特許第5851056号(P5851056)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5851056
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】車落下防護柵
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/42 20060101AFI20160114BHJP
   E04H 6/10 20060101ALI20160114BHJP
   E04H 17/14 20060101ALI20160114BHJP
【FI】
   E04H6/42 Z
   E04H6/10 A
   E04H17/14 102Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-7433(P2015-7433)
(22)【出願日】2015年1月19日
(62)【分割の表示】特願2011-258730(P2011-258730)の分割
【原出願日】2011年11月28日
(65)【公開番号】特開2015-71943(P2015-71943A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2015年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096862
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 千春
(72)【発明者】
【氏名】藤永 直樹
(72)【発明者】
【氏名】安川 真知子
【審査官】 渋谷 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−341120(JP,A)
【文献】 実開昭62−50216(JP,U)
【文献】 特開2004−60234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/42
E04H 6/10
E04H 17/14
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱間に、帯板状の鋼製プレートがその板面を鉛直方向に沿わせて横架されてなり、
かつ上記鋼製プレートは、両端部分が当該端部に向けて漸次幅寸法が大きくなるとともに、車が衝突した際の運動エネルギーを自らが軸方向に伸びることによって蓄積される歪みエネルギーにより吸収可能な諸元に形成され、上記両端部分において上記柱に着脱自在に取り付けられていることを特徴とする車落下防護柵。
【請求項2】
上記柱間には、複数本のキャンチ柱が互いに間隔をおいて立設されていることを特徴とする請求項1に記載の車落下防護柵。
【請求項3】
上記キャンチ柱の取付板に長穴を形成し、この長穴に上記キャンチ柱の脚部をボルト接合することを特徴とする請求項2に記載の車落下防止柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば駐車場の柱間に横架されて、当該柱間から車が外部に落下することを防止するための車落下防護柵に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、路面よりも高い土地に設置された駐車場や立体駐車場等においては、駐車場内の車が、ブレーキとアクセルとの操作ミス等によって暴走した際に、当該車が駐車場から外れて落下することを防止するための車落下防護柵が設けられている。
【0003】
従来の上記車落下防護柵として、下記特許文献1においては、床壁によって複数階に区画された立体駐車場に架設されるケーブル形式の防護柵において、形鋼からなる縦梁材のウエブまたはフランジに複数の横孔を高さ方向で間隔をおいて設け、それら横孔にそれぞれケーブル径よりも内径が大きいケーブル保持用のパイプを貫挿し、それら各パイプにガードケーブルを構成するワイヤロープをそれぞれ挿通した立体駐車場用ケーブル式防護柵が提案されている。
【0004】
ところが、このような高さ方向に間隔をおいて複数本のワイヤロープを張り巡らした防護柵にあっては、構造が複雑になるとともに、各々のワイヤロープに、予め所定の張力を付与しておく必要があり、施工にも多くの手間を要する。加えて、縦梁材を固定する床下の梁部材の補強や、ねじれ剛性を高めるための補剛材を設けなければならない等の問題点があった。
【0005】
そこで、従来の他の車落下防護柵として、例えば下記特許文献2に見られるような、H形鋼を用いた防護柵が多く実用に供されている。
一般的に、このようなH形鋼を用いた防護柵においては、図12に示すように、駐車場の柱20間の床から所定高さ位置に、H形鋼からなるつなぎ梁21を横架した構造や、図13に示すように、駐車場の下部梁や床スラブ(図示を略す。)に下端部を支持させた複数本(図では2本)のキャンチ柱22を互いに間隔をおいて立設し、これらキャンチ柱22上に、H形鋼からなる落下防止梁23を水平に固定した構造が採用されている。
【0006】
ところで、上記特許文献2に記載の従来の車落下防護柵にあっては、車の衝突荷重を静的荷重として捉え、つなぎ梁21や落下防止梁23として、当該衝突荷重により生じる応力に抵抗できる断面を有するH形鋼を用いている。このため、つなぎ梁21や落下防止梁23の断面が大きなものになってしまうという問題点があった。
【0007】
また、上記つなぎ梁21や落下防止梁23の重量も嵩むために、これを支持する柱20の面内応力やキャンチ柱22を支持する床スラブの補強配筋あるいは下部梁のねじれ補強等を別途考慮する必要があるという問題点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第2527236号公報
【特許文献2】特開平11−350774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、軽量であっても充分な車の落下防止効果を得ることができ、よって施工が容易で経済性にも優れる車落下防護柵を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明に係る車落下防護柵は、柱間に、帯板状の鋼製プレートがその板面を鉛直方向に沿わせて横架されてなり、かつ上記鋼製プレートは、両端部分が当該端部に向けて漸次幅寸法が大きくなるとともに、車が衝突した際の運動エネルギーを自らが軸方向に伸びることによって蓄積される歪みエネルギーにより吸収可能な諸元に形成され、上記両端部分において上記柱に着脱自在に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記柱間には、複数本のキャンチ柱が互いに間隔をおいて立設されていることを特徴とするものである。
【0012】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、上記キャンチ柱の取付板に長穴を形成し、この長穴に上記キャンチ柱の脚部をボルト接合することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜3のいずれかに記載の発明においては、例えば駐車場等内において車が暴走して上記鋼製プレートの板面に衝突した際に、その衝突による運動エネルギーを、自らが軸方向に伸びることによって蓄積される歪みエネルギーによって吸収することができる。このため、H形鋼を用いた従来の車落下防護柵と比較して断面を小さくすることができるため、大幅な軽量化を図ることができ、よって施工が容易であるとともに、施工コストの低減化も実現することができる。
【0014】
この際に、上記鋼製プレートが、柱に着脱自在に取り付けられているために、上記車の衝突により大きな歪みが生じた場合には、当該鋼製プレートのみを容易に新たなものと交換することができる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明によれば、隣接する柱のスパンが長い場合にも、上記柱間に立設した複数本のキャンチ柱によって、上記鋼製プレートの自重による撓みを防止することができる。
【0016】
加えて、請求項3に記載の発明によれば、当該キャンチ柱の取付板に長穴を形成し、この長穴にキャンチ柱の脚部をボルト接合しているために、車が衝突した際に、キャンチ柱を鋼製プレートの面外方向の変位に追従して変位させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る車落下防護柵の第1の実施形態を示すもので、(a)は全体の正面図、(b)は(a)のA−A線視断面の拡大図である。
図2図1の要部の拡大図である。
図3】(a)は図2のI−I線視図であり、(b)は図2のII−II線視図である。
図4図1の鋼製プレートの歪みエネルギーの計算式を説明するための模式図である。
図5】第1の実施形態の変形例を示すもので図1の要部拡大図である。
図6】(a)は図5のIII−III線視図であり、(b)は図5のIV−IV線視図である。
図7】本発明の第2の実施形態の要部を示すもので、(a)は底面図、(b)は正面図である。
図8】本発明の第3の実施形態の要部を示すもので、(a)は斜視図、(b)は鋼製プレートの端部を示す拡大図である。
図9】(a)は図8の横断面図、(b)は車が衝突した際の動作を示す横断面図である。
図10】本発明の第3の実施形態の変形例を示す要部の斜視図である。
図11】(a)は、本発明の第4の実施形態の要部を示す斜視図であり、(b)はその変形例を示す斜視図である。
図12】従来の車落下防護柵を示す要部の分解斜視図である。
図13】従来の他の車落下防護柵を示す要部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1図4は、本発明に係る車落下防護柵を駐車場に設置される車落下防護柵に適用した第1実施形態を示すもので、図中符号1が、H形鋼からなる柱2および梁3の架構によって構成された鉄骨造の駐車場である。そして、この駐車場1において通路が設けられていない開口部に、駐車場1内の車Cが上記開口部から外へ落下することを防止するための車落下防護柵が設けられている。
【0019】
図1図3に示すように、この車落下防護柵は、隣接する柱2の所定の高さ位置に、互いに対向するようにして固定された固定金物5と、隣接する柱2の固定金物5間に横架された鋼製プレート6とから概略構成されている。ここで、固定金物5は、板面を鉛直方向に沿わせた方形板状の取付板5aと、この取付板5aの上下縁部に板面を水平方向に沿わせて接合一体化されたリブプレート5bとからなるH形の部材で、一端部が柱1のフランジ面に溶接により固定されている。
【0020】
また、鋼製プレート6は、鋼板を帯板状に加工したもので、中央部分6aにおいて一定の幅寸法に形成されるとともに、両端部分6bにおいては、当該端部に向けて漸次幅寸法が大きくなるように形成されている。そして、この鋼製プレート6は、その板面を鉛直方向に沿わせて配設されるとともに、両端部分6bの板面を固定金物5の取付板5aに当接させた状態で、複数本(図では20本)の高力ボルト7によって固定金物5に着脱自在に取り付けられている。
【0021】
ここで、この鋼製プレート6の中央部分6aは、その弾性係数E、厚さ寸法、幅寸法、長さ寸法等の諸元が、駐車場1内の車Cが当該鋼製プレート6に衝突した際の運動エネルギーを、自らの軸方向の伸びによって蓄積される歪みエネルギーによって吸収可能な寸法等の諸元に形成されている。
【0022】
すなわち、これを図4に基づいて具体的に説明すると、先ず、車Cが鋼製プレート6に衝突する際の運動エネルギーEは、当該車Cの質量をm、衝突時の速度をvとすると、E=(1/2)mv である。他方、これによって、バネ定数がKである鋼製プレート6に力Pが作用して歪みδが発生すると、当該鋼製プレート6の歪みエネルギーEは、E=(1/2)Kδ =(1/2)(P/δ)δ =(1/2)Pδ である。
【0023】
一方、車Cの衝突による鋼製プレート6の伸びによる歪みエネルギーEは、当該鋼製プレート6の長手方向xにおける断面積をAとすると、E=Σ(EA/2L)ΔLである。そして、E=E であるから、上記車Cの質量mおよび想定される衝突時の速度vから、当該衝突によるエネルギーを自らの歪δによって吸収可能な鋼製プレート6の寸法等の諸元を決定することができる。
【0024】
ちなみに、上式による鋼製プレート6の諸元の決定条件においては、車C自体における衝突の際のエネルギー吸収量を考慮していない。そして、実際の車Cによる衝突時には、当該車C自体の変形によるエネルギー吸収が行われるために、上式により鋼製プレート6を設計することにより、より安全性を高めることができる。
【0025】
なお、隣接する柱2のスパンが長い場合には、図1(a)、(b)に示すように、駐車場1の下部梁3に下端部を支持させた複数本(図では3本)のキャンチ柱4を互いに間隔をおいて立設し、常時これらキャンチ柱4によって鋼製プレート6の中央部分6aが自重によって面外方向に撓むことを防止する。この際に、図1(b)に示すように、当該キャンチ柱4の取付板4aに水平方向に長穴4bを形成し、この長穴4bにキャンチ柱4の脚部をボルト接合すれば、車Cが衝突した際に、キャンチ柱4を鋼製プレート6の面外方向の変位に追従して変位させることができるために好適である。
【0026】
また、図5および図6は、本実施形態の変形例を示すもので、この車落下防護柵は、2枚の鋼製プレート8、8を用いたものである。
すなわち、この車落下防護柵においては、同形状の2枚の鋼製プレート8が、各々互いの板面を鉛直方向に沿わせて配設されるとともに、両端部分8bの板面を、固定金物5の取付板5aを両面側から挟むようにして当接させた状態で複数本(図では12本)の高力ボルト7によって固定金物5に着脱自在に取り付けられている。
【0027】
そして、これら鋼製プレート8についても、その弾性係数E、厚さ寸法、幅寸法、長さ寸法等の諸元が、駐車場1内の車Cが当該鋼製プレート8に衝突した際の運動エネルギーを、2枚の当該鋼製プレート8の軸方向の伸びによって蓄積される歪みエネルギーによって吸収可能な寸法等の諸元に形成されている。
【0028】
上記第1の実施形態およびその変形例の車落下防護柵においては、駐車場1内において車Cが暴走などして鋼製プレート6、8の板面に衝突した際に、その衝突による運動エネルギーEを、当該鋼製プレート6、8が軸方向に伸び変形することによって生じる歪みエネルギーEによって吸収することができる。このため、H形鋼を用いた従来の車落下防護柵と比較して、大幅な軽量化を図ることができ、よって施工が容易であるとともに、施工コストの低減化も実現することができる。
【0029】
特に、図5および図6の示した、2枚の鋼製プレート8を用いた車落下防護柵によれば、1枚あたりの鋼製プレート8の板厚が薄くなるために、材料の入手が簡単で、作業も軽量のために容易になるという効果が得られる。しかも、高力ボルト7による固定金物5との継手部分において、せん断摩擦面が2面になる結果、1本のボルトのせん断耐力が2倍となるために、当該高力ボルト7の本数を少なくすることができ、より一層経済性に優れる。
【0030】
また、鋼製プレート6、8が、柱2に固定された固定金物5に高力ボルト7によって着脱自在に取り付けられているために、車Cの衝突により大きな歪みが生じた場合には、当該鋼製プレート6、8のみを容易に新たなものと交換することができる。
【0031】
図7は、本発明の第2の実施形態を示すもので、図1図6に示したものと同一構成部分については同一符号を付してその説明を簡略化する。
この車落下防護柵が特徴とする点は、柱2に固定金物10が高力ボルト7によって固定され、この固定金物10に鋼製プレート6の両端部分6bが、各々その面外方向に回動自在にピン接合されていることにある。
【0032】
すなわち、固体金物10は、柱2のフランジ面に当接して高力ボルト7によって固定される基板10aと、この基板10aの上下端部に水平に接合されたリブプレート10bとから構成されたもので、リブプレート10bの先端部には、上下方向に貫通する孔部が穿設されている。他方、鋼製プレート6の両端部分6bには、取付金物11が設けられている。
【0033】
この取付金物11は、固定金物10のリブプレート10b間に挿入される鋼管11aと、この鋼管11aの外周に接合されて対向する一対の連結板11bとから構成されたもので、これら連結板11b間に挿入された鋼製プレート6と、高力ボルト7を介して一体化されている。そして、この取付金物11が設けられた鋼製プレート6は、鋼管11aが固定金物10のリブプレート10bの孔部間に配設され、さらに下部リブプレート10bの孔部から当該鋼管11aを通して上部リブプレート10bの孔部に挿入されたピン12に、上方からナット13が螺合されることにより、その面外方向に回動自在に設けられている。
【0034】
上記構成からなる第2の実施形態の車落下防護柵によっても、第1の実施形態に示したものと同様の作用効果を得ることができる。加えて、柱2に固定された固定金物10に取付金物11を介して、上記鋼製プレート6が、その面外方向に回動自在にピン接合されているために、車Cが鋼製プレート6に衝突した際に、固定金物10に曲げ力が発生することがなく、よって固定金物10の設計が容易になる。しかも、鋼製プレート6のみに軸方向の伸びを発生させることにより、小さな力によって所望の歪みエネルギーEを発生させることができるために、鋼製プレート6の断面を一層小さくすることができるといった効果も得られる。
【0035】
なお、上記第2の実施形態においては、1枚の鋼製プレート6をもちいた場合についてのみ示したが、これに限定されるものではなく、図5および図6に示した第1の実施形態の変形例と同様に、2枚の鋼製プレート6を用いること可能である。
【0036】
次いで、図8図10は、本発明の第3の実施形態およびその変形例を示すもので、これらの車落下防護柵が第1および第2の実施形態に示したものと相違する点は、鋼製プレート6を、ピン仕口によって柱2に連結したところにある。
すなわち、図8および図9に示す第3の実施形態においては、鋼製プレート6が均一の幅寸法に形成されるとともに、その両端部分6bの上下方向に間隔をおいた複数箇所(図では2箇所)に、孔部6cが穿設されている。
【0037】
他方、柱2には、そのフランジの両側から突出する一対の固定金物14が固定されているとともに、これら固定金物14の上端部および下端部間に補強板14aが接合されている(なお、図8(a)においては、目視の便宜のために上端部の補強板14aの一部を切り欠いてある。)。そして、鋼製プレート6は、両端部分6bが各々固定金物14間に挿入されるとともに、上記孔部6c内に挿通されたピン15の両端部が、各々固定金物14に接合されることにより、固定金物14にピン仕口によって連結されている。さらに、固定金物14および補強板14aによって囲まれた空間には、図9に示すように、緩衝材14bが充填されている。
【0038】
なお、図8(b)に示すように、孔部6cの内径は、ピン15の外径よりも大きく形成されるとともに、ピン15は、上方のピン15が上部の孔部6cの上縁に当接し、下方のピン15が下部の孔部6cの下縁に当接するように位置決めされている。
【0039】
上記構成からなる第3の実施形態に示した車落下防護柵にあっても、第1の実施形態に示したものと同様に作用効果を得ることができる。また、本実施形態においては、鋼製プレート6と固定金物14との接合部分を、孔部6cとピン15とが図8(b)に示した寸法および位置関係を有するピン仕口としているために、図9(b)に示すように、車Cが衝突した際に、鋼製プレート6を鉛直に保持した状態でピン15を支点としてその両端部6bを回転させることができ、かつ当該鋼製プレート6における上記回転以外の鉛直方向や水平方向の変位を拘束することができる。
【0040】
また、図10は、第3の実施形態の示す変形例を示すもので、この車落下防護柵においては、載置板16aおよび係止板16bからなる固定金物16が用いられている。ここで、載置板16aは、柱2のフランジ2a間に水平に挿入されるとともに先端部をウエブ2bに当接させた状態で、これらフランジ2aおよびウエブ2bに溶接・一体化されたもので、フランジ2a間から外方に突出させた上面に、係止板16bが設けられている。
【0041】
この係止板16bは、柱2のフランジ2aの縁部から所定の間隔(具体的には、鋼製プレート6の厚さ寸法よりも僅かに大きな間隔)をおいて、載置板16a上に立設されるとともに、ブラケット16cによって補強されている。
【0042】
そして、鋼製プレート6は、その両端部分6bが各々係止板16bと柱2との間に緩く挿入された状態で、載置板16a上に載置されている。なお、図中符号6dは、鋼製プレート6の両端部分6bの端面に接合されて鋼製プレート6が係止板16bと柱2のフランジ2aとの間から抜け出すことを防止するための端板である。
【0043】
上記構成からなる車落下防護柵によっても、第3の実施形態と同様の作用効果が得られる他、特に図10に示したものによれば、鋼製プレート6が、単にその両端部分6bを係止板16bと柱2との間に緩く挿入した状態で載置板16a上に設置されているために、車Cの衝突により変形した鋼製プレート6の交換が、極めて容易になるという効果が得られる。
【0044】
さらに、図11(a)は、本発明の第4の実施形態を示すもので、同様に図1に示したものと同一構成部分については、同一符号を付してある。
図11(a)に示す車落下防護柵においては、鋼製プレート6の中央部分6aと両端部分6bとの間が所定長さ寸法だけ切断され、当該切断部に低降伏点鋼からなるプレート17が挿入されて連結金物18および高力ボルト7により鋼製プレート6に一体的に介装されている。
【0045】
上記構成からなる第4の実施形態の車落下防止柵によれば、第1の実施形態と同様の作用効果が得られることに加えて、さらに車Cが衝突した際に、上記低降伏点鋼からなるプレート17が、鋼製プレート6よりも先に軸方向に伸びて降伏するために、固定金物5に過度の力が作用することを防止することができるという効果が得られる。
【0046】
また、図11(b)は、上記第4の実施形態の変形例を示すもので、この車落下防護柵においては、鋼製プレート6の中央部分6aの全体が低降伏点鋼からなるプレート19によって構成され、当該プレート19と両端部分6bとが、それぞれ連結金物18および高力ボルト7によって一体化されている。
【0047】
上記第4の実施形態の変形例として示した車落下防護柵によれば、鋼製プレート6の略全長を低降伏点鋼からなるプレート19によって構成しているために、衝突エネルギーEの吸収性能を大幅に高めることができるとともに、さらに鋼製プレート6の断面を小さくして、全体の軽量化を図ることができるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0048】
1 駐車場
2 柱
5、10、14、16 固定金物
6、8 鋼製プレート
7 高力ボルト
17、19 低降伏点鋼のプレート
C 車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13