【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 2010年5月30日 ネイチャー・パブリッシング・グループ発行の「Nature Medicine 16巻 6号」に発表
【氏名又は名称】ガバメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
【氏名又は名称原語表記】GOVERNMENT OF THE UNITED STATES OF AMERICA, AS REPRESENTED BY THE SECRETARY, DEPARTMENT OF HEALTH AND HUMAN SERVICES
【文献】
Arthritis and rheumatism,2010年 7月,Vol.62, No.7,p.2086-2092
【文献】
The Journal of allergy and clinical immunology,2008年,Vol.122, No.3,p.569-573
【文献】
Annals of the rheumatic diseases,1980年,Vol.39, No.4,p.312-317
【文献】
Brazilian journal of medical and biological research,2004年,Vol.37, No.10,p.1497-1501
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、ヒドロキシクロロキン、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノレート、ベリムマブ、デヒドロエピアンドロステロン及びリツキシマブからなる群より選択される薬剤をさらに含んでなる、請求項1〜15の何れか一項に記載の医薬組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以下で述べるように、本発明は、狼瘡、ループス腎炎、ループス関連の疾患及びその他の自己免疫疾患を治療及び/又は予防するために有用な組成物及び方法を特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、自己反応性IgE、IgE受容体の産生又は生物学的活性を低減すること、好塩基球の活性化を低減すること、及び/又は好塩基球を枯渇させることにより、狼瘡、ループス腎炎、ループス関連の疾患及び他の自己免疫疾患を治療する及び/又は予防する組成物及び方法を提供する。本発明によって定義される組成物及び製品は、以下に提供される実施例に関連して単離されるか又はそれ以外の方法で製造された。
【0005】
1つの態様では、本発明は一般に、その必要のある対象における狼瘡、ループス腎炎、ループス関連の疾患及び/又は他の自己免疫疾患を治療又は予防する方法を特徴とし、その方法は、対象におけるIgE又はIgE受容体の発現又は生物活性を低減する薬剤の有効量を対象に投与することを含んでいる。
【0006】
別の態様では、本発明は一般に、その必要のある対象における狼瘡、ループス腎炎、ループス関連の疾患及び/又は他の自己免疫疾患を治療する又は予防する方法を特徴とし、その方法は、対象における好塩基球の数若しくは活性を低下させるか又は好塩基球の活性化を低減する薬剤の有効量を対象に投与することを含んでいる。
【0007】
さらに別の態様では、本発明は、それを必要とする対象にオマリズマブの有効量を投与することを含んでなる、対象における狼瘡、ループス腎炎、ループス関連の疾患及び/又は他の自己免疫疾患を治療又は予防する方法を特徴とする。
【0008】
さらなる態様では、本発明は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、ヒドロキシクロロキン、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノレート、ベリムマブ、デヒドロエピアンドロステロン及びリツキシマブから成る群より選択されるさらなる別の薬剤と組み合わせた、抗IgE治療薬(例えばオマリズマブ又は他の投与薬)の治療有効量を含む、ループス腎炎の治療又は予防のための医薬組成物を特徴とする。
【0009】
付加的な態様では、本発明は、好塩基球を阻害するか又は好塩基球の数を減少させる薬剤の治療有効量を含んでいる、ループス腎炎の治療又は予防のための医薬組成物を特徴とする。
【0010】
さらに別の態様では、本発明は、狼瘡、ループス腎炎及びループス関連疾患の治療又は予防のためのキットを特徴とし、キットは、IgEの発現又は生物活性を低減する薬剤の有効量、及び本明細書で述べる方法のいずれかによる狼瘡、ループス腎炎及びループス関連疾患の治療にキットを使用するための使用説明書を含んでいる。本発明の医薬組成物及びキットの好ましい治療薬はオマリズマブである。
【0011】
上記態様のいずれか又は本明細書で説明する何らかの他の態様の様々な実施態様において、薬剤は、ポリペプチド、核酸分子又は小分子化合物である。別の実施態様では、ポリペプチドは、IgE、IgE受容体に選択的に結合するか又はIgEの産生を調節する抗体又はその断片である。さらなる実施態様では、抗体断片は、Fab又は一本鎖V領域断片(scFv)である。さらに別の実施態様では、核酸分子は、IgEの発現を低減するsiRNA、アンチセンスポリヌクレオチド、又はshRNAである。さらなる実施態様では、小分子化合物はSykキナーゼ阻害剤である。他の実施態様では、Sykキナーゼ阻害剤はフォスタマチニブである。さらなる実施態様では、小分子化合物はIgEの産生又は好塩基球の活性化を調節する。さらに他の実施態様では、薬剤は、IgEの産生に拮抗するマイクロRNAを調節する。別の実施態様では、方法は、自己反応性IgEのレベルを低減する及び/又は循環性免疫複合体のレベルを低減する。さらなる実施態様では、方法は好塩基球の活性化を低減する。さらなる実施態様では、方法は、前記対象においてCD203c発現、CD62L及びHLA−DRのうちの1つ又はそれ以上のレベルを低減する。
【0012】
他の好ましい実施態様では、投与薬剤はオマリズマブである。ある特定の態様では、オマリズマブの有効投与量は、投与当たり約75mg〜500mgである。別の実施態様では、オマリズマブを、投与当たり約150mg〜400mgを1、2、3又は4週又はそれ以上の週ごとに投与する。
【0013】
さらなる実施態様では、対象は狼瘡又はループス腎炎を有している又は発症する傾向があると同定され、そのように同定された対象に治療薬剤を投与する。さらに別の実施態様では、対象は上昇したIgEレベルを有する。さらなる実施態様では、薬剤はモノクローナル抗IgE抗体である。本発明のなおもさらなる実施態様では、モノクローナル抗IgEはヒト化モノクローナル抗体である。さらなる実施態様では、モノクローナル抗IgE抗体はオマリズマブである。なおもさらなる実施態様では、方法は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、ヒドロキシクロロキン、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノレート、ベリムマブ、デヒドロエピアンドロステロン、及びリツキシマブから成る群より選択される薬剤を対象に投与することをさらに含んでいる。他の実施態様では、ループス腎炎は、びまん性増殖性ループス腎炎又は膜性ループス腎炎である。別の実施態様では、自己免疫疾患は、シェーグレン症候群、関節リウマチ、抗リン脂質症候群、筋炎及び強皮症から成る群より選択される。さらなる実施態様では、抗IgE療法はモノクローナル抗IgE抗体を含む。なおもさらなる実施態様では、抗IgE治療薬は抗体を含む。別の実施態様では、抗IgE治療薬はモノクローナル抗体を含む。他の実施態様では、抗IgE治療薬はオマリズマブである。
【0014】
定義
「オマリズマブ」とは、ヒト免疫グロブリンE(IgE)に選択的に結合する組換えDNA由来のヒト化IgGモノクローナル抗体を意味する。本明細書で言及されるオマリズマブは、商標Xolairで特定される抗体臨床薬も示す。
【0015】
「抗IgE療法」という用語は、本明細書においてその慣例的な意味で使用され、IgEの発現及び/又は機能を阻害又はブロックするか、或いはヒトを含む霊長動物などの対象においてIgEの半減期を低減又は消去する治療法を包含する。
【0016】
「自己反応性(autoreactive又はself−reactive)IgE」とは、宿主中に存在するエピトープに対するIgE免疫グロブリンを意味する。IgE又は自己反応性IgEを測定するための方法には、ELISA、Luminex、又はdsDNA、ANA、La、Ro、Sm、リン脂質等のような公知の抗原に対する自己反応性IgEの測定を可能にする他のプラットフォームが含まれる。
【0017】
「好塩基球の活性化」とは、IgEがIgEに対するFc受容体(「FcεR」)と結合することによって好塩基球の脱顆粒が導かれるプロセスを意味する。好塩基球の活性化、数又は活性を測定するための方法には、これに限定されないが、好塩基球の表面のCD203c発現を測定することが含まれる。
【0018】
「狼瘡(lupus)」又は「全身性エリテマトーデス(Systemic lupus erythematosus(SLE)、全身性紅斑性狼瘡ともいう)」という用語は、本明細書においてそれらの慣例的な意味で使用され、自己抗体、発疹、口腔潰瘍、漿膜炎、神経障害、血球数減少、関節痛及び腫脹の存在を特徴とする自己免疫疾患を包含する。診断に使用される試験には、抗体試験(例えば抗核抗体(ANA)パネル、抗二本鎖(ds)DNA、抗リン脂質抗体、抗スミス抗体);白血球、ヘモグロビン又は血小板の減少を示すCBC;胸膜炎又は心膜炎を示す胸部X線検査;腎生検;尿中の血液、円柱又はタンパク質を示す尿検査が含まれる。
【0019】
「ループス腎炎」とは、全身性エリテマトーデス(SLE)によって引き起こされる腎臓の炎症を特徴とする疾患を意味する。
【0020】
「ループス関連の疾患」とは、自己反応性IgE及び好塩基球の活性化を特徴とする何らかの病的状態を意味する。そのような疾患には、これに限定されないが、シェーグレン症候群、関節リウマチ、抗リン脂質症候群、筋炎、強皮症等が含まれる。
【0021】
「フォスタマチニブ」とは、IgG Fc受容体シグナル伝達をブロックする経口投与可能なSykキナーゼ阻害剤を意味する。フォスタマチニブは以下の化学構造を有する:
【0022】
【化1】
【0023】
「薬剤」とは、何れかの小分子化合物、抗体、核酸分子若しくはポリペプチド、又はその断片を意味する。
【0024】
「改善する」とは、疾患の発症又は進行を低減する、抑制する、減弱する、軽減する、停止させる又は安定化することを意味する。
【0025】
「変化」とは、本明細書に記述されるような標準的な当該技術分野で公知の方法によって検出される遺伝子又はポリペプチドの発現レベル又は活性の変化(上昇又は低下)を意味する。本明細書で使用される場合、変化は、発現レベルの10%の変化、好ましくは発現レベルの25%の変化、より好ましくは40%の変化、最も好ましくは50%又はそれ以上の変化を包含する。
【0026】
「類縁体」とは、同一ではないが、類似の機能的又は構造的特徴を有する分子を意味する。例えば、ポリペプチド類縁体は、天然のポリペプチドに比べて、類縁体の機能を増強する特定の生化学的修飾を有しているが、対応する天然のポリペプチドの生物活性を保持している。そのような生化学的修飾は、例えばリガンド結合を変化させずに、類縁体のプロテアーゼ耐性、膜透過性又は半減期を増大させることができる。類縁体は、非天然アミノ酸を包含してよい。
【0027】
本開示において、「含む(comprises、comprising、containing)」及び「有する(having)」等は、米国特許法においてそれらに帰せられる意味を有していてよく、[包含する(includes、including)」等を意味することができる;同様に「本質的に〜から成る(consisting essentially of又はconsists essentially)」は、米国特許法において帰せられる意味を有し、この用語は上限がなく、列挙されるものの基本的又は新規な特徴が、列挙されるもの以上の存在によって変化しない限り、列挙されるもの以上の存在を許容するが、先行技術の実施態様は除外される。
【0028】
「検出する」は、検出すべき分析物の存在、不在又は量を特定することを示す。
【0029】
「検出可能な標識」とは、関心のある分子と結合させた場合に、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的又は化学的な手段を介して、関心のある分子を検出可能にする組成物を意味する。例えば、有用な標識には、放射性同位体、磁気ビーズ、金属ビーズ、コロイド粒子、蛍光染料、電子密度試薬、(例えばELISAにおいて一般的に使用されるような)酵素、ビオチン、ジゴキシゲニン、又はハプテンが含まれる。
【0030】
「疾患」とは、細胞、組織又は臓器の正常な機能を損なう又は妨げる何らかの状態又は障害を意味する。疾患の例には、狼瘡、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、シェーグレン症候群、関節リウマチ、抗リン脂質症候群、筋炎、強皮症等が含まれる。
【0031】
「有効量」とは、未処置の患者と比較して、疾患の症状を改善するのに必要な量を意味する。疾患の治療処置のために本発明を実施するのに使用される活性化合物の有効量は、投与の方法、対象の年齢、体重及び全般的健康によって変化する。最終的に、主治医又は担当獣医が適切な量及び投薬レジメンを決定する。そのような量を「有効な」量と称する。
【0032】
本発明は、本明細書に記述される方法によって特徴付けられる、疾患を治療するために高度に特異的な薬剤の開発に有用な多くの標的を提供する。加えて、本発明の方法は、対象において使用するのに安全な治療法を特定する簡便な手段を提供する。加えて、本発明の方法は、本明細書に記述される疾患への作用に関して、実質的にあらゆる数の化合物を、大容量処理能力、高感度及び低複雑度で分析するための手段を提供する。
【0033】
「断片」とは、ポリペプチド又は核酸分子の一部分を意味する。この部分は、好ましくは、参照核酸分子又はポリペプチドの全長の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%を含む。断片は、10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100、200、300、400、500、600、700、800、900又は1000個のヌクレオチド又はアミノ酸を含むことができる。
【0034】
「ハイブリダイゼーション」は、相補的核酸塩基の間の水素結合を意味し、水素結合は、Watoson-Crick型、Hoogsteen型又は逆Hoogsteen型の水素結合であってよい。例えば、アデニンとチミンは、水素結合の形成を介して対合する相補的核酸塩基である。
【0035】
「阻害性核酸」とは、哺乳動物細胞に投与された場合に、標的遺伝子の発現の低下(例えば10%、25%、50%、75%又はさらに90〜100%の低下)をもたらす、二本鎖RNA、siRNA、shRNA若しくはアンチセンスRNA、又はその一部若しくはその模倣体を意味する。典型的には、核酸阻害剤は、少なくとも標的核酸分子の一部若しくはそのオルソログを含むか、又は少なくとも標的核酸分子の相補鎖の一部を含む。例えば、阻害性核酸分子は、少なくとも、本明細書に記述される核酸のいずれか又は全部の一部を含む。
【0036】
「単離されたポリヌクレオチド」とは、本発明の核酸分子が由来する生物の天然のゲノムにおいて、遺伝子に隣接している遺伝子を含まない核酸(例えばDNA)を意味する。この用語は、それゆえ、例えばベクターに、自己複製プラスミド若しくはウイルスに、又は原核生物若しくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれた、又は他の配列とは独立した別個の分子(例えばPCR又は制限エンドヌクレアーゼ消化によって生成されるcDNA若しくはゲノム又はcDNA断片)として存在する、組換えDNAを包含する。加えて、この用語は、DNA分子から転写されるRNA分子、さらには付加的なポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAを包含する。
【0037】
「単離されたポリペプチド」とは、天然に付随する成分から分離されている本発明のポリペプチドを意味する。典型的には、ポリペプチドは、それが天然に結合しているタンパク質及び天然有機分子を少なくとも60重量%含まない場合、単離されている。好ましくは、調製物は、少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%が本発明のポリペプチドである。本発明の単離されたポリペプチドは、例えば天然供給源からの抽出によって、そのようなポリペプチドをコードする組換え核酸の発現によって、又はタンパク質を化学合成することによって得ることができる。純度は、何れかの適切な方法、例えばカラムクロマトグラフィ、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はHPLC分析によって測定することができる。
【0038】
「マーカー」とは、疾患又は障害に関連する発現レベル又は活性の変化を有するタンパク質又はポリヌクレオチドの何れかを意味する。
【0039】
本明細書で使用される場合、「薬剤を得ること」におけるような「得ること」は、薬剤を合成すること、購入すること又はそれ以外の方法で取得することを包含する。
【0040】
「プライマーセット」は、例えば、PCRのために使用できるオリゴヌクレオチドのセットを意味する。プライマーセットは、少なくとも2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、30、40、50、60、80、100、200、250、300、400、500、600又はそれ以上のプライマーから成る。
【0041】
「低減する」とは、少なくとも10%、25%、50%、75%又は100%の負の変化を意味する。
【0042】
「参照」とは、標準又は対照の条件を意味する。
【0043】
「参照配列」は、配列比較のための基礎として使用される定義された配列である。参照配列は、指定配列のサブセット又は全体、例えば、完全長cDNA若しくは遺伝子配列のセグメント、又は完全なcDNA若しくは遺伝子配列であってよい。ポリペプチドについては、参照ポリペプチド配列の長さは、一般に少なくとも約16アミノ酸、好ましくは少なくとも約20アミノ酸、より好ましくは少なくとも約25アミノ酸、さらに一層好ましくは約35アミノ酸、約50アミノ酸又は約100アミノ酸である。核酸については、参照核酸配列の長さは、一般に少なくとも約50ヌクレオチド、好ましくは少なくとも約60ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約75ヌクレオチド、さらに一層好ましくは約100ヌクレオチド若しくは約300ヌクレオチド、又はそのあたり若しくはその間の何れかの整数である。
【0044】
「siRNA」とは、二本鎖RNAを意味する。最適には、siRNAは、18、19、20、21、22、23又は24ヌクレオチド長であり、その3’末端に2塩基突出部を有する。これらのdsRNAは、個々の細胞又は動物の全身に導入することができ、例えば血流を介して全身に導入されてもよい。そのようなsiRNAは、mRNAレベル又はプロモーター活性を下方調節するために用いられる。
【0045】
「特異的に結合する」とは、本発明のポリペプチドを認識して、それに結合するが、本発明のポリペプチドを天然に含む試料、例えば生物学的試料中の他の分子を実質的に認識せず、そしてそれには実質的に結合しない化合物又は抗体を意味する。
【0046】
本発明の方法において有用な核酸分子には、本発明のポリペプチド又はその断片をコードする何れかの核酸分子が含まれる。そのような核酸分子は、内因性核酸配列と100%同一である必要はないが、典型的には実質的な同一性を示す。内因性配列と「実質的な同一性」を有するポリヌクレオチドは、典型的には二本鎖核酸分子の少なくとも1本の鎖とハイブリダイズすることができる。本発明の方法において有用な核酸分子には、本発明のポリペプチド又はその断片をコードする何れかの核酸分子が含まれる。そのような核酸分子は、内因性核酸配列と100%同一である必要はないが、典型的には実質的な同一性を示す。内因性配列と「実質的な同一性」を有するポリヌクレオチドは、典型的には二本鎖核酸分子の少なくとも1本の鎖とハイブリダイズすることができる。「ハイブリダイズする」とは、様々なストリンジェンシーの条件下で相補的なポリヌクレオチド配列(例えば本明細書で述べる遺伝子)又はその部分の間で対合して二本鎖分子を形成することを意味する(例えば、Wahl, G.M.And S.L.Berger (1987) Methods Enzymol. 152:399; Kimmel, A. R. (1987) Methods Enzymol. 152:507を参照されたい)。
【0047】
例えば、ストリンジェントな塩濃度は、通常約750mM未満のNaCl及び75mM未満のクエン酸三ナトリウム、好ましくは約500mM未満のNaCl及び50mM未満のクエン酸三ナトリウム、より好ましくは約250mM未満のNaCl及び25mM未満のクエン酸三ナトリウムである。低ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションは、有機溶媒、例えばホルムアミドの不在下で得ることができ、一方高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションは、少なくとも約35%のホルムアミド、より好ましくは少なくとも約50%のホルムアミドの存在下で得ることができる。ストリンジェントな温度条件には、通常少なくとも約30℃、より好ましくは少なくとも約37℃、最も好ましくは少なくとも約42℃の温度が含まれる。付加的なパラメータ、例えばハイブリダイゼーション時間、界面活性剤、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の濃度、及び担体DNAを含めるか含めないかを変更することは、当業者に周知である。様々なレベルのストリンジェンシーが、これらの様々な条件を必要に応じて組み合わせることによって達成される。好ましい実施態様では、ハイブリダイゼーションは、750mMのNaCl、75mMのクエン酸三ナトリウム及び1%SDS中、30℃で生じる。より好ましい実施態様では、ハイブリダイゼーションは、500mMのNaCl、50mMのクエン酸三ナトリウム、1%SDS、35%ホルムアミド及び100μg/mlの変性サケ精子DNA(ssDNA)中、37℃で生じる。最も好ましい実施態様では、ハイブリダイゼーションは、250mMのNaCl、25mMのクエン酸三ナトリウム、1%SDS、50%ホルムアミド及び200μg/mlのssDNA中、42℃で生じる。これらの条件に関する有用な変更は、当業者には容易に明らかであろう。
【0048】
大部分の適用に関して、ハイブリダイゼーションに続く洗浄工程もストリンジェンシーが変化する。洗浄のストリンジェンシー条件は、塩濃度及び温度によって規定できる。上記のように、塩濃度を低下させることによって又は温度を上昇させることによって洗浄のストリンジェンシーを高めることができる。例えば、洗浄工程についてのストリンジェントな塩濃度は、好ましくは約30mM未満のNaCl及び3mM未満のクエン酸三ナトリウム、最も好ましくは約15mM未満のNaCl及び1.5mM未満のクエン酸三ナトリウムである。洗浄工程についてのストリンジェントな温度条件には、通常少なくとも約25℃、より好ましくは少なくとも約42℃、さらに一層好ましくは少なくとも約68℃の温度が含まれる。好ましい実施態様では、洗浄工程は、30mMのNaCl、3mMのクエン酸三ナトリウム及び1%SDS中、25℃で生じる。より好ましい実施態様では、洗浄工程は、15mMのNaCl、1.5mのMクエン酸三ナトリウム及び0.1%SDS中、42℃で生じる。より好ましい実施態様では、洗浄工程は、15mMのNaCl、1.5mMのクエン酸三ナトリウム及び0.1%SDS中、68℃で生じる。これらの条件に関する付加的な変更は、当業者には容易に明らかである。ハイブリダイゼーション技術は当業者に周知であり、例えば、Benton and Davis(Science 196:180,1977); Grunstein and Hogness (Proc. Natl. Acad. Sci., USA 72:3961,1975); Ausubel et al.(Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience, New York,2001); Berger and Kimmel(Guide to Molecular Cloning Techniques,1987,Academic Press, New York);及びSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New Yorkに記載されている。
【0049】
「実質的に同一」とは、参照アミノ酸配列(例えば本明細書で述べるアミノ酸配列のいずれか1つ)又は参照核酸配列(例えば本明細書で述べる核酸配列のいずれか1つ)と少なくとも50%の同一性を示すポリペプチド又は核酸分子を意味する。好ましくは、そのような配列は、比較のために使用される配列とアミノ酸レベル又は核酸で少なくとも60%、より好ましくは80%又は85%、より好ましくは90%、95%又はさらには99%同一である。
【0050】
配列同一性は、典型的には配列解析ソフトウェア(例えば、the Genetics Computer Group, University of Wisconsin Biotechnology Center, 1710 University Avenue, Madison, Wis. 53705のSequence Analysis Software Package、BLAST、BESTFIT、GAP又はPILEUP/PRETTYBOXプログラム)を用いて測定される。そのようなソフトウェアは、様々な置換、欠失及び/又は他の修飾に相同性の程度を割り当てることによって同一又は類似の配列を適合させる。同類置換には、典型的には以下の群の中での置換が含まれる:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;リジン、アルギニン;及びフェニルアラニン、チロシン。同一性の程度を決定する1つの例示的なアプローチでは、BLASTプログラムが使用でき、e
−3〜e
−100の確率スコアは密接に関係する配列を示す。
【0051】
「対象」とは、ヒト、又はウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ若しくはネコなどの非ヒト哺乳動物を含むがこれらに限定されない、哺乳動物を意味する。
【0052】
本明細書で提供される範囲は、その範囲内のすべての値についての省略表現であると理解される。例えば、1〜50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50よりなる群からの何れかの数、数の組合せ又は部分的範囲を包含すると理解される。
【0053】
本明細書で使用される場合、「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」、「治療(treatment)」等の用語は、疾患及び/又はそれに関連する症状を低減又は改善することを示す。除外はされないが、疾患又は病気を治療することは、疾患、病気又はそれに関連する症状が完全に取り除かれることを必要としないことは認識されるだろう。
【0054】
明確に記載されない限り又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される「又は(or)」という用語は包括的であると理解される。明確に記載されない限り又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される「1つ(a、an)」及び「その(the)」という用語は単数又は複数であると理解される。
【0055】
明確に記載されない限り又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される「約(about)」という用語は、当該技術分野における通常の許容差の範囲内、例えば平均値の2標準偏差内と理解される。約は、記載される値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%又は0.01%以内と理解されてよい。文脈から明らかでない限り、本明細書に提供されるすべての数値は約という用語によって修飾される。
【0056】
本明細書中の何れかの可変基の定義における化学基の列挙される記載は、何れかの単一基又は列挙される基の組合せとしてのその可変基の定義を包含する。本明細書中の変数又は態様についての実施態様の記載は、何れかの単一実施態様として、又は何れか他の実施態様若しくはその部分との組合せとしてのその実施態様を包含する。
【0057】
本明細書で提供される何れかの組成物又は方法は、本明細書に提供されるその他の組成物及び方法のいずれか1つ又はそれ以上と組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】
図1A−1Dは、好塩基球依存性のT
H2への偏りが高齢Lyn
−/−マウスの顕著な特徴であることを示す。
図1Aは高齢(30週齢)WT及びLyn
−/−マウスからの好塩基球非枯渇(Baso+)又は好塩基球枯渇(Baso−)末梢血細胞のフローサイトメトリ分析のグラフである。示されているデータは、各群につき少なくとも3匹の動物を代表する。CD11b
+白血球に関してデータを収集した。
図1B−1Dでは、WT及びLyn
−/−マウスから脾細胞を採取し、10μMモネンシンと共にインキュベートして、蛍光抗CD4抗体で標識し、細胞内IL−4及びIFN−γを染色した。
図1Bは(
図1Aに示される)WT又は好塩基球非枯渇(Baso+)若しくは好塩基球枯渇(Baso−)Lyn
−/−マウスからのCD4
+細胞の代表的なフローサイトメトリ分析である。
図1Cは、CD4
+IL−4
+T細胞についての、
図1Bにおいてと同様の個々の実験全ての集成のグラフである。
図1Dは、CD4
+IFN−γ
+T細胞についての、
図1Bにおいてと同様の個々の実験全ての集成のグラフである。統計解析は、対応のない両側スチューデントt検定によって実施した;
*:p<0.05;
**:p<0.01;NS:有意差なし。
【0059】
【
図2】
図2A−2Cは、Lyn
−/−マウスにおける血液B細胞の割合がIgE、IL−4及び肥満細胞とは無関係であることを示す。
図2A−2Cでは、白血球のB細胞(B220
+IgM
+)比率を、指示されている遺伝子型の中の4つの異なる年齢群においてフローサイトメトリによって測定した。年齢群1:5〜10週齢(平均=7.5週齢);年齢群2:12〜14週齢(平均=13週齢);年齢群3:17〜20週齢(平均=18.5週齢);年齢群4:35〜40週齢(平均=37.5週齢)。
図2Aは、Igh7
+/+Lyn
+/+及びIgh7
−/−Lyn
−/−については、各群及び各遺伝子型につきn=12であり、WTについてはn=10、Lyn
−/−についてはn=12を示すグラフである。WT及びLyn
−/−マウスはC57BL/6バックグラウンド上にあった。
図2Bは、Il−4
+/+Lyn
+/+及びIl−4
−/−Lyn
−/−については、各群及び各遺伝子型につきn=12であり、WTについてはn=10、Lyn
−/−についてはn=12を示すグラフである。
図2Cは、Kit
W−sh/W−sh及びKit
W−sh/W−shLyn
−/−について、群1:遺伝子型につきn=9;群2:遺伝子型につきn=3;群3:遺伝子型につきn=11;群4:遺伝子型につきn=10であり、WTについてはn=10、Lyn
−/−についてはn=12を示すグラフである。データは平均±s.e.m.として示している。統計解析は、2方向ANOVA分散分析を用いて実施した。示されているp値は遺伝子型因子のp値である。
【0060】
【
図3】
図3A−3Cは、Lyn欠損マウスにおける脾B細胞の割合がIgE、IL−4及び肥満細胞とは無関係であることを示す。
図3A−3Cでは、脾細胞のB細胞(B220
+IgM
+)比率を、
図2A−2Cで述べたように指示されている遺伝子型の中の4つの異なる年齢群においてフローサイトメトリによって測定した。データは平均±s.e.m.として示している。統計解析は、2方向ANOVA分散分析を用いて実施した。示されているp値は遺伝子型因子のp値である。
【0061】
【
図4】
図4A−4Fは、Lyn欠損マウスの骨髄B細胞集団の表現型がIgE、IL−4及び肥満細胞とは無関係であることを示す。
図4A、4C及び4Eでは、骨髄細胞の全B細胞(B220
+IgM
+)比率を、
図2で述べたように指示されている遺伝子型の中の4つの異なる年齢群においてフローサイトメトリによって測定した。
図4B、4D及び4Fでは、BM細胞の再循環B1細胞(B220
hiIgM
int)比率を同じ群で測定した。データは平均±s.e.m.として示している。統計解析は、2方向ANOVA分散分析を用いて実施した。示されているp値は遺伝子型因子のp値である。
【0062】
【
図5】
図5A−5Fは、検討したマウスにおける種々の免疫グロブリンアイソタイプの血清レベルを示す。この試験で使用したすべての遺伝子型における循環IgM(
図5A)、IgE(
図5B)、IgA(
図5C)、IgG1(
図5D)、IgG2a(
図5E)及びIgG2b(
図5F)のELISAによる血清定量化。WT、n=35;Lyn
−/−、n=35;Igh7
+/+Lyn
+/+、n=43;Igh7
−/−Lyn
−/−、n=41;Igh7
−/−、n=3;Il−4
+/+Lyn
+/+、n=41;Il−4
−/−Lyn
−/−、n=42;Il−4
−/−、n=4;Kit
W−sh/W−sh、n=18及びKit
W−sh/W−shLyn
−/−、n=18。示されているデータは平均±s.e.m.である。統計解析は、対応のない両側スチューデントt検定によって実施した;
*:p<0.05;
**:p<0.01;
***:p<0.001。
【0063】
【
図6】
図6A−6Fは、Lyn欠損マウスの巨脾腫及び脾臓のCD11b
+細胞比率がIgE、IL−4及び肥満細胞とは無関係であることを示す。
図6A、6C及び6Eでは、
図2で述べたように指示されている遺伝子型の中の4つの異なる年齢群からの脾臓について総脾臓重量を測定した。
図6B、6D及び6Fでは、同じ群からの脾臓におけるCD11b
+細胞の比率をフローサイトメトリによって測定した。データは平均±s.e.m.として示している。統計解析は、2方向ANOVA分散分析を用いて実施した。示されているp値は遺伝子型因子のp値である。
【0064】
【
図7】
図7A−7Gは、Lyn欠損マウスの肥満細胞表現型はIgEに依存し、好塩基球表現型はIgEに依存しないが、どちらもIL−4非依存性であることを示す。
図7A、7C及び7Eでは、腹膜中の肥満細胞(FcεRIα
+CD117
+)の割合を、
図2で述べたように指示されている遺伝子型について4つの異なる年齢群において腹腔洗浄後にフローサイトメトリによって測定した。
図7B、7D、7F及び7Gでは、全白血球集団中の好塩基球(FcεRIα
+CD49b
+CD11b
+CD117
−)の割合を同じ群でフローサイトメトリによって測定した。(
図7A及び7B)Igh7
+/+Lyn
+/+及びIgh7
−/−Lyn
−/−については、各群及び各遺伝子型につき、n=12;WTについてはn=10及びLyn
−/−についてはn=12。(
図7C及び7D)Il−4
+/+Lyn
+/+及びIl−4
−/−Lyn
−/−については、各群及び各遺伝子型につき、n=12;WTについてはn=10及びLyn
−/−についてはn=12。(
図7E及び7F)群1:WT、n=8及びLyn
−/−、n=11;群2:WT、n=14及びLyn
−/−、n=9;群3:WT、n=14及びLyn
−/−、n=11;群4:WT、n=10及びLyn
−/−、n=12。(
図7G)Kit
W−sh/W−sh及びKit
W−sh/W−shLyn
−/−について、群1:遺伝子型につきn=9;群2:遺伝子型につきn=3;群3:遺伝子型につきn=11;群4:遺伝子型につきn=10;WTについてはn=10及びLyn
−/−についてはn=12。データは平均±s.e.m.として示している。統計解析は、2方向ANOVA分散分析を用いて実施した。示されているp値は遺伝子型因子のp値である。
【0065】
【
図8】
図8A−8Dは、Lyn
−/−マウスにおけるループス様腎炎がIL−4及びIgE依存性であることを示す。
図8Aは、指示されている遺伝子型の高齢マウス(40週齢以上)由来のH&E染色した組織学的腎切片から得た糸球体腎炎スコアを示す。データは平均±s.e.m.として示している(WT及びLyn
−/−については、n=8;WT及びIgh7
−/−;Lyn
−/−については、n=6;WT及びIl−4
−/−;Lyn
−/−については、n=5;Kit
W−sh/W−sh及びKit
W−sh/W−sh;Lyn
−/−については、n=11)。統計解析は、対応のない両側スチューデントt検定によって実施した;
***P<0.001;NS:有意差なし。
図8Bは、指示されている遺伝子型の高齢マウス(40週齢)のH&E染色した組織学的腎切片における代表的な糸球体の顕微鏡写真のパネルである。スケールバー、50μm。
図8Cは、マウスIgGに対するフルオレセイン結合抗体で染色した後の、指示されている遺伝子型の高齢マウス(40週齢)の糸球体IgG沈着物の免疫蛍光検出の顕微鏡写真のパネルである。スケールバー、50μm。
図8Dは、各群につき指示されている遺伝子型の少なくとも15匹の高齢マウス(40週齢)の尿中で測定したACRのグラフである。データは平均±s.e.m.である。統計解析は、対応のない両側スチューデントt検定によって実施した;
***P<0.001。
【0066】
【
図9】
図9は、Lyn
−/−マウスにおけるループス様糸球体腎炎はIgE及びIL−4依存性であるが、肥満細胞には依存しないことを示す。H&E染色した、指示されている遺伝子型の40週齢マウスからの代表的な組織学的腎切片。原倍率×10。これらの切片を使用して、
図8で述べたように糸球体腎炎スコアを確立し、原倍率×40を示している。スケールバー、500μm。
【0067】
【
図10】
図10A−10Cは、Lyn欠損マウスにおける糸球体への免疫複合体沈着はIgE及びIL−4依存性であるが、肥満細胞には依存しないことを示す。
図10A−10Cでは、指示されている遺伝子型の40週齢マウスからの腎臓を、方法に記述されるように処理した。指示されている抗体に対して惹起したフルオレセイン結合抗体での免疫蛍光染色を実施した(
図10AはIgM、
図10BはIgA、
図10Cは補体成分3(C3))。示されている写真は、各遺伝子型につき少なくとも5匹の異なる40週齢マウスにおいて取得した、遺伝子型につき100以上の糸球体を代表する。原倍率×40。スケールバー、50μm。
【0068】
【
図11】
図11A−11Fは、IgE、好塩基球及びIL−4がLyn
−/−マウスにおける自己抗体産生を調節すること、及び好塩基球が腎のサイトカイン環境を変化させることを示す。
図11Aは、指示されている遺伝子型の高齢マウス(40週齢)の血清中のdsDNA特異的IgGの定量化のグラフである。データは平均±s.e.m.である(各群につき少なくとも15匹のマウス)。
図11Bは、
図11Aで検討したマウスにおけるANA特異的IgGの定量化のグラフである。
図11Cは、好塩基球枯渇抗体MAR−1(−)又はアイソタイプ対照(+)の注射の前(D0)及び注射の6日後(D6)の、指示されている遺伝子型の高齢マウス(32週齢)の血清中のANA特異的IgG自己抗体の定量化のグラフである。データは平均±s.e.m.である(WT:n=3;Lyn
−/−(+):n=4;Lyn
−/−(−):n=5)。
図11Dは、指示されている遺伝子型のマウス(20週齢)の血清についての
図11Cと同じ定量化のグラフである。データは平均±s.e.m.である(各群について、n=3)。
図11Eは、好塩基球枯渇(−)又はアイソタイプ(+)注射の6日後のマウスにおいてフローサイトメトリによって測定した脾CD138
+CD19
+形質細胞の割合を描画している。サイトカインの量を総タンパク質含量に正規化した。対応のない(
図11A、
図11B、
図11E及び
図11F)又は対応のある(
図11C、
図11D)スチューデントt検定;
*P<0.05;
**P<0.01;
***P<0.001。
【0069】
【
図12】
図12A−12Dは、好塩基球枯渇がLyn
−/−マウスの腎臓におけるプロ炎症性サイトカイン環境を低減することを示す。
図12A−
図12Dは、方法に記述されるように好塩基球枯渇(MAR−1注射、好塩基球−)又は非枯渇(アイソタイプ注射、好塩基球+)の6日後の、40週齢WT及びLyn
−/−マウスからの腎ホモジネート中の指示されているサイトカインのELISA定量化のグラフである。サイトカインの量をそれぞれのホモジネートの総タンパク質含量に正規化した。データは平均±s.e.m.として示している(WT及びLyn
−/−マウス、各群につき少なくともn=4)。統計解析は、対応のない両側スチューデントt検定によって実施した;NS:有意差なし;
*:p<0.05。
【0070】
【
図13】
図13A−13Dは、自己反応性IgE及びIgE循環免疫複合体(CIC)が高齢Lyn
−/−マウスの血清中に存在することを示す。
図13Aは、半定量的ELISAによって測定した、指示されている遺伝子型の高齢マウス(40週齢)の血清中のdsDNA特異的IgEの定量化の描画である。データは、それぞれのWT対照に正規化し、任意単位として表した、平均±s.e.m.として示している(各群につき10匹以上のマウス)。統計解析は、対応のない両側スチューデントt検定によって実施した;
*P<0.05;
***P<0.001。
図13Bでは、Igh7
−/−;Lyn
−/−及びIl−4
−/−;Lyn
−/−の高齢マウス(>30週齢)の血清試料からのIgE−CIC及びIgG−CICが低減している。ウェスタンブロットをマウスIgEに対する抗体又はマウスIgGに対する抗体でプローブした。各遺伝子型につき少なくとも10匹のマウスを代表するものを示している。
図13Cは、補体因子1q(C1q)でコーティングしたプレートで各遺伝子型につき少なくとも10匹の高齢マウスから半定量的ELISAによって測定した、CIC(IgA、IgM及びIgG)の血清レベルのグラフである。データは、WTマウスのレベルに正規化し、任意単位として報告した、平均±s.e.m.として示している。統計解析は、対応のない両側スチューデントt検定によって実施した;
*P<0.05;
**P<0.01;
***P<0.001。
図13Dは、指示されている刺激によって誘導した(骨髄由来の)好塩基球からのIL−4産生の描画である。PMA+イオノマイシン、ホルボール12−ミリステート13−アセテート(20nM)プラスイオノマイシン(400nM)。IL−4の細胞内染色によって検出した平均蛍光強度(MFI)を非刺激(−)対照の応答に正規化し、任意単位として表した。データは平均±s.e.m.として示している(3つの独立した実験について各条件につきn=6)。統計解析は、対応ある両側スチューデントt検定によって実施した;
*P<0.05;
**P<0.01。
【0071】
【
図14】
図14A−14Eは、狼瘡を起こしやすいLyn
−/−マウスがIgE、IgG及びIgAの循環性免疫複合体を含むことを示す。
図14Aは、5匹の異なる45週齢WT及びLyn
−/−マウス(各遺伝子型につき1〜5匹)由来の血清からのPEG
6000沈殿した循環性免疫複合体(CIC)のウェスタンブロット分析である。
図14Aの上のパネル:ラット抗マウスIgE免疫ブロット(IgE−CIC)。
図14Aの中央のパネル:総IgEのレベルとIgE−CIC沈殿の量の間で相関を示さない(上のパネルと)同じマウスにおける総血清IgEのELISA定量化。
図14Aの下のパネル:NIH Image Jソフトウェアを用いた、上のパネルに示すものに類似の免疫ブロットのデンシトメトリ分析。
図14Bは、ヤギ抗マウスIgGとのIgG−CIC(上のパネル)、総IgG ELISA(中央のパネル)及びIgG−CICのデンシトメトリ分析(下のパネル)についての
図14Aと同様のものである。
図14Cは、ヤギ抗マウスIgAとのIgA−CIC(上のパネル)、総IgA ELISA(中央のパネル)及びIgA−CICのデンシトメトリ分析(下のパネル)についての
図14Aと同様のものである。
図14Dと
図14Eは、
図14A及び14Bに示す代表的なものを、
図14DではIgE−CICに関して、
図14EではIgG−CICに関して、
図14A〜14Cにおけるようにデンシトメトリによって定量化した場合の、定量化免疫ブロットである。すべての遺伝子型を分析した。データは平均±s.e.m.として示している(WT及びLyn
−/−、各群につきn=10、他のすべての遺伝子型、各群につきn=5)。提示されているデータは少なくとも5つの独立した実験を代表する。
【0072】
【
図15】
図15A−15Dは、IgE−ICは好塩基球によるサイトカイン産生を誘導するが、IgG−ICはサイトカイン産生を誘導しないことを示す。
図15Aと
図15Bは、WT及びLyn
−/−マウスにおける骨髄由来の好塩基球(BMBa)によるIL−4産生の代表的なフローサイトメトリ分析である。指示されている刺激で細胞を4時間刺激し、刺激の最後の2時間は10μMモネンシンと共にインキュベートした。次に細胞をマウス好塩基球マーカー(CD49b、FcεRIα及びCD11b)に関して細胞外染色し、IL−4産生に関して細胞内染色した。これらすべての結果の集成を
図13Dに示す。
図15Cは、
図15A及び15Bと同じプロトコルを使用しているが、細胞をIL−12p40産生に関して細胞内染色した。斜線部分:アイソタイプ対照、破線:IgE+Agで刺激したBMBa、黒色の実線:PMA/イオノマイシンで刺激したBMBa、灰色の実線:PMA/イオノマイシン刺激後にIL−12p40を産生するBM細胞集団CD49b
−FcεRIα
−(非好塩基球、非肥満細胞)。
図15Dは、
図15Cと同じであるが、細胞をIFN−γ産生に関して細胞内染色した。
図15C及び15Dにおいて、(
図15A及び15Bと同様に)試験した刺激のどれも、好塩基球のIL−12p40又はIFN−γの何れの産生ももたらさなかった。
【0073】
【
図16】
図16A−16Gは、高齢Lyn
−/−マウスからの好塩基球がCD62L発現を上方調節し、二次リンパ組織にホーミングして、膜BAFF及びMHC IIを発現することを示す。
図16Aは、アイソタイプ対照(灰色の斜線)と比較した高齢(40週齢)WT(灰色の破線)及びLyn
−/−マウス(黒色の実線)における血液好塩基球CD62L発現の代表的なフローサイトメトリ分析である。
図16Bは、指示されている遺伝子型の高齢マウスからの、
図16Aにおいてと同様に実施した実験の全てからの統合データである。血液好塩基球でのCD62L発現の平均蛍光強度(MFI)を対応するWT対照に正規化し、任意単位で平均±s.e.m.として表した(WT及びLyn
−/−:n=4;WT及びIgh7
−/−;Lyn
−/−:n=3;WT及びIl−4
−/−;Lyn
−/−:n=3;Kit
W−sh/W−sh及びKit
W−sh/W−sh;Lyn
−/−:n=4及びn=7)。統計解析は、対応のない両側スチューデントt検定によって実施した;
*P<0.05。
図16C−16Eは、総細胞数に対する、指示されているマウス系統の
図16Cではリンパ節(頸部及び鼠径)中の、
図16Dでは脾臓中の、
図16Eでは血液中の好塩基球(FcεRI
+CD11b
+CD49b
+細胞と定義される)のフローサイトメトリ分析である。
図16Fと
図16Gは、アイソタイプ対照(灰色斜線)と比較したLyn
−/−マウス(黒色の実線)のリンパ節における好塩基球膜BAFF発現(
図16F)、MHC II(I−A/I−E)発現(
図16G)、の代表的なフローサイトメトリ分析である。
【0074】
【
図17】
図17は、Lyn
−/−マウスからの脾好塩基球上でMHC II発現が増大することを示す。脾好塩基球MHC II発現(I−A/I−E)の代表的なフローサイトメトリ分析。好塩基球は、アイソタイプ対照(灰色斜線)と比較した高齢(40週齢)WT(左のパネル、黒色の実線)及びLyn
−/−マウス(右のパネル、黒色の実線)におけるFcεRI
+CD117
−CD49b
+細胞と定義された。
【0075】
【
図18】
図18A−18Dは、dsDNA特異的IgE及びIgE特異的IgGがヒトSLE疾患の活動性及びループス腎炎に関連することを示す。
図18Aは、ELISAによって測定した、健常対照(n=37)、非活動性SLEを有する個体(SLEDAI=0)(n=13)、軽度疾患を有する個体(SLEDAI=2.0から≦4.0)(n=15)及び活動性疾患を有する個体(SLEDAI>4)(n+15)からの血清中の総CICを示す。データは平均±s.e.m.である。統計解析は、対応のない両側スチューデントt検定によって実施した;
*P<0.05;
**P<0.01;
***P<0.001。
図18Bは、半定量的ELISAによって測定した、dsDNA特異的IgEレベルをグラフで示す。dsDNAでコーティングしたプレートを健常対照及びSLEを有する対象(
図18Aと同じ集団)からの血清と共にインキュベートした。データは、健常対照に正規化した平均±s.e.m.(
図18Aと同じn)である。統計解析は、対応のない両側スチューデントt検定によって実施した;
*P<0.05;
***P<0.001。
図18Cは、ヒトIgEでコーティングしたプレート上で健常対照及びSLEを有する個体からの血清をインキュベートすることによって測定した、IgE特異的IgGレベルを描画する。ヒトIgGに対する抗体(Fcγ特異的)でIgE特異的IgGを検出した。データは、健常対照に正規化した平均±s.e.m.である(
図18Aと同じn)。統計解析は、対応のない両側スチューデントt検定によって実施した;
**P<0.01。
図18Dは、活動性腎炎であるか(Yes、n=8)又はそうでないか(No、n=34)に基づいて分類したSLEを有する対象の血清中のdsDNA特異的IgEである。データは平均±s.e.m.である。統計解析は対応のない両側スチューデントt検定によって実施した。
【0076】
【
図19】
図19A−19Cは、SLE患者における総IgEレベル及びdsDNA免疫グロブリンサブクラスを示す。
図19Aは、ELISAによる健常対照(n=27)及びSLE患者(n=33)における総血清IgEレベルの定量化の描画である。
図19Bは、
図19Aと同じ測定であるが、その健常対照(n=27)に対する非活動性/中等度/活動性SLE患者(
図18Aで述べたとおり(n=9/13/11))の関係を示す。示されているデータは平均±s.e.m.である。統計解析は、対応のない両側スチューデントt検定によって実施した;NS:有意差なし、
*:p<0.05。(c)IgG抗dsDNAサブクラス及びIgE抗dsDNAを半定量的ELISAによって測定した。dsDNAコーティングプレートを健常対照(n=5)及びSLE患者(n=43)からの血清と共にインキュベートし、自己反応性IgG1、IgG2、IgG3、IgG4及びIgEをHRP結合した対応する特異的抗ヒトFc部分で検出した。示されているデータは、健常対照に正規化し、平均±s.e.m.として表している。
【0077】
【
図20】
図20A−20Fは、SLEを有する個体における好塩基球が活動性であり、CD62L及びHLA−DRを上方調節し、そして二次リンパ組織にホーミングすることを示す。
図20Aは、対照(n=41)と比較した非活動性、軽度又は活動性SLE(
図18Aについての説明で定義したとおり(それぞれn=13、n=15及びn=15)を有する対象からの疾患強度に対する活性化血液好塩基球のレベル(CD203c発現)のフローサイトメトリ分析のグラフである。データは、対照に正規化して、任意単位で表したCD203c平均蛍光強度(MFI)の割合である。
図20Bは、
図20Aの対象群における血液好塩基球上でのCD62L発現(MFI)のフローサイトメトリ分析の描画である。データは、
図20Aにおけるように正規化して、任意単位(AU)で平均±s.e.m.として表している(健常対照:n=13;SLE患者:非活動性/軽度/活動性、n=4/6/6)。
図20Dは、フローサイトメトリによって測定した血液好塩基球の絶対数の描画である(健常対照:n=41;非活動性SLE:n=13;中等度SLE:n=15;活動性SLE:n=15)。データは平均±s.e.m.である。
図20A〜20Dでは、統計解析は対応のない両側スチューデントt検定によって実施した;
*P<0.05;
**P<0.01;
***P<0.001。
図20Eと
図20Fは、健常(正常)対照又はSLEを有する対象(n=2)のリンパ節(
図20E)、脾臓(
図20F)における好塩基球の免疫組織化学(2D7モノクローナル抗体による)の顕微鏡写真である。好塩基球は、SLEを有する個体のリンパ節胚中心のB細胞域においてのみ認められた(
図20E)。健常(正常)対照又はSLEを有する個人からの脾生検は、SLEを有する対象の胚中心における好塩基球の局在化を示すが、正常対照では局在化を示さない(
図20F)。同様の結果が第2の好塩基球特異的抗体(BB1)で得られた(データは示していない)。原倍率、×20。スケールバー、200μm。挿入図はより大きな画像の囲まれた領域を示す。原倍率、×40。スケールバー、25μm。
【0078】
【
図21】
図21A−21Dは、血液好塩基球数及びHLA−DR発現への免疫抑制治療の影響を示す。
図21Aは、末梢血好塩基球数が免疫抑制治療(IST)(15mg/日以上のプレドニゾン及び/又はシクロホスファミド、アザチオプリン、ミコフェノレートモフェチルと定義される)を受けている患者において有意に低かったことを示す。
図21Bと21Dは、低用量(≦7.5mg/日)又は中用量から高用量(>7.5mg/日)のプレドニゾンを摂取している患者の間で末梢好塩基球の数(
図21B)及びHLA−DRを発現する好塩基球の数(
図21D)に関して差がなかったことを示す。
図21Cは、ISTを受けている患者又はISTを受けていない患者の間でHLA−DR
+好塩基球の割合に差がなかったことを示す。示されているデータは平均±s.e.m.である。統計解析は対応のない両側スチューデントt検定によって実施した。
【0079】
【
図22】
図22は、SLE患者の情報及び特徴を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
本発明は、狼瘡、ループス腎炎、ループス関連の疾患及び他の自己免疫疾患の治療のために有用な組成物及び方法を特徴とする。
【0081】
本発明は、少なくとも一部は、SrcファミリープロテインチロシンキナーゼLynを欠くマウス(Lyn
−/−マウス)において、自己反応性IgEによる好塩基球の活性化によって、好塩基球のリンパ節へのホーミングが引き起こされ、Tヘルパー2型(T
H2)細胞の分化が促進されて、ループス様腎炎を引き起こす自己反応性抗体の産生が増強されたという発見に基づいている。SLEを有する個体は、上昇した疾患活動性及び活動性ループス腎炎に関連するパラメータである、上昇した血清IgE、自己反応性IgE、CD62リガンド(CD62L)を発現する活性化された好塩基球、及び主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスII分子、ヒト白血球抗原−DR(HLA−DR)も有している。好塩基球は、SLEを有する対象のリンパ節及び脾臓にも存在した。これらの結果は、好塩基球及びIgE自己抗体が、ループス腎炎を導く自己抗体産生を増幅することを示している。したがって、本発明は、自己反応性IgE産生を阻害すること、自己反応性抗体による好塩基球の活性化を低減すること、又はそれ以外の方法で望ましくない好塩基球の活性を阻害することにより、狼瘡、ループス腎炎、ループス関連疾患、及び他の自己免疫疾患を予防又は治療するために有用な組成物及び方法を提供する。
【0082】
全身性エリテマトーデス(SLE)
SLEは様々な臓器に影響を及ぼす複雑な疾患であり、腎障害(ループス腎炎)が重篤である場合は死に至ることもある(Rahman, A. & Isenberg, D. A., (2008) N. Engl. J. Med. 358, 929-939; Moser, K. L. et al., (2009) Genes Immun. 10, 373-379)。ループス腎炎は、糸球体に沈着したIgM、IgG及びIgA含有の免疫複合体を特徴とする。これらの免疫複合体は、核成分(抗核抗体(ANA))又は核酸(二本鎖DNA(dsDNA)など)に対して特異性を有する自己抗体によって形成される。SLEにおけるT
H1、T
H17及び調節性T細胞の役割については多くの証拠が存在するが(Masutani, K. et al. (2001) Arthritis Rheum. 44, 2097-2106; Balomenos, D. et al., (1998) J. Clin. Invest. 101, 364-371; Peng, S. L. et al., (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99, 5545-5550; Zeng, D. et al., (2003) J. Clin. Invest. 112, 1211-1222; Nalbandian, A. et al. (2009) Clin. Exp. Immunol. 157, 209-215; Pernis, A. B., (2009) J. Intern. Med. 265, 644-652; Valencia, X. et al. (2007) J. Immunol. 178, 2579-2588; Zhao, X. F. et al. (2010) Mol. Biol. Rep. 37, 81-85)、いくつかの試験はT
H2の寄与の可能性を示唆している(Akahoshi, M. et al. (1999) Arthritis Rheum. 42, 1644-1648; Heine, G. et al. (2002) Nephrol. Dial. Transplant. 17, 1790-1794; Shimizu, S. et al. (2005) J. Immunol. 175, 7185-7192)。SLEが強い体液性応答を伴う疾患であることを考慮すると(Tiller, T. et al. (2007) Immunity 26, 205-213; Tsuiji, M. et al. (2006) J. Exp. Med. 203, 393-400)、関連するアトピー又はアレルギーの増大を全く伴わずに、SLEを有する一部の人々の血清中のIgE濃度の上昇及び自己反応性IgEの存在が報告されている(Atta, A. M. et al. (2004) Braz. J. Med. Biol. Res. 37, 1497-1501)ので、SLEがT
H2成分を有する可能性があるということは合理的であると思われる。
【0083】
Lyn
−/−マウスが若齢期に強い構成的なT
H2への偏りを生じ、T
H2抗原投与に対する応答の悪化を示すことが以前に報告されている(Odom, S. et al. (2004) J. Exp. Med. 199, 1491-1502; Charles, N. et al. (2009) Immunity 30, 533-543; Beavitt, S. J. et al. (2005) J. Immunol. 175, 1867-1875)。高齢期には、Lyn
−/−マウスはヒトSLEの特徴の一部を模倣する自己免疫疾患を発症する(Hibbs, M. L. et al. (1995) Cell 83, 301-311; Nishizumi, H. et al. (1995) Immunity 3, 549-560; Yu, C. C. et al. (2001) Curr. Biol. 11, 34-38)。Lyn
−/−マウスはdsDNA及びANAに対する循環自己抗体を有する。これらのマウスにおける循環性免疫複合体(CIC)の糸球体沈着は腎障害を引き起こし、最終的に死に至る。特に、欧米人集団におけるSLEとLYNの遺伝的関連性が最近報告された(Lu, R. et al. (2009) Genes Immun. 10, 397-403)。加えて、SLEを有する一部の個体からのB細胞は低レベルのLynキナーゼを発現する(Liossis, S. N. et al. (2001) J. Investig. Med. 49, 157-165)。したがって、Lyn
−/−マウスが、T
H2環境のループス様腎炎の発症に対する影響を検討するための合理的なモデルを提供する。
【0084】
本検討では、Lyn
−/−マウスのT
H2への偏りが高齢期のループス様腎炎の発症において機能するか否か、及びSLEを有する人々において同様の特徴が見られるか否かという問題に取り組む。以下でより詳細に報告するように、T
H2表現型はLyn
−/−マウスにおけるループス様腎炎の発症において機能して、及びヒトSLEにおけるループス腎炎にも関連する。したがって、好塩基球及び自己反応性IgEは自己抗体介在性腎疾患の発症において重要な要素である。重要な点として、自己反応性IgEの減少はループス腎炎の減少に結びつき、自己反応性IgEが存在しない場合、自己抗体の産生は大きく減少して、マウスは正常な腎機能を示した。したがって、ある実施態様では、本発明は、狼瘡、ループス腎炎、他のループス関連疾患及び他の自己免疫疾患の治療又は予防のために抗IgE薬剤(例えば、オマリズマブ(Xolair)などの抗生物質)を使用する方法を提供する。別の実施態様では、本発明は、狼瘡、ループス腎炎又はループス関連疾患を有する対象において好塩基球を枯渇させることにより、狼瘡、ループス腎炎及び他のループス関連疾患を治療又は予防する方法を提供する。
【0085】
オマリズマブ及び他の抗体
IgEアンタゴニストとして働く抗体(例えば、抗体rhuMAb−E25オマリズマブ(Finn et al., 2003 J Allergy Clin Immuno 111(2):278-284; Corren et al., 2003 J Allergy Clin Immuno 111(l):87-90; Busse and Neaville,2001 Curr Opin Allergy Clin Immuno 1(1):105-108;及びTang and Powell, 2001, Eur J Pediatr 160(12):696-704を
参照されたい)は、本発明の方法において特に有用である。1つの実施態様では、自己反応性IgEに選択的に結合する抗体は本発明の方法において有用である。特定の実施態様では、本発明は、狼瘡、ループス腎炎、他のループス関連の疾患及び他の自己免疫疾患の治療のためにオマリズマブを使用する方法を提供する。
【0086】
オマリズマブは、遊離IgE濃度を低減し、好塩基球上のIgE受容体の下方調節を促進するモノクローナル抗IgE抗体である。オマリズマブは高親和性IgE受容体
FcεRIへのIgEの結合を阻害する。IgEは、肥満細胞からのヒスタミン及び他の炎症メディエータの放出を引き起こすことによってアレルギー疾患の一因となる。オマリズマブは、循環IgEに結合し、IgEがその高親和性肥満細胞受容体に結合するのを妨げることによって循環IgEを中和する。立体障害により、オマリズマブは、低親和性肥満細胞受容体への結合も妨げる。オマリズマブ及びオマリズマブを投与するための方法は、例えば、各々が参照により本明細書に取り込まれる、米国特許第6,267,958号及び以下の公表文献:Finn et al. J Allergy Clin Immunol. 2003;111:278-284; Holgate et al., Curr Med Res Opin. 2001;17:233-240; Johansson et al., Ann Allergy Asthma Immunol. 2002;89:132-138に記載されている。オマリズマブは一般に皮下投与される。投与量は、各投与当たり75mg〜500mgに変化する。ある特定の実施態様では、用量は、各投与当たり75、100、150、200、250、300、350、375、400、450又は500mgである。オマリズマブの用量を、週に1回又はそれ以上投与することができる、又はより少ない頻度で投与してもよい。例えば、前記投与量のいずれかを1週間ごと、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、6週間ごと、8週間ごと又は10週間ごとに1回投与してもよい。ある特定の実施態様では、オマリズマブを各投与当たり150mg若しくは300mgで4週間ごとに、又は各投与当たり225mg、300mg若しくは375mgで2週間ごとに投与する。
【0087】
本発明において有用な他の抗体は、IgEシグナル伝達、好塩基球の活性化又は好塩基球数を調節するものである。ある実施態様では、IL−5受容体に対する抗体は、好塩基球を低減又は枯渇させるために使用できる。抗体を作製する方法は免疫学の当業者に周知である。本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、無傷抗体分子のみならず、免疫原結合能を保持する抗体分子の断片も意味する。そのような断片も当該技術分野において周知であり、通常インビトロ及びインビボの両方で用いられる。従って、本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、無傷免疫グロブリン分子のみならず、周知の活性断片F(ab’)
2及びFabも意味する。無傷抗体のFc断片を欠失しているF(ab’)
2及びFab断片は、循環からより迅速に排除され、無傷抗体のより少ない非特異的組織結合を有する可能性がある(Wahl et al., J. Nucl. Med. 24:316-325 (1983))。本発明の抗体は、全天然抗体、二重特異性抗体;キメラ抗体;Fab、Fab’、一本鎖V領域断片(scFv)、融合ポリペプチド及び非従来型抗体を包含する。
【0088】
非従来型抗体には、これに限定されないが、ナノ抗体(nanobody)、線状抗体(Zapata et al., Protein Eng. 8(10): 1057-1062, 1995)、単一ドメイン抗体、一本鎖抗体及び多結合価を有する抗体(例えば、二重特異性抗体(diabody)、三重特異性抗体(tribody)、四重特異性抗体(tetrabody)及び五重特異性抗体(pentabody))が含まれる。ナノ抗体は、軽鎖の不在下で完全に機能性であるように進化した天然重鎖抗体の最小断片である。ナノ抗体は、一本鎖Fv断片の半分の大きさにすぎないが、従来の抗体の親和性と特異性を有する。その極度の安定性及びヒト抗体フレームワークとの高度の相同性と併せて、この固有な構造がもたらす結果は、ナノ抗体が従来抗体とはアクセスできない治療標的と結合できることである。多結合価を有する組換え抗体断片は、癌細胞に対する高い結合親和性及び固有の標的特異性を提供する。約60〜100kDaの大きさの小分子はより速やかな血液クリアランス及び迅速な組織取込みをもたらすので、これらの多価scFv(例えば二重特異性抗体、四重特異性抗体)は親抗体を超える改善をもたらす。Power et al.(Generation of recombinant multimeric antibody fragments for tumor diagnosis and therapy. Methods Mol Biol, 207, 335-50, 2003);及びWu et al. (Anti-carcinoembryonic antigen (CEA) diabody for rapid tumor targeting and imaging. Tumor Targeting, 4, 47-58,1999)を参照されたい。
【0089】
非従来型抗体を作製する様々な技術が記述されている。ロイシンジッパーを用いて作製される二重特異性抗体は、Kostelny et al.(J.Immunol.148(5):1547-1553,1992)に述べられている。二重特異性抗体(diabody)技術は、Hollinger et al.(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448, 1993)に記述されている。一本鎖Fv(sFv)二量体の使用によって二重特異性抗体断片を作製するための別の戦略が、Gruber et al.(J. Immunol. 152:5368, 1994)に述べられている。三重特異性抗体はTutt et al.(J. Immunol. 147:60, 1991)に記述されている。一本鎖Fvポリペプチド抗体は、直接連結されるか、又はHuston,et al.(Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 85:5879-5883, 1988)に記述される、ペプチドをコードするリンカーによって連結される、V
H及びV
Lをコードする配列を含む核酸から発現できる、共有結合されたVH::VLヘテロ二量体を包含する。米国特許第5,091,513号、同第5,132,405号及び同第4,956,778号;ならびに米国特許出願公開第20050196754号及び同第20050196754号も参照されたい。
【0090】
ある実施態様では、自己反応性IgEに結合する抗体はモノクローナルである。或いは、抗IgE抗体はポリクローナル抗体である。ポリクローナル抗体の作製及び使用も当業者に公知である。本発明は、1対の重鎖と軽鎖が第一抗体から得られ、他方の対の重鎖と軽鎖が異なる第二抗体から得られる、ハイブリッド抗体も包含する。そのようなハイブリッドは、ヒト化重鎖及び軽鎖を使用して形成できる。そのような抗体はしばしば「キメラ」抗体と称される。
【0091】
一般に、無傷抗体は「Fc」及び「Fab」領域を含むと言われている。Fc領域は補体の活性化に関与し、抗原結合には関与しない。Fc’領域が酵素的に切断されているか又はFc’領域なしで作製された、「F(ab’)
2」断片と称される抗体は、無傷抗体の両方の抗原結合部位を保持する。同様に、Fc領域が酵素的に切断されているか又はFc領域なしで作製された、「Fab」断片と称される抗体は、無傷抗体の抗原結合部位の一方を保持する。Fab断片は、共有結合された抗体軽鎖及び「Fd」と称される抗体重鎖の一部分からなる。Fd断片は抗体特異性の主要決定基である(単一Fd断片は、抗体の特異性を変化させずに10までの異なる軽鎖と結合できる)。単離されたFd断片は、免疫原性エピトープに特異的に結合する能力を保持する。
【0092】
抗体は、可溶性ポリペプチド又はその免疫原性断片を免疫原として使用して、当該技術分野で公知の方法のいずれかによって作製することができる。抗体を得る1つの方法は、適切な宿主動物を免疫原で免疫化し、ポリクローナル又はモノクローナル抗体作製のための標準的な手順に従うことである。免疫原は細胞表面での免疫原の提示を促進する。適切な宿主の免疫化は多くの方法で実施することができる。ヒトIgE又はその免疫原性断片をコードする核酸配列を、宿主の免疫細胞によって取り込まれる送達媒体中で宿主に提供することができる。細胞は、次に、ヒトIgEを発現し、それによって宿主における免疫原性応答を生じさせる。或いは、ヒトIgE又はその免疫原性断片をコードする核酸配列をインビトロで細胞において発現させ、続いてヒトIgEを単離して、抗体が惹起されている適切な宿主にIgEを投与することができる。
【0093】
或いは、自己反応性IgEに対する抗体は、所望により、抗体ファージディスプレイライブラリから誘導することができる。バクテリオファージは細菌内で感染し、繁殖することができ、ヒト抗体遺伝子と組み合わせた場合、ヒト抗体タンパク質を提示するように遺伝子操作することができる。ファージディスプレイは、ファージを、その表面にヒト抗体タンパク質を「提示する」ようにする方法である。ヒト抗体遺伝子ライブラリからの遺伝子をファージの集団に挿入する。各々のファージは異なる抗体についての遺伝子を担持し、したがってその表面に異なる抗体を提示する。
【0094】
次いで、当該技術分野で公知の何れかの方法によって作製された抗体を、宿主から精製することができる。抗体の精製方法には、塩沈殿(例えば硫酸アンモニウムによる)、イオン交換クロマトグラフィ(例えば、好ましくは中性pHで実施され、漸増イオン強度の段階的勾配で溶出される陽イオン又は陰イオン交換カラムでの)、ゲル濾過クロマトグラフィ(ゲル濾過HPLCを含む)、並びにプロテインA、プロテインG、ヒドロキシアパタイト及び抗免疫グロブリンなどの親和性樹脂でのクロマトグラフィが含まれる。
【0095】
抗体は、抗体を発現するように遺伝子操作されたハイブリドーマ細胞から好都合に作製することができる。ハイブリドーマを作製する方法は当該技術分野において周知である。ハイブリドーマ細胞を適切な培地で培養し、使用済み培地を抗体供給源として使用することができる。次いで、関心のある抗体をコードするポリヌクレオチドを、抗体を産生するハイブリドーマから得ることができ、その後これらのDNA配列から抗体を合成によって又は組換えによって作製することができる。大量の抗体を生産するためには、一般に腹水液を得ることがより好都合である。腹水を生じさせる方法は、一般にハイブリドーマ細胞を免疫学的にネイティブな組織適合性又は免疫寛容哺乳動物、特にマウスに注射することを含む。適切な組成物(例えば、プリスタン)の事前投与によって哺乳動物を腹水生成のためにプライミングすることができる。
【0096】
本発明の方法によって作製されるモノクローナル抗体(Mab)は、当該技術分野で公知の方法によって「ヒト化」することができる。「ヒト化」抗体は、配列の少なくとも一部がヒト免疫グロブリンにより類似するように、その元の形態から変化している抗体である。抗体をヒト化する技術は、非ヒト動物(例えば、マウス)抗体を作製する場合に特に有用である。マウス抗体をヒト化するための方法の例は、米国特許第4,816,567号、同第5,530,101号、同第5,225,539号、同第5,585,089号、同第5,693,762号及び同第5,859,205号に記載されている。
【0097】
阻害性核酸
阻害性核酸分子は、狼瘡、ループス腎炎、ループス関連疾患、及び他の自己免疫疾患の治療のためにIgEの発現若しくは活性を阻害するか又は好塩基球の活性を低下させるオリゴヌクレオチドである。そのようなオリゴヌクレオチドは、IgEをコードする核酸分子(例えば、アンチセンス分子、siRNA、shRNA)に結合する一本鎖及び二本鎖核酸分子(例えば、DNA、RNA、及びその類似体)並びにIgEポリペプチドに直接結合してその生物学的活性を調節する核酸分子(例えば、アプタマー)を包含する。
【0098】
リボザイム
本発明のアンチセンスIgE配列を標的とする触媒RNA分子又はリボザイムは、インビボでIgE核酸分子の発現を阻害するために使用できる。アンチセンスRNA内にリボザイムを含めることは、それらにRNA切断活性を付与し、それにより構築物の活性を増大させる。標的RNA特異的リボザイムの設計及び使用は、各々が参照により本明細書に取り込まれている、Haseloff et al.,Nature 334:585-591.1988及び米国特許出願公開第2003/0003469A1号に記載されている。従って、本発明は、結合アーム中に、8〜19個の連続する核酸塩基を有するアンチセンスRNAを含む触媒RNA分子も特徴とする。本発明の好ましい実施態様では、触媒核酸分子はハンマーヘッド又はヘアピンモチーフに形成される。そのようなハンマーヘッドモチーフの例は、Rossi et al.,Aids Research and Human Retroviruses,8:183, 1992に記述されている。ヘアピンモチーフの例は、1988年9月20日に出願された米国特許出願第07/247,100号の一部継続出願である、1989年9月20日に出願されたHampel et al.,「RNA Catalyst for Cleaving Specific RNA Sequences」、Hampel and Tritz, Biochemistry,28:4929, 1989、及びHampel et al.,Nucleic Acids Research,18:299, 1990に記載されている。これらの特定のモチーフは本発明において限定的ではなく、当業者は、本発明の酵素的核酸分子において重要なことは、標的遺伝子RNA領域のうちの1つ又はそれ以上に相補的な特異的基質結合部位を有すること、及びその基質結合部位内又はその周囲に、分子にRNA切断活性を与えるヌクレオチド配列を有することであると認識されるだろう。
【0099】
低分子ヘアピンRNAは、場合により3’UU突出部を有するステムループ構造から成る。変動もあり得るが、ステムは21〜31bp(望ましくは25〜29bp)の範囲であってよく、ループは4〜30bp(望ましくは4〜23bp)の範囲であってよい。細胞内でのshRNAの発現のために、ポリメラーゼIII H1−RNA又はU6プロモーターのいずれか、ステムループ状RNA挿入物のためのクローニング部位、及び4−5−チミジン転写終結シグナルを含むプラスミドベクターが使用できる。ポリメラーゼIIIプロモーターは、一般に、広く定義された開始及び停止部位を有し、それらの転写産物はポリ(A)尾部を欠いている。これらのプロモーターについての終結シグナルはポリチミジン域によって定義され、転写産物は、典型的には2番目のウリジンの後で切断される。この位置での切断は、発現されたshRNAにおいて3’UU突出部を生じさせ、この突出は合成siRNAの3’突出部に類似する。哺乳動物細胞においてshRNAを発現するための付加的な方法は、上記で引用した参照文献に記載されている。
【0100】
siRNA
短い21〜25ヌクレオチドの二本鎖RNAは遺伝子発現を下方調節するのに有効である(参照により本明細書に取り込まれている、Zamore et al., Cell 101:25-33; Elbashir et al., Nature 411:494-498, 2001)。哺乳動物におけるsiRNAアプローチの治療上の有効性は、McCaffrey et al.(Nature 418:38-39. 2002)によりインビボで明らかにされた。標的遺伝子の配列が与えられれば、その遺伝子を不活性化するsiRNAを設計することができる。そのようなsiRNAは、例えば、罹患組織に直接投与するか又は全身的に投与することができる。Parl遺伝子の核酸配列を使用して低分子干渉RNA(siRNA)を設計することができる。21〜25ヌクレオチドのsiRNAは、例えば、狼瘡を治療する治療薬として使用することができる。
【0101】
本発明の阻害性核酸分子は、IgE発現のRNA干渉(RNAi)を介したノックダウンのための二本鎖RNAとして使用することができる。ある実施態様では、B細胞においてIgE発現が低減する。RNAiは、関心のある特定のタンパク質の細胞発現を低下させるための方法である(Tuschl, Chembiochem 2:239-245, 2001; Sharp, Genes & Devel. 15:485-490, 2000; Hutvagner and Zamore, Curr. Opin. Genet. Devel. 12:225-232, 2002;及びHannon, Nature 418:244-251, 2002に総説されている)。dsRNAのトランスフェクションによるか又はプラスミドに基づく発現系を用いたsiRNAの発現を介した、細胞へのsiRNAの導入は、哺乳動物細胞において機能喪失表現型を作製するためにますます使用されるようになっている。
【0102】
本発明のある実施態様では、本発明の核酸塩基オリゴマーの8〜19個の連続する核酸塩基を含む二本鎖RNA(dsRNA)分子を作製する。dsRNAは、二重になったRNAの2本の別個の鎖、又は自己二重化した1本のRNA鎖(低分子ヘアピン(sh)RNA)であってよい。典型的には、dsRNAは約21又は22塩基対であるが、所望により、より短いか又はより長くても(約29核酸塩基まで)よい。dsRNAは標準的な技術(例えば化学合成又はインビトロでの転写)を用いて作製することができる。キットが、例えば、Ambion(Austin, Tex.)及びEpicentre(Madison, Wis.)から入手可能である。哺乳動物細胞においてdsRNAを発現するための方法は、各々が参照により本明細書に取り込まれている、Brummelkamp et al.Science 296:550-553, 2002; Paddison et al.Genes & Devel. 16:948-958, 2002; Paul et al. Nature Biotechnol. 20:505-508, 2002; Sui et al.Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:5515-5520, 2002; Yu et al.Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:6047-6052, 2002; Miyagishi et al.Nature Biotechnol. 20:497-500, 2002;及びLee et al.Nature Biotechnol.に記載されている。
【0103】
低分子ヘアピンRNAは、場合により3’UU突出部を有するステムループ構造から成る。変動もあり得るが、ステムは21〜31bp(望ましくは25〜29bp)の範囲であってよく、ループは4〜30bp(望ましくは4〜23bp)の範囲であってよい。細胞内でのshRNAの発現のために、ポリメラーゼIII H1−RNA又はU6プロモーターのいずれか、ステムループ状RNA挿入物のためのクローニング部位、及び4−5−チミジン転写終結シグナルを含むプラスミドベクターが使用できる。ポリメラーゼIIIプロモーターは、一般に、広く定義された開始及び停止部位を有し、それらの転写産物はポリ(A)尾部を欠いている。これらのプロモーターについての終結シグナルはポリチミジン域によって定義され、転写産物は、典型的には2番目のウリジンの後で切断される。この位置での切断は、発現されたshRNAにおいて3’UU突出部を生じさせ、この突出は合成siRNAの3’突出部に類似する。哺乳動物細胞においてshRNAを発現させるための付加的な方法は、上記で引用した参照文献に記載されている。
【0104】
核酸塩基オリゴマーの送達
裸の阻害性核酸分子又はその類似体は、哺乳動物細胞に入って、関心のある遺伝子の発現を阻害することができる。それにもかかわらず、オリゴヌクレオチド又は他の核酸塩基オリゴマーの細胞への送達を助ける製剤を使用することが望ましいかもしれない(例えば、各々が参照により本明細書に取り込まれている、米国特許第5,656,611号、同第5,753,613号、同第5,785,992号、同第6,120,798号、同第6,221,959号、同第6,346,613号及び同第6,353,055号を参照されたい)。
【0105】
ポリヌクレオチド療法
本発明はまた、IgEシグナル伝達をブロックするポリペプチドをコードするベクターを送達するための方法を提供する。IgEタンパク質、変異体又はその断片を標的とする阻害性核酸分子をコードするポリヌクレオチドを特徴とするポリヌクレオチド療法は、狼瘡を治療するための1つの治療アプローチである。対象におけるそのようなタンパク質の発現は、IgEの選択的排除を促進すると期待される。そのような核酸分子を、狼瘡を有する対象の細胞に送達することができる。別の実施態様では、ベクターはFcεRの細胞外断片を含む可溶性ポリペプチドをコードする。核酸分子は、それらが取り込まれて、それらの治療有効レベルの阻害性核酸分子を産生できるような形態で対象の細胞に送達することができる。
【0106】
IgEを標的とする阻害性核酸分子をコードする発現ベクターは、全体的な発現のために投与されてもよいし、又は選択組織の形質導入のために使用されてもよい。形質導入ウイルス(例えばレトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)ベクターは、特にそれらの高い感染効率及び安定な組込みと発現のゆえに、体細胞遺伝子治療のために使用することができる(例えばCayouette et al., Human Gene Therapy 8:423-430, 1997; Kido et al., Current Eye Research 15:833-844, 1996; Bloomer et al., Journal of Virology 71:6641-6649, 1997; Naldini et al., Science 272:263-267, 1996;及びMiyoshi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94:10319, 1997を参照されたい)。例えば、抗IgEタンパク質、変異体又はその断片をコードするポリヌクレオチドをレトロウイルスベクターにクローニングし、その内因性プロモーターから、レトロウイルスロングターミナルリピートから、又は関心のある標的細胞型に特異的なプロモーターから、発現を駆動させることができる。使用できる他のウイルスベクターには、例えば、ワクシニアウイルス、ウシパピローマウイルス、又はエプスタイン−バーウイルスなどのヘルペスウイルスが含まれる(例えば、Miller, Human Gene Therapy 15-14, 1990; Friedman, Science 244:1275-1281, 1989; Eglitis et al., Bio Techniques 6:608-614, 1988; Tolstoshev et al., Current Opinion in Biotechnology 1:55-61, 1990; Sharp, The Lancet 337:1277-1278, 1991; Cornetta et al., Nucleic Acid Research and Molecular Biology 36:311-322, 1987; Anderson, Science 226:401-409, 1984; Moen, Blood Cells 17:407-416, 1991; Miller et al., Biotechnology 7:980-990, 1989; Le Gal La Salle et al., Science 259:988-990, 1993;及びJohnson, Chest 107:77S-83S, 1995のベクターも参照されたい)。レトロウイルスベクターは特に広く開発されており、臨床の場で使用されている(Rosenberg et al., N. Engl. J. Med 323:370, 1990; Anderson et al., 米国特許第5,399,346号)。最も好ましくは、ウイルスベクターは抗IgEポリヌクレオチドを全身的に投与するために使用される。
【0107】
非ウイルスアプローチも、狼瘡の抑制を必要とする患者の細胞に治療薬を導入するために用いることができる。例えば、核酸分子を、リポフェクションの存在下で核酸を投与することによって(Feigner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84:7413, 1987; Ono et al., Neuroscience Letters 17:259, 1990; Brigham et al., Am. J. Med. Sci. 298:278, 1989; Staubinger et al., Methods in Enzymology 101:512, 1983)、アシアロオロソムコイド−ポリリシンコンジュゲートの存在下で核酸を投与することによって(Wu et al., Journal of Biological Chemistry 263:14621, 1988; Wu et al., Journal of Biological Chemistry 264:16985, 1989)、又は外科的条件下での顕微注入によって(Wolff et al., Science 247:1465, 1990)、細胞内に導入することができる。好ましくは、核酸をリポソーム及びプロタミンと組み合わせて投与する。
【0108】
遺伝子導入は、インビトロでのトランスフェクションを含む非ウイルス的手段を用いて達成することもできる。そのような方法には、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン、電気穿孔、及びプロトプラスト融合の使用が含まれる。リポソームも、細胞内へのDNAの送達のために潜在的に有益であるかもしれない。患者の罹患組織への正常な遺伝子の移植も、正常核酸をエクスビボで培養可能な細胞型(例えば、自己又は異種一次細胞又はその子孫)に移入することによって達成でき、その後細胞(又はその後代)を標的組織に注入する。
【0109】
ポリヌクレオチド療法における使用のためのcDNA発現は、何れかの適切なプロモーター(例えば、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーター、又はメタロチオネインプロモーター)から指令することができ、そして何れかの適切な哺乳動物調節エレメントによって調節することができる。例えば、所望により、特定の細胞型における遺伝子発現を優先的に誘導することが知られているエンハンサーを、核酸の発現を誘導するために用いることができる。使用されるエンハンサーには、これに限定されることなく、組織特異的又は細胞特異的なエンハンサーとして特徴づけられるものが含まれる。或いは、ゲノムクローンを治療構築物として使用する場合は、調節は、コグネイト調節配列によって、又は所望により、上述したプロモーター若しくは調節エレメントのいずれかを含む、異種供給源に由来する調節配列によって媒介され得る。本発明に含まれる別の治療アプローチには、組換え抗IgEタンパク質、変異体又はその断片などの組換え治療薬剤を、潜在的な又は実際の疾患患部組織の部位に直接又は全身的に(例えば何れかの従来の組換えタンパク質投与技術によって)投与することが含まれる。投与するタンパク質の用量は、個々の患者の大きさ及び健康を含む多くの因子に依存する。何れかの特定の対象について、具体的な投薬レジメンは、個々の必要性及び組成物を投与する又は投与を管理する人物の専門的判断に従って経時的に調整されるべきである。
【0110】
IgE又は好塩基球活性を阻害する薬剤のスクリーニング
本明細書中以下で報告するように、IgE及び好塩基球活性は狼瘡、ループス腎炎、他のループス関連疾患及び他の自己免疫疾患に関連する。自己反応性IgE及び好塩基球活性の上昇を有する対象はループス腎炎を発症する危険度が高いことを考慮すると、好塩基球の数若しくは活性を選択的に低減させるか又はIgEを阻害する薬剤は、狼瘡、ループス腎炎、他のループス関連疾患及び他の自己免疫疾患の治療のために有用である。所望により、IgE及び/又は好塩基球の発現又は生物活性を低下させる薬剤を、循環性免疫複合体(CIC)の選択的低減を増強させる効果に関して試験する。ある実施例では、候補化合物を、好塩基球を活性化する薬剤(例えばIgE)の添加の前、添加と同時に、又は添加後に細胞(例えば好塩基球)の培地に添加する。次に(例えばCD62リガンド発現を測定する)標準的な方法を用いて好塩基球の活性化又は脱顆粒を測定する。候補薬剤の存在下で測定された好塩基球活性化のレベルを、候補薬剤を摂取しなかった対応する対照培養物において測定されたレベルと比較する。或いは、IgEの好塩基球への結合をブロックする薬剤の能力を測定する。別の実施態様では、インビトロアッセイを使用して、IgEのその受容体への結合を調節する又は阻害する化合物又は薬剤のスクリーニングにおいてIgEのその受容体への結合を測定することができる。好塩基球の活性化を阻害する、IgE受容体結合をブロックする、又はIgEの好塩基球への結合を低減する化合物を、本発明において有用と同定する;そのような候補化合物は、例えば狼瘡に関連する疾患又は障害を予防する、遅延させる、改善する、安定化する又は治療するための治療薬剤として使用できる。
【0111】
この方法(又は何れかの他の適切な方法)によって単離された薬剤を、所望により、さらに精製することができる(例えば高速液体クロマトグラフィによって)。加えて、そのような候補薬剤を、動物モデルにおいてIgE結合又は好塩基球活性化を調節するそれらの能力に関して試験することができる。他の実施態様では、IgE又はCICの低下を同定することによって薬剤の活性を測定する。このアプローチによって単離された薬剤は、例えば対象において狼瘡を治療又は予防するための治療薬剤として使用できる。
【0112】
候補薬剤には、有機分子、ペプチド、ペプチド模倣体、ポリペプチド及び核酸分子が含まれる。本明細書に列挙される配列の各々は、狼瘡を治療するための治療化合物の発見及び開発においても使用することができる。コードされるタンパク質は、発現後、薬剤のスクリーニングのための標的として使用できる。加えて、コードされるタンパク質のアミノ末端領域をコードするDNA配列、又はそれぞれのmRNAのシャイン−ダルガルノ配列若しくは他の翻訳促進配列を使用して、関心のあるコード配列の発現を促進する配列を構築することができる。そのような配列は標準的な技術(Ausubel et al., 前出)によって単離することができる。本発明の低分子は、好ましくは2,000ダルトン未満、より好ましくは300〜1,000ダルトン、最も好ましくは400〜700ダルトンの分子量を有する。これらの低分子は有機分子であることが好ましい。
【0113】
本発明はまた、上述したスクリーニングアッセイによって同定される新規薬剤を包含する。場合により、そのような薬剤は、狼瘡の治療又は予防に対する化合物の有効性を確認するために、1つ又はそれ以上の適切な動物モデルにおいて特徴づけられる。望ましくは、動物モデルにおける特徴づけを、そのような化合物による治療の毒性、副作用又は作用機構を確認するために使用することもできる。さらに、上述したスクリーニングアッセイのいずれかによって同定される新規薬剤は、対象における狼瘡の治療のために使用することができる。そのような薬剤は、単独で又は当該技術分野で公知の他の従来の療法と組み合わせて有用である。
【0114】
試験薬剤及び抽出物
一般に、好塩基球活性及び/又はIgE結合を調節することができる薬剤は、当該技術分野で公知の方法に従って、天然生成物又は合成(若しくは半合成)抽出物の両方の大きなライブラリ又は化学物質ライブラリから、又はポリペプチド若しくは核酸のライブラリから同定される。創薬研究開発の分野の当業者は、試験抽出物又は薬剤の正確な供給源が本発明のスクリーニング手順にとって重要ではないことを理解されるだろう。スクリーニングにおいて使用される薬剤には、公知の薬剤(例えば、他の疾患又は障害のために使用される公知の治療薬剤(例えば、オマリズマブ))が含まれてよい。或いは、実質的にあらゆる数の未知の化学的抽出物又は薬剤を本明細書で述べる方法を用いてスクリーニングすることができる。そのような抽出物又は薬剤の例には、これに限定されないが、植物、真菌、原核生物又は動物に基づく抽出物、発酵ブロス及び合成物質、並びに既存の薬剤改変体が含まれる。
【0115】
これに限定されないが、糖、脂質、ペプチド及び核酸に基づく薬剤を含む、あらゆる数の化学物質のランダムな合成又は指向性合成(例えば半合成又は全合成)を生じさせるために、数多くの方法も利用可能である。合成化合物ライブラリが、Brandon Associates(Merrimack, N. H.)及びAldrich Chemical(Milwaukee, Wis.)から市販されている。あるいは、候補薬剤として使用する化学物質を、容易に入手可能な出発物質から標準的な合成技術及び当業者に公知の方法を用いて合成することができる。本明細書で述べる方法によって同定される薬剤を合成するうえで有用な合成化学変換及び保護基手法(保護及び脱保護)は当該技術分野で公知であり、例えば、R.Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers(1989);T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,2nd ed.,John Wiley and Sons(1991);L.Fieser and M.Fieser,Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1994);並びにL.Paquette,ed.,Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1995)及びこれらのその続版に記載されているものが含まれる。
【0116】
或いは、細菌、真菌、植物及び動物抽出物の形態の天然薬剤のライブラリが、Biotics(Sussex, UK)、Xenova(Slough, UK)、Harbor Branch Oceanographic Institute(Ft. Pierce, Fla.)及びPharmaMar,U.S.A.(Cambridge, Mass.)を含む多くの供給源から市販されている。加えて、天然及び合成によって生成されるライブラリが、所望により、当該技術分野で公知の方法に従って、例えば、標準的な抽出及び分画方法によって作製される。分子ライブラリの合成のための方法の例は、当該技術分野において、例えば、DeWitt et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:6909,1993;Erb et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11422,1994;Zuckermann et al.,J.Med.Chem.37:2678,1994;Cho et al,Science 261:1303,1993;Carrell et al.,Angew.Chem Int.Ed.Engl.33:2059,1994;Carell et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2061,1994;及びGallop et al,J.Med.Chem.37:1233,1994に見出すことができる。さらに、所望により、何れのライブラリ又は化合物も、標準的な化学的、物理的又は生化学的方法を用いて容易に修飾される。
【0117】
薬剤のライブラリを、溶液中に(例えばHoughten, Biotechniques 13:412-421, 1992)、又はビーズ上(Lam, Nature 354:82-84, 1991)、チップ上(Fodor, Nature 364:555-556, 1993)、細菌上(Ladner、米国特許第5,223,409号)、胞子上(Ladner、米国特許第5,223,409号)、プラスミド上(Cull et al, Proc Natl Acad Sci USA 89:1865-1869, 1992)又はファージ上(Scott and Smith, Science 249:386-390, 1990; Devlin, Science 249:404-406, 1990; Cwirlaet al. Proc. Natl. Acad. Sci. 87:6378-6382, 1990; Felici, J. Mol. Biol. 222:301-310, 1991; Ladner、前出)に提示してもよい。加えて、創薬研究開発の当業者は、脱複製(例えば分類学的脱複製、生物学的脱複製及び化学的脱複製、又はそれらの何れかの組合せ)、又はそれらの活性が既に公知の材料の複製物若しくは反復体の除去のための方法が、可能な限り使用されるべきであることを容易に理解されるだろう。
【0118】
関心のある粗抽出物を同定する場合、観察される効果に関与する化学成分を単離するためにさらに陽性のリード抽出物の分画化が必要である。したがって、抽出、分画及び精製工程の目標は、狼瘡に関連する遺伝子の転写活性を変化させる粗抽出物中の化学的実体の注意深い特徴づけと同定である。そのような不均一な抽出物の分画及び精製の方法は当該技術分野で公知である。所望により、狼瘡治療のための治療薬剤として有用であることが示されている薬剤を当該技術分野で公知の方法に従って化学修飾する。
【0119】
フォスタマチニブ及び他の治療薬
IgEアンタゴニストとして働く薬剤(例えば低分子Sykキナーゼ阻害剤フォスタマチニブ)は、本発明の方法において特に有用である。本発明は、狼瘡の治療のために、上記で特定したスクリーニングにおいて同定される薬剤を含む、自己反応性IgE及び/又は好塩基球の発現又は活性を低下させる薬剤を提供する。ある実施態様では、本発明は、IgEの合成又は分泌を阻害又は調節する医薬品を提供する。別の実施態様では、本明細書で述べる方法を用いて医薬的価値を有することが見い出されている化学的実体は、薬剤として、又は例えば合理的薬剤設計による、既存の薬剤の構造修飾のための情報として有用である。別の実施態様では、Sykキナーゼの低分子阻害剤は、好塩基球の活性を調節するか又は好塩基球の数を減少させるために有用である。フォスタマチニブは、特許請求される方法において有用なSykキナーゼ阻害剤の一例である。
【0120】
治療的用途に関して、本明細書に開示される方法を用いて同定された組成物又は薬剤は、全身的に、例えば薬学的に許容される担体中で製剤化されて、投与されさてもよい。好ましい投与経路には、例えば、患者において持続的なレベルの薬剤を提供する、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内又は皮内注射が含まれる。ヒト患者又は他の動物の治療は、生理的に許容される担体中の治療有効量の狼瘡治療薬を使用して実施される。適切な担体及びそれらの製剤は、例えばE.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。投与すべき治療薬の量は、投与の方法、患者の年齢及び体重、並びに狼瘡の臨床症状によって変わる。一般に、量は、狼瘡の治療に使用される他の薬剤に対して用いられる量の範囲内であるが、ある特定の場合には化合物の高い特異性のためにより低い量が必要となる。化合物は、当業者に公知の診断方法によって又は狼瘡に関連する遺伝子の転写活性を測定するアッセイの何れかを用いて決定される、狼瘡の臨床症状又は生理的症状を制御する用量で投与される。
【0121】
医薬組成物の製剤
狼瘡の治療のための本発明の薬剤又はその類縁体の投与は、他の成分と組み合わせて、狼瘡又はその症状を改善する、低減する又は安定化するのに有効な治療薬の濃度を生じさせる何れかの適切な手段によって実施することができる。ある実施態様では、薬剤の投与は自己反応性IgEの好塩基球への結合を低減する。ある実施態様では、薬剤は、狼瘡に関連する疾患の予防又は治療のために対象に投与される。
【0122】
そのような薬剤を投与する方法は当該技術分野において公知である。本発明は、当該技術分野で公知の何れかの手段による薬剤の治療的投与を提供する。化合物は、何れかの適切な担体物質中に何れか適切な量で含有させることができ、一般に組成物の総重量の1〜95重量%の量で存在する。組成物は、非経口(例えば皮下、静脈内、筋肉内又は腹腔内)の投与経路に適する剤形で提供することができる。医薬組成物は従来の製薬慣例に従って製剤化することができる(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (20th ed.), ed. A. R. Gennaro, Lippincott Williams & Wilkins, 2000及びEncyclopedia of Pharmaceutical Technology, eds. J. Swarbrick and J. C. Boylan, 1988-1999, Marcel Dekker, New Yorkを参照されたい)。適切な製剤には、経口投与用の形態、デポー製剤、パッチによる送達用の製剤、局所的又は経皮的に送達される半固体剤形が含まれる。
【0123】
本発明による医薬組成物は、実質的に投与後直ちに、又は投与後所定の何れかの時点若しくは期間、活性化合物を放出するように製剤化することができる。後者のタイプの組成物は一般に制御放出製剤として知られ、それらには、(i)長期間にわたって体内で薬剤の実質的に一定な濃度を生じさせる製剤;(ii)所定の遅延時間後に長期間にわたって体内で薬剤の実質的に一定な濃度を生じさせる製剤;(iii)活性物質の血漿レベルの変動に関連する望ましくない副作用を最小限に抑えつつ体内で比較的一定な有効レベルを維持することにより、所定の期間中作用を持続する製剤(鋸歯状動態パターン);(iv)例えば中枢神経系若しくは脳脊髄液に隣接して、又は中枢神経系若しくは脳脊髄液中に制御放出組成物を空間的に位置づけることにより、作用を局在化する製剤;(v)用量が、例えば週に1回又は2週間に1回投与されるように、好都合な投薬を可能にする製剤;並びに(vi)その機能が狼瘡において混乱している特定の細胞型(例えば好塩基球)に治療薬を送達する担体又は化学的誘導体を使用することにより狼瘡を標的化する製剤が含まれる。一部の適用については、制御放出製剤は、血漿レベルを治療レベルに維持するために一日の間に頻繁に投薬する必要性を取り除く。
【0124】
問題になっている化合物の放出速度が代謝速度を上回る制御放出を得るために多くの戦略のいずれかを実施することができる。ある実施例では、制御放出は、例えば様々なタイプの制御放出組成物及びコーティングを含む、様々な製剤パラメータ及び成分の適切な選択によって得られる。したがって、治療薬は、適切な賦形剤と共に、投与後に制御された方法で治療薬を放出する医薬組成物に製剤化される。例としては、単一又は複数単位の錠剤又はカプセル組成物、油性溶液、懸濁液、乳剤、マイクロカプセル、ミクロスフェア、分子複合体、ナノ粒子、パッチ及びリポソームが含まれる。
【0125】
非経口組成物
医薬組成物は、剤形、製剤中での注射、点滴若しくは移植(皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内等)によって、又は従来の非毒性の薬学的に許容される担体及びアジュバントを含有する適切な送達装置若しくはインプラントを介して、非経口的に投与することができる。そのような組成物の製剤及び調製は医薬製剤の当業者に周知である。製剤は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、前出に見出すことができる。非経口的用途のための組成物は、単位剤形(例えば単回用量アンプル)として、又は数回分の用量を含み、適切な防腐剤が添加されていてもよい(下記参照)バイアル中で提供されてもよい。組成物は、溶液、懸濁液、乳剤、点滴装置若しくは移植のための送達装置の形態であってもよいか、又は使用前に水若しくは別の適切な賦形剤で再構成される乾燥粉末として提供されてもよい。活性治療薬(複数を含む)とは別に、組成物は、適切な非経口的に許容される担体及び/又は賦形剤を含むことができる。活性治療薬(複数を含む)は、制御放出のためにミクロスフェア、マイクロカプセル、ナノ粒子、リポソーム等に組み込むことができる。さらに、組成物は、懸濁化剤、可溶化剤、安定化剤、pH調整剤、張度調整剤及び/又は分散剤を含むことができる。
【0126】
上述したように、本発明による医薬組成物は無菌注射に適した形態であってもよい。そのような組成物を調製するために、適切な活性治療薬(複数を含む)を非経口的に許容される液体賦形剤に溶解又は懸濁する。
【0127】
制御放出非経口組成物
制御放出非経口組成物は、懸濁液、ミクロスフェア、マイクロカプセル、磁気ミクロスフェア、油性溶液、油性懸濁液又は乳剤の形態であってよい。或いは、活性薬剤を生体適合性担体、リポソーム、ナノ粒子、移植片又は注入装置に組み込んでもよい。ミクロスフェア及び/又はマイクロカプセルの調製に使用する材料は、例えば生分解性/生体侵食性ポリマー、例えばポリガラクチン、ポリ(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチル−L−グルタミン)及びポリ乳酸である。制御放出非経口製剤を製剤する際に使用できる生体適合性担体は、炭水化物(例えばデキストラン)、タンパク質(例えばアルブミン)、リポタンパク質又は抗体である。移植片に使用する材料は、非生分解性(例えばポリジメチルシロキサン)又は生分解性(例えばポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸若しくはポリオルトエステル又はそれらの組合せ)であってもよい。
【0128】
経口使用のための固体剤形
経口使用のための製剤には、非毒性の薬学的に許容される賦形剤との混合物中に有効成分(複数を含む)を含有する錠剤が含まれる。そのような製剤は当業者に公知である。賦形剤は、例えば不活性希釈剤又は充填剤(例えば、スクロース、ソルビトール、糖、マンニトール、微結晶セルロース、ジャガイモデンプンを含むデンプン類、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム若しくはリン酸ナトリウム);造粒剤及び崩壊剤(例えば、微結晶セルロースを含むセルロース誘導体、ジャガイモデンプンを含むデンプン類、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸塩若しくはアルギン酸);結合剤(例えば、スクロース、グルコース、ソルビトール、アカシアゴム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デンプン、アルファ化デンプン、微結晶セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン若しくはポリエチレングリコール);並びに滑沢剤、流動促進剤及び付着防止剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、硬化植物油若しくはタルク)であってよい。他の薬学的に許容される賦形剤は、着色剤、着香剤、可塑剤、湿潤剤、緩衝剤等であってよい。
【0129】
錠剤は、コーティングされていなくてもよく、又は、場合により胃腸管での崩壊及び吸収を遅延させ、それによってより長期間にわたる持続的作用を提供するために、公知技術によってコーティングされていてもよい。コーティングは、所定のパターンで活性薬剤を放出するように適合されていてもよく(例えば、持続放出製剤を達成するため)、又は胃の通過後まで活性薬剤を放出しないように適合されていてもよい(腸溶コーティング)。コーティングは、シュガーコーティング、フィルムコーティング(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アクリレートコポリマー、ポリエチレングリコール及び/又はポリビニルピロリドンに基づく)又は腸溶コーティング(例えば、メタクリル酸コポリマー、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、シェラック及び/又はエチルセルロースに基づく)であってよい。さらに、例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を使用することができる。
【0130】
固体錠剤組成物は、組成物を望ましくない化学変化(例えば活性な狼瘡治療物質の放出前の化学分解)から保護するように適合されたコーティングを含むことができる。コーティングは、Encyclopedia of Pharmaceutical Technology、前出に記載されているのと同様の方法で固体剤形に適用することができる。
【0131】
少なくとも2つの活性な狼瘡治療薬を錠剤中で一緒に混合してもよく、又は区分化してもよい。ある実施例では、第二活性治療薬が第一活性治療薬の放出より前に放出されるように、第一活性治療薬は錠剤の内側に含まれ、第二活性治療薬は外側に含まれる。
【0132】
経口使用のための製剤は、チュアブル錠として、又は有効成分が不活性固体希釈剤(例えば、ジャガイモデンプン、ラクトース、微結晶セルロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム若しくはカオリン)と混合されている硬ゼラチンカプセルとして、又は有効成分が水又は油性媒質、例えば、落花生油、流動パラフィン若しくはオリーブ油と混合されている軟ゼラチンカプセルとして提供されてもよい。粉末剤及び顆粒剤は、錠剤及びカプセルに関して上記で挙げた成分を使用して、例えば混合機、流動床装置又は噴霧乾燥装置を用いて従来の方法で調製することができる。
【0133】
制御放出経口剤形
経口使用のための制御放出組成物は、活性物質の溶解及び/又は拡散を制御することによって活性な狼瘡治療薬を放出するように構築することができる。溶解又は拡散制御放出は、薬剤の錠剤、カプセル、ペレット若しくは顆粒製剤の適切なコーティングによって、又は化合物を適切なマトリックスに組み込むことによって達成できる。制御放出コーティングには、上記で挙げたコーティング物質及び/又は、例えばシェラック、蜜ろう、グリコワックス、カスターワックス、カルナウバワックス、ステアリルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセロール、エチルセルロース、アクリル樹脂、dl−ポリ乳酸、酢酸酪酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリメタクリレート、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシメタクリレート、メタクリレートヒドロゲル、1,3ブチレングリコール、エチレングリコールメタクリレート及び/又はポリエチレングリコールのうち1種又はそれ以上が含まれる。制御放出マトリックス製剤において、マトリックス材料には、例えば、水和メチルセルロース、カルナウバワックス及びステアリルアルコール、カルボポール934、シリコーン、トリステアリン酸グリセリル、メチルアクリレート−メチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン及び/又はハロゲン化フルオロカーボンも含むことができる。
【0134】
1つ又はそれ以上の治療薬を含有する制御放出組成物は、浮遊錠剤又はカプセル(すなわち、経口投与後、一定期間胃内容物の上に浮遊する錠剤又はカプセル)の形態であってよい。化合物(単数又は複数)の浮遊錠剤製剤は、化合物(単数又は複数)と、賦形剤、及び20〜75重量%の親水コロイド、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースとの混合物を造粒することによって調製できる。得られた顆粒を、次に、錠剤に圧縮することができる。胃液と接触すると、錠剤はその表面の周りに実質的に水不透過性のゲルバリヤを形成する。このゲルバリヤは1未満の密度を維持することに関与し、それにより錠剤が胃液中で浮遊したままであることを可能にする。
【0135】
投与量
ヒト投与量は、最初はマウスにおいて使用される化合物の量から推定することによって決定でき、当業者には認識されているように、動物モデルと比較してヒトについての投与量を修正することは当該技術分野において日常的である。ある特定の実施態様では、投与量は約1mg化合物/体重kg〜約5000mg化合物/体重kg;又は約5mg/体重kg〜約4000mg/体重kg;又は約10mg/体重kg〜約3000mg/体重kg;又は約50mg/体重kg〜約2000mg/体重kg;又は約100mg/体重kg〜約1000mg/体重kg;又は約150mg/体重kg〜約500mg/体重kgと変化する可能性があると想定される。他の実施態様では、この用量は、約1、5、10、25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000mg/体重kgであってよい。他の実施態様では、より高用量が使用され得ると想定され、そのような用量は、約5mg化合物/体重kg〜約20mg化合物/体重kgの範囲であってよい。他の実施態様では、用量は、約8、10、12、14、16又は18mg/体重kgであってよい。言うまでもなく、この投与量は、そのような治療プロトコルにおいて日常的に実施されるように、初期臨床試験の結果及び個々の患者の必要に応じて上方又は下方に調整されてもよい。
【0136】
治療方法
本発明は、自己反応性IgEを阻害若しくは低減するか、又は好塩基球の数若しくは活性を低減することによって狼瘡、ループス腎炎、他のループス関連疾患及び他の自己免疫疾患を治療する方法を提供する。方法は、自己反応性IgEを阻害若しくは低減するか、又は好塩基球の数若しくは活性を低減する化合物を含有する医薬組成物の治療有効量を、本明細書で述べる方法によって対象(例えばヒトなどの哺乳動物)に投与することを含む。したがって、1つの実施態様は、狼瘡に罹患しているか又は罹患しやすい対象を治療する方法である。方法は、疾患若しくはその症状を治療するのに十分な本明細書の化合物の量を又は治療量を、疾患を治療する条件下で、対象に投与する工程を含む。
【0137】
本明細書の方法は、(そのような治療を必要とすると同定された対象を含む)対象に、そのような効果を生み出すために有効な量の、本明細書に記述される化合物又は本明細書に記述される組成物を投与することを含む。そのような治療を必要とする対象を同定することは、対象又は医療専門家の判断であってよく、主観的(例えば所見)又は客観的(例えば検査若しくは診断方法によって測定可能なもの)であってよい。
【0138】
本発明の治療方法は、予防的治療を含み、一般に、本明細書中の化学式の化合物などの、本明細書の薬剤の治療有効量を、哺乳動物、特にヒトを含む、それを必要とする対象(例えば動物、ヒト)に投与することを含む。そのような治療は、狼瘡又はその症状に罹患している、を有する、に罹患しやすい、又は罹患の危険性がある対象、特にヒトに適切に投与されるだろう。「危険性がある」対象の判定は、診断試験、対象の所見又は医療機関(例えば遺伝子検査、酵素若しくはタンパク質マーカー、(本明細書で定義されるような)Marker、家族歴等)による、客観的又は主観的な何れかの判定によって行うことができる。本明細書の薬剤は、転写活性が関与する可能性のある、その他の何れかの疾患の治療においても使用することができる。
【0139】
ある実施態様では、本発明は治療の進展を観察する方法を提供する。方法は、疾患又はその症状を治療するのに十分な治療量の本明細書の化合物を投与されている、ループスに関連する疾患又はその症状に罹患している又は罹患しやすい対象において、診断マーカー(Marker)(例えば本明細書の化合物、タンパク質又はその指標等によって調節される、本明細書で記述される何れかの標的)のレベル、又は診断測定(例えばスクリーニング、アッセイ)を確認する工程を含む。この方法で確認されたMarkerのレベルを、健康な正常対照又は他の罹患患者のいずれかにおけるMarkerの既知のレベルと比較して、その対象の疾患状態を確立することができる。好ましい実施態様では、対象におけるMarkerの2番目のレベルを最初のレベルの確認よりも後の時点で確認し、2つのレベルを比較して疾患の経過又は治療の効果を観察する。ある特定の好ましい実施態様では、対象におけるMarkerの治療前レベルを、本発明による治療を開始する前に確認する;この治療前Markerのレベルを、次に、治療開始後の対象におけるMarkerのレベルと比較して治療の効果を確認することができる。
【0140】
キット
本発明は、狼瘡、ループス腎炎、他のループス関連疾患及び他の自己免疫疾患の治療又は予防のためのキットを提供する。ある実施態様では、キットは、単位剤形に本発明の薬剤(例えばオマリズマブ)の有効量を含有する、治療又は予防組成物を含む。ある実施態様では、キットは、治療又は予防化合物を含有する滅菌容器を含む;そのような容器は、箱、アンプル、ボトル、バイアル、チューブ、バッグ、パウチ、ブリスターパック又は当該技術分野で公知の他の適切な容器形態であってもよい。そのような容器は、プラスチック、ガラス、ラミネート紙、金属箔又は薬剤を保持するのに適した他の材料で作ることができる。
【0141】
所望により、本発明の薬剤は、狼瘡を有する又は狼瘡を発症する危険性がある対象に投与するための使用説明書と共に提供される。使用説明書は、一般に、狼瘡の治療又は予防のための組成物の使用についての情報を含む。他の実施態様では、使用説明書は以下の少なくとも1つを含む:化合物の説明;狼瘡又はその症状の治療又は予防のための投薬スケジュール及び投与;事前注意;警告;適応症;禁忌;過量投与情報;副作用;動物薬理学;臨床試験及び/又は参考資料。使用説明書は、容器(存在する場合)上に直接印刷されているか、又は容器に貼付されるラベルとして、又は容器内に若しくは容器と共に供給される別個のシート、パンフレット、カード若しくはフォルダーとして印刷されていてよい。
【0142】
併用療法
任意に、治療又は予防効果を有する作用物質は、狼瘡の治療のための他の何れかの標準的な療法と組み合わせて投与することができる;そのような方法は当業者に公知であり、E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。所望により、本発明の薬剤は、単独で、又は狼瘡の治療のために有用な従来の治療薬と組み合わせて投与することができる。狼瘡の治療のために有用な治療薬には、これに限定されないが、非ステロイド系炎症薬(NSAID)、ヒドロキシクロロキン、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノレート、ベリムマブ、デヒドロエピアンドロステロン、リツキシマブ、その他が含まれる。
【0143】
本発明の実施には、特に指示されない限り、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学及び免疫学の従来の技術を使用し、これらは十分に当業者の範囲内である。そのような技術は文献において、例えば「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」,second edition(Sambrook, 1989); 「Oligonucleotide Synthesis」(Gait, 1984); 「Animal Cell Culture」(Freshney, 1987); 「Methods in Enzymology」 「Handbook of Experimental Immunology」(Weir, 1996); 「Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells」(Millerand Calos, 1987); 「Current Protocols in Molecular Biology」(Ausubel, 1987); 「PCR:The Polymerase Chain Reaction」(Mullis, 1994); 「Current Protocols in Immunology」(Coligan, 1991)において十分に説明されている。これらの技術 は本発明のポリヌクレオチド及びポリペプチドの作製に適用でき、及びそのようなものとして、本発明を製造及び実施する際に考慮することができる。特定の実施態様について特に有用な技術を以下の章で論じる。
【0144】
以下の実施例は、本発明のアッセイ、スクリーニング及び治療方法をどのようにして実施し、使用するかについての完全な開示及び説明を当業者に提供するために記述されていて、発明者らが自らの発明とみなすものの範囲を限定することを意図していない。
【実施例1】
【0145】
ループス関連腎炎はIgE及びIL−4に依存しているが、肥満細胞には依存していない
これまでの結果と一致して(Charles, N. et al.(2009) Immunity 30, 533-543)、好塩基球依存性のT
H2への偏りがSLE様疾患を発症する高齢Lyn
−/−マウスにやはり存在していた(
図1)。SLE様表現型の発症におけるT
H2環境の役割を検討するため、IgEとLynの両方(Igh−7
−/−;Lyn
−/−)、IL−4とLynの両方(Il4
−/−;Lyn
−/−)又は肥満細胞とLynの両方(Kit
W−sh/W−sh;Lyn
−/−)を欠損しているマウス(Charles, N. et al.(2009) Immunity 30, 533-543)を使用した。Igh−7
−/−;Lyn
−/−、Il4
−/−;Lyn
−/−及びKit
W−sh/W−sh;Lyn
−/−マウスは、Lyn
−/−マウスに匹敵する末梢B細胞欠損を発症し、血清中で高いIgM及びIgA濃度を示し(
図2〜6)、IL−4及びIgEがこれらの異常には関与しないことを示した。Igh−7
−/−;Lyn
−/−及びIl4
−/−;Lyn
−/−マウスにおけるIgE及びIgGのレベルは、Igh−7単一欠損マウス及びIl4単一欠損マウスについて報告された表現型と同様の傾向を示し(Kopf, M. et al. (1993) Nature 362, 245-248; Oettgen, H. C. et al.(1994) Nature 370, 367-370)、Lyn
−/−マウスにおけるレベルとは異なっていた(
図5)。IgEは、肥満細胞の生存におけるIgEの役割と一致して(Asai, K. et al. (2001) Immunity 14, 791-800; Kalesnikoff, J. et al. (2001) Immunity 14, 801-811)、以前に報告された(Odom, S. et al. (2004) J. Exp. Med. 199, 1491-1502)Lyn
−/−マウスで見られる肥満細胞数の増加にも寄与した(
図7)。対照的に、以前に記述されたLyn
−/−マウスにおける好塩基球は、IL−4及びIgEのどちらとも無関係であった(Charles, N. et al. (2009) Immunity 30, 533-543)(
図7)。
【0146】
Lyn
−/−及びKit
W−sh/W−sh;Lyn
−/−マウスと異なり、Igh−7
−/−;Lyn
−/−及びIl4
−/−;Lyn
−/−マウスは糸球体腎炎を発症しなかった(
図8a、8b及び9)。IgG(
図8c)、IgM、IgA及び補体因子3(C3)(
図10a、10b及び10c)を含む循環免疫複合体(CIC)の糸球体沈着物は、Igh−7
−/−;Lyn
−/−及びIl4
−/−;Lyn
−/−マウスの腎臓において顕著に減少したが、Kit
W−sh/W−sh;Lyn
−/−マウスの腎臓ではLyn
−/−マウスと同等のレベルで依然として存在していた(
図8c、10a、10b及び10c)。腎機能(尿中のアルブミン対クレアチニン比(ACR)によって測定される)はIgh−7
−/−;Lyn
−/−及びIl4
−/−;Lyn
−/−マウスにおいて回復したが、ACRはKit
W−sh/W−sh;Lyn
−/−及びLyn
−/−マウスの両方で同様の程度に上昇した(
図8d)。これらの所見は、Lyn
−/−マウスで認められるループス様腎炎はIgE及びIL−4に依存しているが、肥満細胞には依存していないことを示す。
【実施例2】
【0147】
好塩基球はLyn
−/−マウスにおける自己反応性形質細胞を支持する
高齢Lyn
−/−マウスはdsDNA及び核抗原に対する大量の自己抗体を産生し(
図11a及び11b)、これが腎に見られる障害を引き起こす(Seshan, S. V. & Jennette, J. C. (2009) Arch. Pathol. Lab. Med. 133, 233-248; Sinico, R. A. et al. (2009) Am. NY Acad. Sci. 1173, 47-51)。Igh−7
−/−;Lyn
−/−及びIl4
−/−;Lyn
−/−マウスにおける腎機能の回復が同時に起こる自己抗体産生の減少と関連するかどうか、並びにLyn
−/−及びKit
W−sh/W−sh;Lyn
−/−マウスと比較した場合の抗dsDNA及びANAにおける2倍の減少が認められるかどうかを検討した(
図11a及び11b)。高齢Lyn
−/−マウス(>32週)又はより若齢のKit
W−sh/W−sh;Lyn
−/−マウス(約20週)における好塩基球の枯渇が、ANA自己抗体の量を顕著に減少させた(
図11c及び11d)。好塩基球の喪失は、脾臓における形質細胞の割合も減少させ(
図11e)、腎臓における炎症促進性環境を低減した(
図11f及び12)。纏めると、これらの発見は、好塩基球は脾臓において形質細胞を支持し、自己抗体の産生をIL−4及びIgE依存的に増幅して、Lyn
−/−マウスにおける腎疾患を導くことを示す。
【実施例3】
【0148】
Lyn
−/−マウスは好塩基球活性化自己反応性IgEを産生する
SLE様表現型はIgEに依存し、したがって自己反応性IgEがこれらのマウスの循環中で認められるかどうか、及びこれらがFcεRIを担持する好塩基球を活性化するかどうかを検討した。Lyn
−/−及びKit
W−sh/W−sh;Lyn
−/−マウスからの血清は、それらの野生型(WT)対応物と比較して高レベルのdsDNA特異的IgE(
図13a)及びANA特異的IgEを有していた。自己反応性IgEの量はIl4
−/−;Lyn
−/−マウスにおいて減少しており、予想されたように、Igh−7
−/−;Lyn
−/−マウスでは自己反応性IgEは検出されなかった(
図13a)。CICを以前に記述されているように精製し(Toran, E. J. & Lee, CM. (1995) J. Natl. Med. Assoc. 87, 693-699)、IgEを含有するCIC(IgE−CIC)を、Lyn
−/−及びKit
W−sh/W−sh;Lyn
−/−マウス由来のすべての血清において様々な量で見出し(
図13b、14a及び14d)、一方Il4
−/−;Lyn
−/−及びIgh−7
−/−;Lyn
−/−マウスの血清は実質的にIgE−CICを有していなかった(
図13b及び14d)。IgGを含有する(
図13b)並びにIgM及びIgAを含有する(
図10)CICは、マウスのすべての変異体株において観察されたが、Il4
−/−;Lyn
−/−及びIgh−7
−/−;Lyn
−/−マウスでは、これらのマウスに見られる自己抗体の量の減少と相関して、これらのCICの顕著な減少も観察された(
図13c、14b、14c及び14e)。
【0149】
IgE又はIgG免疫複合体が好塩基球のIL−4産生を刺激できるかどうかを検討した。IgE免疫複合体は好塩基球によるIL−4産生を誘導することができたが、IgG免疫複合体は好塩基球のIL−4産生を刺激することができなかった(
図13d、15a及び15b)。さらに、Lyn
−/−マウス由来の好塩基球は、それらのWT対応物と比較してIgE免疫複合体に対する感受性の上昇を示した(
図13d及び15a)。特に、試験したすべての刺激(ホルボール12−ミリスチン酸13−酢酸+イオノマイシン、ジニトロフェニル特異的IgE+ジニトロフェニル−HAS(抗原)、IgE免疫複合体及びIgG免疫複合体)は、WT又はLyn
−/−マウス由来の好塩基球によるIL―12p40又はインターフェロンγ(IFN−γ)の産生を誘導しなかった(
図15c及び15d)。これらの発見は、IgE免疫複合体の存在(Lyn
−/−マウスにおいて循環IgE−CICとして存在する)が好塩基球の活性化及び選択的T
H2サイトカインの発現を導くことができることを明らかにしている。
【実施例4】
【0150】
Lyn
−/−好塩基球は免疫調節分子を発現する
好塩基球が、B及びT細胞応答に影響を及ぼす可能性があるLyn
−/−マウスの二次リンパ組織にホーミングできるかどうかを検討した。Lyn
−/−マウス由来の循環好塩基球は、CD62L(L−セレクチン)の発現増大を示し(
図16a)、白血球の二次リンパ組織へのホーミングを可能にする。Lyn欠損の状況において、肥満細胞の不在(Kit
W−sh/W−sh;Lyn
−/−マウス)はそうではなかったが、IL−4又はIgEの不在(Il4
−/−;Lyn
−/−及びIgh−7
−/−;Lyn
−/−マウス)は循環好塩基球上のCD62Lの発現を阻害した(
図16b)。Lyn
−/−マウスは、リンパ節(頸部及び鼠径)及び脾臓の両方において多数の好塩基球を有していた(
図16c及び16d)。リンパ節では、IL−4又はIgEのいずれかがさらに存在しない場合(Il4
−/−;Lyn
−/−及びIgh−7
−/−;Lyn
−/−マウス)好塩基球の割合は顕著に減少したが、肥満細胞が存在しない場合(Kit
W−sh/W−sh;Lyn
−/−マウス)には減少しなかった(
図16c)。脾臓では好塩基球数の多少の減少が観察されたが、リンパ節におけるほどは顕著ではなかった(
図16d)。
【0151】
Lynの不在下で見られる好塩基球が原因で、検討した株のいずれについても循環好塩基球の割合に有意差はなかった(
図16e)。また、リンパ節に存在する好塩基球はTNFファミリーに属する膜結合B細胞の活性化因子(BAFF)を発現することも見出され(
図16f)、これは、これらの細胞で発現される低い量のBAFF受容体によっては説明されず、リンパ節に存在する好塩基球がB細胞の生存及び分化に影響を及ぼす潜在的可能性を明らかにした。さらに、Lyn
−/−マウスからのリンパ節に存在する好塩基球(
図16g)及び脾臓に存在する好塩基球(
図17)の両方が、高いMHC II発現を示した。これらの発見は、Lyn
−/−好塩基球がCD62L発現を上方調節し、リンパ節及び脾臓にホーミングして、そこでのMHC II(Perrigoue, J. G. et al. (2009) Nat. Immunol. 10, 697-705; Sokol, C. L. et al. (2009) Nat. Immunol. 10, 713-720; Yoshimoto, T. et al. (2009) Nat. Immunol. 10, 706-712)、BAFF又はその両方の発現上昇がT細胞及びB細胞とのコミュニケーションを可能にし得ることを示す。
【実施例5】
【0152】
自己反応性IgEはSLE及びループス腎炎に関連する
分析したSLEを有する対象のコホートは、SLEを有する対象に関してこれまでに記述された特徴である、古典的補体経路を活性化できる、多量のC1q反応性CICを有していた(
図18a)(Moser, K. L. et al., (2009) Genes Immun. 10, 373-379; Sinico, R. A. et al. (2009) Ann. NY Acad. Sci. 1173, 47-51)。疾患の活動性に関して分析した場合(SLE疾患活動性指数(SLEDAI)スコアに基づく)((2004) Arthritis Rheum. 50, 3418-3426)、Clq反応性CICは軽度(SLEDAIスコア1.0〜4.0)及び活動性疾患(SLEDAIスコア>4.0)において大きく上昇した。SLEを有する患者は、dsDNAを認識する自己反応性IgEも有しており、これらのIgEのレベルは疾患活動性の上昇に結びついていた(
図18b)。
【0153】
IgEに対するIgGも、SLEを有する対象の血清中に存在し、活動性疾患を有する対象では有意に高いレベルで存在した(
図18c)。高レベルのdsDNA特異的IgEは活動性ループス腎炎に関連していた(
図18d)。さらに、SLEを有する対象は、疾患活動性に関連する高い総IgEレベルを有しており、軽度から強度のIgG1、IgG3及びIgE自己抗体応答を示した(
図19a、19b及び19c)。したがって、SLEを有する個体は、T
H1及びT
H2応答に関連する自己抗体、ならびに疾患の活動性上昇及び活動性腎炎に関連する自己反応性IgE及びIgEに特異的なIgGを有する。
【実施例6】
【0154】
SLE好塩基球はHLA−DRを発現し、リンパ組織にホーミングする
SLEを有する個体における好塩基球の活性化状態を調べるため、活性化好塩基球で上方調節される、マーカーCD203cの発現を確認した(Hauswirth, A. W. et al. (2002) J. Allergy Clin. Immunol. 110, 102-109)。SLEを有するすべての対象が健常対照と比較して高いCD203c発現を示し、対象の好塩基球が活性化していることを示した(
図20a)。CD62L(
図20b)及びHLA−DR(
図20c)の発現もSLE好塩基球で上昇しており、疾患活動性の上昇に結びついていた。
【0155】
循環中の好塩基球の絶対数は、SLEを有する個体において減少していた(
図20d)。この減少は免疫抑制治療に関連したが(
図21)、免疫抑制治療は好塩基球の活性化状態には影響を及ぼさなかった(HLA−DRの存在によって示される)。注目すべきは、SLEを有する試験した2名の対象のリンパ節及び脾臓において好塩基球が認められたが、SLEを有さない対照対象では好塩基球は認められなかった(
図20e及び20f)。これらの発見は、SLEを有する個体における好塩基球は活性化されており、二次リンパ器官にホーミングして、抗原提示のために適切な分子を発現することを示唆している。これは、SLEを有する個体における自己反応性IgEの存在に関連している。
【0156】
SLEは長年B細胞疾患とみなされてきたが、B細胞のクラススイッチを促進する自己反応性T細胞(Singh, R. R. et al. (1995) J. Clin. Invest. 96, 2990−2996)並びに樹状細胞及びマクロファージなどの他の細胞型(Kyttaris, V. C. et al. (2005) Curr. Rheumatol. Rep. 7, 469-475; Holmdahl, R. et al. (1991) Autoimmunity 8, 271-280)も、例えば、BAFF及び増殖誘導性リガンド(APRIL)などのB細胞の生存及び分化に影響を及ぼす因子の分泌を介して、疾患に関係づけられてきた(Levesque, M. C. (2009) Clin. Exp. Immunol. 157, 198-208)。好塩基球は、SLEにおける自己反応性抗体の産生への寄与因子であることが見出された。Lyn
−/−マウスにおける所見は、好塩基球の枯渇又はIL−4若しくはIgEの不在は自己抗体産生の顕著な低減を生じさせ、腎機能を保存することを示す。これは、好塩基球が存在しなければ自己抗体のレベルは腎疾患を引き起こすには不十分であることを明らかにした。したがって、好塩基球は、すでに存在するB細胞寛容の喪失を増幅するように機能する。
【0157】
好塩基球は長年アレルギーに関連づけられてきた(Schroeder, J. T. & MacGlashan, D. W. (1997) J. Allergy Clin. Immunol. 99, 429-433; Mukai, K. et al. (2005) Immunity 23, 191-202)。しかし、免疫における好塩基球の役割は不明確なままである。好塩基球はインビボでT
H2細胞の分化を誘導することができ(Charles, N. et al. (2009) Immunity 30, 533-543; Sokol, C. L. et al. (2008) Nat. Immunol. 9, 310-318)、体液性記憶応答を増幅し(Denzel, A. et al. (2008) Nat. Immunol. 9, 733-742)、そしてMHC IIを介して抗原を提示することができる(Perrigoue, J. G. et al. (2009) Nat. Immunol. 10, 697-705; Yoshimoto, T. et al. (2009) Nat. Immunol. 10, 706-712; Sokol, C. L. et al. (2008) Nat. Immunol. 9, 310-318)という最近の発見は、T
H2免疫を調節するうえでのこの細胞型の役割についての証拠を提供する。Lyn
−/−マウスモデルでは、T
H2への偏りは好塩基球中にLynキナーゼが存在しないことによって推進され、これらの細胞におけるGATA−3の上方調節及びインビボでのIL−4産生の増強をもたらす(Charles, N. et al. (2009) Immunity 30, 533-543)。ヒトでは、SLEを有する対象の好塩基球中のLynの量の予備分析は、健常対照と比較して実質的な相違を明らかにしなかった。しかし、SLE、特にヨーロッパ系の集団において、Lynキナーゼの役割についての証拠が増えつつある(Lu, R. et al. (2009) Genes Immun. 10, 397-403; Liossis, S. N. et al.(2001) J. Investig. Med. 49, 157-165)。
【0158】
注目すべきは、好塩基球が、Lyn
−/−マウスにおいてループス様腎炎を引き起こす自己抗体の産生に寄与するという所見である。これらの細胞の活性化は、CD62L発現の増強、並びにLyn
−/−マウスのリンパ節及びSLEを有する対象におけるそれらの蓄積をもたらした。マウス及びヒト好塩基球でのMHC II発現が増大し、マウスでは、細胞表面でIgDの結合後にヒト好塩基球について記述されているものに類似した、膜結合BAFFの発現が観察された(Chen, K. et al. (2009) Nat. Immunol. 10, 889-898)。Lyn
−/−マウスにおける好塩基球の枯渇は、脾形質細胞の数を減少させ、ループス腎炎を推進する自己抗体産生を抑制した(Seshan, S. V. & Jennette, J. C. (2009) Arch. Pathol. Lab. Med. 133, 233-248; Sinico, R. A. et al. (2009) Ann. NY Acad. Sci. 1173, 47-51)。好塩基球の枯渇は、Lyn
−/−マウスの腎臓におけるIL−1β、IL−4、IL−6、IL−13及びIFN−γの産生も低減した。したがって、腎臓における炎症促進性環境の低減は、好塩基球の不活性化又は枯渇による治療上の利益の可能性を示唆している。
【0159】
これらの発見は、IgE免疫複合体は好塩基球を活性化することができ、機能的CICを形成する自己反応性IgEの除去(Igh−7遺伝子座の欠失による又はIL−4産生を排除することによる)は腎疾患を予防することを示す。これらのIgE−CICはまた、Lyn
−/−マウス及びSLEを有するヒト対象の両方においてループス腎炎に関連した。循環IgEレベルは、循環IgEレベルを低下させそして好塩基球上のFcεRI発現を低減するIgE特異的抗体である、既存の抗アレルギー薬オマリズマブによって低減され得るので(Lin, H. et al. (2004) J. Allergy Clin. Immunol. 113, 297-302)、この薬剤は、高いIgEレベルを有するSLEの患者にとって治療上の利益となる。SLEを有する個体において、dsDNA特異的IgEのレベル上昇と、疾患活動性及び活動性ループス腎炎の増大との関連性は、T
H2応答の増大と腎炎の発症との因果関係を支持するが、この集団ではT
H1介在性応答も認められることが明らかである。循環IgG1及びIgG3自己抗体の増大が存在することは、強いT
H1成分を示唆する。これは、治療戦略としての、IL−4及びIL−13受容体アンタゴニストの使用を介したT
H2応答の直接調節(Burmeister Getz et al. (2009) J. Clin. Pharmacol. 49, 1025-1036)が、T
H1(又はおそらくT
H17)表現型にシフトすることにより疾患を悪化させるという望ましくない作用を有し得ることを明らかにする。それにもかかわらず、IgE−CICはLyn
−/−マウスの腎臓では見られず、これらのCICはそれ自体では腎病変に寄与せず、その代わりに好塩基球の活性化に関与すると思われる。したがって、IgE又は好塩基球枯渇の戦略は、T
H1−T
H2バランスを変化させることに関連する合併症を回避することができる。
【0160】
T
H2成分を有する疾患としてのSLEという見解は論議の的となってきた。調節性T細胞活性の変化又は喪失について(Valencia, X. et al. (2007) J. Immunol. 178, 2579-2588; Lee, H. Y. et al. (2008) Rheumatology (Oxford) 47, 789-794)と同様に、SLEへのT
H1及びおそらくT
H17細胞の関与について(Akahoshi, M. et al. (1999) Arthritis Rheum. 42, 1644-1648; Heine, G. et al. (2002) Nephrol. Dial. Transplant. 17, 1790-1794; De Carli, M. et al. (1994) Autoimmunity 18, 301-308; Kono, D. H. et al. (2000) Immunol. 164, 38-42; Peng, S. L. et al. (1997) J. Clin. Invest. 99, 1936−1946)の多数の証拠が存在する。BXSB及びMRL−Fas
lprマウスなどの、偶発的遺伝子突然変異又は変化がループス様疾患を引き起こす一部のマウスモデルは、T
H1サイトカインであるIFN−γ依存性疾患を示す。これらの背景を有するマウスにおける、IFN−γをコードする遺伝子の欠失は、疾患を排除することが示された(Balomenos, D. et al., (1998) J. Clin. Invest. 101, 364-371; Kono, D. H. et al. (2000) Immunol. 164, 38-42)。SLEを有するヒトは、T
H1応答及びT
H2応答の両方を示し、そしてIgG−CIC及びIgE−CICの両方が疾患活動性の増大に関連した。いくつかの試験は、T
H1細胞応答とT
H2細胞応答とのバランスがループス腎炎の表現型を決定し得ることを示唆している(Masutani, K. et al. (2001) Arthritis Rheum. 44, 2097-2106; Akahoshi, M. et al. (1999) Arthritis Rheum. 42, 1644-1648; Heine, G. et al. (2002) Nephrol. Dial. Transplant. 17, 1790-1794; Shimizu, S. et al. (2005) J. Immunol. 175, 7185-7192; De Carli, M. et al. (1994) Autoimmunity 18,301-308)。強力なT
H1応答はびまん性増殖性ループス腎炎に関連することが示されており、一方優勢なT
H2応答は膜性ループス腎炎に関連していた(Masutani, K. et al. (2001) Arthritis Rheum. 44, 2097-2106; Akahoshi, M. et al. (1999) Arthritis Rheum. 42, 1644-1648; Heine, G. et al. (2002) Nephrol. Dial. Transplant. 17, 1790-1794; Shimizu, S. et al. (2005) J. Immunol. 175, 7185-7192; De Carli, M. et al. (1994) Autoimmunity 18, 301-308)。これらの知見は、T
H1応答及びT
H2応答の両方がループス腎炎に寄与することができるが、疾患はどちらかの優越性に依存して異なって発現し得ることを示している。
【0161】
これらの発見は、好塩基球及びT
H2環境が自己抗体の産生に影響を及ぼすこと、並びに好塩基球の枯渇又はIgh−7若しくはIl4遺伝子の欠失が、Lyn欠損の状況において、これらの自己反応性抗体の循環レベルの低下を引き起こすことを示す。SLEを有する個体では、自己反応性IgEは活動性疾患及び活動性狼瘡に結びついていた。2つの試験した個体について、その好塩基球は活性であり、T細胞及びB細胞機能に影響を及ぼし得る、二次リンパ組織中で見いだされた。したがって、これらの発見は、自己反応性IgEの循環レベルの低下又は好塩基球活性の抑制がループス腎炎における治療上の利益を有することを明らかにしている。
【0162】
上記実施例で述べた結果は、以下の方法及び材料を使用して得られた。
【0163】
マウス
本検討で使用したすべてのマウスは以前に記述されている(Charles, N. et al. (2009) Immunity 30, 533-543)。特に明記されない限り、マウスは32〜40週齢であり、群比較のために週齢を適合させた。マウスは特定病原体感染防止条件下に維持し、NIHガイドライン及びNIAMSで承認された動物試験計画A007−03−01に従って使用した。
【0164】
ヒト対象
SLEの長期的自然経過研究に登録した成人対象から試料を採集した。試験はNIAMSの治験審査委員会(Institutional Review Board)によって承認された。すべての対象はSLEについての米国リウマチ学会(American College of Rheumatology)分類基準を満たした(Hochberg, M. C. (1997) Arthritis Rheum. 40, 1725; Tan, E. M. et al. (1982) Arthritis Rheum. 25, 1271-1277)。対象の特徴及び狼瘡の活動性採点システムを
図22に示す。対照試料は健常血液ドナーから得た。すべての対象が書面によるインフォームドコンセントを提出した。
【0165】
抗体及びフローサイトメトリ
ジニトロフェニル特異的マウスIgEを以前に記述されているように作製した(Liu, F. T. et al. (1980) J. Immunol. 124, 2728-2737)。他のすべての抗体は商業的供給源からであり、
図23に記載されている。フローサイトメトリの取得は、以前に記述されているように(Charles, N. et al. (2009) Immunity 30, 533-543)FACSCalibur機器(BD Biosciences)で行った。データ解析はFlowjoソフトウェア(Treestar)を用いて実施した。
【0166】
インビボでの好塩基球枯渇及び脾T細胞のエクスビボ分析
インビボでの好塩基球枯渇及び脾T細胞(CD4
+)のエクスビボ分析は以前に記述されている(Charles, N. et al. (2009) Immunity 30, 533-543)。
【0167】
糸球体腎炎、循環免疫複合体の糸球体沈着及び腎機能の分析
高齢(〜40週齢)マウスを屠殺して、腎臓を切除した。1つの腎臓は10%緩衝ホルマリン(Sigma)で固定し、パラフィンに包埋し、切片にして、H&E(American Histolabs)で染色した。他方の腎臓は最適切断温度培地中でビニル型に入れて、試料を液体窒素中で凍結した。4μm厚さの凍結切片を冷アセトン中で固定し、1%BSAを含むPBS中でブロックして、同じ緩衝液中、特異的フルオレセイン結合抗体又はアイソタイプ対照で染色した(使用した抗体については
図23参照)。
【0168】
腎機能の評価のために、アルブミン/クレアチニン比(ACR)を測定した。各遺伝子型につき少なくとも10匹の高齢マウスから尿を採集して、アルブミン濃度をマウスアルブミンELISA(Bethyl laboratories)で測定した。クレアチニンアッセイ(R&D systems)を使用して尿クレアチニン濃度を測定した。結果をアルブミンμg/クレアチニンmgのACRとして表す。
【0169】
自己抗体、循環免疫複合体の測定及び循環免疫複合体の沈殿
dsDNAに特異的なマウスIgG、マウスANA特異的IgG及びマウスCIC((C1q)IgG、IgA及びIgM)ELISAキットはAlpha Diagnosticから入手した。ヒト循環免疫複合体(C1qでコーティングしたプレート)用のELISAキットはALPCOから、そしてヒトIgE用のELISAキットはMabbiotechから入手した。すべての市販のELISAは製造会社の指示に従って実施した。ヒト及びマウスdsDNA特異的IgE及びdsDNA特異的IgGサブクラスの両方を測定するため、dsDNAでコーティングしたプレート(Calbiotech)を、10%FCS(Invitrogen)を含むPBS中の血清の連続希釈と共にインキュベートした。対応するホースラディッシュペルオキシダーゼ結合二次抗体を使用した(
図23)。テトラメチルベンジジン基質とのインキュベーション(Invitrogen)後に450nmでの光学密度を測定した。示されているデータは200分の1希釈プレート(これにより最良のシグナル対ノイズ比が得られた)からである。同じアプローチを用いて、PBS中2μg/mlのヒトIgE(Abbiotec)でコーティングしたプレートを使用して対象及び健常対照における循環IgE特異的IgGの量を測定した。
【0170】
CICを以前に記述されているように(Toran, E. J. & Lee, CM. (1995) J. Natl. Med. Assoc. 87, 693-699)高齢マウスの血清から沈殿させた。試料をSDS−PAGE、次いで指示されている抗体を用いたウェスタンブロット法によって分析した(
図23)。LiCor Odyssey Systemを用いてシグナルを検出した。
【0171】
好塩基球培養物、好塩基球検出及びインターロイキン4産生の測定
骨髄由来の培養好塩基球は以前に記述されている(Charles, N. et al. (2009) Immunity 30, 533-543)。培養の9日目に、細胞を洗浄し、IL−3(Peprotech)だけを含む培地に100万細胞/mlで再懸濁して、37℃で一晩インキュベートした。次に細胞を同じ培地に500万細胞/mlで再懸濁して、
図3に指示されているように刺激した。IgE及び抗原刺激のために、細胞を1μg/mlジニトロフェニル特異的IgEで30分間感作し、洗浄して、次に20ng/mlのジニトロフェニル−HSA(Sigma)で刺激した。IgE免疫複合体及びIgG免疫複合体刺激については、1:2の比率のIgEとマウスIgEに対する抗体又はIgG1とマウスIgG1に対する抗体のいずれかを37℃で30分間インキュベートすることによってIgE又はIgG含有免疫複合体を調製した(
図23参照)。次に指示されている濃度の免疫複合体(
図3)を細胞に37℃で4時間添加した。このインキュベーションの終了の2時間前に、10μMモネンシン(Sigma)を細胞に添加した。細胞内染色を以前に記述されているように行った(Charles, N. et al. (2009) Immunity 30, 533-543)。
【0172】
好塩基球検出のための免疫組織化学を以前に記述されているように実施した(Kepley, C.L. et al. (1995) J.Immunol. 154, 6548-6555; McEuen, A.R. et al. (1999) Lab. Invest. 79,27-38)。
【0173】
統計解析
2つの母集団の比較のために、特に指定されない限り、対応のない両側スチューデントt検定を実施した。3又はそれ以上の母集団を比較する場合は、1方向分散分析を最初に実施し、有意性に達した場合は(P<0.05)、特に指示されない限り、各々の比較した母集団の間で対応のない両側スチューデントt検定を実施した。統計解析はGraphPad Prism 5.01ソフトウェアを用いて実施した。
【0174】
マウス血液
マウスをNIHガイドラインに従ってCO
2で安楽死させた。死後直ちに、25G針を使用して心臓穿刺を行って、少なくとも500μlの血液をヘパリン化チューブに回収した。次に血液試料を700×g、4℃で20分間遠心分離して血漿を得た。血漿をさらなる分析のために−20℃に保持した。採取した血液細胞をACK溶解緩衝液(150mM NH
4Cl、12mM NaHCO
3、1mM EDTA、pH7.4)5mlに室温で3分間再懸濁し、次に4℃で5分間さらにインキュベートした。その後、PBS 10mlを添加して、試料を500×gで5分間遠心分離した。赤血球がまだ存在する場合は、細胞をACK溶解緩衝液中4℃で5分間さらにインキュベートして、赤血球が存在しなくなるまで上記で概説した段階を反復した。残存する白血球をFACS緩衝液(PBS/1%BSA/0.05%NaN
3)に再懸濁した。好塩基球をCD49b
+FcεRIα
+CD11b
+CD117
−と同定した。B細胞をB220
+IgM
+と同定した。
【0175】
骨髄
両大腿骨を採取し、30G針を備えたFACS緩衝液3mlを含む注射器を用いて骨髄を流し出した。回収した細胞を遠心分離し、赤血球を氷上で3分間ACK溶解緩衝液3mlに溶解した。その後、PBS 10mlを添加し、試料を遠心分離した(500×g、5分間)。次に細胞をFACS分析のために染色した。好塩基球及び全B細胞を上記のように同定した。骨髄中の再循環B細胞をB220
hiIgM
+と定義した(このIgM
+集団では中間的な平均蛍光強度が見られる)。
【0176】
脾臓
脾臓を採取し、巨脾腫の測定として計量した。次にピンセットを用いて脾臓を単細胞懸濁液にホモジナイズした。細胞懸濁液を遠心分離し(500×g、5分間)、赤血球を氷上で5分間ACK溶解緩衝液5mlに溶解した。PBS(20ml)を添加して、試料を再び遠心分離した(500×g、5分間)。次に細胞をFACS緩衝液(10ml)に再懸濁し、孔径40μmの細胞ストレーナー(BD Biosciences)でろ過した。この細胞懸濁液1mlを指示されているようにFACS染色のために使用した。好塩基球及びB細胞を上記のように同定した。脾臓中のCD11
+細胞のパーセントに関して、CD11b
hi集団をゲートした。
【0177】
腹膜
肥満細胞である腹膜肥満細胞の割合を以前に記述されているように測定した(Hibbs, M. L. et al. (1995) Cell 83, 301-311)。
【0178】
ヒト血液試料
血液をEDTAでコーティングしたチューブに採取した。血液4mlを使用して血漿試料を採取した。このために、血液を600×g、4℃で20分間遠心分離した。次に血漿相を採取して、試料をさらなる分析まで−20℃に保持した。好塩基球分析のために、全血10mlをACK溶解緩衝液20mlに添加して、室温で5分間及び氷上でさらに5分間インキュベートした。PBS 30mlを添加して、細胞を遠心分離した(500×g、5分間)。赤血球が目に見えなくなるまでこの段階を合計3回反復した。次に細胞をFACS緩衝液(PBS/1%BSA/0.05%NaN
3)10ml(最初の容積)に再懸濁した。1ml当たりの白血球の数及び生存能をViCell細胞カウンター(Beckman and Coulter)で評価した。生存率は常に90%以上であった。次に細胞を指示されている表面マーカーでの細胞外染色用に処理した。好塩基球の絶対数のために、好塩基球をFcεRIα
+CD203c
+CD123
+CD11b
+細胞と同定した。HLA−DR発現分析のために、好塩基球をFcεRI
+CD203c
+CD11b
+と同定した。CD62L発現分析のために、好塩基球をFcεRIα
+CD203c
+CD123
+と同定した。
【0179】
マウスにおける糸球体の病理学的特徴に関する組織学的分析
糸球体の病理学的特徴に関する組織学的分析には、炎症、増殖、半月形成、及び壊死が含まれた。各遺伝子型につき少なくとも10匹の高齢マウスの少なくとも30の糸球体を採点した。各々の糸球体について、1〜5のスコア(1、正常;2、中等度;3、重度;4、半月形成を伴う重度;及び5、壊死)を使用した。各個別マウスからのスコアを合計し、平均して、糸球体腎炎スコアを得た。すべての病理学的評価を盲検方式で実施した。
【0180】
マウス腎におけるサイトカイン含量の評価
腎臓を、プロテアーゼ阻害剤(Roche)を含むPBS 800μl中でホモジナイズし、10,000×gで20分間遠心分離した。総タンパク質含量を測定して(Dcタンパク質アッセイ、BioRad)、IL−4(BD Bioscience)、IL−13、IL−6、IL−1β、CCL2及びIFNγ(eBioscience)を製造会社の指示に従ってELISAによって測定した。
【0181】
患者の狼瘡及び腎炎の活動性の評価
狼瘡の活動性をSELENA−SLEDAI(エリテマトーデス国内評価試験におけるエストロゲンの安全性−全身性エリテマトーデス疾患活動性指数(Safety of Estrogens in Lupus Erythematosus National Assessment Systemic Lupus Erythematosus Disease Activity Index)スコア
35によって評価した。SLEDAIスコアに基づき、狼瘡の活動性を非活動性(0)、軽度(1.0〜4.0)及び活動性(>4)と分類した。活動性ループス腎炎は、活性尿沈渣及び尿タンパク質クレアチニン比>1又は増殖性ループス腎炎のための免疫抑制治療のいずれかの存在によって定義した。
【0182】
酵素免疫検定法
種々の免疫グロブリンアイソタイプ分析のために、抗マウスIgM、IgA、IgG
1、IgG
2a、IgG
2b及びIgE ELISAキットをBethyl Laboratoriesより購入した。
【0183】
他の実施態様
前記説明から、本発明を様々な使用及び条件に適合させるために本明細書で述べる本発明に変更及び修正を加えることができることは明白である。そのような実施態様も以下の特許請求の範囲内である。
【0184】
本明細書の変数の定義の何れかにおける要素のリストの列挙は、何れかの単一要素又はリストされる要素の組合せ(又はサブコンビネーション)としてのその変数の定義を包含する。本明細書の実施態様の列挙は、何れかの単一実施態様又は他の何れかの実施態様若しくはその部分との組合せとしてのその実施態様を包含する。
【0185】
本明細書で言及するすべての特許及び公表文献は、各々の特許及び公表文献が参照により本明細書に取り込まれることが具体的かつ個別に指示されているのと同じように参照により本明細書に取り込まれる。