特許第5850595号(P5850595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5850595エマルジョン形態の脱毛剤組成物、その製造方法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5850595
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】エマルジョン形態の脱毛剤組成物、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20160114BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20160114BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20160114BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20160114BHJP
   A61Q 9/04 20060101ALI20160114BHJP
【FI】
   A61K8/06
   A61K8/34
   A61K8/46
   A61K8/81
   A61Q9/04
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2007-528973(P2007-528973)
(86)(22)【出願日】2005年8月24日
(65)【公表番号】特表2008-510782(P2008-510782A)
(43)【公表日】2008年4月10日
(86)【国際出願番号】GB2005003294
(87)【国際公開番号】WO2006021782
(87)【国際公開日】20060302
【審査請求日】2008年8月22日
【審判番号】不服2013-21233(P2013-21233/J1)
【審判請求日】2013年10月31日
(31)【優先権主張番号】0419008.8
(32)【優先日】2004年8月26日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】501164056
【氏名又は名称】レキット ベンキサー (ユーケイ) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100147588
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 浩司
(72)【発明者】
【氏名】ムーズーニ ファリッド
【合議体】
【審判長】 松浦 新司
【審判官】 関 美祝
【審判官】 大熊 幸治
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第6479043(US,B1)
【文献】 特開平11−322548(JP,A)
【文献】 特開平5−170624(JP,A)
【文献】 特開平4−173725(JP,A)
【文献】 特開2002−293723(JP,A)
【文献】 特開2002−104944(JP,A)
【文献】 化粧品ハンドブック、1996年11月1日、日光ケミカルズ・日本サーファクタント工業・東色ピグメント、561〜562頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続水相中の疎水性粒子のエマルジョンである脱毛剤組成物であって、前記水相は脱毛剤を含み、前記疎水性粒子は飽和脂肪アルコール及び300〜600質量単位の分子量を有するポリエチレンホモポリマーを含み、前記組成物は前記飽和脂肪アルコールを3〜20質量%、前記ポリエチレンホモポリマー2〜5質量%含み、
前記飽和脂肪アルコールは、水に不溶性であり、25℃以下で固形であり、80℃以上の温度で液体であり、
前記ポリエチレンホモポリマーは、25℃以下で固形であり、80℃以上の温度で液体であり、
前記組成物は、乳化剤2〜10質量%を含む
脱毛剤組成物。
【請求項2】
飽和脂肪アルコールが、8〜22の炭素原子を含むアルキル鎖を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
脱毛剤が、スルフヒドリル化合物である、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
脱毛剤に対応する酸の形態に換算して、脱毛剤1〜8質量%を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
a) 飽和脂肪アルコール、乳化剤、ポリエチレンホモポリマーを、75℃以上で溶融相に一緒に混合する工程、
b) 溶融相を水相に乳化して、分散された疎水性粒子を含むエマルジョンを形成する工程、ここで、乳化前の水相の温度は60℃以上であり、
c) 40℃以下の温度にエマルジョンを冷ます工程、
d) 脱毛剤をエマルジョンに分散する工程
を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物の製造方法。
【請求項6】
i)不必要な毛が存在する皮膚に、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の組成物を塗布する工程、
ii)所定の時間、前記組成物を皮膚に接触させておく工程、及び
iii)組成物及び分解した毛を除去する工程、を含むヒトの皮膚から毛を除去する方法。
【請求項7】
塗布道具及び除去道具が、複合道具の二つの区別可能な面として一緒に結合されている、請求項6記載の方法。
【請求項8】
複合道具がグローブ、ミット又は親指なしミットである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
湿潤環境において毛のケラチンを分解するための、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型エマルジョンの形態の脱毛剤組成物、その製造方法、及びヒトの皮膚から毛を除去するためのその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不必要な体毛を除去するための組成物は、公知であり、様々なタイプがある。あるタイプの組成物は、一様に溶融した状態において、皮膚に塗布する前に加熱することが要求される。それは、その後、不必要な毛と共に皮膚から除かれる前に固化する。これは、毛が皮膚から引き離される脱毛として、当技術分野において公知である。
他のタイプの組成物は、室温で皮膚に塗布可能なクリームの形態である。そのクリームは、毛のケラチンを分解する物質を含む。従来、その組成物は、不必要な毛が存在する皮膚に塗布され、その後、所定時間そこに置かれ、毛のケラチンを分解する。その後、分解された毛と共にその組成物は、皮膚から、通常、スポンジ又はワイプ又はスパテラのような道具で除去される。そのような組成物は、脱毛剤組成物として当技術分野において公知である。
【0003】
脱毛剤組成物を、過剰な時間皮膚に接触させておいた場合、一部の使用者に皮膚の炎症を生じるリスクがある。時間が短すぎると、ケラチンの分解が不十分となる可能性があり、不必要な毛の部分的な除去しか行われなくなる。本明細書において、適切な毛の分解を達成するために毛深い皮膚と組成物を接触したままにしなければならない期間を分解時間とする。一般的な分解時間は、3〜15分である。
当技術分野においては、脱毛剤組成物が分解時間の間に他の皮膚領域に流れないか又は落ちずに余分な毛の除去が望まれる皮膚の望ましい領域に留まるように、それらを十分な粘性にする傾向にあった。それと平行して、一旦分解時間が終了したならば、その組成物及び分解された毛が皮膚から容易に濯がれるように、皮膚からの濯ぎが容易な組成物を作る傾向も存在した。例えば、EP0855900を参照されたい。
【0004】
WO 99/02125は、水中油型エマルジョンの形態の脱毛剤組成物を開示している。好ましい脱毛剤化合物は、チオグリコール酸カリウムとして記載されている。pH調節剤が存在し、好ましいpH調節剤は、石灰(水酸化カルシウム)である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
脱毛剤組成物の先行技術上の問題は、それらの濯ぎの容易さから生じる。一般的に、その使用者は、浴室内の、浴槽、洗面台又はシャワーの近く、またはさらに浴槽又はシャワーの中においてその組成物を塗布し、組成物を除去するまで数分間待たなければならないが、不注意にもその組成物を濯ぐか部分的に濯いでしまう他の方法を同時に行うことを妨げられる。これは、まだらに毛を皮膚に残してしまう可能性がある。そのため、例えば、従来技術の組成物では、使用者は、脚に組成物を塗布してその後その分解時間の間に上体を洗うこと又は髪をシャンプーすること、又は腋の下を剃ることを妨げられる。このことにより、不必要な毛の除去が望まれる時に、沐浴に必要な全時間がかなり延長されることになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
水で短時間濯がれるか又は浸された場合であっても、毛の分解が生じるのに十分な時間、皮膚の部分に残存する脱毛剤組成物を提供することにより、これらの問題は解決できることがここで見出された。
第一の態様において、本発明は、連続水相中の疎水性粒子のエマルジョンである脱毛剤組成物を提供し、ここで前記水相は少なくとも一つの脱毛剤を含み、前記疎水性粒子は脂肪アルコール及び油ゲル化剤を含む。
驚くべきことに、組成物の疎水粒子中に、脂肪アルコールと共に油ゲル化剤が存在することにより、濯ぎの水流を受けたときであっても、組成物の皮膚への付着性のかなりの改善が導かれた。組成物の離れた疎水性粒子中に位置する油ゲル化剤が、組成物のリンスアビリティー(rinse-ability)にそのような影響を与えることは驚くべきことである。
【0007】
第二の態様において、本発明は、以下の工程を含む、ヒトの皮膚からの毛の除去方法を提供する:
i) 不必要な毛が存在する皮膚に、本発明の第一の態様による組成物を、好ましくは塗布道具を用いて、塗布する工程、ii) 前記組成物を、所定時間、皮膚と接触させておく工程、iii) 組成物及び分解された毛を、好ましくは除去道具を使用して、除去する工程、及び、好ましくは、iv) 皮膚を洗う工程。
本発明のさらなる態様は、脱毛剤組成物の製造方法、及び、例えば浴室など組成物を偶発的に濯いでしまうリスクがある湿潤環境下において毛のケラチンの分解するための、前期組成物の使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
脱毛剤は、ケラチンを分解できる物質である。本発明の脱毛剤は、一つ以上の脱毛剤の混合物を含んでいてもよい。好ましい脱毛剤は、-S-H基を有する化合物を意味するスルフヒドリル化合物である。好適なスルフヒドリル脱毛剤としては、チオグリコール酸、システイン、ホモシステイン、グルタチオン、チオグリセロール、チオリンゴ酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオジグリコール、2-メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、チオキサンテン、チオサリチル酸、チオ乳酸、チオプロピオン酸、チオジグリコール酸、N-アセチル-L-システイン、リポ酸、及び化粧的及び/又は医薬的に許容され得る前記化合物のいずれかの塩からなる群が挙げられるが、これらに限定されない。
【0009】
好ましいスルフヒドリル化合物としては、チオグルコール酸、システイン、グルタチオン、N-アセチル-L-システイン、リポ酸、チオサリチル酸及びチオ乳酸及び化粧的及び/又は医薬的に許容され得るそれらの塩が挙げられる。より好ましいスルフヒドリル化合物としては、チオグリコール酸、システイン、グルタチオン及びN-アセチル-L-システイン及び化粧的及び/又は医薬的に許容され得るそれらの塩が挙げられる。最も好ましいスルフヒドリル化合物は、チオグリコール酸及び化粧的及び/又は医薬的に許容され得るそれらの塩である。ここに使用するように、スルフヒドリル化合物の「化粧的及び/又は医薬的に許容され得る塩」としては、アルカリ金属塩、例えばナトリウム塩、リチウム塩、ルビジウム塩及びカリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えばマグネシウム塩、カルシウム塩及びストロンチウム塩;非毒性重金属塩、例えばアルミニウム塩及び亜鉛塩;ホウ素塩;シリコン塩;アンモニウム塩;トリアルキルアンモニウム塩、例えばトリメチルアンモニウム及びトリエチルアンモニウム;及びテトラアルキロニウム(tetralkylonium)塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0010】
スルフヒドリル化合物の好ましい化粧的及び/又は医薬的に許容され得る塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩及びカルシウム塩が挙げられる。スルフヒドリル化合物の最も好ましい塩は、カリウム塩及びカルシウム塩である。
好適には、前記組成物は、1〜8質量%、好ましくは2〜6質量%の脱毛剤を含み、ここで脱毛剤とは脱毛剤の酸型として表したものである。例えば、前記組成物はpH12.3でグリコール酸カリウムを含むことが好ましく、これは、チオグリコール酸カリウムではなく、同等量のチオグリコール酸として表したものである。
【0011】
前記組成物はケラチン分解反応を促進する促進剤を含んでもよい。好適な促進剤としては、尿素、チオ尿素、ジメチルイソソルビド、エトキシジグリコール及びメチルプロピルジオールが挙げられる。好ましくは、促進剤は、尿素又はメチルプロピルジオールである。本発明の組成物は、促進剤5質量%〜15質量%、より好ましくは7質量%〜10質量%を含む。
前記組成物が、脱毛剤の活性化を補助するためにpH調節剤を含むことは、特に脱毛剤がスルフヒドリル化合物である場合には、特に好ましい。好ましくは、pH調節剤の量及びタイプを選び、組成物のpHを5より高く、好ましくは7より高く、より好ましくは8〜13、最も好ましくは10〜12.9、特に12〜12.7に維持する。例えば、pH約12.1〜12.7を確実にすることにより、不適当な炎症を生じることなく使用者に望ましいように、約5分以内に脱毛することができる。より高いpH値では、ある使用者には炎症という問題を生じさせる可能性がある。
【0012】
好ましくは、pH調節剤は、存在する場合、(疎水性粒子間の)連続水相にある。pH調節剤の例としては、アルギニン(特にL-アルギニン)、シリケート(例えば、珪酸ナトリウム又は珪酸カリウム)、水酸化カルシウム及びポリエチレンイミンが挙げられる。pH調節剤の混合物を使用してもよい。また、組成物の2質量%〜4質量%の量で水酸化カルシウムを含むことが、pH調節剤にとって特に好ましい。pH調節剤は、組成物の水相に溶解してもよく、又は組成物全体に分散した固形粒子として存在してもよい。
【0013】
本発明の組成物は、25℃で液体である水性連続相におけるエマルジョン(水中油型エマルジョン)として分散された疎水性粒子を含む。水性とは、連続相が、連続相の全質量をベースとして少なくとも50質量%、好ましくは70質量%以上の水を含むことを意味する。全体として組成物中の水の量は、典型的には組成物の40質量%〜95質量%となる。
本発明の組成物の疎水性粒子は、水に不溶性(不溶性とは25℃で水への0.1質量%以下の溶解性を意味する)である非極性油状又は蝋性材料を含んでいてもよいが、脂肪アルコールを含まなければならない。好ましくは、脂肪材料のアルキル/アルケニル鎖は、完全に飽和されている。好適な脂肪アルコールは、8〜22、より好ましくは16〜22の炭素原子を含む。また、脂肪アルコールの混合物を使用してもよい。好ましい脂肪アルコールとしては、セチルアルコール、ステアリルアルコール及びそれらの混合物が挙げられる。
【0014】
好適には、本発明の組成物中の脂肪アルコールの量は、組成物の3質量%以上、好ましくは5質量%以上、最も好ましくは7質量%以上である。好適には、本発明の組成物は、脂肪アルコール20質量%未満、好ましくは15質量%未満、より好ましくは11質量%未満である。
さらに、組成物の疎水性粒子は、油ゲル化剤を含む。好適な油ゲル化剤は、融点65℃〜130℃のワックス、ポリマーゲル化剤及びそれらの混合物を含む。
好適には、本発明の組成物は、油ゲル化剤0.2〜5質量%、好ましくは0.5〜4質量%、より好ましくは1〜3質量%を含む。
【0015】
好適なワックスとしては、ミツロウ、カルナウバ蝋、ベイズベリー(baysberry)、カンデリラ、モンタン、オゾケライト、セレシン、硬化ヒマシ油(キャスターワックス)、合成ワックス、例えばフィッシャートロプシュワックス、微結晶性ワックス及びそれらの混合物が挙げられる。また、ワックス、例えば、C18〜C36の脂肪酸のトリグリセリド又はグリコールジエステルは、油層用のゲル化剤として好適である。
好適なポリマー油ゲル化剤としては、ポリエチレンのホモポリマー及びコポリマー、及び炭化水素- ポリエーテル- ポリアミド-又はポリエーテル-炭化水素型のブロックコポリマーが挙げられる。
【0016】
特に好ましい油ゲル化剤は、ホモポリマーの型のポリエチレンである。好ましくは、ポリエチレンの分子量は、100〜1000、好ましくは250〜800、より好ましくは300〜600質量単位である。これは、溶融及び混合により、本発明の疎水性粒子へのポリエチレンの導入が容易になるという利点を与える。本発明の組成物における使用に好適なポリエチレンは、CH3CH2(CH2CH2)nCH2CH3の構造を持つ実質的に線状のポリマーである(nは、2〜26、好ましくは5〜15の範囲内にある平均数である)。好ましくは、ポリエチレンの少なくとも90質量%が線状である。
【0017】
粒子は、微細に分割された部分を意味し、固形粒子、液体粒子及びプラスチック状又はワックス状粒子を包含する。好ましくは、粒子は、25℃以下で固形である。好ましくはその粒子は、組成物の製造を促進するために80℃以上の温度で液体である。好適には、レーザー光散乱により(Malvern MastersizerTMのような装置を使用して)測定した場合の疎水性粒子の平均直径D4,3は、0.1〜50μm、好ましくは0.5〜20μm、より好ましくは1〜10μmである。
好ましくは、本発明の組成物は、連続水相において疎水性粒子の乳化を促進するため、及び疎水性粒子の合体に対して乳化を安定化させるために乳化剤を含む。一般的に、乳化剤は、アニオン性、カチオン性、非イオン性又は双性の界面活性剤である。好ましくは、乳化剤は、非イオン性界面活性剤である。好適な非イオン性界面活性剤としては、ポリエチレングリコール及び/又はポリプロピレングリコールのアルキルエーテルが挙げられ、それらの混合エーテル及び混合物が含まれる。乳化剤は、組成物の2質量%〜10質量%、最も好ましくは3質量%〜8質量%の量において好適に存在する。
【0018】
本発明の組成物は、疎水性粒子及び水性連続液相以外に、脱毛剤配合物に慣習的に存在する他の成分、例えば香料、油及び顔料(例えば、二酸化チタン)及び増粘剤、例えばクレーを含んでいてもよい。
増粘用の好適なクレーは、スメクタイト、カオリン、イライト、クロライト、アタパルジャイト及びその混合層クレーの地質学的部類に属する有機親和性(organophilic)及び層クレーミネラルを含んでいてもよい。これらの部類に属する特定のクレーの一般的な例としては以下のものが挙げられる:1)スメクタイト、例えばモンモリロナイト、ベントナイト、葉蝋石、ヘクトライト(hectorite)、サポナイト、サウコナイト(sauconite)、ノントロナイト(nontronite)、タルク、ベイデライト(beidellite);2)イライト、例えばブラバイサイト(bravaisite)、ムスコバイト(muscovite)、ソーダ雲母、金雲母;3)緑泥石、例えば、コレンサイト(corrensite)、苦土緑泥石、ドンバサイト(donbasite)、スドイト(sudoite);4)アタパルジャイト、例えば、海泡石及びポリゴルスカイト(polygorskyte)。
【0019】
層クレーミネラルは、天然素材又は合成品のいずれであってもよい。本発明の使用に好ましいクレーミネラルは、天然又は合成のスメクタイト及びアタパルジャイト(特にヘクトライト、モンモリロナイト及びベントナイト)であり、そのうちヘクトライトが特に好ましい。前記クレーの多くは、市販されており、市販のヘクトライトの一般的な例は、Laponites ex Laporte Industries Ltd.(イギリス);Veegum Pro and Veegum F ex R. T.Vanderbilt、(米国);及びBarasyms、Macaloids and Propaloids ex Baroid Division 、National Lead Company、(米国)である。クレーが増粘用に使用されるならば、好ましくは組成物の0.1〜10質量%、より好ましくは0.1〜1質量%の量である。
【0020】
緩衝系にリチウムイオン、ナトリウムイオン及びマグネシウムイオンを提供し、脱毛の効率を高めるため、クレー、好ましくは珪酸マグネシウムリチウムナトリウムの包含が特に好都合である。クレーが合成のヘクトライトクレー、例えばlaponiteTMであるならば、特に好ましい。
使用してもよい他の任意の水溶性増粘剤としては、CarbomerTM(アクリル酸ポリマー、好ましくは架橋されたもの)、アクリルポリマーエマルジョン(例えばアクリレート/ステアレス-20 メタクリレートコポリマー)、ポリサッカライド、セルロースベース増粘剤又は天然増粘剤、例えばアラビアゴム、アルギナート、カラギーナン、イナゴマメガム、キサンタンガム及びポリビニルアルコールが挙げられる。増粘剤の混合物を使用してもよい。
【0021】
本発明の組成物の好適な製造方法は、以下の工程を含む:
1) 脂肪アルコール、乳化剤、油ゲル化剤を、75℃以上、好ましくは85℃以上で溶融相に一緒に混合する工程、
2) 溶融相を水相に乳化して、分散された疎水性粒子を含むエマルジョンを形成する工程、ここで乳化前の水相の温度は60℃以上、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上であり、
3) 40℃以下の温度にエマルジョンを冷ます工程、
4) 脱毛剤及び任意の促進剤をエマルジョンに分散する工程。
【0022】
脱毛剤及びいずれかの任意の促進剤は、エマルジョンが冷却される後まで好ましく加えられず、脱毛剤の分解(それは実質的に高温で生じ得る)が防がれる。いずれかの任意の成分をその後加えてもよい;しかしながら、いずれかのクレーにとっては高温で加えられることが好ましい。
本発明の代替方法において、乳化前の水相の温度は、40℃未満、好ましくは25℃未満であってもよく、それにより分散される粒子を含む得られるエマルジョンの温度は、40℃以下であり、それにより脱毛剤及びいずれかの促進剤をエマルジョンに分散する前にさらなる冷却工程は必要とされない。或いは、脱毛剤及びいずれかの任意の促進剤は、水相への溶融相の添加前に、水相に存在していてもよい。
【0023】
本発明の第二の態様は、以下の工程を含むヒトの皮膚から毛を除去する方法を提供する:i)不必要な毛が存在する皮膚に、本発明の第一の態様による組成物を塗布する工程、ii)所定の時間、その組成物を皮膚に接触させておく工程、iii)除去道具を使用して、組成物及び分解した毛を除去する工程、及び、iv)好ましくは皮膚を洗う工程。
本発明の第二の態様に関して、組成物が塗布道具で皮膚に塗布されるならば、組成物が使用者の手に接触しないという利点を与え、好ましい。スポンジ又はスパテラのようなブロックの材料を使用してもよいが、好ましい塗布道具はグローブ、ミット又は親指なしミット、好ましくは組成物を透過しない内層又は膜を備えたものである。また、好ましくは、膜は水を透過しない。
組成物及び分解した毛は、好ましくは除去道具を使用して皮膚から除去される。スポンジ又はスパテラのようなブロックの材料を使用してもよいが、好ましい塗布道具はグローブ、ミット又は親指なしミット、好ましくは組成物を透過しない内層又は膜を備えたものである。また、好ましくは、膜は、水を透過しない。
【0024】
塗布道具及び除去道具が、二つの区別可能な面を有する複合道具、即ち、使用者により識別され得る前面及び背面を有し、一方が皮膚に組成物を塗布することに適しており、他方が皮膚から組成物を除去することに適しているものとして提供されるならば、特に好都合である。このことは、塗布及び除去にただ一つの複合道具のみを必要としつつ、使用者の手が組成物と接触することを最小化又は防止し、また、沐浴が行われている間に体の他の部位に組成物が偶発的に移動することを防ぐという利点を有する。好ましくは、その道具の前面及び背面は、区別可能に異なる生地及び/又は色になっている。
【0025】
好ましくは、道具は、ミット又はグローブ、より好ましくは親指なしミットであり、それは第一の材料の内層及び第二の材料の外層を、内層と外層の間に挟まれた可動性のポリマー膜の不透過性膜と共に含むものである。好ましくは、道具の前面及び背面は、区別できるように異なる生地及び/又は色のものである。親指なしミットは、片手に着けたミットにより塗布面を使用して組成物を塗布し、その後、同じ手で除去のために除去面を使用して同じミットを使用できるという利点を有する。
他の態様において、道具は、材料のブロックの形態、例えば、手で保持するのに適した長方形の平行六面体又は楕円体形状であってもよい。
【0026】
好適には、ブロックは、一部が本発明の組成物の塗布に適し、好ましくは非多孔質であり、他部が組成物及び分解された毛の除去に適し、好ましくは多孔質及びより好ましくはスポンジ状であり、さらにより好ましくは、皮膚のマッサージ又は剥離に適した感触の表面を備えているものを一緒に結合した二つの部分から形成されている。好ましくは、組成物の塗布に適した部分は、水及び組成物に実質的に不透過性である。
本発明により、本発明の組成物の、毛のケラチンを分解するための使用をさらに提供する。
本明細書の全体において、特に規定する場合を除いて、成分の質量による百分率は、全組成物の質量を指す。以下の実施例は、本発明を説明するものである。
【実施例】
【0027】
80℃において水中のセテアリルアルコール、セテアレス20、ppg-15ステアリルエーテル及びポリエチレン(存在する場合)から形成した溶融物を、85℃で乳化させ、配合表に示した配合により、組成物を製造した。得られた混合物を、脱毛剤を加える前に40℃に冷まし:他の成分を80℃から40℃に冷ましながら混合した。
例3A及び3Bは、本発明の組成物である。例1、2A及び2Bは比較例である。例1、2A、2B、3A及び3Bを、脂肪アルコール/乳化剤/ポリエチレンの質量が実施的に各例において一定となるように配合した。
【0028】
【表1】
【0029】
注意:配合物1A及び1Bは、同じ組成であるが、異なるバッチにおいて製造した。配合物2A及び2Bは、同じ組成だが、異なるバッチにおいて製造した。配合物3A、3B及び3Cは同じ組成だが、異なるバッチにおいて製造した。
パーフォーマレン400TMの平均分子量は、質量単位450であり、パーフォーマV825TMの平均分子量は655である。
表1による組成物は、以下の方法によるリンスアビリティー試験前に、気密容器中、25℃で24時間貯蔵した。
【0030】
材料及び方法
リンスアビリティ試験は、試験されるクリームの均一層をガラスプレート上に塗布し、その後、所定時間、水の連続流にさらした後にガラスプレートに残存するクリームの量を測定することにより行った。
各試験の最後にガラスプレートに残っているクリームの量を、リンスアビリティ試験が完了した後に、ガラスプレート上に残っているクリームの%として示した。
【0031】
試験1
組成物3Aを、組成物1と比較した。結果を表2に示した。
【0032】
【表2】
【0033】
試験2
組成物3Aを組成物2Aと比較した。結果を表2に示した。
【0034】
【表3】
【0035】
試験3
組成物3Bを、組成物2Bと比較した。結果を表3に示す。
【0036】
【表4】
【0037】
注意: ガラス上に残った水のために100%以下である。
【0038】
試験4
組成物3Bを組成物4と比較した。結果を表4に示した。
【0039】
【表5】
【0040】
試験5
組成物3Cを組成物1Bと比較した。結果を表5に示した。
【0041】
【表6】
【0042】
結果から以下のことが示された:
1)ポリエチレンの存在により、組成物の濯ぎ時間の著しい増加が導かれた。
2)分子量400のポリエチレンは、分子量655のものよりもより有効であるが、両方の分子量のポリエチレンはリンスアビリティーの低下を示した。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕連続水相中の疎水性粒子のエマルジョンである脱毛剤組成物であって、前記水相は脱毛剤を含み、前記疎水性粒子は脂肪アルコール及び油ゲル化剤を含む、脱毛剤組成物。
〔2〕油ゲル化剤がポリエチレンホモポリマーである、前記〔1〕記載の組成物。
〔3〕ポリエチレンの分子量が100〜1000質量単位である、前記〔2〕記載の組成物。
〔4〕脂肪アルコール3〜20質量%及び油ゲル化剤0.2〜5質量%を含む、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項記載の組成物。
〔5〕脂肪アルコールが、8〜22、好ましくは16〜22の炭素原子を含むアルキル鎖を有する、前記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項記載の組成物。
〔6〕脱毛剤が、スルフヒドリル化合物、好ましくはチオグリコール酸の化粧的に許容され得る塩である、前記〔1〕〜〔5〕のいずれか1項記載の組成物。
〔7〕脱毛剤1〜8質量%を含む、前記〔1〕〜〔6〕のいずれか1項記載の組成物、ここで前記脱毛剤とは脱毛剤の同等の酸型を表したものである。
〔8〕a) 脂肪アルコール、乳化剤、油ゲル化剤を、75℃以上、好ましくは85℃以上で溶融相に一緒に混合する工程、
b) 溶融相を水相に乳化して、分散された疎水性粒子を含むエマルジョンを形成する工程、ここで、乳化前の水相の温度は60℃以上、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上であり、
c) 40℃以下の温度にエマルジョンを冷ます工程、
d) 脱毛剤をエマルジョンに分散する工程
を含む、前記〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の組成物の製造方法。
〔9〕i)不必要な毛が存在する皮膚に、前記〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の組成物を、好ましくは塗布道具を用いて塗布する工程、
ii)所定の時間、前記組成物を皮膚に接触させておく工程、
iii)好ましくは除去道具を使用して、組成物及び分解した毛を除去する工程、及び、好ましくは
iv)皮膚を洗う工程
を含むヒトの皮膚から毛を除去する方法。
〔10〕塗布道具及び除去道具が、複合道具の二つの区別可能な面として一緒に結合されている、前記〔9〕記載の方法。
〔11〕複合道具がグローブ、ミット又は親指なしミットである、前記〔10〕記載の方法。
〔12〕湿潤環境において毛のケラチンを分解するための、前記〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の組成物の使用。
〔13〕それぞれ実施例に具体的に言及して明細書に実質的に記載された通りの、脱毛剤組成物、その製造方法又は脱毛方法。