(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5850786
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】自動滴定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 31/16 20060101AFI20160114BHJP
【FI】
G01N31/16 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-85262(P2012-85262)
(22)【出願日】2012年4月4日
(65)【公開番号】特開2013-213789(P2013-213789A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000161932
【氏名又は名称】京都電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097892
【弁理士】
【氏名又は名称】西岡 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100103791
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】水谷 幸司
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 高志
【審査官】
黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−075019(JP,A)
【文献】
特開昭60−225054(JP,A)
【文献】
特開昭63−196859(JP,A)
【文献】
特開2001−249138(JP,A)
【文献】
特開2000−131328(JP,A)
【文献】
特開昭63−286763(JP,A)
【文献】
特開昭58−196461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/00−31/22
G01N 35/00−37/00
G05D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が入った容器をセットできる部位を複数箇所備えた自動サンプラー、及び、電位等を測るセンサ、滴定ノズル、液の攪拌ユニット、試料の排液用チューブを備えた測定ユニットを有する自動滴定装置において、上記センサ、滴定ノズル、攪拌ユニット及び排液用チューブを洗浄する洗浄機構を備えたことを特徴とする自動滴定装置。
【請求項2】
請求項1に係る発明の自動滴定装置において、上記洗浄機構が、自動サンプラーのアームに取り付けられた樹脂リングと、上記樹脂リングに装備された洗浄パイプよりなることを特徴とする自動滴定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動滴定装置、特に、自動滴定装置の測定ユニットの洗浄に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の試料を分析するために、滴定容器に入れられた試料に滴定試薬を滴下して当量点を求める滴定法が使用されている。
この滴定法による分析には電気滴定と光度滴定があり、電気滴定には滴定終点の検出方法の違いによって、電流滴定、分極滴定及び電位差滴定などがある。
【0003】
電流滴定法は、非分極性電極、例えば、銀―塩化銀電極と微小指示電極、例えば回転白金電極を滴定溶液に浸し、一定電圧における限界電流を測定することにより、滴定の過程での電流値の変化から終点を検知するものであり、多くの金属類の測定に使用される。
また、分極滴定法は、指示電極に外部から電流または電圧を加えて分極させて行う電示容量分析であり、代表的なものとしてカールフィッシャー水分計がある。
【0004】
一方、電位差滴定は滴定終点を電位差でとらえる方法で、検出電極としてpH電極、ORP電極、銀電極を用い、中和滴定、酸化還元滴定、沈澱滴定、錯滴定がある。
中和滴定は、例えば、塩酸溶液を既知濃度の水酸化ナトリウム溶液で滴定するものであり、pHが急激に変化する点、すなわち、この曲線の変曲点が等量点となり、この等量点から濃度計算を行うことができる。
また、酸化還元滴定は、酸化剤で還元体の滴定を行うものであり、それぞれの化学種の濃度変化と電位変化は当量点において大きな電位変化が起こるので、この変化を白金のようなORP電極で追跡するものである。
【0005】
沈澱滴定は、例えば、ハロゲンイオンの溶液に硝酸銀溶液を加えて滴定を行うものであり、銀電極を挿入し、その電位を追跡すれば、当量点では電位に大きな変化が起こるので、沈澱滴定の終点を求めることができる。
さらに、錯滴定(キレート滴定)でよく用いられるのはエチレンジアミンによる金属濃度の分析であり、pHを調節することによって多くの金属を分析することができる。
【0006】
この滴定法を行う滴定装置は、被検液の滴定状態を検知するため、滴定セルの中にセンサが挿入され、滴定状態がセンサから出力される電気信号により把握される。こうした滴定装置では、上記のように様々な種類の滴定を行うため、センサとしてガラス電極、白金電極、銀電極あるいは光度センサ等、各々の目的に応じてセンサがいくつか準備され、滴定の目的に対応して最も適当なセンサが選択される。
【0007】
また、滴定を自動的に行う自動滴定装置は、試料が入ったビーカをセットできる部位を複数箇所備えた自動サンプラーと、電位等を測るセンサ、滴定ノズル、液の攪拌ユニットを備えた測定ユニットとを備えており、自動サンプラーが有する回転可能なアームに取り付けられた測定ユニットをビーカに入った試料に順次浸漬させて測定を行うようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−131328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように自動滴定装置は、ビーカに入った試料に測定ユニットを浸漬させて測定を行うが、例えば、石油のように汚れが取れにくい試料を連続で測定する場合、汚れの発生が次回測定時の誤差要因となる。このため、自動サンプラーには測定ユニットを洗浄するための筒状の槽が固定設置されており、測定終了後必ず測定ユニットをその場所に戻して洗浄する必要があったので、自動サンプラーは上下動作2回と槽へ移動する往復時間が必要となり、次回測定までに時間を要するという問題があった。
【0010】
また、ビーカに入った試料を排液する場合、そのビーカを排液位置まで移動させた後、その位置で排液を行っているので、測定ユニットの排液用チューブに繋がったポンプユニット、測定ユニット洗浄位置での洗浄液の排液のためのポンプユニット、試料排液位置での排液のためのポンプユニットの合計3式のポンプユニットが必要であった。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するために創案されたものであり、測定時間を短縮するとともに、排液のためのポンプユニットを減少させることができる自動滴定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明の自動滴定装置は、試料が入った容器をセットできる部位を複数箇所備えた自動サンプラー、及び、電位等を測るセンサ、滴定ノズル、液の攪拌ユニット、試料の排液用チューブを備えた測定ユニットを有する自動滴定装置において、上記センサ、滴定ノズル、攪拌ユニット及び排液用チューブを洗浄する洗浄機構を備えたことを特徴とする。
また、請求項2に係る発明の自動滴定装置は、請求項1に係る発明の自動滴定装置において、上記洗浄機構が、自動サンプラーのアームに取り付けられた樹脂リングと、上記樹脂リングに装備された洗浄パイプよりなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の自動滴定装置には、センサ、滴定ノズル、攪拌ユニット及び排液用チューブを洗浄する洗浄機構が設けられており、滴定終了後その位置で洗浄・排液を行うことができるので、滴定終了後、測定ユニットを洗浄位置まで戻す必要がなく、測定ユニットの移動時間は上下動作1回と次の測定位置へ移動する時間のみとなり、次回測定までの時間を短縮することができる。
【0014】
また、滴定終了後、その位置で測定ユニットを洗浄しながら試料を排液できるので、従来の測定ユニット洗浄位置での洗浄液排液のためのポンプユニット、試料の排液位置での排液のためのポンプユニットが不要となるので、必要なポンプユニットの数を減らすことができる。
さらに、滴定終了後、その位置で測定ユニットを洗浄でき、測定ユニットの洗浄のための筒状の槽が不要となるので、試料容器を配置できる箇所を1ヵ所増やすことが可能となり、自動サンプラーにセットできる試料数を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の自動滴定装置を電位差自動滴定装置に適用した装置の全体像を示す斜視図である。
【
図2】
図1の電位差自動滴定装置の測定ユニットの詳細を示す斜視図である。
【
図3】
図1の電位差自動滴定装置の測定ユニットの断面を示す図である。
【
図4】
図1の電位差自動滴定装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】電位差自動滴定装置による滴定曲線の一例を示す図である。
【実施例】
【0016】
以下、本発明の自動滴定装置を電位差自動滴定装置に適用した実施例について図面により説明する。
図1は本発明の自動滴定装置を電位差自動滴定装置に適用した装置の全体像を示す斜視図であり、自動サンプラー1に測定試料の入ったビーカ2が複数検体セットされ、測定ユニット3が自動で各ビーカ2へ移動し、ビーカ2内の試料に浸漬される。そして、試料に滴定液が滴下され、センサにより終点が判断されると、電位差測定装置により測定結果が出力される。電位差測定装置による測定が完了すると、測定ユニット3は次の検体のビーカ2に移動する。
【0017】
図2は
図1の電位差自動滴定装置の測定ユニット3の詳細を示す斜視図であり、
図3は
図1の電位差自動滴定装置の測定ユニット3の断面を示す図である。
図2、
図3において、11は滴定ノズル、12、13はセンサ、14は攪拌棒、15はモータ、16は排液用チューブ、17はアーム、18は樹脂リング、19はL字ジョイント、20は洗浄用パイプである。
【0018】
滴定ノズル11は測定試料の目的物と反応する滴定液を滴下するノズルであり、センサ12、13は電位差自動滴定での終点を判断するためのセンサである。攪拌棒14は測定試料と滴定液を攪拌するための棒であり、モータ15はこの攪拌棒14を回転させるための駆動用モータである。排液用チューブ16は測定後の試料と洗浄液を排液するためのチューブであり、アーム17は測定ユニット3を固定するとともに、自動サンプラー1に繋がり稼働する部分である。
【0019】
樹脂リング18は洗浄液が入り洗浄用パイプ20に洗浄液を送る部品であり、L字ジョイント19は洗浄用ポンプから送られてきた洗浄液を樹脂リング18につなぐ継手である。洗浄用パイプ20は先端から洗浄液を噴出して滴定ノズル11、センサ12、13、攪拌棒14、排液用チューブ16を洗浄するもので、6本のパイプを備えており、6本のパイプが樹脂リング18に均等に設けられている。
【0020】
一方、
図4は
図1の電位差自動滴定装置の構成を示すブロック図であり、21は電位差測定装置、22は滴定液瓶、23は洗浄用ポンプ、24は洗浄液用タンク、25は排液用ポンプ、26は排液用タンクである。
電位差測定装置21は滴定液瓶22内の滴定液の試料への滴下、アーム17の駆動、モータ15、洗浄用ポンプ23及び排液用ポンプ25を制御するとともに、センサ12、13からの信号に基づいて電位差自動滴定での終点を判断する。
【0021】
洗浄用ポンプ23は洗浄液用タンク24内の洗浄液を洗浄用パイプ20に送るポンプであり、排液用ポンプ25はビーカ3内の試料及び洗浄液を排液用チューブ16から排液用タンク26へ送るためのポンプである。
なお、
図4において、
図2、
図3と同じ符号を付したものは同一であるので、説明は省略する。
【0022】
次に、
図1の電位差自動滴定装置によりガソリンの酸価を測定する場合の作用を一例として説明する。なお、この場合、滴定液として水酸化カリウム(2−プロパノール溶媒)用液を使用し、溶媒として、トルエン:2−プロパノール:水=500:495:5のものを使用する。
また、センサ12、13として指示電極と比較電極を使用する。
【0023】
滴定液瓶22に滴定液を充填した後、測定を開始すると、電位差測定装置21がアーム17を駆動して測定ユニット3を最初の試料のビーカ2に下降させ、ビーカ2内の試料に測定ユニット3を浸漬させる。次に、電位差測定装置21はモータ15を駆動して攪拌棒14を回転させて試料を攪拌しながら、滴定液瓶22内の滴定液を滴定ノズル11から滴下させる。電位差測定装置21は滴定中の溶液の状態を指示電極(センサ12)と比較電極(センサ13)の電位により判断し、電位の変化量により滴定液の注入速度を制御し、滴定液の滴下を続けていく。
【0024】
そして、電位差測定装置21は電位(pH)の変化量から当量点(終点)を検出する。すなわち、電位差測定装置21は、
図5に示すように、単位当たりの電位の変化量(微分値)が一番大きい点を算出することにより当量点を検出する。
【0025】
測定が終了すると、電位差測定装置21は洗浄用ポンプ23を一定時間駆動することにより洗浄液用タンク24内の洗浄液をL字ジョイント19、樹脂リング18を介して6本の洗浄用パイプ20に供給する。これにより、洗浄用パイプ20から洗浄液が噴出するので、滴定ノズル11、センサ12、13、攪拌棒14、及び、排液用チューブ16が洗浄される。なお、電位差測定装置21は、洗浄用ポンプ23と同時に排液用ポンプ25も駆動するので、排液用チューブ16により測定後の試料と洗浄液が吸引されて排液用タンク26に排出される。
【0026】
洗浄及び排液が完了すると、電位差測定装置21はアーム17を駆動して測定ユニット3を上昇させた後、次の試料のビーカ位置に移動させ、再び下降させることにより次の試料内に測定ユニット3を浸漬させ、次の測定を開始する。
【0027】
以上のように、測定終了後、洗浄用パイプ20から洗浄液が噴出するので、測定位置で滴定ノズル11、センサ12、13、攪拌棒14、及び、排液用チューブ16を洗浄するとともに、試料及び洗浄液を排出することができるので、滴定終了後測定ユニット3を洗浄位置まで戻す必要がなく、測定ユニット3の移動時間は上下動作1回と次の測定位置へ移動する時間のみとなり、次回測定までの時間を短縮することができる。
【0028】
また、滴定終了後、その位置で測定ユニット3を洗浄しながら試料を排液できるので、従来の測定ユニット洗浄位置での洗浄液排液のためのポンプユニット、試料排液位置での排液のためのポンプユニットが不要となるので、必要なポンプユニットの数を減らすことができるとともに、測定ユニット3の洗浄のための筒状の槽が不要となるため、試料容器を配置できる箇所を1ヵ所増やすことが可能となる。
【0029】
なお、上記の実施例では電位差自動滴定装置により、ガソリンの酸価を測定する例について説明したが、その他の様々な試料の測定を行うことが可能であり、また、上記の実施例では、洗浄用パイプを6本設けた例について説明したが、洗浄用パイプは任意の本数設けることが可能である。
【0030】
さらに、上記の実施例では、本発明の自動滴定装置を電位差自動滴定装置に適用した例について説明したが、本発明の自動滴定装置は、分極滴定、電流滴定、電気伝導度滴定あるいは光度滴定を実行する自動滴定装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 自動サンプラー
2 ビーカ
3 測定ユニット
11 滴定ノズル
12、13 センサ
14 攪拌棒
15 モータ
16 排液用チューブ
17 アーム
18 樹脂リング
19 L字ジョイント
20 洗浄用パイプ
21 電位差測定装置
22 滴定液瓶
23 洗浄用ポンプ
24 洗浄液用タンク
25 排液用ポンプ
26 排液用タンク