【文献】
荒井幸雄,NHK放送会館の耐震診断と補強,放送技術,日本,兼六館出版株式会社,1996年 9月 1日,第49巻第9号,131−136頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記事前評価データテーブルの評価項目と、前記机上検討データテーブルの評価項目との評価内容が、最終的に必要な現地調査による診断の評価項目における評価内容と相関を有して設定されていることを特徴とする請求項1に記載の簡易防災診断システム。
前記事前評価データテーブル、前記机上検討データテーブル及び現地調査データテーブルの各々において、前記評価項目が大項目、当該大項目に属する中項目、当該中項目に属する小項目に分類されており、
前記第1フィルタルール及び前記第2フィルタルールの各々が、前記大項目、前記中項目及び前記小項目における評価項目の評価値によって設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の簡易防災診断システム。
前記第1フィルタルール及び前記第2フィルタルールの各々が、建造物の種類毎に設定されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の簡易防災診断システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来においては、地震に対する診断を対象とするシステムが多く、地震に伴う津波、河川の氾濫や火災などに対する防災性能の診断については考慮されていない。
一方、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震において、地震の揺れによる被害のみではなく、地震に伴う津波による甚大な被害が発生した。
今後発生することが予想されている首都直下地震、あるいは東海地震・東南海地震・南海地震の3連動地震などに備えて、東北地方太平洋沖地震で得られた知見を反映した防災診断システムが必要となっている。
また、建造物の防災診断を行う際、防災診断としては現地の聞き取り調査あるいは実際に建造物の状態の確認を行う必要があり、診断対象となる建造物の数が多い場合、全ての建造物に対して防災診断を行うことは困難である。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、東北地方太平洋沖地震で得られた知見を反映し、かつ詳細な防災診断が必要な建造物を、多数の候補から抽出することができる簡易防災診断システム、その方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明の簡易防災診断システムは、建造物の防災性能の診断を行い、診断結果を出力する簡易防災診断システムであり、前記建造物毎に、事前評価データテーブルに設定された評価項目の評価値と、第1フィルタルールに設定された前記評価項目の評価値とを比較し、
前記評価項目毎に前記第1フィルタルールに設定された複数段階のランクを付与し、複数の評価対象の前記建造物から、
所定のランクの数が前記第1フィルタルールに規定された設定数以上である前記建造物を、次段の設計図書による机上検討を行う建造物
として選択する事前評価部と、当該事前評価部が選択した前記建造物毎に、机上検討データテーブルに設定された評価項目の評価値と、第2フィルタルールに設定された前記評価項目の評価値とを比較し、
前記評価項目毎に前記第2フィルタルールに設定された複数段階のランクを付与し、前記事前評価部が選択した前記建造物から、
所定のランクの数が前記第2フィルタルールに規定された設定数以上である前記建造物を、次段の現地調査による簡易診断を行う建造物
として選択する机上検討部と、当該机上検討部が選択した前記建造物に対して得られた、現地調査データテーブルに記載された評価項目のデータを、建造物を識別する建造物識別情報に対応させ、現地調査データベースに書き込んで記憶させる現地調査部と、
前記事前評価データテーブル、前記机上検討データテーブル及び前記現地調査データテーブルの各々の評価項目の評価を集計し、前記机上検討部に選択された前記建造物の防災性能の総合評価を行い、当該総合評価の報告書を生成する報告書作成部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の簡易防災診断システムは、前記事前評価データテーブルの評価項目と、前記机上検討データテーブルの評価項目との評価内容が、最終的に必要な現地調査による診断の評価項目における評価内容と相関を有して設定されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の簡易防災診断システムは、前記事前評価データテーブル、前記机上検討データテーブル及び現地調査データテーブルの各々において、前記評価項目が大項目、当該大項目に属する中項目、当該中項目に属する小項目に分類されており、前記第1フィルタルール及び前記第2フィルタルールの各々が、前記大項目、前記中項目及び前記小項目における評価項目の評価値によって設定されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の簡易防災診断システムは、前記中項目として、少なくとも津波及び氾濫に対する防災性能を評価する評価項目が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の簡易防災診断システムは、前記第1フィルタルール及び前記第2フィルタルールの各々が、建造物の種類毎に設定されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の簡易防災診断システムは、
前記報告書作成部が、前記事前評価データテーブル、前記机上検討データテーブル及び前記現地調査データテーブルの各々の評価項目の
ランクを
大項目毎に集計し、前記机上検討部に選択された前記建造物の
各大項目毎の防災性能の総合評価を行い、当該総合評価の報告書を生成する
ことを特徴とする。
【0012】
本発明の簡易防災診断方法は、
事前評価部、机上検討部、現地調査部、報告書作成部を備える簡易防災診断システムを用い、建造物の防災性能の診断を行い、診断結果を出力する簡易防災診断方法であり、
前記事前評価部が、前記建造物毎に、事前評価データテーブルに設定された評価項目の評価値と、第1フィルタルールに設定された前記評価項目の評価値とを比較し、
前記評価項目毎に前記第1フィルタルールに設定された複数段階のランクを付与し、複数の評価対象の前記建造物から、
所定のランクの数が前記第1フィルタルールに規定された設定数以上である前記建造物を、次段の設計図書による机上検討を行う建造物
として選択する事前評価過程と、
前記机上検討部が、当該事前評価部が選択した前記建造物毎に、机上検討データテーブルに設定された評価項目の評価値と、第2フィルタルールに設定された前記評価項目の評価値とを比較し、
前記評価項目毎に前記第2フィルタルールに設定された複数段階のランクを付与し、前記事前評価部が選択した前記建造物から、
所定のランクの数が前記第2フィルタルールに規定された設定数以上である前記建造物を、次段の現地調査による簡易診断を行う建造物
として選択する机上検討過程と、
前記現地調査部が、当該机上検討部が選択した前記建造物に対して得られた、現地調査データテーブルに記載された評価項目のデータを、建造物を識別する建造物識別情報に対応させ、現地調査データベースに書き込んで記憶させる現地調査過程と
、前記報告書作成部が、前記事前評価データテーブル、前記机上検討データテーブル及び前記現地調査データテーブルの各々の評価項目の評価を集計し、前記机上検討部に選択された前記建造物の防災性能の総合評価を行い、当該総合評価の報告書を生成する報告書作成過程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明のプログラムは、建造物の防災性能の診断を行い、診断結果を出力する簡易防災診断の処理をコンピュータに実行させるプログラムであり、コンピュータを、前記建造物毎に、事前評価データテーブルに設定された評価項目の評価値と、第1フィルタルールに設定された前記評価項目の評価値とを比較し、
前記評価項目毎に前記第1フィルタルールに設定された複数段階のランクを付与し、複数の評価対象の前記建造物から、
所定のランクの数が前記第1フィルタルールに規定された設定数以上である前記建造物を、次段の設計図書による机上検討を行う建造物
として選択する事前評価手段、当該事前評価部が選択した前記建造物毎に、机上検討データテーブルに設定された評価項目の評価値と、第2フィルタルールに設定された前記評価項目の評価値とを比較し、
前記評価項目毎に前記第2フィルタルールに設定された複数段階のランクを付与し、前記事前評価部が選択した前記建造物から、
所定のランクの数が前記第2フィルタルールに規定された設定数以上である前記建造物を、次段の現地調査による簡易診断を行う建造物
として選択する机上検討手
段、当該机上検討部が選択した前記建造物に対して得られた、現地調査データテーブルに記載された評価項目のデータを、建造物を識別する建造物識別情報に対応させ、現地調査データベースに書き込んで記憶させる現地調査手
段、前記事前評価データテーブル、前記机上検討データテーブル及び前記現地調査データテーブルの各々の評価項目の評価を集計し、前記机上検討部に選択された前記建造物の防災性能の総合評価を行い、当該総合評価の報告書を生成する報告書作成手段、として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、「建設地の事前評価」、「設計図書の机上検討」において、最終的に「現地調査による簡易診断」において評価したい評価項目に対して、最終的に「現地調査による簡易診断」を行いたい建造物を多くの評価対象の中から、第1ファルタルール及び第2フィルタルールによって2段階で選択できるため、「現地調査による簡易診断」として、実際に診断が必要な建造物の診断に対し、限られた数の評価者を振り向けることが可能であるため、効率的にかつ効果的に建造物の診断が行える。
【0015】
すなわち、この発明によれば、「建設地の事前評価」、「設計図書の机上検討」において、最終的に「現地調査による簡易診断」において評価したい評価項目に対して、地震、津波、氾濫等において相関のある評価項目を設定しているため、最終的に地震、津波、氾濫等に対する防災性能を診断するため、現地でなければ得られない情報を収集する「現地調査による簡易診断」を行いたい建造物を、多くの評価対象の中から選択できるため、限られた評価者数において「現地調査による簡易診断」を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、この発明の一実施形態による簡易防災診断システムの構成例を示す概略ブロック図である。
図1において、本実施形態による簡易防災診断システムは、建造物の防災性能を評価するシステムであり、事前評価部1、机上検討部2、現地調査部3、報告書作成部4、対象建造物データベース5、事前評価データベース6、机上検討データベース7及び現地調査データベース8を備えている。
【0018】
対象建造物データベース5には、評価対象の建造物各々が、各建造物を識別する建造物識別情報が付与され、予め書き込まれて記憶されている。
事前評価データベース6には、第1段階のフィルタリングに用いるための事前評価データテーブルが予め書き込まれて記憶されている。
次に、
図2は、建設地の事前評価に用いる評価項目の一覧である事前評価データテーブルの構成例を示す図である。
この事前評価データテーブルは、大項目の評価項目が複数の中項目に分類され、中項目の評価項目が複数の小項目に分類されている。大項目は、「建設地と当該建物」の評価であり、地震や津波が発生した際に、被害の発生が比較的予想しやすく、実際に評価すべき評価項目の評価対象となる建造物を、多数の建造物から抽出するための、建造物を抽出する事前処理としてのフィルタ処理を行う際に、評価すべき評価項目と相関のある評価項目が設定されている。
【0019】
また、中項目は、「津波」、「氾濫」、「地点の揺れ」、「想定地震」の評価項目となっている。この中項目「津波」は、地震に伴い発生する津波の項目であり、さらに分類した小項目として「津波の高さ」の評価項目がある。また、中項目「氾濫」は、河川の氾濫を想定しており、さらに分類した小項目として、過去に氾濫に遭った履歴に対する評価である「過去の氾濫記録」、氾濫した場合に床上浸水あるいは備えられている設備機器への影響に対する評価である「床上・設備機器への影響」の評価項目がある。また、中項目「地点の揺れ」は、地震の影響を考慮したものであり、さらに分類した小項目として、確率論的に今後50年間に10%の超過確率で予想される震度階を算定し、微地形区分と予想される震度階に基づいて「液状化危険度」の評価項目がある。中項目「想定地震」は、地震の影響を考慮したものであり、さらに分類した小項目として「想定地震による予想震度階」の評価項目がある。
【0020】
ここで、中項目「津波」については、事前評価において、例えば、評価対象の建造物が存在する海岸線に到達する津波の想定される高さと、評価対象の建造物が建っている土地の標高との関係、あるいは想定される浸水深さと建造物1Fの床上高さとの関係から、評価対象の建造物の浸水可能性の評価を行う評価項目である。東北地方太平洋沖地震の被害状況による知見として、地震自体の被害に加えて、津波による浸水が被害を増大させる要因となるため、事前評価データテーブルの重要な評価項目である。
また、中項目「氾濫」については、評価対象の建造物の属する地域の自治体から公表されている、この評価対象の建造物が建っている所在地のハザードマップに基づいて、内水あるいは外水による氾濫の危険性を評価する評価項目である。この「氾濫」についても、津波の場合と同様に、浸水の可能性が想定される浸水深さと建造物1Fの床上高さとの関係から、評価対象の建造物の浸水可能性の評価を行う。評価者は、この事前評価データテーブルの各小項目の評価項目に対して、それぞれの設計図書の記載から、評価項目の評価値として、ランクA、B及びCのいずれかの評価を付与する。そして、評価者は、チェックシートの各評価項目に対して、地震に対して自身の下した評価に対応したランクの欄を、例えばマークシート方式などによりチェックする。
【0021】
同様に、中項目「地点の揺れ」については、確率論的に今後50年間に10%を超える確率で予想される震度階(例えば、最大の震度階)を算出し、微地形区分と予想される震度階による液状化の危険度を簡易的に評価する。
また、中項目「想定地震」については、建設地周辺で想定されているシナリオ地震(将来発生するであろう地震)や任意に設定する震源情報に対する予想地震階を、インターネットなどを介した情報源から得る。この予想地震階によりある程度大きな地震が発生し、建造物に予想される被害を評価することになる。
【0022】
図1に戻り、事前評価データベース6には、上述した事前評価データテーブルの小項目で設定されている評価項目の評価結果に対する第1フィルタルールが記載されている。上述した事前評価データテーブルの評価項目の評価としては、ランクA(安全または問題なし)、B(要注意)、C(危険性が認められる)の3段階評価となっている。ここで、評価のランクを3段階とした理由は、以下に示す要件に基づいている。すなわち、評価のランクを細かくすると、評価者による評価のバラツキが大きくなる。したがって、このバラツキを抑制する対策として、判定範囲を広く取ることで、評価者のバラツキを低くしている。
【0023】
この第1フィルタルールは、例えばランクCの数が予め設定された設定数以上の場合、また中項目の「津波」と「想定地震」との双方にランクCの評価項目が1個以上有る場合など、ランクCの数あるいは、中項目間における評価結果の組合せが設定されている。また、この第1フィルタルールを建造物の種類毎(例えば、原子力発電所、火力発電所、水力発電所、地震や河川の氾濫の際の避難所、学校、病院、県庁、市役所、スーパーマーケット、コンビニ、一般家庭など)に、被害を受けると業務の遂行や利用者に想定される不便さなどを考慮した小項目を評価項目として、評価項目の組合せをぞれぞれ設定するようにしても良い。例えば、中項目「想定地震」で小項目「地震動の強さ」において、予想地震階が震度6以上である場合、この評価項目「地震動の強さ」をランクCとし、この評価のみで、次段の設計図書の机上検討へ進ませることを第1フィルタルールの一つとしても良い。
この場合、建造物の種類を識別する建造物種類識別情報と、この建造物種類識別情報の示す種類に対する第1フィルタルールとが、組として予め事前評価データベース6に書き込まれて記憶されている。また、評価対象の建造物の各々には、建造物識別番号とともに、それぞれの種類に対応する建造物種類識別番号が付加されて記憶されている。
【0024】
本実施形態においては、対象建造物データベース5に記憶されている評価対象とされる建造物の中から、この「建設地の事前評価」を評価対象の建造物を、次の「設計図書の机上検討」を行う建造物として、上述した第1フィルタルールにより選択する。
すなわち、事前評価部1は、事前評価データテーブルの各評価項目が示されたチェックシートから、各評価項目に付与されたランクA、BまたはCの各評価項目を読み込む。例えば、チェックシートをマークシート様式とし、評価者は、各評価項目のランクに対応するマークに対し、評価したマークシートのランクA、BまたはCのマークをチェックする。そして、事前評価部1は、簡易防災診断システムに接続されたシート読み取り用のスキャナーを介して、各建造物の評価データとして、各評価項目のランクを読み込む。
【0025】
また、事前評価部1は、チェックシートから読み込んだ各建造物の評価データを、この建造物の建造物識別情報に対応させ、対象建造物データベース5に書き込んで記憶させる。このとき、事前評価部1は、対象建造物データベース5に対して、建造物識別情報を付加した事前調査評価テーブルを生成し、この事前調査評価テーブルに対しチェックシートから読み込んだ各評価データを、事前調査評価テーブルにおける評価項目毎に書き込んで記憶させる。
また、評価者あるいは他の作業者が、チェックシートにおける各評価項目の評価結果としてのランクA、BまたはCを確認し、キーボードなどの入力手段により、簡易防災診断システムに対して入力する構成としてもよい。この場合も、事前評価部1は、入力手段から入力される各建造物の評価データを、この建造物の建造物識別情報に対応させ、上述した対象建造物データベース5における事前調査評価テーブルに書き込んで記憶させる。
【0026】
また、事前評価部1は、評価者あるいは作業者が「建設地の事前評価」の処理を実行する設定を入力手段によって行うことにより、事前評価データベース6から第1フィルタルールを読み出す。
そして、事前評価部1は、対象建造物データベース5から、建造物識別情報を用いて順次各建造物の事前調査評価テーブルを読み出し、第1フィルタルールに従って各評価項目のランクを集計及び判定を行い、第1フィルタルールの規定に対応する建造物を、次段の「設計図書の机上検討」の処理を行う建造物として抽出する。
【0027】
また、建造物毎に第1フィルタルールが異なる場合、事前評価部1は、対象建造物データベース5から、各建造物識別番号に対応して記憶されている建造物種類識別番号を読み出し、この建造物種類識別番号に対応して記憶されている第1フィルタルールを読み出し、この第1フィルタルールによって建造物の事前調査評価テーブルにおける評価データの判定を行う。
そして、事前評価部1は、抽出した建造物の建造物識別情報を、順次、事前評価データベース6に書き込んで記憶させる。
【0028】
次に、
図3は、設計図書の机上検討に用いる評価項目の一覧である机上検討データテーブルの構成例を示す図である。
この机上検討データテーブルは、
図2の事前評価データテーブルと同様に、大項目→中項目→小項目に評価項目が分類されている。大項目は、「建設地と当該建物」、「躯体」、「内装材」、「電気設備」、「衛生設備」の評価であり、地震や津波、河川の氾濫が発生した際に、被害の発生が比較的予想しやすく、フィルタとして抜けがない項目として設定されている。
【0029】
また、「建設地と当該建物」に属する中項目は、建物自体の状態の評価である「当該建物」であり、この小項目として、耐震促進法の条件に対応する建築物か否かに対する評価である「耐震改修促進法に定める特定建築物」、以前どの程度の地震に遭い、どの程度の修復及び補強を行ったかを示す履歴に対する評価「地震被災の履歴」、大項目「建設地と当該建物」に属する中項目「想定地震」において求めた想定地震に対する予想震度階と建造物の建築年や構造種別から評価する建造物の被災度を評価する評価項目である「建物の予想被害」の評価項目がある。
【0030】
「躯体」に属する中項目は、建造物が建っている周辺の土地の状態に対する評価である「基礎・地盤」、大項目「建設地と当該建物」の中項目である「地点の揺れ」の予想震度階による建造物の躯体の耐震性能の程度を評価する評価項目である「耐震性」、屋外の設備や機械の有無及びその設備や機械の種類の被害の可能性に対する評価項目である「屋外設備・機械」の種別がある。
また、中項目「基礎・地盤」には、さらに分類した小項目として、評価対象の建造物が建っている土地周辺の地盤の沈下状態を評価する評価項目である「周辺地盤の沈下」、評価対象の建造物の建っている地盤が液状化の起こり易い状態を評価する評価項目である「液状化」の評価項目がある。
また、中項目「耐震性」には、さらに分類した小項目として、建物の強度や粘りに加え、その形状や経年状況を考慮した耐震指標を評価する評価項目である「Is(Seismic Index of Structure;構造耐震指標)値」、事前評価における「想定地震」で示された震度における被害の予想を評価する評価項目である「予想される地震被害」の評価項目がある。
また、中項目「屋外設備・機械」には、さらに分類した小項目として、屋外設備や機械の設置されている基礎の状態を評価する評価項目である「基礎の劣化」、屋外設備や機械の設置されている場所の地盤の状態を評価する評価項目である「基礎の液状化対策」の評価項目がある。
【0031】
「内装材」に属する中項目は、建造物の壁の評価である「壁」、建造物の天井の評価である「天井」の種別がある。
中項目「壁」は、壁の高さ、形式、工法等における壁の耐震性を評価する評価項目である「壁の構造」、壁を形成する材質の耐震性及び耐火性を評価する評価項目である「壁の材質」の評価項目がある。
中項目「天井」は、天井の面積、工法、補強状況等における天井の耐震性を評価する評価項目である「天井の構造」、天井を形成する材質の耐震性及び耐火性を評価する評価項目である「壁の材質」の評価項目がある。
【0032】
「電気設備」の中項目は、「受変電設備(キュービクル)」、「非常用発電設備・各種タンク類」の種別がある。
中項目「受変電設備(キュービクル)」は、「地震の揺れ」あるいは「想定地震」の評価結果に対応し、受変電設備の設置状態を評価する評価項目である「固定状態」、「地震の揺れ」あるいは「想定地震」の評価結果に対応して液状化、及び津波や河川の氾濫による浸水の可能性に対応して、受変電設備の設置されている高さ(あるいは設置階)における被害を受ける程度を評価する評価項目である「設置場所」の評価項目がある。
中項目「非常用発電設備・各種タンク類」は、「地点の揺れ」あるいは「想定地震」の評価結果に対応した評価項目である、非常用発電設備や各種タンク類の設置状態を評価する「固定状態」と、「地点の揺れ」あるいは「想定地震」の評価結果に対応した評価項目である、液状化及び津波や河川の氾濫による浸水の可能性に対応して、非常用発電設備や各種タンク類の設置されている高さ(あるいは設置階)における被害を受ける程度を評価する「設置場所」等の評価項目がある。
【0033】
「衛生設備」に属する中項目は、飲み水や洗浄などに用いる水を蓄える受水槽を評価する項目「受水槽」であり、「地点の揺れ」あるいは「想定地震」の評価結果に対応した評価項目である、受水槽の設置状態を評価する評価項目である「固定状態」と、「地点の揺れ」あるいは「想定地震」の評価結果に対応した評価項目である、液状化、及び津波や河川の氾濫による浸水の可能性に対応して、受水槽の設置されている高さ(あるいは設置階)における被害を受ける程度を評価する評価項目である「設置場所」と、受水槽の構造の耐震性を評価する評価項目である「耐震仕様」等の評価項目がある。
【0034】
図1に戻り、机上検討データベース7には、上述した机上検討データテーブルの小項目で設定されている評価項目の評価結果に対する第2フィルタルールが記載されている。上述した机上検討データーブルの評価項目の評価としては、事前評価データテーブルと同様に、ランクA(安全または問題なし)、B(要注意)、C(危険性が認められる)の3段階評価となっている。評価者は、この机上検討データテーブルの各小項目の評価項目に対して、それぞれの設計図書の記載から、ランクA、B及びCのいずれかの評価を付与し、チェックシートの各評価項目に対して対応するランクをチェックする。
【0035】
この第2フィルタルールは、例えばランクCの数が予め設定された設定数以上の場合、また大項目の「建設地と当該建物」と「躯体」と「内装材」と「電気設備」と「衛生設備」とにおける予め設定された大項目の組合せの各々の大項目にランクCの評価項目が1個以上有る場合など、ランクCの数あるいは、大項目間における評価結果の組合せが設定されている。また、この第2フィルタルールを建造物の種類毎(例えば、原子力発電所、火力発電所、水力発電所、地震や河川の氾濫の際の避難所、学校、病院、県庁、市役所、スーパーマーケット、コンビニ、一般家庭など)に、被害を受けると業務の遂行や利用者に想定される不便さなどを考慮した小項目を評価項目として、評価項目の組合せをぞれぞれ設定するようにしても良い。
この場合、建造物の種類を識別する建造物種類識別情報と、この建造物種類識別情報の示す種類に対する第2フィルタルールとが、組として予め机上検討データベース7に書き込まれて記憶されている。
【0036】
本実施形態においては、「設計図書の机上検討」として、事前評価データベース6に記憶されている、「建設地の事前評価」において選択された建造物のなかから、次の「現地調査による簡易診断」を行う建造物として、上述した第2フィルタルールにより選択する。
すなわち、机上検討部2は、机上検討データテーブルの各評価項目が示されたチェックシートから、各評価項目に付与されたランクA、BまたはCの各評価項目を読み込む。例えば、チェックシートをマークシート様式とし、評価者が設計図書の記載事項から評価したマークシートのランクA、BまたはCのマークを評価項目毎に、簡易防災診断システムに接続されたシート読み取り用のスキャナーを介して、各建造物の評価データとして読み込む。ここで、設計図書は、一般的には、建造物としての建物や工作物を建築・製作・施行するために必要な図面その他の書類の総称である。また、建築基準法における設計図書は、建築物、その敷地または工作物に関する工事用の図面と仕様書とを示す。
【0037】
評価者は、簡易防災診断システムに対して、「建設地の事前評価」によって選択された建造物の一覧表の出力処理の命令を、キーボードあるいはマウスなどの入力手段により入力する。
机上検討部2は、この出力処理に対応し、事前評価データベース6に記憶されている建造物識別番号に対応する建造物名の一覧表を、プリンタなどの出力装置から出力する。
評価者は、一覧表にある建造物毎に「設計図書の机上検討」の処理を行い、各評価項目の評価結果を、上記チェックシートの各評価項目における対応するランクをチェックする。
【0038】
また、机上検討部2は、記憶されている建造物識別情報毎に、事前評価データベース6に対して机上検討評価テーブルを生成する。机上検討部2は、この生成した机上検討評価テーブルに対し、チェックシートから読み込んだ、各建造物の設計図書の記載により各建造物を評価した評価データを、対応する机上検討評価テーブルに書き込んで記憶させる。
また、評価者あるいは他の作業者が、チェックシートにおける各建造物の設計図書の記載による評価項目の評価結果として、各評価項目のランクをランクA、BまたはCのいずれかとして確認し、キーボードなどの入力手段により、簡易防災診断システムに対して入力する構成としてもよい。この場合も、机上検討部2は、入力手段から入力される各建造物の評価データを、この建造物の建造物識別情報に対応させ、事前評価データベース6の机上検討評価テーブルに書き込んで記憶させる。
【0039】
また、机上検討部2は、評価者あるいは作業者が「設計図書の机上検討」の処理を実行する設定を入力手段によって行うことにより、机上検討データベース7から第2フィルタルールを読み出す。
そして、机上検討部2は、事前評価データベース6から、建造物識別情報を用いて順次各建造物の机上検討評価テーブルを読み出し、第2フィルタルールに従って各評価項目のランクを集計及び判定を行い、第2フィルタルールの規定に対応する建造物を、次段の「現地調査による簡易診断」の処理を行う建造物として抽出する。
また、建造物毎に第2フィルタルールが異なる場合、机上検討部2は、事前評価データベース6から、各建造物識別番号に対応して記憶されている建造物種類識別番号を読み出し、この建造物種類識別番号に対応して記憶されている第2フィルタルールを読み出し、この第2フィルタルールによって建造物の机上検討評価テーブルにおける評価データの判定を行う。
そして、事前評価部1は、抽出した建造物の建造物識別情報を、順次、机上検討データベース7に書き込んで記憶させる。
【0040】
次に、
図4は、現地調査による簡易診断に用いる評価項目の一覧である現地調査データテーブルの構成例を示す図である。
この現地調査データテーブルは、
図2の事前評価データテーブルと同様に、大項目→中項目→小項目に評価項目が分類されている。大項目は、「内装材」、「電気設備」、「衛生設備」、「防火・避難安全性」、「BCPへの取り組み」の評価であり、地震や津波、河川の氾濫が発生した際に、被害の発生を詳細に予想できる評価項目として設定されている。
【0041】
ここで、「内装材」に属する中項目は、現地調査における簡易診断により壁の工法と補強状況とを確認する評価項目である「壁」である。この中項目「壁」には、「建設地の事前評価」及び「設計図書の机上検討」による対象選択評価に対して、より詳細に壁の耐震性、津波や氾濫における建造物の壁の受ける予想被害を評価する評価項目として小項目が設定されている。
また、「内装材」に属する他の中項目は、現地調査における簡易診断により天井の工法と補強状況とを確認する評価項目である「天井」である。この中項目「天井」には、対象選択評価に対してより詳細に天井の耐震性、津波や氾濫における建造物の天井の受ける予想被害を評価する評価項目として小項目が設定されている。
【0042】
「電気設備」の中項目は、現地調査における簡易診断により、建造物の電気設備における受変電設備(キュービクル)の設置状態を確認する評価項目である「受変電設備(キュービクル)」である。この中項目「受変電設備(キュービクル)」には、対象選択評価に対してより詳細に受変電設備の耐震性、津波や氾濫における建造物の受変電設備の受ける予想被害を評価する評価項目として小項目が設定されている。
「電気設備」の他の中項目は、現地調査における簡易診断により、建造物の非常用発電機や各種タンクの設置状態を確認する評価項目である「非常用発電機・各種タンク類」である。この中項目「非常用発電機・各種タンク類」には、対象選択評価に対してより詳細に非常用発電機・各種タンク類の耐震性、津波や氾濫における建造物の非常用発電機・各種タンク類の受ける予想被害を評価する評価項目として小項目が設定されている。
【0043】
「衛生設備」の中項目は、現地調査における簡易診断により、建造物の衛生設備における受水槽やその配管の設置状態を確認する評価項目である「受水槽」である。この中項目「受水槽」には、対象選択評価に対してより詳細に、建造物に設けられた受水槽及びその配管の耐震性、津波や氾濫における建造物に設けられた受水槽及びその配管の受ける予想被害を評価する評価項目として小項目が設定されている。
【0044】
「防火・避難安全性」の中項目は、現地調査における簡易診断により、津波、氾濫及び火災からの避難が安全に行える状態と、津波や建造物の構造や建造物を形成する材質と、防火設備の設置状態の評価となどを含む「津波避難」である。この中項目「津波避難」には、対象選択評価に対してより詳細に、津波や氾濫に対する建造物の耐性や、防火戸及び排煙設備など、津波、氾濫及び火災に対して対応するための安全性やそのための設備が設けられている状態を評価する評価項目として小項目が設定されている。
【0045】
「BCPへの取り組み」の中項目は、現地調査における簡易診断により、ライフラインの被害を予想する評価項目とした「ライフライン」などである。この中項目「ライフライン」には、対象選択評価に対してより詳細に、地震、津波や氾濫に対する建造物に設けられている給水(例えば、受水槽に何日分の水が確保されているかなど)、ガス(例えば、被害から回復してガスの供給が再開するまでの期間など)、電気ルート(例えば、被害から回復して電気の供給が再開するまでの期間、その期間の間で使用する非常用電源の有無など)の供給するための設備の状態を評価する評価項目として小項目が設定されている。
【0046】
そして、現地調査部3は、評価者により現地調査を行う評価対象の建造物の一覧表示処理及び選択された建造物の一覧表の出力処理により、「設計図書の机上検討」により選択された建造物を、机上検討データベース7に記憶されている建造物識別情報により読み出し、表示部(不図示)に建造物の一覧を表示し、かつプリンタなどの出力装置から、この一覧を表として印刷して出力する。
【0047】
次に、評価者は、出力された建造物の一覧表に記載された建造物の現地調査を行う。すなわち、評価者は、一覧表の建造物に対して、この現地調査データテーブルの各小項目の評価項目に対して、それぞれの設計図書の記載から、ランクA、B及びCのいずれかの評価を付与し、チェックシートの各評価項目に対して対応するランクをチェックする。
そして、現地調査部3は、現地調査データテーブルの各評価項目が示されたチェックシートから、各評価項目に付与されたランクA、BまたはCの各評価項目を読み込む。例えば、評価者が読み取り処理を行う処理を簡易防災診断システムに実行させる。これにより、現地調査部3は、チェックシートをマークシート様式とし、評価者が現地調査の簡易診断において評価したマークシートのランクA、BまたはCのマークを評価項目毎に、簡易防災診断システムに接続されたシート読み取り用のスキャナーを介して、各建造物の評価データとして読み込む。そして、現地調査部3は、現地調査データベース8に対して、建造物識別情報を付加した現地調査評価テーブルを生成し、この現地調査評価テーブルに読み込んだ各評価データを評価項目毎に書き込んで記憶させる。
【0048】
次に、
図5は、「建設地の事前評価」、「設計図書の机上検討」及び「現地調査の簡易診断」における各評価データを、現地調査部3が大項目毎に集計して出力する防災診断調査報告書の一例を示す図である。
図5において、各建造物の大項目毎に、「設計図書の机上検討」及び「現地調査の簡易診断」における各評価項目のランクが集計されている。すなわち、大項目単位に、ランクAとして評価された評価項目の数、ランクBとして評価された評価項目の数、ランクCとして評価された評価項目の数が積算されて対応する大項目の評価結果の欄100に記述されている。この評価結果の欄100における対象外とは、評価項目に対応する評価が行えない場合に付与されるランク以外の評価である。
また、この建造物における全ての評価項目の総合判定として、ランクA、B及びCの評価数のそれぞれが評価項目の全体数に対してどの程度の比率であるかを見やすくする円グラフがグラフ欄101に記述されている。
【0049】
図1に戻り、評価者あるいは他の作業者により、建造物の防災診断調査報告書を出力する処理要求が簡易防災診断システムに入力された際、報告書作成部4は、対応する建造物の建造物識別情報により、対象建造物データベース5、事前評価データベース6及び机上検討データベース7の各々から、それぞれ事前調査評価テーブル、机上検討評価テーブル、現地調査評価テーブルを読み出し、大項目毎に、この大項目に属する評価項目のランクの種別(ランクA、B、C)を読み出し、ランクの種類毎に評価数を積算する。
また、報告書作成部4は、全大項目に属する評価項目数における各ランク種別における評価数の占める比率を算出し、
図5のグラフ欄101の円グラフを生成する。
また、評価者あるいは他の作業者により、建造物の防災診断調査報告書を出力する処理要求が簡易防災診断システムに入力された際、報告書作成部4は、表示部(不図示)に
図5に示す防災診断調査報告書の画像を表示するとともに、この防災診断調査報告書をプリンタにより出力する。
【0050】
次に、
図6は、「建設地の事前評価」、「設計図書の机上検討」、「現地調査による簡易診断」の各ステップにおいて、「建設地の事前評価」の各中項目の評価項目と、「設計図書の机上検討」及び「現地調査による簡易診断」の各中項目の評価項目との関連を示す図である。
「建設地の事前評価」における「津波」の評価項目は、「設計図書の机上検討」における大項目「電気設備」の中項目である「受変電設備(キュービクル)」及び「非常用発電機・各種タンク」の評価項目を評価する際に必要となる基本的な項目、すなわち相関を有する項目が設定される。例えば、津波がどの程度の高さで到達するかにより、受変電設備や非常用発電機及びタンクが津波により水没するかどうかを判定することになる。したがって、この津波の高さが建造物の建っている建設地に到達しない限り、後段の「設計図書の机上検討」自体を行う必要性もないため、この津波の高さの評価は、十分に後段の評価に対して相関を有することになる。
また、
図6において、「設計図書の机上検討」における大項目「電気設備」や「衛生設備」の各々の評価項目は、「現地調査による簡易診断」における大項目「電気設備」、「衛生設備」及び「防火・避難安全性」におけるそれぞれの評価項目の評価内容と相関を有する項目が設定されている。
【0051】
上述したように、本実施形態によれば、「建設地の事前評価」、「設計図書の机上検討」において、最終的に「現地調査による簡易診断」において評価したい評価項目に対して、地震、津波、氾濫等において相関のある評価項目を設定しているため、最終的に「現地調査による簡易診断」を行いたい建造物を、多くの評価対象(複数の評価対象)の中から選択できるため、限られた評価者数において「現地調査による簡易診断」を、実際に診断が必要な建造物の診断に振り向けられるため、効率的にかつ効果的に建造物の診断が行える。
また、本実施形態によれば、各大項目のランク種別毎のランクの評価数が積算されるため、どの大項目がウィークポイントを有しているかを容易に確認することができ、各建造物の対策を容易に検討することができる。
【0052】
次に、
図7を用いて、本実施形態の簡易防災診断システムによる防災診断調査報告書の作成処理を説明する。
図7は、本実施形態の簡易防災診断システムにおける、建造物の防災診断調査報告書を作成する動作例を説明するフローチャートである。
ステップS1:
評価者あるいは他の作業者が、依頼された評価対象の建造物の建造物名及び所在地などの固有情報を、入力手段により簡易防災診断システムに対して入力する。
これにより、事前評価部1は、各建造物に対して建造物識別情報を付与し、この建造物識別情報とともに、建造物名及び所在地などの固有のデータを、対象建造物データベース5に書き込む。
【0053】
ステップS2:
評価者は、簡易防災診断システムに対し、「設計図書の机上検討」を行う建造物を、評価対象の建造物の中から選択する「建設地の事前評価」の処理を開始する要求を入力する。
これにより、事前評価部1は、対象建造物データベース5から評価対象の建造物を読み出し、建造物名及び所在地などのデータを表示部に表示する。
【0054】
ステップS3:
評価者は、建造物名及び所在地から、インターネットや公的機関の公開している地震、津波、液状化などのハザードマップにより、各建造物の建設されている建設地の評価を、事前評価データテーブルの評価項目に従って行い、マークシートの各評価項目のランクのマークをチェックする。
そして、事前評価部1は、このマークシートから各評価項目のランクをスキャナーから読み込み、事前調査評価テーブルに記載し、対応する建造物を示す建造物識別情報を付与して対象建造物データベース5に書き込んで記憶させる。
【0055】
ステップS4:
次に、事前評価部1は、第1フィルタルールを事前評価データベース6から読み出す。
そして、事前評価部1は、建造物の事前調査評価テーブルを対象建造物データベース5から読み出し、この読み出した事前調査評価テーブルの評価データを、第1フィルタルールにより評価する。
評価結果において、事前評価部1は、建造物の事前調査評価テーブルの各評価項目における評価データと、第1フィルタルールに設定されている各評価項目における評価データとが対応する場合、処理をステップS5へ進め、一方、対応しない場合、処理をステップS6へ進める。
【0056】
ステップS5:
事前評価部1は、第1フィルタルールに設定されている各評価項目における評価データとが対応すると判定された建造物を示す建造物識別情報を、事前評価データベース6に対して書き込んで記憶させる。
そして、事前評価部1は、処理をステップS6へ進める。
【0057】
ステップS6:
事前評価部1は、対象建造物データベース5において、建造物識別情報に対応する事前調査評価テーブルの有無により、建設地の事前評価の処理が終了していない建造物の有無を検出する。
すなわち、事前評価部1は、事前調査評価テーブルと組となっていない建造物識別情報を検索し、事前調査評価テーブルと組となっていない建造物識別情報が存在する場合、建設地の事前評価を行っていない建造物があるとし、処理をステップS2へ進め、ステップS2において検出された建造物の建造物名及び所在地などのデータの読み出しを行う。
一方、事前評価部1は、事前調査評価テーブルと組となっていない建造物識別情報を検索し、事前調査評価テーブルと組となっていない建造物識別情報が存在しない場合、全ての建造物に対する建設地の事前評価が終了したとして、処理をステップS7へ進める。
【0058】
ステップS7:
評価者は、簡易防災診断システムに対し、「現地調査による簡易診断」を行う建造物を、事前評価データベース6に記憶されている「建設地の事前評価」により選択された建造物の中から選択する「設計図書の机上検討」の処理を開始する要求を入力する。
これにより、机上検討部2は、事前評価データベース6から、建造物を選択して、建造物名及び所在地などのデータを表示部に表示する。
【0059】
ステップS8:
評価者は、建造物名及び所在地から設計図書を入手し、この設計図書の記載により、机上検討データテーブルの評価項目に従った各建造物の机上検討を行い、この検討結果をマークシートの各評価項目のランクのマークをチェックする。
そして、机上検討部2は、このマークシートから各評価項目のランクをスキャナーから読み込み、机上検討評価テーブルに記載し、対応する建造物を示す建造物識別情報を付与して事前評価データベース6に書き込んで記憶させる。
【0060】
ステップS9:
次に、机上検討部2は、第2フィルタルールを机上検討データベース7から読み出す。
そして、机上検討部2は、建造物の事前調査評価テーブルを対象建造物データベース5から読み出し、この読み出した机上検討評価テーブルの評価データを、第2フィルタルールにより評価する。
評価結果において、机上検討部2は、建造物の机上検討評価テーブルの各評価項目における評価データと、第2フィルタルールに設定されている各評価項目における評価データとが対応する場合、処理をステップS10へ進め、一方、対応しない場合、処理をステップS11へ進める。
【0061】
ステップS10:
机上検討部2は、第2フィルタルールに設定されている各評価項目における評価データとが対応すると判定された建造物を示す建造物識別情報を、机上検討データベース7に対して書き込んで記憶させる。
そして、机上検討部2は、処理をステップS11へ進める。
【0062】
ステップS11:
机上検討部2は、事前評価データベース6において、建造物識別情報に対応する机上検討評価テーブルの有無により、設計図書の机上検討における評価の処理が終了していない建造物の有無を検出する。
すなわち、机上検討部2は、机上検討評価テーブルと組となっていない建造物識別情報を検索し、机上検討評価テーブルと組となっていない建造物識別情報が存在する場合、建設地の事前評価を行っていない建造物があるとし、処理をステップS7へ進め、ステップS7において検出された建造物の建造物名及び所在地などのデータの読み出しを行う。
一方、机上検討部2は、机上検討評価テーブルと組となっていない建造物識別情報を検索し、机上検討評価テーブルと組となっていない建造物識別情報が存在しない場合、全ての建造物に対する設計図書の机上検討の評価が終了したとして、処理をステップS12へ進める。
【0063】
ステップS12:
評価者は、簡易防災診断システムに対し、「現地調査による簡易診断」を行う建造物を、表示部に表示する処理の要求を入力する。
これにより、現地調査部3は、机上検討データベース7から、建造物を選択して、建造物名及び所在地などのデータを表示部に表示する。
評価者は、建造物名及び所在地に従い、対応する建造物の聞き取りあるいは実際に各種データを取得する現地調査による簡易診断の処理を行う。
そして、評価者は、現地調査データテーブルの評価項目に従った各建造物の現地調査による簡易診断を行い、この診断結果をマークシートの各評価項目のランクのマークをチェックする。
そして、現地調査部3は、このマークシートから各評価項目のランクをスキャナーによる読み込み、現地調査評価テーブルに記載し、対応する建造物を示す建造物識別情報を付与して机上検討データベース7に書き込んで記憶させる。
【0064】
ステップS13:
評価者は、簡易防災診断システムに対し、建造物の防災診断調査報告書の作成処理を開始する要求を入力する。
これにより、報告書作成部4は、対象建造物データベース5、事前評価データベース6及び机上検討データベース7の各々から、指定された建造物の事前調査評価テーブル、机上検討評価テーブル及び現地調査データテーブルを読み込み、それぞれの評価項目のランク種別ごとの評価を大項目毎に積算し、
図5の防災診断調査報告書の欄100の集計データを生成する。
また、報告書作成部4は、ランク種別毎に、全大項目における評価項目の各ランクを積算し、全評価項目数における各ランク種別の割合を算出し、
図5の防災診断調査報告書のグラフ欄101の円グラフを生成する。
そして、報告書作成部4は、作成した防災診断調査報告書のデータを、現地調査データベース8に対して、建造物識別情報とともに書き込んで記憶させる。
【0065】
また、
図1における簡易防災診断システムの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより防災診断報告書の生成を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0066】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0067】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。