(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5850771
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】車線逸脱警報装置および車線逸脱警報の発生制御方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20160114BHJP
B60R 1/00 20060101ALI20160114BHJP
B60R 21/00 20060101ALI20160114BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60R1/00 A
B60R21/00 626B
B60R21/00 621C
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-61219(P2012-61219)
(22)【出願日】2012年3月16日
(65)【公開番号】特開2013-196214(P2013-196214A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】松崎 千絵
(72)【発明者】
【氏名】蛭田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】酒井 重之
(72)【発明者】
【氏名】信太 健司
【審査官】
相羽 昌孝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−036645(JP,A)
【文献】
特開2011−203844(JP,A)
【文献】
特開2001−341599(JP,A)
【文献】
特開2010−211701(JP,A)
【文献】
特開2007−003286(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0007479(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00−99/00
B60R 1/00− 1/04
B60R 1/08− 1/12
B60R 21/00−21/13
B60R 21/34−21/38
B62D 6/00− 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置より入力される車両後方の撮影画像から車両の左右のレーンマークを検出するレーンマーク検出部と、
上記レーンマーク検出部により検出されたレーンマークを跨いで車両が車線から逸脱する恐れがある場合に警報を発するものであって、上記レーンマーク検出部により検出されたレーンマークの横方向の移動速度に応じて上記警報の発生タイミングを早めるようになされた警報発生部と、
上記レーンマーク検出部により検出された左右のレーンマークについて横方向の移動速度を検出する移動速度検出部と、
上記移動速度検出部により検出された上記左右のレーンマークの横方向の移動速度が同じでない場合に、上記警報の発生を禁止するように上記警報発生部を制御する警報禁止制御部とを備えたことを特徴とする車線逸脱警報装置。
【請求項2】
上記警報禁止制御部は、上記レーンマーク検出部により検出された左右のレーンマークのうち、一方のレーンマークについて上記移動速度検出部により検出された横方向の移動速度である一方の移動速度が、他方のレーンマークについて上記移動速度検出部により検出された横方向の移動速度である他方の移動速度より大きいか否かを判定し、上記一方の移動速度が上記他方の移動速度より大きいことを検知した場合に、上記警報の発生を禁止するように上記警報発生部を制御することを特徴とする請求項1に記載の車線逸脱警報装置。
【請求項3】
上記警報禁止制御部は、上記レーンマーク検出部により検出された左右のレーンマークのうち、一方のレーンマークについて上記移動速度検出部により検出された横方向の移動速度である一方の移動速度が閾値より大きくなったことを検知した場合に、他方のレーンマークについて上記移動速度検出部により検出された横方向の移動速度である他方の移動速度よりも上記一方の移動速度または上記閾値の方が大きいか否かを判定し、上記他方の移動速度よりも上記一方の移動速度または上記閾値の方が大きいことを検知した場合に、上記警報の発生を禁止するように上記警報発生部を制御することを特徴とする請求項1に記載の車線逸脱警報装置。
【請求項4】
上記警報発生部は、上記レーンマーク検出部により検出されたレーンマークと上記車両との距離が所定距離より小さくなったときに警報を発するようになされ、上記移動速度検出部により検出された左右のレーンマークについての横方向の移動速度が同じで、かつ所定速度より大きいときに、上記所定距離の値を大きな値へと変更することを特徴とする請求項1に記載の車線逸脱警報装置。
【請求項5】
撮像装置より入力される車両後方の撮影画像から車両の左右のレーンマークを検出するレーンマーク検出部と、上記レーンマーク検出部により検出されたレーンマークを跨いで車両が車線から逸脱する恐れがある場合に警報を発するものであって、上記レーンマーク検出部により検出されたレーンマークの横方向の移動速度に応じて上記警報の発生タイミングを早めるようになされた警報発生部とを備えた車線逸脱警報装置において上記警報の発生を制御する方法であって、
上記車線逸脱警報装置の移動速度検出部が、上記レーンマーク検出部により検出された左右のレーンマークについて横方向の移動速度を検出する第1のステップと、
上記車線逸脱警報装置の警報禁止制御部が、上記移動速度検出部により検出された上記左右のレーンマークの横方向の移動速度が同じでない場合に、上記警報の発生を禁止するように上記警報発生部を制御する第2のステップとを有することを特徴とする車線逸脱警報の発生制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車線逸脱警報装置および車線逸脱警報の発生制御方法に関し、特に、撮影画像を処理することによって検出されたレーンマークを跨いで車両が車線から逸脱する恐れがある場合に警報を発する装置に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、走行中の車両が車線から逸脱する恐れがある場合に警報を発する車線逸脱警報装置が提供されている。この種の車線逸脱警報装置では一般的に、カメラにより撮影された画像の処理によって路上のレーンマーク(車線境界線)を検出し、検出したレーンマークを跨いで車両が車線から逸脱する恐れがある場合に、警報を発するようになされている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
近年では、車両の後方にリアカメラを搭載し、後進する際の運転支援として車両後方の画像をモニタに表示するアシスト機能を備えた車両が増えている。そのため、車線逸脱警報装置で用いるカメラとしても、リアカメラを使用する例が少なくない。特許文献1に記載の技術でも、車両後方の左右の画像データに基づいて、走行レーンの左側境界および右側境界と車両との間の距離をそれぞれ推定し、少なくとも何れかの距離が基準値以下のときに、車両の運転者に警告を提供するように成されている。
【0004】
なお、急ハンドルを切っているときなど、車両の横方向の移動速度が速い場合には、レーンマークを跨いだ後に遅れて警報が出されてしまうことがある。このような不都合を防ぐために、車両の横方向の移動速度(つまり、撮影画像内から検出されるレーンマークの横方向の移動速度)に応じて、警報の発生タイミングを早めるようにした技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−203844号公報
【特許文献2】特開2005−182407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、リアカメラを用いた車線逸脱警報装置において、車両後方の撮影画像から検出されるレーンマークの横方向の移動速度に応じて警報の発生タイミングを早めると、分岐区間の道路を走行中のときに以下のような問題が発生してしまう。
【0007】
すなわち、
図6(a)のように車両が分岐車線のある道路を走行中のとき、実際には分岐車線に移動せず、分岐車線の隣にある走行車線に沿って直進したとする。この場合、分岐開始前は車両の左右のレーンマークを正しく検出できているが、分岐開始後は
図6(b)のように、車両左側のレーンマークを誤検出してしまう。すなわち、分岐開始時点でリアカメラの撮影画像中に直進用の破線レーンマークが写らないため、分岐開始前に検出していた車両左側のレーンマークに接続している外側の実線レーンマークをそのままトラッキングしてしまう。
【0008】
分岐車線の外側のレーンマークは、車両が実際には走行車線を直進しているために車両から次第に遠ざかり、レーンマークの検出範囲外となる。そのため、
図6(b)に矢印Aで示すように、車両左側において検出されるレーンマークが、ある時点において、分岐車線の外側の実線レーンマークから内側の破線レーンマークに大きく変化する。この場合、車線逸脱警報装置は、車両が横方向に大きく高速移動した(急ハンドルで車線変更した)と判断してしまう。その結果、警報の発生タイミングを早める制御が行われ、車線を逸脱する恐れが全くないのに警報を発してしまうという問題があった。
【0009】
なお、上記特許文献2に記載の技術では、車両前方の左右の撮影画像および車両後方の左右の撮影画像に基づいて、車線の合流区間あるいは分岐区間を走行している状態を判定し、その判定結果に応じて車線逸脱判定用の閾値を変更するようにしている。この特許文献2に記載の技術を用いれば、分岐区間において車両がどの車線を走行しているかを把握できるため、上記のような問題は回避することが可能である。しかしながら、車両の前方にもフロントカメラを設ける必要があり、リアカメラしか備えない車両には適用することができない。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、リアカメラにより分岐区間において撮影された車両後方の画像からレーンマークが誤検出された後、正しいレーンマークへと検出結果が切り替わる際の誤警報の発生を抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するために、本発明では、レーンマーク検出部により検出された左右のレーンマークについて横方向の移動速度を検出し、左右のレーンマークの移動速度が同じでない場合に、警報の発生を禁止するようにしている。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成した本発明によれば、車両が分岐区間の道路を直進しているときに、分岐開始後に外側に徐々に広がっていくレーンマークが誤検出された後、本来の正しい位置へレーンマークの検出結果が大きく移ると、一方のレーンマークについて検出される横方向の移動速度が急に大きくなる。しかし、このとき他方のレーンマークについて検出される横方向の移動速度は殆ど変わっていないので、左右のレーンマークの移動速度が同じでないと判断され、警報の発生が禁止される。これにより、分岐区間において撮影された車両後方の画像から片側のレーンマークが誤検出された後、正しいレーンマークが検出される際の誤警報の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態による車線逸脱警報装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態による移動速度検出部の処理内容を説明するための図である。
【
図3】本実施形態の警報禁止制御部により警報の発生が禁止されるケースの一例を示す図である。
【
図4】本実施形態の警報禁止制御部により警報の発生が禁止されるケースの一例を示す図である。
【
図5】本実施形態による車線逸脱警報装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態による車線逸脱警報装置10の機能構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態の車線逸脱警報装置10は、撮像装置20およびスピーカ30に接続されている。撮像装置20は、例えば、車両の後方に設置されたリアカメラである。
【0015】
車線逸脱警報装置10は、その機能構成として、レーンマーク検出部1、警報発生部2、移動速度検出部3および警報禁止制御部4を備えている。なお、これらの各機能ブロック1〜4は、ハードウェア構成、DSP、ソフトウェアの何れによっても実現することが可能である。例えばソフトウェアによって実現する場合、上記各機能ブロック1〜4は、実際にはコンピュータのCPUあるいはMPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROMに記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。
【0016】
レーンマーク検出部1は、撮像装置20より入力される車両後方の撮影画像から車両の左右のレーンマークを検出する。具体的には、レーンマーク検出部1は、撮影画像の中から画像処理によってレーンマーク候補となる線分を抽出し、抽出したレーンマーク候補の中から信頼度が高いものをレーンマークとして検出する。レーンマーク候補とは、撮影画像内に写っている被写体の輝度の違いや形状等をもとに、レーンマークの可能性がある部分として特定される線分である。
【0017】
警報発生部2は、レーンマーク検出部1により検出されたレーンマークを跨いで車両が車線から逸脱する恐れがある場合に、スピーカ30から警報を発するものである。例えば、警報発生部2は、車両中心からレーンマークまでの距離が所定距離まで小さくなったときに、警報を発する。この場合の所定距離は、車種に応じた車幅の半分よりも若干大きな値とする。
【0018】
また、警報発生部2は、レーンマーク検出部1により検出されたレーンマークの横方向の移動速度(移動速度検出部3により検出される)に応じて、警報の発生タイミングを早めるようになされている。すなわち、警報発生部2は、移動速度検出部3により検出されるレーンマークの移動速度が所定速度より大きい場合に、警報の発生タイミングを定める上述した所定距離の値を通常よりも大きな値に変更する。そして、警報発生部2は、車両中心からレーンマークまでの距離が、変更後の所定距離まで小さくなったときに警報を発する。
【0019】
移動速度検出部3は、レーンマーク検出部1により検出された左右のレーンマークについて横方向の移動速度を検出する。
図2は、移動速度検出部3の処理内容を説明するための図である。
図2(a)は、ある時間tにおいて撮影画像内から検出されたレーンマークの位置(車両中心からの距離)を示す。時間tにおける車両中心から左レーンマークまでの距離をD
Lt、車両中心から右レーンマークまでの距離をD
Rtとする。
【0020】
図2(b)は、次の単位時間後における時間t+d(dは単位時間)において撮影画像内から検出されたレーンマークの位置(車両中心からの距離)を示す。時間t+dにおける車両中心から左レーンマークまでの距離をD
Lt+d、車両中心から右レーンマークまでの距離をD
Rt+dとする。
【0021】
移動速度検出部3は、レーンマーク検出部1により時間tにおいて検出されたレーンマークの位置D
Lt,D
Rtと、時間t+dにおいて検出されたレーンマークの位置D
Lt+d,D
Rt+dとに基づいて、レーンマークの横方向の移動速度を算出する。この場合、左レーンマークの移動速度は、車両が左レーンマークに近づく方向に(D
Lt−D
Lt+d)/{(t+d)−t}である。一方、右レーンマークの移動速度は、車両が右レーンマークから遠ざかる方向に(D
Rt+d−D
Rt)/{(t+d)−t}である。
【0022】
警報禁止制御部4は、移動速度検出部3により検出された左右レーンマークの横方向の移動速度が同じでない場合に、警報の発生を禁止するように警報発生部2を制御する。具体的には、警報禁止制御部4は、レーンマーク検出部1により検出された左右のレーンマークのうち、一方のレーンマークについて移動速度検出部3により検出された横方向の移動速度である一方の移動速度が、他方のレーンマークについて移動速度検出部3により検出された横方向の移動速度である他方の移動速度より大きいか否かを判定する。そして、一方の移動速度が他方の移動速度より大きいことを検知した場合に、警報の発生を禁止するように警報発生部2を制御する。
【0023】
例えば、急ハンドルを切るなどして車両が横方向に大きく高速移動すると、移動速度検出部3により左右レーンマークについて検出される移動速度は、両方とも同じ値となる。したがって、この場合に警報禁止制御部4は、警報の発生を禁止する制御は行わない。
【0024】
一方、
図3に示すように、車両が高速道路の分岐区間を走行車線に沿って直進しているときに、分岐開始後に外側に徐々に広がっていく分岐車線のレーンマークが左レーンマークとして誤検出された後、矢印Aで示すように本来の正しい位置へ左レーンマークの検出結果が大きく移る場面を考える。
【0025】
このような場合、移動速度検出部3により左レーンマークについて検出される移動速度は、急に大きな値となる。しかし、このとき移動速度検出部3により右レーンマークについて検出される移動速度は、値が殆ど変わっていない。したがって、この場合に警報禁止制御部4は、左右のレーンマークの移動速度が同じでないと判断し、警報の発生を禁止するように警報発生部2を制御する。
【0026】
また、
図4に示すように、比較的大きな交差点には右折専用車線が設けられることが多い。このような交差点では、直進車線から右折専用車線が分岐する分岐区間を有している。そして、このような交差点の分岐区間においても、
図3に示した高速道路の分岐区間と同様にレーンマークの誤検出が生じ得る。
【0027】
つまり、
図4に示すような交差点における分岐区間において車両が直進車線に沿って走行しているときに、分岐開始後に外側に徐々に広がっていく右折専用車線のレーンマークが右レーンマークとして誤検出された後、矢印Bで示すように本来の正しい位置へ右レーンマークの検出結果が大きく移る場合がある。
【0028】
このような場合、移動速度検出部3により右レーンマークについて検出される移動速度は、急に大きな値となる。しかし、このとき移動速度検出部3により左レーンマークについて検出される移動速度は、値が殆ど変わっていない。したがって、この場合に警報禁止制御部4は、左右のレーンマークの移動速度が同じでないと判断し、警報の発生を禁止するように警報発生部2を制御する。
【0029】
なお、
図3あるいは
図4のように、誤検出されていたレーンマークの位置が本来の正しいレーンマークの位置に大きく移る場合、急ハンドルなどによって実際に車両が横方向に高速移動する場合に比べて、レーンマークの横方向の移動速度は大きな値となる。そこで、警報禁止制御部4は、移動速度検出部3により検出されたレーンマークの移動速度が閾値より大きくなったことを検知した場合に限り、警報発生の禁止制御を行うようにしてもよい。
【0030】
例えば、警報禁止制御部4は、レーンマーク検出部1により検出された左右レーンマークのうち、一方のレーンマークについて移動速度検出部3により検出された横方向の移動速度(一方の移動速度)が閾値より大きくなったか否かを判定する。ここで、一方の移動速度が閾値より大きくなったことを検知した場合に、警報禁止制御部4はさらに、他方のレーンマークについて移動速度検出部3により検出された横方向の移動速度(他方の移動速度)よりも、一方の移動速度または閾値の方が大きいか否かを判定する。そして、警報禁止制御部4は、他方の移動速度よりも一方の移動速度または閾値の方が大きいことを検知した場合に、警報の発生を禁止するように警報発生部2を制御する。
【0031】
図5は、上記のように構成した本実施形態による車線逸脱警報装置10の動作例を示すフローチャートである。なお、
図5に示すフローチャートは、車線逸脱警報装置10が起動されたときに開始する。
【0032】
まず、レーンマーク検出部1は、撮像装置20より入力される車両後方の撮影画像から車両の左右のレーンマークを検出する(ステップS1)。次に、移動速度検出部3は、レーンマーク検出部1により検出された左右のレーンマークについて、横方向の移動速度を検出する(ステップS2)。そして、警報禁止制御部4は、移動速度検出部3により検出された左右レーンマークの移動速度が同じか否かを判定する(ステップS3)。
【0033】
ここで、左右レーンマークの移動速度が同じでない場合は、
図3あるいは
図4のようなケースに該当すると判断される。よって、この場合に警報禁止制御部4は、警報の発生を禁止するように警報発生部2を制御する(ステップS4)。その後、処理はステップS9に遷移する。
【0034】
一方、左右レーンマークの移動速度が同じである場合は、ハンドルの操作によって車両が横方向に移動していると判断される。よって、この場合に警報発生部2は、移動速度検出部3により検出された移動速度が所定速度より大きいか否かを判定する(ステップS5)。
【0035】
ここで、移動速度が所定速度より大きい場合は、急ハンドルにより車両が高速に移動していると判断される。この場合に警報発生部2は、警報の発生タイミングを通常よりも早くするために、レーンマークを跨いで車両が車線から逸脱する恐れがあると判断するための基準値(警報の発生タイミングを定める基準値)となる所定距離の値を通常よりも大きな値に変更する(ステップS6)。
【0036】
その後、警報発生部2は、車両中心からレーンマークまでの距離が所定距離まで小さくなったか否かを判定し(ステップS7)、小さくなったときに警報を発生する(ステップS8)。車両中心からレーンマークまでの距離がまだ所定距離まで小さくなっていない場合は、警報を発することなく、処理はステップS9に遷移する。
【0037】
なお、ステップS5において、レーンマークの移動速度が所定速度より大きくないと判断した場合は、通常のハンドル操作により車両が移動していると判断される。この場合に警報発生部2は、ステップS6の処理を行うことなく、ステップS7,S8の処理を行う。その後、レーンマーク検出部1は、車線逸脱警報装置10の電源がオフにされたか否かを判定する(ステップS9)。電源がオフにされていなければ、処理はステップS1に戻る。電源がオフにされていれば、
図5に示すフローチャートの処理を終了する。
【0038】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、レーンマーク検出部1により検出された左右のレーンマークについて、移動速度検出部3により横方向の移動速度を検出し、左右のレーンマークの移動速度が同じでない場合に、警報禁止制御部4が警報発生部2を制御して警報の発生を禁止するようにしている。
【0039】
このように構成した本実施形態によれば、車両が分岐区間の道路を直進しているときに、分岐開始後に外側に徐々に広がっていくレーンマークが誤検出された後、本来の正しい位置へレーンマークの検出結果が大きく移ると、移動速度検出部3により一方のレーンマークについて検出される横方向の移動速度が急に大きくなる。しかし、このとき移動速度検出部3により他方のレーンマークについて検出される横方向の移動速度は殆ど変わっていないので、左右のレーンマークの移動速度が同じでないと判断され、警報禁止制御部4により警報の発生が禁止される。これにより、分岐区間において撮影された車両後方の画像から片側のレーンマークが誤検出された後、正しいレーンマークへと検出結果が切り替わる際の誤警報の発生を抑制することができる。
【0040】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 レーンマーク検出部
2 警報発生部
3 移動速度検出部
4 警報禁止制御部
10 車線逸脱警報装置
20 撮像装置
30 スピーカ