【実施例1】
【0012】
実施例1に係る流体管切断方法につき、
図1から
図4を参照して説明する。
【0013】
図3に示されるように、本発明の流体管切断方法は、後述する流体管1の外周の一部に肉厚部4、4’を形成した後、主として、内部を上水が流れ略水平方向に延設された流体管1の外周を密封状に被覆した筐体としてのケース2と、ケース2と着脱可能に、且つ流体管1に対し略垂直方向に設けられた切断装置6とによって、切断装置6のカッタ部材62の押圧により流体管1を切断する流体管切断方法である。
【0014】
本実施例の流体管1は、断面視略円形状に形成された樹脂管である高密度ポリエチレン管から成る。尚、流体管1の材質は高密度ポリエチレンに限らずその他ポリオレフィン樹脂或いは所定の樹脂から成る熱融着可能なものでもよい。また、本実施例では流体管1内の流体は上水であるが、流体管1の内部を流れる流体は必ずしも上水に限らず、例えば工業用水であってもよいし、また気体や気液混合状態の流体が流れる流体管1であっても構わない。
【0015】
図1及び
図2に示されるように、流体管1の外面には、流体管1の径方向に2分割可能なリング部材41,42がそれぞれ配置されている。リング部材41,42の内部には、電流が流れることで発熱する加熱部としての電熱線411が設けられている。電熱線411の各端部は、ここでは図示しない外部電源線と電気的に接続可能にリング部材41,42の外面に設けた接続部41a、42aと繋がっている。同様に、リング部材41,42から管軸方向に所定長さ離間した流体管1の外面に、リング部材41,42と同様の構造であって、内部には電熱線411’が設けられ、電熱線411’の各端部が外面に設けた接続部と繋がっているリング部材41’,42’がそれぞれ配置されている。尚、リング部材41,42,41’,42’の材質は高密度ポリエチレンに限らずその他ポリオレフィン樹脂或いは所定の樹脂から成る熱融着可能なものでもよいが、流体管と同じ材質の樹脂製であることが好ましい。また、リング部材41,42,41’,42’の補強部材として一部に金属を用いてもよい。更に尚、リング部材は、3以上の多数に分割されるものであってもよい。
【0016】
図3及び
図4に示されるように、流体管1の外周面には、ケース2が密封状に取り付けられており、既設の流体管1に対し不断水状態での作業が可能となっている。本実施例においてケース2は径方向に2つに分割可能となっており、これらケース2を既設の流体管1を被覆し、ここでは図示しないフランジ、ボルト・ナットによって連結固定されるようになっている。またケース2の上部にフランジを備え、後述する切断装置6および弁装置16と連結可能となっている。さらにケース2の内部には、流体管1の管軸と略直交する上下方向において内空部15が設けられており、後述する切断装置6におけるカッタ部材62が挿通可能であるとともに、後述する流体管1の切断後に設置する弁装置16が設置可能である。なお、ケース2は、2分割に限らず、3分割など複数に分割可能であってもよい。
【0017】
次に流体管切断方法の工程順に説明すると、
図3に示されるように、先ずリング部材41,42を流体管1の外面に外嵌して、リング部材41,42の内面と流体管1の外面とを当接させる。次に、図示しない外部電源に繋がる電源ケーブルを各接続部41a,41aに接続し、前記外部電源から所定時間電源を供給する。電源供給された電熱線411が高温に発熱することで、リング部材41,42の内面と流体管1の外面を加熱し次第に溶融する。
【0018】
溶融されたリング部材41,42の内面及び、流体管1の外面は互いに融合し、電熱線411による発熱を停止し常温に下がることで一体化して凝固、すなわち熱融着される。このリング部材41、42の内面及び、流体管1の外面との熱融着により、流体管1の外面の一部に肉厚部4が形成される。また、上記と同様の工程により、肉厚部4から管軸方向に所定の長さ離間して流体管1の外面に外嵌されたリング部材41’,42’が熱融着することで、肉厚部4’が形成される。
【0019】
次に流体管1は管の一部に形成された肉厚部4、4’が前記内空部15内に位置するようにケース2によって被覆され、続いてケース2と切断装置6がボルト・ナット8によって連結される。
【0020】
ケース2には、シール材10(例えばパッキンなど)が収容されており、密封状態となっているため、管切断時に外部に流体が漏れ出すことを防止でき、流体管1の流体を不断流状態で作業が可能となる。更に肉厚部4、4’が内空部15内に位置することにより、流体管1の切断後は肉厚部4、4’がケース2の内空部15を形成する内側面15aに引っ掛かり流体管1の抜け止めとすることができる。
【0021】
流体管1にケース2が設置完了した後、流体管1の軸方向におけるケース2の両端部には、流体管1とケース2とを連結させる押輪5が取り付けられる。押輪5の内周面に配置されるロックリング11は、流体管1よりも硬い材質(例えば金属あるいはポリアセタールなどの樹脂等)で形成されるとともに、2以上に分割可能に構成されている。そして、ケース2と押輪5とをT頭ボルト9とナット12によって当接するまで締め付けると、押輪5の移動とともにロックリング11がケース2方向に移動し、この移動に伴いロックリング11の刃11aが流体管1の表面に食い込み、流体管1はロックリング11と一体となってケース2に固定されるようになり、流体管1に抜け出しの力が働いた際の抜け出し防止の作用がある。
【0022】
ケース2の内空部15に連通する開口上端部と切断装置6とが接合する面(フランジ)には、互いを接続するボルト・ナット8よりも内側にOリングが埋設されているため、ケース2と切断装置6とは密封状に接続されるようになる。また切断装置6は、図示しない駆動手段に接続され流体管1に向け軸方向に伸出する軸部材61と、軸部材61の先端に固設され流体管1を切断する鋭利な切断刃62aを備えたカッタ部材62と、カバー体13および作業弁7と、から主として構成されており、カッタ部材62を軸方向に伸出させて流体管1の外面にアプローチし、切断刃62aを押圧することにより流体管1を切断する。
【0023】
カッタ部材62が流体管1の外面にアプローチし切断を行う際には、カッタ部材62の側端部が肉厚部4、4’の近傍、つまり一方の肉厚部4と他方の肉厚部4’の間をカッタ部材62で切断する。これによれば、先ず樹脂製から成る流体管1の外周の一部に肉厚部4、4’を形成することで流体管1の強度を補強した状態で、カッタ部材62を押圧して流体管1を切断できるため、流体管1の切断時における切断面のカッタ部材62の押圧による変形を防ぐことができるばかりか、流体管1の撓曲変形によるケース2内の密封性の低下も防止することできる。
【0024】
また、流体管1の外面を密封状に取り付けられたケース2内において、流体管1の不断流状態で流体管1の切断を行うことができるため、既存のケース2を利用して、流体管1の使用を停止せずに切断作業を行うことができる。
【0025】
また、肉厚部4と他方の肉厚部4’の間をカッタ部材62で切断するように設定されているとともに、この肉厚部4、4’がケース2の内空部15内に配置するようになっているため、ケース2を流体管1に対する取り付け位置の決定が容易になるばかりか、流体管1の切断後は肉厚部4、4’がケース2の内側面15aに引っ掛かり、肉厚部4単体でも流体管1の抜け止めとすることができる。さらに、ケース2の位置決めが完了した時点で、カッタ部材62による切断位置も内空部15に配置されていることになり、カッタ部材62による切断位置の調整も容易になる。
【0026】
切断装置6による切断後は、カッタ部材62および軸部材61を上方に引き上げた後、作業弁7を閉操作して止水を行い、続いてカバー体13に替えて弁装置16が接続され、制流体であるゲート弁17が流体管1に接続される。最後に弁蓋18とケース2が連結され、弁装置16の設置が完了する。尚、制流体として、例えばバタフライ弁、緊急遮断弁、切換弁あるいはプラグ等で構成してもよい。
【実施例2】
【0027】
次に、実施例2に係る流体管切断方法につき、
図5を参照して説明する。尚、前記実施例1に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付し、重複する構成については説明を省略する。
【0028】
図5に示されるように、肉厚部14は、径方向に2以上に分割可能な略筒状の樹脂管により流体管1の外面を外嵌するように構成されており、内周面に設けられた電熱線の加熱によって流体管1の外面と熱融着され、略筒状に形成されている。
【0029】
肉厚部14の形成に続き、内空部15に肉厚部14が位置するようにケース2が配置されるが、このとき肉厚部14は、内空部15に位置する流体管1の外面の略全長に形成されているため、流体管1を切断する際には、カッタ部材62が肉厚部14ごと切断することになる。つまりカッタ部材62が肉厚部14ごと切断するため、流体管1の切断箇所が全体的に補強された状態でカッタ部材62を押圧して切断することとなり、流体管1における切片となる部分とケース2側に残る部分とがカッタ部材62の押圧により変形するのを効果的に防止することができる。また、流体管1の切断部分とその周縁全体が肉厚部14によって補強されることで、流体管1自体もカッタ部材62の押圧により撓曲変形することが防止され、流体管1とケース2との密封性が低下することがなく、外部に流体が漏れ出す心配もない。
【0030】
さらに、筒状の肉厚部14が内空部15に位置する流体管1の略全長に形成されるため、カッタ部材62により肉厚部4の近傍を切断するために必要な肉厚部14とカッタ部材62の位置設定を簡便にすることができる。したがって、ケース2を流体管1に設置する際には、肉厚部14がケース2の内空部15に位置するように設置すればよいため、ケース2の設置の位置決めが容易になる。
【実施例3】
【0031】
次に、実施例3に係る流体管切断方法につき、
図6を参照して説明する。尚、前記実施例1及び2に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付し、重複する構成については説明を省略する。
【0032】
図6に示されるように、ケース2の内空部15を形成する内面に、流体管1の管軸方向に沿ってリング状の凹部2d,2dが設けられており、流体管1に形成された各肉厚部24の一部が凹部2dに収容されている。このとき肉厚部24の外周面24aの一部が凹部2dの底面2eに当接するように配置されているため、流体管1の切断時に肉厚部24の外周面24aの少なくとも一部がケース2に設けられた凹部2dの底面2eによって支持され、切断時のカッタ部材62の押圧力に対する強度を高めることができる。そのため、切断時において流体管1に掛かるカッタ部材62による押圧力を、肉厚部24を介してケース2に分散することができ、流体管1の切断面の変形を防ぐことができるばかりか、流体管1の撓曲変形によるケース2内の密封性の低下も効果的に防止することできる。
【0033】
また、ケース2の凹部2dは肉厚部24の一部を被覆するようになっているため、流体管1切断後に流体管1に抜け出しの力が働いても凹部2dの内側面2fに肉厚部24が引っかかることで、抜け出しを防止することができる。本実施例では、ケース2に設けられる凹部2dは、内空部15内に連通するように示されているが、これに限定されるものではない。例えば、ケース2に設けられる凹部の形状は、肉厚部の外表面24aの少なくとも下方部分がケース2に支持される形状であれば、どんな形状であってもよい。更に、必ずしも肉厚部の一部のみが凹部に収容されるものに限られず、例えば肉厚部の大部分、若しくは肉厚部の全部が凹部に収容されてもよい。
【実施例4】
【0034】
次に、実施例4に係る流体管切断方法につき、
図7を参照して説明する。尚、前記実施例1ないし3に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付し、重複する構成については説明を省略する。
【0035】
図7に示されるように、前記実施例と同様にリング部材の内部にはそれぞれ電熱線が設けられ、電熱線に電流を流すことにより、リング部材の内面と流体管1の外面とが加熱され次第に溶融され、互いに熱融着されることで肉厚部34,34’が形成されている。ケース2には、内空部15よりも外側に流体管1に向けて開口する凹部20,20が流体管1に形成される肉厚部34,34’と略同一形状若しくは僅かに大形状に形成されており、凹部20,20内に収容されるよう肉厚部34,34’の形成位置が設定されている。また、流体管1の切断時には凹部20,20内に肉厚部34,34’が収容されるようにケース2が設置されるため、肉厚部34,34’が凹部20,20内において上下左右に移動するのを防止することができる。したがって、ケース2と流体管1が強固に固定されるようになるため、流体管1切断時におけるカッタ部材62の押圧による流体管1の変形および流体管1の撓曲変形によるケース2内の密封性の低下も効果的に防止することできる。また、流体管1の切断後には、肉厚部34,34’が凹部20,20内に収容されているため、流体管1に抜け出しの力が働いても抜け出しを防止することができるばかりか、内空部15方向に対する流体管1の過挿入も防止することができる。
【0036】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0037】
例えば、前記実施例では、ケース2内の流体管1の外面に肉厚部が1か所若しくは2か所に形成されている態様や、肉厚部が周方向に亘り管状に形成されている態様が説明されているが、肉厚部の態様はこれに限定されるものではなく、ケース2より外方に位置する流体管1に肉厚部が取り付けられてもよいし、流体管1の周方向に複数個所設けられてもよい。
【0038】
また、前記実施例では、内部に流体が流れている既設の流体管1をケース2で密封し、ケース2内の流体管1を不断流状態で切断する態様が説明されているが、樹脂製の流体管の切断であれば、不断流状態での切断に限られず、例えば設置前の流体管を単独で切断する態様等、多岐に渡り用いることができる。