特許第5850531号(P5850531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5850531工具位置検出方法、締結作業管理方法、及び、締結作業管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5850531
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】工具位置検出方法、締結作業管理方法、及び、締結作業管理システム
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20160114BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20160114BHJP
【FI】
   B23P19/06 M
   G01B11/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-18737(P2012-18737)
(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公開番号】特開2013-154454(P2013-154454A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2015年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】武田 範彦
【審査官】 谷治 和文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−121132(JP,A)
【文献】 特開昭64−010319(JP,A)
【文献】 特開2002−267740(JP,A)
【文献】 実開昭64−007340(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0178713(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/06
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの組付面に対して複数の締結部材を組み付けるにあたり、締結工具の位置を検出するための方法であって、
前記組付面と略平行な測定平面を設定し、2個の距離センサを用いて、前記測定平面上における各距離センサと前記締結工具との距離を測定する距離測定工程と、前記2個の距離センサで測定した距離に基づいて前記測定平面上における前記締結工具の位置を算出する工具位置算出工程とを有する工具位置検出方法。
【請求項2】
ワークの組付面に対して複数の締結部材を締結する締結作業を管理するための方法であって、
前記組付面と略並行な測定平面を設定し、2個の距離センサを用いて、前記測定平面上における各距離センサと締結工具との距離を測定する距離測定工程と、前記2個の距離センサで測定した距離に基づいて前記測定平面上における前記締結工具の位置を算出する工具位置算出工程と、算出した前記締結工具の位置と予め記憶した組付位置とを比較することにより、前記締結工具の位置の良否を判別する比較判別工程とを有する締結作業管理方法。
【請求項3】
前記距離センサを3個以上配置し、その中から前記2個の距離センサを選択して前記距離測定工程を行う請求項2記載の締結作業管理方法。
【請求項4】
ワークの組付面に対して複数の締結部材を締結する締結作業を管理するためのシステムであって、
前記組付面と略並行な測定平面上における前記締結工具との距離を測定する複数の距離センサと、前記複数の距離センサのうちの2個の距離センサで測定した距離に基づいて、前記測定平面上における前記締結工具の位置を算出する工具位置算出部と、前記組付面に対する前記締結部材の組付位置を予め記憶している記憶部と、前記工具位置算出部で算出した前記締結工具の位置と前記記憶部に記憶された組付位置とを比較し、前記締結工具の位置の良否を判別する比較判別部とを備えた締結作業管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具位置検出方法、締結作業管理方法、及び、締結作業管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
作業者が締結工具を用いて手作業により部品の組み付けを行う場合、ボルト等の締結部材の締め忘れや締め付け不足等の不具合が生じることがある。このような不具合を目視で確認することは、作業者の負担となる上、確認ミスが生じる恐れがある。特に、複数のボルトを仮締めした後、これらを増し締めして締結を完了する場合、増し締めを忘れていても、目視で判別することはできない。このため、ボルト等が正しく組み付けられているか否かを管理する何らかの対策が必要となる。
【0003】
例えば、締結工具のトルクを検知し、トルクが所定以上となったら締結が正常に完了したと判定することが考えられる。この場合、複数の組付箇所にボルトを組み付けた後、組付箇所の数と締結完了と判定した回数とが一致すれば、全ての組付箇所にボルトが正しく組み付けられたとみなすことができる。しかし、既にボルトが締結された組付箇所に対して、誤って再び締結を行った場合でも、締結工具のトルクは所定以上となって「締結完了」としてカウントしてしまう。この場合、締結完了と判定した回数が組付箇所の数と一致しても、ボルトが締結されていない組付箇所が生じることになる。このように、締結完了と判定した回数を数えるだけでは、全ての組付箇所の締結状態を管理することができない恐れがある。
【0004】
そこで、締結工具の位置を検出しながらトルクを検知し、締結工具の位置及びトルクの双方を監視すれば、上記のような不具合を防止することができる。
【0005】
締結工具の位置を検出する方法としては、例えば、ワークに対してボルトを組み付けている様子をカメラで撮影し、この撮影画像を処理して締結工具の位置を特定する方法が考えられる。しかし、カメラの撮影画像は外乱に影響されやすいため、締結工具の位置を正確に特定することができない恐れがある。また、カメラと締結工具との間には遮蔽されていない空間が必要であるが、かかる空間を組立作業スペースに確保することは難しいことが多い。
【0006】
一方、特許文献1には、締結工具に超音波発信機を設けると共に、この超音波発信機から発信された超音波を受信する3つの受信アンテナを設けることで、締結工具の位置を検出する方法が示されている。具体的には、超音波発信機から発信された超音波を各受信アンテナで受信することで締結工具と各受信アンテナとの距離を測定し、この距離に基づいて三角測距により締結工具の3次元座標を算出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−121132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1の方法では、3つの受信アンテナで測定した距離データを処理して3次元座標を算出する必要があるため、データ処理が複雑となって算出に時間がかかる。また、各受信アンテナは、全方位からの信号(超音波)を受信可能である必要があるため、高価となる。さらに、締結工具の3次元座標を得るためには、3つの受信アンテナをワークの組付面に対して3次元的に配置する必要があるため、少なくとも1つの受信アンテナを組付面から略垂直方向(同文献図1のZ軸方向)に離反させた位置に配置する必要がある。受信アンテナと締結工具との間には遮蔽されていない空間が必要であるが、受信アンテナを組付面から略垂直方向に離反させることで大きな空間が必要となるため、上記のカメラによる方法と同様に、組付作業スペースへの適用が困難となる。
【0009】
以上のような事情から、本発明の解決すべき課題は、簡単なデータ処理により、安価な部品を用いて、大きな空間を必要とすることなく締結工具の位置を特定し、これにより締結部材が正しい位置に組み付けられているか否かを管理することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するためになされた本発明は、ワークの組付面に対して複数の締結部材を組み付けるにあたり、締結工具の位置を検出するための方法であって、組付面と略並行な測定平面を設定し、2個の距離センサを用いて測定平面上における各距離センサと締結工具との距離を測定する距離測定工程と、2個の距離センサで測定した距離に基づいて測定平面上における締結工具の位置を算出する工具位置算出工程とを有するものである。
【0011】
締結工具の位置を検出するに際し、理想的には、上記特許文献1に示されているように3次元的な位置を検出することが望ましい。しかし、ワークの組付面上における締結工具の位置を検出する場合には、ワークの組付面と略垂直な方向における締結工具の位置はそれほど重要ではない。本発明は、この点に着目してなされたものであり、測定平面をワークの組付面と略並行に設け、2個の距離センサを用いて測定平面上における締結工具の位置を特定するものである。これにより、3個の距離センサの測定データを処理する場合と比べてデータ処理が簡単になる。また、各距離センサは、全方位において距離測定可能である必要はなく、測定平面上における締結工具との距離を測定可能であれば足りるため、センサのコストを低減できる。さらに、組付面と略並行な測定平面上に2個の距離センサを配置することで、距離センサを組付面から離隔した位置に配置する必要がないため、距離センサを設けるスペースを縮小できる。
【0012】
上記の工具位置検出方法を、ワークの組付面に対して複数の締結部材を締結する締結作業を管理するための方法に適用すれば、ワークの組付面と略並行な測定平面を設定し、2個の距離センサを用いて測定平面上における各距離センサと締結工具との距離を測定する距離測定工程と、2個の距離センサで測定した距離に基づいて測定平面上における締結工具の位置を算出する工具位置算出工程と、工具位置算出工程で算出した締結工具の位置と予め記憶した組付位置とを比較することにより、締結工具の位置の良否を判別する比較判別工程とを有する締結作業管理方法を得ることができる。
【0013】
このように、締結部材を組み付けるべき組付位置を予め記憶し、算出した締結工具の位置(実際の位置)と予め記憶した組付位置(あるべき位置)とを比較することにより、締結が正しく行われているか否かを判別することができる。
【0014】
上記の締結作業管理方法は、例えば、測定平面上に距離センサを3個以上配置し、その中から2個の距離センサを選択して距離測定工程を行うことができる。これにより、3個以上の距離センサの中から、条件の良い距離センサ、例えば締結工具との間に遮蔽物のない距離センサを選択して使用することができる。
【0015】
上記の締結作業管理方法において、締結工具を組付位置に配置した後、締結を開始する前に、距離測定工程、工具位置算出工程、及び、比較判別工程を行い、締結工具が所定の位置であることを確認すれば、締結開始の可否を判断できる。
【0016】
また、上記の締結作業管理方法において、締結工具によるトルクが所定値に達したときに、距離測定工程、工具位置算出工程、及び、比較判別工程を行うようにすれば、その組付位置の良否を判別できる。この場合、例えば、比較判別工程により締結位置が正しいと判別された回数が、締結部材の組付位置の数と等しくなったら、全ての組付位置に締結部材が正常に取り付けられたと判別することができる。
【0017】
また、上記の工具位置検出方法を、ワークの組付面に対して複数の締結部材を締結する締結作業を管理するためのシステムに適用すれば、組付面と略並行な測定平面上における締結工具との距離を測定する複数の距離センサと、複数の距離センサのうちの2個の距離センサで測定した距離に基づいて、測定平面上における締結工具の位置を算出する工具位置算出部と、組付面に対する締結部材の組付位置を予め記憶している記憶部と、工具位置算出部で算出した締結工具の位置と記憶部に記憶された組付位置とを比較し、締結工具の位置の良否を判別する比較判別部とを備えた締結作業管理システムを得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、簡単なデータ処理により、安価な部品を用い、大きな空間を必要とすることなく、締結工具の位置を特定し、これにより締結部材が正しい位置に組み付けられているか否かを管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る締結作業管理システムの平面図である。
図2】上記締結作業管理システムの側面図である。
図3】上記締結作業管理システムのブロック図である。
図4】上記締結作業管理システムによる締結作業管理方法のフロー図である。
図5】距離センサ及びソケットの平面図である。
図6】他の実施形態に係る締結作業管理方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
本発明の一実施形態に係る締結作業管理システムは、図1に示すように、ワークWの組付面W1に対して締結部材としてのボルト(図示省略)を締結工具としてのトルクレンチ1で組み付けるにあたり、ボルトが全ての組付位置(ボルト穴A1〜A6)に正しく組み付けられていることを管理するものである。具体的には、複数の距離センサ、図示例では2個の距離センサ2,3と、距離センサ2,3及びトルクレンチ1と接続されたデータ処理部5(図3参照)とを備える。
【0022】
トルクレンチ1は、図2に示すように、ソケット1aと、ソケット1aの外周に設けられた反射部1bと、トルクスイッチ1cとを備える。トルクレンチ1は、作業者が手で持ち運びできるものであり、スイッチ(図示省略)を操作することでソケット1aが回転駆動される。ソケット1aのトルクが所定値に達したら、ソケット1aの回転が停止されると共に、トルクスイッチ1cがONとなってその信号がデータ処理部5に伝達される。
【0023】
距離センサ2,3は、図2に示すように、ワークWの組付面W1と略並行な測定平面P上に配置される。尚、以下の説明では、図1に示す測定平面P上で距離センサ2,3を通る方向をX軸方向、測定平面P上でX軸と直交する方向をY軸方向、測定平面Pと直交する方向をZ軸方向(図2の上下方向)とする。また、本実施形態では、測定平面P上における座標を(X,Y)で表し、距離センサ2の座標を(0,0)、距離センサ3の座標を(α,0)とする。
【0024】
本実施形態の距離センサ2,3は、測定対象物に対して測定光を照射する照射部(図示省略)と、測定対称物で反射した光を受光する受光部(図示省略)とを備え、受光部で受光した反射光の強度に基づいて測定対象物までの距離を測定するものである。本実施形態では、図2に示すように、トルクレンチ1のソケット1aの外周面に反射部1bが設けられ、距離センサ2,3から発した測定光を反射部1bで反射させる。反射部1bは、ソケット1aを各ボルト穴A1〜A6に配置したときに常に測定平面P上に配されるように、軸方向位置及び軸方向寸法が設定される。尚、図示例では、ワークWの組付面W1を平坦面としているが、組付面W1に凹凸があり、ボルト穴A1〜A6の位置によってソケット1aのZ軸方向位置が変動する場合でも、反射部1bが常に測定平面P上に配されるように、反射部1bの軸方向位置及び軸方向寸法が設定される。
【0025】
データ処理部5は例えばコンピュータであり、図3に示すように、距離センサ2,3及びトルクレンチ1に接続された工具位置算出部6と、記憶部7と、比較判別部8と、カウンター9とを備える。各部位の具体的な機能については、後述する。
【0026】
次に、本発明の一実施形態に係る工具位置検出方法を利用した締結作業管理方法を説明する。この締結作業管理方法は、図4に示す各ステップS0〜S5を順に経て行われる。以下、各ステップを順に説明する。
【0027】
まず、準備工程(ステップS0)として、ワークWの組付面W1と略並行な測定平面P上に、距離センサ2,3を設置する(図2参照)。このとき、何れのボルト穴A1〜A6に対して組付を行う場合でも、ソケット1aに設けた反射部1bが常に測定平面P上に配されるように、測定平面Pを設定する。そして、データ処理部5の記憶部7に、各ボルト穴A1〜A6の座標(X1,Y1)〜(X6,Y6)と、組み付ける順番とを記憶させる。
【0028】
そして、ワークWの組付面W1に設けられた複数のボルト穴A1〜A6のうち、最初に組み付けを行うボルト穴A1にボルトを配置し、トルクレンチ1のソケット1aをボルトに嵌合させる(ステップS1)。そして、ソケット1aを回転駆動してボルトの締結を開始する(ステップS2)。そして、トルクレンチ1のソケット1aの回転トルクが所定値に達したら、トルクスイッチ1cがONとなり、締結が完了する(ステップS3)。そして、トルクスイッチ1cのON信号がデータ処理部5の工具位置算出部6(図3参照)に伝達される。
【0029】
工具位置算出部6がトルクスイッチ1cのON信号を受信したら、距離センサ2,3によりトルクレンチ1との距離を測定する(ステップS4)。具体的には、各距離センサ2,3の照射部から測定光を照射すると共に、ソケット1aの反射部1bで反射した反射光を受光部で受光し、この反射光の強度に基づいて距離を測定する。このとき、図5に示すように、各距離センサ2,3で測定されるのは反射部1bまでの距離β’,γ’であるため、これに反射部1bの厚さTとソケット1aの半径Rを加えることで、各距離センサ2,3とソケット1aの軸心との正確な距離β及びγが求められる(β=β’+T+R、γ=γ’+T+R)。
【0030】
そして、工具位置算出部6で、距離センサ2,3で測定された距離に基づいてトルクレンチ1の座標を算出する。具体的には、図1に示すように、距離センサ2(0,0)、距離センサ3の座標(α,0)、及び、各距離センサ2,3とソケット1aとの距離β,γから、三平方の定理によりトルクレンチ1の位置、すなわちソケット1aの軸心の座標(x,y)を算出する(ステップS5)。
【0031】
その後、比較判別部8で、工具位置算出部6で算出されたトルクレンチ1のソケット1aの軸心の座標(x,y)と、記憶部7に予め記憶されているボルト穴A1の軸心の座標(X1,Y1)とを比較し、トルクレンチ1の位置が正しいか否かを判別する(ステップ6)。具体的には、トルクレンチ1の座標(x,y)とボルト穴A1の座標(X1,Y1)とが一致したら「締結完了」と判別し、その信号がカウンター9に伝達されて締結完了回数としてカウントする。
【0032】
一方、トルクレンチ1の座標(x,y)とボルト穴A1の座標(X1,Y1)が一致しなければ、「締結完了」と判別せず、カウンター9ではカウントされない。従って、既に組み付けが完了したボルト穴に対して再び組み付けを行ったり、順序を間違えて組み付けを行ったりした場合には、「締結完了」のカウントは増えない。尚、ボルトを締め付けるトルクが不足して所定値に達しない場合は、トルクスイッチ1cがOFFのままとなり、工具位置算出部6にON信号が伝達されないため、距離測定工程(ステップS4)自体が行われない。従って、位置算出工程(ステップS5)及び比較判別工程(ステップS6)も行われないため、もちろんカウンター9ではカウントされない。以上のように、ボルトの組み付けが正常に行われない場合は、「締結完了」のカウントは増えない。
【0033】
その後、ボルト穴A2〜A6に対して上記のステップS1〜S6と同様の手順でボルトを組み付ける。そして、全てのボルト穴A1〜A6に対する組付作業が終了したときに、カウンター9でカウントされた締結完了回数がボルト穴の数(図示例では6個)と同じであれば、全てのボルト穴にボルトが正常に締結されたとみなされ、ワークWが次工程に搬送される。一方、カウンター9でカウントされた締結完了回数がボルト穴の数に達していない場合は、次工程に搬送できないようにすることで、締結不良のワークが次工程に流れてしまう事態を防止することができる。
【0034】
以上のように、組付作業中のトルクレンチ1の座標及びトルクを監視することにより、締結状態の良否判別の信頼性を高めることができる。また、トルクレンチ1の位置を3次元的に検出するのではなく、測定平面P上において2次元的に検出することで、データ処理が簡略化されると共に、各距離センサ2,3のコストを低減することができる。また、トルクレンチ1のZ軸方向の位置を検出しないことで、距離センサ2,3を組付面W1からZ軸方向に離反させる必要がないため、距離センサ2,3を配置するために要する空間を縮小することができる。
【0035】
本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記の実施形態では、測定平面P上に2個の距離センサ2,3を設けた場合を示したが、測定平面P上に3個以上の距離センサを配置し、そのうちの2個の距離センサを選択して距離測定工程(ステップS4)を行うようにしてもよい。この場合、何れかの距離センサとトルクレンチ1の反射部1bとの間に遮蔽物がある場合でも、その他の距離センサを選択して距離を測定することができる。
【0036】
また、上記の実施形態では、締め付けトルクが所定値に達して締結が完了した後、距離測定工程(ステップS4)、工具位置算出工程(ステップS5)、及び、比較判別工程(ステップS6)を行う場合を示したが、これに限られない。例えば、図6に示すように、トルクレンチ1を組付位置に配置した(ステップS1)後、ソケット1aを回転駆動してボルトの締結を開始する(ステップS2)前に、距離測定工程S4、工具位置算出工程S5、及び、比較判別工程S6を行ってもよい。これにより、当該組付位置での締結作業の開始の可否を判断することができる。具体的には、例えば、比較判別工程S6で「工具位置正常」と判別されたらボルト締結を開始し、比較判別工程S6で「工具位置異常」と判別されたら、トルクレンチ1をロックしてボルト締結を開始できないようにすることにより、誤った位置で組み付けが開始されることを未然に防止することができる。
【0037】
また、距離センサ2,3が、各距離センサ2,3とトルクレンチ1との距離だけでなく、各距離センサ2,3とトルクレンチ1とを結ぶ直線の基準方向(例えばX軸方向)に対する角度η,θ(図1参照)を測定可能なものとすれば、トルクレンチ1の座標(x,y)の信頼性を高めることができる。例えば、(a)距離β,γから算出したトルクレンチ1の座標、(b)距離βと角度ηとから算出したトルクレンチ1の座標、(c)距離γと角度θとから算出したトルクレンチ1の座標を求め、(a)の座標が(b)及び(c)の座標と一致するか否かを確認することで、信頼性の高いトルクレンチ1の座標が得られる。
【符号の説明】
【0038】
1 トルクレンチ
1a ソケット
1b 反射部
1c トルクスイッチ
2,3 距離センサ
5 データ処理部
6 工具位置算出部
7 記憶部
8 比較判別部
9 カウンター
1〜A6 ボルト穴
P 測定平面
W ワーク
W1 組付面
図1
図2
図3
図4
図5
図6