(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1光学部材及び前記第2光学部材と共に前記光軸に沿って配列され、前記第1光学部材及び前記第2光学部材間に前記光軸に直交する直線上に延在するように設けられた絞りを更に備え、
前記位置決め手段は一対の突起部と孔部とから構成され、前記第1光学部材及び前記第2光学部材が前記絞りに対して位置決めされることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像読取光学系ユニット。
前記位置決め手段は、前記第1光学部材及び前記第2光学部材の一方に対して他方を位置決めするように、前記一方に設けられた複数の突起部と、前記他方に設けられ前記突起部が挿入される複数の孔部とを有し、
各々の光学部材にて、前記複数の孔部のうち、前記光軸に平行で且つ光学部材の中心を通る中心軸上の孔部を、前記光学部材の長手方向への前記突起部の変位を規制する形状の長手方向基点とし、該長手方向基点より前記中心軸から離れている孔部を、前記長手方向への前記突起部の変位を許容する形状としたことを特徴とする請求項1、2、4及び5のいずれか一項に記載の画像読取光学系ユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1によれば光学素子の歪みや変形は抑制可能であるものの、光軸方向に高精度で配置される複数の光学素子、例えば、レンズ、絞りまたは遮光部材等が、熱膨張または熱収縮に起因する温度シフトによってそれぞれ光軸からずれてしまい、光学系全体としての光学性能を劣化させてしまうという問題があった。
特に、特許文献2等のように光軸方向に2つのレンズアレイを配置して基板に固定すると、上記したような温度シフトによって2つのレンズアレイ同士の相対位置が変化し、光学性能が劣化してしまうおそれがある。また、一般に画像読取光学系は、光学系の光軸方向前後に絞りや遮光部材が設けられるが、熱膨張または熱収縮によりレンズアレイとのずれが発生して光学性能を劣化させてしまう原因となっていた。
【0008】
また、主走査方向に長い被写体(例えば幅の広い原稿)を読み取るためには、長いラインセンサとそれに対応した長尺の光学系(レンズアレイ)を用いることが必要となるが、長尺の光学系を精度良く製造することは非常に困難である。そこで、製造精度が確保できる程度に長尺の光学系を長手方向に複数配列することで対応は可能であるが、光学的な性能が確保できるように個々の光学系の熱膨張や熱収縮を考慮して配置の位置決めを行う必要がある。しかし、従来の光学系においてはこの点に配慮した構成は提案されていなかった。
そのため本発明においては、熱膨張または熱収縮によって光学性能が低下することを防止可能な画像読取光学系ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る画像読取光学系ユニットは、筐体と、光軸に沿って配列された第1光学部材及び第2光学部材とを含んでなる画像読取光学系ユニットであって、前記第1光学部材及び前記第2光学部材は、前記光軸に直交する直線上に光学要素がアレイ状に配列されてなると共に、
前記筐体に対して前記第1光学部材及び前記第2光学部材を位置決めする複数の位置決め手段を備えており、
前記第1光学部材及び前記第2光学部材は、前記光軸に直交する直線上に長尺のレンズアレイが所定の間隔をもって複数配列されたレンズアレイ列であり、前記レンズアレイ列が備える前記レンズアレイの各々において前記複数の位置決め手段のうち前記光軸と平行で且つ該複数の位置決め手段が設けられた前記第1光学部材及び前記第2光学部材の中心を
前記光軸に沿って通る中心線に最も近いもの若しくは前記中心
線上のものは前記光軸と直交する長手方向への変位を規制し、その他のものは前記長手方向への変位を許容する形状としたことを特徴とする。
また前記第1光学部材及び前記第2光学部材に設けられ、前記筐体に対して位置決めされた遮光部材を更に備え、前記第1光学部材及び前記第2光学部材間に設けられた前記複数の位置決め手段のうち、前記遮光部材に最も近いものは前記光軸に沿った方向への変位を規制し、その他のものは前記光軸に沿った方向への変位を許容する形状としてもよい。
【0010】
本発明によれば、位置決め手段によって筐体、該筐体に収容又は搭載される第1光学部材及び第2光学部材などの画像読取光学系の構成要素間における相対的な位置関係を規制することができる。特に、中心線に最も近いもの若しくは中心軸上に設けられた位置決め手段によって長手方向への変位を規制しつつ、その他に設けられた位置決め手段によって長手方向への変位を許容することで、光学系の使用環境における気温の変化等によって熱膨張または熱収縮による画像読取光学系の光学性能の低下を防止することができる。
【0011】
本発明の一態様では、前記位置決め手段は一対の突起部と孔部とから構成され、前記第1光学部材及び前記第2光学部材が前記筐体に対して位置決めされる。この態様によれば、第1光学部材及び第2光学部材などの画像読取光学系を構成する各部材を筐体に対して位置決め固定しつつ、光学系の使用環境における気温の変化等によって熱膨張または熱収縮による画像読取光学系の光学性能の低下を防止することができる。
【0012】
また他の態様では、前記位置決め手段は一対の突起部と孔部とから構成され、前記第1光学部材及び前記第2光学部材の一方に対して他方が位置決めされてもよい。この場合、第1光学部材及び第2光学部材の相対的位置関係を規定しつつ、光学系の使用環境における気温の変化等によって熱膨張または熱収縮による画像読取光学系の光学性能の低下を防止できる。
【0013】
更に他の態様では、前記第1光学部材及び前記第2光学部材と共に前記光軸に沿って配列され、前記第1光学部材及び前記第2光学部材間に前記光軸に直交する直線上に延在するように設けられた絞りを更に備え、前記位置決め手段は一対の突起部と孔部とから構成され、前記第1光学部材及び前記第2光学部材が前記絞りに対して位置決めされてもよい。この場合、絞りに対して第1光学部材及び第2光学部材の相対的位置関係を規定しつつ、光学系の使用環境における気温の変化等によって熱膨張または熱収縮による画像読取光学系の光学性能の低下を防止できる。
【0014】
前記第1光学部材は、物体側に設けられ、光軸に直交する直線上に長尺の第1レンズアレイが複数配列された第1レンズアレイ列であり、前記第2光学部材は、結像側に設けられ、前記第1レンズアレイ列に対応して、前記光軸に直交する直線上に長尺の第2レンズアレイが複数配列された第2レンズアレイ列であり、前記第1レンズアレイ列および前記第2レンズアレイ列を前記筐体に押圧する押圧部材を更に備え、前記位置決め手段は、前記第1レンズアレイまたは前記第2レンズアレイと、前記筐体とのうち一方に設けられた複数の突起部と、他方に設けられ前記突起部が挿入される複数の孔部とを有し、各々のレンズアレイにて、前記複数の孔部のうち、前記光軸に平行で且つレンズアレイ列の中心を通る中心軸に最も近い孔部若しくは前記中心軸上の孔部を、前記レンズアレイの長手方向への前記突起部の変位を規制する形状の長手方向基点とし、該長手方向基点より前記中心軸から離れている孔部を、前記長手方向への前記突起部の変位を許容する形状としてもよい。
【0015】
このように、位置決め手段の複数の孔部のうち、中心軸に最も近い孔部若しくは中心軸上の孔部を、挿入された突起部の長手方向への変位を規制する形状の長手方向基点とし、且つ、長手方向基点より中心軸から離れている孔部を、長手方向への突起部の変位を許容する形状としてもよい。これにより、光学系の使用環境における気温の変化等によって、レンズアレイが熱膨張または熱収縮した場合であっても、長手方向基点の孔部でレンズアレイの一方を固定しつつ、他の孔部内で突起部をスライドさせることによりレンズアレイの温度シフトを吸収可能である。したがって、基板に固定されることによるレンズアレイの歪みや変形を防止可能となる。これに加えて、長手方向基点により隣り合うレンズアレイ間の間隔を適切に設定可能であるため、レンズアレイ同士の応力をもった接触を防ぐことができ、レンズアレイの歪みや変形を防止可能となる。このように、レンズアレイの歪みや変形を防止可能であるため、熱膨張または熱収縮による画像読取光学系の光学性能の低下を防止できる。
【0016】
さらに、全てのレンズアレイにおいて、長手方向基点を中心軸側に設定しているため、中心軸に対するレンズアレイの温度シフト量を最小限に抑えることができ、画像読取光学系の光学性能の低下を防止できる。
なお、本態様において、孔部は、凹部であってもよいし、貫通孔であってもよい。
【0017】
また、各々のレンズアレイにて、前記複数の孔部のうち前記光軸に直交した同一直線上に位置する2以上の孔部を、前記突起部の光軸方向への変位を規制する光軸方向基点とし、複数の前記第1レンズアレイまたは複数の前記第2レンズアレイにて、前記光軸方向基点の光軸方向位置を一致させた構成とすることが好ましい。
【0018】
このように、複数の孔部のうち、光軸に直交した同一直線上に位置する2以上の孔部を、挿入された突起部の光軸方向への変位を規制する光軸方向基点とすることで、第1レンズアレイ列と第2レンズアレイ列との距離、第1レンズアレイ列と物体との距離、あるいは第2レンズアレイ列と結像面との距離を適切に設定することができ、光学性能を高く維持できる。さらに、複数の第1レンズアレイまたは複数の第2レンズアレイにおいて、光軸方向基点の光軸方向位置を一致させることにより、熱膨張または熱収縮による温度シフト方向を全て同一方向とすることができ、上記したような距離の設定を精度よく行える。また、光軸方向基点は、光軸に直交した同一直線上に位置する2以上の孔部としているため、長尺のレンズアレイであっても光軸方向基点を確実に固定できる。
【0019】
また、前記突起部が前記レンズアレイに設けられ、前記孔部が前記基板に設けられた前記位置決め手段であって、前記突起部はその基部に段差面を有し、前記孔部の周囲と前記突起部の前記段差面とが当接することにより前記レンズアレイが前記基板上に保持されるようにし、前記突起部および前記孔部はそれぞれ、一つのレンズアレイにつき一直線上に位置しない少なくとも3箇所に設けられていることが好ましい。
このように、突起部および孔部がそれぞれ、一直線上に位置しない少なくとも3箇所に設けられていることにより、孔部の周囲と突起部の段差面とが少なくとも3箇所で当接することとなり、基板に対してレンズアレイを確実に水平に保持することができる。ここで、基板に対してレンズアレイを水平に当接させるためには、上記したように基板とレンズアレイとの当接点が3箇所以上であることと、さらに突起部の段差面が基板に対して水平であることが重要となるが、後者に関しては、レンズアレイ成形時に金型で水平出しを調整可能であるため、精度よく水平を保つことができる。
【0020】
さらに、複数の前記第1レンズアレイ列または複数の前記第2レンズアレイ列にて、前記中心軸を中心として両側の前記突起部および前記孔部が線対称に配置されていることが好ましい。
このように、突起部および孔部が線対称に配置されていることにより、中心軸を中心として両側への温度シフト量がほぼ同一となり、光学性能を高く維持することが可能となる。
【0021】
さらにまた、前記第1レンズアレイ列と前記第2レンズアレイ列との間に、これらのレンズアレイ列に対応して、前記基板に保持される複数の遮光部材が配設され、前記遮光部材と前記基板とのうち一方に設けられた複数の突起部と、他方に設けられた複数の孔部とを含む位置決め手段を有し、前記複数の孔部のうち、前記中心軸に最も近い孔部若しくは前記中心軸上の孔部を、前記長手方向への前記突起部の変位を規制する形状の長手方向基点とし、該長手方向基点より前記中心軸から離れている孔部を、前記長手方向への前記突起部の変位を許容する形状とすることが好ましい。
【0022】
このように、第1レンズアレイ列と第2レンズアレイ列との間に配設される複数の遮光部材が、レンズアレイと同様の位置決め手段を有していることにより、熱膨張または熱収縮時に、遮光部材は第1レンズアレイおよび第2レンズアレイとほぼ同様の温度シフトを示すため、遮光部材とレンズアレイとのずれによる光学性能の低下を最小限に抑えることが可能となる。なお、遮光部材は、遮光機能に加えて絞り機能を有する構造としてもよい。
【0023】
また、前記位置決め手段は、前記第1光学部材及び前記第2光学部材の一方に対して他方を位置決めするように、前記一方に設けられた複数の突起部と、前記他方に設けられ前記突起部が挿入される複数の孔部とを有し、各々の光学部材にて、前記複数の孔部のうち、前記光軸に平行で且つ光学部材の中心を通る中心軸上の孔部を、前記光学部材の長手方向への前記突起部の変位を規制する形状の長手方向基点とし、該長手方向基点より前記中心軸から離れている孔部を、前記長手方向への前記突起部の変位を許容する形状としてもよい。
【0024】
この場合、位置決め手段が画像読取光学系を構成する第1光学部材及び第2光学部材に設けられている。該位置決め手段はそれぞれの光学部材に設けられた複数の突起部及び孔部からなり、複数の孔部のうち、中心軸上の孔部を挿入された突起部の長手方向への変位を規制する形状の長手方向基点とし、且つ、長手方向基点より中心軸から離れている孔部を、長手方向への前記突起部の変位を許容する形状としている。これにより、光学系の使用環境における気温の変化等によって、第1光学部材又は第2光学部材が熱膨張または熱収縮した場合であっても、長手方向基点の孔部で一方の光学部材を固定しつつ、他方の光学部材に設けられた孔部内で突起部をスライドさせることによりこれらの光学部材の温度シフトを吸収可能である。したがって、画像読取光学系を共に構成する第1光学部材及び第2光学部材の相対的位置関係を規制することによって歪みや変形を防止可能であるため、熱膨張または熱収縮による画像読取光学系の光学性能の低下を防止できる。
【0025】
さらに、全ての光学部材において、長手方向基点を中心軸上に設定しているため、中心軸に対するレンズアレイの温度シフト量を最小限に抑えることができ、画像読取光学系の光学性能の低下を防止できる。
なお、本態様において、孔部は、凹部であってもよいし、貫通孔であってもよい。
【0026】
さらに、前記第1光学部材及び前記第2光学部材の少なくとも一方は、前記光軸に直交する直線上に長尺のレンズアレイが複数配列されたレンズアレイ列であることが好ましい。また、前記第1光学部材及び前記第2光学部材の一方は前記光軸に直交する直線上に長尺のレンズアレイが複数配列されたレンズアレイ列であり、他方は該レンズアレイ列に対応して形成された遮光部材であってもよい。
【0027】
このように第1光学部材及び第2光学部材は、例えばレンズアレイ列や、該レンズアレイ列の入射光又は出射光を規制する遮光部材であり、更には各種光学部材間の距離を調整するためのスペーサであってもよく、当該画像読取光学系を構成する各種部材に適用可能である。
【0028】
さらに、前記突起部はその基部に段差面を有し、前記孔部の周囲と前記突起部の前記段差面とが当接することにより前記第1光学部材及び前記第2光学部材の一方に対して他方を位置決めされるようにし、前記突起部及び前記孔部はそれぞれ、一つの光学部材につき一直線上に位置しない少なくとも3箇所に設けられていることが好ましい。
このように、突起部および孔部がそれぞれ、一直線上に位置しない少なくとも3箇所に設けられていることにより、孔部の周囲と突起部の段差面とが少なくとも3箇所で当接することとなり、第1光学部材及び第2光学部材間の相対的位置関係を確実に保持することができる。ここで、光学部材間を確実に当接させるためには、上記したように光学部材間の当接点が3箇所以上であることと、さらに一方に設けられた突起部の段差面が他方に対して平行であることが重要となるが、後者に関しては、各光学部材成形時に金型で平行出しを調整可能であるため、精度よく平行を保つことができる。
【0029】
さらにまた、前記複数の突起部及び孔部は、前記中心軸を中心として線対称に配置されていることが好ましい。
このように、突起部および孔部が線対称に配置されていることにより、中心軸を中心として両側への温度シフト量がほぼ同一となり、光学性能を高く維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、位置決め手段によって筐体、該筐体に収容又は搭載される第1光学部材及び第2光学部材などの画像読取光学系の構成要素間における相対的な位置関係を規制することができる。特に、中心線に最も近いもの若しくは中心軸上に設けられた位置決め手段によって長手方向への変位を規制しつつ、その他に設けられた位置決め手段によって長手方向への変位を許容することで、光学系の使用環境における気温の変化等によって熱膨張または熱収縮による画像読取光学系の光学性能の低下を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の形状等は、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
最初に、
図1乃至
図3を参照して、本発明の実施形態に係る画像読取光学系ユニットとその固定構造を含む全体構成を説明する。ここで、
図1は本発明の実施形態に係る画像読取光学系ユニットの全体構成を示す分解斜視図で、
図2は本発明の実施形態に係る画像読取光学系ユニットの斜視図で、
図3は本発明の実施形態に係る画像読取光学系ユニットの側断面図である。
【0033】
画像読取光学系は、原稿(物体)の画像情報をラインセンサ(結像面)上に結像させるものであり、主として、第1レンズアレイ11と、第2レンズアレイ12とを有する。なお、本実施形態では、第1レンズアレイ11と第2レンズアレイ12とが光軸方向にそれぞれ一列ずつ存在する光学系について説明しているが、本実施形態は、レンズアレイ列が光軸方向に3列以上存在する場合も含むものである。
【0034】
第1レンズアレイ11は、複数のレンズが一列に配列され、プラスチック材料で一体成形された長尺形状を有している。この第1レンズアレイ11は、原稿側に設けられ、光軸に直交する直線上に複数配列されて第1レンズアレイ列を形成している。このとき、各第1レンズアレイ11は、その長手方向が光軸に直交する直線に沿うように配置されており、且つ隣り合う第1レンズアレイ11同士が所定の間隔をもって配置されている。
第2レンズアレイ12は、複数のレンズが並行に配列され、プラスチック材料で一体成形された長尺形状を有している。この第2レンズアレイ12は、ラインセンサ側に設けられ、第1レンズアレイ11に対応して、光軸に直交する直線上に複数配列されて第2レンズアレイ列を形成している。このとき、各第2レンズアレイ12は、その長手方向が光軸に直交する直線に沿うように配置されており、且つ隣り合う第2レンズアレイ12同士が所定の間隔をもって配置されている。
第1レンズアレイ列と第2レンズアレイ列との間には空間が存在している。
【0035】
また、画像読取光学系は、第1レンズアレイ列と第2レンズアレイ列との間に、長尺の第1遮光部材13が配置されていてもよい。この第1遮光部材13は、第1レンズアレイ11の一つのレンズ内を進行する光が、このレンズとは同軸上にない第2レンズアレイ12のレンズ内に入射することを防止するための遮光機能(すなわち、隣接するレンズからの迷光の入射を防止する絞り開口)を有する。さらに、第1遮光部材13は、遮光機能に加えて、長手方向に複数の開口絞りが設けられることにより絞り機能を有している。このように第1遮光部材13を絞り機能と遮光機能とを同時に達成しうる部材とすることで光軸方向の長さを短くできる。この第1遮光部材13は、光軸に直交する直線上に複数設けられていてもよく、この場合、第1レンズアレイ列および第2レンズアレイ列に対応して配列されていることが好ましい。
さらに、画像読取光学系は、第2レンズアレイ列のセンサ側に、長尺の第2遮光部財14が配置されていてもよい。この第2遮光部材14の構成は、上記した第1遮光部材13の構成と同一であるため説明を省略する。第1遮光部材13および第2遮光部材14は、例えばプラスチック材料で形成される。
【0036】
次いで、本実施形態に係る画像読取光学系の固定構造を説明する。
この固定構造は、基板であるベースプレート21と、押圧部材である板バネ22と、板バネ22の上面を覆う上部プレート23と、第2遮光部材14のセンサ側前面を覆う前面プレート24と、ベースプレート21に対して第1レンズアレイ11および第2レンズアレイ12を位置決めする位置決め手段とを有する。尚、ベースプレート21、上部プレート23、前面プレート24は、画像読取光学系ユニットの筐体の一部を構成する部材であり、本実施形態では筐体の全体構造については図示を省略している。
【0037】
ベースプレート21は、第1レンズアレイ11と第1遮光部材13と第2レンズアレイ12の一面側がそれぞれ当接される平板状の底面部21aと、その長手方向両端に立設された側面部21bとを含む。なお、第2遮光部材14は、ベースプレート21のセンサ側前面に固定される。
板バネ22は、第1レンズアレイ11および第2レンズアレイ12をベースプレート21に押圧する。具体的には、板バネ22は、平板部22aと、平板部22aの複数個所に設けられたバネ部22bとを含む。そして、レンズアレイ11、12を複数個所でベースプレート22側へ押圧するようになっている。
【0038】
上面プレート23は、板バネ22をレンズアレイ11、12方向へ向けて押さえ付けた状態で固定し、板バネ22のバネ部22bに押圧力を発生させるものである。この上面プレート24は、ネジ等の締結手段によってベースプレート21に固定される。
前面プレート24は、第2遮光部材14のセンサ側を覆うものであり、第2遮光部材14の開口絞り配列に沿って長尺のスリットが設けられている。
【0039】
位置決め手段は、第1レンズアレイ11または第2レンズアレイ12と、ベースプレート21とのうち一方に設けられた複数の突起部31と、他方に設けられ突起部31が挿入される複数の孔部32とを有する。
図1には一例として、レンズアレイ11、12に突起部31を設け、ベースプレート21に孔部32を設けた場合を示している。なお、孔部32は、凹部であってもよいし、貫通孔であってもよい。
さらに位置決め手段は、主として、各々のレンズアレイ11、12にて、複数の孔部32のうち、光軸に平行で且つレンズアレイ列の中心を通る中心軸Oに最も近い孔部若しくは中心軸O上の孔部32aを、レンズアレイ11、12の長手方向への突起部31の変位を規制する形状の長手方向基点Mとし、この長手方向基点Mより中心軸Oから離れている孔部32bを、長手方向への突起部31の変位を許容する形状としている。
【0040】
これにより、画像読取装置の使用環境における気温の変化等によって、レンズアレイ11、12が熱膨張または熱収縮した場合であっても、長手方向基点Mの孔部でレンズアレイ11、12の一方を固定しつつ、他の孔部内で突起部のスライドを許容することによりレンズアレイ11、12の温度シフトを吸収可能である。したがって、ベースプレート21に固定されることによるレンズアレイ11、12の歪みや変形を防止可能となる。これに加えて、長手方向基点により隣り合うレンズアレイ11、11(または12、12)間の間隔を適切に設定可能であるため、レンズアレイ同士の応力をもった接触を防ぐことができ、レンズアレイ11、12の歪みや変形を防止可能となる。このように、レンズアレイ11、12の歪みや変形を防止可能であるため、熱膨張または熱収縮による画像読取光学系の光学性能の低下を防止できる。
【0041】
さらに、全てのレンズアレイ11、12において、長手方向基点を中心軸O側に設定しているため、中心軸Oに対するレンズアレイ11、12の温度シフト量を最小限に抑えることができ、画像読取光学系の光学性能の低下を防止できる。
【0042】
また、本実施形態に示す位置決め手段は、以下の構成を備えていてもよい。
各々のレンズアレイ11、12にて、これに対応する複数の孔部32のうち光軸に直交した同一直線上に位置する2以上の孔部を、光軸方向への突起部31の変位を規制する形状の光軸方向基点Nとし、複数の第1レンズアレイ11または複数の第2レンズアレイ12にて、光軸方向基点Nの光軸方向位置を一致させた構成とすることが好ましい。
【0043】
このように、複数の孔部32のうち、光軸に直交した同一直線上に位置する2以上の孔部32を、光軸方向への突起部31の変位を規制する形状の光軸方向基点Nとすることで、第1レンズアレイ列と第2レンズアレイ列との距離、第1レンズアレイ列と物体との距離、あるいは第2レンズアレイ列とセンサとの距離を適切に設定することができ、光学性能を高く維持できる。さらに、複数の第1レンズアレイ11または複数の第2レンズアレイ12において、光軸方向基点Nの光軸方向位置を一致させることにより、熱膨張または熱収縮による温度シフト方向を全て同一方向とすることができ、上記したような距離の設定を精度よく行える。また、光軸方向基点Nは、光軸に直交した同一直線上に位置する2以上の孔部32としているため、長尺のレンズアレイ11、12であっても光軸方向基点Nを確実に固定できる。
【0044】
また、
図4に示すように、第1レンズアレイ列および第2レンズアレイ列をベースプレート21に水平に保持する構成とすることが好ましい。
図4は本実施形態における3点支持による水平保持構造を説明する図であり、(A)はレンズアレイの斜視図で、(B)はレンズアレイの側面図で、(C)はレンズアレイの底面図で、(D)は突起部の拡大図である(
図4(B)のL拡大図、I拡大図、K拡大図)。
図4の(A)〜(C)に示すように、突起部31e、31f、31gは第1レンズアレイ11に設けられ、孔部(図示略)はベースプレート21に設けられる。具体的には、突起部31eは、第1レンズアレイ11の光軸方向の一側端部で且つ長手方向の中央部に設けられ、突起部31fは、第1レンズアレイ11の光軸方向の他側端部で且つ長手方向の一側端部に設けられ、突起部31gは、第1レンズアレイ11の光軸方向の他側端部で且つ長手方向の他側端部に設けられている。
【0045】
また、
図4(D)に示すように、各突起部31e、31f、31gは、第1レンズアレイ11と一体成形されており、さらに、突起部31e、31f、31gの基部に、レンズアレイ底面に平行な段差面310e、310f、310gがそれぞれ設けられている。この段差面の径は、これに対応する孔部より大きいものとする。そして、この突起部の段差面310e、310f、310gと、孔部の周囲とが当接することにより第1レンズアレイ11がベースプレート21上に保持されるようになっている。さらに、突起部31e、31f、31gおよび孔部はそれぞれ、一つのレンズアレイにつき一直線上に位置しない少なくとも3箇所に設けられている。
【0046】
このように、突起部31e、31f、31gおよび孔部がそれぞれ、一直線上に位置しない少なくとも3箇所に設けられていることにより、孔部の周囲と突起部の段差面310e、310f、310gとが少なくとも3箇所で当接することとなり、ベースプレート21に対して第1レンズアレイ11を確実に水平に保持することができる。ここで、ベースプレート21に対して第1レンズアレイ11を水平に当接させるためには、上記したようにベースプレート21と第1レンズアレイ11との当接面が3箇所以上であることと、さらに突起部の段差面310e、310f、310gがベースプレート21に対して水平であることが重要となるが、後者に関しては、レンズアレイ成形時に金型で水平出しを調整可能であるため、精度よく水平を保つことができる。なお、第2レンズアレイ12または第1遮光部材13においても、上記と同様の構成を採用することができる。
【0047】
さらに、複数の第1レンズアレイ列または複数の第2レンズアレイ列にて、中心軸Oを中心として両側の突起部31および孔部32が線対称に配置されていることが好ましい。
このように、突起部31および孔部32が線対称に配置されていることにより、中心軸Oを中心として第1レンズアレイ列、第2レンズアレイ列の両側への温度シフト量が同一となり、光学性能を高く維持することが可能となる。
【0048】
以下の第1実施形態および第2実施形態において、位置決め手段の具体的構成例を詳細に説明する。
【0049】
(第1実施形態)
図5乃至
図7を参照して、本発明の第1実施形態に係る固定構造における位置決め手段の配置を説明する。本第1実施形態は、一列に偶数個のレンズアレイが配列されている場合を示している。
図5は、第1実施形態に係る画像読取光学系ユニットの全体構成を示す図である。
同図に示すように、画像読取光学系は、1列に2個配置された第1レンズアレイ11と、1列に2個配置された第2レンズアレイ12と、第1レンズアレイ11と第2レンズアレイ12の間に配置された第1遮光部材13と、第1レンズアレイ11のセンサ側前面に配置された第2遮光部材14とを有する。
一方、固定構造は、ベースプレート21と、突起部31および孔部32を含む位置決め手段とを有する。なお、ここでは、
図1に示した板バネ22、上部プレート23、前面プレート24は省略している。
【0050】
図6は、第1実施形態に係り、一列に偶数個のレンズアレイが配列されている場合における位置決め手段の配置を示す図である。
図6(A)はベースプレートと第1レンズアレイとをそれぞれ示す平面図で、(B)はレンズアレイの組み込み図で、(C)は(B)のA−A線断面図である。なお、ここではレンズアレイとして第1レンズアレイ11を例示しているが、第2レンズアレイ12も同様の構成を有することが好ましい。
【0051】
図6(A)に示すように、第1レンズアレイ11には、それぞれ2個の突起部31a、31bが設けられている。突起部31aは中心軸O側の隅部に位置し、突起部31bは中心軸Oから離れた隅部に位置している。これらの突起部31a、31bは、光軸に直交する同一直線上に配置されている。
一方、ベースプレート21には、対応する第1レンズアレイ11ごとにそれぞれ2個の孔部32a、32bが設けられている。孔部32aは中心軸O側に位置し、孔部32bは中心軸Oから離れた隅部に位置している。これらの孔部32a、32bは、光軸に直交する同一直線上に配置されている。
【0052】
また、孔部32aは、挿入される突起部31aのレンズアレイの長手方向への変位を規制する形状を有しているため、長手方向基点Mとなる。同時に孔部32a、32bは、それぞれ突起部31a、31bの光軸方向への変位を規制する形状を有しているため、光軸方向基点Nとなる。具体的に孔部32aは、突起部31aとの間に隙間が殆ど形成されない丸孔形状を有している。
ここで、長手方向基点Mとは、レンズアレイが熱膨張または熱収縮した際に長手方向の基点となる位置であり、ここを基点として他の端部が長手方向に温度シフトする。光軸方向基点Nとは、レンズアレイが熱膨張または熱収縮した際に光軸方向の基点となる位置であり、ここを基点として他の端部が光軸方向に温度シフトする。
孔部32bは、長手方向への突起部31bの変位を許容する形状を有している。同時に、孔部32bは、突起部31bの光軸方向への変位を規制する形状を有しているため、光軸方向基点Nとなる。具体的には、孔部32bは、長手方向に長尺な長孔形状を有している。
【0053】
図6(C)に示すように第1レンズアレイ11をベースプレート21に組み込んだとき、
図6(B)に示す組み込み図の状態となる。この状態において、第1レンズアレイ11は膨張時、図中、矢印X、Y方向に温度シフト可能となる。
上記したような孔部32a、32bを有することにより、第1レンズアレイ11が熱膨張または熱収縮した場合であっても、第1レンズアレイ11の歪みや変形を防止可能であり、画像読取光学系の光学性能の低下を防止できる。
【0054】
図7は、
図6に示した位置決め手段の配置の変形例を示す図である。
図7(A)はレンズアレイの組み込み図で、(B)は(A)のA−A線断面図である。
同図に示す変形例では、
図6とは逆に、第1レンズアレイ11に2個の凹状の孔部32c、32dを設け、ベースプレート21に2個の突起部31c、31dを設けている。他の構成は
図6と同一であり、上記と同様の効果が得られる。
【0055】
(第2実施形態)
本第2実施形態は、一列に奇数個のレンズアレイが配列されている場合を示している。なお、第2実施形態における全体構成は、
図1と同一であるため説明を省略する。
図8は、第2実施形態に係り、一列に奇数個のレンズアレイが配列されている場合における位置決め手段の配置を示す図である。
図8(A)はベースプレートと第1レンズアレイとをそれぞれ示す平面図で、(B)はレンズアレイの組み込み図で、(C)は(B)のA−A線断面図で、(D)は(B)のB−B線断面図である。なお、ここではレンズアレイとして第1レンズアレイ11を例示しているが、第2レンズアレイ12も同様の構成を有することが好ましい。
【0056】
図8(A)に示すように、中心軸O上に位置する第1レンズアレイ11には3個の突起部31h、31i、31jが設けられ、同様に、中心軸Oより外側の第1レンズアレイ11にも、それぞれ3個の突起部31k、31l、31mが設けられている。一のレンズアレイ内で、突起部31h、31mは、光軸方向の一側端部で且つ長手方向の中央部に位置し、突起部31i、31lは、光軸方向の他側端部で且つ長手方向の一側端部に位置し、突起部31j、31kは、光軸方向の他側端部で且つ長手方向の他側端部に位置している。また、突起部31i、31j、31k、31lは、光軸に直交する同一直線上に配置されている。
一方、ベースプレート21には、対応する第1レンズアレイ11ごとにそれぞれ3個の孔部32h、32i、32jまたは孔部32k、32l、32mが設けられている。それぞれの孔部は、突起部に対応して設けられている。
【0057】
中心軸O上に配置される第1レンズアレイ11、すなわち第1レンズアレイ列の中央に位置する第1レンズアレイ11において、孔部32hは、レンズアレイの長手方向への突起部31hの変位を規制する形状を有しているため、長手方向基点Mとなる。さらに孔部32hは、光軸方向への突起部の変位を許容する形状を有している。具体的には、孔部32hは、光軸方向に長尺な長孔形状を有している。
孔部32i、32jは、長手方向への突起部31i、31jの変位を許容する形状を有している。同時に、孔部32i、32jは、突起部31i、31jの光軸方向への変位を規制する形状を有しているため、光軸方向基点Nとなる。具体的には、孔部32i、32jは、長手方向に長尺な長孔形状を有している。
【0058】
図8(C)および(D)に示すように第1レンズアレイ11をベースプレート21に組み込んだとき、
図8(B)に示す組み込み図の状態となる。
上記構成を有することにより、中心軸O上に配置される第1レンズアレイ11においては、レンズアレイの熱膨張時、長手方向基点Mおよび光軸方向基点Nを基点として、それぞれ矢印X、Yの方向に温度シフト可能となる。
【0059】
一方、中心軸Oより外側に配置される第1レンズアレイ11においては、孔部32kは、レンズアレイの長手方向への突起部31kの変位を規制する形状を有しているため、長手方向基点Mとなる。同時に孔部32kは、光軸方向への突起部31kの変位を規制する形状を有しているため、光軸方向基点Nとなる。具体的には、孔部32kは、突起部31kとの間に隙間が殆ど形成されない丸孔形状を有している。
孔部32lは、長手方向への突起部31lの変位を許容する形状を有している。同時に、孔部32lは、光軸方向への突起部31lの変位を規制する形状を有しているため、光軸方向基点Nとなる。具体的には、孔部32lは、長手方向に長尺な長孔形状を有している。
孔部32mは、突起部31mがいずれの方向にも変位する大径の丸孔形状を有している。
【0060】
上記構成を有することにより、中心軸Oより外側に配置される第1レンズアレイ11においては、レンズアレイの熱膨張時、長手方向基点Mおよび光軸方向基点Nを基点として、それぞれ矢印X’、Y’の方向に温度シフト可能となる。
上記したような孔部32h〜32mを有することにより、第1レンズアレイ11が熱膨張または熱収縮した場合であっても、第1レンズアレイ11の歪みや変形を防止可能であり、読取光学系の光学性能の低下を防止できる。
【0061】
(第3実施形態)
第3実施形態は、レンズアレイと遮光部材の両方に位置決め手段を設けた場合を示す。
図9は第3実施形態に係り、レンズアレイと遮光部材の両方に位置決め手段を設けた場合における位置決め手段の配置を示す図である。
同図において、第1レンズアレイ11と第2レンズアレイ12の間に配置された第1遮光部材13は、位置決め手段として、複数の突起部33a〜33fと、それに対応してベースプレート21側に複数の孔部34a〜34fとを有している。第1の遮光部材13の位置決め手段は、少なくとも、長手方向基点Mとなる孔部34a、34dを含む。この孔部34a、34dは、挿入される突起部33a、33dの長手方向への変位を規制する形状を有している。一方、この孔部34a、34dとは別の孔部34b、34c、34e、34fは、長手方向への突起部の変位を許容する形状を有している。
ここで、第1の遮光部材13の光軸方向長さが、孔部を光軸方向に異なる位置に配置可能な程度に長い場合には、
図6または
図8に示したように第1レンズアレイ11の孔部配置と同様にしてもよいが、短い場合には、光軸に直交する同一直線上に一列に配置してもよい。
【0062】
また、本実施形態において、光軸方向基点Nはレンズの光学的な特性によって設定される。
図9乃至
図11を用いて、光軸方向基点Nの好適な設定方法を説明する。なお、
図10は
図9に示した位置決め手段の配置の変形例を示す図で、
図11は
図9に示した位置決め手段の配置の他の変形例を示す図である。
【0063】
図9に示す位置決め手段の配置は、物体側を基準としており、第1レンズアレイ11おおび第2レンズアレイ12がセンサ側への伸縮を許容できる場合に適用される。
この場合、第1レンズアレイ11の光軸方向の物体側端部に光軸方向基点Nを位置させている。これにより、レンズアレイが熱膨張または熱収縮した場合であっても、原稿と第1レンズアレイ11との距離を一定に保つことができる。
このとき、第2レンズアレイ12においても、第1レンズアレイ11と同様に、光軸方向の物体側端部に光軸方向基点Nを位置させることが好ましい。これにより、第1レンズアレイ11と第2レンズアレイ12との間隔が大きく変動してしまうことを防止する。
【0064】
図10に示す位置決め手段の配置は、センサ側を基準としており、第1レンズアレイ11および第2レンズアレイ12が物体側への伸縮を許容できる場合に適用される。
この場合、第2レンズアレイ12の光軸方向のセンサ側端部に光軸方向基点Nを位置させる。これにより、レンズアレイが熱膨張または熱収縮した場合であっても、ラインセンサと第2レンズアレイ12との距離を一定に保つことができる。
このとき、第1レンズアレイ11においても、第2レンズアレイ12と同様に、光軸方向の結像側端部に光軸方向基点Nを位置させることが好ましい。これにより、第1レンズアレイ11と第2レンズアレイ12との間隔が大きく変動してしまうことを防止する。
【0065】
図11に示す位置決め手段の配置は、第1遮光部材13を基準としており、この第1遮光部材13を基準として第1レンズアレイ11は物体側、第2レンズアレイ12はセンサ側への伸縮が許容できる場合に適用される。
この場合、第1レンズアレイ11の第1遮光部材13側、および第2レンズアレイ12の第1遮光部材13側に光軸方向基点Nを位置させる。これにより、レンズアレイが熱膨張または熱収縮した場合であっても、第1レンズアレイ11または第2レンズアレイ12と、第1遮光部材13との距離を一定に保つことができる。
上記したように、光軸方向基点Nの光軸方向位置を光学的な特性に応じて適宜設定することで、レンズアレイが熱膨張または熱伸縮した場合であっても、光学性能を確保することが可能となる。
【0066】
次に、第4乃至第8実施形態について説明する。第4乃至第8実施形態では、上述の画像読取光学系ユニットと同様に、基板であるベースプレート21と、押圧部材である板バネ22と、板バネ22の上面を覆う上部プレート23とを有してなり、ベースプレート21と上部プレート23との間に板バネ22を介して、レンズアレイ11、12、遮光部材13、14などの光学部材が挟持されている(
図1を参照)。上述の画像読取光学系ユニットでは、位置決め手段がベースプレート21に対して各光学部材を位置決めするように、ベースプレート21と光学部材の一方に突起部31を設けるとともに、他方に孔部32が設けられている。一方、以下の画像読取光学系ユニットでは、以下に説明するように、位置決め手段を構成する突起部31と孔32は共に、ベースプレート21と上部プレート23との間に板バネ22を介して挟持された光学部材の各々に設けられることにより、光学部材間の位置決めがなされている点で異なる。
尚、以下の説明では、上述の各実施形態と共通する箇所には共通の符号を付すこととし、重複する説明は適宜省略することとする。
(第4実施形態)
【0067】
図12は第4実施形態に係り、レンズアレイ12と遮光部材14との間に設けられた位置決め手段の配置を示す図である。
図12(A)はレンズアレイ12と遮光部材14の互いに対向する面をそれぞれ示す平面図で、(B)はレンズアレイ12と遮光部材14の分離図で、(C)はレンズアレイ12と遮光部材14の組み込み図で、(D)は(C)のA―A線断面図(中心軸Oの垂直断面図)である。
【0068】
図12(A)および(B)に示すように、中心軸O上に位置する第2レンズアレイ12には、遮光部材14と対向する面上に3個の突起部31n、31o、31pが設けられている。突起部31nは、水平面直交方向の一側端部で且つ長手方向の中央部に位置し、突起部31oは、水平面直交方向の他側端部で且つ長手方向の一側端部に位置し、突起部31pは、水平面直交方向の他側端部で且つ長手方向の他側端部に位置している。また、突起部31o、31pは、光軸に直交する同一直線上に配置されている。
一方、遮光部材14には、対応する第2レンズアレイ12ごとに3個の孔部32n、32o、32pが設けられている。それぞれの孔部は、突起部31n、31o、31pに対応して設けられている。
【0069】
遮光部材14に設けられた孔部32nは、レンズアレイの長手方向への突起部31nの変位を規制する形状を有しているため、長手方向基点Mとなる。さらに孔部32nは、水平面直交方向への突起部の変位を許容する形状を有している。具体的には、孔部32nは、水平面直交方向に長尺な長孔形状を有している。
孔部32o、32pは、長手方向への突起部31o、31pの変位を許容する形状を有しているため、水平面直交方向基点Nとなる。具体的には、孔部32o、32pは、長手方向に長尺な長孔形状を有している。
【0070】
第2レンズアレイ12を遮光部材と組み込むと、
図12(C)および(D)に示す状態となる。
上記構成を有することにより、中心軸O上に配置される第2レンズアレイ12においては、レンズアレイの熱膨張時、長手方向基点Mおよび光軸方向基点Nを基点として、それぞれ矢印X、Zの方向に温度シフト可能となる。このように、上記したような位置決め手段を有することにより、第2レンズアレイ12が熱膨張または熱収縮した場合であっても、第2レンズアレイ12の歪みや変形を防止可能であり、読取光学系の光学性能の低下を防止できる。
(第5実施形態)
【0071】
図13は第5実施形態に係り、レンズアレイ11とスペーサ部材15との間に設けられた位置決め手段の配置を示す図である。なお、スペーサ部材15は
図1等には示されていないが、画像読取光学系の設計変更の一例として、単に遮光機能のみを有する遮光部材13に代えて、遮光機能に加えて、第1及び第2レンズアレイ11および12間の間隔を調整する機能も兼用して挿入される光学部材である。
図13(A)はレンズアレイ11とスペーサ部材15の互いに対向する面をそれぞれ示す平面図で、(B)はレンズアレイ11とスペーサ部材15の分離図で(参考に第2レンズアレイ12も同図に示してある)、(C)は(B)においてレンズアレイ11とスペーサ部材15を組み込んだ際の、A―A線断面図(中心軸Oの垂直断面図)である。
【0072】
第5実施形態では、レンズアレイ11に突起部31q、31r、31sを設けると共に、スペーサ部材15に孔部32q、32r、32sを設けることによって、互いに隣接する光学部材であるレンズアレイ11とスペーサ部材15との間で相対的位置関係を保持することができる。ここで突起部31q、31r、31sと孔部32q、32r、32sとは、第4実施形態にて説明したように互いに対応するように設けられている。特に、孔部32qは長手方向基点Mとして機能すると共に、水平面直交方向への突起部の変位を許容する長孔形状を有している。一方、孔部32r、32sは、長手方向への突起部31r、31sの変位を許容する長孔形状を有しており、水平面直交方向基点Nとして機能する。
【0073】
なお、
図13(A)および(B)では図示を省略しているが、レンズアレイ12のスペーサ部材15に面する側にも、レンズアレイ11に設けられた突起部31q、31r、31sと同様の突起部が3箇所に設けられており、対応する3個の孔部32q、32r、32sに組み込まれることによって、レンズアレイ12およびスペーサ部材15間の相対的位置関係も保持される。
【0074】
このように、第5実施形態では、上記したような位置決め手段を有することにより、レンズアレイ11、12およびスペーサ部材15が熱膨張または熱収縮した場合であっても、歪みや変形を防止可能であり、画像読取光学系の光学性能の低下を防止できる。
(第6実施形態)
【0075】
図14は第6実施形態に係り、レンズアレイ11、12間に設けられた位置決め手段の配置を示す図である。つまり本実施形態では、
図1のようにレンズアレイ11,12間に挿入された遮光部材13を省略するように設計変更した場合について、本発明を適用したものである。
図14(A)はレンズアレイ11、12の互いに対向する面をそれぞれ示す平面図で、(B)はレンズアレイ11、12の分離図で、(C)は(B)においてレンズアレイ11、12を組み込んだ際の、A―A線断面図(中心軸Oの垂直断面図)である。
【0076】
第6実施形態では、レンズアレイ11に突起部31t、31u、31vを設けると共に、レンズアレイ12に孔部32t、32u、32vを設けることによって、互いに隣接する光学部材であるレンズアレイ11、12との間で相対的位置関係を保持することができる。ここで突起部31t、31u、31vと孔部32t、32u、32vとは、第4及び第5実施形態にて説明したように互いに対応するように設けられている。特に、孔部32tは長手方向基点Mとして機能すると共に、水平面直交方向への突起部の変位を許容する長孔形状を有している。一方、孔部32u、32vは、長手方向への突起部31u、31vの変位を許容する長孔形状を有しており、水平面直交方向基点Nとして機能する。
【0077】
なお、
図14(B)および(C)に示すように、レンズアレイ11,12の互いに面しない面にも、上記突起部31t、31u、31vおよび孔部32t、32u、32vと同様の構造が設けられている。これにより、
図14では図示を省略しているが、これら突起部や孔部が面する側に配置された部材表面に設けられた、同様の突起部や孔部と組み合わされることにより、相対的位置関係を保持できるようになっている。
【0078】
また、孔部32tは長孔形状の上部が切り欠かれているが、このように切り欠き部を設けることによって、該孔部32tに組み込まれる突起部31tの可動範囲を広げるようにしてもよい。
【0079】
このように、第6実施形態では、上記したような位置決め手段を有することにより、レンズアレイ11、12が熱膨張または熱収縮した場合であっても、歪みや変形を防止可能であり、画像読取光学系の光学性能の低下を防止できる。
(第7実施形態)
【0080】
図15は第7実施形態に係り、遮光部材13を挟持するレンズアレイ11、12間に設けられた位置決め手段の配置を示す図である。
図15(A)はレンズアレイ11、12の互いに対向する面をそれぞれ示す平面図で、(B)はレンズアレイ11、12の分離図で、(C)は(B)においてレンズアレイ11、12を組み込んだ際の、A―A線断面図(中心軸Oの垂直断面図)である。
【0081】
第7実施形態では、レンズアレイ11に突起部31w、31x、31yを設けると共に、レンズアレイ12に孔部32w、32x、32yを設けることによって、互いに隣接する光学部材であるレンズアレイ11、12との間で相対的位置関係を保持することができる。ここで突起部31w、31x、31yと孔部32w、32x、32yとは、第4乃至第6実施形態にて説明したように互いに対応するように設けられている。特に、孔部32wは長手方向基点Mとして機能すると共に、水平面直交方向への突起部の変位を許容する長孔形状を有している。一方、孔部32x、32yは、長手方向への突起部31x、31yの変位を許容する長孔形状を有しており、水平面直交方向基点Nとして機能する。
【0082】
本実施形態では特に、レンズアレイ11、12間に挟持される遮光部材13に、孔部32w´、32x´、32y´が設けられており、レンズアレイ11に設けられた突起部31w、31x、31yは、これら孔部32w´、32x´、32y´を貫通して、レンズアレイ12に設けられた孔部32w、32x、32yに係合するように構成されている。これにより、レンズアレイ11、12に加え、遮光部材13の相対的位置関係も簡易な構造で保持することができる。
(第8実施形態)
【0083】
図16は第8実施形態に係り、レンズアレイ11、12間にスペーサ部材15を挟持するように設けられた位置決め手段の配置を示す図である。第8実施形態は、上記第5実施形態と同様に、レンズアレイ11、12とスペーサ部材15との間に位置決め手段を設けることにより、相対的位置関係を保持している。位置決め手段を構成する突起部31および孔部32は、それぞれレンズユニット11、12に設けてもよいし、スペース部材15側に設けてもよい。
【0084】
ここで、
図16に示すように、孔部32をレンズアレイ11,12の表面から突出させた基部を凹状に形成することで、基部の突出量に応じてレンズアレイ11,12とスペーサ部材15との間の距離を微調整することができる。つまり、レンズアレイ11、12間の距離を微調整できる点で有利である。
【0085】
なお、上記各実施形態では、特定の光学部材の一方に突出部31を設け、他方に孔部32を設けた例を示しているが、逆に一方に孔部32を設け、他方に突出部31を設けてもよいのは言うまでも無い。上記実施形態は一態様を例示するにすぎないので、第1及び第2光学部材としてレンズアレイ、遮光部材、スペーサ部材をそれぞれ用いてもよいし、これ以外に画像読取光学系において用いられる光学部材を広く適用して設計変更してもよい。