(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
走行用の静油圧式無段変速装置の油圧ポンプと油圧モータとを可変容量型に構成し、前記油圧ポンプと前記油圧モータとを高圧側油路及び低圧側油路により接続して、前記油圧ポンプからの作動油が前記高圧側油路を介して前記油圧モータに供給されて前記油圧モータが駆動され、前記油圧モータからの作動油が前記低圧側油路を介して前記油圧ポンプに戻されるように構成し、
人為的に操作されるもので前記油圧ポンプの斜板を操作する変速操作具と、前記油圧モータの斜板を操作する油圧アクチュエータと、前記油圧ポンプを駆動するエンジンにより駆動されるチャージポンプとを備え、
前記チャージポンプは、作動油を前記高圧側油路及び前記低圧側油路にチャージ油路を介して供給し、
前記高圧側油路から分岐した第1パイロット油路を前記油圧アクチュエータに備えた減速操作用の第1油室に接続し、かつ、前記チャージ油路から分岐した第2パイロット油路を前記油圧アクチュエータに備えた増速操作用の第2油室に接続して、前記油圧アクチュエータを、前記第1油室に作用する第1パイロット圧と前記第2油室に作用する第2パイロット圧との圧力差で前記油圧モータの斜板を操作するように構成している作業車。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によると、油圧モータの斜板を操作する油圧シリンダにおいて、油圧シリンダを伸長側(油圧モータの斜板の高速側)に付勢するコイルバネが備えられている。
これにより、油圧シリンダの伸長状態ではコイルバネも伸長しており、油圧シリンダの収縮作動(油圧モータの斜板の低速側)に対するコイルバネの抵抗は小さい。逆に油圧シリンダが収縮作動するとコイルバネが圧縮されるので、油圧シリンダの収縮作動(油圧モータの斜板の低速側)に対するコイルバネの抵抗は大きくなっていく。
【0007】
以上のような特許文献1において、例えば
図5の一点鎖線L1に示すように、通常の走行状態(油圧シリンダが伸長作動して、油圧モータの斜板が最小角度(高速側)に操作されている状態)から上り坂に入って、走行負荷が上昇すると(高圧側油路の圧力が上昇すると)、高圧側油路の圧力が比較的低圧の圧力A1でコイルバネの付勢力に均衡する状態となる(高圧側油路の圧力が比較的早くコイルバネの付勢力に均衡する状態に達する)。
【0008】
この後、走行負荷の上昇に伴って(高圧側油路の圧力が圧力A1から上昇するのに伴って)、油圧シリンダが収縮作動し(油圧シリンダの収縮作動(油圧モータの斜板の低速側)に対するコイルバネの抵抗が小さいことによる)、油圧モータの斜板が低速側に操作されて、機体の走行速度が比較的早く低下する傾向にある。そして、油圧シリンダが収縮作動するのに伴いコイルバネが圧縮されて、コイルバネの付勢力が大きくなっていく。
【0009】
走行負荷が比較的大きく(高圧側油路の圧力が比較的高く)、油圧モータの斜板が低速側に操作されている状態において、さらに走行負荷が大きくなって油圧モータの斜板を低速側に操作する必要が生じた場合、例えば
図5の一点鎖線L1に示すように、油圧モータの斜板が低速側に操作され難い状態であることにより(コイルバネが圧縮されていることにより、油圧シリンダの収縮作動(油圧モータの斜板の低速側)に対するコイルバネの抵抗が大きいことによる)、油圧モータの斜板の低速側への操作が遅れる傾向にある。
これにより、走行負荷が十分に上昇しないと(高圧側油路の圧力が十分な高圧の圧力A4に達しないと)、油圧モータの斜板が最大角度(低速側)に操作されない状態となる。
【0010】
本発明は、走行用として静油圧式無段変速装置を備えた作業車において、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプと油圧モータとを可変容量型に構成した場合、通常の走行状態から走行負荷が上昇しても、ある程度の時間は機体の走行速度を維持して、機体の走行速度があまり早く低下しないように構成することを目的としている。同様に走行負荷が比較的大きな状態において、さらに走行負荷が大きくなった場合、油圧モータの斜板の低速側への操作が遅れないように構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、作業車において次のように構成することにある。
走行用の静油圧式無段変速装置の油圧ポンプと油圧モータとを可変容量型に構成し、前記油圧ポンプと前記油圧モータとを高圧側油路及び低圧側油路により接続して、前記油圧ポンプからの作動油が前記高圧側油路を介して前記油圧モータに供給されて前記油圧モータが駆動され、前記油圧モータからの作動油が前記低圧側油路を介して前記油圧ポンプに戻されるように構成し、
人為的に操作されるもので前記油圧ポンプの斜板を操作する変速操作具と、前記油圧モータの斜板を操作する油圧アクチュエータと、前記油圧ポンプを駆動するエンジンにより駆動され
るチャージポンプとを備え
、
前記チャージポンプは、作動油を前記高圧側油路及び前記低圧側油路にチャージ油路を介して供給し、
前記高圧側油路から分岐した
第1パイロット油路を前記油圧アクチュエータに備えた減速操作用の第1油室に接続し、かつ、前記チャージ油路から分岐した第2パイロット油路を前記油圧アクチュエータに備えた増速操作用の第2油室に接続して、前記油圧アクチュエータを、前記第1油室に作用する第1パイロット圧と前記第2油室に作用する第2パイロット圧との圧力差で前記油圧モータの斜板を操作するよう
に構成している。
【0012】
(作用及び発明の効果)
[I]−1
本発明の第1特徴によると、油圧モータの斜板を操作する油圧アクチュエータを備えた場合、油圧アクチュエータが高圧側油路から分岐した第1パイロット圧により油圧モータの斜板の低速側に作動し、チャージポンプから分岐した第2パイロット圧により油圧モータの斜板の高速側に作動するのであり、第1及び第2パイロット圧が均衡する位置で油圧アクチュエータ(油圧モータの斜板の角度)が停止する。
この場合、チャージポンプは油圧ポンプを駆動するエンジンにより駆動されるので、走行負荷によりエンジンの回転数が変化すると、チャージポンプの回転数が変化し、チャージポンプの吐出圧(第2パイロット圧)も変化する。
【0013】
[I]−2
前項[I]−1に記載の状態において、例えば
図5の実線L2に示すように、通常の走行状態(エンジンの回転数が低下しておらず、油圧モータの斜板が最小角度(高速)に操作されている状態)から上り坂に入る場合、まだエンジンの回転数が低下していないことにより、第2パイロット圧(チャージポンプの吐出圧)が比較的高い状態なので、走行負荷が上昇しても(高圧側油路の圧力が上昇しても)、比較的高圧の第2パイロット圧(チャージポンプの吐出圧)の抵抗によって、油圧アクチュエータは油圧ポンプの斜板の低速側に直ちには作動しない。
【0014】
この後に、走行負荷が十分に上昇することによる第1パイロット圧(高圧側油路の圧力)の上昇、並びに、走行負荷の上昇によるエンジンの回転数の低下に伴う第2パイロット圧(チャージポンプの吐出圧)の低下により、比較的高圧の第1パイロット圧(高圧側油路の圧力)(A2)によって、油圧アクチュエータが油圧ポンプの斜板の低速側に作動する。
これにより、通常の走行状態から走行負荷が上昇する状態となっても、直ちに油圧モータの斜板が低速側に操作されることはなく、ある程度の時間は機体の走行速度を維持することができるようになって、作業車の走行性能を向上させることができた。
【0015】
[I]−3
前項[I]−2に記載の状態の後に、例えば
図5の実線L2に示すように、走行負荷の上昇(高圧側油路の圧力が圧力A2から上昇)、並びに、走行負荷の上昇によるエンジンの回転数の低下に伴う第2パイロット圧(チャージポンプの吐出圧)の低下により、油圧アクチュエータが油圧モータの斜板の低速側に比較的急激に作動するのであり、圧力A2に比較的近い圧力A3の第1パイロット圧(高圧側油路の圧力)によって、油圧アクチュエータが油圧モータの斜板を最大角度(低速)に操作する状態となる。この場合、例えば
図5に示すように、本発明の第1特徴の圧力A3は、特許文献1において油圧モータの斜板が最大角度(低速)となる圧力A4よりも低圧である。
【0016】
これにより、例えば
図5の実線L2に示すように、走行負荷が比較的大きい状態で(高圧側油路の圧力が比較的高い状態で)、油圧モータの斜板が低速側に操作されている状態では、既に大きな走行負荷によりエンジンの回転数が低下して、第2パイロット圧(チャージポンプの吐出圧)も低下していることが多い。
【0017】
前述の状態において、さらに走行負荷が大きくなった場合、第2パイロット圧(チャージポンプの吐出圧)が比較的低いことにより(第2パイロット圧(チャージポンプの吐出圧)の抵抗が小さいことにより)、第1パイロット圧(高圧側油路の圧力)によって油圧アクチュエータは油圧ポンプの斜板の低速側に直ちに作動する。
これにより、走行負荷が比較的大きな状態において、さらに走行負荷が大きくなった場合、油圧モータの斜板の低速側への操作が遅れずに行われるようになって、作業車の走行性能を向上させることができた。
【0018】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の作業車において次のように構成することにある。
前記油圧モータの斜板を高速側に付勢する操作機構を備えている。
【0019】
(作用及び発明の効果)
本発明の第2特徴によると、前項[I]に記載の油圧モータの斜板を操作する油圧アクチュエータとは別に、油圧モータの斜板を高速側に付勢する操作機構を備えている。これにより、前項[I]−2に記載のように、例えば通常の走行状態(エンジンの回転数が低下しておらず、油圧モータの斜板が高速側に操作されている状態)から上り坂に入る場合に、比較的高圧の第2パイロット圧(チャージポンプの吐出圧)に対して操作機構も抵抗として加えられる。
【0020】
従って、通常の走行状態から走行負荷が上昇する状態となった場合、油圧モータの斜板が低速側に操作されることを遅らせることができて(油圧モータの斜板が低速側に操作されに難くすることができて)、特に機体の走行速度を維持することに重点を置いた作業車に適した構造を得ることができた。
【0021】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第2特徴の作業車において次のように構成することにある。
前記低圧側油路から分岐した
第3パイロット油路を前記操作機構に備えた増速操作用の第3油室に接続して、前記操作機構を、前記第3油室に作用する第3パイロット圧により前記油圧モータの斜板を高速側に付勢する
油圧式に構成
している請求項2に記載の作業車。
【0022】
(作用及び発明の効果)
[III]−1
例えば下り坂等において機体の走行速度を抑える為に、変速操作具により油圧ポンプの斜板を低速側(容量(吐出量)の小側)に操作した場合、一般の乗用車のエンジンブレーキに相当するダイナミックブレーキが働くことが多い。
このダイナミックブレーキとは、例えば下り坂等において、地面からの逆駆動力により油圧モータが駆動されると、油圧モータから吐出される作動油により、低圧側油路の圧力が高圧側油路の圧力よりも高圧になって、油圧モータから吐出される作動油(低圧側油路)により油圧ポンプが駆動される状態となる。この状態において油圧ポンプの斜板を低速側(容量(吐出量)の小側)に操作して、油圧ポンプを駆動され難い状態(油圧ポンプを駆動するエンジンを無理に高速で駆動しようとする状態)とすることにより、油圧ポンプの駆動抵抗が大きくなることに基づくものである。
【0023】
しかしながら、前述のようなダイナミックブレーキが働く場合、ダイナミックブレーキが働き過ぎて、機体が急減速するような状態となり、乗り心地が悪くなることがある。この現象は、油圧モータの容量(吐出量)(斜板の角度)と、油圧ポンプの容量(吐出量)(斜板の角度)とに大きな差がある場合に顕著なものとなる。
【0024】
[III]−2
本発明の第3特徴によると、前項[II]に記載の油圧モータの斜板を高速側に付勢する操作機構を、低圧側油路から分岐した第3パイロット圧により油圧モータの斜板を高速側に付勢するように構成している。
これにより、例えば下り坂等において、地面からの逆駆動力により油圧モータが駆動され、油圧モータから吐出される作動油により、低圧側油路の圧力が高圧側油路の圧力よりも高圧になった場合、第3パイロット圧(低圧側油路)により操作機構が油圧モータの斜板を高速側(容量(吐出量)の小側)に操作する。
【0025】
従って、前項[III]−1に記載のように、変速操作具により油圧ポンプの斜板を低速側(容量(吐出量)の小側)に操作しても、これと同様に油圧モータの斜板が高速側(容量(吐出量)の小側)に操作されることにより、油圧モータの容量(吐出量)(斜板の角度)と、油圧ポンプの容量(吐出量)(斜板の角度)との差が抑えられて、ダイナミックブレーキの働きが抑えられる。
これにより、ダイナミックブレーキの働き過ぎが抑えられて、機体が急減速するような状態が少なくなり、乗り心地の悪化を防止することができた。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[1]
図1及び
図2に示すように、農作業や荷物の運搬等を行う多目的車両としての作業車が示されている。機体前後方向に延出される右及び左の主フレーム6の後部に縦フレーム7が連結され、縦フレーム7の上部に機体前後方向に右及び左の上部フレーム8が連結されて機体が構成されており、ダブルウィッシュボーン型式のサスペンション機構(図示せず)を介して、右及び左の前輪1と右及び左の後輪2が支持されている。
【0028】
図1及び
図2に示すように、機体の前部の右及び左の前輪1を覆うボンネット5が備えられ、機体の中央部にキャビン9が備えられて、右及び左の上部フレーム8の後部に横軸芯P1周りに荷台3が上下揺動自在に支持されて、荷台3を昇降駆動する昇降シリンダ4が備えられている。
【0029】
図1及び
図2に示すように、キャビン9に、運転席11及び助手席12が備えられている。運転席11の前方に、右及び左の前輪1の操向操作用のステアリングハンドル13、変速レバー14、ブレーキレバー15、変速ペダル16(変速操作具に相当)及びブレーキペダル17が備えられている。
【0030】
[2]
次に、走行用の伝動系の構造について説明する。
図1及び
図2に示すように、エンジン9、ミッションケース10及び静油圧式無段変速装置18が連結されて一つのユニット状に構成されており、エンジン9が前側に位置するようにユニットが右及び左の主フレーム6の後部に支持されている。右及び左の主フレーム6の前部に前輪デフ機構19が支持されており、ミッションケース10と前輪デフ機構19とに亘って伝動軸20が接続されている。
【0031】
図2に示すように、ミッションケース10の内部に、前進複数段及び後進に切換自在なギヤ変速装置(図示せず)、後輪デフ機構(図示せず)、右及び左の後輪ブレーキ(図示せず)が備えられている。エンジン9の動力が静油圧式無段変速装置18に伝達され、静油圧式無段変速装置18の動力がミッションケース10のギヤ変速装置、後輪デフ機構を介して、右及び左の駆動軸21から右及び左の後輪2に伝達される。ギヤ変速装置の動力が伝動軸20を介して前輪デフ機構19に伝達され、右及び左の駆動軸22を介して右及び左の前輪1に伝達される。
【0032】
図4に示すように、変速ペダル16により静油圧式無段変速装置18及びエンジン9のアクセル操作部9aの操作を行い、変速レバー14によりギヤ変速装置の操作を行う。右及び左の前輪ブレーキ(図示せず)が備えられており、ブレーキペダル17により、右及び左の前輪ブレーキ、右及び左の後輪ブレーキを制動状態に操作する。駐車する場合は、ブレーキレバー15により右及び左の後輪ブレーキを制動状態に操作して保持しておく。
【0033】
[3]
次に、静油圧式無段変速装置18について説明する。
図2,3,4に示すように、下側に油圧ポンプ23が位置し、油圧ポンプ23の斜め上方に油圧モータ24が位置するように、静油圧式無段変速装置18が構成されており、ミッションケース10の後部に静油圧式無段変速装置18が連結されている。エンジン9の動力が伝達される入力軸44と一体で回転するプランジャ23b、プランジャ23bのストロークを決める斜板23a等を備えて油圧ポンプ23が構成されており、入力軸44の端部にチャージポンプ27が接続されて、エンジン9により油圧ポンプ23及びチャージポンプ27が駆動される。
【0034】
図3及び
図4に示すように、出力軸45と一体で回転するプランジャ24b、プランジャ24bのストロークを決める斜板24a等を備えて油圧モータ24が構成されている。油圧ポンプ23及び油圧モータ24が無段階の可変容量型に構成されており、油圧ポンプ23と油圧モータ24とが高圧側油路25及び低圧側油路26により接続されている。
【0035】
図4に示すように、エンジン9により油圧ポンプ23が駆動されることにより、油圧ポンプ23からの作動油が高圧側油路25を介して油圧モータ24に供給されて油圧モータ24が駆動され、油圧モータ24からの作動油が低圧側油路26を介して油圧ポンプ23に戻されるのであり、油圧モータ24の動力が出力軸45からミッションケース10のギヤ変速装置に伝達される。
【0036】
図4に示すように、高圧側及び低圧側油路25,26に亘って供給油路29が接続されており、チャージポンプ27からのチャージ油路28が供給油路29に接続されている。供給油路29における高圧側油路25側の部分に、逆止弁30及び高圧側油路25の圧力の上限を決めるリリーフ弁31が並列的に備えられており、供給油路29における低圧側油路26側の部分に、逆止弁32及び絞り部33が並列的に備えられている。低圧側油路26の圧力の上限を決める可変リリーフ弁34が、低圧側油路26とチャージ油路28とに亘って接続されている。
【0037】
図4に示すように、ミッションケース9の潤滑油が作動油として、フィルタ35からチャージポンプ27に供給され、チャージポンプ27からチャージ油路28、フィルタ36及び供給油路29を介して高圧側及び低圧側油路25,26に供給される。チャージ油路28の圧力の上限を決める可変リリーフ弁37が備えられている。
【0038】
図4に示すように、閉側に付勢されたアンロード弁38が高圧側油路25に接続されており、ブレーキペダル17とアンロード弁38とが機械的に連係されている。これによって、ブレーキペダル17が踏み操作されると(右及び左の前輪ブレーキ、右及び左の後輪ブレーキが制動状態に操作されると)、アンロード弁38が開位置に操作されて、油圧モータ24に作動油が供給されないように構成している。
【0039】
[4]
次に、油圧ポンプ23の操作構造について説明する。
図4に示すように、油圧ポンプ23の斜板23aを操作する複動型の操作シリンダ39と、操作シリンダ39を操作する制御弁40とが備えられて、チャージ油路28におけるフィルタ36の下手側部分から分岐したパイロット油路50が制御弁40に接続されており、チャージ油路28から分岐したパイロット圧により操作シリンダ39が作動する。変速ペダル16と制御弁40とが機械的に連係され、変速ペダル16とエンジン9のアクセル操作部9aとが機械的に連係されており、変速ペダル16は戻り側に付勢されている。
【0040】
図4に示すように、変速ペダル16を踏み込み操作していないと、エンジン9がアイドリング状態となり、油圧ポンプ23の斜板23aが中立位置に操作されている。変速ペダル16を踏み込み操作すると、エンジン9のアクセル操作部9aが変速ペダル16の踏み込み位置に対応する高速側の位置に操作されるのであり、油圧ポンプ23の斜板23aが制御弁40及び操作シリンダ39により変速ペダル16の踏み込み位置に対応する高速側の角度に操作される。
【0041】
[5]
次に、油圧モータ24の操作構造について説明する。
図3及び
図4に示すように、貫通孔46aを備えた支持部材46、支持部材46にスライド自在に支持されて油圧モータ24の斜板24aの上部(
図3の紙面左側)に接当するピストン部47、内部に油室48aを備えた円筒状の支持部材48、支持部材48にスライド自在に支持されて油圧モータ24の斜板24aの上部(
図3の紙面右側)に接当するピストン部49が、油圧モータ24の上部に出力軸45と平行に備えられている。支持部材46,48及びピストン部47,49により油圧アクチュエータが構成されている。
【0042】
図3及び
図4に示すように、高圧側油路25から分岐した第1パイロット油路41(第1パイロット圧)が、支持部材46に接続されており、第1パイロット圧(第1パイロット油路41)によりピストン部47が
図3の紙面右方に移動すると、油圧モータ24の斜板24aが低速側に操作される。チャージ油路28におけるフィルタ36の下手側部分から分岐した第2パイロット油路42(第2パイロット圧)が、支持部材48に接続されており、第2パイロット圧(第2パイロット油路42)によりピストン部49が
図3の紙面左方に移動すると、油圧モータ24の斜板24aが高速側に操作される。
【0043】
図3及び
図4に示すように、内部に油室51aを備えた支持部材51(操作機構に相当)、支持部材51にスライド自在に支持されて油圧モータ24の斜板24aの下部(
図3の紙面左側)に接当するピストン部52(操作機構に相当)が、油圧ポンプ23と油圧モータ24との間の部分に入力軸44と平行に備えられている。低圧側油路26から分岐した第3パイロット油路43(第3パイロット圧)が、支持部材51に接続されており、第3パイロット圧(第3パイロット油路43)によりピストン部52が
図3の紙面右方に移動すると、油圧モータ24の斜板24aが高速側に操作される。
【0044】
以上の構造により、第1パイロット圧(第1パイロット油路41)によるピストン部47の力、第2パイロット圧(第2パイロット油路42)によるピストン部49の力、並びに、第3パイロット圧(第3パイロット油路43)によるピストン部52の力の3つの力が均衡する角度に、油圧モータ24の斜板24aが操作される。
【0045】
図5の実線L2に示すように、第1パイロット圧(第1パイロット油路41)(高圧側油路25の圧力)が圧力A2よりも低圧の場合、油圧モータ24の斜板24aは最小角度(高速)に操作されている。第1パイロット圧(第1パイロット油路41)(高圧側油路25の圧力)が圧力A2から上昇すると、油圧モータ24の斜板24aは最小角度(高速)から比較的急激に低速側に操作されるのであり、第1パイロット圧(第1パイロット油路41)(高圧側油路25の圧力)が、圧力A2に比較的近い圧力A3に達すると、油圧モータ24の斜板24aが最大角度(低速)となる。
【0046】
[6]
次に、通常の走行状態から走行負荷が上昇しても、ある程度の時間は機体の走行速度を維持して、機体の走行速度があまり早く低下しない状態について説明する。
図4及び
図5の実線L2に示すように、例えば変速ペダル16を踏み込み操作した通常の走行状態(エンジン9の回転数が低下しておらず、油圧モータ24の斜板24aが最小角度(高速)に操作されている状態)から上り坂に入る場合、まだエンジン9の回転数が低下していないことにより、第2パイロット圧(第2パイロット油路42)が比較的高い状態なので、走行負荷が上昇しても(高圧側油路25の圧力が上昇しても)、比較的高圧の第2パイロット圧(第2パイロット油路42)の抵抗によって、ピストン部47は低速側に移動し難く、油圧モータ24の斜板24aは直ちに低速側に操作されることはない。
【0047】
この場合、
図4に示すように、第3パイロット圧(第3パイロット油路43)が、第2パイロット圧(第2パイロット油路42)の抵抗に加えられる点においても、ピストン部47,49は低速側に移動し難く、油圧モータ24の斜板24aは直ちに低速側に操作されることはない。
このように第1パイロット圧(第1パイロット油路41)が圧力A2よりも低圧の範囲では、油圧モータ24の斜板24aは最小角度(高速)に保持されて、機体の走行速度は維持されているが、走行負荷の上昇による高圧側油路25の圧力の上昇により、油圧モータ24の出力トルクは緩やかに上昇している。
【0048】
この後、
図4及び
図5の実線L2に示すように、走行負荷が上昇することによる第1パイロット圧(第1パイロット油路41)の上昇、並びに、走行負荷の上昇によるエンジン9の回転数の低下に伴う第2パイロット圧(第2パイロット油路42)の低下により、第1パイロット圧(第1パイロット油路41)が圧力A2に達し圧力A2から上昇すると、第1パイロット圧(第1パイロット油路41)によって、ピストン部47が低速側に移動し、油圧モータ24の斜板24aが最小角度(高速)から低速側に操作される。
【0049】
[7]
次に、走行負荷が比較的大きな状態において、さらに走行負荷が大きくなった場合、油圧モータ24の斜板24aの低速側への操作が遅れることなく行われる状態について説明する。
図5の実線L2に示すように、第1パイロット圧(第1パイロット油路41)が圧力A2に達してから走行負荷が上昇すると、走行負荷の上昇(第1パイロット圧(第1パイロット油路41)が圧力A2から上昇)、並びに、走行負荷の上昇によるエンジン9の回転数の低下に伴う第2パイロット圧(第2パイロット油路42)の低下により、ピストン部47によって油圧モータ24の斜板24aが比較的急激に低速側に操作されるのであり、第1パイロット圧(第1パイロット油路41)が、圧力A2に比較的近い圧力A3に達すると、油圧モータ24の斜板24aが最大角度(低速)に操作される。
【0050】
図4及び
図5の実線L2に示すように、走行負荷が比較的大きい状態で(高圧側油路25の圧力が比較的高い状態で)、油圧モータ24の斜板24aが低速側に操作されている状態では、既に大きな走行負荷によりエンジン9の回転数が低下して、第2パイロット圧(第2パイロット油路42)も低下していることが多い。
【0051】
前述の状態において、さらに走行負荷が大きくなった場合、第2パイロット圧(第2パイロット油路42)が比較的低いことにより(第2パイロット圧(第2パイロット油路42)の抵抗が小さいことにより)、第1パイロット圧(第1パイロット油路41)によってピストン部47が直ちに低速側に移動し、油圧ポンプ24の斜板24aが遅れることなく低速側に操作される。
【0052】
前項[5][6]及び本項[7]において、ピストン部47,49の外径(受圧面積)やピストン部52の外径(受圧面積)を変更することにより、
図5の実線L2の圧力A2と圧力A3との間の部分を全体的に低圧側(
図5の紙面左側)に移動させたり、全体的に高圧側(
図5の紙面右側)に移動させたりすることができる。
【0053】
[8]
次に、例えば下り坂等において機体の走行速度を抑える為に、変速ペダル16を戻し操作した場合、ダイナミックブレーキの働きが抑えられる状態について説明する
図4に示すように、例えば下り坂等において機体の走行速度を抑える為に、変速ペダル16を戻し操作した場合、油圧ポンプ23の斜板23aが低速側に操作されると同時に、エンジン9のアクセル操作部9aが低速側に操作される。
この状態において、地面からの逆駆動力により油圧モータ24が駆動されると、油圧モータ24から吐出される作動油により、低圧側油路26の圧力が高圧側油路25の圧力よりも高圧になって、油圧モータ24から吐出される作動油(低圧側油路26)により油圧ポンプ23が駆動される状態となる。
【0054】
前述の状態において変速ペダル16を戻し操作して、油圧ポンプ23の斜板23aが低速側に操作されると同時に、エンジン9のアクセル操作部9aが低速側に操作されると、油圧ポンプ23が駆動され難い状態(油圧ポンプ23を駆動するエンジン9を無理に高速で駆動しようとする状態)となること、並びに、エンジン9が駆動され難い状態となることにより、油圧ポンプ23の駆動抵抗が大きくなり、一般の乗用車のエンジンブレーキに相当するダイナミックブレーキが働くことになる。
【0055】
しかしながら変速ペダル16を戻し操作し過ぎると、ダイナミックブレーキが働き過ぎて、機体が急減速するような状態となり、乗り心地が悪くなることがある。この現象は油圧モータ24の容量(吐出量)(斜板24aの角度)と、油圧ポンプ23の容量(吐出量)(斜板23aの角度)とに大きな差がある場合に顕著なものとなる。
【0056】
この場合、
図4に示すように、地面からの逆駆動力により油圧モータ24が駆動され、油圧モータ24から吐出される作動油により、低圧側油路26の圧力が高圧側油路25の圧力よりも高圧になった場合、第3パイロット圧(第3パイロット油路43)により、ピストン部52が油圧モータ24の斜板24aを高速側(容量(吐出量)の小側)に操作する。
【0057】
従って、変速ペダル16を戻し操作して、油圧ポンプ23の斜板23aが低速側(容量(吐出量)の小側)に操作され、エンジン9のアクセル操作部9aが低速側に操作されても、これと同様に油圧モータ24の斜板24aが高速側(容量(吐出量)の小側)に操作されることにより、油圧モータ24の容量(吐出量)(斜板24aの角度)と、油圧ポンプ23の容量(吐出量)(斜板23aの角度)との差が抑えられて、ダイナミックブレーキの働きが抑えられる。
【0058】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための形態]において、
図3に示す支持部材46及びピストン部47を
図6,7,8に示すように構成してもよい。
図6及び
図7に示すように、ピストン部47の内部において、補助ピストン部53が支持部材46の貫通孔46aにスライド自在に内嵌されており、補助ピストン部53の頭部53aがピストン部47の油室47aの内部に接当している。補助ピストン部53の中間部の外周部の全周に亘って凹部53bが形成され、補助ピストン部53の端部に連通する孔部53cが備えられており、凹部53bと孔部53cとに亘って連通する小径の孔部53d(絞りとして機能する)が備えられている。
【0059】
図7に示すように、油圧モータ24の斜板24aが最小角度(高速)に操作されている状態において補助ピストン部53の凹部53bは支持部材46の先端部に達しておらず、補助ピストン部53の凹部53bとピストン部47の油室47aとは遮断されている。この状態において、第1パイロット圧(第1パイロット油路41)が支持部材46の貫通孔46aに供給されると、第1パイロット圧(第1パイロット油路41)が補助ピストン53のみに作用し、ピストン部47の油室47aに供給されない状態となる。これにより、補助ピストン53における頭部53a以外の部分の断面積が、第1パイロット圧(第1パイロット油路41)の受圧面積となり、比較的小さな力が補助ピストン部53を介してピストン部47に掛かる状態となる。
【0060】
前述の比較的小さな力により補助ピストン53が
図7の紙面右方に移動して、
図8に示すように、補助ピストン部53の凹部53bが支持部材46の端部に達すると、補助ピストン部53の凹部53bが開放され、ピストン部47の油室47aと補助ピストン部53の凹部53bとが連通する。
これにより、第1パイロット圧(第1パイロット油路41)がピストン部47の油室47aに流入することになるので、ピストン部47の油室47aの断面積が第1パイロット圧(第1パイロット油路41)の受圧面積となり、比較的大きな力がピストン部47に掛かる状態となる。
【0061】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための形態][発明の実施の第1別形態]において、
図3及び
図4に示す第3パイロット油路43を低圧側油路26から分岐させるのではなく、チャージ油路28から分岐させて支持部材51に接続するように構成してもよい。
【0062】
このように構成すると、比較的高圧の第2パイロット圧(第2パイロット油路42)がピストン部47及びピストン部52の両方に掛かることになるので、通常の走行状態から走行負荷が上昇する状態となった場合、油圧モータ24の斜板24aが低速側に操作されることをさらに遅らせることができて(油圧モータ24の斜板24aがさらに低速側に操作されに難くすることができて)、特に機体の走行速度を維持することに重点を置いた作業車に適した構造を得ることができる。
【0063】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための形態][発明の実施の第1別形態]において、
図3及び
図4に示す第3パイロット油路43を廃止し、ピストン部52を突出側に付勢するコイルバネ(図示せず)を支持部材51に内装するように構成してもよい。
【0064】
[発明の実施の第4別形態]
前述の[発明を実施するための形態][発明の実施の第1別形態]〜[発明の実施の第3別形態]において、
図3に示す支持部材48,51の内部に、ピストン部49,52を突出側に付勢するコイルバネ(図示せず)を備えてもよい。
このように構成すると、第1パイロット圧(第1パイロット油路41)によるピストン部47の力、第2パイロット圧(第2パイロット油路42)によるピストン部49の力、並びに、第3パイロット圧(第3パイロット油路43)によるピストン部52の力の3つの力が均衡する油圧モータ24の斜板24aの角度を、コイルバネの追加及び変更により微調節することができる。
【0065】
[発明の実施の第5別形態]
前述の[発明を実施するための形態][発明の実施の第1別形態]〜[発明の実施の第4別形態]において、
図3及び
図4に示す支持部材51及びピストン部52を廃止してもよい。このように構成すると、第1パイロット圧(第1パイロット油路41)によるピストン部47の力、並びに、第2パイロット圧(第2パイロット油路42)によるピストン部49の力の2つの力が均衡する角度に、油圧モータ24の斜板24aが操作される。
【0066】
[発明の実施の第6別形態]
前述の[発明を実施するための形態][発明の実施の第1別形態]〜[発明の実施の第5別形態]において、
図3に示す支持部材48,51及びピストン部49,52を、一つの複動型の油圧シリンダで構成してもよい。