特許第5850907号(P5850907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5850907
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】チャック
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20160114BHJP
【FI】
   B25J15/08 E
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-273023(P2013-273023)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-127074(P2015-127074A)
(43)【公開日】2015年7月9日
【審査請求日】2015年4月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(72)【発明者】
【氏名】山中 修平
【審査官】 牧 初
(56)【参考文献】
【文献】 実開平7−40083(JP,U)
【文献】 特開平6−55481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部、及び前記本体部に対して直線的に移動可能な可動部を有する駆動源と、
前記可動部に連結されるアームと、
前記本体部に固定される支持部と、
L字形に繋がる第一部分及び第二部分を有し、屈曲部が前記支持部に回転軸を介して回転可能に支持されると共に、前記屈曲部が内側を向くように配置される一対の把持リンクと、
前記一対の把持リンクの前記第一部分に設けられ、ワークをつかむための一対の把持部と、
一端部が前記アームに回転可能に連結されると共に、他端部が前記一対の把持リンクの前記第二部分に回転可能に連結される一対の中間リンクと、を備え
前記一対の把持リンクの前記第一部分が平行状態よりも開いた状態から閉じ方向に回転して前記ワークをつかみ、
前記回転軸の軸方向から見たとき、前記アームに対する前記一対の中間リンクの第一のリンク回転軸、及び前記一対の把持リンクに対する前記一対の中間リンクの第二のリンク回転軸が、前記支持部の外側に配置されるチャック。
【請求項2】
前記駆動源の前記可動部が前記本体部から突出する方向に移動するとき、前記一対の把持リンクが閉じて前記一対の把持部がワークを挟むように、
前記回転軸の軸方向から見たとき、前記一対の把持リンクに対する前記一対の中間リンクの第二のリンク回転軸が、前記アームに対する前記一対の中間リンクの第一のリンク回転軸と前記回転軸とを結んだ線よりも外側に配置されることを特徴とする請求項1に記載のチャック。
【請求項3】
前記支持部は、前記回転軸の両端部を支持すると共に、前記アームの少なくとも一部、及び前記一対の把持リンクの少なくとも一部を覆う一対の覆い壁を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のチャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを把持するためのチャックに関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを把持するチャックとして、一対の把持部によってワークを挟むようにしたチャックが知られている。典型的なチャックにおいて、一対の把持部は、チャック本体に開閉方向にスライド可能に支持される。一対の把持部を駆動させる駆動機構は、回転モータとギヤ機構を組み合わせたものである。しかし、この典型的なチャックには、開閉速度が遅く、小型化が困難であるという問題がある。
【0003】
この問題を解決するために、特許文献1には、一対の把持部を駆動させる駆動機構として、回転モータ及びギヤ機構の替わりにエアシリンダ及びリンク機構を用いたチャックが開示されている。このチャックは、シリンダ室と、シリンダ室内を直線的に移動するピストンと、を備える。シリンダ室には、ピストンの移動方向と直交する方向に延びるガイドレールが固定される。ガイドレールには、一対の把持部が開閉方向に移動可能に案内される。ピストンと一対の把持部との間には、リンク機構が介在する。リンク機構は、ピストンがシリンダ室から突出する方向に移動すると、一対の把持部が開き、ピストンがシリンダ室内へ入る方向に移動すると、一対の把持部が閉じるように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−212754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、作業のタクトタイムの低減のため、チャックの小型化及び高速化が望まれている。特許文献1に記載のチャックにあっては、リンク機構を使ってピストンの直線運動を把持部の開閉動作に変換するので、把持部を高速に開閉することができるという利点がある。しかし、把持部の開閉ストロークを確保しようとすると、チャックを小型化するのが困難になるという課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、小型化及び高速化を図れるチャックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、本体部、及び前記本体部に対して直線的に移動可能な可動部を有する駆動源と、前記可動部に連結されるアームと、前記本体部に固定される支持部と、L字形に繋がる第一部分及び第二部分を有し、屈曲部が前記支持部に回転軸を介して回転可能に支持されると共に、前記屈曲部が内側を向くように配置される一対の把持リンクと、前記一対の把持リンクの前記第一部分に設けられ、ワークをつかむための一対の把持部と、一端部が前記アームに回転可能に連結されると共に、他端部が前記一対の把持リンクの前記第二部分に回転可能に連結される一対の中間リンクと、を備え、前記一対の把持リンクの前記第一部分が平行状態よりも開いた状態から閉じ方向に回転して前記ワークをつかみ、前記回転軸の軸方向から見たとき、前記アームに対する前記一対の中間リンクの第一のリンク回転軸、及び前記一対の把持リンクに対する前記一対の中間リンクの第二のリンク回転軸が、前記支持部の外側に配置されるチャックである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一対のL字形の把持リンクの屈曲部が内側に向くように配置されると共に、屈曲部が支持部に回転軸を介して回転可能に支持されるので、一対の把持部の開き角度を確保した上でチャックの小型化が図れる。リンク機構を使って可動部の直線運動を把持部の開閉動作に変換するので、把持部を高速に開閉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態のチャックの斜視図である。
図2】本実施形態のチャックのリニアモータの斜視図(一部断面図を含む)である。
図3】本実施形態のチャックのリンク機構の詳細図である。
図4】本実施形態のチャックの開閉動作を示す図である(図4(a)は全開のチャックを示し、図4(b)は閉じ始めた段階のチャックを示し、図4(c)は全閉のチャックを示す)。
図5】本実施形態と比較例とでリンク機構の大きさを比較した図である(図5(a),図5(c)は把持リンクを直線状に形成した比較例を示し、図5(b)は把持リンクをL字形に形成した本実施形態を示す)。
図6】本実施形態と比較例とでリンク機構の大きさを比較した図である(図6(a),図6(c)は把持リンクを直線状に形成した比較例を示し、図6(b)は把持リンクをL字形に形成した本実施形態を示す)。
図7】本実施形態と比較例とでリンク機構の大きさを比較した図である(図7(a−1),図7(a−2)は把持リンクの屈曲部を外側に向けた比較例を示し、図7(b)は把持リンクの屈曲部を内側に向けた本実施形態を示す)。
図8】本実施形態と比較例とで積層したチャックの大きさを比較した図である(図8(a−1)は比較例の正面図を示し、図8(a−2)は比較例の側面図を示し、図8(b−1)は本実施形態の正面図を示し、図8(b−2)は本実施形態の側面図を示す)。
図9】本実施形態のチャックの他の例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下添付図面に基づいて、本発明の一実施形態のチャックを詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態のチャックの斜視図を示す。本実施形態のチャックは、駆動源としてのリニアモータ1と、ワークをつかむための把持部としての左右一対の爪4a,4bと、を備える。リニアモータ1の可動部としての駆動軸3は垂直方向に配置される。リニアモータ1の下部には、リンク機構2が設けられる。リニアモータ1の駆動軸3を直線的に移動させると、リンク機構2によって爪4a,4bが開閉する。以下に、リニアモータ1及びリンク機構2の構成を順番に説明する。
【0011】
図2に示すように、リニアモータ1は、本体部11と、駆動軸3と、を備える。駆動軸3は、中空のパイプ12と、パイプ12の中空空間に収容される複数のマグネット13と、を備える。マグネット13は、円柱状に形成されていて、軸線方向に着磁される。マグネット13は、互いに同極が対向するように配列される。マグネット13間には、例えば鉄等の磁性材料からなる磁極ブロック14が介在する。マグネット13及び磁極ブロック14によって、駆動軸3には、軸方向に交互にN極及びS極が形成される。
【0012】
駆動軸3は、軸方向に配列された複数のコイル15によって囲まれる。駆動軸3とコイル15との間には、磁気的なすきまが介在する。コイル15は、U・V・W相からなる三相コイルから構成される。コイル15は、コイルホルダ16に保持される。コイルホルダ16の上面には、コイル15に配線するための基板17が設けられる。コイル15、コイルホルダ16、基板17は、樹脂成形されるハウジング18によって覆われる。コイル15、コイルホルダ16、基板17、及びハウジング18が、リニアモータ1の本体部11を構成する。
【0013】
ハウジング18の軸方向の両端部には、エンド部材19が設けられる。エンド部材19には、駆動軸3の位置を検出するためのセンサ20(図1参照)が取り付けられる。エンド部材19には、駆動軸3が軸方向に移動するのを案内するブシュ21も取り付けられる。
【0014】
本体部11のコイル15に三相交流を流すと、駆動軸3に発生する磁界とコイル15に流れる電流との相互作用によって、駆動軸3に軸方向に推力が発生し、駆動軸3が軸方向に移動する。本実施形態のリニアモータ1には、小さく、軽いという特徴がある。リニアモータ1にリンク機構2を付加することで、小さく、軽いチャックが得られる。
【0015】
リンク機構2の構成は以下のとおりである。図1に示すように、リンク機構2は、リニアモータ1の駆動軸3の先端に連結されるアーム24と、アーム24の両端部に回転可能に連結される一対の中間リンク25a,25bと、中間リンク25a,25bに回転可能に連結される一対の把持リンク26a,26bと、把持リンク26a,26bに取り付けられる一対の爪4a,4bと、を備える。把持リンク26a,26bは、回転軸27a,27bを介して支持部としてのカバー28に回転可能に支持される。アーム24、一対の中間リンク25a,25b、一対の把持リンク26a,26b及び一対の爪4a,4bは、駆動軸3の中心線に関して左右対称である。
【0016】
図3に示すように、アーム24は、駆動軸3に直交する方向に細長い。アーム24の長さ方向の両端部には、中間リンク25a,25bが連結される。アーム24の長さ方向の中央部には、駆動軸3の先端部が挿入される孔24aが空けられる。アーム24は、止めねじ、リベット等の結合手段によって駆動軸3の先端部に固定される。
【0017】
カバー28は、リニアモータ1の本体部11に固定される底壁28cと、底壁28cに直交すると共に、互いに平行な一対の覆い壁28a,28bと、を備える。覆い壁28a,28bは、矩形に形成される。覆い壁28a,28bは、アーム24の一部及び把持リンク26a,26bの一部を覆う。覆い壁28a,28bには、把持リンク26a,26bの回転軸27a,27bの両端部が支持される。覆い壁28a,28bには、回転軸27a,27bが挿入される貫通孔が空けられる。回転軸27a,27bの軸方向の移動を防止するために、回転軸27a,27bの両端部には止め輪31が嵌められる。
【0018】
把持リンク26a,26bは、L字形に繋がる第一部分41及び第二部分42を有する。第一部分41及び第二部分42は直線状に形成される。把持リンク26a,26bの先端側である第一部分41には、把持部としての爪4a,4bがねじ等の結合手段によって着脱可能に取り付けられる。L字形の把持リンク26a,26bの基端側である第二部分42には、中間リンク25a,25bが回転可能に連結される。なお、L字形の第一部分41と第二部分42とのなす角度は、この実施形態では、70°〜110°に設定されるが、設計条件に合わせて180°未満の任意の角度に設定することができる。また、この実施形態では、爪4a,4bと把持リンク26a,26bとを別体にしているが、爪4a,4bと把持リンク26a,26bとを一体にすることもできる。
【0019】
把持リンク26a,26bの屈曲部43は、回転軸27a,27bを介してカバー28に回転可能に支持される。一対の把持リンク26a,26bは、屈曲部43が内側を向くように配置される。すなわち、図3に示すように、爪4a,4bが全開位置にあるとき、一対の把持リンク26a,26bは屈曲部43において最も近づく。
【0020】
中間リンク25a,25bは、その一端部がアーム24の端部に第一のリンク回転軸44を介して回転可能に連結され、その他端部が把持リンク26a,26bの第二部分42に第二のリンク回転軸45を介して回転可能に連結される。中間リンク25a,25bは、断面U字形に形成される。第一のリンク回転軸44は、中間リンク25a又は25b、及びアーム24を貫通し、止め輪47によって軸方向の移動が防止される。第一のリンク回転軸44の止め輪47が取り付けられた部分を、第一のリンク回転軸44の回転軸方向の両端部と呼ぶ。第二のリンク回転軸45は、中間リンク25a又は25b、及び把持リンク26a又は26bを貫通し、止め輪48によって軸方向の移動が防止される。第二のリンク回転軸45の止め輪48が取り付けられた部分を、第二のリンク回転軸45の回転軸方向の両端部と呼ぶ。
【0021】
回転軸27a,27bの軸方向から見たとき、中間リンク25a,25bの第二のリンク回転軸45は、第一のリンク回転軸44と回転軸27a,27bとを結んだ線L1,L2よりも外側に配置される(正確には、回転軸27a,27bの軸方向から見たときの中間リンク25a,25bの正面図は、図7(b)に示される)。リニアモータ1の駆動軸3が下降したとき、把持リンク26a,26bが閉じて爪4a,4bでワークをつかむようにするためである。こうすることで、リニアモータ1のコイル15の電源がオフされ、駆動軸3が自重によって落下したときでも、把持リンク26a,26bが閉じるので、把持リンク26a,26bの爪4a,4bでつかんでいるワークを落とさず、ワークを壊すことがない。
【0022】
図3に示すように、中間リンク25a,25bの第一のリンク回転軸44及び第二のリンク回転軸45は、カバー28の外側に配置される。爪4a,4bが全開位置にあるとき(図4(a)参照)にも、爪4a,4bが全閉位置にあるとき(図4(c)参照)にも、第一のリンク回転軸44及び第二のリンク回転軸45はカバー28の外側に配置され、カバー28に軸方向に重なることはない。図3に示すように、中間リンク25a,25bの第一のリンク回転軸44及び第二のリンク回転軸45は、中間リンク25a,25bよりも軸方向に突出する。第一のリンク回転軸44及び第二のリンク回転軸45をカバー28の外側に配置し、第一のリンク回転軸44及び第二のリンク回転軸45がカバー28に回転軸方向に重ならないようにすることで、カバー28の厚さ(図3の紙面と直交する方向の厚さ)を薄くすることができる。なお、この実施形態では、第一のリンク回転軸44及び第二のリンク回転軸45だけでなく、中間リンク25a,25bもカバー28の外側に配置されるが、中間リンク25a,25bの一部はカバー28に重なってもよい。
【0023】
図4は、チャックの開閉動作を示す。図4(a)は全開のチャックを示し、図4(b)は閉じ始めた段階のチャックを示し、図4(c)は全閉のチャックを示す。図4(a)に示すように、リニアモータ1の駆動軸3が最も上昇したとき、アーム24は最も上昇した位置にあり、把持リンク26a,26bの爪4a,4bは全開位置にある。
【0024】
図4(b)に示すように、リニアモータ1の駆動軸3を下降させると、アーム24も下降する。アーム24の両端部に連結される中間リンク25a,25bも、アーム24と共に下降する。中間リンク25a,25bの下降に伴って、把持リンク26a,26bは閉じ方向(1)に回転する。
【0025】
図4(c)に示すように、リニアモータ1の駆動軸3をさらに下降させると、アーム24及び中間リンク25a,25bがさらに下降し、把持リンク26a,26bがさらに閉じ方向に回転する。把持リンク26a,26bは爪4a,4bが互いに接するまで回転する。
【0026】
図5を参照して、把持リンク26a,26bをL字形に形成することで、リンク機構2の小型化が図れる理由を説明する。図5(a),図5(c)は、把持リンク26a´,26b´を直線状に形成した比較例を示し、図5(b)は、把持リンク26a,26bをL字形に形成した本実施形態を示す。これらの図において、設計条件を合わせるために、把持リンク26a,26bの開き量、把持リンク26a,26bの倍力(第二のリンク回転軸45から回転軸27bまでの長さαと回転軸27bから把持リンク26bの先端部までの長さβとの比)を1に設定している。そして、リニアモータ1の駆動軸3が下降したときに、把持リンク26a,26bが閉じるようにしている。
【0027】
図5(a)の比較例に示すように、把持リンク26a´,26b´を直線状に形成した場合、リンク機構2の幅Wを狭くしようとすると、高さHが長くなってしまう。図5(c)の比較例に示すように、リンク機構2の高さHを短くしようとすると、幅Wが広くなってしまう。図5(b)に示すように、把持リンク26a,26bをL字に形成することで、リンク機構2の高さHも幅Wも小さくすることができる。
【0028】
図6は、把持リンク26a,26bの倍力(第二のリンク回転軸45から回転軸27bまでの長さαと回転軸27bから把持リンク26bの先端部までの長さβとの比)を1.5に設定した例を示す。図5(b)と同様に、図6(b)は、把持リンク26a,26bをL字形に形成した本実施形態を示す。図5(a),図5(c)と同様に、図6(a),図6(c)は、把持リンク26a´,26b´を直線状に形成した比較例を示す。
【0029】
把持リンク26a,26bの倍力を1.5に設定すると、把持リンク26a,26bを移動させる距離は長くなるものの、梃子の原理から1.5倍の力を得ることができる。図6(b)に示すように、把持リンク26a,26bをL字形に形成することで、倍力を1.5に設定したときも、リンク機構2の高さ及び幅を小さくすることができる。
【0030】
図7を参照して、一対の把持リンク26a,26bの屈曲部43を内側に向けることで、リンク機構2の小型化が図れる理由を説明する。図7(a−1),図7(a−2)は、把持リンク26a´,26b´の屈曲部43´を外側に向けた比較例を示し、図7(b)は、把持リンク26a,26bの屈曲部43を内側に向けた本実施形態を示す。
【0031】
図7(a−1)の比較例に示すように、一対の把持リンク26a´,26b´の屈曲部43´を外側を向くように配置した場合、中間リンク25a´,25b´の第二のリンク回転軸45´が、中間リンク25a´,25b´の第一のリンク回転軸44´と回転軸27a´,27b´とを結んだ線L1´,L2´に対して内側に配置され易くなる。このため、駆動軸3が下降したときに、把持リンク26a´,26b´が開いてしまう。これを避けるために、図7(a−2)に示すように、中間リンク25a´,25b´の第二のリンク回転軸45´を、線L1´,L2´に対して外側に配置すると、リンク機構2が幅方向に大型化してしまう。
【0032】
図7(b)に示すように、一対の把持リンク26a,26bの屈曲部43を内側を向くように配置することで、中間リンク25a,25bの第二のリンク回転軸45を、中間リンク25a,25bの第一のリンク回転軸44と回転軸27a,27bとを結んだ線L1,L2の外側に配置し易くなり、リンク機構2の小型化が図れる。
【0033】
また、図7(b)に示すように、把持リンク26a,26bの屈曲部43を内側に向けることで、把持リンク26a,26bの開き角度θも大きくできる。開いた把持リンク26a,26bが閉じ方向に回転するとき、把持リンク26a,26bの第一部分41が平行に近づくので、ワークをつかみやすくなる。
【0034】
図8は、本実施形態と比較例とでチャックの大きさを比較した図である。図8(a−1),図8(a−2)は、第一及び第二のリンク回転軸44´,45´をカバー28´の内側に配置した比較例を示し、図8(b−1),図8(b−2)は、第一及び第二のリンク回転軸44,45をカバー28の外側に配置し、第一及び第二のリンク回転軸44,45がカバー28に重ならないようにした本実施形態を示す。
【0035】
図8(a−1)の比較例のチャックの正面図に示すように、第一及び第二のリンク回転軸44´,45´をカバー28´の内側に配置した場合、カバー28´の厚さ(図8(a−1)の紙面に直交する方向の厚さ)を、第一及び第二のリンク回転軸44´,45´の軸方向の長さよりも厚くする必要がある。図8(a−2)の積層したチャックの側面図に示すように、チャック間の厚さ方向(図8(a−2)の紙面の左右方向)のピッチP1´も大きくする必要がある。
【0036】
これに対し、図8(b−1)の本実施形態のチャックの正面図に示すように、第一及び第二のリンク回転軸44,45をカバー28の外側に配置し、第一及び第二のリンク回転軸44,45がカバー28に回転軸方向に重ならないようにした場合、カバー28の厚さ(図8(b−1)の紙面に直交する方向の厚さ)を、第一及び第二のリンク回転軸44,45の軸方向の長さ以下に低減することができる。図8(b−2)の積層したチャックの側面図に示すように、チャック間の厚さ方向(図8(b−2)の紙面の左右方向)のピッチP1も小さくすることができる。
【0037】
図9は、リンク機構の他の例を示す。この実施形態では、リンク機構の幅方向のさらなる小型化を図るために、アーム24の長さを短くしている。そして、カバー28の覆い壁28a,28bには、切欠き28a1,28b1が形成されていて、覆い壁28a,28bは、全体形状がI形に形成される。カバー28の覆い壁28a,28bに切欠き28a1,28b1を形成することで、中間リンク25a,25bの第一及び第二のリンク回転軸44,45を覆い壁28a,28bの外側に配置し、第一及び第二のリンク回転軸44,45が覆い壁28a,28bに回転軸方向に重ならないようにすることができるので、リンク機構の厚さ(図9の紙面に直交する方向の厚さ)を薄くすることができる。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明配置の要旨を変更しない範囲で他の実施形態に具現化することができる。
【0039】
例えば、上記実施形態では、駆動源として駆動軸の回りをコイルが囲む円筒形のリニアモータを使用しているが、リニアモータの構造は上記実施形態に限られることはない。駆動源として永久磁石に隙間を介してコイルが対向するフラット形のリニアモータを使用することもできる。
【0040】
上記実施形態では、リニアモータの駆動軸が下降すると、把持リンクが閉じる構成を採用しているが、リニアモータの駆動軸が下降すると、駆動リンクが開く構成を採用することもできる。
【0041】
上記実施形態では、駆動源としてリニアモータを使用しているが、駆動源としてエアシリンダ、油圧シリンダ、電動シリンダ等のシリンダを使用することもできる。
【0042】
上記実施形態では、リニアモータの駆動軸を垂直方向に配置した例を説明したが、リニアモータの駆動軸を水平方向等の任意の方向に配置することができる。
【0043】
上記実施形態では、一対の中間リンクの第一及び第二のリンク回転軸の両端部がカバーに回転軸方向に重ならない例を説明したが、アームに対する一対の中間リンクの少なくとも一方の第一のリンク回転軸の回転軸方向の少なくとも一方の端部、及び/又は一対の把持リンクに対する一対の中間リンクの少なくとも一方の第二のリンク回転軸の回転軸方向の少なくとも一方の端部が、カバーに回転軸方向に重ならなければよい。すなわち、第一及び第二のリンク回転軸の両端部は全部で八個あるが、そのうちの一個でもカバーに回転軸方向に重ならなければよい。
【符号の説明】
【0044】
1…リニアモータ(駆動源),2…リンク機構,3…駆動軸(可動部),4a,4b…爪(把持部),11…本体部,24…アーム,25a,25b…中間リンク,26a,26b…把持リンク,27a,27b…回転軸,28…カバー(支持部),28a,28b…覆い壁,41…把持リンクの第一部分,42…把持リンクの第二部分,43…把持リンクの屈曲部,44…第一のリンク回転軸,45…第二のリンク回転軸
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9