特許第5850206号(P5850206)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5850206洗浄用フラックス及び洗浄用ソルダペースト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5850206
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】洗浄用フラックス及び洗浄用ソルダペースト
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/363 20060101AFI20160114BHJP
【FI】
   B23K35/363 D
   B23K35/363 C
   B23K35/363 E
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-530178(P2015-530178)
(86)(22)【出願日】2013年9月12日
(86)【国際出願番号】JP2013074752
(87)【国際公開番号】WO2015037107
(87)【国際公開日】20150319
【審査請求日】2015年6月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000199197
【氏名又は名称】千住金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】児島 直克
(72)【発明者】
【氏名】丸子 大介
【審査官】 鈴木 毅
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−103397(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/069600(WO,A1)
【文献】 特開平10−202393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤として、アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物の添加量を0〜98重量%の範囲とし、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンの添加量を0〜98重量%の範囲として、アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物とエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンの何れかあるいは両方を60〜98重量%含み、有機酸の添加量を0〜18重量%の範囲とし、ハロゲン化合物の添加量を0〜4重量%の範囲として、有機酸とハロゲン化合物の何れかあるいは両方を含む
ことを特徴とする洗浄用フラックス。
【請求項2】
更に、チキソ剤を0〜30重量%、ロジンを0〜15重量%含む
ことを特徴とする請求項1に記載の洗浄用フラックス。
【請求項3】
洗浄用フラックスとはんだ合金の粉末が混合された洗浄用ソルダペーストにおいて、
前記洗浄用フラックスは、溶剤として、アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物の添加量を0〜93重量%とし、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンの添加量を0〜93重量%の範囲として、アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物とエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンの何れかあるいは両方を60〜93重量%含み、有機酸の添加量を0〜18重量%の範囲とし、ハロゲン化合物の添加量を0〜4重量%の範囲として、有機酸とハロゲン化合物の何れかあるいは両方を含む
ことを特徴とする洗浄用ソルダペースト。
【請求項4】
前記洗浄用フラックスは、更にチキソ剤を5〜30重量%、ロジンを0〜15重量%含む
ことを特徴とする請求項3に記載の洗浄用ソルダペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ付け時の加熱による揮発が抑えられた洗浄用フラックス、及び、洗浄用フラックスとはんだ合金の粉末が混合された洗浄用ソルダペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、はんだ付けに用いられるフラックスは、はんだ合金及びはんだ付けの対象となる接合対象物の金属表面に存在する金属酸化物を化学的に除去し、両者の境界で金属元素の移動を可能にする効能を持つ。このため、フラックスを使用してはんだ付けを行うことで、はんだ合金と接合対象物の金属表面との間に金属間化合物が形成できるようになり、強固な接合が得られる。
【0003】
はんだボールと称される球体のはんだ合金を使用したはんだ付けは、基板の電極にフラックスが塗布され、フラックスが塗布された電極にはんだボールが搭載され、リフロー炉と称される加熱炉で基板を加熱してはんだを溶融させて、はんだ付けが行われる。
【0004】
ソルダペーストは、はんだ合金の粉末とフラックスとを混合させて得られた複合材料である。ソルダペーストを使用したはんだ付けは、基板の電極等のはんだ付け部にソルダペーストが塗布され、ソルダペーストが塗布されたはんだ付け部に部品が搭載され、リフロー炉で基板を加熱してはんだを溶融させて、はんだ付けが行われる。
【0005】
例えば、Sn-Ag系のはんだ合金を使用したはんだ付けの工程では、リフロー炉の温度がはんだ合金の溶融温度である220℃以上となるように温度プロファイルが設定されており、通常、はんだ付け工程でのリフロー炉内の温度の上限値であるピーク温度は、240〜250℃程度に設定される。
【0006】
フラックスは、固形の成分と、固形の成分を溶かす溶剤等で構成されているが、従来の組成のフラックスでは、はんだ付け時の加熱でフラックス中の溶剤成分等が揮発する。
【0007】
はんだ付け時の加熱でフラックス中の溶剤成分等が揮発すると、気体のフラックスヒュームが発生し、このフラックスヒュームがリフロー炉内の壁面や冷却ゾーン等の加熱時より温度が低くなっている場所に付着して液状化する。
【0008】
このように、リフロー炉内にフラックスが揮発した成分が付着して液状化すると、リフロー炉内を搬送される製品に滴下する虞があるため、定期的な清掃作業が必要となる。
【0009】
さて、微小径のはんだボールを電極上に仮固定できるようにするための水溶性粘着剤が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、揮発量に対しては全く考慮されておらず、溶剤は揮発させるものとして考えている配合となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2008/114711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
フラックスにおいて、従来、はんだ付けの工程で揮発してリフロー炉内に付着する主な成分は溶剤である。この溶剤の揮発を抑えること、さらにはフラックス全体の揮発を抑えることに着目してフラックスを生成するという提案は従来なされてこなかった。
【0012】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、金属酸化膜を除去する機能を阻害することなく、はんだ付け時の加熱による揮発が抑えられ、残渣の洗浄が可能な洗浄用フラックス、及び、洗浄用フラックスとはんだ合金の粉末が混合された洗浄用ソルダペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述のように、はんだ付けの工程で揮発してリフロー炉内に付着する主な成分は溶剤である。一方、フラックスに活性剤として添加される成分も、はんだ付けの工程で揮発するため、リフロー炉内の汚れの要因の1つとなる。但し、活性剤成分の添加量を減らすことは、金属酸化膜を除去する能力の低下につながる。
【0014】
そこで、本願の発明者らは、溶剤としての機能に加えて、活性剤としての機能も持ち、かつ、揮発が抑えられることで発生する残渣の洗浄が可能な化合物を用いることで、金属酸化膜を除去する機能を阻害することなく、はんだ付け時の加熱による揮発を抑えて、リフロー炉内の汚れを軽減できることを見出した。
【0015】
本発明は、溶剤として、アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物の添加量を0〜98重量%の範囲とし、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンの添加量を0〜98重量%の範囲として、アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物とエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンの何れかあるいは両方を60〜98重量%含み、有機酸の添加量を0〜18重量%の範囲とし、ハロゲン化合物の添加量を0〜4重量%の範囲として、有機酸とハロゲン化合物の何れかあるいは両方を含む洗浄用フラックスである。チキソ剤の添加量は0〜30重量%、ロジンの添加量は0〜15重量%である。
【0016】
また、本発明は、洗浄用フラックスとはんだ合金の粉末が混合された洗浄用ソルダペーストにおいて、洗浄用フラックスは、溶剤として、アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物の添加量を0〜93重量%とし、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンの添加量を0〜93重量%の範囲として、アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物とエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンの何れかあるいは両方を60〜93重量%含み、有機酸の添加量を0〜18重量%の範囲とし、ハロゲン化合物の添加量を0〜4重量%の範囲として、有機酸とハロゲン化合物の何れかあるいは両方を含む洗浄用ソルダペーストである。洗浄用フラックスは、チキソ剤を5〜30重量%、ロジンを0〜15重量%含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、洗浄用フラックスに溶剤成分として添加されるアルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物とエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンは、フラックス材料を溶解させる極性を持ち、リフロー炉を使用したはんだ付け工程での炉内のピーク温度より80℃以上高い沸点を有する。これにより、はんだ付け工程での溶剤成分の揮発が抑えられる。フラックス中の溶剤成分の揮発が抑えられると、リフロー炉内へのフラックスヒュームの付着が抑えられる。よって、リフロー炉内の汚れを軽減することができる。
【0019】
また、活性補助剤成分としても機能するアルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物とエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンを選択することで、金属酸化膜を除去する能力を低下させることなく、有機酸の添加量を減らすことができる。これにより、リフロー炉内の汚れを軽減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<本実施の形態の洗浄用フラックスの組成例>
本実施の形態の洗浄用フラックスは、アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物とエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンの何れかあるいは両方と、有機酸を含む。本実施の形態の洗浄用フラックスは、チキソ剤を含んでも良い。
【0021】
本実施の形態の洗浄用フラックスは、チップアタッチ、ボールアタッチと称されるはんだ接合に使用される。また、本実施の形態の洗浄用フラックスは、はんだ合金の粉末と混合されて洗浄用ソルダペーストとして使用される。
【0022】
アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物とエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンは、洗浄用フラックスにおける主に溶剤成分として添加され、洗浄用フラックス中の固形成分を溶かす。また、アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物とエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンは、金属酸化膜を除去する活性補助剤成分としての機能も有する。
【0023】
アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物とエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンは、リフロー炉を使用したはんだ付け工程でのピーク温度より80℃以上高い沸点を有する。ここで、はんだ付け工程でのリフロー炉内の温度は、240〜250℃程度であり、溶剤成分として沸点が330℃以上の化合物を選択した。
【0024】
また、アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物とエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンは、水あるいは所定の洗浄剤に対して可溶な水溶性である。アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物のアルキレンオキサイド部に挙げられるのはエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドであり、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンのアルキレン部に挙げられるのはエチレン、プロピレン、イソプロピレンなどである。
【0025】
有機酸は、フラックスにおける活性剤成分として添加される。有機酸は、炭素数が10以下の一般的な有機酸で良い。例えば、有機酸は、カルボキシ基を持つ炭素数が4〜10(C4〜C10)のカルボン酸であることが好ましい。
【0026】
ハロゲン化合物は、フラックスにおける活性剤成分として添加される。ハロゲン化合物はアミン臭化水素酸塩及びハロゲノアルコールであれば良い。例えば、アミン臭化水素酸塩はエチルアミン臭化水素酸塩、プロピルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン臭化水素酸塩、ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩などであり、ハロゲノアルコールは2,3-ジブロモ-1,4-ブタンジオール、trans-2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオール等である。
【0027】
チキソ剤は、チキソ性の付与のため必要に応じて添加される。チキソ剤は水あるいは所定の洗浄剤に対して可溶であり、揮発が抑えられる化合物であればよく、高級脂肪酸アマイド、ひまし硬化油や、分子量が1000以上のポリエチレングリコール、好ましくは分子量1500以上のポリエチレングリコールが例として挙げられる。
【0028】
ロジンは、有機酸及びハロゲン化合物等の活性剤成分を熱から保護して、活性剤成分の揮発を抑制する。ロジンは、所定の洗浄剤に可溶であれば良く、変性ロジン、重合ロジン、水添ロジン等が例として挙げられる。
【0029】
溶剤成分として添加されるアルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物とエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンは、リフロー炉を使用したはんだ付け工程での炉内のピーク温度より80℃以上高い沸点を有する。
【0030】
これにより、例えば、はんだボールを使用したはんだ付け工程での溶剤成分の揮発が抑えられる。フラックス中の溶剤成分の揮発が抑えられると、炉内へのフラックスヒュームの付着が抑えられる。よって、リフロー炉内の汚れが軽減される。
【0031】
一方、フラックス中の成分で、はんだ付け時の加熱によって分解、揮発しない成分は、はんだ付け後にフラックス残渣として残留する。アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物とエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンは、はんだ付け時の加熱による揮発が抑えられるため、はんだ付け後にフラックス残渣となって残留する。
【0032】
そこで、はんだ付け時の加熱による揮発が抑えられるような高沸点である溶剤成分の選択にあたり、アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物とエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンを選択した。また、チキソ剤を添加する場合、水あるいは所定の洗浄剤で洗浄可能な化合物を選択した。これにより、はんだ付け時の加熱で揮発しない成分によるフラックス残渣の洗浄が可能となる。
【0033】
更に、フラックス中の溶剤成分の揮発が抑えられると、フラックスが固まることを抑えることができる。これにより、電極の表面及びはんだボールの表面にフラックスが広がり、金属酸化膜を除去することができるので、はんだの濡れ性が確保される。
【0034】
また、溶剤成分として添加されるアルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物とエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンが、金属酸化膜を除去する活性補助剤成分としても機能することで、活性剤成分、本例では有機酸及びハロゲン化合物の添加量を減らすことができる。
【0035】
フラックス中の有機酸及びハロゲン化合物は、はんだ付けの工程で揮発するため、リフロー炉内の汚れの要因の1つとなる。但し、有機酸及びハロゲン化合物の添加量を減らすことは、金属酸化膜を除去する能力の低下につながる。
【0036】
そこで、活性補助剤成分としても機能するアルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物とエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンを、溶剤成分として選択することで、金属酸化膜を除去する能力を低下させることなく、有機酸及びハロゲン化合物の添加量を減らすことができる。これにより、リフロー炉内の汚れが軽減される。
【0037】
フラックスでは、有機酸及びハロゲン化合物の添加量を多くすれば、はんだの濡れ性が向上する。一方、有機酸及びハロゲン化合物の添加量を多くすると、アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物とエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンの添加量が相対的に少なくなり、フラックス中で揮発する成分の比率が高くなる。
【0038】
そこで、本実施の形態の洗浄用フラックスでは、アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物とエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンの何れかあるいは両方を含み、アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物の添加量は0〜98重量%の範囲とし、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンの添加量は0〜98重量%の範囲として、アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物とエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンの両方を含む場合は、アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物とエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンの合計の添加量を60〜98重量%とした。
【0039】
また、アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物あるいはエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンの何れかを含む場合は、アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物あるいはエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンの添加量を60〜98重量%とした。
【0040】
更に、有機酸とハロゲン化合物の何れかあるいは両方を含み、有機酸の添加量は0〜18重量%の範囲とし、ハロゲン化合物の添加量は0〜4重量%の範囲とした。また、チキソ剤の添加量は0〜30重量%、ロジンの添加量は0〜15重量%とした。
【0041】
本実施の形態の洗浄用ソルダペーストは、上述した洗浄用フラックスと、はんだ合金の粉末が混合されて生成される。洗浄用ソルダペーストを生成する洗浄用フラックスでは、アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物とエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンの何れかあるいは両方を含み、アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物の添加量は0〜93重量%の範囲とし、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンの添加量は0〜93重量%の範囲として、アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物とエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンの両方を含む場合は、アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物とエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンの合計の添加量を60〜93重量%とした。
【0042】
また、アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物あるいはエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンの何れかを含む場合は、アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物あるいはエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンの添加量を60〜93重量%とした。
【0043】
更に、有機酸とハロゲン化合物の何れかあるいは両方を含み、有機酸の添加量は0〜18重量%の範囲とし、ハロゲン化合物の添加量は0〜4重量%の範囲とした。また、ロジンの添加量は0〜15重量%とし、チキソ剤の添加量は、必要に応じて5〜30重量%とした。本例における洗浄用ソルダペーストは、はんだ合金の組成がSn-3Ag-0.5Cu(各数値は重量%)であるはんだ合金の粉末が80〜91重量%と、洗浄用フラックスが9〜20重量%の割合で混合されて生成される。尚、本発明はこのはんだ合金に限定するものではない。
【0044】
本実施の形態のはんだ継手は、上述した洗浄用フラックスと任意の組成のはんだ合金、または、上述した洗浄用ソルダペーストを使用してはんだ付けを行うことで形成される。
【実施例】
【0045】
以下の表に示す組成で実施例と比較例のフラックスを調合し、実施例及び比較例のフラックスを使用して、フラックスの揮発性とはんだ付け性について検証した。なお、表1における組成率は、フラックス組成物中の重量%である。
【0046】
揮発性の検証はアルバック理工(株)のTGD9600を用いて熱重量測定(TGA測定)によりフラックスの揮発量(重量%)を求めた。
【0047】
測定条件
プリヒート:130〜170℃120秒,ピーク温度:245℃,220℃以上保持時間:46秒,雰囲気:N
【0048】
本例では、揮発量が20%以下であれば、所望の低揮発性を満たすとした。揮発性の検証にフラックス単体を用いたが、ソルダペーストを用いて行っても良い。しかし、ソルダペーストで行う際、フラックスは全体の1割程度であり、揮発量としてはわずかな量となるため測定精度は劣ることとなる。
【0049】
はんだ付け性の検証は、実施例及び比較例のフラックスをJIS Z 3197はんだ広がり法に準拠し行った。本例では、広がり径が80%以上であれば、所望のはんだ付け性を満たすとした。
【0050】
【表1】
【0051】
表1に示すように、アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物及びエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンと、有機酸を含む実施例1と実施例2、更にチキソ剤を含む実施例3〜8は、何れも、揮発率が20%以下であり、所望の低揮発性を満たすことが判る。また、広がり径が80%以上であり、所望のはんだ付け性を満たすことが判った。
【0052】
これに対し、従来使用していたジエチレングリコールモノヘキシルエーテル等の揮発する溶剤成分を添加した各比較例は、はんだ付け性は満たすものの、揮発量が30%を超えており、所望の低揮発性を満たしていないことが判る。
【0053】
実施例3〜5から有機酸とハロゲン化合物の何れかあるいは両方を使用しても良いことが判り、実施例6、7からアルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物とエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンは一方のみの使用でも良いことが判る。
【0054】
実施例8からロジンを使用しても良いことが判る。しかし、ロジンをフラックスに添加すると粘度が高くなる傾向にある。そのため、ロジンの添加量は15重量%以下にすることが好ましい。
【0055】
以上の検証結果から、従来の溶剤成分に代えて、アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物とエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンの何れかあるいは両方を添加することで、はんだ付け時の加熱でフラックスの揮発が抑えられることが判った。また、アルキレンオキサイド・レゾルシン共重合物とエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド縮合付加アルキレンジアミンの何れかあるいは両方の添加で、はんだ付け性が低下することはなく、従来と同等のはんだ付け性が得られることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、リフロー炉を使用したはんだ付けに適用される。揮発しにくいという点は真空リフロー炉での使用に適している。