(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
接合されていない薄板を加熱し、かつ熱間圧延し、各カソード薄板内での厚さの差を、≧20%の加工率によって解消し、かつ、異なるカソード薄板間での厚さの差を熱間圧延によって排除して均一な厚さにし、その際、コイルへと接合すべき又はすでに接合された薄板のいずれの最小加工率も、最も薄い薄板であっても少なくとも20%加工されていなければならないことによって生じたものであることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
熱間圧延された薄板、及び/又は、熱間圧延後に分離除去されたか又は分離除去すべき端部片及び/又は側方細長片を、縦に、横に、及び/又はパターン状に分割し、かつ溶接ワイヤのための出発材料として利用することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
接合すべき薄板のエッジ部が、そのエッジ部で互いに接している薄板においていかなる箇所においても間隙が>2mmでなく、かつ同時に直線軸を有する帯状物が生じるように、該エッジ部を熱間圧延後に剪断し、該剪断の前に整列させ、その後で該エッジ部を溶接により接合することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
溶融溶接による接合の際に、溶接ワイヤとして請求項1又は2に記載されたニッケルの最小含分を有する純ニッケルワイヤを使用し、かつ、溶融溶接の際に使用するガスが窒素及びヘリウムを含有しておらず、その際、溶接用シールドガスがアルゴン100%からなっており、かつフォーミングガスも同様にアルゴンからなっており、かつ少なくとも5%の水素を含有していることを特徴とする、請求項5記載の方法。
薄板を整列させ、かつ、溶接すべきエッジ部が、そのエッジ部で互いに接している薄板においていかなる箇所においても間隙が>2mmでないように該エッジ部で剪断し、かつ、該薄板を溶接又は鍛造により接合し、その後で熱間圧延することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
溶融溶接による接合の際に、溶接ワイヤとして、請求項1又は2に記載の分析値を満たす純ニッケルワイヤを使用し、かつ、使用するガスが窒素及びヘリウムを含有しておらず、その際、溶接用シールドガスがアルゴン100%からなっており、かつフォーミングガスも同様にアルゴンからなっており、かつ少なくとも5%の水素を含有していることを特徴とする、請求項9記載の方法。
溶融溶接による接合の前に、薄板の、溶融抽出により測定可能な水素含分を、熱処理によって≦0.5wt.ppmに低減させることを特徴とする、請求項6又は10記載の方法。
熱間圧延により生じる酸化膜を、水素中での還元焼鈍によって、基体に堅固に付着する純ニッケルへと変換することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明の対象
本発明は、ニッケルカソード薄板からの、特に複数の実質的に完全なカソード薄板からの帯状物の製造に関し、その際有利には、熱間圧延前の加熱及び熱間圧延自体によって、もはやニッケルへの還元が不可能な酸化膜と、非可逆的な粒界腐蝕と、内部腐蝕とが生じることなく、薄板内での厚さの差、及び異なる薄板間での厚さの差を熱間圧延によって解消する。本願明細書中で全般的な部分又は実施例の記述の部分においてニッケルについて言及されている限りにおいて、当業者にとっては同様にコバルトも代替金属として開示されているものと見なされる。本願明細書に記載されている本発明による本質的な観点は、いずれもコバルトにも同様に該当する。
【0002】
従来技術
ニッケルからの帯状物は、主に溶融冶金学的に製造される。非金属性の酸化不純物を制限するためにはVIM法で溶融させて鋳込み、細孔を排除するためにはESU法又はVAR法で溶融させる。ニッケルの高度の鋳縮みにより生じる表面亀裂を研磨により取り除かねばならず;削り取り分は約6〜9mmである。熱間圧延は通常は約1150℃〜1250℃の温度で開始される。熱間圧延によって、表面酸化膜のみならず粒界腐蝕も生じる。酸化膜の厚さ及び粒界腐蝕を受ける表面近傍の膜の厚さは、材料の純度等級、曝露時間及び加工温度に依存する。(帯状物の両面上の)これらの膜は、全体で約50μmの膜厚を有する。酸化物は変形が困難である。酸化された膜の排除が不完全であると、引き続く冷間圧延の際にシートに取り込まれた酸化物が帯状物中の孔及び帯状物亀裂を招く。取り込まれた酸化物は表面欠陥を招く。粒界腐蝕により引き起こされた構造の損傷は、回復不可能な安定性の低下を招く。
【0003】
アーク炉及び誘導炉内で溶融を行う場合には、ケイ素又はアルミニウムで脱酸し、チタン(約0.03%)を添加することによって窒素を結合させ、かつ硫黄とマンガン(約0.3%)又はマグネシウム(約0.05%)を結合させる。マグネシウム、ケイ素、アルミニウム及びチタンは湯出しの際の脱酸にも用いられる。これらの元素は確かに部分的にはスラグ化されるものの、大部分は溶融物中に残存している。従って、このように溶融されたニッケルは、使用した各元素を>100ppm〜数千ppmの高さで有する不純物を含有している。
【0004】
従って、熱間圧延により溶融冶金学的に製造された材料の帯状物の製造は、以下の欠点を併有している:
・表面のみならず表面近傍の粒界も酸化し、かつ内部腐蝕が生じる点、
・酸化膜が、堅固に付着するのではなく、ルーズである点、
・酸化膜が二層構造であり、その際とりわけ、上方の酸化膜が、熱負荷の変化時に双方の膜の膨張係数が相違することに基づいて剥離する点、
・金属と酸化膜との間の界面に細孔が生じる点。
【0005】
結果的に、溶融冶金学的に製造されブロック及び帯状物は酸洗及び/又は研磨が必要であり、その際、表面酸化物のみならず、表面近傍の粒界腐蝕及び内部腐蝕を受けた範囲も排除される。材料の排除に必要な装置は、高い投資費用及び高い運転費用を招く。高価な材料において、かつ比較的高い精製段階で廃物が生じる。
【0006】
溶融冶金学の適用の欠点を回避するために、すでに、電解法により得られた出発材料を使用することが提案されている。
【0007】
DE2905508(Hurdelbrink)によれば、カソード薄板は「冷間法で(in einem kalten Verfahren)」(第2欄、第44行)まず剪断されて細長片にされ、この細長片は場合により横面で接合され、そのようにして製造された帯状物がさらに加工される。(縦面での接合の場合には、出発寸法のみが再度生じる。)該特許文献は、互いに溶接された実質的に完全なカソード薄板からの金属帯状物の製造法を規定することではなく、その側で剪断されたカソード薄板である細長片から形成された金属帯状物の製造法を規定したものである。完全なカソード薄板を細長片状に剪断することは、前記特許文献の請求項1の特徴部の一つである。該方法の利点は、使用される出発材料において、厚さの差が1つの板内で存在する程度で生じるに過ぎず、異なる板間で生じるような厚さの差が存在しないことである。
【0008】
完全なカソード薄板は、圧延によって長く延びた形状へと直接変えるのには適切でないと明確に記載されている(第1欄、第57行以下)。熱間圧延とは対照的に、冷間圧延の際には幅に関するマスバランスがごくわずかにしか生じないため、DE2905508に記載された方法は、 −WO2006024526に記載された方法とは異なり− 完全なカソード薄板に適用することはできない。
【0009】
(請求項6及び実施例IIIにおいて)カソード板全体の厚さを分割の前に圧延によって低減させ得ることが予定されており、「それによって所定の厚さ寸法が生じる」。明細書(第3欄、第35行以下)には、これに関して、板厚の低減によって細長片への分割が容易になることが記載されている。完全なカソード板をその製造厚で剪断することは、その円柱状の構造に基づいて、可能ではあるが極めて困難であることは公知である。従って、薄板をその完全な厚さで剪断し得るカソード剪断機は、高価な特殊製品である。DE2905508(第3欄、第31行以下)に記載されているロール分割装置は、いずれにせよ完全な板の剪断には不適当であるが、しかしながら圧延によって厚さを低減させた薄板の剪断には好適である。従って該方法は、種々の薄板の厚さ調整を行うものではなく、むしろ「剪断により細長片にすることを容易にする」ものである。
【0010】
その他の点では、カソード薄板内での、及び異なる薄板間での厚さの差については、DE2905508には言及すらなされておらず;従って該方法の記載においては、一定の厚さの帯状物の製造の課題に関しても詳細には検討されていない。このことは、例えば寸法安定性が問題とならない長く延びたアノード板を製造すべき場合にも必要でない。
【0011】
DE2905508では、巻取り機により行われる回収を伴った冷間圧延についても言及されていない。むしろ、圧延により低減されてそこで分割された薄板と、正面で接合された薄板とを接合した後であってもなおも「棒状物」との記載があり、かつ圧延後に別個の工程として巻取ることが記載されている("dann", 第4欄、第7行)。従って、DE2905508は、薄板圧延法であって、巻取り機による引張り力を伴う圧延が必須の構成要素である帯状物圧延法ではない。圧延の際に巻取り機による引張りを省略することの理由は、DE2905508には細孔不含の溶接継ぎ目の製造法は示されていないが、細孔によって有効横断面積が低減し、かつ巻取り機による引張りの際に帯状物が裂けてしまうためである。従って、製造可能な単位の質量は、圧延構造の前及び後のロール区間の長さにより制限される(「質量2tまで」;第4欄、第8行)。
【0012】
US3,722,073(Larson)には、完全なカソード薄板を、直列に、及び重なり合って配置し、そのようにして生じるパケットを逐一溶接することで安定化させ、それから熱間圧延することが提案されている。個々の薄板の熱間圧延は、明らかに取扱いに手間と費用がかかるとして排除されている(第1欄、第62行以下)。
【0013】
記載されている方法規定(例えば、加工率≧75%、有利には≧96%)は、冷間圧延後の焼鈍の際に生じる気泡形成(膨れ)を回避するためのものである。薄板が圧延の際に分離してしまうことも回避される。特別な利点として、薄板の積み重ねにより大きな製造単位が達成可能であることが示されている。個々の薄板の圧延とは対照的に、ブロックからなる高温帯状物の圧延は極めて生産性の高い方法である。
【0014】
しかしながら、熱間圧延後に、それぞれ互いに向かい合う薄板の面の5%までが接合されていないと記載されている。従って、未接合の範囲は、積み重ねられた薄板の数と共に直線的に増大する。未接合の範囲を有する薄板は市場に出すことができない。熱間圧延工程によって、細孔を有する酸化膜を有する帯状物全体がスケーリングされ、かつ深い粒界腐蝕が生じる。それに対して、積み重ねられた個々の薄板の表面腐蝕が回避されねばならない。生じる酸化膜の排除のためには、表面のジェット処理、研磨又は酸洗が必要である。
【0015】
該方法の実施態様はある種のジレンマを抱えており;熱間圧延の生産性を利用するためには、可能な限り薄い帯状物を製造しなければならない。冷間圧延機の通常の出発材料は2.5〜2.0mmの比較的薄い帯状物であり、それというのも、ニッケルは靭性であり、冷間圧延による変形は可能ではあるものの極めて困難であるためである。しかしながら、帯状物が熱間圧延プロセスにより薄くなればなるほど、スケーリングにより引き起こされたスクラップ率は高くなる。出願人により示された実施例(実施例II)において、帯状物の全厚さが3.175mmである場合に酸洗によって1面当たり0.20mmが除かれるものと仮定した場合に、スクラップ量は約12.6%である。酸洗残滓も研磨残滓も、純粋な金属として市場に出すことはできない。
【0016】
WO2006024526(EP1784273、DE102004042481;Stuth)には、熱間−又は冷間圧延前のカソード薄板の配置及び接合のための方法が記載されている。ここでは、材料が酸化されており、かつ酸化膜の除去が困難である場合には、熱間加工は回避されることが望ましい。H及びSの有害性について記載されているが、出発材料の分析に関する制限については定量化されていない。
【0017】
本願明細書に記載する方法の場合、薄板を熱間圧延する場合にはいずれにせよ上記のソーティング法は不要である。装置の制御も適合の必要がなく;その上既存の工業用装置を容易に使用することができる。
【0018】
鋼からパック帯状物を製造するための従来技術において、厚さが同じでかつ寸法安定性である薄板を溶接により接合して帯状物にすることは公知である(US1,131,037;Cary)。
【0019】
従来技術では、厚さ異なる出発材料からの帯状物を扱う必要性はなかった。なぜならば、溶融冶金学的な製造及び引き続く熱間圧延の場合には、接合すべき薄板のための出発材料は常にすでに厚さが同じであり、しかも、該出発材料がブロック鋳造法で得られたものであるのかストランド鋳造法で得られたものであるかには無関係であるためである。後で接合されるべき薄板の厚さは、意図的に調節される。
【0020】
熱間圧延による意図的な厚さ調節は、カソード薄板においてのみ生じる課題を解決する技術である。しかしながら、カソード薄板の厚さは溶融冶金学的な製造とは対照的にスラブには影響を受け得ない。その厚さは、槽中でのその位置、該位置での流れ、及び金属イオンに富む電解質の供給の近傍での流れに依存する。
【0021】
発明の課題
製造プロセスにより制限されて、ニッケルカソード薄板は以下の特徴を有している:
・内側薄板と外側薄板とで異なる硬度を有する三層構造であること。
・取っ手部の端部にスターターシートが溶接されており、かつこの箇所で材料の重なりを招くこと。
・薄板が平坦でないこと。
・1枚の板内で厚さが異なっており:総じて横断面は凸状であって厚さの差が顕著であり、かつエッジ部が下降していること。
・異なる板の平均厚が様々であること。
・円柱状の構造であること。
・水素が負荷されていること。
【0022】
薄板から帯状物を製造するためには、薄板をエッジ部で接合する必要がある。特に、接合箇所を圧延すべき場合には、互いに接して合わさる縁部は、突起部、下降部又は間隙を有してはならない。
【0023】
接合すべき薄板が均一な厚さを有しており、即ち、異なる薄板間でも1枚の薄板内でも厚さの差がなく、かつ薄板が平坦である場合には、薄板を溶接して帯状物にすることは容易になる。出発材料としてのカソード薄板において、これらの要求が問題となることはない;しかしながら、これらの要求はいずれも熱間圧延によって達成可能である。しかしながら、ニッケルの熱間圧延は、脆化、表面の酸化、深い粒界腐蝕及び内部腐蝕を伴う。従って、従来技術によれば、熱間圧延された帯状物は酸洗又は研磨を必要とする。
【0024】
本願明細書において提案する方法の目的は、1枚のニッケルカソード薄板内での、及び、異なるニッケルカソード薄板間での厚さを均一化するために熱間圧延を用いることであり、その際、帯状物内では加熱及び熱間圧延によって脆化、内部酸化及び粒界腐蝕のいずれも生じないことが望ましく、かつ、帯状物上には場合により薄くて実質的に単層の緻密な酸化膜が生じ、該酸化膜を還元焼鈍によって基体に堅固に付着する純ニッケルへと変換することができる。ここで、空気の進入を回避するために熱間圧延構造をカプセル化する必要性を回避することが望ましい。さらに、薄板はその接合の前に、該接合を熱間圧延の前に行うにせよ後で行うにせよ、同様に溶接可能でなければならない。
【0025】
焼鈍の際の金属内での気泡形成、及び冷間圧延の際のスターターシートにおける分離が回避されることが望ましい。
【0026】
加熱及び熱間圧延の際に生じる酸化膜は、該酸化膜が剥がれ落ちることなく、薄板を熱間圧延及び接合の後にコイル状に巻き取ることや、該薄板から製造された帯状物を熱間圧延の後にコイル状に巻き取ることが出来るように、塑性変形可能であることが望ましい。
【0027】
分離除去すべき縁部切断片の用途を見出すことによって、スクラップ量を低減させることが望ましい。
【0028】
前記課題は、請求項1及び2記載の本発明による方法により解決される。有利な実施態様は従属請求項に記載されている。
【0029】
解決法
定義
以下の概念を次の通り定義する:
「完全なカソード薄板」とは、電解法において生じるような薄板であると理解され、その際、吊り下げ部(ループ)はすでに分離除去されていてもよい。
【0030】
「実質的に完全なカソード薄板」とは、縁部範囲まで完全なカソード薄板であるものと理解される。該縁部範囲は、その面厚さが減少しているか、又は逆に著しく増加していることを特徴とする(即ち、吊り下げ部が薄板に溶接されている箇所で、その残部は上記部分を切断により除去した後に薄板上に残存している)。この縁部範囲は熱間圧延後に分離除去される。分割されて細長片となった薄板は、「実質的に完全なカソード薄板」の概念には含まれない。
【0031】
「帯状物」とは、少なくとも実質的に完全なカソード薄板を稜辺部で溶接し合うことによって生じる平面状の物品であると理解される。帯状物という概念は、金属工業において種々の複合語で用いられている(圧延帯、鋼帯)。カソード薄板メーカーは極めて多様な寸法の薄板を提供しているため、縦辺と横辺とは最初から確定しているわけではなく、薄板から製造される帯状物は約500mm〜数mの幅を有し得る。後者は特に、薄板を熱間圧延後に初めてその長辺で接合する場合である。これらの寸法データは単なる例証であり、これによって本方法により達成可能な帯状物の幅を最終的に規定するものではない。
【0032】
「単層での/1枚での」熱間圧延という概念は、本方法が、積み重ねられ、かつそのように固定されて熱間圧延された薄板に関連するものではないことを明示するものである。
【0033】
2つの層からなる酸化ニッケル膜は、約50:50の比を有する。「実質的に単層の酸化膜」は、双方の層の関係が≦10:≧90である場合には二層の酸化膜をも含むべきである。
【0034】
薄い酸化膜とは、1100℃に加熱して800秒間保持した場合に、約10μmの厚さを超えない膜と理解される。熱間圧延後の酸化膜厚さは、記載した適用例において2μmであった。
【0035】
最小加工率を測定する際には、薄板の最も厚い箇所を薄板厚と見なし、その際、突起部は無視する。
【0036】
「工業的なゼロギャップ」とは、そのエッジ部で互いに接している薄板において、いかなる箇所においても間隙が>2mmでなく、有利にはいかなる箇所においても間隙が>1mmでないことと理解される。ここで、薄板のエッジは面取りされていてよい。
【0037】
溶接ガスが、工業的に製造され、かつボンベ入りガスとして提供される標準混合物中に含まれているような副成分を含有している場合には、該溶接ガスは他のガス混入物を「含有していない」と見なされる。元素100%を含有すべき純ガスについても同様のことが当てはまり;アルゴン100%中には例えば以下の副成分が含まれており、かつ無害である:
【表1】
【0038】
「純ニッケル」及び「高純度ニッケル」とは、≧99.94wt.%の純度等級を有するニッケルであると理解される。
【0039】
説明
前記課題の本発明による解決法は、それ自体がすでに純粋であるカソード薄板中の許容し得る微量元素を、以下のようにして制限するか、又は意図的に排除することである:熱間圧延前に加熱する際に、また、熱間圧延自体の際に、
・粒界腐蝕及び内部腐蝕が生じないか、又は、生じたとしても、生じる酸化膜と共に還元焼鈍により排除することができる。
・酸化膜のモルホロジーが以下のように展開する:
・該酸化膜はフレキシブルであるため、薄板から製造された帯状物をコイル状に巻き取ることができる。
・生じる酸化膜を還元焼鈍によって純ニッケルへと変換することができる。それと共に、基材に対する該酸化膜の付着性、及び場合により異なる酸化膜間での付着性も重要である。該膜は加熱及び冷却の際に剥がれ落ちてはならない。
【0040】
ニッケルは、一般には純度等級に応じて、また、特に微量元素の濃度に応じて、単層又は二層の酸化膜を形成することができる。生じる酸化膜を還元焼鈍によって排除するという目的を考慮すると、二層の酸化膜は望ましくない。多様なニッケル品質の酸化の場合には、内部腐蝕及び粒界腐蝕が極めて多様な程度で生じ得る。一方では酸化膜の数と、他方では粒界腐蝕及び内部腐蝕の発生とは、明らかな関連性があるわけではなく:酸化の際に二層からの酸化物を生じるものの粒界腐蝕は示さない組成が存在する。しかしながら、研究室的に製造された≧99.997%の純度等級を有する極めて純粋なニッケルは、加熱の際に単層の酸化膜しか生じず、また粒界腐蝕も内部腐蝕も生じない。
【0041】
溶融冶金学的に製造されたNi 200の等級のニッケル品質は、比較的長い高温酸化の際に、二層の酸化膜、深い粒界腐蝕及び内部酸化を生じる。粉末冶金学的に製造されたNi 270についても、該Ni 270は電解法により取得される最良の材料と同じ高い純度等級(99.98%)を有するのにもかかわらず、同様のことが当てはまる。従って、製造法も、該方法に典型的に付随する微量元素も重要である。
【0042】
ASTM B 39−79(2004年 再承認)の分析値を達成するに過ぎない電解法により製造されたカソード薄板は、その純度等級が −溶融冶金学的に製造された材料と比較して− 明らかに高いにもかかわらず、二層の酸化膜を示し、かつ粒界腐蝕に加えて内部腐蝕も示す。従来技術によれば、カソードニッケル、即ち特に純粋なニッケルの熱間圧延後にも、サンドブラスティング、酸洗又は研磨が必要とされる(US3,722,073、例えば第7欄、第35行及び第62行)。
【0043】
一方で、研究室的に製造された≧99.997%の純度等級を有するニッケルの場合には緻密な単層の酸化膜が生じ、該酸化膜によって内部腐蝕及び粒界腐蝕が防止されることは公知である。しかしながら、このような純粋なカソード薄板の湿式冶金的な工業規模での製造は行われていない。
【0044】
考察の出発点は、工業規模での製造の際にカソード薄板の純度等級を≧99.997%に高めることは現実的でないこと、また、このようなことは、絶対的な純度等級に制限するのではなく、いざという時にクリティカルなものとして同定される特定の微量元素を制限した場合には恐らく不要なのではないか、ということであった。このことは、熱処理のような好適な方法によって、また、規格ASTM B 39−79(2004年 再承認)を満たしている場合であっても微量元素の含分が顕著に相違しているような市販の種々のカソード品質の微量元素を化学分析により選択することによって行うことができる。
【0045】
クリティカルなものとして、以下の元素が同定されている:
ガス及びガス形成性元素
場合により化学反応により初めて引き起こされる加熱の際にガスを形成する元素は、膨張し、かつ引き続き材料中でガス圧により気泡を形成するか、又は粒構造を緩和させるか、又は特に粒界上に空孔を生じさせる。これにはCが該当する。
【0046】
溶融溶接の際に溶融物の細孔性の増大又は浴噴出を招くガスも、クリティカルである。これにはH及びNが該当する。特にHは、溶接後に溶融物を冷却する際にミクロ細孔を生じる。
【0047】
偏析性元素
拡散による濃度均衡が熱処理によってもたらされずに、偏析性元素が粒界に集中しており、かつ
・そこから材料表面に達し、それにより酸化膜に進入して該酸化膜を剥離させ、
・そこで、低温で溶融しかつそれにより −特に熱加工の際に− 材料の結合を妨害する化合物を形成する(脱結合)。
【0048】
そのような元素は以下のものである:
・金属:Bi、Pb、Mn、Al
・半金属:Te、Se、Si
・非金属(メタロイド):S、P。
【0049】
Siはニッケル上に表面皮膜を形成することができ、かつ他の偏析性元素、即ちMn及びAlと共に金属上にマンガンシリケートMn
3Si
8Al
3からのガラス状の皮膜を形成することができる。これは、湿潤雰囲気中で加熱される場合に生じる。
【0050】
ニッケルに対して有利に酸化し、安定な酸化物を形成させ、従って酸化物膜中に蓄積され、かつ膜を形成する元素
そのような元素を同定するための根拠の一つが、該元素が電気陰性度において
・ニッケルよりも低い値を有していること、
これはMg、Mn、Ti、Al、Cr、Zn、Fe、Si及びSnである。
・ニッケルとほぼ同じ高さの値を有していること、
これはCo、Cu、Pb、Ag、Bi、Asである。
【0051】
加熱及び熱間圧延の際に、Mn、Si、Ti、Al、Mgの酸化は避けられない。これらの酸化物を熱処理法により分解することは殆ど不可能である。酸化に付随して体積増加が生じる場合には、これらの元素の表面近傍での酸化及び粒界上でのその酸化によってニッケルが排除される。これにより生じる表面構造は、二層の酸化膜の形成を促進する。従って、ニッケル中でのこれらの元素の含分を、可能な限り十分に制限する必要がある。
【0052】
前記課題を解決するにはクリティカルな元素の同定では不十分であり、該元素の定量も必要である。これらの元素の許容可能な含分を規定することは、微量元素間の相互作用ゆえに重要である。例えば、溶融冶金学的に製造されたニッケル品質の場合、C含分が250ppmであっても粒界の限定的な緩和が生じるに過ぎないが;電解法により製造されたこれよりもずっと低いC含分を有するニッケルでは該緩和が生じる。同様のことが硫黄についても言える:溶融冶金学的な材料中の硫黄50ppmは、電解法により製造された材料中の10ppmよりもより害が少ない。ある微量元素の単独の減少によって他の微量元素の有害な作用が増大することがあり、その場合には同様にその含分を制限する必要がある。
【0053】
制限された微量元素
微量元素、例えばH、C、N及びSが熱処理法により排除され得ることは公知である。請求項1は明らかに、加熱前ではなく熱間圧延前の微量元素に関するものである。従って、これらの限定的な分析値が、これらの元素に関連してカソード薄板のメーカーによって守られる必要はないが、但し、本願明細書において提案する方法に関してその使用が最初から排除されるわけではない。−特に緻密な− 酸化膜の形成によって、不純物を焼鈍によって排除することが不可能となる。従って、これらの元素が請求項1及び2に記載された限度を超えた場合には、該元素を場合により酸化前に排除することが必要である。
【0054】
炭素
熱間圧延温度が1100℃である場合、ニッケル中には0.5%のCが可溶である。ニッケル中での炭素の溶解度は、温度の低下に伴って著しく減少する。室温ではわずか0.02%のCがニッケル中に可溶であるにとどまる。さらに、遊離C含分は冷却の際にグラファイトとして析出する。
【0055】
ニッケルを空気中で加熱すると、Cはニッケルに対して優先的に酸化する。Cは粒界上で偏析し、そこでCは表面近傍範囲で侵入酸素と反応して空孔を形成する。Cは、高温、例えば熱間圧延温度が1100℃である場合には表面でも偏析し、かつ酸化膜中に組み込まれる。Cは、金属−金属酸化物の界面上で拡散酸素と反応して、空孔を残す。≧760℃の温度でニッケルを焼鈍した場合に表面上に認められる気泡形成も、Cに起因するものとみなされる。
【0056】
酸素との反応によってCO及びCO
2が生成される。ガス圧は、粒界の緩和により材料を脆化させ、かつすでに形成された酸化膜が破れたり裂けたりする。その場合、帯状物の研磨又は酸洗が必要である。
【0057】
カソード薄板をガスに関して分析したところ、メーカーによって平均で5.3、7.8及び28wt.ppmのO
2が認められた。Oの拡散性はCの約20倍高いため、拡散性のOは基材金属中に含まれているCと反応して、CO及びCO
2を形成することができる。従って、カソード薄板を真空下に焼鈍した場合にもCO及びCO
2のガス発生が認められる。従って、加熱の際に、ガス発生のために周囲大気からの拡散性酸素は不要である。それに応じて、ニッケルを加熱すると、表面近傍の粒界上や金属−金属酸化物の境界層上のみならずニッケル粒中にも細孔が生じる。
【0058】
上記の低い酸素含分は、真空中及び水素含有保護ガス中で焼鈍してもそれ以上減少させることができなかった。このことは第二の相の存在を示唆している。上記の高い酸素含分を有するニッケル品質の場合には、真空中で1200℃で1時間にわたって焼鈍したところ66%の酸素を除去することができた。従って、該酸素含分はその他の品質のオーダーにあった。
【0059】
熱間圧延の際には材料への酸素の進入は避けられないため、材料中に含まれる酸素の含分を低減させようとすることは無意味である。熱間圧延前のC含分を低減させることは有意義である。空孔形成、金属の脆性及び酸化膜の破れといった上記のCの作用は、C含分が<35wt.ppmである場合に −即ち、ニッケル中のCの溶解度を明らかに下回って− 初めて生じなくなる。
【0060】
真空中での焼鈍によってC含分を低減させることができる。試験によって、真空中で700℃で1時間焼鈍することによってC含分を20ppmから5ppmへと低下させることができることが判明した。湿潤水素中での焼鈍によるCの酸化は特に効果的である。水から遊離したOは表面のCと結合し、空気中での焼鈍とは違って材料中には進入しない。なぜならば、Cと結合しないOはHと結合するためである。CとOとの反応によって材料中では濃度勾配が生じ、該濃度勾配によってCが表面上に拡散し、かつそこでOと結合してCOとなる。このプロセスによって、金属体中でのガス形成による粒界の拡張が生じることなく、金属体全体がCに関して欠乏状態となる。Cを湿潤水素中での焼鈍によって低減すべき場合には、Mn、Al及びSiの含分は、これらの元素がマンガンシリケートMn
3Si
8Al
3からのガラス状の皮膜を形成しないほどにわずかでなければならない。
【0061】
硫黄
硫黄はニッケル中に50ppmまで可溶である。それを超える含分の場合には、硫黄は硫化ニッケルとして粒界上に析出する。予定された製造法の場合には、硫黄含分は場合によりこの値の1/10であってもよい。これは、焼鈍温度が約750℃以上である場合には硫黄は表面上に拡散し、かつ −数オーダー速く− 粒界上で偏析し、かつそこから表面へと移動するためである。それにより、形成される酸化膜に進入する。硫化物は等量の金属よりも大きな体積を占めるため、金属/酸化物膜の相境界上に応力が生じ、この応力によって酸化膜の剥離が促進される。その場合には、帯状物の研磨が必要になるものと考えられる。
【0062】
粒界−及び表面偏析の際には10
4〜10
5の硫黄富化(表面−からコア材料濃度)が生じるため、硫黄の有害性は試料厚さにも依存する。硫黄含分が0.6ppmを下回って初めて表面偏析が生じなくなるのにもかかわらず、熱間圧延の前に1100℃に加熱されるカソード薄板の厚さが12〜15mmである場合には、5wt.ppm未満の硫黄は無害である。
【0063】
短い加熱−及び圧延時間、及びこの場合に達する温度では、金属体の深部からの硫黄の拡散及び偏析は限定的である。従って、薄板厚さと関連づけた許容可能な硫黄含分の規定を省略することができた。
【0064】
薄板厚さがほぼ同じである場合にS含分が5ppmよりも高いカソード薄板品質の場合には、硫黄含分を乾燥水素中での高温焼鈍によって低減させなければならない。この場合、硫黄は表面上を拡散し、かつそこで蒸発するか又は水素と反応する。
【0065】
酸化膜の形成によって、不純物を焼鈍によって排除することが妨げられ、該不純物は酸化膜中か、又は金属と酸化膜との界面上に集結する。従って、表面が酸化する前に高温焼鈍を実施しなければならない。
【0066】
ケイ素
Siは、ニッケルに対して優先的に酸化してSiO
2を形成する。電解法により製造されたニッケルにおいて、Si含分は、まとまったSiO
2中間膜を形成し得るほどには十分に高くはない。しかしながら、SiO
2はNiO膜下に島状物を形成し得る。SiO
2とNiOとの膨張係数の相違に基づき、加熱後に材料を冷却することによってNiO膜は部分的に剥離する。
【0067】
Si酸化物を乾燥水素中での焼鈍によって還元することはできず;該酸化物が富化されている膜が熱間圧延後に除去されない場合には、該酸化物は金属中に圧延導入される。従って、Si含分は厳密に、とりわけ<15wt.ppmに制限されねばならない。
【0068】
マンガン
マンガンはニッケルの酸化を促進する。マンガンはニッケルに対して優先的に酸化し、粒界及び表面上で偏析し、かつニッケル/酸化ニッケルの境界層上に酸化物を形成する。マンガンはCに対しても優先的に酸化するため、マンガンによってCの酸化が遅延する。
【0069】
従って、マンガン含分は<14ppmに制限されねばならない。
【0070】
マグネシウム
マグネシウムはNiに対して優先的に酸化する。Si、Mn及びMgを含有する粒子は、ニッケル/酸化ニッケルの境界層上に酸化物を認めることができる。マグネシウムは多孔性を助長する。なぜならば、その酸化物は小さなモル容積を有しているためである。マグネシウムの酸化物は、C中での焼鈍によってもH中での焼鈍によっても還元することができない。
【0071】
従って、マグネシウム含分は<11ppmに制限されねばならない。
【0072】
アルミニウム
NiAl合金は基体に堅固に付着する保護性のAl
2O
3膜を形成し、該膜によって、周期的に温度操作をしても材料が高温耐性となる。しかしながら、電解法により得られたニッケル中のAl含分は、まとまったAl
2O
3膜の形成をもたらし得るには低すぎる。
【0073】
Al含分が1モル%までと低い場合には、アルミニウムの高い酸素親和性に基づく選択的な酸化によって基材中にAl
2O
3が生じる。ニッケルイオンはさらに外側へと拡散し、そこでNiO膜が生じる。従って、Alは膜形成の傾向にある。酸化アルミニウムは極めて硬質であり;圧延の際に変形せず、かつシートを圧延した場合には孔形成を招き得る。Al酸化物を乾燥水素中での焼鈍によって還元することはできず;該酸化物が富化されている膜が熱間圧延後に除去されない場合には、該酸化物は金属中に圧延導入される。
【0074】
従って、Al含分は厳密に<7wt.ppmに制限されねばならない。
【0075】
チタン
チタンは表面へ移動し、かつ優先的に酸化してTiO
2となる。TiO
2は通常の熱処理措置による還元が不可能である。従って、チタン含分は<25wt.ppmに制限されねばならない。
【0076】
制限されない微量元素
請求項1及び2に挙げられたもの以外の元素が記載されていないということは、そのような元素が有害でないことを意味するのではなく、規格ASTM B 39−79(2004年 再承認)を満たす純度等級の材料を電解法により製造する場合には、そのような元素が典型的には生じないか、有害な量では生じないか、又は本願明細書において提案する方法様式によって、該元素が無害となるように低減されるということを意味する。これには、例えばそれ自体が有害である微量元素、例えばBi、Pb、Te、Se及びPが該当する。
【0077】
コバルト
本願発明において目指した方法に関して、コバルトはニッケルと同様の挙動を示す。従って、コバルトの含分は制限される必要はない。コバルトはニッケルよりも明らかに高価である。従って、コバルトはニッケルを取得する際に分離され、かつ別個に取得される。従って、ニッケルカソード薄板中のコバルトの含分は通常は60ppm未満である。しかしながら、試験材料においては200ppmも確認されている。
【0078】
クロム
クロムはニッケルよりも高い酸素親和性を有する。それにもかかわらず、初めに、空気中で1000℃の温度での酸化の際には、より高い反応速度に基づいてまずはNiO膜が生じる。加熱が進行すると、ニッケル中に含まれるクロムが表面方向へと拡散する。
【0079】
クロム活性は合金中での濃度に依存する。ニッケル中のクロムが7at.%までの場合には、スケール定数は他の全ての金属微量元素の場合よりもはるかに増加し、多価金属イオン、例えばCr
3+カチオンがNiO膜中に組み込まれる。ニッケル中に微量のクロムのみが含まれている場合には、クロム活性はより低くなる。クロムは100ppmの含分まで無害である。
【0080】
典型的には、試験したカソード薄板中のクロム含分は<5ppmであった。このクロム含分では、酸化クロムの連続層は生じない。クロム含分の制限は不要である。
【0081】
鉄
本願発明において目指した方法に関して、鉄についてはクロムと同様のことが言える。FeもNiに先行して酸化する。従って、高いFe含分であっても許容可能であることは意想外である。
【0082】
酸化鉄は乾燥水素中での焼鈍によっても分解し得る。いずれにせよ、そのような焼鈍による酸化ニッケルの還元は本方法の一部である。酸化鉄は、200ppmまでは本願明細書において提案する方法に対して有害な作用を及ぼさない。試験したカソード薄板中の鉄含分は>5でかつ<200ppmであった。従って制限は不要である。
【0083】
銅
ニッケルは銅に先行して酸化し、銅は粒界上でも偏析しない。さらに、酸化銅は乾燥水素中での焼鈍によって低減し得る。分析した品質において、75ppmを上回る銅は認められなかった;この値までは、銅は無害である。制限された分析値を伴う薄板において、銅含分は1ppm未満である。従って、カソード薄板の許容可能な銅含分は制限される必要はない。
【0084】
水素
種々のカソード薄板品質を、その水素含分に関して試験した。ここで、少なくとも0.6wt.ppmの水素含分が認められた。これは標準条件下で5.3vol.−%に相応する。しかしながら、1.1及び3.2vol.−%の含分も認められた。
【0085】
水素は溶融溶接の際に際立って有害であることが判明した。水素は、不規則的な溶接継ぎ目を招く浴噴出を生じさせ、かつ溶接継ぎ目のミクロ細孔を引き起こす。
【0086】
従って、Hを溶融溶接の前に<0.1wt.ppmの残留含分にまで低減させねばならない。これは、熱処理(単なる250℃で数日間の加熱、ないし真空中又は保護ガス下での焼鈍)によって行うことができる。計算上、原子状水素は、厚さ6mmの薄板から1100℃の焼鈍温度で約4分後にガスを発生させる。熱間圧延後に問題なく溶接し得るように水素含分を低減させるためには、熱間圧延前に、連続炉中で1100℃で800秒の通過時間での加熱で十分であることが判明した。90゜曲げ試験の際に、亀裂形成は半径4mmの周囲では認められなかった。
【0087】
薄板を熱間圧延の後に初めて溶接して帯状物にする場合には、前記方法によって、水素含分の制限が不要となる。薄板を熱間圧延前に溶融溶接により接合する場合には、水素を予め熱処理により排除しておくことが望ましい。
【0088】
窒素
窒素の含分は関連性があり、それというのも、材料中に存在している窒素は溶融溶接の際に細孔形成を招き得るためである。カソード薄板において、ガス分析の際に<2wt.ppmの窒素が認められた。この窒素量は、溶接の際には無害である。
【0089】
これを明らかに超える窒素含分は、乾燥水素中での焼鈍により低減させることができる。
【0090】
達成された利点
請求項2に記載された分析値を満たす材料を使用して試料コイルを製造した場合、該材料は熱間圧延後に平均で厚さわずか2μmの酸化膜を生じ、該酸化膜を高対流ベル型焼鈍における乾燥水素中での焼鈍により還元して、純ニッケルとすることができることが判明した。
【0091】
薄板を熱間圧延前に接合し、その後でコイルボックスを介して複数フレームの熱間圧延路に導入し、かつこの未加工帯状物をコイルボックス中で酸化からの保護なしに還元雰囲気により比較的長時間にわたって加熱する場合にも本方法が適用可能であるか否かを調べるために、24時間の酸化試験を1100℃で実施し、次いで、請求項2に相当する薄板に対して1160℃で4時間の還元を実施した。C含分は真空焼鈍により<5ppmに低減した。
【0092】
ここでも単層の酸化膜のみが生じたが、該薄板は、内部、特にスターターシートの境界領域内に多数の細孔を有していた。同様に粒界上にも細孔が認められた。REM−EDXを用いた細孔の試験によって、細孔内壁は表面近傍(0.1mm)の下方では酸化されていないことが判明したため、細孔形成は空孔の集積及び格子欠陥に起因するものと見なすことができる。これは、元のスタート薄板界面上に顕著な細孔縁部が存在するためである。このことは、スターターシートの硬度と電解法による成長部の硬度とが明らかに互いに相違しており、かつ電解法による析出物が顕著な応力下にあることを想起させる。1100℃の場合、焼鈍時間が24時間経過した後に、表面近傍における細孔内壁の内部酸化も生じる(
図4を参照のこと)。後続の、5%のH
2を含む保護ガス中での還元の際には、この内部酸化物も還元された;還元焼鈍の試料において、環状間隙により包囲されている丸い「ニッケルパール」が現れた。この現象は、水素によって材料内部においても還元された酸化物である。該環状間隙はNiOからNiへの体積収縮に基づいて生じたものであり;該環状間隙は同時に反応生成物(H
2O)を受容する。しかしながら、内部酸化の強さは、溶融冶金学的に製造されたニッケルの場合よりも著しく低い。
【0093】
被覆層はフォーム状であり、完全に還元されている;該被覆層は基材に良好に付着している(
図5を参照のこと)。
【0094】
上記方法を用いて、例えば熱間圧延後に研磨又は酸洗が必要であるといった熱間圧延の欠点を甘受する必要なく、熱間圧延の利点、特に幅におけるマスバランスを利用することができる。本方法の利点はさらに、製造を、既存の工業用装置で、その制御に適合させる必要なく行えることである。厚さによる薄板の選り分けは不要であり、それというのも、全ての薄板が熱間圧延後には同じ厚さであるためである。厚さが一定であることによって、特に薄板が熱間圧延後にさらに整列されている場合には、該板を溶接して帯状物とすることも容易になる。なぜならば、板の高さを揃える必要がなく、かつ、溶接された板間で異なる厚さを適合させるべく楔形の橋状物を製造する必要もないためである。
【0095】
そのため、使用可能な材料を選択する際には、分析値の顕著な制限を、ASTM B 39−79(2004年 再承認) −LMEで取引されているカソード品質が満たさねばならない規格− と比較して行う必要がある。請求項1及び2に挙げられた微量元素を超えることは、これらの微量元素が熱処理法により許容可能な値にまで低減される場合にのみ許容され得る。
【0096】
本発明のその他の対象は、カソード薄板を製造するためのスターターシートとしての、上記方法工程により製造された帯状物の使用である。
【0097】
さらに本発明の対象は、ワイヤを製造するための出発材料としての、特に少なくとも99.94%のニッケル含分を有する溶接ワイヤのための出発材料としての、及びカソード薄板を製造するためのスターターシートとしての、上記方法工程により製造され、場合により分割された帯状物又は薄板の使用である。
【0098】
本発明の他の対象は、上記方法工程のいずれかにより得られるスターターシートである。
【0099】
本発明の他の対象は、縦に、横に、及び/又はパターン状に分割された薄板又は帯状物、及び/又は、熱間圧延の前又は後に分離除去された寸法の不安定な端部片及び/又は側方細長片から、上記方法工程のいずれかにより得ることができる、ワイヤ、特に溶接ワイヤである。これに関して、ワイヤ製造のために所定の薄板部分を切断して矩形の断面を有する細長片(該細長片は曲がっていてもよい)にし(
図6を参照のこと)、かつ正面で有利には突合せ溶接により溶接する。張り出している溶接縁部のバリ取りを、例えばはさみによるバリ取りにより行い、その後で圧延又は伸線により加工してワイヤにする。
【0100】
本発明を実施例により説明する。
【実施例】
【0102】
適用例:制限された分析値を伴うカソード板からの帯状物の製造
出発材料
選択した厚さ12〜15mmの出発材料は、熱間圧延前に以下の分析値を有していた:
【表2】
【0103】
該材料は、通常は、取っ手部を伴って重さ約1tのパレットで供給される。該取っ手部を切り離す。個々の薄板は、長さ1280mm、幅720mm及び厚さ12〜15mmであった。
【0104】
電解法により製造された薄板は、表面上にいわゆるノジュール(こぶ状欠陥)を有している。このノジュールは基材薄板と堅固に結合しており、かつ円錐状に構成されているため、薄板全体を研磨する必要はないことが判明した。若干の、特に突出したノジュール(該ノジュールのベースに対して高さ約6mm以上)を研磨により除いた。
【0105】
加熱
該材料は析出プロセスにより高応力下にある;そのため、該材料は真空焼鈍又は保護ガス下での焼鈍によって、事前の変形なしであっても再結晶しうる。そのために、温度700℃で1時間の焼鈍時間に達する。連続炉中で1100℃で800秒間焼鈍した。事前の熱処理によって特定の微量元素を低減させることはしなかった。通常は、焼鈍温度は約900〜1290℃である。
【0106】
カソード品質に応じて、供給状態で、0.6、1.2及び3.2wt.ppmの水素含分が認められた。350℃で1時間真空焼鈍すると、該含分は1.2から0.1ppmに低下し、750℃では3.2から0.1ppmに低下する。水素含有保護ガス下に焼鈍すると、400℃で1時間の焼鈍時間の際に最も低い値に達し、より高い温度では水素が保護ガスから金属中に溶解する。溶接の際に浴噴出がもはや生じないように水素の脱ガスを行うには、連続炉中で1100℃で800秒間の焼鈍で十分である。
【0107】
熱間圧延
カソード薄板をヒーター中で熱間圧延して均一に6mmにし、即ち、該薄板を50〜60%加工した。請求項3で要求されている最小加工率は、ロールの送り込みないし圧延計画によって保障することができ、かつ該基準値の保持を圧延構造中に取り付けられた厚さ測定機器によって調べた。材料中での気泡発生を回避するための、US3,722,073で要求されているような少なくとも75%の加工は不要であった。
【0108】
帯状物の熱間圧延は極めて廉価なプロセスであり、いずれにせよ冷間圧延による厚さの低減よりも廉価である。従って、熱間圧延によってすでに可能な限り薄い、例えば厚さ<4mmの帯状物を製造し、残りの加工を冷間圧延によって行うというように、帯状物の全体の厚さの減少を熱間圧延と冷間圧延とで有利に分けて行う。これは、US3,722,073に記載されている実施例に相当する(高温帯状物厚さ:3.175mm;第5欄、第56行及び第6欄、第24行)。
【0109】
それに対して、薄板の熱間圧延は帯状物の冷間圧延と比較して比較的高価なプロセスであるため、厚さの低減は利用可能な冷間圧延ユニットによる最大加工可能厚さに制限される。これは本ケースの場合6mmである。
【0110】
熱間圧延を約1070℃の温度で開始した。ニッケルを通常は875℃〜1250℃の温度で圧延する。これは、US3,722,073に記載されている温度範囲を包含する。
【0111】
出発材料の厚さが異なることによって、圧延の際に種々の薄板幅がもたらされる。最も幅の狭い薄板によって、製造可能な帯状物の寸法が決定され;これを超える幅はスクラップ発生を招く。薄板を圧延の際に押圧することによって、熱間圧延段階で、異なる薄板厚によって異なる薄板幅が生じることを防ぐことができる。
【0112】
加工率が全体でわずか約50%であっても、加熱及び熱間圧延によってスターターシートと成長部との緊密な結合がもたらされるため、後の冷間圧延の際に薄板の間隙はもはや生じない。構造は熱間圧延後に完全に再結晶化している(
図1を参照のこと)。平均粒径は62μmである。粒度を、直線外挿法により、粒界エッチングを伴う金属組織断面図をもとに求めた。ASTM E 112により決定した粒度は5.4である。酸化膜の平均厚さは約2μmであり;該厚さは、帯状物の横方向から見た金属組織断面図をもとに求めたものである(
図2を参照のこと)。酸化膜は単層のみである。内部腐蝕又は粒界腐蝕は認められなかった。
図3は、熱間圧延した材料を研磨し、内部腐蝕を現した図である。該図中に視認可能な長さ約100μmのパール状の並んだ第二の相を、焦点深度試験に基づき標本不純物として同定することができた。
【0113】
求めたビッカースによるマクロ硬さは98HV10であり、測定したビッカースによるミクロ硬さは平均で103HV0.2であった。
【0114】
薄板を熱間圧延後に整列させ、さらに剪断機を備えた熱間圧延装置中で均一な幅となるように剪断し;細長部を分離除去した。
【0115】
取っ手部と、熱間圧延後に寸法の不安定な側方エッジ部とを分離除去することによって、全体で約20%のスクラップ率が生じる。使用した純粋な出発材料に関しては、LMEの相場に対して割増価格を支払わねばならず、他方ではスクラップはLMEの相場に対して値下げしてしか市場に出せないため、スクラップの回避及びスクラップの利用は、本願明細書において提案する方法の不可欠な要素である。端部片の寸法不安定な部分を厳密に決定してこの部分のみを分離除去すれば、スクラップ割合はすでに約6.5%低下し得る。これは、例えばウォータージェット切断加工によって達成可能である。それでもなおも残存する細長部及び側方細長片は、縦に、横に、及び/又はパターン状に分割することができ(
図6を参照のこと)、かつ、ワイヤを製造するための出発材料として、とりわけ、請求項6及び10により使用可能な高純度溶接ワイヤを製造するための出発材料として利用できる。高純度ニッケルワイヤ及び−フラットワイヤに関して、一連の用途、例えば高純度ニッケルの高い正の抵抗温度係数(PTC)を利用した、例えばグローピンプラグ中で加熱コイルの温度調節及び−制限の機能を果たす温度センサ又は制御コイルとしての製品が存在する。もう1つの用途は、溶接の際に使用される、間隙帯状物又はフラットワイヤから製造されるコアードワイヤである。
【0116】
接合
圧延による取り込み物を生じることなく圧延可能である溶接継ぎ目の製造は、精密な作業である:
・薄板は平坦でなければならず、さもなくば突出部及び陥没部が生じ、これらは圧延欠陥、特に薄板加工きずを招く。
・薄板を、正面で工業的なゼロギャップで互いに接して合わせる必要がある。なぜならば、さもなくば溶融液状金属が沈み込んでしまうためである。
・溶接継ぎ目は帯状物縁部で下降していてはならず、さもなくば帯状物全体の縁部処理が必要となるためである。
・溶接の際に、溶接継ぎ目のわずかな隆起が生じなければならず、なぜならば、下降は圧延欠陥を招くためである。
【0117】
薄板を揃えた後で2mm、有利には1mmを超える間隙がいずれの場所においても生じないように、エッジ部を、分離法、特に分割、かんながけ、削剥及び切断によって、取り去ることが必要である。
【0118】
薄板を直角に剪断することは、スクラップ回避のために有利であるが;しかしながら、薄板が溶接前に工業的なゼロギャップで互いに接して合わさっている場合には、接合すべき薄板を相応する角度で剪断するか、又は波状に剪断することも可能である。その場合、溶接継ぎ目は直角で剪断した場合よりも長くなり;従って溶接継ぎ目の耐久性は向上する。しかしながらスクラップ率も上昇する。長い溶接継ぎ目の生成は、実施例では不要であった。
【0119】
接合すべき薄板を合わせるところで面取り部を30゜からフライス加工し、その際、縦エッジ部に対して厳密に90゜の角度でラインをフライス加工したが、ここで、該縦エッジ部を後で薄板を揃えるのに役立てた。面取り部は、かんなで削ってもよいし、3Dヘッドを備えたウォータージェット切断装置によって切断してもよい。
【0120】
薄板を、フライス加工後に工業的なゼロギャップで揃え、かつTIG法で純ニッケルワイヤを用いて二層で溶接した。帯状物縁部で下降している溶接継ぎ目に基づいて帯状物全体の縁部処理が必要となることがないように、入口−及び出口ピースを用いて作業した。溶接の際に、溶接継ぎ目がわずかに隆起するように調節する。なぜならば、溶接継ぎ目の下降は圧延の際に重なりを招き得るためである。ニッケル帯状物の始端部及び終端部にパイロット帯状物を溶接する。溶接により生じる帯状物を板状で巻き取る。
【0121】
高純度であるため比較的軟質なニッケルは、摩擦撹拌溶接(FSW)による接合も可能である。この場合、工具回転数約1200rpmでかつスピンドル力(z軸)約9KNで、溶接速度は約100mm/分に達する。材料の予備加熱及びフォーミングガスの使用は不要であることが判明した。TIG溶接の際に必要な高価な純ニッケル溶接ワイヤは使用しない。
【0122】
しかしながら、タングステン−レニウム、他の硬質金属及びMMC(metal matrix composite;金属マトリックスコンポジット)からの工具の使用は、摩耗により溶接継ぎ目の汚染を招く。それによって、帯状物全体にわたる均一な高さの純度等級の維持が危ぶまれる。溶接継ぎ目の汚染を回避するために、PCBN(多結晶立方晶窒化ホウ素)からの装備を有するピンを使用することができる。PCD(多結晶ダイヤモンド)は適当でなく、それというのも、約700℃以上の作業温度で、ダイヤモンドを構成する炭素がニッケル中に拡散してしまうためである。工具において使用するためのPCBNは、とりわけWest Bountiful, Utah, 米国在のSII Advanced Materials(Smith International Inc.の事業単位)からMegaStirの商標で市販されている。
【0123】
溶接用シールドガスとしてアルゴン100%を使用し、フォーミングガスとしてAr 95%+H
2 5%を使用した。ヘリウムは使用すべきでない。希ガスとしてのヘリウムが溶接溶融物と反応しないという事実は、シールドガスとしてのその使用の際に細孔を生じないことを意味するものではない。溶接ガス中又はフォーミングガス中の窒素は細孔を形成
する。
【0124】
シールドガス及びフォーミングガスによる溶接範囲の保護、及び溶接ワイヤとしての純ニッケルワイヤの使用に基づき、溶接の際に材料の純度等級が損なわれることはない。生じた溶接継ぎ目は十分に堅固でかつ細孔不含であるため、該溶接継ぎ目をさらに圧延し、かつ帯状物を完全に巻取り機による引張りを伴って冷間圧延することができる。
【0125】
熱間圧延及び溶接の後に、まとまった溶接継ぎ目を有する材料試料は以下の値を有している:
【表3】
【0126】
引張試験の際、材料は溶接継ぎ目においてではなく、基材において破損する。
【0127】
酸化膜が破損又は剥離することなく、ニッケル帯状物をコイル状に巻き取ることができた。溶接により薄板から製造されたコイルは、構造用鋼からのそれぞれ長さ4mのパイロット帯状物を含めて、1.9tの重量を有していた。
【0128】
ブランク焼鈍
帯状物の一連の用途(例えばニッケル箔から製造される電子部品)のためには、最終寸法に圧延された帯状物が介在物を含んでいないことが必要である。少なくともこの場合、熱間圧延により製造された帯状物が酸化物を含んでいないことが必要である。さもなくば酸化物が冷間圧延の際に材料中に取り込まれてしまい、そこで非金属介在物を招く。このような介在物はその硬度に基づいて帯状物の変形に関与しない。その場合、箔の製造の際、又は深絞り加工の際に、材料が裂ける可能性がある。
【0129】
水素によるNiOの還元の際に必要なH
2/H
2O比は、エリンガム図をもとに決定することができる。それによれば、例えばニッケルを1160℃で焼鈍する際には少なくとも10
-2のH
2/H
2O比が必要である。水素中での焼鈍により表面酸化膜を還元した場合には、スポンジ状の表面構造が生じる。
【0130】
冷間圧延
溶融継ぎ目を平らにするため、最初の圧延を約30〜50m/分の低速で行う。溶融冶金学的に製造されたニッケルのような材料は、他の方法で圧延することができる。
【0131】
先行する熱間圧延の後に冷間圧延を行うと、薄板の分離は確認されない。
【0132】
再結晶焼鈍
用いるべき焼鈍温度は、出発材料の粒度、帯状物の厚さ、及び冷間圧延度に依存する。純ニッケルは中間焼鈍なしで約97%まで変形可能である。88%の加工後には、再結晶のためには2時間の焼鈍時間で200℃の焼鈍温度で十分である。
【0133】
本発明により使用される、微量元素の制限された値を有する出発材料は、水素100%及び焼鈍温度≧760℃、即ちUS3,722,073によれば材料中で気泡形成が生じる条件下での焼鈍であっても、気泡形成を妨げる。本願明細書に記載した方法によって、焼鈍雰囲気及び焼鈍温度を選択する際の自由度が向上する。
【0134】
US3,722,073では、目的の達成が、熱間圧延における高い加工率(温度に依存して:75%〜92%、有利には96%又はそれを上回る)と、低く(第2欄、第31行)かつ特に有利である(第4欄、第63行)と見なされている510〜650℃の焼鈍温度とによって試みられている。本願明細書に記載されている方法の場合には、個々の板を熱間圧延する場合には必ず、(それぞれ出発材料から算出された%での)大部分の加工率が冷間圧延によって達成される。冷間圧延における全加工率が高いため、焼鈍温度はUS3,722,073に記載されている下限を明らかに下回ることができる。