(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
運転席の下方空間に配置されたキャスタ輪を含むキャスタユニットと、前記運転席の側方空間に配置されたドライブ輪を含むドライブユニットと、前記運転席を形成する車体フレームと、前記車体フレームに対して前記キャスタユニットと前記ドライブユニットとを上下に揺動可能に懸架するリンク機構と、前記キャスタ輪の振動を吸収する弾性部材と、を備え、前記リンク機構が、前記ドライブユニットに取り付けられたアンダーリンクと、前記キャスタユニットに取り付けられたキャスタリンクと、を含み、前記アンダーリンクおよび前記キャスタリンクが、互いに共通する支軸を介して上下に揺動可能であり、前記弾性部材が、前記アンダーリンクと前記キャスタリンクとの間に配置されたフォークリフトの懸架装置において、
前記アンダーリンクは、
前記側方空間に配置され、かつ、前記ドライブユニットに取り付けられた一端部と、
前記下方空間に配置された他端部と、
該一端部と該他端部との間で前記支軸を軸受する本体部と、を含み、
前記キャスタリンクは、
前記側方空間の前記アンダーリンクの一端部の上方に配置された一端部と、
前記下方空間に配置され、かつ、前記キャスタ輪を旋回させる鉛直軸に取り付けられた他端部と、
該一端部と該他端部との間で前記アンダーリンクの本体部とともに前記支軸を軸受する本体部と、
前記一端部側に略鉛直方向に立設された立設部と、を含み、
前記キャスタリンクの前記本体部及び前記立設部は、一体に構成されており、
前記弾性部材は、
前記側方空間に配置され、かつ、前記アンダーリンクの一端部と前記キャスタリンクの前記立設部の上部との間に取り付けられており、
前記アンダーリンクに対する前記弾性部材の取付位置と前記支軸の軸心位置との間の距離L2は、前記キャスタリンクに対する前記鉛直軸の取付位置と前記支軸の軸心位置との間の距離L1以上である
ことを特徴とするフォークリフトの懸架装置。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に示すように、車体の後部の左側および右側にそれぞれドライブ輪(ドライブタイヤ)およびキャスタ輪(キャスタタイヤ)が設けられたフォークリフトの後輪の懸架装置(サスペンション機構)が知られている。
この懸架装置100は、
図7(A)に示すように、一対のキャスタ輪301を含むキャスタユニット300と、ドライブ輪を含むドライブユニット(いずれも不図示)と、運転席を形成する車体フレーム(本体)700と、車体フレーム700に対してキャスタユニット300とドライブユニットとを上下に揺動可能に懸架するリンク機構400と、キャスタ輪301の振動を吸収するスプリング(弾性部材)600とを備えている。
【0003】
キャスタユニット300は、キャスタ輪301を旋回させる鉛直軸302と、鉛直軸302を軸受するキャスタ輪支持部(タイヤ支持部)303とをさらに含んでいる。
【0004】
車体フレーム700は、運転席の床部および側壁部(いずれも不図示)をそれぞれ形成する水平フレーム部700aおよび鉛直フレーム部700bを含んでいる。
運転席の下方空間(水平フレーム部700aの下方の空間)には、キャスタユニット300(キャスタ輪301)が配置されている。運転席の側方空間(鉛直フレーム部700bの左側方の空間)には、ドライブユニット(ドライブ輪)が配置されている。
【0005】
リンク機構400は、第1リンク(従動リンク部)401と、第2リンク(キャスタリンク部)402と、第3リンク(ドライブリンク部)403とを含んでいる。
【0006】
第1リンク401は、運転席の側方空間に、上下(鉛直)方向に配置されている。
第1リンク401の上端部は、ドライブユニットに取り付けられている。第1リンク401の下端部は、第3リンク403の一端部に取り付けられている。
【0007】
第2リンク402は、運転席の下方空間に、水平フレーム部700aに略平行に、水平(左右)方向にのびるように配置されている。
第2リンク402の一端部は、支軸となる回動ピン(回動固定部)404を介して車体フレーム700に取り付けられている。第2リンク402の他端部は、キャスタ輪支持部303に取り付けられている。すなわち、第2リンク402は、キャスタ輪支持部303とともに回動ピン404を中心に上下方向に揺動(回動)可能になっている。
また、第2リンク402は、キャスタ輪301と接触しない空間領域において一定距離(以下、オフセット距離という)だけ下方向にオフセットされた部分を有している。このオフセットされた部分には、溝部406が設けられている。
【0008】
第3リンク403は、第1リンク401と第2リンク402とを連結している。
第3リンク403の一端部は、第1リンク401の下端部に取り付けられている。第3リンク403の他端部は、第2リンク402と共通の支軸となる回動ピン404を介して車体フレーム700に取り付けられている。
また、第3リンク403は、回動ピン404からさらにキャスタ輪301側(右側)に水平方向にのびた延出部を含んでいる。この延出部の溝部406の上方に位置する部分には、揺動制限部405が設けられている。
【0009】
スプリング600は、第2リンク402と第3リンク403との間に配置され、第2リンク402および第3リンク403のうちの一方を他方から離れさせるように付勢するものである。
スプリング600の下端部は、第2リンク402の溝部406に取り付けられている。スプリング600の上端部は、第3リンク403の揺動制限部405に取り付けられている。
【0010】
この懸架装置100によれば、第2リンク402のオフセットされた部分にスプリング600が配置されているため、第2リンク402がオフセットされていない場合と比べて、第2リンク402の上方の確保すべき空間を減らすことができる。すなわち、第2リンク402のオフセット距離分だけ、車体フレーム700の水平フレーム700aと第2リンク402との間の距離を小さくできるので、運転席の位置を低くできる。
【0011】
しかしながら、この懸架装置100では、次のような問題があった。
ここで、
図7(B)は、
図7(A)の第2リンク402(キャスタ輪支持部303を第2リンク402に一体化させている)、第3リンク403、およびスプリング600の概略側面図である。
より詳細には、
図7(B)は、第2リンク402の他端部側のキャスタ輪支持部303にキャスタ輪301(鉛直軸302)から上向きの力F1’が加わった時に、支軸となる回動ピン404を介して回動する第3リンク403の揺動制限部405からスプリング600に力F2’が作用する状態を示す概略側面図である。なお、スプリング600にはF2’以外の力(例えば、スプリング600の下端部が第2リンク402の溝部406から受ける上向きの力等)も作用するが、ここでは、説明の簡略化のため、力F2’以外の他の力は省略する。
【0012】
図7(B)に示すように、第2リンク402に対する鉛直軸302の取付位置(力点A’)と回動ピン(支軸)404の軸心位置(支点B’)との間の距離をL1’、第3リンク403に対するスプリング600の上端部の取付位置(作用点C’)と回動ピン404の軸心位置(支点B’)との間の距離をL2’とすると、スプリング600に作用する力F2’は、実質的に、F2’=(L1’/L2’)×F1’となる。
ここで、L1’とL2’の関係は、L1’>L2’、L1’/L2’>1である。このため、F1’とF2’の関係は、F2’>F1’となり、すなわち、スプリング600にはF1’よりも大きな力F2’が作用するので、この懸架装置100では、このような大きな力F2’にも耐えることのできる強い(硬い)スプリング600を用いる必要があった。このため、フォークリフトの乗り心地が悪化するという問題があった。
【0013】
また、この懸架装置100では、第2リンク402のオフセットされた部分によって、第2リンク402の上方の確保すべき空間を減らすことができるが、このオフセット距離は、地面と車体フレーム700の水平フレーム部700aとの間の距離より大きくできない。換言すれば、この懸架装置100では、スプリング600の上下方向(伸縮方向)の長さを長くすることができず、弱い(軟らかい)スプリング600を用いることができないので、フォークリフトの乗り心地を向上できない上、運転席の位置の下げ幅が限定されてしまう。
特に、フォークリフトの車重が大きくなる場合、F1’が増加してF2’も増加し、この増加したF2’に耐えるために、スプリング600の長さを長くして、縮む長さを大きくする必要があるが、この懸架装置100では、スプリング600の長さを長くするスペースの余裕はなく、強い(硬い)スプリング600を用いざるを得ない。このため、車重の大きなフォークリフトへの機種展開をする場合に、フォークリフトの乗り心地を向上できない上、運転席の位置の変化への対応が困難になるという問題もあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明の課題は、乗り心地を確保し、かつ、運転席の位置を下げることが可能なフォークリフトの懸架装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明は、
(1)運転席の下方空間に配置されたキャスタ輪を含むキャスタユニットと、前記運転席の側方空間に配置されたドライブ輪を含むドライブユニットと、前記運転席を形成する車体フレームと、前記車体フレームに対して前記キャスタユニットと前記ドライブユニットとを上下に揺動可能に懸架するリンク機構と、前記キャスタ輪の振動を吸収する弾性部材と、を備え、前記リンク機構が、前記ドライブユニットに取り付けられたアンダーリンクと、前記キャスタユニットに取り付けられたキャスタリンクと、を含み、前記アンダーリンクおよび前記キャスタリンクが、互いに共通する支軸を介して上下に揺動可能であり、前記弾性部材が、前記アンダーリンクと前記キャスタリンクとの間に配置されたフォークリフトの懸架装置において、
前記アンダーリンクは、
前記側方空間に配置され、かつ、前記ドライブユニットに取り付けられた一端部と、
前記下方空間に配置された他端部と、
該一端部と該他端部との間で前記支軸を軸受する本体部と、を含み、
前記キャスタリンクは、
前記側方空間の前記アンダーリンクの一端部の上方に配置さ
れた一端部と、
前記下方空間に配置され、かつ、前記キャスタ輪を旋回させる鉛直軸に取り付けられた他端部と、
該一端部と該他端部との間で前記アンダーリンクの本体部とともに前記支軸を軸受する本体部と、
前記一端部側に略鉛直方向に立設された立設部と、を含み、
前記キャスタリンクの前記本体部及び前記立設部は、一体に構成されており、
前記弾性部材は、
前記側方空間に配置され、かつ、前記アンダーリンクの一端部と前記キャスタリンクの前記立設部の上部との間に取り付けられて
おり、
前記アンダーリンクに対する前記弾性部材の取付位置と前記支軸の軸心位置との間の距離L2は、前記キャスタリンクに対する前記鉛直軸の取付位置と前記支軸の軸心位置との間の距離L1以上である
ことを特徴とするフォークリフトの懸架装置としたものである。
【0017】
上記構成(1)において、
(2)前記キャスタリンクの前記本体部及び前記立設部は、鋳物成形品で構成されることが好ましい。
【0019】
上記構成(1)〜(
2)のいずれかにおいて、
(
3)前記アンダーリンクの一端部には、前記キャスタ輪から前記ドライブ輪に向かうにつれて上方に傾斜した上面を有するフランジ部が設けられ、
前記キャスタリンクの前記立設部の上部には、前記アンダーリンクのフランジ部の上面に対向し、前記キャスタ輪から前記ドライブ輪に向かうにつれて上方に傾斜した下面を有するフランジ部が設けられ、
前記弾性部材は、
前記アンダーリンクのフランジ部と前記キャスタリンクのフランジ部との間に取り付けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、キャスタ輪の振動を吸収する弾性部材が、アンダーリンクの一端部とこの上方に配置されたキャスタリンクの立設部の上部との間に取り付けられ、運転席の下方空間ではなく、運転席の側方空間に配置されている。
ところで、キャスタ輪よりも十分大きなドライブ輪等が配置される運転席の側方空間は、キャスタ輪等が配置される運転席の下方空間に比べ、十分広い(上下方向に高さがある)。
したがって、本発明によれば、従来技術と比べ、運転席の側方空間に配置される弾性部材の上下方向(伸縮方向)の長さを十分長くすることができ、例えば、弱い(軟らかい)弾性部材をも用いることができるので、乗り心地を確保し、かつ、運転席の位置を下げることが可能なフォークリフトの懸架装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施例として、車体の後部にドライブ輪とキャスタ輪とが設けられたリーチ式のフォークリフトの後輪の懸架装置について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
このフォークリフト1は、
図1に示すように、車体2と、車体2の前部に設けられた左右一対のストラドルレッグ3と、各ストラドルレッグ3に沿って前後方向に移動可能に車体2に立設されたマスト4と、マスト4に沿って昇降可能に支持されたブラケットの前部に固定された一対のフォーク5と、各ストラドルレッグ3の前部の下位置に設けられた前輪(ロード輪)6と、車体2の右後部に後方に開放されるように設けられた運転席7と、運転席7の前部の上位置に設けられ、マスト4やフォーク5等を動作させるための各種操作レバー8と、運転席7の左の側壁部7bの上位置に設けられた操舵用のステアリングハンドル9と、車体2の内部に設けられた懸架装置10(
図2、
図3および
図6(A)参照)と、車体2の後部の左下位置に設けられ、車体2を移動させるドライブ輪(駆動輪)21と、車体2の後部の右下位置(運転席7の床部7aの下方)に設けられ、車体2の移動方向に回転する一対のキャスタ輪(補助輪)31とを備えている。
【0024】
この懸架装置10は、
図2および
図3に示すように、運転席7を形成する車体フレーム70と、ドライブユニット20と、キャスタユニット30と、車体フレーム70に対してドライブユニット20とキャスタユニット30とを上下に揺動可能に懸架するリンク機構40と、シリンダ装置50と、弾性部材60とを備えている。
車体フレーム70は、
図1および
図3(
図6(A))に示すように、運転席7の床部(床面)7aおよび側壁部(内側面)7bをそれぞれ形成する水平フレーム部70aおよび鉛直フレーム部70bを含んでいる。
【0025】
また、このフォークリフト1は、ドライブユニット20を下向きに付勢する付勢手段80と、走行用モータ91と、ステアリングハンドル9の下部に取り付けられたトルク検出部(図示略)と、トルク検出部に接続された電動式パワーステアリング(EPS)モータ92とを、さらに備えている。
【0026】
ドライブユニット20(ドライブ輪21)は、運転席7の側方空間(鉛直フレーム部70bの左側方の空間)に配置されている。
また、ドライブユニット20は、ドライブ輪21と、ドライブ輪21を旋回可能に支持するギヤケース22と、ドライブサポート23と、旋回ギヤ部24とを含んでいる。
【0027】
キャスタユニット30(キャスタ輪31)は、運転席7の下方空間(水平フレーム部70aの下方の空間)に配置されている。
また、キャスタユニット30は、一対のキャスタ輪31と、各キャスタ輪31を水平方向に旋回させる鉛直軸32とを含んでいる。
【0028】
リンク機構40は、一対のアッパーリンク41と、キャスタリンク42と、アンダーリンク43とを含んでいる。
【0029】
各アッパーリンク41は、ドライブサポート23から車体フレーム70の鉛直フレーム部70bに向かって、略水平(左右)方向に配置されている。
各アッパーリンク41の一端部41aは、固定ピン44を介してドライブユニット20のドライブサポート23に取り付けられている。各アッパーリンク41の他端部41bは、固定ピン45を介して車体フレーム70(鉛直フレーム部70b)に取り付けられている。
【0030】
キャスタリンク42は、アッパーリンク41の下方に配置されている。
キャスタリンク42の一端部42aは、運転席7の側方空間のアンダーリンク43の一端部43aの上方に配置され、かつ、アッパーリンク41の他端部41bの下方に配置されている。キャスタリンク42の他端部42bは、運転席7の下方空間内のキャスタユニット30(鉛直軸32)に取り付けられている。
キャスタリンク42は、回動ピン48を介して車体フレーム70に固定されている。
【0031】
また、キャスタリンク42は、
図4(A)および(B)に示すように、車体フレーム70の水平フレーム部70aの下方に略平行に配置され、左右方向にのびた本体部42cと、本体部42cの左側(一端部42a側)に略鉛直方向に立設された立設部42dと、立設部42dの上部に前後2つに分離して設けられたピン軸受部42eと、各ピン軸受部42eの下部からドライブサポート23側にのびるように設けられたフランジ部42fと、フランジ部42fの下面に垂直方向にのびるように設けられた2つの突出部42gとを含んでいる。
【0032】
キャスタリンク42の本体部42cの中間部には、貫通孔42iが前後方向に設けられている。貫通孔42iには、支軸となる回動ピン48が挿入されている。また、本体部42cの他端部42b寄りの部分には、貫通孔42jが上下方向に設けられている。貫通孔42jには、キャスタ輪31の鉛直軸32が挿入されている。
各ピン軸受部42eには、貫通孔42hが前後方向に設けられている。各貫通孔42hには回動ピン46が挿入されている。
フランジ部42fは、立設部42dの左側面とフランジ部42fの下面とでなす角度が鈍角となるように水平方向より傾斜して、立設部42dに設けられている。
各突出部42gは、フランジ部42fの下面(傾斜面)の前後に配置され、フランジ部42fの下面から斜め下向きに突出している。
【0033】
アンダーリンク43は、アッパーリンク41の下方に配置され、かつ、キャスタリンク42の本体部42cと略水平方向に重なる(但し、キャスタリンク42の立設部42d、ピン軸受部42e、フランジ部42fおよび突出部42gとは略水平方向に重ならない)ように配置されている。
アンダーリンク43の一端部43aは、運転席7の側方空間に配置され、かつ、アッパーリンク41の他端部41bの下方に配置されている。アンダーリンク43の他端部43bは、運転席7の下方空間内のキャスタリンク42の他端部42bよりも一端部42a寄りに(左側に)配置されている。
【0034】
また、アンダーリンク43は、
図5(A)および(B)に示すように、車体フレーム70の水平フレーム部70aの下方に略平行に配置され、左右方向にのびた本体部43cと、本体部43cの左側(一端部43a側)に設けられたフランジ部43fと、フランジ部43fを挟むように前後に本体部43cの左側に設けられた一対のピン軸受部43eとを含んでいる。アンダーリンク43は、一端部43a(フランジ部43fおよびピン軸受部43e)と他端部43bと本体部43cとで形成された開口部を有する略ロ字形状を有している。この開口部には、キャスタリンク42の本体部42cが挿入されている。
【0035】
アンダーリンク43の本体部43cの中間部には、キャスタリンク42の貫通孔42iに対応する(重なる)各貫通孔43iが前後方向に設けられている。各貫通孔43iには、各貫通孔42iと同様に、回動ピン48が挿入されている。また、アンダーリンク43(本体部43c)の他端部43bは、キャスタリンク42の本体部42cの上方をまたぐように配置されているが、キャスタリンク42の他端部42b(貫通孔42j)の上部には配置されていない。すなわち、キャスタリンク42の他端部42bと車体フレーム70の水平フレーム部70aとの間には、如何なる部材も配置されていない。
各ピン軸受部43eには、貫通孔43hが前後方向に設けられている。この貫通孔43hには、固定ピン47が挿入されている。
フランジ部43fの上面(傾斜面)43gは、キャスタリンク42の突出部42g(フランジ部42fの下面)と対向し、突出部42gの突出方向に対して略垂直となるように(フランジ部42fの下面と略平行となるように)、水平方向より傾斜している。また、フランジ部43fには、各貫通孔43hに対応する(重なる)貫通孔43dが前後方向に設けられている。各貫通孔43dには、各貫通孔43hと同様に、固定ピン47が挿入されている。
【0036】
シリンダ装置50は、開閉バルブ等の開閉部(図示略)の開閉によりロック状態と緩衝状態になることができる任意のロックシリンダからなる。また、シリンダ装置50は、車体フレーム70(鉛直フレーム部70b)に取り付けられたアッパーリンク41とキャスタリンク42との間に配置されている。なお、シリンダ装置50は、アッパーリンク41が取り付けられた車体フレーム70(鉛直フレーム部70b)とキャスタリンク42との間に配置されていてもよい。
シリンダ装置50の上端部は、
図2および
図3に示すように、各アッパーリンク41の間の固定ピン45を介してアッパーリンク41の他端部41bに取り付けられている。なお、シリンダ装置50の上端部は、固定ピン45とは異なる別のピンを介してアッパーリンク41の他端部41b(車体フレーム70の鉛直フレーム部70b)に取り付けられていてもよい。シリンダ装置50の下端部は、2つのピン軸受部42eの間の回動ピン46を介してキャスタリンク42の一端部42aに取り付けられている。
【0037】
弾性部材60は、キャスタリンク42とアンダーリンク43との間に配置されている。また、弾性部材60は、本実施例では、2つのキャスタスプリング60からなる。なお、キャスタスプリング60は、1つまたは3つ以上使用されてもよい。
各キャスタスプリング60の上端部は、キャスタリンク42の各一端部42a(より詳細には、フランジ部42fの下面の各突出部42g)に取り付けられている。各キャスタスプリング60の下端部は、アンダーリンク43の一端部43a(より詳細には、フランジ部43fの上面43g)に取り付けられている。
キャスタスプリング60は、キャスタリンク42(フランジ部42f)およびアンダーリンク43(フランジ部43f)のうちの一方を他方から離れさせるように(より詳細には、回動ピン48を支軸として回動するキャスタリンク42がキャスタ輪31を地面に押し付けるように)斜め方向に付勢するものである。このため、キャスタリンク42は、キャスタスプリング60を介して、アンダーリンク43によって上下に揺動可能に支持される。
また、キャスタスプリング60は、2つの突出部42gによって位置決めされているので、キャスタ輪31の様々な方向の振動を安定的に吸収できる。
【0038】
付勢手段80は、ドライブユニット20のドライブサポート23を下向きに(ドライブ輪21を地面に押し付けるように)付勢するものであり、本実施例ではスプリングからなる。付勢手段80は、スプリングに限定されるものではなく、シリンダ等の他の付勢可能なものからなっていてもよい。
【0039】
走行用モータ91は、ドライブサポート23に支持され、旋回ギヤ部24を介してドライブ輪21を駆動させるものである。
トルク検出部は、ステアリングハンドル9に加えられた操舵トルクを検出してトルク信号を出力するものである。
EPSモータ92は、ドライブサポート23に支持され、トルク検出部から出力されたトルク信号に応じて回転駆動して、操舵トルクの軽減を行うものである。
【0040】
次に、この懸架装置10のシリンダ装置50の動作および効果について説明する。
【0041】
フォークリフト1が所定旋回加速度以上で左急旋回する時、または、フォーク5の高さが所定高さ以上にある時(フォーク5が高揚高状態である時)には、車体2に設けられた図示しないコントローラ(フォークリフト1の旋回加速度を検出する任意の加速度センサやフォーク5の高さを検出する任意の高さ検出センサ等)からの信号によって、シリンダ装置50がロック状態になる。なお、フォークリフト1の左急旋回とは、前進するフォークリフト1が左急旋回する場合だけでなく、後進するフォークリフト1が右急旋回する場合をも含むものとする。
【0042】
したがって、この懸架装置10によれば、ロック状態のシリンダ装置50によって、車体フレーム70に対するキャスタリンク42の上下の揺動が防止されるので、キャスタスプリング60がたわむことに起因する左側の前輪(ロード輪)6の浮きが防止される。特に、フォークリフト1の左急旋回時のような、車体2の左側の前輪が浮くことによってオペレータに大きな危険が生じる時に、シリンダ装置50がロック状態になって左側の前輪の浮きを防止するので、オペレータの不安感が払拭され、フォークリフト1での安全な荷役作業が可能となる。また、高揚高時にはフォークリフト1が横方向に倒れにくくなるため、安全性をより確保することができる。
【0043】
なお、フォークリフト1が所定旋回加速度以上で左旋回する時とは、例えば、車体2に設けられた加速度センサ(図示略)が所定左旋回加速度以上の加速度を検出した時、ステアリングハンドル9の急な左旋回操作があった時等をいう。
また、フォーク5の高さが所定高さ以上にある時とは、例えば、車体2に設けられたフォーク5の高さ検出センサが所定高さ以上の高さ(フォークリフト1が横方向に倒れる危険性のある高さ)を検出した時をいう。
【0044】
また、この懸架装置10では、フォークリフト1が所定旋回加速度未満で左旋回する時(左急旋回しない時)、または、フォーク5の高さが所定高さ未満にある時(高揚高状態でない時)に、コントローラ(加速度センサや高さ検出センサ等)からの信号によって、シリンダ装置50が緩衝状態になる。
【0045】
したがって、この懸架装置10によれば、緩衝状態のシリンダ装置50によって、車体フレーム70に対するキャスタリンク42の上下の揺動が許容されるので、フォークリフト1の乗り心地を確保できる。
【0046】
さらに、この懸架装置10では、シリンダ装置50は、車体フレーム70(鉛直フレーム部70b)に取り付けられたアッパーリンク41の他端部41bと、このアッパーリンク41の下方に配置されてアンダーリンク43により上下に揺動可能に支持されたキャスタリンク42の一端部42aとの間、または、アッパーリンク41の他端部41bが取り付けられた車体フレーム70(鉛直フレーム部70b)と、キャスタリンク42の一端部42aとの間に設けられている。換言すれば、シリンダ装置50は、車体フレーム70の鉛直フレーム部70bとドライブサポート23との間の空間内に配置されており、キャスタユニット30の取り付けられたキャスタリンク42の他端部42bの上部に設けられていない。
したがって、この懸架装置10によれば、キャスタリンク42の他端部42bの上部に余分な部材が一切無いので、他端部42bの上部と車体フレーム70(水平フレーム部70a)によって形成される運転席7(床部7a)との間の距離を十分小さくでき、運転席7の位置を下げることが可能となる。
【0047】
また、
図6(B)を参照して、この懸架装置10の弾性部材(キャスタスプリング)60の動作および効果について説明する。
【0048】
ここで、
図6(B)は、
図6(A)のキャスタリンク42、アンダーリンク43およびキャスタスプリング60の概略側面図である。
より詳細には、
図6(B)は、キャスタリンク42の他端部42bにキャスタ輪31(鉛直軸32)から上向きの力F1が加わった時に、支軸となる回動ピン48を介して回動するアンダーリンク43のフランジ部43fからキャスタスプリング60に力F2が作用する状態を示す概略側面図である。なお、キャスタスプリング60にはF2以外の力(例えば、キャスタスプリング60の上端部がフランジ部42fから受ける下向きの力等)も作用するが、ここでは、説明の簡略化のため、力F2以外の他の力は省略する。
【0049】
図6(B)に示すように、キャスタリンク42に対する鉛直軸32の取付位置(力点A)と回動ピン(支軸)48の軸心位置(支点B)との間の距離をL1、アンダーリンク43に対するキャスタスプリング60の下端部の取付位置(作用点C)と回動ピン48の軸心位置(支点B)との間の距離をL2とすると、キャスタスプリング60に作用する力F2は、実質的に、F2=(L1/L2)×F1となる。
【0050】
ここで、キャスタリンク42の本体部42cの中間部には、支軸となる回動ピン48の挿入された貫通孔42iが設けられているため、L1とL2の関係は、L1≒L2(L1とL2は実質的に同じ)、L1/L2≒1である。このため、F1とF2の関係はF2≒F1となり、すなわち、キャスタスプリング60にはF1と同等の力F2が作用する。
【0051】
したがって、この懸架装置10によれば、F2>F1(上記のF2’>F1’)となる従来技術と比べて、キャスタスプリング60に作用する力F2を低減できるため、強い(硬い)キャスタスプリング60を用いる必要はなく、フォークリフト1の乗り心地を確保できる。
なお、本実施例では、L1とL2の関係は、L1≒L2であるが、L2≧L1となっていることが好ましい。この場合、F2=(L1/L2)×F1≦F1となって、F2>F1(F2’>F1’)となる従来技術と比べて、キャスタスプリング60に作用する力F2がより低減されるので、強い(硬い)キャスタスプリング60を用いる必要がなく、フォークリフト1の乗り心地を十分確保できる。
【0052】
また、この懸架装置10では、キャスタ輪31の振動を吸収するキャスタスプリング60が、アンダーリンク43の一端部43aとこの上方に配置されたキャスタリンク42の一端部42aとの間に取り付けられ、運転席7の下方空間ではなく、運転席7の側方空間に配置されている。
【0053】
ところで、キャスタ輪31よりも十分大きなドライブ輪21等が配置される運転席7の側方空間は、キャスタ輪31等が配置される運転席7の下方空間に比べ、十分広い(上下方向に高さがある)。
【0054】
したがって、この懸架装置10では、従来技術と比べ、運転席7の側方空間に配置されるキャスタスプリング60の上下方向(伸縮方向)の長さを十分長くすることができ、例えば、弱い(軟らかい)キャスタスプリング60をも用いることができるので、フォークリフト1の乗り心地を確保し、かつ、運転席7の位置を下げることが可能となる。すなわち、運転席7の位置の下げ幅は何ら限定されることはない。
特に、フォークリフトの車重が大きくなる場合、F1が増加してF2も増加し、この増加したF2に耐える必要があるが、この懸架装置10では、キャスタスプリング60の長さを長くするスペースの余裕が十分あるため、キャスタスプリング60を強い(硬い)ものに変更する必要がない。このため、車重の大きなフォークリフト1への機種展開による運転席7の位置の変化への対応も容易になる。
【0055】
キャスタリンク42は、その一端部42a側に、略鉛直方向に立設された立設部42dを備える。そして、キャスタスプリング60は、アンダーリンク43の一端部43aとキャスタリンク42の立設部42dの上部との間に取り付けられる。そのため、キャスタスプリング60の上下方向の長さを十分に長くすることができるので、柔らかいキャスタスプリング60を用いることができる。
【0056】
そして、キャスタリンク42の本体部42cと立設部42dとが、一体に構成されているので、立設部42dを介して、キャスタリンク42の揺動を確実にキャスタスプリング60に伝達できる。
さらに、キャスタリンク42の本体部42cと立設部42dとが、鋳物成形品で構成される場合、簡単に成形でき、生産性に優れる。また、複数のフレーム部材を溶接等で枠状に組むものに比べて、キャスタリンク42の本体部42cと立設部42dとは、高い強度を確保できる。
【0057】
さらに、この懸架装置10では、キャスタスプリング60は、キャスタ輪31からドライブ輪21に向かうにつれて上方に傾斜した上面43gおよび下面をそれぞれ有するアンダーリンク43のフランジ部43fおよびキャスタリンク42のフランジ部42fの間に取り付けられている。
【0058】
したがって、この懸架装置10によれば、キャスタスプリング60の伸縮方向とアンダーリンク43(キャスタリンク42)の回動(揺動)方向とが、直交関係ではなく、互いに同じ方向にそろう関係となっているので、キャスタスプリング60は、伸縮方向以外の力(例えば伸縮方向に直交する方向の力等)の影響を受けにくくなり、キャスタ輪31の振動を効率よく吸収することができる。
【0059】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明の構成はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0060】
例えば、リンク機構40のアッパーリンク41、キャスタリンク42およびアンダーリンク43の形状、大きさ等は、上記実施例に限定されるものではなく、適宜変更されてもよい。
【0061】
また、シリンダ装置50は、開閉部(開閉バルブ等)の開閉によりロック状態と緩衝状態になることができるものであれば、どのような構成のものでもよい。
【0062】
また、弾性部材60は、キャスタスプリング60に限定されるものではなく、ゴム部材等の他の弾性変形可能な部材からなっていてもよい。
【解決手段】懸架装置10は、共通の支軸48を介して上下に揺動可能なキャスタリンク42およびアンダーリンク43を含むリンク機構40と、キャスタ輪31の振動を吸収する弾性部材60とを備える。アンダーリンク43は、ドライブユニット20に取り付けられた一端部と、運転席の下方空間内の他端部43bと、支軸48を軸受する本体部43cとを含む。キャスタリンク42は、側方空間内のアンダーリンクの一端部の上方に配置されて車体フレームに取り付けられた一端部と、下方空間内のキャスタ輪31を旋回させる鉛直軸32に取り付けられた他端部42bと、支軸を軸受する本体部42cと、一端部42a側に略鉛直方向に立設された立設部42dを含む。弾性部材60は、側方空間内のアンダーリンク43の一端部とキャスタリンク42の一端部との間に取り付けられている。