(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5851185
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】摩擦材
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20160114BHJP
F16D 69/02 20060101ALI20160114BHJP
【FI】
C09K3/14 530E
C09K3/14 530C
F16D69/02 C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-219247(P2011-219247)
(22)【出願日】2011年10月3日
(65)【公開番号】特開2012-107205(P2012-107205A)
(43)【公開日】2012年6月7日
【審査請求日】2014年9月30日
(31)【優先権主張番号】特願2010-243106(P2010-243106)
(32)【優先日】2010年10月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309014573
【氏名又は名称】日清紡ブレーキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146927
【弁理士】
【氏名又は名称】船越 巧子
(74)【代理人】
【識別番号】100102369
【弁理士】
【氏名又は名称】金谷 宥
(72)【発明者】
【氏名】木村 英司
(72)【発明者】
【氏名】竹内 一弘
【審査官】
小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−336340(JP,A)
【文献】
特開平11−269279(JP,A)
【文献】
特開昭62−104889(JP,A)
【文献】
特開2001−020986(JP,A)
【文献】
特開平11−061104(JP,A)
【文献】
特開平09−291271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
F16D 69/02
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材、結合剤、研削材、摩擦調整材からなる摩擦材において、摩擦調整材としてシリコーンゴム粒子の内部にシランカップリング剤が分散されたシランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子を含有することを特徴とする摩擦材。
【請求項2】
前記シランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子が、シランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子全量に対しシランカップリング剤を0.1〜5重量%含有することを特徴とする請求項1に記載の摩擦材。
【請求項3】
前記シランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子を摩擦材全量に対し0.5〜20体積%含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の摩擦材。
【請求項4】
前記シランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子の平均粒子径が10〜1,000μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の摩擦材。
【請求項5】
研削材として、モース硬度が5〜9、平均粒子径が1〜15μmの硬質無機粒子を0.1〜20体積%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の摩擦材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のディスクブレーキやドラムブレーキに使用される、繊維基材、結合剤、研削材、摩擦調整材からなる摩擦材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の制動装置としてディスクブレーキやドラムブレーキが使用されており、その摩擦部材として金属製のベース部材に摩擦材が貼り付けられたディスクブレーキパッド、ドラムブレーキシューが使用されている。
そして、摩擦材には耐熱性が高いこと、ブレーキノイズの発生が少ないことが要求されている。
【0003】
ブレーキノイズの発生を抑制するには、摩擦材の振動吸収性能を向上させることが効果的であり、その方法として摩擦材に合成ゴムの粒子を添加することが知られている。
【0004】
特開平11−61104(特許文献1)には、摩擦調整材としての合成ゴムとして比較的耐熱性の高いシリコーンゴム粒子を添加することにより耐熱性を高め、且つ、振動吸収性能を向上させてブレーキノイズの発生を抑制した摩擦材が記載されている。
【0005】
しかし、摩擦材に含まれるシリコーンゴム粒子は制動による摩擦衝撃により摩擦材の摩擦面から脱落しやすく、シリコーンゴム粒子が脱落した部分から摩擦材の摩耗が急激に進行するため、摩擦材の寿命が短くなるという欠点がある。
【0006】
シリコーンゴム粒子が摩擦材の摩擦面から脱落するのを防止するためには、シリコーンゴム粒子の表面をシランカップリング剤で被覆処理し、シリコーンゴム粒子の表面と結合剤である熱硬化性樹脂との密着性を向上させる方法が考えられる。
【0007】
摩擦材に添加される繊維基材、研削材、摩擦調整材と、結合剤である熱硬化性樹脂との密着性を向上させるため、繊維基材、研削材、摩擦調整材の表面をシランカップリング剤で被覆処理することが当業者では通常実施されており、特開平9−291271(特許文献2)、特開2001−20986(特許文献3)などに記載されている。
【0008】
しかし、シリコーンゴム粒子のように比較的柔らかな原料においては、表面をシランカップリング剤で被覆処理するだけでは十分な熱硬化性樹脂との密着性を得られず、要求される耐摩耗性を得られないという問題がある。これは、摩擦材の製造工程に起因するものと考えられる。
【0009】
通常、摩擦材は計量した各原料を混合機に投入し、乾燥状態で撹拌・混合する混合工程を経て製造される。この混合工程では各原料が混合機により撹拌されるが、原料同士の摩擦によりシランカップリング剤で被覆処理された原料の表面が摩耗してしまい、シランカップリング剤の効果が著しく低下してしまうのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−61104
【特許文献2】特開平9−291271
【特許文献3】特開2001−20986
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、繊維基材、結合剤、研削材、摩擦調整材からなり、摩擦調整材としてシリコーンゴム粒子を含有してなる摩擦材において、制動時の摩擦衝撃によるシリコーンゴム粒子の脱落を抑制することにより、耐摩耗性が良好な摩擦材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、シリコーンゴム粒子の製造過程でシリコーンゴムコンパウンドとシランカップリング剤を一緒に練り込んでシランカップリング剤をシリコーンゴム粒子の内部に分散させることにより、混合工程でシリコーンゴム粒子の表面が摩耗してもシランカップリング剤の効果を持続させることができることを知見した。
【0013】
また、制動時の摩擦衝撃によるシリコーンゴム粒子の脱落を抑制するには、シリコーンゴム粒子と樹脂マトリックスの間に適度なモース硬度と平均粒子径を有する硬質無機粒子を適量存在させることが効果的であることを知見した。
【0014】
本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものであり、特定のシリコーンゴム粒子を含有し、さらに、特定の硬質無機粒子を含有してなる摩擦材であって、以下の技術を基礎とするものである。
【0015】
(1)繊維基材、結合剤、研削材、摩擦調整材からなる摩擦材において、摩擦調整材としてシリコーンゴム粒子の内部にシランカップリング剤が分散されたシランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子を含有することを特徴とする摩擦材。
【0016】
(2)前記シランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子が、シランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子全量に対しシランカップリング剤を0.1〜5重量%含有することを特徴とする(1)に記載の摩擦材。
【0017】
(3)前記シランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子を摩擦材全量に対し0.5〜20体積%含有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の摩擦材。
【0018】
(4)前記シランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子の平均粒子径が10〜1,000μmであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の摩擦材。
【0019】
(5)研削材として、モース硬度が5〜9、平均粒子径が1〜15μmの硬質無機粒子を0.1〜20体積%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の摩擦材。
【発明の効果】
【0020】
本発明の摩擦材においては、摩擦調整材としてシランカップリング剤をシリコーンゴム粒子の内部に分散させたシランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子を用いることにより、制動時の摩擦衝撃によるシリコーンゴム粒子の脱落を抑制することができ、耐摩耗性が良好な摩擦材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明に係る摩擦材を用いたディスクブレーキパッドの製造工程の一例を示した説明図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る摩擦材を用いたドラムブレーキシューの製造工程の一例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
摩擦調整材としてシリコーンゴム粒子を含有してなる摩擦材において、シリコーンゴム粒子として、シリコーンゴムコンパウンドにシランカップリング剤と加硫剤を加えて混練し、加熱硬化および粒状化したシランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子を使用する。
【0023】
シランカップリング剤がシリコーンゴム粒子の内部に分散されているので、混合工程でシリコーンゴム粒子の表面が摩耗してもシランカップリング剤の効果が持続し、シリコーンゴム粒子と熱硬化性樹脂の十分な密着性を得ることができ、制動時の摩擦衝撃によるシリコーンゴム粒子の脱落を抑制することができる。
【0024】
シランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子に含有させるシランカップリング剤はシランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子全成分に対し0.1〜5重量%が好ましく、0.5〜3重量%が特に好ましい。
【0025】
シランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子に含有させるシランカップリング剤が0.1重量%未満であると、シリコーンゴム粒子と樹脂マトリックスの十分な密着性を得ることができず、要求される耐摩耗性を満たすことができない。
また、シランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子に含有させるシランカップリング剤の上限値であるが5重量%を境に効果の差異が見られなくなり、シランカップリング剤を多く含有させるとシランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子のコストも上がることから、5重量%以下とすることが好ましい。
【0026】
シリコーンゴムコンパウンドはシリコーン生ゴムと高純度のシリカを主成分とするゴムコンパウンドであり、本発明の摩擦材に使用するシランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子はこのシリコーンゴムコンパウンドにシランカップリング剤と有機過酸化物系加硫剤等の加硫剤を加え混練したものを加熱硬化および粒状化することにより製造される。
【0027】
シリコーンゴムを粒状化する方法としては、粉砕法、噴霧乾燥法、凝固法、粉末乾燥法が挙げられる。
【0028】
シランカップリング剤はエポキシ系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、イソシアネート系シランカップリング剤等の通常使用されているシランカップリング剤を使用することができる。摩擦材の結合剤としてフェノール系の樹脂を使用する場合は、アミノ系シランカップリング剤を使用するのが好ましい。
【0029】
シランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子の含有量は摩擦材全量に対し0.5〜20体積%が好ましく、3〜5体積%が特に好ましい。
【0030】
シランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子の含有量が摩擦材全量に対し0.5体積%未満であると、シリコーンゴム粒子による振動減衰効果を得ることができず、ブレーキノイズが発生しやすくなる。
また、シランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子の含有量が摩擦材全量に対し20体積%を超えると耐摩耗性が低下する。
【0031】
シランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子の平均粒子径は、10〜1,000μmが好ましく、400〜600μmが特に好ましい。
【0032】
シランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子の平均粒子径が10μm未満であると、シリコーンゴム粒子による振動減衰効果を得ることができず、ブレーキノイズが発生しやすくなる。
また、シランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子の平均粒子径が1,000μmを越えると、耐摩耗性が低下する。
なお、本発明において平均粒子径は、レーザー回折粒度分布法により測定した50%粒径の数値を用いた。
【0033】
さらに、本発明においては摩擦材に硬質無機粒子を添加する。シランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子と熱硬化性樹脂の間に硬質無機粒子が介在することで、硬質無機粒子がクサビの役割を果たし、シランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子の脱落を抑制することができる。
【0034】
硬質無機粒子のモース硬度は5〜9、平均粒子径は1〜15μmが好ましく、この硬質無機粒子を摩擦材全量に対し0.1〜20体積%添加すると、摩擦材の耐摩耗性がより向上する。
【0035】
モース硬度が5〜9の硬質無機粒子としては、マグネシア、ケイ酸ジルコニウム、シリカ、アルミナ、炭化ケイ素等が挙げられるが、
これらに限らず、通常摩擦材に添加されているモース硬度が5〜9の硬質無機粒子を使用することができる。
なお、本発明においてモース硬度は、1.滑石 2.石膏 3.方解石 4.蛍石 5.リン灰石 6.正長石 7.水晶 8.黄玉 9.鋼玉 10.ダイヤモンド で表される旧モース硬度を適用する。
【0036】
また、本発明の摩擦材は、上記のシランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子、硬質無機粒子の他に、通常摩擦材に使用される金属繊維、有機繊維、無機繊維などの繊維基材、熱硬化性樹脂などの結合剤、有機充填材、無機充填材、潤滑剤、金属粒子などの摩擦調整材を含んでなる。
【0037】
繊維基材としては、鉄繊維、鋼繊維、銅繊維、真鍮繊維、青銅繊維等の金属繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、カーボン繊維等の有機繊維、セラミック繊維、ロックウール、チタン酸カリウム繊維等の無機繊維が挙げられ、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。繊維基材の含有量は、充分な機械強度を確保するため、摩擦材全量に対し5〜60体積%とすることが好ましく、10〜50体積%とすることがより好ましい。
【0038】
結合剤としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、これらの熱硬化性樹脂をカシューオイル、シリコーンオイル、各種エラストマー等で変性した樹脂、これらの熱硬化性樹脂に各種エラストマー、フッ素ポリマー等を分散させた樹脂等が挙げられ、これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
結合剤の含有量は、充分な機械的強度、耐摩耗性を確保するため、摩擦材全量に対し、7〜30体積%とすることが好ましく、9〜20体積%とすることがより好ましい。
【0040】
シランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子以外の摩擦調整材としては、カシューダスト、ゴムダスト(タイヤトレッドゴムの粉砕粉)、シリコーンゴム以外の未加硫の各種ゴム粒子、シリコーンゴム以外の加硫された各種ゴム粒子等の有機充填材、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、バーミキュライト、マイカ等の無機充填材、二硫化モリブデン、硫化錫、硫化亜鉛、硫化鉄等の潤滑剤、銅粒子、黄銅粒子、亜鉛粒子、アルミニウム粒子等の金属粒子が挙げられ、これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
摩擦調整材の含有量は、所望する摩擦特性に応じて摩擦材全量に対し40〜70体積%とすることが好ましく、50〜70体積%とすることがより好ましい。
【0042】
本発明の摩擦材は、所定量配合した上記のシランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子、硬質無機粒子と、繊維基材、結合剤、摩擦調整材をレディゲミキサー、アイリッヒミキサー等の混合機を用いて均一に混合する混合工程、得られた原料混合物を予備成形型に投入し、予備成形物を成形する予備成形工程、予備成形物を熱成形型に投入し、成形温度130〜180℃、成形圧力15〜49MPaで、3〜10分成形する加熱加圧成形工程、得られた成形品を140〜250℃の温度で2〜12時間熱処理(後硬化)する熱処理工程、摩擦面を形成する研磨処理工程を経て製造され、適宜、塗装、塗装焼き付け工程、スコーチ工程が実施される。
【0043】
ディスクブレーキパッドを製造する場合には、加熱加圧成形工程において、予め洗浄、表面処理、接着剤を塗布した金属製のベース部材(バックプレート)と前記予備成形物を重ねた状態で成形が施される。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0045】
[シランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子1〜7の製造方法]
表1に示すシリコーンゴムコンパウンドと、アミノ系シランカップリング剤とをニーダーで混練し、更に有機過酸化物系の加硫剤を加えて混練した後、薄いシート状に押出してシート状のシリコーンゴムベースコンパウンドとし、このシート状のシリコーンゴムベースコンパウンドを150℃から250℃で加熱して硬化させた後、ジェットミルで粉砕、分級してシランカップリング剤分散シリコーンゴム粒子1〜7を製造した。
【0046】
[シランカップリング剤被覆シリコーンゴム粒子8の製造方法]
表1に示すシリコーンゴムコンパウンドに有機過酸化物系の加硫剤を加え混練した後、薄いシート状に押出してシート状のシリコーンゴムベースコンパウンドとし、このシート状のシリコーンゴムベースコンパウンドを150℃から250℃で加熱して硬化させた後、ジェットミルで粉砕、分級してシリコーンゴム粒子を製造した。得られたシリコーンゴム粒子とアミノ系シランカップリング剤を攪拌機に投入し、攪拌してシリコーンゴム粒子の表面にアミノ系シランカップリング剤を付着させ、シランカップリング剤被覆シリコーンゴム粒子8を製造した。
【0047】
[実施例1〜19・比較例1の摩擦材の製造方法]
表2〜4に示す摩擦材原料組成物(実施例、比較例)をレディゲミキサーにて10分間混合し、得られた摩擦材原料混合物を予備成形型に投入し、35MPaにて1分加圧して予備成形した。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
この予備成形物と、予め洗浄、表面処理を施し、接着剤を塗布した鉄製のベース部材(バックプレート)を熱成形金型に重ねて投入し、成形温度155℃、成形圧力40MPaの条件下で5分間加熱・加圧成形した後、熱処理炉にて200℃で4時間熱処理(後硬化)を行ない、塗装、焼き付け、研磨して、実施例、比較例の乗用車用ブレーキパッドを作成した。
【0053】
実施例、比較例のディスクブレーキパッドにおいて、評価試験を実施した。評価方法および評価基準は表に示すとおりである。
【0054】
<耐摩耗性>
実施例1〜19、比較例1の乗用車用ブレーキパッドをダイナモメータに装着し、JASO C427−88(ブレーキライニング,パッド摩耗ダイナモメータ試験方法)の一般摩耗試験(制動前ブレーキ温度200℃)に準拠して試験を行い、ブレーキパッドの摩耗量を測定した。
使用キャリパブレーキ型式:フローティング型キャリパ
イナーシャ : 7.0kg・m
2
【0055】
評価基準は、次の通りである。
◎ : 0.15mm未満
○ : 0.15mm以上、0.20mm未満
△ : 0.20mm以上、0.25mm未満
× : 0.25mm以上
【0056】
<実車鳴き>
実施例1〜19、比較例1の乗用車用ブレーキパッドを実車に装着し、JASO C4
02(乗用車常用ブレーキ実車試験方法)に準拠して実車鳴き試験を行い、ブレーキの鳴き発生率を求めた。
【0057】
評価基準は、次の通りである。
◎ : 0%
○ : 0%を超え、5%未満
△ : 5%以上、10%未満
× : 10%以上
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明により、制動時の摩擦衝撃によるシリコーンゴム粒子の脱落を抑制することができ、耐摩耗性が良好な摩擦材を得ることができ、自動車の制動装置である、ディスクブレーキまたはドラムブレーキに使用される摩擦材として、実用的効果がきわめて高いものである。