(77)で発生した誘起電圧に重畳しにくくなる。仮に、外来ノイズが誘起電圧に重畳したとしても、外来ノイズに伴うノイズ電流は、電流経路側(即ち、下アーム側スイッチング素子(26w)側)に流れる。従って、検出回路(27)は、外来ノイズの重畳していない純粋な誘起電圧を検出することができ、スイッチング制御部(28)は、当該誘起電圧に応じてモータ(77)を起動させることができる。それ故、モータ(77)の起動不良の発生を抑制することができる
。
【0010】
また、スイッチング制御時、下アーム側スイッチング素子(26w)を含む電流経路のインピーダンスを適切に低下させることができる。そのため、検出回路(27)は、外来ノイズが重畳しておらず且つ電圧値が低下しすぎていない誘起電圧を、検出することができる
。
【0011】
また、誘起電圧の検出対象となる相に対応した下アーム側スイッチング素子(26w)に対してスイッチング制御が行われるため、検出回路(27)は、外来ノイズの重畳していない誘起電圧を検出することができる。故に、誘起電圧の検出対象外である相に対応した下アーム側スイッチング素子(26u,26v)に対しては、スイッチング制御を行う必要がなく、制御が簡単であると言える。
【0012】
第2の発明は、
第1の発明において、上記検出回路(127a,127b)は、2相それぞれの上記誘起電圧を検出し、上記スイッチング制御部(28)は、検出された2相の上記誘起電圧の電圧差を求め、該電圧差を用いて上記モータ(77)を起動させることを特徴とする。
【0013】
ここでは、下アーム側スイッチング素子(26v,26w)に対するスイッチング制御により、外来ノイズの重畳していない2相の誘起電圧から、電圧差が演算される。従って、モータ(77)の起動不良の発生が抑制される。
【0014】
第3の発明は、第1の発明
または第2の発明において、上記スイッチング制御部(28)は、上記スイッチング制御を、上記モータ(77)の起動を開始するまで行うことを特徴とする。
【0015】
下アーム側スイッチング素子(26w)は、上記スイッチング制御のみならずモータ(77)の起動でも用いられる。しかし、下アーム側スイッチング素子(26w)に対するスイッチング制御が行われるのは、モータ(77)の起動開始までであるため、モータ(77)は支障なく起動することができる。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明及び
第2の発明によれば、モータ(77)の起動不良の発生を抑制することができる。
【0017】
また、上記
第1の発明によれば、検出回路(27)は、外来ノイズが重畳しておらず且つ電圧値が低下しすぎていない誘起電圧を、検出することができる。
【0018】
また、上記
第1の発明によれば、誘起電圧の検出対象外である相に対応した下アーム側スイッチング素子(26u,26v)に対しては、スイッチング制御を行う必要がなく、制御が簡単であると言える。
【0019】
また、上記
第3の発明によれば、モータ(77)は支障なく起動することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
≪実施形態1≫
<概要>
図1に示すように、モータ駆動システム(100)は、ファンモータ(77)(モータに相当)と、本実施形態1に係る電力変換装置(20)とで構成されている。
【0022】
ファンモータ(77)は、3相のブラシレスDCモータであって、ステータ及びロータを有する。ステータは複数の駆動コイル(L1,L2,L3)を有し、ロータは永久磁石を有する。
【0023】
ここで、本実施形態1のファンモータ(77)は、
図2に示すように、空気調和装置(70)の室外ユニット(71)に含まれる室外ファン(76)の駆動源、即ち室外用のファンモータである。ファンモータ(72)の駆動軸は、室外ファン(76)の回転軸に連結されている。
【0024】
室外ユニット(71)には、冷媒を圧縮する圧縮機(72)、圧縮機(72)の駆動源である圧縮機用モータ(72a)、冷媒の流れを切り換える四方切換弁(73)、外気と冷媒との間で熱交換を行う室外熱交換器(74)、冷媒を減圧する膨張弁(75)、室外熱交換器(74)へ外気を供給する室外ファン(76)、及びファンモータ(77)が含まれている。更に、室外ユニット(71)には、電力変換装置(20)も含まれている。空気調和装置(70)の室内ユニット(80)には、室内空気と冷媒との間で熱交換を行う室内熱交換器(81)、熱交換後の空気を室内に吹き出す室内ファン(82)及び室内用のファンモータ(83)が含まれている。
【0025】
図1に示すように、電力変換装置(20)は、交流電源である商用電源(91)からの入力交流電力を出力交流電力(SU,SV,SW)に変換してファンモータ(77)に供給する。これにより、ファンモータ(77)は駆動することができる。
【0026】
<電力変換装置の構成>
電力変換装置(20)は、主として、整流回路(21)、直流リンク回路(22)、インバータ回路(23)、検出回路(27)、及びスイッチング制御部(28)を備える。
【0027】
整流回路(21)は、複数のダイオード(21a,21b,21c,21d)からなるダイオードブリッジ回路で構成されており、商用電源(91)からの入力交流電力を整流する。
【0028】
直流リンク回路(22)は、電解コンデンサ(22a)を有し、平滑化した電圧をインバータ回路(23)に入力させる。
【0029】
インバータ回路(23)は、モータ(77)の相数(即ち3相)に応じて、3つのスイッチング素子対(24u,24v,24w)を含む。各スイッチング素子対(24u,24v,24w)は、1つの上アーム側スイッチング素子(25u,25v,25w)と1つの下アーム側スイッチング素子(26u,26v,26w)とが互いに直列に接続されることで構成されている。即ち、インバータ回路(23)は、上アーム側スイッチング素子(25u,25v,25w)及び下アーム側スイッチング素子(26u,26v,26w)を3つずつ含んでいる。各スイッチング素子対(24u,24v,24w)における上アーム側スイッチング素子(25u,25v,25w)及び下アーム側スイッチング素子(26u,26v,26w)同士の接続ノード(cn1,cn2,cn3)は、配線(41,42,43)を介して、ファンモータ(77)の駆動コイル(L1,L2,L3)それぞれの端子(tu,tv,tw)に接続されている。
【0030】
室外ファン(76)の運転時、スイッチング制御部(28)によるPWM制御により、各スイッチング素子(25u,25v,25w,26u,26v,26w)の矩形波駆動が行われる。すると、インバータ回路(23)は、平滑化された電圧(直流)を交流に変換し、出力交流電力(SU,SV,SW)をファンモータ(77)に供給する。これにより、ファンモータ(77)は、駆動することができる。
【0031】
検出回路(27)の入力は、配線(44,43)を介して接続ノード(cn3)及び駆動コイル(L3)の端子(tw)と接続されている。即ち、検出回路(27)は、インバータ回路(23)よりも後段側に位置する。検出回路(27)は、起動前のファンモータ(77)の駆動コイル(L3)の電圧を検出する。従って、室外ファン(76)が運転停止状態であるファンモータ(77)の起動前に、ファンモータ(77)に誘起電圧が発生している場合、検出回路(27)は、当該誘起電圧を、3相のうちの1相であるW相にて検出する。
【0032】
なお、検出回路(27)は、ファンモータ(77)が起動した後は、誘起電圧の検出動作を行わなくてもよい。
【0033】
起動前のファンモータ(77)に誘起電圧が発生する状況としては、室外ファン(76)が風等の影響を受けて逆回転または正回転に回転している場合、運転を停止した直後の室外ファン(76)が慣性力の作用により依然として回転している場合、等が挙げられる。
【0034】
次に、検出回路(27)の構成の一例を説明する。
図1に示すように、検出回路(27)は、第1抵抗(27a)、第2抵抗(27b)及びコンデンサ(27c)で構成されている。第1抵抗(27a)及び第2抵抗(27b)は、互いに直列に配線(44)に接続されている。起動前にファンモータ(77)に発生した誘起電圧の電圧値を“Vw”、第1抵抗(27a)及び第2抵抗(27b)それぞれの抵抗値を“r1”“r2”とすると、第1抵抗(27a)及び第2抵抗(27b)それぞれの両端には、“r1・Vw/(r1+r2)”“r2・Vw/(r1+r2)”の電圧が印加されていることとなる。従って、検出回路(27)からは、第1抵抗(27a)及び第2抵抗(27b)によって分圧された誘起電圧が出力される。なお、コンデンサ(27c)は、第2抵抗(27b)に並列に接続されている。
【0035】
そして、第1抵抗(27a)及び第2抵抗(27b)それぞれの抵抗値“r1”“r2”が比較的高い値に設定されることで、検出回路(27)は、比較的高いインピーダンスを有するようにして構成されている。検出回路(27)のインピーダンスが低いと、室外ファン(76)の運転中に、インバータ回路(23)またはファンモータ(77)側から各抵抗(27a,27b)を介してGNDへと電流が流れ、電力損失が生じるためである。また、各抵抗(27a,27b)に電流が流れるのであれば、各抵抗(27a,27b)として、高い耐圧性能を有する抵抗器を選定する必要も生ずるためである。
【0036】
なお、本実施形態1では、一例として、第1抵抗(27a)の抵抗値を“100kΩ”、第2抵抗(27b)の抵抗値を“200kΩ”と設定している。
【0037】
スイッチング制御部(28)は、インバータ回路(23)の各スイッチング素子(25u,25v,25w,26u,26v,26w)のオン及びオフを制御するためのものであって、各スイッチング素子(25u,25v,25w,26u,26v,26w)に接続されたゲートドライバ(29)と、CPU及びメモリを有しゲートドライバ(29)に接続されたマイクロコンピュータ(30)とで構成される。スイッチング制御部(28)(具体的にはマイクロコンピュータ(30))は、室外ファン(76)の運転開始指示を統括制御部(図示せず)から取得すると、検出回路(27)の検出結果に応じて起動前のファンモータ(77)の回転数を把握し、把握した回転数からファンモータ(77)の起動方法を決定する。
【0038】
具体的に、上記メモリ内には、回転数の範囲と起動方法とが関連づけられた情報が格納されている。スイッチング制御部(28)のマイクロコンピュータ(30)は、検出回路(27)が検出した現時点での誘起電圧からファンモータ(77)の回転数を把握すると、その回転数が属する回転数の範囲に対応した起動方法を抽出する。ゲートドライバ(29)は、抽出された起動方法に基づき、上アーム側スイッチング素子(25u,25v,25w)及び下アーム側スイッチング素子(26u,26v,26w)それぞれのオン及びオフを制御して、ファンモータ(77)を起動させる。
【0039】
一例としては、検出回路(27)の検出結果が“0”、即ち誘起電圧が発生していない場合、起動前の状態にある現在のファンモータ(77)は回転していない状態にある。この場合、ファンモータ(77)の起動方法としては、ファンモータ(77)に所定の直流電流を通電させて該モータ(77)のロータを所定位置に一旦固定させてから、ファンモータ(77)の起動を開始させる方法が採用される(位置決め起動制御)。検出回路(27)の検出結果が“0rpmより大きく150rpm未満”の回転数の範囲内に該当する場合も、スイッチング制御部(28)は、上記位置決め起動制御を行う。
【0040】
取得した検出回路(27)の検出結果が“150rpm以上190rpm未満”の回転数の範囲内に該当する場合、ファンモータ(77)は回転しているものの、その回転数の値からするとロータの位置の把握が困難な状態となっている。この場合、ファンモータ(77)の起動方法としては、比較的大きい電流をファンモータ(77)に通電させることで強制的に回転を開始させ、次いで出力交流電力(SU,SV,SW)における電圧の周波数及びデューティを徐々に高めていく方法が採用される(同期運転起動)。検出回路(27)の検出結果が“190rpm以上350rpm未満”の回転数の範囲内に該当する場合、ロータの位置の把握が可能な状態となっている。この場合、ファンモータ(77)の起動方法としては、ファンモータ(77)のロータ位置を推定しつつセンサレス方式にて起動させる方法が採用される(センサレス運転起動)。
【0041】
検出回路(27)の検出結果が“350rpm以上”の回転数の範囲に該当する場合、ファンモータ(77)は既に十分な回転数で回転しているため、スイッチング制御部(28)は、ファンモータ(77)の起動制御を行わない。
【0042】
なお、上記では、回転方向に関係なく、回転数のみで起動方法が決定される場合を例示しているが、更に起動前の回転方向に基づき起動方法が決定されても良い。
【0043】
特に、本実施形態1に係るスイッチング制御部(28)は、検出回路(27)が誘起電圧の検出動作を行っている間、以下に詳述するスイッチング制御を更に行う。
【0044】
<モータ起動前のスイッチング制御>
空気調和装置(70)の運転開始時、室外ユニット(71)では、室外ファン(76)よりも先に圧縮機(72)が運転を開始する。室外ファン(76)の運転停止中、ファンモータ(77)と接続されたインバータ回路(23)の各スイッチング素子(25u,25v,25w,26u,26v,26w)はオフしている。この状態にて、室外ファン(76)の運転開始指示が統括制御部(図示せず)によってなされると、検出回路(27)はW相の誘起電圧の検出を行い、スイッチング制御部(28)は、検出回路(27)の検出結果に基づいてファンモータ(77)の起動方法を決定する。起動方法の決定後、各スイッチング素子(25u,25v,25w,26u,26v,26w)のオン及びオフによりファンモータ(77)が起動される。
【0045】
即ち、誘起電圧の検出動作時、検出回路(27)に接続されたW相の下アーム側スイッチング素子(26w)及び上アーム側スイッチング素子(25w)は、共にオフのため、所謂ハイインピーダンス状態となっている。しかも、検出回路(27)のインピーダンスは、元々高く設定されている。そのため、誘起電圧の検出動作時、検出回路(27)、配線(43,44)及びW相のスイッチング素子対(24w)を含む部分は、インピーダンスが高い状態となっており、故に誘起電圧には、圧縮機(72)のインバータ駆動等に起因する外来ノイズが重畳し易い。
【0046】
すると、検出回路(27)は、外来ノイズが重畳した誘起電圧を検出し、スイッチング制御部(28)は、当該誘起電圧の分圧後の電圧に応じてファンモータ(77)の起動方法を決定することとなる。この場合、誘起電圧に重畳された外来ノイズの影響により、スイッチング制御部(28)は、本来選択するべき起動方法とは別の起動方法を誤って選択し、場合によっては、ファンモータ(77)が正常に起動しない等の起動不良が生じる虞がある。
【0047】
そこで、
図3に示すように、本実施形態1に係るスイッチング制御部(28)は、室外ファン(76)の運転開始指示を取得すると、検出回路(27)の検出結果を用いて起動方法を決定する前に、W相の下アーム側スイッチング素子(26w)のみを、所定周波数fでオン及びオフを繰り返させるスイッチング制御を行う。即ち、検出回路(27)がW相の誘起電圧を検出する際、スイッチング制御部(28)は、誘起電圧の検出対象となるW相に対応した下アーム側スイッチング素子(26w)のみを、所定周波数fでスイッチングさせる。スイッチング制御部(28)は、下アーム側スイッチング素子(26w)がスイッチングしている間に検出回路(27)が検出した誘起電圧を用いて、ファンモータ(77)の起動方法を決定する。
【0048】
なお、スイッチング制御が行われている間、誘起電圧の検出対象外であるV相及びU相の下アーム側スイッチング素子(26v,26u)及び全ての上アーム側スイッチング素子(25u,25v,25w)は、オフしたままとなっている。
【0049】
W相の下アーム側スイッチング素子(26w)をスイッチングさせる上記スイッチング制御により、
図1に示すように、W相の駆動コイル(L3)から配線(43)及び下アーム側スイッチング素子(26w)を介して負側配線(45)へと通電可能な電流経路が形成される。上記スイッチング制御時の電流経路のインピーダンスは、見掛け上、上記スイッチング制御が行われない場合に比して低下する。一方、検出回路(27)のインピーダンスは、第1抵抗(27a)及び第2抵抗(27b)によって、予め高い状態に設定されたままである。
【0050】
このように、スイッチング制御時の電流経路のインピーダンスが低下するため、外来ノイズは、ファンモータ(77)で発生した誘起電圧に重畳しにくくなる。仮に外来ノイズが誘起電圧に重畳したとしても、外来ノイズに伴うノイズ電流は、スイッチング中の下アーム側スイッチング素子(26w)を含む電流経路に流れるため、誘起電圧から外来ノイズのみを除去することができる。これにより、検出回路(27)は、外来ノイズの重畳していない純粋な誘起電圧を検出することができる。従って、スイッチング制御部(28)は、当該誘起電圧から、現時点におけるファンモータ(77)の回転数(即ち、起動前のファンモータ(77)の回転数)を把握することができ、把握した回転数に応じてファンモータ(77)の起動方法を決定することができる。それ故、ファンモータ(77)は、起動不良を生じることなく正常に起動することができる。
【0051】
ここで、
図3における上記所定周波数fは、起動前のファンモータ(77)に発生する誘起電圧の周波数よりも高い。誘起電圧に外来ノイズを重畳させず且つ誘起電圧から確実に外来ノイズのみを除去すると共に、上記スイッチング制御によって誘起電圧の電圧値が低下することをなるべく避けるためである。仮に、誘起電圧の検出期間中、所定周波数fが比較的低く、W相の下アーム側スイッチング素子(26w)がオンしている時間が比較的長くなったと仮定する。すると、その分、電流経路のインピーダンスがより低くなり、外来ノイズの重畳のし難さ及び外来ノイズの除去能力は増すものの、検出される誘起電圧は、より低下して負側配線(45)の電位に近づいてしまう。故に、所定周波数fは、下アーム側スイッチング素子(26w)を適度にスイッチングすることによって、下アーム側スイッチング素子(26w)を含む電流経路のインピーダンスを適度に下げる程度であることが望まれる。即ち、所定周波数fは、誘起電圧に外来ノイズを重畳させず且つノイズ電流を電流経路側に流すことができ、更には上記スイッチング制御によって誘起電圧の電圧値があまり低下しない程度に、電流経路のインピーダンスを低下させるような周波数であることが望まれる。
【0052】
より具体的には、所定周波数fは、起動前のファンモータ(77)に発生した誘起電圧(検出されるW相の誘起電圧)の周波数の5倍以上、より好ましくは、誘起電圧の周波数の10倍程度に設定される。例えば、運転停止中の室外ファン(76)が逆風を受けて回転する際のファンモータ(77)の最大回転数を“約1000rpm”とすると、当該ファンモータ(77)に発生する誘起電圧の周波数は、“約66.7Hz”となる。この場合、所定周波数fは、“約333.5Hz”以上、より好ましくは、“約667Hz”程度に設定される。なお、デューティは約50%に設定されている。
【0053】
なお、所定周波数fの上限値としては、誘起電圧に重畳する外来ノイズの周波数よりも小さいことが好ましい。所定周波数fを外来ノイズの周波数より大きくしすぎると、本来は正弦波状であるはずの誘起電圧が平坦化され、起動前のファンモータ(77)の回転数が把握できなくなる虞があるためである。
【0054】
ところで、
図3に示すように、スイッチング制御部(28)は、上述した所定周波数fでのスイッチング制御を誘起電圧の検出期間中に行い、誘起電圧の検出結果に基づいてファンモータ(77)の起動方法を決定すると、上記スイッチング制御を停止してファンモータ(77)の起動を開始する。即ち、スイッチング制御部(28)は、上記スイッチング制御を、室外ファン(76)の運転開始指示を取得した時からファンモータ(77)の起動を開始するまで行う。これにより、上記スイッチング制御にてスイッチング対象となっている下アーム側スイッチング素子(26w)は、ファンモータ(77)の起動でも問題なく用いられる。
【0055】
<実施形態1の効果>
本実施形態1では、起動前のファンモータ(77)の誘起電圧を検出回路(27)が検出する際、スイッチング制御部(28)は、下アーム側スイッチン素子(26w)のオン及びオフを繰り返させるスイッチング制御を行う。スイッチング制御部(28)は、スイッチング制御時に検出された誘起電圧に応じて、各スイッチング素子(25u,25v,25w,26u,26v,26w)のオン及びオフを制御することにより、ファンモータ(77)を起動させる。
【0056】
上記スイッチング制御時、W相の駆動コイル(L3)、配線(43)及び下アーム側スイッチング素子(26w)を含む電流経路のインピーダンスは、見掛け上、上記スイッチング制御を行わない場合に比して低下する。これにより、外来ノイズは、誘起電圧に重畳しにくくなる。仮に、外来ノイズが誘起電圧に重畳したとしても、外来ノイズに伴うノイズ電流は、電流経路側に流れる。従って、検出回路(27)は、外来ノイズの重畳していない純粋な誘起電圧を検出でき、スイッチング制御部(28)は、その誘起電圧に応じてファンモータ(77)を起動させることができる。それ故、ファンモータ(77)の起動不良の発生を抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態1のスイッチング制御時の所定周波数fは、誘起電圧の周波数よりも高く設定されている。これにより、スイッチング制御時、下アーム側スイッチング素子(26w)を含む電流経路のインピーダンスを適切に低下させることができる。そのため、検出回路(27)は、外来ノイズが重畳しておらず且つ電圧値が低下しすぎていない誘起電圧を、検出することができる。
【0058】
特に、本実施形態1では、誘起電圧の検出対象であるW相に対応した下アーム側スイッチング素子(26w)に対してスイッチング制御が行われるため、検出回路(27)は、外来ノイズの重畳していない誘起電圧を検出することができる。故に、誘起電圧の検出対象外である相に対応した下アーム側スイッチング素子(26u,26v)に対しては、スイッチング制御を行う必要がなく、制御が簡単であると言える。
【0059】
また、本実施形態1における下アーム側スイッチング素子(26w)のスイッチング制御は、ファンモータ(77)の起動開始まで行われる。即ち、ファンモータ(77)の起動用として用いられる下アーム側スイッチング素子(26w)がインピーダンスの低下手段として用いられるのは、ファンモータ(77)の起動前までである。そのため、ファンモータ(77)は支障なく起動することができる。
≪実施形態2≫
上記実施形態1では、1つの検出回路(27)が電力変換装置(20)に備えられている場合を説明した。本実施形態2では、
図4に示すように、2つの検出回路(127a,127b)が、2相(W相及びV相)に対応して電力変換装置(20)に備えられている場合について説明する。特に、以下では、上記第1実施形態1と異なる構成部分について説明する。
【0060】
検出回路(127a)の入力は、配線(44,43)を介してW相の接続ノード(cn3)及びW相の駆動コイル(L3)に接続されている。検出回路(127a)は、起動前のファンモータ(77)のW相に発生する誘起電圧を検出する。検出回路(127b)は、配線(44,42)を介してV相の接続ノード(cn2)及びV相の駆動コイル(L2)に接続されている。検出回路(127b)は、起動前のファンモータ(77)のV相に発生する誘起電圧を検出する。各検出回路(127a,127b)の構成は、上記実施形態1に係る検出回路(27)と同一である。
【0061】
スイッチング制御部(28)は、各検出回路(127a,127b)の出力と接続されており、各検出回路(127a,127b)によって検出されたW相の誘起電圧とV相の誘起電圧との電圧差を求める。スイッチング制御部(28)は、求めた電圧差を用いてファンモータ(77)の起動方法を決定し、決定した起動方法に従ってファンモータ(77)を起動させる。
【0062】
実施形態2においても、各検出回路(127a,127b)が誘起電圧の検出動作を行っている間、スイッチング制御部(28)は、検出回路(127a,127b)に対応するW相及びV相の下アーム側スイッチング素子(26w,26v)それぞれを、所定周波数fにてオン及びオフを繰り返させるスイッチング制御を行う。所定周波数fは、W相及びV相それぞれに発生する誘起電圧の周波数よりも高く、各下アーム側スイッチング素子(26w,26v)は同期してオン及びオフを行う。このようなスイッチング制御は、ファンモータ(77)の起動が開始されるまで行われる。
【0063】
なお、スイッチング制御が行われている間、誘起電圧の検出対象外であるU相の下アーム側スイッチング素子(26u)及び全ての上アーム側スイッチング素子(25u,25v,25w)は、オフしたままとなる。
【0064】
検出回路(127a,127b)それぞれでは、
図1の検出回路(27)と同様、コンデンサ(27c)が第2抵抗(27b)に並列接続されている。仮に、本実施形態2に係る上記スイッチング制御を行わない場合、W相及びV相それぞれの誘起電圧には外来ノイズが重畳しているため、当該外来ノイズに伴う電荷が各コンデンサ(27c)にチャージされる。すると、各検出回路(127a,127b)からは、チャージされたコンデンサ(27c)によって電圧値が高く且つひずんだ波形となってしまっている検出結果(つまり分圧された誘起電圧)が、スイッチング制御部(28)へと出力される。このような検出結果同士の電圧差は、外来ノイズが重畳されていない場合に比して小さくなる。すると、スイッチング制御部(28)は、求めた電圧差が小さいが故に、実際とは異なる回転数を起動前のファンモータ(77)の回転数として算出する虞がある。このような誤算出は、ファンモータ(77)の起動方法の決定に影響を及ぼす。
【0065】
これに対し、本実施形態2では、上述したように、起動前のファンモータ(77)のW相及びV相の誘起電圧を検出する際、下アーム側スイッチング素子(26v,26w)に対するスイッチング制御が行われる。これにより、駆動コイル(L3)と配線(43)と下アーム側スイッチング素子(26w)とを含む電流経路、及び、駆動コイル(L2)と配線(42)と下アーム側スイッチング素子(26v)とを含む電流経路の各インピーダンスは、見掛け上、スイッチング制御が行われない場合に比して低下する。そのため、各検出回路(127a,127b)の検出結果は、外来ノイズの重畳していないW相及びV相の誘起電圧となる。従って、スイッチング制御部(28)は、外来ノイズの重畳していない純粋なW相及びV相の誘起電圧から電圧差を演算し、ファンモータ(77)の起動方法を判断することができる。故に、モータ(77)の起動不良の発生が抑制される。
【0066】
≪その他の実施形態≫
上記実施形態1,2は、以下のような構成であってもよい。
【0067】
電力変換装置(20)の電力供給対象となるモータは、室外ファン(76)のファンモータ(77)に限定されずとも良い。起動前に逆回転または正回転に回転する可能性のあるモータであれば、電力変換装置(20)の電力供給対象となることができる。
【0068】
誘起電圧の検出対象となる相とその数は、上記実施形態1及び実施形態2に限定されない。また、ファンモータ(77)の有する相数は、3相でなくてもよい。
【0069】
スイッチング制御時の所定周波数f(
図3)は、誘起電圧に外来ノイズを重畳させず、且つスイッチング素子(26v)(または(26v,26w))を含む電流経路にノイズ電流を流すことができる程度に、電流経路のインピーダンスを低下させるような周波数に設定されることは必要である。しかし、所定周波数fが、スイッチング制御によって誘起電圧の電圧値があまり低下しない程度の周波数に設定されることは、必ずしも必要ではない。例えば、所定周波数fとそのデューティとから、スイッチング制御時の電流経路のインピーダンスを予測することは可能である。そこで、予測したインピーダンスから誘起電圧の電圧値の低下量を予測し、予測した低下量に基づきファンモータ(77)の起動方法を決定する際の回転数の範囲の上限値及び下限値を、適宜変更してもよい。
【0070】
スイッチング制御される下アーム側スイッチング素子には、誘起電圧が検出される相の素子のみならず、誘起電圧が検出されない相の素子が更に含まれていても良い。例えば、誘起電圧の検出対象が1相または2相であっても、全相の下アーム側スイッチング素子(26u,26v,26w)がスイッチング制御されてもよい。
【0071】
スイッチング制御は、検出回路(27,127a,127b)による誘起電圧の検出動作中は行われていなければならないが、必ずしもファンモータ(77)の起動直前まで行われなくてもよい。即ち、ファンモータ(77)の起動前であっても、検出回路(27,127a,127b)による検出動作が行われていなければ、スイッチング制御部(28)は、スイッチング制御を実行せずとも良い。