特許第5850235号(P5850235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5850235
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】避難用建物
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/14 20060101AFI20160114BHJP
   E04H 1/12 20060101ALI20160114BHJP
   A62B 99/00 20090101ALI20160114BHJP
【FI】
   E04H9/14 Z
   E04H1/12 A
   A62B99/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-7002(P2012-7002)
(22)【出願日】2012年1月17日
(65)【公開番号】特開2013-147795(P2013-147795A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2014年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(72)【発明者】
【氏名】町井 章
【審査官】 湊 和也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−132280(JP,A)
【文献】 特開2006−226098(JP,A)
【文献】 特開平08−086119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/14
A62B 99/00
E04H 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
津波あるいは洪水の発生時の避難拠点として使用するための避難用建物であって、
周方向全周にわたって延在するとともに、津波あるいは洪水による設定最大水位より高く、且つ水圧や流出物による衝撃に耐え得る耐圧性能を備えた外周防圧壁と、
該外周防圧壁の内側に設けられ、ライフライン機能を備えた建物本体と、
を備え
前記建物本体と前記外周防圧壁との間の吹抜け空間内で水平方向に延在し、該吹抜け空間を上下に区画する水平隔壁が設けられていることを特徴とする避難用建物。
【請求項2】
前記建物本体の外壁は、全体にわたって水密に設けられた外壁部隔壁により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の避難用建物。
【請求項3】
津波あるいは洪水の発生時の避難拠点として使用するための避難用建物であって、
周方向全周にわたって延在するとともに、津波あるいは洪水による設定最大水位より高く、且つ水圧や流出物による衝撃に耐え得る耐圧性能を備えた外周防圧壁と、
該外周防圧壁の内側に設けられ、ライフライン機能を備えた建物本体と、
を備え、
前記建物本体の外壁は、全体にわたって水密に設けられた外壁部隔壁により構成され、
前記建物本体と前記外周防圧壁との間の吹抜け空間内で水平方向に延在し、該吹抜け空間を上下に区画する水平隔壁が設けられていることを特徴とする避難用建物。
【請求項4】
前記外周防圧壁と前記建物本体との間の吹抜け空間には、前記建物本体の上層階に延びる避難階段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の避難用建物。
【請求項5】
前記外周防圧壁は、外周面が平面視で円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の避難用建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば津波や河川の氾濫などの洪水の発生時における避難用建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大規模な津波発生時の沿岸部における緊急避難先として、国などで想定されている最大津波高さよりも高い中高層ビルが指定されているケースが多い。このような建物としては、例えば津波の水圧によって押し流されることのない鉄筋コンクリート造の一般的なビルが対象となっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−221792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の津波発生時における避難用建物では、コンクリート構造の建物自体(躯体のみ)は津波によって流されずに残るため、この残った避難用建物を拠点として復興事業等の対応ができることが求められていた。
しかしながら、津波によって避難用建物自体も浸水や破壊により被災し、建物としての機能を喪失していた。つまり、被災した避難用建物の室内は浸水、流出により、建物を機能させるべく電気、ガス、水などの設備、および通信設備など所望の居住が不可能な状態の場合には、津波による被災後に建物までの電気、ガス、水などのライフラインが復旧しても、建物の機能自体が喪失しているので、上述したような避難用建物を拠点として復興活動を行うことが困難となっていた。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、津波あるいは洪水の発生時の緊急避難先を確実に確保できるとともに、建物本体の破壊や浸水を防止することができ、被災後における建物本体の機能を確保することができる避難用建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る避難用建物では、津波あるいは洪水の発生時の避難拠点として使用するための避難用建物であって、周方向全周にわたって延在するとともに、津波あるいは洪水による設定最大水位より高く、且つ水圧や流出物による衝撃に耐え得る耐圧性能を備えた外周防圧壁と、外周防圧壁の内側に設けられ、ライフライン機能を備えた建物本体と、を備え、建物本体と外周防圧壁との間の吹抜け空間内で水平方向に延在し、吹抜け空間を上下に区画する水平隔壁が設けられていることを特徴としている。
【0007】
本発明では、所定の耐圧性能を備えた外周防圧壁によって建物本体が全周にわたって囲まれており、津波あるいは洪水の発生時において外周防圧壁内への水の浸入を防止することができ、浸水、あるいは破壊といった建物本体の被害を抑えることができる。そのため、建物本体が津波あるいは洪水の発生時の緊急避難先として有効的であり、より確実な避難が可能となる。
また、津波等による被災後であっても被害を抑えた状態で建物本体が残ることから、建物本体のライフライン機能が維持される。そのため、周囲のライフラインの復旧に伴って建物本体の機能を回復することができ、被災後に残った建物本体を拠点として復興事業を行う等の対応が可能となる。
そして、この場合には、津波や洪水による水圧や流出物の衝撃に対する防壁構造として外周防圧壁の他に水平隔壁が設けられるので、仮に外周防圧壁が破壊されてその内側の吹抜け空間に水が流れ込んでも、水平隔壁よりも上側への水の流入が防止され、建物本体への被害を抑制することができる。そのため、建物本体の避難場所としての機能を保つことができるとともに、被災後においても建物本体の機能を維持したまま残しておくことができる。
【0008】
また、本発明に係る避難用建物では、建物本体の外壁は、全体にわたって水密に設けられた外壁部隔壁により構成されていることが好ましい。
【0009】
本発明の避難用建物によれば、津波や洪水による水圧や流出物の衝撃に対する防壁構造として外周防圧壁と外壁部隔壁とからなる二重構造となるので、仮に外周防圧壁が破壊されてその内側に水が流れ込んでも、外壁部隔壁によって建物本体が防護され、建物内への浸水を防止することができる。そのため、建物本体の避難場所としての機能を保つことができるとともに、被災後においても建物本体の機能を維持したまま残しておくことができる。
【0010】
また、本発明に係る避難用建物では、津波あるいは洪水の発生時の避難拠点として使用するための避難用建物であって、周方向全周にわたって延在するとともに、津波あるいは洪水による設定最大水位より高く、且つ水圧や流出物による衝撃に耐え得る耐圧性能を備えた外周防圧壁と、外周防圧壁の内側に設けられ、ライフライン機能を備えた建物本体と、を備え、建物本体の外壁は、全体にわたって水密に設けられた外壁部隔壁により構成され、建物本体と外周防圧壁との間の吹抜け空間内で水平方向に延在し、吹抜け空間を上下に区画する水平隔壁が設けられていることを特徴としている。
【0011】
本発明の避難用建物によれば、津波や洪水による水圧や流出物の衝撃に対する防壁構造として外周防圧壁と外壁部隔壁とからなる二重構造となるので、仮に外周防圧壁が破壊されてその内側に水が流れ込んでも、外壁部隔壁によって建物本体が防護され、建物内への浸水を防止することができる。そのため、建物本体の避難場所としての機能を保つことができるとともに、被災後においても建物本体の機能を維持したまま残しておくことができる。
また、この場合には、津波や洪水による水圧や流出物の衝撃に対する防壁構造として外周防圧壁の他に水平隔壁が設けられるので、仮に外周防圧壁が破壊されてその内側の吹抜け空間に水が流れ込んでも、水平隔壁よりも上側への水の流入が防止され、建物本体への被害を抑制することができる。そのため、建物本体の避難場所としての機能を保つことができるとともに、被災後においても建物本体の機能を維持したまま残しておくことができる。
【0012】
また、本発明に係る避難用建物では、外周防圧壁と建物本体との間の吹抜け空間には、建物本体の上層階に延びる避難階段が設けられていることが好ましい。
【0013】
この場合、建物本体の外側に避難階段が設けられているので、津波あるいは洪水の発生時に吹抜け空間にある避難階段を使用して建物本体の上層階の避難スペースへ避難することができる。そのため、避難時に建物本体の外壁に出入口を開放させずにすみ、建物本体を防水状態としておくことが可能となるので、仮に外周防圧壁の内側に水が流入しても、建物本体内が浸水するのを防止することができる。
【0014】
また、本発明に係る避難用建物では、外周防圧壁は、外周面が平面視で円弧状に形成されていることが好ましい。
【0015】
この場合には、外周防圧壁における津波などの水の抵抗を小さくすることができ、外周防圧壁が受ける負担を低減する効果を奏する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の避難用建物によれば、津波あるいは洪水の発生時の緊急避難先を確実に確保できるとともに、単に被害を少なくした状態で建物を残すだけでなく、建物本体の破壊や浸水を防止することで建物本体のライフラインを維持することができ、被災後における建物本体の機能を確保し、復興活動の拠点とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態による避難用建物の配置状態を示す斜視図である。
図2】避難用建物の構成を示す一部破断斜視図である。
図3】避難用建物の平面図であって、屋上避難部を省略した図である。
図4】避難用建物の外周防圧壁の構成を示す一部破断斜視図である。
図5】建物本体の構成を示す斜視図である。
図6】避難階段と屋上避難部の構成を示す斜視図である。
図7】避難用建物の側面図であって、図3に示すA−A線断面図である。
図8】避難用建物の側面図であって、図3に示すB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態による避難用建物について、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施の形態による避難用建物1は、沿岸部に配置されており、例えば巨大地震に伴う大規模津波の発生時に緊急避難先として使用される建物である。
【0019】
図2に示すように、避難用建物1は、周方向全周にわたって延在するとともに、津波による設定最大水位より高く、且つ水圧や流出物による衝撃に耐え得る耐圧性能を備えた外周防圧壁2と、外周防圧壁2の内側に所定の間隔(吹抜け空間R)をもって設けられ、ライフライン機能を備えた建物本体3と、を備えている。
【0020】
外周防圧壁2は、図2乃至図4に示すように、平面視で楕円形状(円弧状)の筒状体であり、地上に立設されており、想定される最大津波高さ(地上からの高さ)よりも高い高さ寸法H(図2参照)を有し、周方向の全面が壁面を構成している。例えば、想定最大津波高さが15mの場合には、外周防圧壁2の高さ寸法Hを20m以上などとして設定される。外周防圧壁2は、鉄筋コンクリート造(RC造)、あるいは鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)により構成され、図3ではH形鋼材などからなる複数の柱材21を周方向に配列した構成となっている。
【0021】
ここで、外周防圧壁2の厚さ寸法は、想定される津波により受ける水圧と、津波によって流されてくる瓦礫などの流出物の衝撃とに耐え得る強度により決定される。そのため、厚さ寸法が上下方向で一定である必要はなく、下方に向かうに従い漸次厚くなるように構成されていてもよい。
【0022】
外周防圧壁2は、周方向の一部分の範囲に上下方向に連続する採光部22を備え、さらにその採光部22の1階部分に内側に連絡可能な耐圧扉23が設けられている。なお、図2において、採光部22は二点鎖線で示している。
図2に示すように、採光部22は、外周防圧壁2の内側に外の光を導入するための補強ガラスブロック壁などの光を通す材料であり、他のコンクリート壁部24の部分と同様に津波による耐圧性能を有している。採光部22とコンクリート壁部24との接合部分は、十分な水密性が確保された状態で接合されている。また、耐圧扉23は、津波発生時に水密に閉じることが可能であり、通常時は開放した状態にすることができる。
【0023】
建物本体3は、平面視で矩形状をなし、外周防圧壁2よりも高い複数階で設けられ、その屋上部分には屋上避難部31(図6参照)が設けられている(図5参照)。建物本体3の外壁32(外壁部隔壁)は、全体にわたって水密に設けられたRC造、SRC造からなり、外周防圧壁2と同様に耐圧性能が発揮される厚さ寸法と強度を有している。
【0024】
建物本体3の外側の吹抜け空間Rには、建物本体3の対向する2つの外壁32(外周防圧壁2の短軸方向に平行な2壁面)に沿って上下方向に延在し建物本体3の上層階に向けて延びる避難階段33(図6図7参照)とエレベータ34が設けられている。避難階段33は、壁面毎に2箇所ずつ設けられ、エレベータ34は、一方の壁面のみに設けられている。そして、建物本体3のフロア毎に避難階段33に連絡可能な耐水扉35が設けられている。
また、外壁32には、適宜な箇所に採光窓(図示省略)が設けられ、吹抜け空間Rに外から取り入れられた光をさらに建物本体3の室内に導入される構成となっている。
【0025】
そして、図3に示すように、建物本体3は、四隅の角部3aが外周防圧壁2の内面に接合されている。そのため。吹抜け空間Rは、建物本体3における外周防圧壁2の長軸方向Xに平行な外壁32A側の第1吹抜け空間R1と、同じく短軸方向Yに平行な外壁32B側の第2吹抜け空間R2と、が形成されている。これら隣り合う吹抜け空間R1、R2同士は、建物本体3と外周防圧壁2との接合によって水密な状態で区画されている。
この吹抜け空間Rは、外周防圧壁2の上端開口2aから採光され、通風されるようになっている。
【0026】
図8に示すように、第1吹抜け空間R1は、設備が配置されず、上下方向に連通する空間となっており、外周防圧壁2の採光部22から建物本体3に直接採光することを可能としている。
また、第1吹抜け空間R1には、1階部分F1と2階部分F2との間の位置において、水平方向に延在し、吹抜け空間を上下に区画する水平隔壁4(図3斜線部分)が設けられている。つまり、第1吹抜け空間R1は、水平隔壁4によって上下の空間が水密な状態で分離され区画されている。水平隔壁4も外周防圧壁2や建物本体3の外壁32と同様に、想定される最大津波に応じた水圧に耐え得る耐圧性能を有している。
【0027】
第2吹抜け空間R2は、上述した避難階段33およびエレベータ34を収容する空間であり、避難階段33およびエレベータ34より図5に示す耐水扉35を介して各フロアの室内に出入することが可能である。
【0028】
外周防圧壁2の耐圧扉23は、第2吹抜け空間R2に通じるように設けられている。
【0029】
次に、上述した構成の避難用建物1の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
図2および図3に示すように、本実施の形態の避難用建物1では、建物本体3が所定の耐圧性能を備えた外周防圧壁2によって全周にわたって囲まれており、津波の発生時において外周防圧壁2内への水の浸入を防止することができ、浸水、あるいは破壊といった建物本体3の被害を抑えることができる。そのため、建物本体3が津波の発生時の緊急避難先として有効的であり、より確実な避難が可能となる。
また、津波による被災後であっても被害を抑えた状態で建物本体3が残ることから、建物本体3のライフライン機能が維持される。そのため、周囲のライフラインの復旧に伴って建物本体3の機能を回復することができ、被災後に残った建物本体3を拠点として復興事業を行う等の対応が可能となる。
【0030】
また、建物本体3の外壁32が全体にわたって水密に設けられているので、津波による水圧や流出物の衝撃に対する防壁構造として外周防圧壁2と外壁32とからなる二重構造となるので、仮に外周防圧壁2が破壊されてその内側に水が流れ込んでも、外壁32によって建物本体3が防護され、建物内への浸水を防止することができる。そのため、建物本体3の避難場所としての機能を保つことができるとともに、被災後においても建物本体3の機能を維持したまま残しておくことができる。
【0031】
また、本避難用建物1では、津波による水圧や流出物の衝撃に対する防壁構造として外周防圧壁2の他に第1吹抜け空間R1を上下に区画する水平隔壁4が設けられるので、仮に外周防圧壁2が破壊されてその内側の吹抜け空間Rに水が流れ込んでも、水平隔壁4よりも上側への水の流入が防止され、建物本体3への被害を抑制することができる。そのため、建物本体3の避難場所としての機能を保つことができるとともに、被災後においても建物本体3の機能を維持したまま残しておくことができる。
【0032】
また、建物本体3の外側の第2吹抜け空間R2に避難階段33が設けられているので、津波の発生時に第2吹抜け空間R2にある避難階段33を使用して建物本体3の上層階の屋上避難部31へ避難することができる。そのため、避難時に建物本体3の外壁32に出入口を開放させずにすみ、建物本体3を防水状態としておくことが可能となるので、仮に外周防圧壁2の内側に水が流入しても、建物本体3内が浸水するのを防止することができる。
【0033】
また、外周防圧壁2の外周面が平面視で円弧状に形成されているので、外周防圧壁2における津波の水の抵抗を小さくすることができ、外周防圧壁2が受ける負担を低減することができる。
【0034】
上述のように本実施の形態による避難用建物では、津波あるいは洪水の発生時の緊急避難先を確実に確保できるとともに、単に被害を少なくした状態で建物を残すだけでなく、建物本体3の破壊や浸水を防止することで建物本体3のライフラインを維持することができ、被災後における建物本体3の機能を確保し、復興活動の拠点とすることができる。
【0035】
以上、本発明による避難用建物の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本発明の避難用建物は、新設であることに制限されず、既設の建物に対しても適用可能である。例えば、既設の高層ビル(建物)の周囲に設定される最大水位高さおよび水圧に対応する外周防圧壁を構築することも可能である。
【0036】
また、外周防圧壁2の形状は、平面視で楕円形状であることに限定されることはなく、例えば円形、矩形状、あるいは他の形状であってもかまわない。そして、建物本体の平面視形状についても、とくに制限されることはない。
さらに、外周防圧壁2、および建物本体3の高さに制限されることはない。要は、外周防圧壁2の高さが想定される最大水位(津波高さ)よりも大きく設定されていればよいのである。そのため、建物本体3を外周防圧壁2と同じ高さとすることも可能である。
【0037】
また、本実施の形態では外壁部隔壁(外壁32)を有する建物本体3と別体で屋上避難部31が設けられているが、この屋上避難部31を省略することも可能である。
また、外周防圧壁2と建物本体3との間の間隔、すなわち吹抜け空間Rの広さは適宜設定することが可能である。
【0038】
さらに、本実施の形態では、外周防圧壁2の一部分に採光部22を設けているが、この採光部22の形状、大きさ、位置、部材等の構成は適宜設定することができ、また省略することも可能である。例えば、建物本体3の構造、例えば開口窓の位置に合わせて配置することができる。
【0039】
さらにまた、水平隔壁4を第1吹抜け空間R1に設けない構成としてもよいし、本実施の形態のように水平隔壁4の位置を1階部分F1と2階部分F2の間の位置ではなく、高さ方向で他の位置(例えば2階部分と3階部分の間など)としてもよい。さらに、水平隔壁4は、1段ではなく、上下方向に複数段設けるようにしてもよい。
【0040】
なお、本実施の形態では津波を避難用建物1の適用対象としているが、津波だけではなく、豪雨に伴う河川などの氾濫による洪水の場合に適用する避難用建物として採用してもよい。
【0041】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 避難用建物
2 外周防圧壁
3 建物本体
水平隔壁
22 採光部
23 耐圧扉
31 屋上避難部
32 外壁(外壁部隔壁)
33 避難階段
34 エレベータ
35 耐水扉
R、R1、R2 吹抜け空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8