(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5850541
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】有機発光ダイオードデバイス
(51)【国際特許分類】
H05B 33/02 20060101AFI20160114BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20160114BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20160114BHJP
【FI】
H05B33/02
H05B33/14 B
H05B33/22 B
H05B33/22 D
H05B33/12 B
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-528665(P2013-528665)
(86)(22)【出願日】2011年9月14日
(65)【公表番号】特表2013-543214(P2013-543214A)
(43)【公表日】2013年11月28日
(86)【国際出願番号】EP2011065971
(87)【国際公開番号】WO2012035083
(87)【国際公開日】20120322
【審査請求日】2014年9月12日
(31)【優先権主張番号】1015417.7
(32)【優先日】2010年9月15日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512078683
【氏名又は名称】ロモックス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LOMOX LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】コーシュ,ジーン カール
(72)【発明者】
【氏名】コプナー,ナイジェル
【審査官】
中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−514145(JP,A)
【文献】
特開2002−008868(JP,A)
【文献】
特開2000−284134(JP,A)
【文献】
特開2005−302641(JP,A)
【文献】
特開2005−174605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/02
H05B 33/12
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機発光層または有機電荷輸送層の少なくとも1つと、前記発光層に関連したブラッグ格子を提供する構造とを備える非干渉性有機発光デバイスにおいて、前記発光層または電荷輸送層は、等方性材料と液晶性材料の交互のゾーンを備え、前記液晶性材料の分子コアが前記発光デバイスの平面に均一かつこれらが含まれるゾーンの境界と平行に整列され、前記液晶材料は、均一に整列した場合に、二色比が2:1を越える二色性の性質を呈し、前記デバイスの平面での光の放出が、発光性材料の二色性と、等方性と液晶性の交互のゾーンを媒体とした光伝播モードの抑制との組み合わせによって抑えられる非干渉性有機発光デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記構造が、前記発光層に関連した1−Dブラッグ格子を提供することを特徴とする非干渉性発光デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記等方性ゾーンまたは前記液晶性ゾーンの少なくとも1つが、架橋ポリマーであることを特徴とするデバイス。
【請求項4】
請求項1に記載のデバイスにおいて、等方性材料および液晶性材料からなる前記交互のゾーンが、少なくとも20ゾーンに相当する距離に亘って均一な周期の交互の配列を有することを特徴とするデバイス。
【請求項5】
請求項4に記載のデバイスにおいて、λが前記発光デバイスの前記発光材料の最大発光強度の前記波長である場合に、前記均一な周期の交互の配列が、kλ/2の±20%以内であることを特徴とするデバイス。
【請求項6】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記発光層または前記電荷輸送層が、等方性材料の区域に囲まれた液晶性材料の区域の規則的2次元マトリクスアレイを備えることを特徴とする非干渉性デバイス。
【請求項7】
請求項6に記載のデバイスにおいて、液晶性材料の前記区域が、正方形または長方形の形状であることを特徴とするデバイス。
【請求項8】
請求項6に記載のデバイスにおいて、液晶性材料の前記区域が、菱形または平行四辺形の形状であることを特徴とするデバイス。
【請求項9】
請求項6に記載のデバイスにおいて、液晶性材料の前記区域が、円形または楕円形の形状であることを特徴とするデバイス。
【請求項10】
請求項6に記載のデバイスにおいて、前記2次元マトリクスが正方形マトリクスであることを特徴とするデバイス。
【請求項11】
請求項6に記載のデバイスにおいて、前記2次元マトリクスが、八角形マトリクスであることを特徴とするデバイス。
【請求項12】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記発光層または電荷輸送層が、等方性材料に囲まれ、かつ等方性材料中に点在する液晶性材料のゾーンの規則的3次元マトリクスアレイを備えることを特徴とする非干渉性発光デバイス。
【請求項13】
請求項12に記載のデバイスにおいて、前記ゾーンが、正六面体、直方体、平行六面体、円柱体、楕円柱体、球体、または楕円体の形をとることを特徴とする発光デバイス。
【請求項14】
請求項12に記載のデバイスにおいて、前記マトリクスアレイが、単純立方体、面芯立方体、または稠密六方体の何れかであるマトリクス格子を形成することを特徴とするデバイス。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載のデバイスの製造方法において、有機液晶性発光体材料を層として蒸着するステップと、前記液晶分子の前記層内の棒状分子コアを均一に整列するステップと、前記整列された層の選択された領域を、前記材料の液晶相から等方相への相転移温度より低温で、前記選択された曝露領域の前記位相を設定するために位相設定条件に曝露するステップと、位相設定領域を備える前記層を、前記材料の液晶相から等方相への相転移温度より高温で位相設定条件に第2曝露するまで加熱するステップとを含むことを特徴とするデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界発光デバイス、特に、有機発光ダイオード(OLEDs)に基づく電界発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
現在製造されている有機発光ダイオード(OLEDs)に関してよく知られている問題は、電気エネルギーを光に変換するプロセスの効率が、デバイス内部での光のロスにより著しく損なわれるということである。これらのデバイスでは、発光層の有機発光材料の分子は、すべての方向にほぼ均一に光を放出する。垂直でない角度で放出された光は、デバイス内部に取り込まれ、結果的には、光導体および光ファイバに利用される内部全反射と同じプロセスによって吸収される。一般に、放出光の50%を超える光がこのようにして失われている。この光を回収すること、もしくは光の放出を抑えることができれば、OLEDsの効率は大幅に改善され、OLEDsのエネルギー効率を、現在知られている光源および電子表示装置のエネルギー効率よりも一層高くすることができるであろう。
【0003】
OLEDデバイスの平面で放出される光の量を制限することによって効率を高める1つの可能性のあるアプローチとして、液晶性OLED発光体材料の利用がある。これらの材料は、コア長に沿って長軸を画定する長い棒状の分子コアを有し、これらの形状の結果として、二色性が高くなっている。すなわち、それぞれの分子では、生成された光の大部分は分子の長軸に垂直な軸に沿って放出され、長軸に平行な方向に光はほとんど放出されない。このため、分子コアをデバイスの平面に平行に、すなわち面内にして液晶性発光体材料を蒸着してOLED発光層を形成すると、(多くの場合にそうであるように)面内に放出される光の量は、この平面に垂直に放出される光の量と比較して低減される。
【0004】
残念ながら液晶性OLED材料は、相反する効果を示す。これらの材料の分子長軸は、分子長軸に平行な偏光軸で偏光された光に対する屈折率が異常に高くなってしまう。これにより、材料の面内有効屈折率が上昇し、内部反射が増大し、さらに多くの光がデバイス平面で捕捉され、効率の低下を招く。
【0005】
これまで、OLED構造、特に液晶性OLED材料に基づく構造に関連した、この問題を有効に克服する適切な電界発光デバイス構造も、方法も見出されていない。
【発明の概要】
【0006】
本発明によれば、OLED材料に基づく電界発光デバイス構造の、特に液晶性OLED材料に基づく構造の効率を高めることが可能な、構造およびその製造方法が見出される。ほとんどすべての面内発光を抑える電界発光デバイス構造が見出される。このような電界発光デバイスは、二色性が高い発光材料と、発光層に関連したブラッグ格子を提供する構造との組み合わせを組み込むように配列される。
【0007】
従って本発明は、少なくとも1つの有機発光層または有機電荷輸送層と、発光層に関連したブラッグ格子を提供する構造とを備える非干渉性発光デバイスを提供する。好ましくは、ブラッグ格子構造は、発光層に関連した1−Dブラッグ格子を提供する。好ましくは、発光層または電荷輸送層は、液晶性材料を備える。関連する1−Dブラッグ格子は、発光層の等方性材料および液晶性材料からなる交互のゾーンによって提供されてもよい。ブラッグ格子は、格子層と、発光層の発光体材料との間で強力に相互作用するように、発光層に近接する層に提供されてもよい。
【0008】
本発明は、液晶性材料を備える少なくとも1つの有機発光層または有機電荷輸送層を備える電界発光デバイスをさらに提供し、ここで液晶性材料層は、光学的バンドギャップ効果を備える。
【0009】
好ましい実施形態では、液晶性材料の分子コアは、デバイス内で均一に整列され、理想的には、分子コアは発光デバイスの平面において整列される。さらに好ましくは、分子コアは、発光デバイスの、これら分子コアが含まれる層のゾーンの境界に平行な平面において整列される。
【0010】
好ましい配列では、等方性ゾーンまたは液晶性ゾーンのうちの少なくとも1つは、架橋ポリマーである。
【0011】
液晶性材料は、均一に整列される際には、好ましくは、二色比が2:1を超える二色性の性質を有する。等方性材料および液晶性材料からなる交互のゾーンは、存在する場合には、少なくとも20ゾーンに相当する距離に亘って均一な周期で交互に配列されてもよい。この均一な周期での交互の配列は、好ましくは、kλ/2の±20%以内である。なお、λは、発光デバイスの発光材料の最大発光強度の波長である。デバイスの平面での光の放出は、発光材料の二色性と、等方性ゾーンおよび液晶性ゾーンの交互配列を媒体とした光伝播モードの抑制との組み合わせによって抑えられることが好ましい。
【0012】
有機発光層または有機電荷輸送層が、等方性材料の区域に囲まれた液晶性材料の区域からなる規則的2次元マトリクスアレイを備えている場合に、デバイスの有効性をさらに強化され得ることが見出されている。
【0013】
したがって、さらなる態様では、本発明は、少なくとも1つの有機発光層または有機電荷輸送層と、発光層に関連したブラッグ格子を提供する構造とを備える非干渉性発光デバイスを提供し、そこでは前記発光層または電荷輸送層は、等方性材料の区域に囲まれた液晶性材料の区域からなる規則的2次元マトリクスアレイを備える。好ましくは、ブラッグ格子構造は、発光層に関連した1−Dブラッグ格子を提供する。液晶性材料の区域は、正方形または長方形の形状であってもよい。液晶性材料の区域は、菱形または平行四辺形の形状である。液晶性材料の区域は、円形または楕円形の形状である。2次元マトリクスは、正方形のマトリクスであってもよい。2次元マトリクスは、八角形マトリクスであってもよい。規則的2次元マトリクスは、デバイスの平面に平行な平面に存在していてもよい。規則的2次元マトリクスは、デバイスの平面に垂直な平面に存在していてもよい。液晶性材料は、均一に整列される際には、二色比が2:1を超える二色性の性質であってもよい。
【0014】
本態様では、規則的2次元マトリクスの、等方性材料と、液晶性材料との間の交互の配列は、デバイスの発光層内で光の位置を測定するように、発光デバイスの材料層のパターンと相互に作用する。デバイスの平面での光の放出は、発光材料の二色性と、等方性区域および液晶性区域の交互配列を媒体とした光伝播モードの抑制との組み合わせによって抑えることができる。2次元マトリクスの平面の軸に沿った等方性材料と、液晶性材料との間の交互の配列は、kλ/2の±20%以内であってもよい。なお、λは、発光デバイスの発光材料の最大発光強度の波長である。
【0015】
有機発光層または有機電荷輸送層が、等方性材料の区域に囲まれた液晶性材料の区域からなる規則的2次元マトリクスアレイを備えている場合、デバイスの有効性がさらに強化され得ることが見出されている。
【0016】
このため、さらなる態様では、本発明は、少なくとも1つの有機光発層または有機電荷輸送層を備える非干渉性発光デバイスを提供し、そこでは前記発光層または電荷輸送層は、等方性材料に囲まれて等方性材料内に点在する液晶性材料のゾーンの規則的3次元マトリクスアレイを備える。ゾーンは、正六面体、直方体または平行六面体の形を取っていてもよい。ゾーンは、円柱体、楕円柱体、球体または楕円体の形を取ってもよい。マトリクスアレイは、単純立方体、面芯立方体または稠密六方体のうちのいずれかのマトリクス格子を形成してもよい。本態様において、液晶性材料は、均一に整列される際には、二色比が2:1を超える二色性の性質であってもよい。
【0017】
このような配列により、本態様では、規則的3次元マトリクス内の、等方性材料と液晶性材料との間の交互の配列は、デバイスの発光層内で光の位置を測定するように、発光デバイスの材料層のパターンと相互に作用する。デバイスの平面での光の放出は、発光材料の二色性と、等方性マトリクスおよび液晶性ゾーンの交互配列を媒体とした光伝播モードの抑制との組み合わせによって抑えられる。2次元マトリクスを通る軸に沿った等方性材料と、液晶性材料との間の交互の配列は、kλ/2の±20%以内であってもよい。なお、λは、発光デバイスの発光材料の最大発光強度の波長である。
【0018】
本発明は、層型電界発光デバイスの製造方法をさらに提供し、この方法は、有機液晶性発光体材料を層として蒸着することと、液晶分子の棒状分子コアを層内で均一に整列することと、選択された整列層の領域を、材料の液晶相から等方相への相転移温度より低温で、選択された曝露領域の位相を設定するために、位相設定条件に曝露することと、位相設定領域を備える層を、材料の液晶相から等方相への相転移温度より高温で、位相設定条件に第2曝露するまで加熱すること、とを含む。好ましい実施形態では、有機液晶性発光体材料はモノマーであり、UV照射への曝露により重合化されてもよい。この実施形態では、重合化により曝露領域の位相の、整列が維持され、層が、材料の液晶相から等方相への相転移温度より高温に上昇した後、第2のUV曝露は、それまで曝露されていない領域を非晶質状態にする。
【0019】
本発明をより深く理解するために、また、本発明をどのように実施するかを示すために、添付の図面に示されている本発明の種々の特定の実施形態を例示として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明による電界発光デバイスを示す斜視図および断面図である。
【
図2】
図2は、整列された液晶性材料を組み込んでいる、本発明による電界発光デバイスを示す斜視図および断面図である。
【
図3】
図3は、整列された液晶性材料および発光層に近接する別個のブラッグ格子層を組み込んでいる、本発明による電界発光デバイスを示す斜視図および断面図である。
【
図4】
図4は、2次元格子を組み込んでいる、本発明による電界発光デバイスを示す斜視図および断面図である。
【
図5】
図5は、2次元格子および等方的に拡散された発光層の発光材料を組み込んでいる、本発明による電界発光デバイスを示す斜視図および断面図である。
【
図6】
図6は、等方性材料の区域に囲まれた液晶性材料の区域からなる規則的2次元マトリクスアレイを組み込んだ、本発明による電界発光デバイスを示す斜視図および断面図である。
【
図7】
図7は、等方性材料に囲まれて等方性材料内に点在する、液晶性材料のゾーンからなる規則的3次元マトリクスアレイを組み込んだ、本発明による電界発光デバイスを示す斜視図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明において、二色性の高い発光材料を使用する効果と、発光層に強固に結合されたブラッグ格子とを組み合わせることにより、問題をはらむ2−Dブラッグ格子を組み込む必要がなくなることが見出されている。所望の効果を得るのに必要なことは、組み合わせることだけである。
【0022】
図1を参照して説明すると、OLEDデバイス100は、OLEDの典型的な構成層を有する。たとえばカソード101、電子輸送層102、発光層103、正孔輸送層104、正孔注入層105、およびアノード106などである。しかしながら、このOLEDでは、発光層は、屈折率が高いゾーン107と屈折率が低いゾーン108とからなる。これらのゾーンは、周期がλ/2で、直交座標系109のx方向に最大屈折率変調軸をもつブラッグ格子を形成するように構成されている。さらに発光層103の材料は、二色性が高く、直交座標のy方向に二色性の異常軸をもつような材料が選択される。すなわち、層103の分子は、y方向にほとんど光を放出しないが、はるかに多くの光をx方向およびz方向に放出する傾向がある。層103の発光体の発光帯が、自身の発光帯を波長λの周囲に極めて狭小に分布させている場合、x方向への光の放出は、光学的バンドギャップ現象により抑えられる。同時に、発光体材料は、本来y方向に光を放出することはできない。材料から放出されるほぼすべての光が、±z方向になる。
【0023】
図2を参照して説明すると、ゾーン107内で、層103の発光体材料を、y軸に沿った長軸と均一に整列された、液晶分子の棒状分子コア201をもつ液晶性な性質にさせることによって、このような構造をもつOLEDとして実際に実施することができる。層が塗布される際に、液晶材料がモノマー性の性質である場合、ゾーン107は、UV照射への曝露により光干渉縞として、あるいは位相マスクを介して液晶性ポリマーに重合化されてもよい。その後、層を材料の液晶相から等方相への相転移温度よりも高温で加熱し、2度目のUV曝露を可能にする。この結果として、ゾーン108の材料は、ゾーン107のような化学組成であるが液晶の複屈折性がまったくない、非晶質ポリマーに重合化される。層103をx方向に横断する光がゾーンを横切る際には、一般に非常に高い(2.0を超える)液晶の異常屈折率を示すが、非晶質ゾーン108を横断する際には、液晶の異常屈折率と正常屈折率の平均程度の屈折率を(かなり低い)示す。このため必要な光学的バンドギャップが形成される。
【0024】
図2におけるデバイス200に関する課題は、電流がゾーン107および108の両方に流れる場合、ゾーン107からの光はy方向にほとんど放出されないが、ゾーン108はすべての方向に均等に光を放出するということである。このため、面内発光を除去するという目標が、一部達成できない。この問題を克服するための方策が2つある。
【0025】
第1の方策は、ある量の、重合可能でない絶縁液晶性材料を、層103が形成される液晶性モノマーにドープすることである。ゾーン107が重合化される際に、このドーパントはゾーン108へと排出されてもよい。さらにその後の加熱および第2のUV曝露の後、ゾーン108の組成は、発光材料のゲルマトリクスに拡散したドーパントを豊富に含む。この材料は、ゾーン107におけるよりも導電性が低くなり、OLED200に電流を流すと、電流はゾーン107の二色性媒体を介して、所望される発光の抑制を生じながら、ほぼ完全に流れる。このドーピングは、ドーパントが比較的低屈折率の低い材料である場合には、103内の格子の屈折率変調を大きくすることにもまた役立つ。ドーパントが、非晶質発光体材料ポリマーに十分に溶解可能であることに注意しなければならない。さもなければ、比較的純粋なドーパントの相分離内包物が形成され、層103内で光を散乱させる。
【0026】
デバイス200に関する問題に対する第2の方策は、層103内の格子と発光体材料との間で強い相互作用が可能となるように、ブラッグ格子構造を層103の十分近くの層に配置することである。これにより層103内の格子そのものの存在が必要でなくなり、この層内の液晶性材料が、その二色性によってy方向への発光を最小限に抑えられるように、均一に整列されることが可能になる。このような構造の一例を、
図3に図示する。このデバイスにおいて、層101、104、105および106は、デバイス200における場合と同一の機能を有する。発光層301は、液晶性発光体材料から成り、その棒状分子コアは、直交座標系109の軸に平行に整列されている。電子輸送層302は、材料が直交座標系109の軸yに平行に整列された、棒状分子コア306を有する液晶性の性質を持つゾーン303、および非晶質性の性質を持つゾーン304を備える。層301内の発光材料は、層302内のブラッグ格子構造と相互に作用して、直交座標系109のx軸に平行な方向への発光を抑える。層301内での格子と材料との相互作用が最大となるように、ゾーン303の異常屈折率と、ゾーン304の屈折率とを調節することが重要である。
【0027】
上述のとおり、光学的バンドギャップは、波長スペクトルの、ある一定の範囲にわたって完成される。これは、格子の阻止帯として知られる。阻止帯は、角度の広がりもまた有する。格子を介して通過する光が、たとえば
図3で、x軸から遠くに外れた角度に向けられるほど、一定の角度で伝播する光に対する阻止帯の強度およびスペクトルの広がりは減少する。また、幾何学により予測され得るように、阻止帯の中心波長は、より長い波長にシフトされる。x軸からある角度で、阻止帯は消滅する。すなわち、x方向とy方向との中間となる、ある角度では、二色性発光体による光の放出は抑えられない。この課題に対する可能性のある解決策は、2つの格子、すなわち、1つは格子方向がx軸からの角度+θであり、もう1つは、格子方向がx軸からの角度−θである格子を用いることである。組み合わされて、方向が異なる2つの格子は、材料内で2次元格子を生じる。所望の効果を生じることができる2次元格子の構成は多数存在する。
図4は、その一例を図示する。デバイス400内の層101、301、104、105、および106は、
図3における場合と同一である。電子輸送層401は、ダイヤモンド形状の領域402を含み、そこでは材料は直交座標系のy軸に沿った長軸の方向を向いた液晶性材料の棒状分子コアをもつ、液晶性構造である。これらダイヤモンド形状の領域402は、非晶質材料のダイヤモンド形状の領域403とともに点在する。この配列により、層401内にまるで2つの格子、すなわち、1つは格子方向がx+θ度であり、もう1つは、x−θ角である格子が存在しているかのような効果が得られる。このため層301の発光材料は、x+θおよびx−θの両方向で光学的バンドギャップと相互に作用し、これらのバンドギャップは重なり合って、x軸を中心とする角度の帯域にわたって広角のバンドギャップを生成する。
【0028】
同様な2次元格子の別の応用例は、層301の発光体材料が、ほとんど、またはまったく二色性がない2次元格子である。発光層が、等方的に発光する材料が拡散された液晶性ホストからなる場合がこれに当たる。この構成をもつデバイスを、
図5に図示する。層101、104、105および106は、これまでの実施形態と同一の機能を有する。しかしながら、この場合の発光層504は、等方的に発光する発光分子506が拡散された、整列された液晶分子コア505からなる。液晶分子コアは、直交座標109のy方向に整列される。電子輸送層501は、材料が、y方向に整列された材料の棒形状の分子コアをもつ、液晶性構造である正方形状の領域502を含む。これらの領域は、非晶質材料の正方形状の領域503とともに点在する。この構成は、2つの格子、すなわちそのうちの1つはy軸に平行な方向に伝播する光と相互に作用し、もう1つはx軸と平行な方向に伝播する光と相互に作用する格子の効果を有する。層501と、領域502および503の屈折率を適切に調節(2つの層の液晶性材料の異常屈折率を厳密に一致させ)すると、層501の2次元格子構造は、xおよびy両軸に沿った光の放出を抑えている発光分子506と強力に相互に作用する。この実施形態における層501内の正方形2次元格子が、発光層504に配置されて同様の効果を得ることができるのは明らかである。
【0029】
本発明の実施形態に関する可能性のある別の課題は、デバイスのx、y平面の軸とz軸(外部環境とつながっている)との中間となる角度で伝播する光、x、y平面において光学的バンドギャップ格子構造による影響を受けない場合があるという問題である。デバイス内の種々の層間インターフェイスにおける臨界角によっては、この光の相当量が外部環境に達しない場合がある。
【0030】
この迷光放出の一部を除去する簡単な方法は、発光層(たとえばデバイス300の層301)の厚さを、この層の上面および底面から外れた反射が微弱なエタロン効果を生じるように設定することである。デバイスの平面に垂直な軸に沿って内部に反射された光が、複数の反射にわたって同相であるような厚さであれば、デバイス内に定在波が生じる。この光局在化は、z軸の周囲に放出角の分布を狭めるフィードバックを生成し、これによりオフ角での光の相対量が減少し、迷光の問題の一部が解消される。
【0031】
場合によっては、発光体層を介してフィードバックのレベルを向上させることが有用である。これは、x軸およびz軸に沿って最大屈折率変調を有する2次元格子を導入することにより実施してもよい。このタイプのデバイスを、
図6に図示する。ここではカソード層、正孔輸送層、正孔注入層、およびアノード層(それぞれ601、607、608、および609)は、これまでの実施形態と大体同じように機能する。発光体層605は、直交座標系610の軸yに平行整列された棒状分子コア606を有する液晶性の性質を持つ材料からなる。電子輸送層602は、同じくy軸に沿って整列された棒状分子コア606を有する液晶性材料を備える。層602に含まれるのは、層602の材料を完全に貫通して伸びる、横断面が正方形の棒状をした非晶質材料の領域であり、この領域は、横断面寸法を有し、ピッチがdである規則的な2次元格子を形成するように間隔を置いて配置される。寸法hをdと等しくする場合には、層602のz軸に沿った格子が、発光体層605により形成されたエタロンで光をさらに局在化するようにdを選択してもよい。これにより、デバイスにより放出される軸外迷光はさらに減少し、デバイスを離間して放出される光の割合がさらに増加する。
【0032】
デバイス300および500より類推して、デバイス600の層602を、層に3次元格子を導入するようにさらに改変することができる。この実施形態は、
図7に図示される。液晶性電子輸送層701の非晶質内包物703は、ここではx、y、およびz方向に屈折率変調を生み出す立方体形状をしている。これにより、層605内で発光分子が光を等方的に放出する際に特に有利になることがある。