(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5850544
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】スプレー乾燥装置
(51)【国際特許分類】
B05B 7/10 20060101AFI20160114BHJP
B05B 7/06 20060101ALI20160114BHJP
B01J 2/04 20060101ALI20160114BHJP
B01D 1/18 20060101ALI20160114BHJP
F26B 3/12 20060101ALI20160114BHJP
F26B 21/00 20060101ALN20160114BHJP
【FI】
B05B7/10
B05B7/06
B01J2/04
B01D1/18
F26B3/12
!F26B21/00 B
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-555758(P2013-555758)
(86)(22)【出願日】2011年2月28日
(65)【公表番号】特表2014-509259(P2014-509259A)
(43)【公表日】2014年4月17日
(86)【国際出願番号】DK2011050060
(87)【国際公開番号】WO2012116697
(87)【国際公開日】20120907
【審査請求日】2014年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】513197828
【氏名又は名称】イェア プロセス エンジニアリング アグシャセルスガーッブ
【氏名又は名称原語表記】GEA Process Engineering A/S
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】セーレンセン,ペール ボー
(72)【発明者】
【氏名】イェーンセン,アンデシュ ボー
(72)【発明者】
【氏名】フレドステット,セーレン
【審査官】
加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭48−067341(JP,A)
【文献】
特開平07−124503(JP,A)
【文献】
特開2008−159989(JP,A)
【文献】
特開昭60−097037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 7/00−7/32
B01D 1/18
B01J 2/04
F26B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の圧力と気体とによって液体を噴霧するための外部混合型加圧2流体ノズルを備えるスプレー乾燥装置であって、前記ノズルは、上流側端部および下流側端部の間に軸方向に延びる内側の供給液体管(1)であって、供給液体導管(2)、前記上流側端部に位置する供給液体流入口(3)、および前記下流側端部に位置する送出オリフィス(4)を有する内側の供給液体管(1)と、前記内側の供給液体管(1)の半径方向の外側に延びる同軸の第1気体管(5)であって、前記第1気体管(5)および前記内側の供給液体管(1)の間に第1気体導管(6)を形成する第1気体管(5)とを含み、前記第1気体管(5)は、前記下流側端部に位置する気体流出スリット(7)を有するスプレー乾燥装置において、前記ノズルが、前記第1気体管(5)の半径方向の外側に延びる同軸の第2気体管(8)であって、前記第2気体管(8)および前記第1気体管(5)の間に第2気体導管(9)を形成する第2気体管(8)をさらに含み、前記第1気体導管(6)は前記上流側端部において閉止され、前記第2気体導管(9)は前記下流側端部において閉止され、ここで、前記第1気体導管(6)および前記第2気体導管(9)は、気体流れの旋回運動をもたらすように調整される1つ以上のスロット(10)によって結合されることを特徴とするスプレー乾燥装置。
【請求項2】
請求項1に記載のノズルにおいて、前記気体流出スリット(7)と、前記送出オリフィス(4)とがほぼ同じ水平位置にあることを特徴とするスプレー乾燥装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のノズルにおいて、前記内側の供給液体管(1)と、前記第1気体管(5)と、前記第2気体管(8)とが同心でありかつ筒状であることを特徴とするスプレー乾燥装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のノズルにおいて、前記気体流出スリット(7)が環状であることを特徴とするスプレー乾燥装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のノズルにおいて、前記第1気体導管(6)および前記第2気体導管(9)を結合する前記1つ以上のスロット(10)が、前記内側の供給液体管(1)の外面に対して接線方向に延びていることを特徴とするスプレー乾燥装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のノズルにおいて、前記1つ以上のスロットが、水平面に対して、上向きまたは下向きの角度に向けられることを特徴とするスプレー乾燥装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のノズルにおいて、前記内側の供給液体管(1)および前記第1気体管(5)が、前記下流側端部において中心に向かって半径方向に先細になっていることを特徴とするスプレー乾燥装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のノズルにおいて、前記内側の供給液体管(1)の摩耗部分が耐摩耗性のセラミック材料製であることを特徴とするスプレー乾燥装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のスプレー乾燥装置において、前記内側の供給液体管および/または前記第1気体管が、交換可能であることを特徴とするスプレー乾燥装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のスプレー乾燥装置において、前記内側の供給液体管および/または前記第1気体管が、1つ以上のインサートを受け入れるように調整されることを特徴とするスプレー乾燥装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のスプレー乾燥装置において、前記第2気体管の外壁面がランスに装着し得るように調整されることを特徴とするスプレー乾燥装置。
【請求項12】
リチウムイオン電池用粉末、電池用粉末、ポリマー粉末、デンプンまたはゼラチン粉末、コーヒー粉末、摩耗性供給物の粉末、無機材料粉末、硬質金属粉末、薬品粉末、および凝固粉末からなる群から選択されるスプレー乾燥粉末製造のための、請求項1〜11のいずれか一項に記載の外部混合型2流体ノズルを備えるスプレー乾燥装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の圧力と気体とによって液体を噴霧するための外部混合型加圧2流体ノズルに関する。このノズルは、上流側端部および下流側端部の間に軸方向に延びる内側の供給液体管であって、供給液体導管と、上流側端部に位置する供給液体流入口と、下流側端部に位置する送出オリフィスとを有する内側の供給液体管と、その内側の供給液体管の半径方向の外側に延びる同軸の第1気体管であって、その第1気体管および前記内側の供給液体管の間に第1気体導管を形成する第1気体管とを含む。この第1気体管は、下流側端部に位置する気体流出スリットを有する。本発明は、さらに、液体圧力と気体とによって液滴を生成する外部混合型加圧2流体ノズルを用いて、スプレー乾燥された粉末を製造するためのスプレー処理方法に関する。さらに加えて、本発明は、スプレー乾燥された粉末を製造するための前記外部混合型加圧2流体ノズルの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
スプレー乾燥は、粒子の形成と乾燥との両者を含む乾燥プロセスである。それは、供給物、通常は液体の濃縮物のスプレーへの噴霧化と、そのスプレーおよび乾燥媒体の間の接触とを包含する。スプレーの形成(噴霧化)、およびスプレーの乾燥媒体との接触は、ノズルを用いて実現することができる。
【0003】
空気ノズルによる噴霧化は、液体供給物を高速の気体と衝突させる過程を含んでいる。高速の気体は、高い摩擦力を生成し、液体供給物をスプレーの液滴に分解する。供給液体は、2段階において破砕されると信じられている。第1段階は、液体供給物をフィラメントまたは大きな液滴に裂開する過程である。第2段階は、これらの液体形成物をさらに小さい液滴に破砕することによって噴霧化を完成する過程である。全プロセスは、液体供給物の表面張力、密度、圧力および粘度の大きさと、気体流れの速度および密度とによって影響を受ける。
【0004】
噴霧化に必要な液体−気体接触の条件を作り出すために、種々の設計技術を用いることができる。Keith Masters著「スプレー乾燥(Spray drying)」、1991年版、p251に記述されているように、この設計は4つの範疇に分類することができる。すなわち、
(1)液体供給物および噴霧化気体がノズルヘッドの内部で接触する内部混合方式と、
(2)液体供給物および噴霧化気体がノズルヘッドの外部で接触する外部混合方式と、
(3)ノズルヘッド内部において2つの噴霧化気体流れを用いることによる内部混合および外部混合の組合せ方式(3流体ノズル)と、
(4)供給液体および噴霧化気体が回転ノズルヘッドのリムにおいて接触する空気カップ噴霧化方式と、である。
【0005】
設計技術が異なると、得られる特性が異なり、最終的な噴霧生成物の結果が違うものになる。最初の2つの範疇においては、供給液体および噴霧化気体が別個にノズルに送られる。通常、2流体ノズル(two−fluid nozzle:TFN)と呼称されるこのようなノズルは、特に、スプレー乾燥プラントおよび流動床凝集における液体の噴霧化用として用いられる。液体は、溶液、分散液または純粋物質の形態とすることができる。特に、2流体ノズルは、微小な液滴が目的である場合、あるいは、流体を液滴に破砕するのに噴霧化気体の形態の付加的な噴霧化エネルギーが必要である場合に、流体を噴霧する時に使用される。第3および第4範疇のノズル設計は、本出願の主題ではない。
【0006】
内部混合型TFNは、外部混合型TFNに比べて、気体および液体の2流体が乾燥チャンバの周囲大気中に流入する前に気体および液体が混合されるという利点を有する。しかし、内部混合を提供するノズルは、摩耗性の供給物を取り扱うのには必ずしも適していない。内部混合が機器の摩耗を増進するからである。気体/液体の内部混合を備えた従来型の2流体ノズルは、また、完全乾燥をもたらし、それによって混合チャンバを閉塞させるというリスクを有する。
【0007】
内部混合型のノズルは効率的な液体−気体反応をもたらすという可能性を有するが、内部の流路形成および流路寸法によって容量的に制限される。ノズルの内部部品は、気体−液体の混合を改善するように意図されるが、同時に流れを撹乱させ、液滴サイズの分布の幅を増大させる結果を招く。内部部品は、一般的に、取り扱い、清浄化を複雑化し、摩耗の原因にもなる。さらに、粘性の液体供給物は処理が困難な場合がある。
【0008】
内部混合型のノズルの例は当分野ではよく知られている。米国特許第7,694,944号明細書(譲受人GEA Niro)は、気体がノズルの軸方向に供給されるノズルを開示している。このノズルは、1つの混合チャンバと、1つ以上の液体流入口と、混合チャンバへの少なくとも1つの接線方向の気体流入口とを含む。商業的に入手可能なある1つの内部混合型ノズルにおいては、噴霧化気体が別個のパイプから接線方向に供給されるが、これはノズルの半径方向の寸法に影響を及ぼす。さらに、この先行技術のノズルの混合チャンバは、構造的条件からの結果としての端部と障害物とを含む。国際公開第00/58014号パンフレットは、混合チャンバへの接線方向の気体流入口と横方向の液体流入口とを有するノズルの形態の噴霧器を開示しているが、このノズルは、その形状のために混合が不十分になる欠点を免れない。
【0009】
2流体ノズルの性能評価の基準は、平均液滴サイズと、液滴サイズ分布の幅と、特に比気体消費量とである。この比気体消費量は、所要量の液体を噴霧するのに使用される気体の量を意味し、気体対供給物比とも呼称される。生成物の品質に焦点を合わせた基準に加えて、2流体ノズルの製造容量も−特に商業的な観点から−非常に重要である。さらに、クリーンな技術の追求の高まりとエネルギー価格の上昇とによって、スプレー方法によって運転および製造する場合のエネルギー消費量に関する付加的な要求も高くなっている。
【0010】
外部混合型TFNがその制約に直面する場合は、気体および液体の接触および混合が不十分になる。外部混合型TFNにおいては、気体が、通常リング形状の開口を通ってノズルから流出した後に液体と混合するが、この外部混合型TFNは、気体出口における間隙が非常に大きくなって、その結果、気体の大部分が、液体と反応せずに乾燥チャンバの周囲大気の中に消失するような状況になった時に、その限界に直面する。外部混合型TFNの場合は、気体の自由膨張によって、液体の破砕にエネルギーを加える代わりに、エネルギーが部分的に周囲に失われるという欠点を有する。先行技術においては、この問題に注意が払われてきた。
【0011】
別のタイプのノズルは液体の加圧を利用する。これは、供給濃縮物が加圧されてノズルに供給されることを意味する。圧力エネルギーは運動エネルギーに変換され、供給物は、ノズルのオリフィスから高速の膜として流出し、この高速の膜は、不安定なので容易にスプレーに分解される。高い供給速度を取り扱う圧力ノズルからのスプレーは、一般的に均質ではなく、また粗大である。
【0012】
欧州特許第408、801B1号明細書は、運転開始の期間において低圧力が印加される場合においても、微小液滴が生成されるので満足に機能し得る低加圧液体の内部混合型2流体ノズルを示している。このスプレーノズルユニットには、圧力ノズルと空気ノズルとの間に、流出空気流れの一部に旋回運動を付与する気体スリットが設けられる。
【0013】
本発明は、噴霧化気体を効率的に使用する高加圧液体の外部混合型2流体ノズルに関する。本分野においては、空気ノズルは、高コストの圧縮空気と低いノズル効率とに関係するので不利であることがよく知られている。さらに、既存の従来型の2流体スプレーノズルユニットのいくつかに関わる短所は、非常に微小な液滴が必要である場合には容量が限られるという点である。本発明の目的は、エネルギー効率的であり、高い容量を提供し、しかも微小な液滴を生成する外部混合型加圧2流体ノズルを提供することにある。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、液体の圧力と気体とによって液体を噴霧するための外部混合型加圧2流体ノズルに関する。このノズルは、上流側端部および下流側端部の間に軸方向に延びる内側の供給液体管であって、供給液体導管と、上流側端部に位置する供給液体流入口と、下流側端部に位置する送出オリフィスとを有する内側の供給液体管と、その内側の供給液体管の半径方向の外側に延びる同軸の第1気体管であって、その第1気体管および前記内側の供給液体管の間に第1気体導管を形成する第1気体管とを含む。この第1気体管は、下流側端部に位置する気体流出スリットを有する。このノズルは、さらに、前記第1気体管の半径方向の外側に延びる同軸の第2気体管であって、その第2気体管および前記第1気体管の間に第2気体導管を形成する第2気体管を含む。第1気体導管は上流側端部において閉止され、第2気体導管は下流側端部において閉止される。この場合、第1気体導管および第2気体導管は、気体流れの旋回運動をもたらすように調整される1つ以上のスロットによって結合される。
【0015】
上記の設計による外部混合型2流体ノズルを用いたスプレー乾燥方法は、所要の平均粒子サイズとその分布の幅とを保持した上で高い製造容量を提供することが証明された。外部混合型の先行技術によるノズルの場合に、スプレー乾燥用途において微小な粒子を生成すると、液体流量の増大によって気体出口の間隙の拡大が必要になるので、あるいはその代わりに、圧力の増大が必要になるので、容量が制限される。その結果、気体の大部分が、液体と反応せずに周囲大気中に消失する。しかし、本発明による外部混合型2流体ノズルによれば、流出スリットにおける気体流れのパターンが、低減された気体流量しか必要としないように設計されるので、供給液体が相当の圧力で供給された場合、液体との高い反応が確保される。
【0016】
本発明によれば、液体は高められた液体圧力によって予備噴霧されて薄い膜を形成し、引き続いてこの薄い膜が、加圧された気体によって微小な液滴に噴霧される。通常の液体圧力を用いる先行技術のノズルにおいては、この予備噴霧が同じ程度には形成されない。先行技術のノズルにおける液滴の形成は、通常、殆ど高速の気体によるものであるが、この高速の気体による噴霧化は、高い容量においては、背景技術の項に記述したように制限を受け易く、また特に、大きな粒子サイズと幅の広い分布とをもたらす不完全な噴霧化になり易いのである。
【0017】
本発明の外部混合型2流体ノズルは、意外にも、分布の幅が小さい粉末を形成する。この分布の幅は、粒子サイズの分布がどの程度の幅であるかを表す。特定の粒子サイズを目指す場合には、狭い分布が望ましい。液摘サイズの分布の幅が広いことは一般的には不利である。分布の幅は(d90−d10)/d50として評価されるが、本発明のノズルの場合、この値が、通常、1〜2の範囲内に見出される。
【0018】
ノズルの2つの気体導管の内部において、気体の流れを、2つの気体導管を結合する1つ以上のスロットを通して導くことによって、旋回運動を生じさせる。本発明による加圧2流体ノズルが提供する噴霧機構の設計および有効性によって、高粘度の液体を、工業的に適用し得る供給速度において噴霧することが可能になる。さらに、気体の完全な旋回運動と組み合わされた液体の予備噴霧の形成によって、低流量の気体による液体供給物の噴霧が可能になる。
【0019】
さらに、本発明によるノズルが摩耗性の供給液体の取り扱いによく適している点であるが、高いせん断噴霧化がノズルそのものの外側で生起すること、および、気体および液体間の接触が外部で行われるために、完全乾燥が生じそれによってノズルが閉塞するというリスクが回避されることが、このノズルの有利な点である。
【0020】
本発明の好ましい一態様においては、気体流出スリットと、送出オリフィスとがほぼ同じ水平位置にある。この特徴の効果は、外部混合が確実に行われること、すなわち、供給液体および噴霧化気体がノズルの敏感な構成要素の外側で混合されるということである。内側の供給液体管は、第1気体管の先端に対して、あまり大きくない程度、例えば+/−5mm程度だけ引込めるか、あるいは突き出させることができる。
【0021】
通常、内側の供給液体管と第1気体管と第2気体管とは、同心でありかつ筒状である。同心かつ筒状の設計によって、噴霧化気体の均一な処理がもたらされ、それによって、気体流出スリットに沿う流れのパターンが一様になる。さらに、好ましいいくつかの実施形態においては、気体流出スリットは、均等な気体分散が形成されるように環状になっており、それによって、乾燥チャンバの限定された容積内部に液滴の雲が形成される。
【0022】
本発明の一態様によれば、第1気体導管および第2気体導管を結合する1つ以上のスロットが、内側の供給液体管の外面に対して接線方向に延びている。この特徴によって、気体が第2気体導管から1つ以上のスロットを通って第1気体導管に流入すると気体の旋回運動が生じるように、1つ以上のスロットが調整される。ノズルが1つより多いスロットを保有する場合には、スロットが内側の供給液体管に対して同じ向きにおいて接線方向に延びていることが重要である。これは、すべてのスロットを、内側の供給液体管の周りに気体が同じ時計回りまたは反時計回りの方向に流れるように設けて、それによって気体の旋回運動を強化するべきであることを意味している。
【0023】
本発明による2流体ノズルは、全気体流れが、旋回運動を生じるように調整される1つ以上のスロットを通過して流れる方式である。発明者らは、欧州特許第408、801B1号明細書に示唆されているように気体の一部分のみが旋回運動をもたらす手段を通過して流れる方式に比べて、本発明の設計によってより強い旋回運動が与えられることを見出した。これによって、ノズルの全体的な気体流量を低減し得る結果がもたらされる。しかし、液体供給物の加圧による液体の予備噴霧によって、要求される噴霧化気体の量は低位レベルでよいのである。ところが、気体の旋回運動によって、液体に旋回/回転運動が付与されることになり、液体の噴霧化が改善される。
【0024】
1つ以上のスロットは、水平面に対して、例えば+/−5°以上の上向きまたは下向きの角度に向けることができる。個々のスロットは、第1気体管に沿って異なる水平高さ位置に配置することができる。
【0025】
ノズルの下流側端部に先細になる部分を設けることによって、平均液摘サイズ分布および液摘サイズ分布の幅の両者を改善することができる。この先細の形態は、垂直面に対して5°〜80°、さらに好ましくは10°〜45°の角度にすることができる。
【0026】
本発明による2流体ノズルは、任意の適切な材料において調製することができる。しかし、供給液体の摩耗性が非常に高い場合は、少なくとも内側の供給液体管の摩耗部分は、例えばセラミック材料などの耐摩耗材料製とすることが有利である可能性がある。
【0027】
本発明のノズルを種々のプロセス条件および供給液体に適応させるために、内側の供給液体管および/または第1気体管を、交換可能にすること、および/または、1つ以上のインサートを受け入れるように調整することができる。かつ/または、第2気体管の外壁面をランスに装着し得るように調整することができる。この設計は、同心の管と、その下流側の端部に装着される本明細書に記載のノズルヘッドとを備えたノズルランスとすることが可能である。このようなノズルヘッドおよびその部品は、当該供給容量に適合するように、交換可能にすることができる。
【0028】
本発明は、さらに、スプレー乾燥された粉末を製造するためのスプレー処理方法にも関する。この方法は次の各ステップを含む。すなわち、外部混合型の2流体ノズルと乾燥チャンバとを含むスプレー乾燥装置を用意するステップであって、前記2流体ノズルは供給液体用および噴霧化気体用の流入口を有し、前記乾燥チャンバは、乾燥気体流入口と、使用済み乾燥気体/噴霧化気体用および製品粉末用の出口とを有する、ステップと、供給液体を、外部混合型2流体ノズルから、乾燥チャンバ内において、液体の圧力と噴霧化気体とによって液滴にスプレーするステップと、その液滴を粉末に乾燥するステップと、その粉末を製品粉末用の出口から排出し、かつ、使用済みの気体を使用済み気体用の出口から排出するステップと、である。この場合、噴霧化気体は、0.2〜10bar(g)の範囲の圧力でノズルに供給され、ノズルにおける噴霧化気体の全量に旋回運動が付与され、供給液体は、8bar(g)以上の圧力でノズルに供給され、噴霧化気体流量対供給液体流量の重量比は0.1〜10の範囲内である。
【0029】
発明者らは、意外にも、噴霧化気体に旋回運動を付与する2流体ノズルに、加圧された液体供給物を供給すると、50μm未満の平均粒子サイズの粉末の製造に必要な気体圧力を結果的に低下させ得ることを見出した。従来型の2流体ノズルに比較して、本発明による外部混合型2流体ノズルはそのエネルギー消費量が少ない。これは、現在、高められた液体圧力によって供給される噴霧用のエネルギー入力が、高められた空気圧力によって供給されるエネルギー入力に比べてより効率的に利用されるからであると信じられている。従来型の2流体ノズルは、噴霧用として、加圧された気体を利用するが、本発明による外部混合型2流体ノズルは、加圧液体および加圧気体の組合せを利用する。さらに、外部混合方式の従来型2流体ノズルを用いると、非常に微小な液滴が必要である場合には、容量が制限される可能性があるが、本発明による2流体ノズルは、いくつかの実施形態においては、例えば500kg/hまでの高い液体処理容量を有するであろう。
【0030】
旋回運動はいくつかの手段によって発生させることができる。この手段には、ノズル内の噴霧化気体の通路における傾斜スラット、ノズル内に形成される曲がりくねった気体流路などが含まれる。本発明の好ましい一態様によれば、旋回運動が、第2気体導管および第1気体導管を結合する1つ以上のスロットによって生成される。この場合、前記第2導管は、気体供給ラインに接続されると共に、第1気体管と、第1気体管の半径方向の外側に延びる第2気体管との間に形成され、前記第1気体導管は、内側の供給液体管と第1気体管との間に形成される。さらに、前記第2気体導管は下流側端部において閉止され、前記第1気体導管は、上流側端部において閉止されると共に、下流側端部において気体流出スリットに接続される。特定の一実施形態においては、上記の方法に用いられる外部混合型2流体ノズルが、添付の請求項に開示されるノズルである。
【0031】
ノズルのスロットは、気体の流れに不必要な摩擦を加えることなく、噴霧化気体に必要な旋回を付与するように設計される。特定の一実施形態においては、第1気体導管および第2気体導管を結合する1つ以上のスロットが、内側の供給液体管の外面に対して接線方向に延びている。気体の全量がこの1つ以上のスロットを通して導かれるので、気体の完全な旋回運動が得られる。気体の旋回運動は、液体に旋回/回転運動を付与することによって、液体の噴霧化を改善する。
【0032】
供給液体には、乾燥チャンバ内に噴射する前に、ある特定の圧力が加えられる。この圧力は、本発明の利点を得るべきであるならば、通常5bar(g)以上である。好ましい一態様においては、液体は10〜150bar(g)の圧力でノズルに供給される。一般的に、高粘度の供給液体は、低粘度の供給液体よりも高い供給液体圧力を必要とする。
【0033】
噴霧化気体は、少なくとも0.2bar(g)の圧力でノズルに供給される。この圧力は、プロセスの経済のために、通常、10bar(g)を超えない。好ましい一態様においては、噴霧化気体が、0.5〜5bar(g)の圧力、より好ましくは1〜2bar(g)の圧力で供給される。
【0034】
噴霧化気体の十分な旋回を得るために、噴霧化気体は30m/s以上の回転速度でノズルから噴射される。回転速度は500m/sを超えないことが適切である。好ましい一実施形態においては、噴霧化気体は、50m/s〜400m/s、通常100〜200m/sの範囲の回転速度でノズルから噴射される。
【0035】
本発明の利点は、噴霧化気体および供給液体の加圧を組み合わせることによって、噴霧化気体の加圧を主とする場合よりもエネルギー消費量が低下するという点にある。本発明によれば、噴霧化気体流量対供給液体流量の重量比は0.1〜10の範囲、適切にはこの比は0.5〜5の範囲、さらに適切には1〜3の範囲である。
【0036】
本発明の方法は、種々のサイズおよび分布の液滴を生成できる。本発明は、微小な液滴を生成する場合にその殆どの利点を発揮する。従って、好ましい一態様においては、液滴の平均サイズが30μm未満である。
【0037】
本発明は、高い液体の流量容量と組み合わせて微小なサイズの液滴を生成し得るという重要な特徴を有する。本発明の特定の一実施形態においては、外部混合型2流体ノズルの液体流量容量は100kg/h以上である。
【0038】
本発明の一態様によれば、スプレー乾燥装置の中に2つ以上の外部混合型加圧2流体ノズルが設けられる。ノズルを通過する供給液体流量が高められた液体圧力において制御されるので、多数個のノズル間に液体を配分することが容易に可能になるであろう。
【0039】
本発明の方法によって製造される粉末は種々の材料のものとすることができる。通常、スプレー乾燥される粉末は、リチウムイオン電池または他の2次電池に使用する粉末、ポリマー粉末、デンプンまたはゼラチン粉末、コーヒー粉末、摩耗性供給物の粉末、無機材料粉末、硬質金属粉末、薬品粉末、および凝固粉末からなる群から選択される。
【0040】
本発明の方法は、従来型のノズルを用いるプロセスに比べて高い乾物質含有量を有する供給物の処理を可能にするものとして、高粘度の液体に適していることが判明している。この方法は、さらに、外部混合の利点、すなわち、摩耗性の供給物から製品をスプレー乾燥するのに特に適したスプレー処理方法を構成するという利点を有する。
【0041】
噴霧化気体は、空気、窒素、二酸化炭素、あるいは他の任意の適切な気体とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における外部混合型加圧2流体ノズルの軸に沿う断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態における外部混合型加圧2流体ノズルの、気体導管と結合スロットとの両者が存在する軸方向位置における半径方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に、本発明の実施形態を、
図1および
図2を参照して詳細に記述する。
【0044】
外部混合型加圧2流体ノズルには、ノズルの上流側端部および下流側端部の間に軸方向に延びる内側の供給液体管(1)が設けられる。この内側の供給液体管(1)は、供給液体導管(2)を構成する流路を形成する。内側の供給液体管の上流側端部には、供給液体が供給液体導管(2)に流入し得る供給液体流入口(3)があり、内側の供給液体管(1)の下流側端部には、液体供給物が液体供給物導管(2)から流出し得る送出オリフィス(4)がある。内側の供給液体管(1)を第1気体管(5)が取り囲んでいる。この第1気体管(5)は、内側の供給液体管(1)の外側にそれと同軸に延びている。第1気体管(5)の半径は内側の供給液体管(1)の半径より大きく、第1気体管(5)は、内側の供給液体管(1)の壁面から離れた管壁を構成し、従って、内側の供給液体管(1)と第1気体管(5)との間に第1気体導管(6)を形成する。第1気体管には、ノズルの下流側端部において気体流出スリット(7)が設けられる。第1気体導管は、ノズルの全長を貫通して延びているのではなく、ノズルの上流側端部において閉止されている。第1気体管(5)を、第1気体管(5)の半径方向の外側に延びる第2気体管(8)が取り囲んでいる。そのため、第2気体管(8)の半径は第1気体管(5)の半径より大きい。第1気体管および第2気体管の壁面は間隔を開けて離されており、従って、第1気体管および第2気体管の管壁の間に第2気体導管(9)が形成される。第2気体導管(9)は、ノズルの上流側端部においては開放されているが、下流側端部において閉止されている。このノズルは、第1気体管(5)に設けられる1つ以上のスロット(10)を特徴として備えている。この1つ以上のスロットは第1気体管(5)の壁面を貫通しており、これによって第1気体導管および第2気体導管を結合する。この1つ以上のスロット(10)は、気体流れの旋回運動を生成するように調整される。
【0045】
外部混合型2流体ノズルの運転中、液体供給物のストリームは、通常、供給液体流入口(3)においてノズルに流入し、供給液体導管(2)を経てノズルを軸方向に流れる。すなわち、供給液体はノズルを貫通して下流側に流れ、供給液体のストリームは、送出オリフィス(4)においてノズルから流出する。噴霧化気体は、当初、供給液体のストリームに平行に、同じ下流側の方向に流れる。噴霧化気体は、上流側端部において、ノズルの第2気体管(8)の第2気体導管(9)であって上流側端部が開放されている第2気体導管(9)の中に流入する。噴霧化気体は、第2気体導管(9)から、4個のスロット(10)を通って第1気体管(5)の第1気体導管(6)の中に流入する。噴霧化気体が1つ以上のスロット(10)を通って流れる際に、噴霧化気体は旋回運動を獲得する。噴霧化気体は、旋回運動を維持して、第1気体導管(6)を通って流れ、気体流出スリット(7)から流出する。
【0046】
本開示の以下の請求項においては、bar(g)という用語は、周囲大気の圧力または大気圧より上のbar単位の圧力のことを言う。本明細書および請求項がスプレー処理またはスプレー乾燥に言及する場合は、この用語には、種々の異なるスプレー方法および処理方法が包含される。すなわち、スプレー乾燥、スプレー凝固、およびスプレー造粒が含まれる。スプレー凝固を行う場合は、乾燥気体が冷却気体に置き換えられることは当業者が理解するところであろう。
【0047】
本発明によって製造されるリチウムイオン電池に使用する粉末は、再充電可能電池に使用する任意の種類の種々のリチウムイオン塩とすることができる。本発明の方法によって製造される粉末は、単なる例であるが、次の材料、すなわち、リチウムコバルト酸化物、リチウム鉄リン酸塩または他のポリアニオン、LiNiO
2またはリチウムマンガン酸化物または他のスピネルのものとすることができる。リチウムイオン電池に使用する粉末以外の他の2次電池の粉末もこの方法によって製造することができる。また、粉末材料は、LiCo
1/3Ni
1/3Mn
1/3O
2のような塩の混合物とすることもできる。場合によっては、粉末にアルミニウム、ニオブまたはジルコニウムをドープすることができる。
【実施例】
【0048】
実施例1
リチウムイオン電池粉末のスプレー乾燥
リチウムイオン電池の粉末を、GEA Niro SD6.3パイロットスプレー乾燥機において、外部混合方式の従来型2流体ノズルと、本発明によるGEA Niro COMBI−NOZZLE(商標)とを用いてスプレー乾燥した。結果を表1に示す。
【0049】
実施例2
e−PVCラテックスのスプレー乾燥
e−PVCラテックスは、多くの場合、微小な粉末粒子を作製するためにスプレー乾燥され、通常、この目的のためには多数の従来型2流体ノズルが必要になる。それは、約20ミクロンの必要平均粒子サイズを作製するには、これらのノズルの最大容量がおよそ50〜65kg/hであるからである。本発明によるノズルを適用することによって、大幅に低い圧縮空気の使用量でより小さい平均粒子サイズを実現することが可能になる。さらに、COMBI−NOZZLE(商標)の液体供給容量は、200kg/h、500kg/h、あるいはそれより多くにすることが可能である。
【0050】
実施例3
高粘度溶融物の噴霧
ポリマーの高粘度溶融物を、COMBI−NOZZLE(商標)を用いて以下の条件でスプレー凝固させた。従来型の噴霧技術の場合は、液滴の形成の貧弱さから生じるフィラメントの形成によって、溶融物を満足し得る形で凝固させることができなかった。
【0051】
実施例4
液摘サイズの分布の幅の制御
COMBI−NOZZLE(商標)によって得られる液摘サイズの分布の幅を、水をスプレーして試験した。分布の幅は、液体噴射ノズルの理論的なスプレー角度を変化させることによって影響を受けた。Malvern液滴サイズ測定装置を用いて、以下の結果を得た。