特許第5850282号(P5850282)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5850282電力伝送の装置及び方法、並びにそれに用いる共振装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5850282
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】電力伝送の装置及び方法、並びにそれに用いる共振装置
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/02 20060101AFI20160114BHJP
   H02J 50/00 20160101ALI20160114BHJP
   H01P 7/10 20060101ALI20160114BHJP
【FI】
   H01P5/02 601Z
   H02J17/00 A
   H01P7/10
【請求項の数】10
【全頁数】49
(21)【出願番号】特願2014-507764(P2014-507764)
(86)(22)【出願日】2013年3月21日
(86)【国際出願番号】JP2013057962
(87)【国際公開番号】WO2013146494
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2014年7月18日
(31)【優先権主張番号】特願2012-82365(P2012-82365)
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-199469(P2012-199469)
(32)【優先日】2012年9月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130029
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 道雄
(72)【発明者】
【氏名】藤山 義祥
(72)【発明者】
【氏名】原田 信洋
【審査官】 岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−3773(JP,A)
【文献】 特開平05−215876(JP,A)
【文献】 小林禧夫(外2名),「マイクロ波誘電体フィルタ」,(社)電子情報通信学会,2007年 3月30日,pp.259-267
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 5/02
H01P 7/10
H02J 17/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の共振装置から第2の共振装置へと無線で電力を伝送する電力伝送装置であって、
前記第1の共振装置は、第1の導波管と、該第1の導波管と同軸状に配置された第1の誘電体共振器と、該第1の誘電体共振器を励振するための第1の励振構造とを備えており、
前記第1の導波管は、一方端が開放端とされ且つ他方端が短絡端とされており、
前記第1の誘電体共振器は、互いに反対側に位置する2つの第1端面を有し、前記第1の導波管の開放端の近傍にて前記第1の導波管から絶縁されて前記第1の導波管内に配置されており、前記2つの第1端面間の距離である厚みが前記第1の誘電体共振器の径方向位置によらず一定であり、
前記第2の共振装置は、第2の導波管と、該第2の導波管と同軸状に配置された第2の誘電体共振器と、該第2の誘電体共振器を励振するための第2の励振構造とを備えており、
前記第2の導波管は、一方端が開放端とされ且つ他方端が短絡端とされており、
前記第2の誘電体共振器は、互いに反対側に位置する2つの第2端面を有し、前記第2の導波管の開放端の近傍にて前記第2の導波管から絶縁されて前記第2の導波管内に配置されており、前記2つの第2端面間の距離である厚みが前記第2の誘電体共振器の径方向位置によらず一定であり、
前記第1の共振装置と前記第2の共振装置とは、前記第1の導波管の開放端と前記第2の導波管の開放端とが互いに対向するように配置されており、前記第1の励振構造に入力された電力が前記第2の励振構造から出力されることを特徴とする電力伝送装置。
【請求項2】
前記2つの第1端面または前記2つの第2端面は、前記第1の導波管の導波方向または前記第2の導波管の導波方向に対して実質的に直交する互いに平行な平面からなることを特徴とする、請求項1に記載の電力伝送装置。
【請求項3】
前記2つの第1端面または前記2つの第2端面は、外周部より中央部が前記第2の誘電体共振器または前記第1の誘電体共振器からより遠くに位置することを特徴とする、請求項1に記載の電力伝送装置。
【請求項4】
前記2つの第1端面の少なくとも一方または前記2つの第2端面の少なくとも一方は、少なくとも外周部において、前記第1の導波管または前記第2の導波管と同軸状の対称軸を持つ円錐面、角錐面、球面、放物面または楕円面の少なくとも一部からなることを特徴とする、請求項3に記載の電力伝送装置。
【請求項5】
前記第1の誘電体共振器または前記第2の誘電体共振器の形状は、前記第1端面または前記第2端面を両端面とする多角柱、多角筒、円柱または円筒であることを特徴とする、請求項2に記載の電力伝送装置。
【請求項6】
前記第1の導波管または前記第2の導波管の断面形状は、多角筒または円筒であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電力伝送装置。
【請求項7】
前記第1の導波管または前記第2の導波管は、前記開放端から前記短絡端へと次第に断面積が小さくなるテーパー形状をなしていることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電力伝送装置。
【請求項8】
前記第1の励振構造または前記第2の励振構造は、前記第1の導波管の短絡端または前記第2の導波管の短絡端において前記第1の導波管または前記第2の導波管から絶縁されて配置され、前記第1の導波管の内部または前記第2の導波管の内部にて導波方向に延在する導体を含んでなることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電力伝送装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電力伝送装置を用いて前記第1の共振装置から前記第2の共振装置へと無線で電力を伝送する電力伝送方法であって、
前記第1の共振装置と前記第2の共振装置とを前記第1の導波管の開放端と前記第2の導波管の開放端とが互いに対向するように配置し、前記第1の励振構造に電力を入力し、前記第2の励振構造から電力を出力することを特徴とする電力伝送方法。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電力伝送装置を構成するのに使用され或いは請求項9に記載の電力伝送方法を実施するのに使用される共振装置であって、
導波管と、該導波管と同軸状に配置された誘電体共振器と、該誘電体共振器を励振するための励振構造とを備えており、
前記導波管は、一方端が開放端とされ且つ他方端が短絡端とされており、
前記誘電体共振器は、互いに反対側に位置する2つの端面を有し、前記導波管の開放端の近傍にて前記導波管から絶縁されて前記導波管内に配置されており、前記2つの端面間の距離である厚みが前記誘電体共振器の径方向位置によらず一定である、
ことを特徴とする共振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波などの高周波数電磁波により無線で電力を伝送する電力伝送の装置及び方法、並びにそれに用いる共振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線による電力電送の技術に関しては、伝送媒体である電磁波の周波数帯に応じて、種々の方式のものが提案されており、伝送方式更には使用される電送装置によって伝送効率や伝送距離が異なる。
【0003】
電磁波の周波数帯が高々数MHz程度の低いものである場合には、主として電磁誘導方式の無線電力伝送が用いられている。この方式では、1対のコイルを近接配置し、一方のコイルで発生せしめられた磁力線を他方のコイルに通過させる。伝送効率を高めるためには、他方のコイルにできるだけ多くの磁力線を通過させるように、1対のコイル同士をできるだけ近づけ、コイル同士の軸ずれをできるだけ少なくすることが必要である。この方式は、伝送効率が比較的高く装置の小型化が可能であることから、既に実用化されている。
【0004】
電磁波の周波数帯が100KHz〜数百MHz程度である場合には、電磁界共振方式が適している。非特許文献1には、両端がオープンであるスパイラルアンテナ共振器を2つ対向配置し、主に磁界結合により電力伝送を行っている。ここでは、共振周波数がそれぞれ122KHz、13.56MHz及び1.49GHzの3種類のスパイラルアンテナを用いて実験を行っており、各共振周波数での電力伝送において伝送距離と伝送効率との関係の比較がなされている。共振周波数122KHzの実験では、コイルで構成された共振器のQ値が低いためか、伝送距離が100mmであっても伝送効率が90%以下であり、伝送距離が1000mmでは伝送効率が50%まで低下し、さらに伝送距離を大きくすると伝送効率は急速に低下している。共振周波数が13.56MHzの実験では、伝送距離が220mm程度まで90%以上の伝送効率が保たれ、さらに伝送距離を大きくすると伝送効率は急速に低下し、伝送効率が50%になる伝送距離は300mm程度となっている。また、共振周波数が1.49GHzの実験では、コイルの共振器のQ値が低いためか又は放射に起因して伝送効率が90%以下であり、伝送距離が3mm以上になると伝送効率は急速に低下し、伝送効率が50%になる伝送距離は4mm程度となっている。これらの実験より、コイルを用いた共振方式の電力伝送には、十数MHz付近の周波数帯が最も伝送効率が大きいことが分かる。尚、この方式は、2つのコイル共振器の軸方向のずれには比較的寛容であるので、コイル共振器の配置に電磁誘導方式ほど精度を必要としない。
【0005】
以上の2つの方式は、近接場(近傍界)と呼ばれる、発生した電磁界がまだ電波である電磁波として形成される前の距離に対応する領域に、電力を伝送するものである。尚、近接場より遠くの領域に対応する遠方場(遠方界)は、電磁波が電波として放射されている領域である。近接場は、電磁波の波長をλとして、距離がλ/(2π)=λ×0.16程度以下の領域に該当する。非特許文献1に記載される実験において伝送効率が50%付近になる伝送距離は、共振周波数が122KHzではλ×1/2460、共振周波数が13.56MHzではλ×0.014、共振周波数が1.49GHzではλ×0.02となっており、いずれも近接場の範囲内において電力が伝送されている。
【0006】
非特許文献2に記載されるように、2007年に発表されたMIT(Massachusetts Institute of Technology)による無線電力伝送実験では、2mの伝送距離で60Wの電球を点灯させる電力が伝送されたが、その際の共振周波数は9.90MHzであるから、伝送距離はλ×0.066に過ぎず、やはり近接場内での電力伝送である。
【0007】
また、特許文献1には、球体誘電体共振器を用いてエネルギーを転送する方法が提案されている。この方法では、2つの球状の誘電体共振器を、近接場の領域にて、一方が他方の放射火面内の条件で結合するように構成及び配置することにより、エネルギー伝送が行われる。
【0008】
他方、遠方場の領域に電波を利用して電力を伝送する方式としては、数百MHz以上のマイクロ波及びレクテナアンテナを用いたものが開発されている。これは、SPS(Space Solar Power Satellite)に代表されるように、宇宙で太陽光発電された大電力をマイクロ波に変換された電波を、アンテナアレーを用いて、ビーム状に形成し、遥か3,600Km離れた位置から地球に伝送し、レクテナアンテナにて受けるものである。この方式を実施するためのシステムは、複数のアンテナが必要であり、且つビームを形成するためにそれぞれのアンテナに供給する電力の位相を制御する必要があり、大掛かりで高価である。この技術を停車中の電気自動車のバッテリーに充電するシステムに応用する研究が行われているが、SPSと同様に高価となる。
【0009】
また、特許文献2には、誘電体共振器の軸が遮断導波管における電磁エネルギーの伝搬方向と一致するように、遮断導波管内に誘電体共振器を配置した共振器装置が開示されている。
【0010】
一方、2つの共振器の間での電力伝送の効率を向上させるためには、一方の共振器から発せられる電磁エネルギーを他方の共振器にできるだけ少ない漏れで受容させることが好ましい。しかしながら、一方の共振器から発せられる電磁界は、特に外周部において発散傾向にあり、その分だけ他方の共振器を貫く電磁界は少なくなる。従って、特に伝送距離を長くすべく2つの共振器間の距離を増加させようとすると、以上のような電磁界発散の影響が大きくなり、これが電力伝送効率向上の障害となりがちである。特許文献3及び特許文献4に示されるように、電磁波の発散を抑制するためには、一般に誘電体からなる電波レンズまたは誘電体レンズが配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2009−501510号公報
【特許文献2】特開平1−208001号公報
【特許文献3】特開昭58−219802号公報
【特許文献4】特開2000−31727号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】“kHz〜MHz〜GHzにおける磁界共振結合によるワイヤレス電力伝送用アンテナの提案”,居村岳広他,東京大学,電子情報通信学会総合体大会,2010,BS−9−5
【非特許文献2】“Wireless power transfer via strongly coupled magnetic resonances”,Science,vol.317,no.5834,pp.83−86,2007:A.Kurs.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ISM帯(Industry−Science−Medical Band)である2.45GHzのマイクロ波では、(波長:122.5mm)×0.16=19.5mmであるから、近接場におけるマイクロ波の伝送距離は、最大19mm程度であり、非特許文献1に記載の手法ではその1/10程度の2mm程度の伝送距離しか得られなかった。さらに周波数が高いISM帯である5.8GHzのマイクロ波では、(波長:51.7mm)×0.16=8.2mmであるから、近接場におけるマイクロ波の伝送距離は、最大でも8mm程度であり、非特許文献1に記載の手法ではその1/10程度の1mm程度の伝送距離しか得られなかった。
【0014】
ところで、第1の共振器と第2の共振器との間の最大伝送効率は、第1の共振器のQをQ1とし、第2の共振器のQをQ2とし、第1の共振器と第2の共振器との結合係数をKとした場合、
[2+K2×Q1×Q2−2×(1+K2×Q1×Q2)1/2]/[K2×Q1×Q2]
で表されるといわれている。
【0015】
この式は、Q1とQ2とが等しくQであるとすると、K×Q(又はKQ)を大きくすることにより伝送効率が高められることを示している。KQ=2.83のとき伝送効率は50%、KQ=8.95のとき伝送効率は80%、KQ=19.0のとき伝送効率は90%、KQ=39.35のとき伝送効率は95%である。
【0016】
結合係数Kは一般に、2つの共振器の間の距離が大きくなると小さくなる傾向にあるので、伝送距離を大きくするには高いQ値をもつ共振器を使えばよいことがわかる。電磁界共振方式では、コイルのQ値が10〜100程度である場合には、伝送効率80%以上を得るためには結合係数Kは0.9〜0.1程度必要であり、コイルのQ値が1000〜2000程度である場合には、伝送効率80%以上を得るためには結合係数Kは0.08〜0.04あればよいことがわかる。
【0017】
これらから、近接場を利用した電力伝送においては、伝送距離を大きくしようとすると、結合係数Kが小さくなるので、伝送効率を大きくすることが必要となる。そのためには、共振器のQ値を大きくしなければならない。Q値を大きくするにはコイルの断面積を大きくすればよいのであるが、その場合には現実問題としてコイル重量が大きくなり材料費もかさみ高価になるなどの限界があった。
【0018】
また、伝送距離を飛躍的に大きくするには、近接場から遠方場にかけて連続して電力が伝送できることが望まれる。しかし、従来、近接場から遠方場までの広範囲に亘って電力を伝送できる装置はなかった。尚、特許文献2にも、近接場から遠方場までの広範囲に亘って電力を伝送することに関する示唆はない。また、同様に特許文献1では、段落[0041]に“無線非放射型エネルギー転送に対する共振に基づく方式を提供する”とあり、段落[0023]に“非放射型の場合、近接場領域を用いなければならず、領域の大きさは、大まかに波長λによって設定される。”と記載され、また、段落[0014]に“減衰が、十分長い距離に渡って、テールが振動性に(放射性)となる前に生じている。制限面(電磁波の挙動でこの変化が起こる場所)は、「放射火面」と呼ばれる。無線エネルギー転送方式が、・・・・近接場に基づくためには、結合される物体間の距離は、一方が他方の放射火面内にあるようなものでなければならない。”と記載されており、「近接場」及び「放射火面」の距離については明快ではないが、段落[0009]でいう「結合モード理論」に従い「放射性」となる前の領域での電力伝送に係るものである。
【0019】
一方、特許文献3及び特許文献4に示されるように電磁波発散抑制のために電波レンズまたは誘電体レンズを配置する場合には、電波レンズまたは誘電体レンズが介在する分だけ、実際の伝送距離が短くなるという欠点があった。更に、別部品として電波レンズまたは誘電体レンズを付加するので、部品点数が増加し、構造も複雑化するという難点があった。
【0020】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で近接場から遠方場までの広範囲に亘って高い伝送効率で電力を伝送することが可能な電力伝送の装置及び方法、並びにそれに用いる共振装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明によれば、以上の如き目的を達成するものとして、
第1の共振装置から第2の共振装置へと無線で電力を伝送する電力伝送装置であって、
前記第1の共振装置は、第1の導波管と、該第1の導波管と同軸状に配置された第1の誘電体共振器と、該第1の誘電体共振器を励振するための第1の励振構造とを備えており、
前記第1の導波管は、一方端が開放端とされ且つ他方端が短絡端とされており、
前記第1の誘電体共振器は、互いに反対側に位置する2つの第1端面を有し、前記第1の導波管の開放端の近傍にて前記第1の導波管から絶縁されて前記第1の導波管内に配置されており、前記2つの第1端面間の距離である厚みが前記第1の誘電体共振器の径方向位置によらず一定であり、
前記第2の共振装置は、第2の導波管と、該第2の導波管と同軸状に配置された第2の誘電体共振器と、該第2の誘電体共振器を励振するための第2の励振構造とを備えており、
前記第2の導波管は、一方端が開放端とされ且つ他方端が短絡端とされており、
前記第2の誘電体共振器は、互いに反対側に位置する2つの第2端面を有し、前記第2の導波管の開放端の近傍にて前記第2の導波管から絶縁されて前記第2の導波管内に配置されており、前記2つの第2端面間の距離である厚みが前記第2の誘電体共振器の径方向位置によらず一定であり、
前記第1の共振装置と前記第2の共振装置とは、前記第1の導波管の開放端と前記第2の導波管の開放端とが互いに対向するように配置されており、前記第1の励振構造に入力された電力が前記第2の励振構造から出力されることを特徴とする電力伝送装置、
が提供される。
【0022】
本発明の一態様においては、前記2つの第1端面または前記2つの第2端面は、前記第1の導波管の導波方向または前記第2の導波管の導波方向に対して実質的に直交する互いに平行な平面からなる。
本発明の一態様においては、前記2つの第1端面または前記2つの第2端面は、外周部より中央部が前記第2の誘電体共振器または前記第1の誘電体共振器からより遠くに位置する。本発明の一態様においては、前記2つの第1端面の少なくとも一方または前記2つの第2端面の少なくとも一方は、少なくとも外周部において、前記第1の導波管または前記第2の導波管と同軸状の対称軸を持つ円錐面、角錐面、球面、放物面または楕円面の少なくとも一部からなる。
【0023】
本発明の一態様においては、前記第1の誘電体共振器または前記第2の誘電体共振器の形状は、前記第1端面または前記第2端面を両端面とする多角柱、多角筒、円柱または円筒である。本発明の一態様においては、前記第1の導波管または前記第2の導波管の断面形状は、多角筒または円筒である。本発明の一態様においては、前記第1の導波管または前記第2の導波管は、前記開放端から前記短絡端へと次第に断面積が小さくなるテーパー形状をなしている。
【0024】
本発明の一態様においては、前記第1の励振構造または前記第2の励振構造は、前記第1の導波管の短絡端または前記第2の導波管の短絡端において前記第1の導波管または前記第2の導波管から絶縁されて配置され、前記第1の導波管の内部または前記第2の導波管の内部にて導波方向に延在する導体を含んでなる。
【0025】
また、本発明によれば、以上の如き目的を達成するものとして、
上記の電力伝送装置を用いて前記第1の共振装置から前記第2の共振装置へと無線で電力を伝送する電力伝送方法であって、
前記第1の共振装置と前記第2の共振装置とを前記第1の導波管の開放端と前記第2の導波管の開放端とが互いに対向するように配置し、前記第1の励振構造に電力を入力し、前記第2の励振構造から電力を出力することを特徴とする電力伝送方法、
が提供される。
また、本発明によれば、以上の如き目的を達成するものとして、
上記の電力伝送装置を構成するのに使用され或いは上記の電力伝送方法を実施するのに使用される共振装置であって、
導波管と、該導波管と同軸状に配置された誘電体共振器と、該誘電体共振器を励振するための励振構造とを備えており、
前記導波管は、一方端が開放端とされ且つ他方端が短絡端とされており、
前記誘電体共振器は、互いに反対側に位置する2つの端面を有し、前記導波管の開放端の近傍にて前記導波管から絶縁されて前記導波管内に配置されており、前記2つの端面間の距離である厚みが前記誘電体共振器の径方向位置によらず一定である、
ことを特徴とする共振装置、
が提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、簡単な構成で近接場から遠方場までの広範囲に亘って高い伝送効率で電力を伝送することが可能な電力伝送装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明による電力伝送装置の実施形態1を示す模式的断面図である。
図2】実施形態1における伝送距離と伝送効率との関係を示す図である。
図3】実施形態1における伝送距離と伝送効率が最大となる周波数との関係を示す図である。
図4】実施形態1における励振線ギャップを変えたときの励振線ギャップと伝送効率との関係を示す図である。
図5】実施形態1における伝送距離が7.5mmのときの励振線の長さと伝送効率との関係を示す図である。
図6】実施形態1における伝送距離が7.5mmのときのSパラメータを示す図である。
図7】実施形態1における2つのユニットの軸をずらせたときの伝送距離と伝送効率との関係を示す図である。
図8】実施形態1における円筒導波管に対する誘電体共振器の軸方向位置を面一から円筒導波管の内側または外側に設定したときの伝送距離と伝送効率との関係を示す図である。
図9】実施形態1における電磁界シミュレーションによる電磁界解析の結果を示す図である。
図10a】実施形態2におけるSパラメータを示す図である。
図10b】実施形態2におけるSパラメータを示す図である。
図10c】実施形態2におけるSパラメータを示す図である。
図11】実施形態3におけるTM02δモードの伝送距離と伝送効率との関係を示す図である。
図12】実施形態3におけるTM03δモードの伝送距離と伝送効率との関係を示す図である。
図13】実施形態3におけるTM02δモードのSパラメータを示す図である。
図14】実施形態3におけるTM03δモードのSパラメータを示す図である。
図15】実施形態3におけるTM02δモードについて2つのユニットの軸をずらせたときの伝送距離と伝送効率との関係を示す図である。
図16】実施形態3におけるTM03δモードについて2つのユニットの軸をずらせたときの伝送距離と伝送効率との関係を示す図である。
図17】実施形態3におけるTM02δモードについて円筒導波管に対する誘電体共振器の軸方向位置を面一から円筒導波管の内側または外側に設定したときの伝送距離と伝送効率との関係を示す図である。
図18】実施形態3におけるTM03δモードについて円筒導波管に対する誘電体共振器の軸方向位置を面一から円筒導波管の内側または外側に設定したときの伝送距離と伝送効率との関係を示す図である。
図19】実施形態3におけるTM02δモードの電磁界シミュレーションによる電磁界解析の結果を示す図である。
図20】実施形態3におけるTM03δモードの電磁界シミュレーションによる電磁界解析の結果を示す図である。
図21】実施形態4における2つのユニットの軸をずらせたときの伝送距離と伝送効率との関係を示す図である。
図22】実施形態4における導波管距離が10mm〜50mm間でのSパラメータを示す図である。
図23】実施形態4における円筒導波管に対する誘電体共振器の軸方向位置を面一から円筒導波管の内側または外側に設定したときの伝送距離と伝送効率との関係を示す図である。
図24】実施形態4における電磁界シミュレーションによる電磁界解析の結果を示す図である。
図25】本発明による電力伝送装置の実施形態5であって誘電体共振器が正三角柱形状であるものを示す模式的透視斜視図である。
図26】本発明による電力伝送装置の実施形態5であって誘電体共振器が正四角柱形状であるものを示す模式的透視斜視図である。
図27】本発明による電力伝送装置の実施形態5であって誘電体共振器が正五角柱形状であるものを示す模式的透視斜視図である。
図28】本発明による電力伝送装置の実施形態5であって誘電体共振器が正六角柱形状であるものを示す模式的透視斜視図である。
図29】実施形態5における誘電体共振器の形状による伝送距離と伝送効率との関係を示す図である。
図30】実施形態5における六角柱形状の誘電体共振器につき電磁界シミュレーションにて電磁界解析を行った結果を示す図である。
図31】実施形態6における伝送距離と伝送効率との関係を示す図である。
図32】実施形態6における電磁界シミュレーションによる電磁界解析の結果を示す図である。
図33】実施形態6における電磁界シミュレーションによる電磁界解析の結果を示す図である。
図34】実施形態6における電磁界シミュレーションによる電磁界解析の結果を示す図である。
図35】本発明による電力伝送装置の実施形態7を示す模式的透視斜視図である。
図36】実施形態7における伝送距離と伝送効率との関係を示す図である。
図37】実施形態7におけるSパラメータを示す図である。
図38】実施形態7における電磁界シミュレーションによる電磁界解析の結果を示す図である。
図39】本発明による電力伝送装置の実施形態8を示す模式的透視斜視図である。
図40】実施形態8における励振構造を示す模式的斜視図である。
図41】実施形態8における伝送距離と伝送効率との関係を示す図である。
図42】実施形態8におけるSパラメータを示す図である。
図43】実施形態8における電磁界シミュレーションによる電磁界解析の結果を示す図である。
図44】本発明による電力伝送装置の他の実施形態を示す模式的透視斜視図である。
図45】本発明による電力伝送装置の他の実施形態を示す模式的透視斜視図である。
図46】本発明による電力伝送装置の他の実施形態を示す模式的透視斜視図である。
図47】本発明による電力伝送装置の他の実施形態を示す模式的透視斜視図である。
図48】本発明による電力伝送装置の他の実施形態を示す模式的透視斜視図である。
図49】本発明による電力伝送装置における誘電体共振器の直径及び長さと誘電体共振器の周波数及び共振モードとの関係の例を示すグラフである。
図50a】実施形態1Aを示す模式的構成図である。
図50b】実施形態1Aの誘電体共振器を示す模式図である。
図50c】実施形態1Aの変形例の誘電体共振器を示す模式図である。
図51】実施形態1Aにおける伝送距離と伝送効率との関係を示す図である。
図52】実施形態1Aの作用乃至機能の説明図である。
図53】実施形態2Aを示す模式的構成図である。
図54】実施形態2Aを示す模式的構成図である。
図55】実施形態2Aにおける伝送距離と伝送効率との関係を示す図である。
図56a】実施形態3Aを示す模式的構成図である。
図56b】実施形態3Aの誘電体共振器を示す模式図である。
図57】実施形態3Aにおける伝送距離と伝送効率との関係を示す図である。
図58a】実施形態4Aを示す模式的構成図である。
図58b】実施形態4Aの誘電体共振器を示す模式図である。
図59】実施形態4Aにおける伝送距離と伝送効率との関係を示す図である。
図60】実施形態5Aを示す模式的構成図である。
図61】実施形態5Aにおける伝送距離と伝送効率との関係を示す図である。
図62】実施形態5Aにおける伝送距離と伝送効率との関係を示す図である。
図63】実施形態5Aにおける伝送距離と伝送効率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
従来、電磁界共振方式では、共振器にコイルまたはアンテナを用いたが、本発明では、マイクロ波では最もQ値の高い平行平板型誘電体共振器またはこれに類する誘電体共振器を用いることにより、伝送距離をさらに大きくする電力伝送装置を提供するようにした。ここで、平行平板型誘電体共振器に類する誘電体共振器とは、平行平板形状ではないが2つの端面間の距離である厚みが誘電体共振器の径方向位置によらず一定である形状の誘電体共振器をいうものとする。以下の説明においては、主として平行平板型誘電体共振器につき説明するが、同様のことは平行平板型誘電体共振器に類する誘電体共振器についても実質上あてはまる。
【0029】
誘電体共振器は、空間に単に置くと電磁界が漏れ易くQ値が低下するので、本発明では、所要の電磁的遮蔽を実現すべく、各平行平板型誘電体共振器において、その平行端面のうち他方の平行平板型誘電体共振器の平行端面と対向する面のみを開放し、その他の面を導波管で覆うようにしている。
【0030】
本発明によれば、Q値が高い共振器が提供されるので、結合係数Kが小さくても、伝送効率の指標であるK×Q(又はKQ)を大きく保つことができ、高い伝送効率を保つことができる。さらに、本発明によれば、平行平板型誘電体共振器には種々の共振モードが存在するので、コイルやアンテナよりも対向面積を広く取ることができ、結合係数Kを大きくすることができ、KQをさらに大きくできる。かくして、本発明によれば、伝送距離がさらに大きくても伝送効率が低下しない電力伝送装置が提供される。
【0031】
また、本発明によれば、一方向に電磁波を放射する構造にすることにより、共振系のQ値が大きいので、結合係数Kが極端に小さくても、一方の誘電体共振器から放射された電磁波を効率的にもう一方の誘電体共振器にて受信でき、従って遠方場まで高い伝送効率での電力伝送が可能な電力伝送装置が提供される。
【0032】
さらに、本発明によれば、従来のマイクロ波での遠方場の電力伝送装置のように位相制御の必要な多数のアンテナを用いる必要が無いので、遠方場まで電力伝送が可能な実用的な電力伝送装置を少ない部品数で安価に提供することができる。
【0033】
特に、2つの第1端面または2つの第2端面を、外周部より中央部が第2の誘電体共振器または第1の誘電体共振器からより遠くに位置するものとし、例えば、2つの第1端面の少なくとも一方または2つの第2端面の少なくとも一方を、少なくとも外周部において、第1の導波管または第2の導波管と同軸状の対称軸を持つ円錐面、角錐面、球面、放物面または楕円面の少なくとも一部からなるものとすることにより、一方の誘電体共振器の外周部から発散しようとする電磁界を所要の方向に集中させて他方の誘電体共振器の方へと向かわせることができるので、伝送損失が大きくなることはなく、伝送距離を伸ばすことができる。
【0034】
以下、図面を参照しながら本発明の具体的な実施形態を説明する。尚、実施形態に関連する数値の一部を、後記の表1にまとめて示す。
【0035】
[実施形態1]
図1は、実施形態1を示す模式的断面図である。本実施形態の電力電送装置は、第1の共振装置(図1では左側に配置されている)から第2の共振装置(図1では右側に配置されている)へと無線で電力を伝送する電力電送装置である。
【0036】
第1の共振装置は、第1の導波管(図1では左側に位置する断面円筒形状の円筒導波管(「円形導波管」ともいう))と、第1の誘電体共振器(図1では左側に位置する円柱形状の誘電体共振器)と、該第1の誘電体共振器を励振するための第1の励振構造(図1では左側に位置する同軸ケーブルの中心導体からなる励振線)とを備えている。第1の導波管と第1の誘電体共振器と第1の励振構造とは、同軸状に配置されている。尚、本発明において、「同軸状」とは、「軸を共有するように」配置されている状態をいうものとする。第1の導波管は、一方端(図1では右方端)が開放端とされ且つ他方端(図1では左方端)が短絡端とされている。第1の誘電体共振器は、互いに平行で互いに反対側に位置する2つの第1平行端面(図1では左側及び右側に位置する両端面)を有し、該第1平行端面が第1の導波管の導波方向(図1では左右方向)に対して実質的に直交するようにして第1の導波管の開放端の近傍にて第1の導波管から絶縁されて(図1では左側に位置する円筒形状の発泡スチロールを介在させて)第1の導波管内に配置されている。
【0037】
第2の共振装置は、以上のような第1の共振装置と同等の構造を有しており、但し、第1の共振装置と反対向きに配置されている。即ち、第2の共振装置は、第2の導波管(図1では右側に位置する断面円筒形状の円筒導波管)と、第2の誘電体共振器(図1では右側に位置する円柱形状の誘電体共振器)と、該第2の誘電体共振器を励振するための第2の励振構造(図1では右側に位置する同軸ケーブルの中心導体からなる励振線)とを備えている。第2の導波管と第2の誘電体共振器と第2の励振構造とは、同軸状に配置されている。第2の導波管は、一方端(図1では左方端)が開放端とされ且つ他方端(図1では右方端)が短絡端とされている。第2の誘電体共振器は、互いに平行で互いに反対側に位置する2つの第2平行端面(図1では左側及び右側に位置する両端面)を有し、該第1平行端面が第2の導波管の導波方向(図1では左右方向)に対して実質的に直交するようにして第2の導波管の開放端の近傍にて第2の導波管から絶縁されて(図1では右側に位置する円筒形状発泡スチロールを介在させて)第2の導波管内に配置されている。
【0038】
第1の共振装置と第2の共振装置とは、第1の導波管の開放端と第2の導波管の開放端とが互いに対向するように同軸状に配置されており、第1の励振構造に入力された電力が第2の励振構造から出力される。
【0039】
実施形態1では、共振周波数を2.45GHz付近に設定し、TM01δモードを用いている。円柱形状誘電体共振器に比誘電率(Er)が38の誘電体セラミック材料を用い、該共振器の直径Dは28.1mm、該共振器の長さLは18.7mm、円筒導波管の直径dは50.6mmとし、d/D=1.8となるようにした。本実施形態では、共振器が平行平板型誘電体共振器であるので、その厚みは共振器の軸方向寸法即ち長さLに等しい。円筒導波管の一方端を短絡し、導波管の中の開放端近くにおいて、発泡スチロールやテフロン(登録商標)などの比誘電率が低く誘電正接が小さい低誘電損失の絶縁体を介して、円柱形状誘電体共振器を円筒導波管に対して互いに同軸状となるように固定した。約1/4波長の長さ(2.45GHzでは約30.6mm)の中心導体(即ち励振線長さが約30.6mmの中心導体)がむき出しの同軸ケーブルを、円筒導波管及び円柱形状誘電体共振器と同軸状となるように円筒導波管の短絡端に挿入し、同軸ケーブルの外導体を導波管の短絡端に接続し、同軸ケーブルの中心導体の先端と誘電体共振器との間の距離(ギャップ)AGを23.0mmに保って固定した。これをユニット(共振装置)とする。これを2つ作製し、円筒導波管の開放端側同士を、同軸状となるように対向させ、任意の距離を保ち、一方のユニット(第1の共振装置)の同軸ケーブルに2.45GHz付近の電力を投入し、もう一方のユニット(第2の共振装置)の同軸ケーブルから電力を取り出す。
【0040】
伝送距離(M)は、2つの共振装置間の距離であり、特に第1の共振装置の第1の導波管または第1の誘電体共振器と第2の共振装置の第2の導波管または第2の誘電体共振器との間の距離のうちの最小距離である。伝送距離(M)は、典型的には、互いに対向する2つの導波管の間の距離Cutと互いに対向する2つの誘電体共振器の間の距離とのうちのいずれか小さい距離である。本実施形態では、代表的には、互いに対向する2つの円筒導波管の間の距離Cutは互いに対向する2つの誘電体共振器の間の距離と等しい。
【0041】
入力電力に対する出力電力の割合を伝送効率として測定した伝送特性(伝送距離と伝送効率との関係)を図2に示す。伝送距離7.5mm付近で伝送効率は約88%と最大となり、それよりも近づけても遠ざけても伝送効率は小さくなる。伝送効率が50%になる伝送距離は約25mm付近である。この伝送距離は、波長λの0.20倍にあたり(表1では、この波長λの何倍であるかを「その波長(λ)」の欄にて示す)、近接場の限界である波長λの0.16倍より大きく、遠方場まで達していることがわかる。図3に、伝送距離と伝送効率が最大となる周波数との関係を示す。共振周波数変化は40MHzと小さいことがわかる。
【0042】
励振線と誘電体共振器とのギャップ(軸方向距離:励振線ギャップ)を変えたときの伝送特性(励振線ギャップと伝送効率との関係)を図4に示す。ギャップ23mm付近で伝送効率がほぼ最大に達している。
【0043】
伝送距離が7.5mmのときの励振線の長さと伝送効率との関係を図5に示す。実際の周波数が2.45GHzよりも低いので、励振線の長さ30.6mm付近で伝送効率がほぼ最大に達している。
【0044】
伝送距離が7.5mmのときのSパラメータを図6に示す。第1のピークは、周波数が2.437GHzであり、S21の減衰量は0.56dBで、S11のリターンロスは24dBである。第2のピークは、周波数が2.364GHzであり、S21は16dB、S11は1.5dBである。対向する2つの誘電体共振器は電界結合をしており、結合係数Kは0.030となっている。誘電体共振器の無負荷Q値は10,000程度であり、K×Q=304、(K×Q)=92,500である。
【0045】
2つのユニットを、同軸状から軸間距離5mm、10mm及び15mmと変化させた(即ち軸をずらせた)ときの伝送距離と伝送効率との関係を図7に示す。伝送効率は、軸が5mmずれると急激に低下し、50%を切ってしまう。
【0046】
次に、以上の説明では、各ユニットにおける円筒導波管に対する誘電体共振器の軸方向位置に関して、他方のユニットに対向する側の誘電体共振器の端面は円筒導波管の開放端と面一(同一位置)であるものとしていたが、面一から円筒導波管の内側または外側に設定したときの伝送距離と伝送効率との関係を図8に示す。誘電体共振器を円形導波管の外側に5mm出すと、伝送効率は小さくなり、伝送距離とともに急速に小さくなる。誘電体共振器を円形導波管の内側に面一から5〜10mm程度入れると、伝送効率は大きくなり、さらに伝送距離も大きくなるが、誘電体共振器を円形導波管の内側に面一から15mm入れると、伝送距離7.5mm程度までは伝送効率が大きくなるが、それを過ぎると伝送効率は面一の場合とほぼ同等となる。
【0047】
電磁界シミュレーションにて電磁界解析を行った結果を、図9に示す。周方向の電磁界変化は無く、半径方向の電磁界変化は1つ、軸方向の電磁界変化は1つなので、誘電体共振器のモードはTE01δモードであることが確認できる。また、導波管同士の間の電界が強いことから、主に電界で誘電体共振器が結合していることが確認できる。
【0048】
特許文献2では遮断導波管内に誘電体共振器を挿入するとしているが、本発明実施形態1では、円筒導波管の直径は50.6mmであり、円筒導波管のTM01モードの遮断周波数は4.54GHz、TM11モードの遮断周波数は7.23GHz、TM02モードの遮断周波数は10.40GHz、TE11モードの遮断周波数は3.47GHz、TE21モードの遮断周波数は5.77GHz、TE01モードの遮断周波数は7.23GHzであるから、遮断周波数以下の条件である。
【0049】
[実施形態2]
実施形態1に於いて、円筒導波管に対する誘電体共振器の軸方向位置に関して、誘電体共振器を円筒導波管の内側に7.5mm挿入した2つのユニットを同軸状に配置し、円筒導波管同士の間隔(Cut)を0.5mmとしたときのSパラメータを図10aに示す。同軸ケーブルの先端(即ち励振線の先端)と誘電体共振器との間のギャップ(AG)を23mmから12mmに変更したときのSパラメータを図10bに示す。この特性は、中心周波数が2.407GHz、帯域幅が約6MHz、挿入損失が約0.2dB(伝送効率が約95%)である2段のバンドパスフィルタとなっている。また、円筒導波管同士の間隔を1.0mmとしたときのSパラメータを図10cに示す。この特性は、中心周波数が2.4075GHz、帯域幅が約5MHz、挿入損失が約0.2dB(伝送効率が約95%)である2段のバンドパスフィルタとなっている。導波管距離が0.5mmや1.0mmである電力伝送装置は非接触コネクタや導波管のロータリージョイントなどの、低損失でノイズの軽減が必要な用途に適用することができる。
【0050】
[実施形態3]
実施形態3の装置の構造は、実施形態1のものと同等であり、図1に示されるものに該当する。
【0051】
但し、実施形態3では、比誘電率38の誘電体セラミック材料を用いた円柱形状誘電体共振器を用い、2.45GHz付近に設計されたTM02δモード及びTM03δモードをそれぞれ用いている。TM02δモードの誘電体共振器は、直径Dが55.6mm、長さLが16.0mm、円筒導波管の直径dが100.1mmであり、TM03δモードの誘電体共振器は、直径Dが80.4mm、長さLが16.3mm、円筒導波管の直径dが144.8mmである。
【0052】
実施形態3において、対向する2つの円筒導波管の間の距離を伝送距離とし、入力電力に対する出力電力の割合を伝送効率として測定したTM02δモード及びTM03δモードの伝送特性(伝送距離と伝送効率との関係)をそれぞれ図11及び図12に示す。TM02δモードの伝送効率が50%になる伝送距離は48mmあたりであり、この伝送距離は、波長λの0.40倍にあたり、近接場の限界である波長λの0.16倍より大きく、遠方場まで達していることがわかる。同様に、TM03δモードの伝送効率が50%になる伝送距離は66mmあたりであり、この伝送距離は、波長λの0.54倍にあたり、近接場の限界である波長λの0.16倍より大きく、遠方場まで達していることがわかる。
【0053】
また、導波管距離即ち伝送距離が20mmのときのTM02δモード及びTM03δモードのSパラメータをそれぞれ図13及び図14に示す。
【0054】
TM02δモードにおいて、第1のピークは、周波数が2.450GHzであり、S21の減衰量は0.53dBで、S11のリターロスは50dBである。第2のピークは、周波数が2.371GHzであり、S21は5dB、S11は6.5dBである。対向する誘電体共振器は主に電界結合をしており、結合係数Kは0.0328、K×Q=327.7、(K×Q)は107,400となっている。
【0055】
また、TM03δモードにおいて、第1のピークは、周波数が2.486GHzであり、S21の減衰量は0.35dBで、S11のリターロスは37dBである。第2のピークは、周波数が2.441GHzであり、S21は9dB、S11は3dBである。対向する誘電体共振器は主に電界結合をしており、結合係数Kは0.0183、K×Q=182.7、(K×Q)は33,350となっている。
【0056】
2つのユニットを、同軸状から5mm、10mm、15mm、20mm、25mm及び30mmと変化させた(即ち軸をずらせた)ときの伝送距離と伝送効率との関係を、TM02δモードについては図15に示し、TM03δモードについては図16に示す。TM02δモードでは、伝送距離が30mmのとき、軸が5mmずれるとずれていないときに比較して伝送効率は数パーセント低下し、軸が15mmずれても伝送効率は50%以上を保っている。一方、TM03δモードでは、伝送距離が30mmのとき、軸が5mmずれるとずれていないときに比較して伝送効率は数パーセント低下し、軸が20mmずれても伝送効率は50%以上を維持している。
【0057】
次に、各ユニットにおける円筒導波管に対する誘電体共振器の軸方向位置に関して、他方のユニットに対向する側の誘電体共振器の端面を円筒導波管の開放端と面一の位置ではなく円筒導波管の内側または外側に設定したときの伝送距離と伝送効率との関係を、TM02δモードについては図17に示し、TM03δモードについては図18に示す。TM02δモードでは、伝送距離30mmにおいて、誘電体共振器を円筒導波管の外側に5mm出すと、伝送効率は十数%小さくなり、伝送距離の増加とともに伝送効率はさらに小さくなり、誘電体共振器を内側に面一から5mm程度入れるごとに伝送効率は数%ずつ低下する。TM03δモードでは、伝送距離30mmにおいて、誘電体共振器を円筒導波管の外側に5mmから内側の5mmまでの範囲では伝送効率は数%小さくなり、10mm程度入れると伝送効率はさらに数%小さくなる。
【0058】
電磁界シミュレーションにて電磁界解析を行った結果を、TM02δモードについては図19に示し、TM03δモードについては図20に示す。TM02δモードについては、周方向の磁界変化は無く、半径方向の磁界の変化は2つ、軸方向の電磁界変化は1つなので誘電体共振器のモードはTE02δモードであることが確認できる。また、導波管同士の間の電界が強いことから、主に電界で誘電体共振器が結合していることが確認できる。TM03δモードについては、周方向の磁界変化は無く、半径方向の磁界の変化は3つ、軸方向の電磁界変化は1つなので誘電体共振器のモードはTE03δモードであることが確認できる。また、導波管同士の間の電界が強いことから、主に電界で誘電体共振器が結合していることが確認できる。
【0059】
実施形態3では、TE02δモード円筒導波管として直径100.1mmのものを用いているので、誘電体共振器と同モードである円筒導波管モードのTM01及び、TE11モードにおいては、遮断周波数よりも高い周波数の条件である。TE03δモード円形導波管として直径144.8mmのものを用いているので、誘電体共振器と同モードである円筒導波管モードのTM01及び、TE11モード・TE21モードにおいては、遮断周波数よりも高い周波数の条件である。
【0060】
尚、TM02δモードに関しては、誘電体共振器の直径Dが60.6mm、長さLが14.0mmであり、円筒導波管の直径dが109.1mmであるものについても実施した(表1参照)。
【0061】
[実施形態4]
実施形態4の装置の構造は、実施形態1のものと同等であり、図1に示されるものに該当する。
【0062】
但し、実施形態4では、比誘電率38の誘電体セラミック材料を用いた円柱形状誘電体共振器を用い、2.45GHz付近に設計されたTM012+δモードを用いている。誘電体共振器は、直径Dが100.0mm、長さLが26.51mm、円筒導波管の直径dが180mmである。
【0063】
このときの、対向する2つの円筒導波管の間の距離を伝送距離とし、入力電力に対する出力電力の割合を伝送効率として測定した伝送特性(伝送距離と伝送効率との関係)更には2つのユニットを同軸状から変化させた(即ち軸をずらせた)ときの伝送距離と伝送効率との関係を図21に示す。軸ずれなしの場合の伝送効率が50%になる伝送距離は72.5mmである。この伝送距離は、波長λの0.59倍にあたり、近接場の限界である波長λの0.16倍より大きく、遠方場まで達していることがわかる。軸ずれがある場合は、伝送距離50mm付近で最大の伝送効率を示し、軸ずれが大きいほど伝送効率が小さくなるが、軸ずれが30mmのときでも、伝送効率50%を維持できる距離は40mmから70mm付近にわたっている。
【0064】
導波管距離が10mm〜50mm間でのSパラメータを図22に示す。S11の第1のピークは導波管距離が大きくなるにつれて周波数は低下してくる。一方、第2のピークは、導波管距離大きくなるにつれてやや高くなっており、導波管距離が20mmから30mmにかけて見えなくなっており、40mmや50mmではまったく観測されない。すなわち、近接場の限界である波長λの0.16倍である19mmを超えた付近から、結合係数が観測されなくなり、結合係数が存在しなくても、電力が伝送されていることになる。
【0065】
次に、各ユニットにおける円筒導波管に対する誘電体共振器の軸方向位置に関して、他方のユニットに対向する側の誘電体共振器の端面を円筒導波管の開放端と面一の位置ではなく円筒導波管の内側または外側に設定したときの伝送距離と伝送効率との関係を、図23に示す。伝送距離30mmまでは、誘電体共振器を円筒導波管の外側5mmに設定した場合を除けば伝送効率は90%以上を保ち、伝送距離40mm以降は共振器が導波管開放端から内側にある方から順に伝送効率が急激に低下する。すなわち、伝送距離(導波管同士の距離)が60mmのとき、誘電体共振器を内側に0mm、5mm、10mm、15mm入れる(誘電体共振器間距離を60mm、65mm、70mm、75mmとする)と誘電体共振器間の結合が小さくなり伝送効率が急激に低下する。但し、共振器が導波管開放端から15mm内側にあっても、伝送距離60mmまでは伝送効率が50%以上となっている。
【0066】
電磁界シミュレーションにて電磁界解析を行った結果を、図24に示す。周方向の電磁界変化は無く、半径方向の電磁界変化は1つ、軸方向の電磁界変化は2つなので誘電体共振器のモードはTE012+δモードであることが確認できる。また、導波管同士の間の電界が強いことから、主に電界で誘電体共振器が結合していることが確認できる。
【0067】
実施形態4では、円筒導波管として直径dに180mmのものを用いているので、誘電体共振器と同じ円筒導波管モードであるTM01モード、およびTM11モード・TE11モード・TE21モード・TE01モードにおいて、遮断周波数以上の条件であり、特許文献2では遮断導波管(遮断周波数以下の周波数でフィルタを構成する)を用いるとされているが、本発明実施形態ではいずれのモードにおいても遮断周波数以上の周波数で高い伝送効率を保つ電力伝送装置が実現している。
【0068】
[実施形態5]
実施形態5の装置の構造は、実施形態1のものと同等であり、図1に示されるものに該当する。
【0069】
但し、実施形態5では、比誘電率38の誘電体セラミック材料を用いた多角柱形状誘電体共振器を用い、2.45GHz付近に設計されたTM012+δモードを用いている。誘電体共振器が正三角柱形状である場合の模式的透視斜視図を図25に示し、誘電体共振器が正四角柱形状である場合の模式的透視斜視図を図26に示し、誘電体共振器が正五角柱形状である場合の模式的透視斜視図を図27に示し、誘電体共振器が正六角柱形状である場合の模式的透視斜視図を図28に示す。それぞれの形状の誘電体共振器の寸法を後述の表1に示す。
【0070】
本実施形態における誘電体共振器の形状による伝送距離と伝送効率との関係を、図29に示す。ここで、参考のために示される共振器形状が円柱のものは、実施形態4に示した共振器の直径Dが約100mmで、共振器の長さLが約19mmで、円筒導波管の直径dが180mmである。
【0071】
伝送効率が50%になる伝送距離は、誘電体共振器形状が四角柱及び五角柱の場合には68mmであり、この伝送距離は、波長λの0.56倍にあたり、近接場の限界である波長λの0.16倍より大きく、遠方場まで達していることがわかる。伝送効率が50%になる伝送距離は、誘電体共振器形状が三角柱及び六角柱の場合には72mmであり、この伝送距離は、波長λの0.59倍にあたり、近接場の限界である波長λの0.16倍より大きく、遠方場まで達していることがわかる。
【0072】
誘電体共振器の形状が三角柱、四角柱、五角柱または六角柱である場合には、内接円の直径が約100mmになるように設計すれば、共振モードをTM012+δモードにすることができ、円柱形状誘電体共振器とほぼ同様に、伝送距離50mmまでは損失は90%以上を保つことができる。だだし、三角柱と四角柱においては、多くのモードが発生することや、共振に直接寄与しない領域が多く、この領域が円筒導波管の内筒に近いため、Q値を劣化させているなどの要因により、伝送損失はゆるやかに低下している。六角柱形状の誘電体共振器が実施形態4と同様にTM012+δで共振していることを確認するために、電磁界シミュレーションにて電磁界解析を行った結果を、図30に示す。周方向の磁界変化は無く、半径方向の磁界変化は1つ、軸方向の電磁界変化は2つなので誘電体共振器のモードはTE012+δモードであることが確認できる。また、導波管同士の間の電界が強いことから、主に電界で誘電体共振器が結合していることが確認できる。
【0073】
Sパラメータ特性においては、実施形態4と同様に、伝送距離が20〜30mm付近で、共振器同士の結合は観測されない。
【0074】
実施形態5では、導波管として外径が187〜216mmのものを用いているので、誘電体共振器と同じ円筒導波管モードであるTM01モード、およびTM11モード・TE11モード・TE21モード・TE01モードにおいて、遮断周波数以上の条件であり、特許文献2では遮断導波管(遮断周波数以下の周波数でフィルタを構成する)を用いるとされているが、本発明実施形態ではいずれのモードにおいても遮断周波数以上の周波数で高い伝送効率を保つ電力伝送装置が実現している。
【0075】
[実施形態6]
実施形態6の装置の構造は、実施形態1のものと同等であり、図1に示されるものに該当する。
【0076】
但し、実施形態6では、比誘電率20の誘電体セラミック材料を用いた円柱形状誘電体共振器を用い、2.45GHz付近に設計されたTM012+δモードを用いている。誘電体共振器の直径Dが100mmで長さLが26.51mm、円筒導波管の直径dが180mmのものと、誘電体共振器の直径Dが140mmで長さLが29.5mm、円筒導波管の直径dが216mmのものとを用いた。
【0077】
本実施形態における伝送距離と伝送効率との関係を、図31に示す。誘電体共振器の直径が100mmの場合には、伝送効率が50%のときの伝送距離は103mmであり、この伝送距離は、波長λの0.84倍にあたり、近接場の限界である波長λの0.16倍より大きく、遠方場まで達していることがわかる。誘電体共振器の直径が140mmの場合には、伝送効率が50%のときの伝送距離は120mmであり、この伝送距離は、波長λの0.98倍にあたり、近接場の限界である波長λの0.16倍より大きく、遠方場まで達していることがわかる。
【0078】
実施例6では、円形導波管として、直径が216mmのものを用いているので、誘電体共振器と同じ円筒導波管モードであるTM01モード、およびTM11モード・TE11モード・TE21モード・TE01モードにおいて、遮断周波数以上の条件であり、特許文献2では遮断導波管(遮断周波数以下の周波数でフィルタを構成する)を用いるとされているが、本発明実施形態ではいずれのモードにおいても遮断周波数以上の周波数で高い伝送効率を保つ電力伝送装置が実現している。
【0079】
電磁界シミュレーションにて電磁界解析を行った結果を、図32図34に示す。図32には直径Dが100mmの誘電体共振器において伝送距離が50mmのときの共振モードを示し、図33には直径Dが140mmの誘電体共振器において伝送距離が20mmのときの共振モードを示し、図34には直径Dが140mmの誘電体共振器において伝送距離が70mmのときの共振モードを示す。直径Dが100mmの誘電体共振器の場合には、周方向の磁界変化は無く、半径方向の磁界変化は1つ、軸方向の電磁界変化は2つなので、誘電体共振器のモードはTE012+δモードであることが確認できる。直径Dが140mmの誘電体共振器において伝送距離20mmの場合には、周方向の磁界変化は無く、半径方向の磁界変化は1つ、軸方向の電磁界変化は2つなので、誘電体共振器のモードはTE012+δモードであることが確認できる。直径Dが140mmの誘電体共振器において伝送距離70mmの場合には、位相が0度のときは、周方向の磁界変化は無く、半径方向の磁界変化は1つ、軸方向の電磁界変化は2つなので、誘電体共振器のモードはTE012+δモードであることが確認できるが、位相が90度付近では、周方向の磁界変化は無く、半径方向の磁界変化は4つ、軸方向の電磁界変化は1つなので、TE04δモードの共振モードも発生しており、誘電体共振器のモードはTE012+δモードとTE04δモードとの混成モードであることがわかる。
【0080】
[実施形態7]
実施形態7の装置の構造は、実施形態1のものと同等であり、図1に示されるものに該当する。
【0081】
但し、実施形態7では、比誘電率24の誘電体セラミック材料を用いた円筒形状誘電体共振器を用い、12GHz付近に設計されたリング型TM012+δモードを用いている。円筒形状誘電体共振器としては、直径Dが25mm、内穴直径が15mm、長さLが7.6mmのものを用いた。円筒導波管としては、直径dが45mmのものを用いた。また、励振線長さを約6.25mm(12GHzの波長の約1/4)とし、同軸ケーブルの中
心導体の先端と誘電体共振器との間の距離(ギャップ)を4.5mmに保って固定した。本実施形態の装置の模式的透視斜視図を図35に示す。
【0082】
本実施形態における伝送距離と伝送効率との関係を、図36に示す。伝送効率が50%のときの伝送距離は27mmであり、この伝送距離は、波長λの1.08倍にあたり、近接場の限界である波長λの0.16倍より大きく、十分遠方場まで達していることがわかる。伝送効率が80%のときの伝送距離は21mmであり、この伝送距離は、波長λの0.84倍にあたり、近接場の限界である波長λの0.16倍より大きく、遠方場まで達していることがわかる。
【0083】
伝送距離が21mmのときのSパラメータを、図37に示す。第1のピークは、周波数が11.256GHzであり、S11の値は20dBで、S21の値は1.09dBである。1.09dBは、伝送効率では77.7%である。第2のピークは観測されない。これは、近接場の限界である波長λの0.16倍である4mmをはるかに越えた伝送距離であるためと考えられる。
【0084】
実施形態7では、円筒導波管として直径45mmのものを用いているので、誘電体共振器と同じ円筒導波管モードであるTM01モード、およびTM11モード・TE11モード・TE21モード・TE01モードにおいて、遮断周波数以上の条件であり、特許文献2では遮断導波管(遮断周波数以下の周波数でフィルタを構成する)を用いるとされているが、本発明実施形態ではいずれのモードにおいても遮断周波数以上の周波数で高い伝送効率を保つ電力伝送装置が実現している。
【0085】
電磁界シミュレーションにて電磁界解析を行った結果を、図38に示す。図38には、伝送距離が21mmのときの電磁界分布を示す。周方向の磁界変化は無く、半径方向の磁界変化は2つ、軸方向の電磁界変化は1つなので、誘電体共振器のモードはTM02δモードであることが確認できる。
【0086】
[実施形態8]
実施形態8の装置の構造は、励振構造が後述のものであることを除いて、実施形態1のものと同等である。
【0087】
但し、実施形態8では、比誘電率24の誘電体セラミック材料を用いた円柱形状誘電体共振器を用い、12GHz付近に設計されたTE012+δモードを用いている。円柱形状誘電体共振器としては、直径Dが14mm、長さLが3.75mmのものを用いた。円筒導波管としては、直径dが25.2mmのものを用い、d/D=1.8とした。本実施形態の装置の模式的透視斜視図を図39に示す。
【0088】
図40に、本実施形態における励振構造の模式的斜視図を示す。この励振構造は、円柱形状誘電体共振器をTEモードで励振するためのものであり、Alfordアンテナと呼ばれ、文献:“Ultrahigh−frequency loop antenna”、Alford,A.and Kandoian,AIEE Trance..,59,pp.843−848(1940)に記載されている構造である。軸方向の電流は互いに相殺され、円周方向の電流にて励振するため、空間の狭い円筒導波管内にて効率よくTEモードが励振される。
【0089】
円筒導波管の一方端を短絡し、導波管の中の開放端近くにおいて、発泡スチロールやテフロン(登録商標)などの比誘電率が低く誘電正接が小さい低誘電損失の絶縁体を介して、円柱形状誘電体共振器を円筒導波管に対して互いに同軸状となるように固定した。同軸ケーブルを、円筒導波管及び円柱形状誘電体共振器と同軸状となるように円筒導波管の短絡端に挿入し、同軸ケーブルの外導体を導波管の短絡端に接続し、同軸ケーブルの先端にAlfordアンテナを取り付け、該Alfordアンテナと誘電体共振器との間の距離(ギャップ)を3.0mmに保って固定した。これをユニット(共振装置)とする。これを2つ作製し、円筒導波管の開放端側同士を、同軸状となるように対向させ、任意の距離を保ち、一方のユニット(第1の共振装置)の同軸ケーブルに12GHz付近の電力を投入し、もう一方のユニット(第2の共振装置)の同軸ケーブルから電力を取り出す。
【0090】
本実施形態における伝送距離と伝送効率との関係を、図41に示す。伝送距離3mm〜9mmの範囲内で伝送効率は約90%と最大となり、伝送距離がそれよりも小さくても大きくても伝送効率は小さくなる。伝送効率が50%になる伝送距離は約15.5mm付近である。この伝送距離は、波長λの0.62倍にあたり、近接場の限界である波長λの0.16倍より大きく、遠方場まで達していることがわかる。
【0091】
伝送距離が105mmのときのSパラメータを、図42に示す。第1のピークは、周波数が11.045GHzであり、S21の減衰量は0.86dBで、S11のリターロスは29dBである。第2のピークは、周波数が10.845GHzであり、S21は2dB、S11は13dBである。対向する誘電体共振器は磁界結合をしており、第1のピークと第2のピークとが結合を示すとすると、結合係数Kは0.0183となっている。誘電体共振器の無負荷Q値は5,000程度であり、K×Q=91.4、(K×Q)=8,300である。
【0092】
電磁界シミュレーションにて電磁界解析を行った結果を、図43に示す。周方向の電磁界変化は無く、半径方向の電磁界変化は1つ、軸方向の電磁界変化は1つなので誘電体共振器のモードはTE012+δモードであることが確認できる。また、導波管同士の間の磁界が強いことから、主に磁界で誘電体共振器が結合していることが確認できる。
【0093】
特許文献2では遮断導波管内に誘電体共振器を挿入するとしているが、本発明実施形態8では、円筒導波管の直径は25.2mmであり、誘電体共振器と同じモードである円筒導波管のTE01モードの直径25.2mmの遮断周波数14.52GHzであり、TE21モードの遮断周波数は11.58GHz、TE11モードの遮断周波数は6.98GHz、TM01モードの遮断周波数は9.11GHz、TM11モードの遮断周波数は14.52GHzであるから、少なくともTE012+δモードの誘電体共振器がリーキーモードとなる導波管のTE01モードでは遮断周波数以上の周波数であり、特許文献2では遮断導波管(遮断周波数以下の周波数でフィルタを構成する)を用いるとされているが、本発明実施形態では遮断周波数以上の周波数で高い伝送効率を保つ電力伝送装置が実現している。
【0094】
[その他の実施形態(その1)]
図44に示すように、誘電体共振器の励振構造として、同軸ケーブル及びそれに接続された波長1/2のダイポールアンテナを含むものを用いても良い。
【0095】
また、誘電体共振器の励振構造として、図45に示すような方形導波管から電力を供給するものを用いても良い。この場合、共振器をTMモードで励振することができる。
【0096】
また、誘電体共振器の励振構造として、図46に示すような方形導波管から電力を供給するものを用いても良い。この場合、共振器をTEモードで励振することができる。
【0097】
また、誘電体共振器の励振構造として、図47に示すように導波管の内面から約波長1/4の励振線を径方向に直交するように延ばし、その励振線の途中のタップから電力を供給するものを用いても良い。この場合、共振器をTEモードで励振することができる。
【0098】
また、図48に示すように、第1または第2の導波管は、開放端から短絡端へと次第に断面積が小さくなるテーパー形状をなしているものであっても良い。
【0099】
特許文献1では共振器に用いられる誘電体共振器の比誘電率は大きいほうが良いとしているが、本発明では、いずれも誘電体共振器の直径Dが100mmで共振モードがTE012+δモードある実施形態4と実施形態6とを比較すると、伝送効率が50%となる伝送距離は、実施形態4では比誘電率が38の場合72.5mmであるが、実施形態6では比誘電率が20の場合103mmとなっており、比誘電率が小さいほうが伝送距離は大きい。また、実施形態6の2つの例にて示されるように、誘電体共振器が同じ比誘電率で同じ共振モードであっても、誘電体共振器の直径Dが大きい方が伝送距離も大きくすることができる。
【0100】
図49には、円柱誘電体共振器の周波数と共振モードとを設定すれば、誘電体共振器の直径Dと長さLを計算できるグラフを示す。共振モードを選択し、選択したモードに該当するグラフ(直線)上の一点を決め、この点の縦軸の数値を読み取り、波長λの値と比誘電率Erの値とを決めることで、直径Dの値が求まる。一方、上記一点の横軸の数値を読み取り、上記求められたDの値を用いることで、長さLの値が求まる。また、図49には、実施形態で示した例をプロットしてある。
【0101】
これらの実施形態からわかるように、電磁界共振方式では、従来の技術では近傍場と呼ばれる、導体などから生じた電磁界がまだ電波の電磁波の状態になる前の状態で、共振器同士が電磁界結合により結合し、結合係数Kと共振器のQにより伝送効率と伝送距離が関係付けられていたが、本発明によれば共振系に平行平板型誘電体共振器を用いることにより、結合が形成される最小距離よりも大きな距離においてさえも即ち近傍界から遠方界まで連続して電力が伝送される装置が提供される。これが達成できるのは、誘電体共振器を用いることにより、波長または波長1/2の長さよりも大きな誘電体共振器の面を対向させて配置することが容易であるからと考えられる。たとえば、コイルで2.45GHzのループアンテナの直径を1波長の122.5mmにしようとすると約3倍の長さ(波長の3倍の長さ)のコイルを用いることになり、コイルの損失と電波の放射により半波長程度の伝送距離は望めないが、誘電体共振器では、直径122.5mm程度の誘電体共振器を円筒導波管の中に入れ、半波長以上の伝送距離が得られる。また、本発明は、特許文献2に示されるように導波管が遮断域であっても、或いはそうでなくても、近傍場から遠方場にかけて連続して、電力を伝送できる装置である。本発明は、伝送効率が高いので大電力を扱うことができる電力伝送装置である。
【0102】
【表1】
【0103】
[その他の実施形態(その2)]
以上の実施形態では、2つの第1端面または2つの第2端面は、第1の導波管の導波方向または第2の導波管の導波方向に対して実質的に直交する互いに平行な単一の平面からなるものとした。即ち、以上の実施形態は、第1端面が第1平行端面であり、第2端面が第2平行端面である。
【0104】
これに対して、その他の実施形態(その2)として、2つの第1端面または2つの第2端面が、外周部より中央部が第2の誘電体共振器または第1の誘電体共振器からより遠くに位置するものを、以下に、個別の実施例番号を付して示す。
【0105】
[実施形態A1]
実施形態A1の構成図を、図50aおよび図50bに示す。ここでは、各誘電体共振器(第1の誘電体共振器または第2の誘電体共振器)において、2つの端面のうちの一方は凹んだ円錐面であり、一方の端面の面法線方向の寸法即ち2つの端面間の距離である厚みLは誘電体共振器の径方向位置によらず一定である。誘電体共振器は、比誘電率が38であり、直径Dが105.3mm、厚みLが19.3mmである。短絡円形導波管(短絡円筒導波管)の直径は誘電体共振器の直径Dの1.8倍すなわち189.5mmである。誘電体共振器は円形導波管の開放側とほぼ同じ軸方向位置に位置する。導波管短絡面の中心から誘電体共振器の軸方向に約1/4波長(30.6mm)の長さの導体を励振線として位置し、該励振線と誘電体共振器との間に23mmの間隔をとり、それぞれの中心を誘電体共振器の中心軸にあわせ、二つの円筒導波管の開放側同士を向き合わせ、任意の距離を保つ構成とする。励振線は円形導波管の短絡面のほぼ中心に取り付けられており、同軸コネクタの中心導体は励振線と接続されている。約2.45GHzのマイクロ波を、一方の同軸コネクタを経て励振線に供給する。マイクロ波電力は一方の励振線から一方の誘電体共振器を共振させ、さらに任意の距離を保ったもう一方の誘電体共振器を共振させ、もう一方の励振線に伝送された電力がもう一方の同軸コネクタより取り出される。このようにして、一方の円形導波管のコネクタから、もう一方の円形導波管のコネクタにマイクロ波電力が伝送される。伝送特性を図51に示す。誘電体共振器は励振線によりTMモードで共振し、誘電体共振器同士は電界結合により結合し2段のフィルタのように動作する。
【0106】
図52により、本実施形態の作用乃至機能を説明する。図52の(a)〜(c)は、2つの誘電体共振器間の距離即ち伝送距離Mがほぼ誘電体共振器の直径Dの半分である場合を示す。図52の(a)及び(b)では、誘電体共振器の端面が平面からなるので、一方の誘電体共振器の外周部特に外周縁から発する電磁界は、径方向外側へも広がって広がり部分D’を持つようになり、従って、他方の誘電体共振器を通過しない電磁界部分が生ずる。これに対して、図52の(c)では、2つの誘電体共振器の互いに対向する端面が凹んだ円錐面からなるので、一方の誘電体共振器の外周部特に外周縁から発する電磁界は、図52の(a)及び(b)の場合に比べて、径方向外側へと広がることなく、上記広がり部分D’をも含む多くの部分が他方の誘電体共振器を通過する。図52の(d)及び(e)は、2つの誘電体共振器間の距離即ち伝送距離Mがほぼ誘電体共振器の直径Dに等しい場合を示す。この場合にも同様に、図52の(d)では、誘電体共振器の端面が平面からなるので、一方の誘電体共振器の外周部特に外周縁から発する電磁界は、径方向外側へも広がって広がり部分D’を持つようになり、従って、他方の誘電体共振器を通過しない電磁界部分が生ずる。これに対して、図52の(e)では、2つの誘電体共振器の互いに対向する端面が凹んだ円錐面からなるので、一方の誘電体共振器の外周部特に外周縁から発する電磁界は、図52の(d)の場合に比べて、径方向外側へと広がることなく、上記広がり部分D’をも含む著しく多くの部分が他方の誘電体共振器を通過する。
【0107】
本実施形態では、誘電体共振器において、半径105.3/2mmに対し円錐の高さ即ちOffsetを11mmとすることで、軸方向に直交する平面に対する円錐面の傾斜角をATAN((105.3/2)/11)=11.8°としている。伝送効率50%の伝送距離は、115mmに達し、端面を傾斜させないとき(伝送距離75mm)に比較し、40mmも伝送距離が拡大している。
【0108】
本実施形態では、誘電体共振器の端面が外周部から中央部まで径方向領域の全体にわたって円錐面からなるものとしているが、1つの変形例として、図50cに示すように、凹んだ端面を外周部領域のみ円錐面からなり中央部領域が軸方向に直交する平面からなる円錐台面(円錐皿面)として構成し、誘電体共振器の厚みが一定になるように反対側の端面を構成してもよい。外周部領域と中央部領域との境界位置については、上記の作用乃至機能が良好に発揮されるように、適宜設定することができる。
【0109】
[実施形態A2]
実施形態A2の構成図を、図53および図54に示す。図53では、各誘電体共振器(第1の誘電体共振器または第2の誘電体共振器)において、外周面は六角柱形状であり、2つの端面のうちの一方は凹んだ六角錐面であり、一方の端面の面法線方向の寸法即ち2つの端面間の距離である厚みLは誘電体共振器の径方向位置によらず一定である。誘電体共振器は、比誘電率が38であり、外周面形状の六角形の外接円直径が110mm、内接円直径が99.4mm、厚みLが19mmで、軸方向に直交する平面に対する六角錐面の傾斜角が12°である。円形導波管の直径は209mmである。同様に、図54では、各誘電体共振器(第1の誘電体共振器または第2の誘電体共振器)において、外周面は五角柱形状であり、2つの端面のうちの一方は凹んだ五角錐面であり、一方の端面の面法線方向の寸法即ち2つの端面間の距離である厚みLは誘電体共振器の径方向位置によらず一定である。誘電体共振器は、比誘電率が38であり、外周面形状の五角形の外接円直径が110mm、内接円直径が95.3mm、厚みLが19mmで、軸方向に直交する平面に対する五角錐面の傾斜角が12°である。円形導波管の直径は187mmである。伝送効率と伝送距離との関係を図55に示す。伝送効率50%の伝送距離は円柱誘電体共振器の75mmから140mmヘと65mm拡大している。
【0110】
本実施形態では、誘電体共振器の端面が外周部から中央部まで径方向領域の全体にわたって角錐面(多角錐面)からなるものとしているが、角錐は五角錐または六角錐に限られず、更に、1つの変形例として、外周部領域のみ角錐面からなるものとし中央部領域を軸方向に直交する平面から構成してもよい。外周部領域と中央部領域との境界位置については、実施形態A1で説明したような作用乃至機能が良好に発揮されるように、適宜設定することができる。
【0111】
[実施形態A3]
実施形態A3の構成図を、図56aおよび図56bに示す。各誘電体共振器(第1の誘電体共振器または第2の誘電体共振器)において、2つの端面は、いずれも球面であり、一方の端面の曲率半径は他方の端面の曲率半径より誘電体共振器の厚みLだけ大きい。即ち、2つの端面間の距離である厚みLは誘電体共振器の径方向位置によらず一定である。誘電体共振器は、比誘電率が38であり、直径Dが105.3mm、厚みLが19mmである。円形導波管の直径は189.5mmである。伝送効率と伝送距離との関係を図57に示す。伝送効率50%の伝送距離は、Offset=14.1mmでは、Offset=0(凹みなしの円柱誘電体共振器)の75mmから95mmヘと20mm拡大している。
【0112】
本実施形態では、誘電体共振器の端面が外周部から中央部まで径方向領域の全体にわたって球面からなるものとしているが、1つの変形例として、外周部領域のみ球面からなるものとし中央部領域を軸方向に直交する平面から構成してもよい。外周部領域と中央部領域との境界位置については、実施形態A1で説明したような作用乃至機能が良好に発揮されるように、適宜設定することができる。
【0113】
[実施形態A4]
実施形態A4の構成図を、図58aおよび図58bに示す。各誘電体共振器(第1の誘電体共振器または第2の誘電体共振器)において、2つの端面のうちの一方は凹んだ放物面であり、一方の端面の面法線方向の寸法即ち2つの端面間の距離である厚みLは誘電体共振器の径方向位置によらず一定である。誘電体共振器は、比誘電率が38であり、直径Dが105.3mm、厚みLが19.3mmである。円形導波管の直径は189.5mmである。伝送効率と伝送距離との関係を図59に示す。伝送効率50%の伝送距離は、Offset=10.5mmでは、Offset=0(凹みなしの円柱誘電体共振器)の75mmから105mmヘと30mm拡大している。
【0114】
本実施形態では、誘電体共振器の端面が外周部から中央部まで径方向領域の全体にわたって放物面からなるものとしているが、1つの変形例として、外周部領域のみ放物面からなるものとし中央部領域を軸方向に直交する平面から構成してもよい。外周部領域と中央部領域との境界位置については、実施形態A1で説明したような作用乃至機能が良好に発揮されるように、適宜設定することができる。
【0115】
[実施形態A5]
実施形態A5の構成図を、図60に示す。各誘電体共振器(第1の誘電体共振器または第2の誘電体共振器)において、2つの端面のうちの一方は凹んだ楕円面であり、一方の端面の面法線方向の寸法即ち2つの端面間の距離である厚みLは誘電体共振器の径方向位置によらず一定である。誘電体共振器は、比誘電率が38であり、直径Dが105.3mm、厚みLが19.3mmである。円形導波管の直径は189.5mmである。伝送効率と伝送距離との関係を図61(楕円短軸の長さbを160mmに固定)、図62(楕円短軸の長さbを170mmに固定)及び図63(楕円短軸の長さbを180mmに固定)に示す。伝送効率50%の伝送距離は、楕円短軸の長さbのいずれに対しても、Offset=10〜11mmにおいて、Offset=0(凹みなしの円柱誘電体共振器)の75mmから105mmヘと30mm拡大している。
【0116】
本実施形態では、誘電体共振器の端面が外周部から中央部まで径方向領域の全体にわたって楕円面からなるものとしているが、1つの変形例として、外周部領域のみ楕円面からなるものとし中央部領域を軸方向に直交する平面から構成してもよい。外周部領域と中央部領域との境界位置については、実施形態A1で説明したような作用乃至機能が良好に発揮されるように、適宜設定することができる。
【0117】
[その他の実施形態(その3)]
本発明においては、第1の誘電体共振器及び第2の誘電体共振器を、一方が上記実施形態A1〜A5のいずれかの端面を持つものとし、他方がそれと異なる上記実施形態A1〜A5の端面を持つものとしてもよい。
【0118】
更に、本発明においては、第1の誘電体共振器及び第2の誘電体共振器を、一方が上記実施形態1〜8のいずれかの端面を持つものとし、他方が上記実施形態A1〜A5のいずれかの端面を持つものとしてもよい。
図1
図2
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図10a
図10b
図10c
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